燃え残り   作:名無し

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冒険の始まり

─ミレニアムサイエンススクール─

 

ウォルター「…ここが、キヴォトスの最先端技術を扱う学園か」

 

…これほど発展した都市を見るのは久しぶりだ

それこそ…“アイビスの火”前の……

 

ウォルター「……」

 

顔を手で(ぬぐ)い、目的地を探す

 

ここに来た理由は新たな依頼だ

依頼主は…

 

ウォルター「…呼び出された座標はこの辺りのはずだが

……ゲーム開発部…どこに居る」

 

…今回の依頼主は、ミレニアムのゲーム開発部という部活だ

生徒会からの廃部命令をなんとか撤回したい、そういう内容だが…

 

依頼主が見当たらなくては仕事にならない

 

ウォルター「……まあいい」

 

と言っても、今回はそのやるべき仕事から逃げた先がこの仕事だ

 

(ヴヴッ…ヴヴッ…)

 

携帯からモモトークの通知を伝える振動がなる

送り主は今日シャーレに呼び出したうちの誰だろうか

それとも連邦生徒会の役員からだろうか

 

ウォルター(…どちらでも変わらないか…)

 

急ぎの案件が入ったという名目でオフィスのすべてのデスクを埋め尽くす書類の山を後回しにして出て来た

…決して溜め込んでいたわけではない

アビドスの一件以来、連邦生徒会から回される書類が増えたのが悪いのだ

おかげでD.U.地区の治安を取り戻すよりも先に書類を片付ける事を迫られ、雇った生徒たちの主業務もそちらに切り替わってしまった

 

大半は「露出徘徊する変態が出た」だの「限定商品の販売列を吹き飛ばして割り込みされた」だの、くだらない物ばかり

要するに連邦生徒会への嫌がらせとも取れる内容ばかりだ

 

大半は捨ててもいいような書類、大半は計算や入力の後、連邦生徒会へ返送する書類

その他は請求書や経費の申請書類、それに埋もれてシャーレへの依頼もある

 

…どうでもいい、急に目の前に降って湧いた“役目”

与えられた“仕事”、“やるべき事”

 

自分への意味は見つけたが、それに手を伸ばす時間も余裕もない

そんな中で書類を整理する日々が1週間も続くとどうしても嫌気がさしてくる

 

ウォルター(ルビコンに比べれば随分と平和だが…)

 

ルビコンにいた頃とは別ベクトルのストレスが溜まる

…だから息抜きがてらに急ぎの案件を手に取り、外へと出た

 

ウォルター「ゲーム開発部が見つからなければ、それはそれで問題はない…」

 

元々少し息をつく為の理由づけだ、この散歩が終わって帰れば、また仕事がある

 

ウォルター「……こっちは…部活棟か…ここか?」

 

建物に近づくと、中から喧嘩のような騒ぎ声が響いてくる

 

ウォルター(…なんだ?)

 

???「あー!もう!また後ろからナイフ!?

銃のゲームなのに!!!あーもう…こんなの!!」

 

???「あ!お姉ちゃん!壊れるからコード引き抜くのはダメだって!」

 

???「えーい!!」

 

(ガシャーン!)

 

???「プラステ投げたの!?」

 

何かがガラスを突き破り…

 

ウォルター(…なんだ…マズイ、こっちに…!)

 

(ゴンッ)

 

ウォルター「ゔっ…」

 

(バタン)

 

???「あ、ごめん……誰かに…いや、アレ…シャーレの先生っぽい人に当たったかも」

 

???「じゃあプラステは生きてる!?」

 

???「そっちの心配…?…まあ、とりあえず行ってみようか、手遅れになる前に…」

 

─ゲーム開発部─

 

ウォルター「…ここは…」

 

モモイ「あ!目が覚めた!…コホン、気がついたか?君は運がいいな!」

 

ミドリ「急に変な喋り方しないで、先生に怒られるよ?」

 

モモイ「へへっ、嬉しくってつい…先生、大丈夫?このまま目を覚ましてくれないかと思ったよ」

 

ミドリ「本当に良かったです、お姉ちゃんが窓の外に投げたプライステーションが偶然とはいえ先生に命中した時は…

このまま私まで殺人事件の犯人にされてしまうのかと思いました…

お姉ちゃんの代わりに謝ります、ごめんなさい先生」

 

モモイ「ふーんだ、そういうミドリだって「先生にあたったかも」って言ったら第一声は「プラステは生きてる!?」だったじゃん」

 

ミドリ「それは…私たちの財産リスト第1号だし、思わず…

と、とにかく!先生はあのシャーレから来たんですよね?」

 

ウォルター「…ああ」

 

