燃え残り   作:名無し

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手をすり抜けた物

─アビドス・砂漠地区─

 

ウォルター「…これ以上は装甲車では無理か」

 

アヤネ「そうですね、専用の車両がないとこの先は危険です、私と先生はここからはオペレーターとして、この車中から支援します」

 

ホシノ「うん、この先はアビドス砂漠、市街地の砂漠化が始まる前からの砂漠地帯だよ

普段から壊れたドローンや警備ロボットみたいなの、戦術人形(オートマタ)までウロウロしてるから、まあ…間違いなく戦闘になるね」

 

ノノミ「気をつけて行きましょう」

 

セリカ「…でも、そもそもなんでゲヘナの風紀委員長がそんな事知ってるの?」

 

アヤネ「ゲヘナの情報部は非常に優れた情報網を持っているそうです」

 

ウォルター「俺が阿慈谷(あじたに)に書類を渡した事を翌日の時点で把握していたな」

 

アヤネ「それもですが、行政官は自治区の土地の所有者が移り変わった事をすでに知っているような発言をしていました…」

 

セリカ「え!?そうだっけ!?」

 

ウォルター「自治区内とは言わず、自治区付近と表現していた、わかっていて言ったのでないとしたらただの挑発行為だ

それに、俺も調べているうちに行き着いた情報だ」

 

アヤネ「土地の所有者の情報にアクセスする事自体は難しくありませんからね…

でも、先生は何を調べてそこに…?」

 

ウォルター「……カイザーコーポレーションの目的がわからなかった、企業は必ず利益を追いかける

金の匂いを感じたら中々手を引かない、面倒な存在だ、何か尻尾が掴めるかと思ったが」

 

アヤネ「そうでしたか…」

 

ドカーン!ドドドドドドッ!

 

アヤネ「どうやら、先輩達が交戦を開始したようです」

 

ウォルター「……」

 

アヤネ「…先生?」

 

ウォルター「…カイザーPMCか…もし、アレを導入したのがカイザーなのだとしたら…」

 

──

 

ホシノ「前は任せて、セリカちゃん、おじさんの後ろに貼り付ける?」

 

セリカ「わかった!」

 

ホシノの背中にピッタリとセリカがくっつき、ホシノの盾に隠れながらセリカが敵を狙い撃つ

 

シロコ「…狙いが集中し出した」

 

ノノミ「今ですね〜」

 

ダダダダダダダダダッ!

 

別方向からマシンガンが敵を撃ち抜く

 

ホシノ「……よし、片付いた?んー…」

 

ドンッ!

 

ホシノが足元に転がったドローンをショットガンで撃つ

 

ホシノ「こんなもんかな?」

 

セリカ「…ねえ、みてホシノ先輩」

 

ホシノ「んー?」

 

シロコ「倒した戦術人形(オートマタ)の中にカイザーPMCのロゴが入ってるやつがいる」

 

セリカ「こんな所で街やブラックマーケットに流れる様な正規のドローンが迷子になる?」

 

ノノミ「…どうやら、カイザーPMCが集まっているという話は間違いなさそうですね」

 

ホシノ「…じゃあ進もうか?」

 

──

 

ホシノ「いやー、この辺まで来るのも久しぶりだねぇ」

 

シロコ「ホシノ先輩はここまで来たことがあるの?」

 

ホシノ「うん、前に生徒会の仕事で何度かね〜

もう少し進めばそこにはかつてアビドス砂祭りが開かれていたオアシスが!」

 

セリカ「え??オアシス!?こんな所に?」

 

ホシノ「うん、まあ今はもう干からびちゃったんだけどね〜、元々はそんじょそこらの湖よりも広くて船を浮かべられるくらいだったとか

ま、私も見たことはないんだけどさ〜」

 

シロコ「砂祭り…私も聞いたことがある、アビドスでは有名なお祭りで他校からも人が来たって」

 

ホシノ「おお、よく知ってるね…別の学校からもそのお祭りみたさに人が来るくらいだったからね

ま、砂漠化が進むより何十年も前の事だけど」

 

セリカ「へえ、今となってはこんなことになっちゃってるけど…ここでそんなにすごいお祭りが?」

 

