エスパー・ライアー ライアー・ライアーの世界にエスパーが転生したようです 作:但野ミラクル
「え? 記憶喪失?」
私は思わずそう呟いた。
きっかけは天崎心と一緒に話をしていたときだ。疲れから少しよろめいた。それだけだ。だがそれだけが致命傷だった。正確には歩行用通路に突っ込んできたトラックに気付き避けるには致命的すぎる隙だったというべきか。そしてそれを天崎心が私を突飛ばし助けた。その結果、天崎心は車に轢かれ記憶喪失になってしまったという訳だ。
「……そんな」
それを聞いた私は複雑だった。これは悲しめばいいのか?喜べばいいのか?それともどちらでもないのか?
そのどちらとしても私は会わなければならない。彼女に助けられた者として。
「ねえ天崎、私よ。
「えっと、その……すいません」
ショックといえばいいのだろうか。彼女には脅されていた。私の正体を知っている彼女は邪魔のはずだった。だというのに、とてもショックだった。それが顔に出ていたのか、彼女は申し訳なさそうにしていた。
違う、悪いのは私だ。でもその言葉が出て来なかった。私は何を言えばいいのだろうか?……分からない。
そもそも彼女と私の関係そのものが複雑なせいで何を思えば正解なのかすらも不明だ。
彼女は元々強いプレイヤーであった。無敗で六星になったぐらいなのだからそこを疑うものはいないだろう。なので警戒はしていたが、面識などはない、赤の他人であった。
知り合ったのは、決闘を終えて帰ろうとしていたときである。
「……彩園寺更紗さん、こんにちは、いや朱羽さんというべきかな?」
「っ!?」
どうしてその事を知っている?彩園寺家と赤星の力で隠蔽しているのにどうしてばれた?どうやら、私の事情をある程度知っているようだが何が目的なんだ?
色々な思考が即座に浮かんだが、彼女の要求はどの疑問の解決にはならなかった。
「私と友達になってよ」
「……え?」
要求はそれだけであった。……訳が分からない。何が目的なのだ?友達を作りたいから?そんな訳がない。でも、それ以外に脅しているのに目的を告げない理由も分からない。
結局私は何も分からないまま、天崎心と一緒に過ごすようになっていった。友達になってほしいという要求以外をすることなく、遊んだりしていた。
そして、今に至る。
……どうしたらいいのか、本当に分からないのだ。脅されていた、けれど嫌いではなかった。それにあのときだって私を放っておくこともできたのに助けてくれた。そして今記憶喪失になっている。……あなたは何を考えていたの?なんで助けてくれたの?あなたは何を望んでいたの?
頭の中がぐちゃぐちゃだ。もう自分でも嫌になるぐらいに。
結局、私にできたのは強がりを言うことだけだった。
「……大丈夫よ、ごめんなさいね。こんなときに」
「いえ、そんな私こそすいません」
まるで別人だ。自信満々な彼女とはまるで違う。
「あの、彩園寺さんと私はどういう関係だったんですか?」
「……そうね、友達……ね」
「……何か凄く間が開いていたんですけど!? 本当に友達だったんですよね?」
「そうね、友達といっても過言ではないわね」
「過言て、どんな関係なんですか、本当に」
「あー、うん。まあ、その色々とね」
「あー、なるほど?」
そう、友達といえば友達だったのかも知れない。まあ、脅されていたけども。
そうして話している内にかなりの時間が経っていた。
「……またお見舞いに来るわね」
「はい、お待ちしてます」
「ねえ、天崎、ありがとうね」
「え?」
「じゃあまたね」
「は、はい」
そうして私は病室を出ていった。
「……天崎」
私は思わず呟いていた。以前に天崎に仕掛けていた
簡単に言うと、天崎が家から勘当されていた。……確かに記憶喪失になったことは大問題だ。損失も大きいだろう。だからって普通勘当するか?いや、戸籍上は絶縁関係じゃないが、学生の面倒を見ることを放棄っていうは流石におかしい。学校も退学にするらしい。マジかー、退学かー。何を考えているのかしら?いえ、何も考えていないのではないかしら?
「どうしたらいいのかしらね」
いや、勘当はやりすぎでしょ。どう考えても。目先の利益しか、いや目先の利益すら見れないのかしら、あの当主。
うーん、やっぱり
「という訳で私の家で働くつもりはないかしら」
「え、え、え?」
「という訳で私の家で働くつもりはないかしら」
「いえ、聞こえていないわけではなくてですね?」
「あなた、学校を退学になったんですってね」
「えっ、なんでそれを」
「彩園寺家の調査能力は恐ろしいわよね」
「え? すごいですね、えっと、どこまで?」
「とにかく家と揉めているのは知っているわ」
「うわあ」
「まあ、そんなんじゃ困るでしょうから働き手を紹介してあげようと思った訳」
「えっと? どんな仕事ですか?」
「メイド」
「えっ」
「ついでに私の補佐」
「えっ」
「あなたさえ良ければだけどね」
「えー、えっと……よろしくお願いします」
これがずるい手なのは知ってる。天崎に私以外すがるものがないのを知っていてこの提案をした。当主にも無理を言った。でもこれが私のできる最大限だろう。まあ、補佐は今は無理でしょうけどね。あと一年から二年は必要よね、
……なんて考えていたのが馬鹿のようである。半年だ。半年で天崎は私の補佐できるようになっていた。
本当に何でもできるな、この子は。
ちなみに彼女の記憶はところどころ戻っているようで、鎌かけにも引っ掛かっている。彼女は以前の雰囲気に戻りつつも時折申し訳なさそうな顔をしており、たまに「まだ完全には戻ってないか」と呟いている。
おそらく記憶のことかしら。いつか何故しっかり脅さなかったのか聞きたいわね。
まあ、彼女と私は相性はきっといい。いつか機会があれば話してくれそうな気もする。
何せ私たちはお互いに嘘つきなのだから。
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