モモイ「やっぱり!じゃあ私たちが送った手紙読んでくれたんだ!もし読んでくれたとしても本当に来てくれるとは思ってなかった!」

 

…ゲーム開発部からの依頼の文面はこうだ

「ゲーム開発部は今、存続の危機に陥っています

生徒会からの廃部命令により、破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手はあなただけです

勇者よ、どうか私たちを助けてください!」

 

生徒会から出された命令に抗うことは基本的には不可能だが…

調べてみればどうやら廃部を避ける手段は比較的簡単だった

ゲーム開発部は実績がなく、部員も規定数を満たしていない、それが廃部の理由だ

「部員を増やす」か「実績を残す」…前者はそこまで難しいものでは無いはずだ

 

ウォルター「……あの依頼には俺にも多少の利がある」

 

シャーレに山積みになった書類の息抜きと…もう一つ

ミレニアムの生徒会、“セミナー”へ探りを入れる機会だ

 

シャーレにはセミナー所属の早瀬(はやせ)が来るようになったが、向こうもシャーレを監視するのが目的だろう

こちらもセミナーの事を知っておくべきだ

 

ウォルター「それで、お前達が…」

 

モモイ「私はゲーム開発部、シナリオライターの才羽(さいば)モモイ!こっちは…」

 

ミドリ「妹のミドリです、イラストレーターでゲームのビジュアル全般の担当です」

 

モモイ「あと、今ここにはいないけど企画周りを担当してる部長のユズを含めて…

私たちがミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部だよ!」

 

ウォルター「…3人か」

 

…確か、認められるのは4人以上から…もしくはミレニアムに相応しい実績を残す事

 

ウォルター(後1人を見つけるのが現実的な案だが)

 

モモイ「よしっ!じゃあ早速“廃墟”に行こっか!」

 

ウォルター「廃墟?」

 

ミドリ「お姉ちゃん、それじゃ何にも伝わらないよ…」

 

モモイ「あ、そっか…じゃあ最初から説明すると…

私たちは今までずっと16ビットのゲームとかを作ってたんだけど、ある日急に生徒会から襲撃されたの!

一昨日には四天王の1人であるユウカから最後通牒を突きつけられて…」

 

ウォルター「それが廃部命令か」

 

調べた内容と若干違うようだが…

 

???「ちょっと改ざんしすぎじゃない?」

 

モモイ「この声は!?」

 

ウォルター「…早瀬か」

 

…想定外の事態だ

 

モモイ「出たな!生徒会四天王の1人!“冷酷な算術使い”、会計のユウカ!」

 

ユウカ「勝手に変な異名をつけて人をモンスターみたいに呼ばないでくれる?失礼だから

それよりも、先生…こんな形でお会いするとは思いませんでした」

 

ウォルター「……」

 

貼り付けたような笑顔のユウカからつい顔を背ける

…当然だ、今日シャーレで書類仕事をしているはずのユウカがここにいるのは非常に良く無い事態だ

 

ユウカ「まあ、先生とは色々と話したいことがありますが、それは置いておいて…モモイ

本当に諦めが悪いわね、廃部を食い止めるためにシャーレを巻き込むなんて」

 

ユウカ「でもそんな事しても無駄よ、例え連邦生徒会のシャーレでも、いえ、あの連邦生徒会長が戻ってきたとしても!

部活の運営については(おおむ)ね各学校の生徒会に(ゆだ)ねられてるんだから

ゲーム開発部の廃部はもう決まったことなの、もう覆せない」

 

モモイ「そ、そんなことない!自分で言ってたでしょ、部員人数が規定に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果を出せれば…」

 

ユウカ「…それができれば良し、もしできなかったら廃部、部費はもちろん部室も没収、ええ、私はちゃんと言ったわよ

あなた達は部員数も足りない上に部活としての成果を証明できるようなものもないまま、もう何ヶ月も経ってるんだから…

廃部になってもなにも異議は無いはずだけど?」

 

モモイ「異議あり!ものすごくあり!私たちだって全力で部活動してる!

だからあの、なんだっけ…上場閣僚(じょうじょうかくりょう)?とかいうのがあってもいいはず!」

 

ユウカ「情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)って言いたいの…?

それより、今なんて言ったかしら?全力で活動している…?

笑わせないで!校内に変になものを建てたと思ったら、まるでカジノみたいに装飾してギャンブル大会を始めるし

レトロゲームを探すとか言いながら古代史研究会を襲撃するし…」

 

ユウカ「おかしいでしょう!?“全力”かもしれないけど部活動としては間違ってるわよ!

さらにこれだけ各所に迷惑をかけておいて、よく毎度の如く部費なんか請求できるわね!?