ホシノ「前まではこのあたりも結構すみやすい場所だったらしいよ〜、その時はこんな砂漠もなかったらしいし…さて

アヤネちゃん、目的地までどんなもんかな?」

 

アヤネ「うーん…まだかかりそうですね…情報が正しいのなら、砂漠の奥深く…ですが…」

 

ホシノ「まだ先かぁ…」

 

シロコ「…あ、ホシノ先輩」

 

ホシノ「んー?」

 

シロコ「足に毒ヘビが…」

 

ホシノ「え?うわぁっ!?」

 

ホシノがヘビに驚いて飛び退く

 

ホシノ「し、シロコちゃん、そういうのはもっと早く言ってほしいな…おじさんびっくりしちゃったよ、も〜」

 

ノノミ「うーん…それにしても、この砂漠に兵力を集めて一体何を…?」

 

アヤネ「先生、風紀委員長の情報は信じていいものなのでしょうか…?」

 

ウォルター「…問題ない、それよりも小鳥遊(たかなし)、アビドス砂漠について他に知っていることはないか」

 

ホシノ「んー…特にないよ」

 

ウォルター「……そうか」

 

シロコ「先生、どうしたの?」

 

ウォルター「カイザーはなんらかの利益を求めて砂漠に兵力を集結させた、それは事実だ

…だが、何の情報もなくこんな砂漠を選ぶとは思えない」

 

ホシノ「それは確かにそうだけど」

 

ウォルター「一体この砂漠には何がある……いや、何が眠っている…」

 

アヤネ「先生…?」

 

ウォルター「……奥空(おくそら)、探査用のドローンを先行させろ」

 

アヤネ「わかりました」

 

シロコ「先生、どうしたの?」

 

ウォルター「……今は、気にするな…奥空、ドローンはどうだ」

 

アヤネ「今みなさんを視認しました!」

 

アヤネのドローンが真上を飛び越える

 

セリカ「もう来たの?」

 

ホシノ「いいなぁ…もう疲れちゃったから私たちも乗せてって欲しいよ…」

 

シロコ「あれに乗るのは流石に無理だと思う」

 

ホシノ「うへー…本気にしないで…そんなに冷たい目で見られたら流石に傷つくよ…?」

 

シロコ「…うん、気をつける」

 

アヤネ「お話中すみません!正面2キロ先に人工的な建造物があります!」

 

セリカ「人工的な建造物?こんな砂漠の真ん中に?」

 

ホシノ「ああ、昔はこの辺りも人が住んでたって言ったでしょ?

砂に埋もれた廃墟とかがあるんだよね〜」

 

アヤネ「いえ…生体反応や機械の反応も確認しました!」

 

シロコ「それって…!」

 

アヤネ「あ…!ドローンが攻撃を受け始めました、退避させます!」

 

ウォルター「座標を記録した、小鳥遊、前進して調査しろ」

 

ホシノ「はいはい、全く…」

 

セリカ「ドローンは?回収しに行く?」

 

アヤネ「敵戦力を分散する為にこちらとは別の方角に逃げています、気にせず調査を…!」

 

ホシノ「んじゃ、急ごうかー」

 

──

 

ホシノ「……」

 

セリカ「何これ…」

 

シロコ「この大きな壁と有刺鉄線…見える限りでも数キロは続いてる」

 

ノノミ「工場や石油ボーリング施設にも見えませんね…」

 

ホシノ「……こんなの、昔はなかった…カイザーがここに建てて、兵力を集めてるって事…?」

 

ウォルター「砂狼(すなおおかみ)、ドローンを入り口に向かわせてアクセスポイントを探せ…後は俺が開ける」

 

シロコ「うん…いや、待って」

 

ホシノ「どうやら、その必要はなさそうだねー」

 

セリカ「え?」

 

ダダダダダダッ!

 

セリカ「何々何!?」

 

戦術人形(オートマタ)1「侵入者だ!」

 

戦術人形2「撃て!逃すなよ!」

 

シロコ「まだ侵入はしてない…」

 

ホシノ「まあら手荒な歓迎の挨拶だと思おうかー…やるよ?」

 

ウォルター「構わん、どの道正面衝突は避けられん」

 

ホシノ「そうこなくっちゃ」

 

ダンダンダンダンッ!

