燃え残り 作:名無し
─シャーレ・休憩室─
ヒフミ「こんにちは、先生!…あれ……
何してるんですか?」
ウォルター「……詰められている」
セリナ「詰めてません」
ウタハ「質問責めにしているだけだよ」
ウォルター「……」
大きなため息が一つ
それと同時にセリナの目つきが少し険しくなる
ヒフミ「ちなみに、どういった質問なんですか…?」
セリナ「先生はしばらくアビドスに出張に行ってたそうなんです
その時の危険行為がSNSに晒されていて」
ヒフミ「先生、そんな不良みたいなことしてたんですか?」
セリナ「ゲヘナ風紀委員会の子のSNSの書き込みによると、「シャーレの先生は弾丸が当たったら大惨事なのに、丸腰で戦場を歩くから本当にやめて欲しい」…と、連邦生徒会をメンションしてのクレーム書き込みが大量に投稿されていたんです」
ヒフミ「どうしてそんな危険なことを…?」
ウォルター「…状況が状況だった」
セリナ「先生…あまり聞き分けが悪いと救護騎士団の団長が直々に救護に来ますからね?」
ウタハ「ああ、あの「ミネ団長が壊して騎士団が救護する」で有名な武闘派の?」
セリナ「い、いえ、それはかなり誤解があると思います…
というかトリニティ以外にも知れ渡ってるんですね…」
ウォルター「…悪かった」
セリナ「先生も勘違いしないでください…!?」
ウォルター「いや…昨日、俺の所に救護騎士団の団長を名乗る人物から「危険行為をやめなければ安全のために拘束する」という旨のメールが来た
どういう脅しなのか理解できずに無視していたが…どうやら本気らしい」
セリナ(ぽかーん)
ヒフミ「せ、セリナちゃん…?」
ウタハ「空いた口が塞がらないようだね」
ウォルター「
セリナ「…はい…わかりました、その…ごめんなさい」
ウタハ「さて、一件片付いたところで今度は私の番だね」
ヒフミ「そういえば、ウタハさんは一体何を…?」
ウタハ「これだよ」
ヒフミ「これは…ロボットの絵…?ミレニアムの新しい発明で…あれ?」
ウタハ「残念ながらミレニアムの発明品では無いよ、これはどうやら表には出てないデータみたいだけど、たまたまヴェリタスがサルベージしたんだ
詳しく調べてみるとどこかの生徒との交戦データも有って…
深く探ってみるとカイザーコーポレーションが購入や分解した履歴も手に入った」
ヒフミ(これ、私がティーパーティに提出した資料のロボットと同じ…)
ウタハ「カイザーと言えばちょうどブラックマーケットでの事件があって業務を縮小してる途中だし…
ブラックマーケットといえば、アビドスから遠くもない、そのあたり先生なら何かしらないかと思って」
ウォルター「
ウタハ「みたいだね、残念だけど仕方ないか…
でも、このロボットは…まるで戦う事しか考えられていない様な、そしてそれ以外をそぎ落とした様な設計だ
所々に無骨さがあって、大きくて、このロボットは一体何と戦うために作られたんだろう?って興味が湧いてくるよ」
ウォルター「それは……」
ヒフミ(そういえば、カイザーはあんなロボットをどうして…?)
ウォルター(…カイザーの情報ログに該当する物があった、“デカグラマトン”…か、調査の必要があるか?)