真っ当な言い訳くらいしてみたらどうなの!」

 

モモイ「と、時には結果よりも心意気を評価してあげることも必要…」

 

ユウカ「負け犬の言い訳なんか聞きたくない」

 

モモイ「聞きたいのか聞きたく無いのかどっちなの!?」

 

ユウカ「無意味な言い訳は聞きたく無いってこと…ミレニアムでは結果が全てよ」

 

モモイ「け、結果ならあるもん!私たちもゲームを開発してる!」

 

ミドリ「そ、そうだよ!「テイルズ・サガ・クロニクル」はちゃんと受賞、も…」

 

ユウカ「…そうね、確かに受賞…してたわね…」

 

ウォルター「…実績があるのなら廃部にはならない筈だが」

 

ユウカ「その反応を見るに、先生はご存知ないんですね…

…あのゲームは、ゲームそのものもさることながら、レビューが大変印象的でした、いくつか読み上げます

「私がやってきたゲーム史上、ダントツで『絶望的な』RPG、いや、シナリオの内容とかじゃなくて、ゲームとしての完成度が」

「このゲームになにが足りないのかを数え出したらキリがないけど、1番足りてないのは…まあ、『正気』だろうね」

「このゲームをプレイした後だと『デッドクリームゾーン』はもしかして名作の部類に入るんじゃ…って思っちゃうわ」

…とまあ、こんな感じです」

 

モモイ「わ、私たちのゲームはインターネットの悪意なんかには屈しな…」

 

ユウカ「たとえユーザー数が無限にいたとしても、たくさんの評価が収束すればそれは真実に一番近い結果よ」

 

ウォルター「…だが、受賞した」

 

ユウカ「ええ、今年のクソゲーランキング1位を」

 

モモイ「うっ…」

 

ウォルター「…1位ならば充分だと思うが」

 

モモイ「……」

 

ミドリ「……」

 

…2人の顔が歪んだような気がした

 

ユウカ「…とにかく、あなた達の部活が活動を続けても学校の名誉に傷をつけるだけ

それにその分の部費を他に回せばきちんと意義のある活動をしている生徒達のためにもなる…

だから、もし自分達の活動にも意義があるのだと主張したいのなら…証明して見せなさい」

 

モモイ「証明…」

 

ユウカ「キチンとした功績や成果を証明すれば廃部を撤回するって何回も言ってるでしょ」

 

ミドリ「…何かの大会で受賞するとか…」

 

ユウカ「そう、たとえばスポーツならインターハイに出るとか、エンジニア部なら発明品を公表するとか、そういう類のこと」

 

モモイ「でもうちの野球部弱いじゃん…」

 

ユウカ「アレは人数も足りてるから…というか、ゲーム開発部ならそういうコンテストも色々あるでしょ?

…まあ、あなた達の能力じゃコンテストに出してどうにかなるとは思えないけど」

 

ミドリ「ぐっ…」

 

ユウカ「どうせならお互い楽な形で済ませましょう?今すぐ部室を空けて、この辺のガラクタも捨てて」

 

モモイ「…ガラクタじゃない!」

 

ユウカ「じゃあなんなのよ」

 

モモイ「それは…」

 

モモイ「……っ…」

 

モモイ「…わかった、結果で示す」

 

ユウカ「…へえ?」

 

モモイ「そのための準備だって、もうできてるんだから!」

 

ユウカ「え?」

 

ミドリ「そうなの!?」

 

モモイ「なんでミドリまで驚いてるの…?

とにかく、私たちには切り札がある、その切り札を使って、ミレニアムプライスに私たちのゲーム…TSC2…テイルズ・サガ・クロニクル2を出すんだから!」

 

ウォルター「ミレニアムプライス?」

 

モモイ「ミレニアム中の部活が各々の成果を競い合う、ミレニアムでも最大級のコンテスト、ここで受賞すれば誰も文句は言えない…!」

 

ユウカ「まあ、そうだけど…受賞できると思ってるの?

モモイ、あなたが言ってるのは運動部がインターハイに出るとか、そんなレベルじゃなくて、高校球児がいきなりメジャーリーグに出るみたいな、雲を掴むような話よ」

 

ユウカ「……まあ良いわ、なんでだろ、私もちょっと楽しみになってきたし…じゃあ、そこまでは待ってあげる

今からミレニアムプレイスまで2週間…この短い時間でどんな結果が出せるのか、楽しみにしてるわ」

 

ウォルター「2週間か」

 

ユウカ「…先生にも話したい事はありますけど、今邪魔をして言い訳にされても困りますし

次はもっと違った、落ち着いた状況でゆっくりとお話をしましょう、それではまた、先生」

 

ウォルター「…ああ、埋め合わせはする」

 