 

戦術人形1「うぐっ!?」

 

シロコ「ノノミ、後方から援護して」

 

ノノミ「はーい☆」

 

戦術人形2「な、なんだこいつらは…!?」

 

戦術人形3「お、押されているぞ…!?」

 

ホシノ「セリカちゃん、ついてきて」

 

セリカ「わかった!」

 

ダダダダダダッ!ドンッ!ドンッ!ダダダッ!

 

シロコ「…終わった?」

 

セリカ「入り口の周りの敵は片付いたけど…」

 

アヤネ「まだです、そちらに接近する反応が…!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

シロコ「この音は……戦車?」

 

ホシノ「うへー、ちょっと面倒だね…シロコちゃん」

 

シロコ「わかってる」

 

シロコのドローンが浮かび上がり、戦車が見えた瞬間ミサイルを撃ち込みまくる

 

ドカーン!ドドーン!

 

ホシノ「うへー、派手だねぇ」

 

ウォルター「聞こえるか、流石に騒ぎを大きくしすぎた…入口以外の全方位から敵の増援が来ている」

 

セリカ「えっ!?」

 

ノノミ「包囲されてしまう前に突破しないと…!」

 

ウォルター「カイザーの目的は不明だが、ここで何かをしている事実は確認した」

 

ホシノ「撤退しろって事?ここまできて?」

 

ウォルター「カイザーに捕まってからでは遅い」

 

ホシノ「……」

 

シロコ「でも、今帰ったら何もわからないまま」

 

ノノミ「もう少しだけ…せめて、何をしてるか調べてから戻りませんか…?」

 

セリカ「ここまで来て何も収穫無しなんてあり得ない!」

 

ホシノ「先生、多数決はこっちの勝ちみたいだね?」

 

ウォルター「……危険を感じたら逃げろ」

 

ホシノ「りょーかいっ」

 

──

 

タタタタタタッ!ドンッ!ドカーン!

 

セリカ「右!新手!」

 

ホシノ「こっちも来てるね…うーん、調査する余裕も無いな」

 

ドドドドドドッ!

 

ホシノ「…無理か、このままじゃ」

 

シロコ「少し戦線を下げないと、退路が塞がれる…!」

 

ホシノ「…ちょっと、見誤ったかなぁ」

 

ノノミ「ヘリがきました…!」

 

ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!

ドドドドドドッ!ダダダダダダッ!

 

セリカ「に、逃げないと…!」

 

ホシノ「…いや、もう遅いかな、完全に包囲されちゃったかー…」

 

シロコ「…抵抗は…」

 

ホシノ「やめとこう、これ以上は流石に無理だよ」

 

ウォルター「…前方から集団が近づいてくる」

 

ウォルター(ここまでか…この場合、どうなる…アーキバスの様に捕えられて…いや、もしくはこのまま殺されるか

そうなる前に打てる手段は…)  

 

PMC達の中から1人だけ、豪華なスーツで着飾ったロボットが歩いてくる

 

PMC理事「侵入者だとは聞いていたが…まさか、アビドスだったとは」

 

セリカ「何よこいつ…?」

 

ホシノ(あいつは…見た事がある、確か、黒服と一緒に居た…)

 

PMC理事「ここまでくるとは想定していなかったが、まあいい

勝手に人の私有地に入り、暴れた事によるこれらの被害額、君たちの学校の借金の額に加えても良いのだが、まあ、大した額は変わらないな」

 

ホシノ「アンタ、あの時の…」

 

PMC理事「…確か、例のゲマトリアが狙っていた生徒会長…いや、副会長だったか?

ふむ…面白いアイデアが浮かんだ、便利屋やヘルメット団を雇うよりは良さそうだ」

 

セリカ「こ、こいつ何をいってるの?」

 

ノノミ「……あなた達は誰ですか?」

 

PMC理事「まさかこの私を知らないとは、アビドス、君たちならよく知ってる相手だと思うがね

私はカイザーコーポレーションの理事を務めているものだ

そして君たちアビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

 

シロコ「!!」

 

セリカ「嘘っ!?」

 

PMC理事がホシノへと近づく

 

PMC理事「では、古くから続くこの借金について話し合いでもするとしようか」

 

ノノミ「…アビドスが借金をしている相手…」

 

セリカ「こいつが…?」

 

PMC理事「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、カイザーコンストラクションの理事だ

そしてカイザーPMCの代表取締役でもある」

 

シロコ「それはどうでもいいけど、要はあなたがアビドスを騙して搾取し続けてきた張本人って事でいいの?」

 

PMC理事「ほう?」

 

セリカ「そうよ!ヘルメット団と便利屋を差し向けて、ここまで私たちを苦しめてきた犯人がアンタって事なんでしょ!!