ウタハ「ミレニアムのマイスターとして、是非知りたかったんだけど…先生が拒絶するのなら仕方ないかな」
ウォルター「……」
ヒフミ「あ、あの、ところで…ハルカちゃんは…?」
ウォルター「まだ来ていない」
ヒフミ「電車が遅れてるんでしょうか…?」
セリナ「さっき調べたところ、遅延情報はありませんでした」
ウタハ「うーん、節約の為にまた走ってきているとか?」
ウォルター「……無くはないだろうが」
ジリリリリリリッ
ウォルター「電話か……シャーレだ」
カヨコ「もしもし、先生?便利屋68のカヨコだよ」
ウォルター「
カヨコ「ハルカが熱を出しちゃったから、今日は休ませる
黙ってシャーレに行こうとしてたから止めてたら連絡が遅くなった、ゴメン」
ウォルター「わかった…安静にする様伝えてくれ」
カヨコ「ありがとう、それと、社長から…「便利屋68はシャーレからの依頼なら格安で受ける」ってさ
要件はそれだけ、じゃあね」
ガチャッ
ウォルター「
セリナ「何かあったんですか?」
ウォルター「熱が出たらしい」
セリナ「そうでしたか…」
ヒフミ「早く元気になれると良いですね…」
ウタハ「住所でもわかればお見舞いに行くんだけど」
ウォルター「個人情報だ」
ウタハ「まあ、仕方ない…せっかくエンジニア部お手製の自動看護ロボを試すチャンスだと思ったんだけど」
ウォルター「待て、どこからそんな機械を出した…その戦車砲はなんだ」
ウタハ「今言ったじゃ無いか、自動看護ロボだって」
セリナ「……戦闘マシーンにしか…」
ヒフミ「MT…?」
ウタハ「ちなみに、Bluetooth決済にも対応してるから自動で買い物もできるよ」
ウォルター「……」
セリナ「…あ!そ、そうだ、先生!
実はシャーレに紹介して欲しいという方が居るのですが…」
ウォルター「紹介?」
ウタハ「それなら実はこっちもいるんだ、まだシャーレの部員募集はかけたままみたいだし、せっかくと思って
私もよく知ってる、信頼できるミレニアムの生徒なんだけど、呼んでも構わないかな」
ウォルター「…頼む」
現状、この4人と自分だけではシャーレの業務をこなせない
以前に、そもそもシャーレの設備を全て使うことすらできていない
おそらく生徒のためであろう食事施設やトレーニングルーム、教室などがその役目を全く果たせていない
というよりは部屋の扉を開いたことすらない部屋が幾つもある
人手を増やさない理由の方が少ない
ウタハ「早速呼んでみよう」
セリナ「はい!」
──
コンコンコン
???「失礼します」
ウォルター「…お前は…」
ユウカ「お久しぶりです、先生」
ウォルター「
ユウカ「覚えていてくれたみたいで光栄です」
早瀬ユウカ、ミレニアムサイレンススクールの生徒会である“セミナー”の会計担当
その立場から様々な噂がある
冷酷非道だとか、感情を因数分解するとか、SNSに体重が晒されたのは今朝のことだったか
ウォルター「早瀬、早速だが入部希望の理由を聞かせてもらおう」
ユウカ「り、理由ですか?…その、ええと…」
ウォルター(生徒会の所属ともなれば、強い権力を目当てに近づく様に指示される事もある…のか?)