アンタのせいで私達は…アビドスは…!!」

 

PMC理事「やれやれ…最初に出てくる言葉がそれとは

勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員を攻撃し、施設を散々破壊しておいて…くくっ、面白い

だが、口の聞き方には気をつけた方がいい、ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所、まず君たちは今、企業の私有地に対し、不法侵入しているのだということを理解するべきだ」

 

シロコ「…!」

 

PMC理事「さて、話を戻そうか、アビドスの土地だったか?確かに買ったとも

だからどうした?全ては合法的な取引、記録もしっかりと存在している

まるで、私たちが不法な取引をしているかのような言い方はやめてもらおうか

わざわざ挑発しにきたわけでは無いのだろう?ここに来たのはなんのためだ?我々が何をしているのか気になったのか?」

 

ウォルター「宝探しの調子はどうかと聞きに来た」

 

シロコ「先生?無線から…」

 

PMC理事「…この声は、ハンドラー・ウォルターか…」

 

セリカ「宝探し…?」

 

ウォルター「見事な物だ、これほどまでの規模の基地、もし補給が滞ればどうなるか想像は難く無い、だがそれを継続できている」

 

PMC理事「何が言いたい」

 

ウォルター「…これほどまでに資金を投入する価値が、その宝にはあるのか?俺にはそうは思えん」

 

PMC理事「……」

 

ウォルター「この基地の兵力は明らかにアビドスへの対策では無い、保有する兵士も、兵器も、周囲に散りばめられたドローンや戦術人形も、全て宝探しの為か?」

 

PMC理事「……」

 

PMC理事が携帯を取り出し、どこかへと電話をかける

 

PMC理事「そうだ、私だ…進めろ」

 

セリカ「な、なに?急に電話?」

 

PMC理事「残念なお知らせだ、どうやら君たちの学校の信用が落ちてしまった様だ」

 

通信越しに電話の音が響く

 

アヤネ「…はい……え?…金利を…3000%!?……9130万円って…!

ちょ、ちょっと!…そんな……」

 

セリカ「9000万!?」

 

PMC理事「くっくっく…これでわかったかな、君たちの首にかけられた紐が誰の手にあるのか」

 

ノノミ「……」

 

セリカ「ちょ、嘘でしょ!?本気で言ってんの…!?」

 

シロコ「……」

 

PMC理事「ああ、本気だとも、しかしこれだけでは面白みに欠けるな…そうだ、9億円の借金に対する補償金でももらっておくとしよう

1週間以内に我がカイザーローンに3億円を預託してもらおうか

この利率でも返済ができることを証明してもらわなければな」

 

アヤネ「そんな…!」

 

セリカ「っ…」

 

アヤネ「そんなお金、用意できるはずが…今の利子だけでも精一杯なのに…」

 

PMC理事「ならば学校を諦めて去ったらどうだ?自主退学して、転校でもすればいい

それで全て解決するだろう?もともと君たち個人の借金では無い」

 

ウォルター「……」

 

PMC理事「学校が責任を取るべきお金だ、何も君たちが進んで背負う必要はないのでは無いか?」

 

ノノミ「そ、そんなこと、できるはずが…!」

 

セリカ「そうよ!アビドスは私たちの学校なのに、見捨てるなんて…!」

 

シロコ「アビドスは私達の学校で、私達の街」

 

PMC理事「ならばどうする?他に良い手でもあるのか?」

 

ホシノ「……みんな、帰ろう」

 

セリカ「ホシノ先輩!?」

 

ホシノ「これ以上ここで言い争う意味はないよ、弄ばれてるだけ」

 

PMC理事「ほう…複生徒会長、流石に君は賢そうだ

…ああ、思い出したよ、賢そうな君と一緒に居た、あの全くもってバカな生徒会長の事もな」

 

ホシノ「……」

 

PMC理事「では、保証金と来月以降の返済についてよろしく頼むよ、“お客様”

ふふっ…ふははははは!!存外悪くない時間だった、さあ、お客様を入り口まで案内して差し上げろ」

 

ホシノ「……」

 

──

 

ウォルター「…戻ったか、車を出す」

 

セリカ「……」

 

シロコ「……」

 

ノノミ「…先生、あの…」

 

アヤネ「宝探しって、なんですか…あの砂漠には石油も他の地下資源も何もありません、はるか昔に出た調査結果です」

 

ウォルター「…そういう用意をしている様に見えた、それだけだ」

 

ホシノ「…何を探していようと、関係ない、それで解決する事なんて何も…」

 

ウォルター「……ヘリか」

 

アヤネ「え?」

 

セリカ「あ…うわ、何アレ」

 

ノノミ「あんなに大きなヘリ初めて見ました…どのくらい大きいのでしょう?」

 

シロコ「あの基地の補給を一台で済ませてるんだとしたら、あの大きさも納得…普通のヘリよりずっと大きいみたいだけど」

 

ウォルター「……」

 

ウォルター(かなり離れているな、だが、間違いない…)

 

あのヘリも、キヴォトスの外の物だ

やはり、あのガードメカもカイザーの物だろう

だが、あのヘリは…

 

セリカ「…疲れた…」

 

シロコ「…うん、ヘトヘト」

 

アヤネ「…砂漠を抜けるまではまだ時間がありますし、少し眠ってください」

 

ホシノ「そう、させてもらおうかな…」

 

──

 

???「じゃーん!ホシノちゃん見て見て!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよ!

この時はまだオアシスが湖みたいに広がってたんだよねー、あ、このポスターは記念にあげる!」

 

ポスター押し付けられ、ホシノが手に取る

 

???「えへへ、すっごく素敵でしょー?もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって──」

 

ホシノ「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩

そんなもの、あるわけないじゃないですか…それよりも、現実を見てください!」

 

???「はう…」

 

ホシノ「こんな砂漠のど真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう?!夢物語もいい加減にしてください!」

 

???「うえぇ…だって、ホシノちゃーん…ご、ごめんね?」

 

ホシノ「っ…そうやってふわふんと奇跡だの幸せだのなんだの……もっとしっかりしてください!

あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?少しはその肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!」

 

ビリビリッ─!

 

ホシノが手に持ったポスターを破り捨てる

 

ホシノ(……あんな事言われて、眠れる訳、ないじゃん…)

 

─アビドス・対策委員会教室─

 

アヤネ「…あと1週間で、3億円…」

 

セリカ「それを乗り越えられたとしても、毎月1億円近い利子なんて…3000%って何よ!?」

 

ウォルター「…砂狼、何をしている」

 

シロコ「準備、もう一度行ってくる、きちんとやれば潜入して何をしてるか探れる」

 

セリカ「待ってシロコ先輩!それより借金の方が優先でしょ!?」

 

シロコ「………借金はもう真っ当なやり方じゃ、返せない…何か別の方法が必要」

 

ノノミ「ダメですよ!それではまた…!」

 

セリカ「…私はシロコ先輩に賛成!学校がなくなれば全部終わりなんだから…なりふりなんて構ってられない!」

 

ノノミ「そんな、セリカちゃん…!?」

 

アヤネ「セリカちゃん待って!そんな事したらあの時と同じだよ?!」

 

セリカ「そういう意味じゃない、そういう意味じゃ…でも…」

 

アヤネ「あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自分から進んで犯罪者になるの!?」

 

セリカ「私は…」

 

ウォルター「一度待て」

 

セリカ「っ…先生!先生は大人でしょ!?何か良い案は無いの!?」

 

ウォルター「…俺はキヴォトスの金の周りにはまだ疎い、連邦生徒会に一報入れておいたが、アテにするな」

 

ホシノ「ホントにアテにならなさそうだねー…」

 

ウォルター「今話し合っても争いになるだけだ、あとまだ6日ある

7日で稼げる手段があるののなら、6日でも稼げる、今は頭を冷やせ」

 

セリカ「そんな適当な…!」

 