ユウカ(…シャーレの悪い噂を聞いて、調査の名目で加入したい…なんて、言えないわよね…
それに…先生とはシャーレの建物を取り返すときに会っただけだけど、うーん…悪い人じゃ無さそうだし…)
ウォルター「…言えない様な理由か」
ユウカ「え、いや…えっと…その、最近お金を使いすぎちゃってー……
お小遣い稼ぎ…みたいな…」
ウォルター(…セミナーの会計が?…そんなはずがない、ミレニアムの会計ともなれば金勘定には誰よりもうるさいはずだ
自分の所持金すら管理できないはずがないだろう
…だが、人手は必要だ)
ウォルター「そうか、できる事は…戦闘、事務………わかった、採用だ」
ユウカ「えっ?こんなにあっさり?」
ウォルター「…どうかしたか」
ユウカ「い、いいえ…」
ウォルター(…対策はこちらですれば良い…)
──
ウォルター「…次はお前か…
スズミ「ご無沙汰してます、先生」
ウォルター「鷲見の紹介か…」
ウォルター(トリニティ自警団…トリニティは複数の派閥があり、生徒はそれぞれの派閥のために動く事もあるというが…
自警団はどうやらそういった派閥による縛りの外側にいるらしい)
スズミ「私は…シャーレでの活動に報酬はいりません、特にお金に困っているわけでもありませんし、自警団活動の延長だと思っていますので」
ウォルター「…わざわざ自分の時間を割いてまでか」
スズミ「それは…そうですね」
ウォルター「好き好んでやることとは思えないが」
スズミ「…やりたくてやっているわけではありません、でも、誰かがやらなければならないことなんです
だから、いつか、パトロールなんて必要のなくなる日が来るのを心待ちにしています」
ウォルター「……そうか」
ウォルター(……)
ウォルター「採用だ」
スズミ「ありがとうございます、でも、先生に採用と言われると…まるで就職の面接みたいですね」
──
ウォルター「白石、鷲見に続いて3人目か…」
「報酬は一切求めない」
「同じく報酬は必要ありません」
「報酬はいりません」
ウォルター「……何もしないわけにもな」
──
ヒフミ「…と、いう具合が普段やってるお仕事ですね…」
ウタハ「この辺りの地区の治安もだいぶん落ち着いてきたし、もうしばらくしたらお役御免かもしれないけど」
ユウカ「ふーん…」
スズミ「でも、それなら今私たちを雇うのも不思議な気がしますが…」
ウォルター「何も、戦闘だけが仕事ではない」
セリナ「先生?」
ウォルター「シャーレの“運営”も仕事だ…
ヒフミ「どこかに行くんですか?」
ウォルター「野暮用だ」
ウタハ「…送るくらいはできるけど」
ウォルター「問題ない、鷲見、誰かが来たら、対応を任せる」
セリナ「は、はい…」
ウタハ「…行ってしまったね」
スズミ「ですね…」
セリナ「…シャーレを訪ねてくる人って居るんでしょうか…?」
ウタハ「さあ…でも、それより…先生がどこに行ったのか気になるね」
ヒフミ「ま、まさか尾行するんですか…?」
ウタハ「まさか、先生は警戒心が強そうだから…
ちょっと待って……我がミレニアムの信頼できる友人を呼んだよ」
ユウカ「ねえ…それって…もしかしてエンジニア部…いや、こういう場合なら、ヴェリタスの…?」
ウタハ「ご名答」
ユウカ「やっぱり!」
ヒフミ「ゔぇりたす?」
ウタハ「ミレニアムの誇る最高のセキュリティチームさ」
ユウカ「……なんで尾行するのにセキュリティチームが必要なのよ…」
──
コタマ「お邪魔します」
ハレ「ここがシャーレかぁ…あ、ユウカ」
ユウカ「本当に来た…しかも、ハレまで…?」
ハレ「面白そうだったから…マキも来たがってたけど…」
コタマ「私的なハッキングが副部長にバレて怒られてましたね」
ユウカ「また?…今度は何やったのよ…」
ハレ「……さあ?」
コタマ「まあまあ、それよりも…」
ウタハ「そうだね、2人に頼みがあるんだけど」
コタマ「頼みですか」
ハレ「何をすれば良いの?」
ウタハ「先生の私有PCの中身を見られないかな?」
コタマ「お安い御用です」
ウタハ「それと、ハレのアテナ3号には先生を追尾して欲しいんだ」
ハレ「構わないよ」
ハレの周りをふわふわとドローンが飛び回る
ヒフミ「これが、アテナ3号?」
ユウカ「ねえ、流石にシャーレのデータにアクセスするのは…同じミレニアムとして黙って見てられないんだけど」
スズミ「そうですね…目の前で不法行為をされるのは…」
セリナ「良くないと思います…」
ウタハ「これを見てもそう言えるかな?」
(ピラッ)
ユウカ「なにこれ…請求書?」
セリナ「弾薬費、燃料代…傭兵への作戦報酬…普通の請求書ですね」
スズミ「…あれ、でも…これ…」
ヒフミ「桁が凄いことに…?!」
ユウカ「この一枚で900万クレジット…?!
どれだけ撃ったらそうなるのよ!!」
ウタハ「そこでこのロボットさ」
スズミ「これは…?」
ヒフミ(あっ…)
セリナ「先生に話を聞こうとしていた…?」
ハレ「シャーレもこのロボットに関わってるの?」
ウタハ「と、思ったんだけど…先生は教えてくれなかった
シャーレは強い権力がある、なのに先生の裁量一つでなんでもできてしまう、そんな組織がこのロボットに手を出す理由はなんだろう?」
ユウカ「それは…」
スズミ「…調べる必要がある…という事ですね」
ハレ「アテナ3号が先生のことを捕捉したよ、この人で合ってるよね?」
パソコンの画面にアテナ3号のカメラが表示される
ウタハ「間違いないね」
ユウカ「…ガラの悪い子達と話してるみたいだけど」
ヒフミ「絡まれているのでしょうか…?」
スズミ「それにしては…落ち着いた様子です」
─D.U.シラトリ自治区─
ウォルター「助かった」
スケバンA「良いってことよ、だが先生も意外とツウじゃねーの!」
ウォルター「他に詳しい知り合いはいるか」
スケバンA「んー…そういやゲヘナにそういうのに詳しい奴らがいたような…えーと…なんだっけ?
悪いけど思い出せねーかも!あとは自分で探してくれ!」
ウォルター「…そうか、感謝する」
──
ヒフミ「あ…離れていきますね」
スズミ「普通に談笑していただけ…?」
コタマ「ハレ、次から会話音声を拾えますか?」
ハレ「わかった、次話してる時はもう少し接近してみるね」
ユウカ「…一体何をしようとしてるのかしら」
ハレ「コタマ先輩の方はどう?」
コタマ「…シャーレのシステムは連邦生徒会の最高クラスのセキュリティの様ですね
少し時間がかかりますが…ヴェリタスで取り扱ったことのあるものなので問題はありません」
スズミ「ミレニアムは連邦生徒会のセキュリティも?」
ハレ「チヒロ先輩が監修した事がある程度だよ」
コタマ「おかげでかなり手こずってしまっていますが」
ハレ「…難しそう?」
コタマ「専用のネットワークなので、少しアクセスが難しいですが…登録されてない外部からの端末接続は拒絶されない様なので、USBを差し込んで直接バックドアを中に埋め込み、そこから入り口を……拒否…?
…なら、それをフェイクにして更に2つ同時にアクセスをかけ、バックドアの存在を……これも排除されますか」
ユウカ「何が起きてるのか全くわからないんだけど、無理なの?」
コタマ「……いいえ、システムの特徴はわかりました、バックドアの作成…というより、外部からの接続に対してのセキュリティが異様に強固です
スマホを有線接続して、スマホの信号を連邦生徒会の物に偽装すれば…接続できました、これでロックを解除して…」
スズミ「ログインできましたね」
コタマ「では…データを解析します」
ウタハ「一つ一つ見ていかないといけないし、時間がかかりそうだね」
ユウカ「ハレ、先生の方は?」
ハレ「ちょうど動きがあったよ」
ヒフミ「…この服は…ヴァルキューレの…?」
ハレ「そうだね、ヴァルキューレ警察学校の生徒みたい」
スズミ「…なんの話をしてるのか聞けますか?」
ハレ「接近するよ」
──
ウォルター「──、─…そうか、その辺りか」
フブキ「そうそう、だからここからだと…うーん…すぐに行ける場所でオススメはそれくらいかなー」
ウォルター「そうか」
──
ユウカ「なんの話をしてるのかしら…」
ハレ「…ただの道案内に見えるけど」
ウタハ「いや、実はすでにヴァルキューレとも密約を…」
ヒフミ「えぇっ!?」
ユウカ「…ウタハ先輩…実は遊んでませんか…?」
スズミ「…もう少し様子を見てみましょうか」
ハレ「ドーナッツショップに入っちゃったよ」
ユウカ「流石に店内までドローンを追いかけさせるのは目立つわよね…」
スズミ「これは、しばらく待機ですね…」
ハレ「うん、コタマ先輩、そっちはどう?」
コタマ「該当するものを見つけました」
ユウカ「これは…?」
ウタハ「設計図だ…あのロボットのものだね、間違いない」
ハレ「…LOADER…ローダー?名前かな…」
ユウカ「設計図が出て来たってことは…」
ウタハ「……黒、かな…」
コタマ「…少し待ってください、付随して色々なデータがあります……この番号は…?」
ウタハ「製造番号かな…C4…621…?」
コタマ「…これは…パーツの組み合わせのパターン…?