ホシノ「まあまあ、焦らない焦らない」

 

セリカ「ホシノ先輩まで…!」

 

ホシノ「それに、今ここで喧嘩しても何もないでしょ?落ち着いてゆっくり考えた方がいいと思うな〜」

 

アヤネ「……はい」

 

シロコ「…ホシノ先輩が言うなら、そうする」

 

セリカ「……」

 

ホシノ「うへ〜、そうだね、一旦頭冷やそうか、今日は帰った帰った〜、これは委員長命令だからね?」

 

それぞれが教室から出ていき、最後にホシノが出て行こうとしたところを呼び止める

 

ウォルター「小鳥遊」

 

ホシノ「…うへ、何?私だけ居残り?」

 

ウォルター「ゲマトリアとはなんだ」

 

ホシノ「…さあ、なんだろうね?」

 

ウォルター「……小鳥遊、この状況で誤魔化しは通用しない」

 

ホシノ「うへ…うーん…なら先生、少し歩こうよ」

 

─アビドス・旧校舎─

 

ホシノ「けほっ、けほっ……うわぁ…この辺も砂まみれじゃ〜ん…

ま、仕方ないんだけどね、掃除をしようにもそもそも人手に対して建物が大き過ぎるから

せめて砂嵐が減ってくれれば…いいんだけど

せっかくの高校生活が全部砂色なんて、やるせないと思わない?」

 

ウォルター「…小鳥遊はこの学校が余程大事か」

 

ホシノ「……今の話の流れで本当にそう思う?…うへ、やっぱ先生変人だよね

砂漠化が進む前、アビドスはかなり大きくて力のある学校だったって言われてるけど、私にはそんな記憶も実感も全く無いんだよね

最初から全部滅茶苦茶で、まともなものが何一つない学校だった…」

 

ホシノ「私が入学した時のアビドス本館は今はもう、砂漠の中に埋もれた…当時の先輩だってもうみんないなくなった

今いるここは、砂漠化を避けてきた、ただの別館…

ま、でもここに来てシロコちゃんやノノミちゃん、アヤネちゃんにセリカちゃんと会えたから…

……うへ、やっぱり好きなのかもしれないな〜」

 

ウォルター「……」

 

ホシノ「先生、正直に話すよ、私は2年前から変な奴らに提案を受けてた」

 

ウォルター「提案か」

 

ホシノ「カイザーコーポレーション…提案というかスカウトというか…アビドスに入学した直後からずっと、何回もね

そういえばついこの間もあったな〜……」

 

ウォルター「ゲヘナが進行してきた時か」

 

ホシノ「…「アビドス高校を退学し、私共の企業に所属する…その条件を呑んでいただければ、アビドスの背負っている借金の半分近くをこちらで負担しましょう」ってね

もちろん断ったんだ、破格の条件だけど、私がいなくなったらアビドスは崩壊すると思ったから」

 

ウォルター「何故そんな提案をする」

 

ホシノ「あいつらPMCで使える人材をあってるみたい」

 

ウォルター「提案したのが、ゲマトリアか」

 

ホシノ「その辺はよくわからない、でも私は黒服って呼んでる

なんとなくゾッとする奴で…キヴォトス広しと言えども、ああいうタイプのやつは見たことがなかった…

怪しいけど、特段問題は起こさないし…うーん…なんだろうね、あのカイザー理事ですら恐れてる様に見えたよ」

 

ウォルター「……」

 

ホシノ「…大丈夫、提案を受けるつもりはないから」

 

ウォルター「そうか」

 

ホシノ「…奇跡でも起きてくれれば良いんだけど…奇跡、かぁ…」

 

ホシノが淋しそうに虚空を見上げる

 

ホシノ「さて、この話はここでおしまい、じゃあまた明日ね、先生」

 

ウォルター「ああ」

 

ホシノ「…さよなら」

 

ウォルター「小鳥遊」

 

ホシノ「な、何?まだ何かあるの?」

 

ウォルター「アビドスにはお前が必要だ、俺では砂狼も黒見(くろみ)も、誰一人止められん」

 

ホシノ「うへ、頼りない大人だなぁ……まあ、ありがとね、先生」

 

ウォルター「……警告はしたぞ」

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