武器、コアブロック、脚部、腕部、頭部…なんでしょうか、この大量のデータは…」
ハレ「みんな、動きがあったよ」
ユウカ「どうしたの?」
ハレ「今度はゲヘナの子と話してるみたい」
──
ウォルター「…なるほどな、そういう部活もあるのか」
アカリ「はい、お礼をもらえるということでしたらご案内しますよ♪」
ウォルター「…どのくらいだ」
アカリ「そうですねぇ、初対面の方に頂くので多少控えめにして…5つほどお願いします
大丈夫ですか?」
ウォルター「……いいだろう」
──
ヒフミ「今度はケーキ屋さんに…というか、ここは…」
スズミ「知ってるんですか?」
ヒフミ「はい!まんまるなペロロ様のモモフレンズコラボケーキが発売されてるお店です!
それがすごくかわいくって…!」
ハレ「お店の評価は…4.6、かなりの人気店だね」
スズミ「…あれ、そう言えば今の人…ゲヘナのテロリストじゃ…」
ユウカ「えっ」
ハレ「うーん…先生は甘い物が好きなの?」
ヒフミ「確かに、ドーナッツにケーキに…」
スズミ「野暮用って、スイーツショップ巡りですか…?」
ユウカ「ちょっと似合わないわね…」
──
アカリ「ごちそうさまでした!美味しかったです♪」
ウォルター「…そうか」
ウォルター(…5切れだと思っていたが、まさかホールケーキを5つ食べるとは…)
ザッ
アカリ「あら?」
ウォルター「……」
イオリ「…奇遇だな、何してるんだ、先生?」
ウォルター「
イオリ「ふーん…で、なんで美食研究会の奴と一緒にいるんだ?」
ウォルター「…たまたま会った、この辺りに詳しいというので
アカリ「ケーキもご馳走になりました♪」
イオリ「ふーん…美食研も今日はまだ悪いことはしてないみたいだけど」
イオリがライフルを構える
アカリ「…あら?」
イオリ「今までの分のツケ、きっちり払ってもらうぞ!」
アカリ「うーん…これは、ちょっと…先生、お先に失礼しますね」
ウォルター「ああ…」
イオリ「あ!コラ!待て!」
ウォルター「ここで戦われても困る、銀鏡…お前も少し肩の力を抜け」
イオリ「ああ…もう!うるさい!………はぁ…もういいや」
ウォルター「…風紀委員の腕章はどうした…今日は非番か」
イオリ「…だったら何?」
ウォルター「ならば休みにまで働く必要はないはずだ、それにここはゲヘナの自治区外だ」
イオリ「それは…そうだけど、私も買い物に来ただけだし……
っていうか!アビドスの時といい、先生はやっぱりテロリストの味方なんだろ!?」
ウォルター「…あの時は俺もお前も仕事だった、割り切れ」
イオリ「じゃあ今は」
ウォルター「お前が仕事ではないのなら、今はいいだろう」
イオリ「……まあ、それは確かに…でも、捕まえられる時に捕まえないと」
ウォルター「
イオリ「なっ…何!?急に…!」
ウォルター(……)
ウォルター「銀鏡、この後予定はあるか」
イオリ「な、無いけど…」
ウォルター「シャーレに来い、前のことの詫びだ」
イオリ「なっ!?ななっ…!?」
イオリ(前のことって…つまりシャーレで…あ、脚を舐め…!?)
ウォルター「無理にとは言わないが」
イオリ「…ど、どうしてもっていうなら…」
ウォルター(ここで借りを返したことにしないと後が面倒だ)
ウォルター「…頼む」
──
ハレ「先生がシャーレに戻るみたい」
ユウカ「どのくらいかかる?」
ハレ「この距離なら早ければ1時間かな」
セリナ「私、受付に居ますね」
ウタハ「任せたよ、じゃあ今のうちにこの設計図の解析を終わらせよう」
コタマ「いえ、待ってください……一部が黒塗りになっていますが設計図の“送信履歴”があります」
ウタハ「送信?…まさかカイザーに?」
コタマ「いえ、このアドレスは…ヴァルキューレやミレニアムのものですね」
ユウカ「え?ミレニアム?」
ウタハ「…私たちエンジニア部では無いね、ヴェリタスは?」
コタマ「私達のアドレスとも違います…これは、セミナーのものです」
ユウカ「えっ嘘!?」
ユウカがパソコンを覗き込む
ユウカ「……セミナーの共通アドレスだけど、こんなメールは知らないわ」
コタマ「送信文は……これは」
ウタハ「…「シャーレより伝達する、キヴォトスの外の兵器が持ち込まれたことを確認した
それにあたって該当兵器に関するデータを送信する、対策の準備を進められたい」…これは…」
コタマ「警告文のようですね、他の記載を見ると、外部への漏洩をしないようにという文面もありますし
どうやら先生はこの兵器を使うよりは…」
スズミ「それぞれで対応する準備をして欲しい…という事でしょうか?」
ユウカ「各自治区で、この兵器を…?でも、トリニティやゲヘナには送られてないし、他にも自治をしてる学校はたくさん…」
ヒフミ「あ、あの…そのことでしたら実は…ティーパーティと…あと、ゲヘナ風紀委員会もこの資料を持っているそうなんです」
ハレ「3大自治区とヴァルキューレにだけ、先に伝えておきたかったのかな」
ウタハ「……どうやら、私はまた誤解をしていたみたいだね」
コタマ「…さて、急いで痕跡を消さないといけませんね」
ハレ「アクセスログをいじるには連邦生徒会のサーバーからじゃ無いとダメかも」
ウタハ「…いや、そのままにしておいて欲しい」
コタマ「いいのですか?」
ウタハ「先生が兵器についての情報を隠していたのは悪用をされる事を避けるためだと思う
そしてその情報を知っている人を限定する為だろうから…」
コタマ「…そういう事なら、わかりました」
ウタハ「誠心誠意、謝ってみるよ」
─シャーレ─
セリナ「あ、先生…と…?」
イオリ「……」
ウォルター「異常はないか」
セリナ「は、はい」
ウォルター「…受付の仕事は終わりだ、まだ時間は問題ないか」
セリナ「はい…何かありますか?」
ウォルター「ついて来い」
イオリ(…何するつもりだ…?…ま、まさか、トリニティの生徒の前で…!?)
─シャーレ・待機室─
ウタハ「やあ先生、おかえり」
コタマ「……」
ハレ「お邪魔してます」
ウォルター「…増えたな」
ユウカ「ええと…その」
ウタハ「私が呼んだんだ、先生
…実は一つ謝らないといけない事があるんだけど、いいかな」
ウォルター「……なんだ」
ウタハ「先生のパソコンをハッキングして隠していたデータを見たんだ、隠していた兵器のデータも」
ウォルター「…そうか」
ウタハ「…ごめんなさい」
ウォルター「……」
コタマ「すみません先生、シャーレのパソコンをハッキングしたのは私です、なので、罰を受ける必要があるのでしたら…」
ウォルター「……」
イオリ「せ、先生?」
セリナ「あの…」
ウォルター「…白石」
ウタハ「……」
ウォルター「あの兵器は、キヴォトスで作れる物か」
ウタハ「…可能だとは思うよ、黒塗りで隠された部分を埋めるのは簡単ではないだろうけど」
ウォルター「そうか」
ウォルター「…どう思った、ACの図面を見て」
ウタハ「……」
ウタハが俯き、考え込む
ウタハ「すごく興味が湧いたと同時に、危険なものだと思ったよ、これは…誰かを傷つける為の物だ」
ウォルター「…そうだ、ACは…人が人を殺す為の兵器だ」
ウタハ「……」
ウォルター「このキヴォトスにそれが持ち込まれた、俺はそれを認めない、ACはキヴォトスには似つかわしくない」
ウォルター(ならば、ルビコンから持ち込まれた兵器を全て排除するのが…俺の意味なのか)
ウタハ「…私なら、それを作れてしまうよ」
ウォルター「…作るのか?」
ウタハ「まさか、そんなつもりはないけど…その可能性を、放っておくのかと思って」
ウォルター「…なら問題はない…それはお前の選ぶ事だ」
ウタハ「…私が?」
ウォルター「遅かれ早かれ、いつか知る事だった…気にするな」
ウタハ「……」
ウォルター「それと…人気の菓子を買って来た、阿慈谷、飲み物と器を頼む」
ヒフミ「…ドーナッツにケーキ…い、いいんですか?特にこのケーキのお店高いんじゃ…」
ウォルター「…気にするな」
ユウカ「…あの!連邦生徒会は随分とお金に余裕があるみたいですけど、こういう使い方を経費で落とすのはどうかと思いますよ!?」
ウォルター「経費では落としていない、俺の金だ」
ユウカ「…自分のお小遣いからって事でしたら、文句は言いませんけど…そういう消費の仕方は自分のためにならないので、気をつけてください」
ウォルター「…考えておく」
─シャーレ・食堂─
ハレ「甘い…脳が喜んでる…」
コタマ「良いんでしょうか、私達まで」
ユウカ「良いんじゃない?食べないのは勿体無いし…」
ヒフミ「はぅ…このペロロ様のまんまるケーキ…かわいいです…」
イオリ(…うぅ…確かに美味しいけど、トリニティとミレニアムに囲まれてて凄く気まずい…)
イオリ(っていうか!なんで私はシャーレでケーキ食べてるんだ!?…もしかしてこれがお詫びって事…!?)
スズミ(…大丈夫でしょうか、あのゲヘナの方…)
セリナ「紅茶のおかわりいかがですか?」
イオリ「えぁっ!?…だ、大丈夫…ありがとう」
セリナ「調子が悪そうでしたけど、体調が優れない時はいつでも教えてくださいね」
イオリ「う、うん…?」
──
ウタハ「……」
目の前に置かれたケーキをフォークで崩す
ウタハ(きっとこれは、金銭を必要としない私たちへの報酬なんだろうけど)
なんらかの形で報酬を渡したかったという事だろう
それが優しさなのか、それとも私達と一線を引く為なのかはわからないけど
ウタハ(…AC…か…)
キヴォトスに似つかわしくない兵器だと先生は言った
ウタハ(……私には、先生にも似つかわしくないと思う)
いつか…きっと
私は、あの兵器を作るだろう
ただ、それは…人殺しの為の兵器としてではなく、別の何かとして
キヴォトスに、先生に似つかわしいものとして、それを作りたいと思った