ユウカ「期待してます」

 

(バタン)

 

ミドリ「お姉ちゃん…どっちも確率は低いだろうけど…今から私たちがゲームを作るより、部員を募集する方がまだ良いんじゃないの?」

 

モモイ「それならこの1ヶ月、散々やってみたでしょ…結局、誰も入ってくれなかったし…

「VRですら古いのに…なにがレトロ風ゲームだよ、ぶぷぷ!ーって馬鹿にされるのはもううんざり!」

 

ウォルター(…そうか、部員募集は既に望み薄だったか)

 

モモイ「ユウカの卑怯者!私たちみたいなオタクは友達が少ないってことを利用するなんて!許さない!」

 

ミドリ「いや、それはユウカじゃなくて100%私たちの自業自得だと思うけど」

 

モモイ「とにかく、これ以上は部員を増やそうとしても明るい未来は見えない、それにまだ他に希望がある」

 

ミドリ「そう言えば、さっきの切り札って?」

 

モモイ「それはもちろん、先生のことだよ」

 

ウォルター「…俺はゲームについては…」

 

モモイ「そうじゃなくて、私達の目的はさっきあった廃墟にあるの

廃墟っていうのはミレニアム近郊にある謎の領域、元々は連邦生徒会が出入りを制限してたところなんだけど

「危険な地域だから」って理由で制限されてて、なにがどう危険なのか誰も知らない

誰も入ったことがないのか、そもそも入れないのか、それとも戻ってきた人が誰もいないのか、それすらもよくわからない

…そういう謎に包まれた場所があるの」

 

ウォルター「なぜそんなところにわざわざ行こうとする」

 

モモイ「良いゲームが作りたいから!

私は、証明したいの…たとえ、今の私たちのレベルは「今年のクソゲーランキング1位」に過ぎないとしても…

私が大好きな、私を幸せにしてくれたこのゲーム達が…決してガラクタじゃない、大事な宝物なんだってことを!!」

 

ミドリ「…お姉ちゃん」

 

モモイ「そのためには、どうにか廃墟に入って“アレ”を見つけないと…」

 

ウォルター「…アレ?」

 

モモイ「ふっふっふっ…先生、G.Bibleって…知ってる?」

 

 

─ミレニアム近郊・廃墟─

 

モモイ「……」

 

ミドリ「…ねえ、お姉ちゃん、一体いつまでこうしてればいいの…?」

 

モモイ「静かに、あ、先生、もう少し頭下げて」

 

ウォルター「……」

 

すぐ側を機械的な足音が通り抜ける

 

モモイ「……ひゃー、もう行ったかな?

よし、じゃあ行こう!」

 

ミドリ「よし、じゃ無い!一体ここは何!?

あんな謎のロボットがうじゃうじゃ居るし!」

 

モモイ「だーかーら、廃墟だって!

出入り禁止の区域だからある程度の期間は予測してたけど」

 

ミドリ「あのロボット、いったい何なんだろう…?

ううん、それより、あんなのがたくさん徘徊してるこの廃墟って…」

 

モモイ「うーん、私もヴェリタスからちょっと聞いただけでわからない事だらけだけど

ここは本来厳しく出入りが制限されてたのは言ったよね?」

 

ウォルター「…ああ」

 

モモイ「ここの出入りを制限して存在を隠そうとしてたのは…連邦生徒会長だったの」

 

ミドリ「ああ、最近居なくなったって話題の…?」

 

モモイ「そう、あの人がいなくなってからは連邦生徒会の部隊も撤収して、そのまま放置されてるみたい

だからこうしてヴェリタスの助けを得て入り込めたわけだけど…ヒマリ先輩曰く、「キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所なのかもしれない」…って」

 

ウォルター(ヴェリタス…音瀬(おとせ)小鈎(おまがり)の部活だったか)

 

ミドリ「ヒマリ先輩って…あの車椅子の?いつもRPGの賢者みたいに「私は何でも知ってますよ」って感じだしてるヒマリ先輩が「かもしれない」って言葉を使うのは珍しいね…

それくらい、未知の世界なんだ…でも、何でこんなところにG.Bibleが…あれ、ちょっと待って!?」

 

ミドリ「まさかとは思うけど、お姉ちゃんが「ここにG.Bibleがある」って言ったのは「キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる」って聞いたから?!

それだけの理由でここに!?」

 

モモイ「それだけじゃないよ、ヴェリタスにG.Bibleの捜索を依頼したら、座標を教えてくれたの

最後にG.Bibleの稼働が確認された座標をね…

その座標が指してたのは、“普通の地図には存在しない場所”だった」

 

ミドリ「…だから、廃墟が怪しい…」

 

ウォルター「…そもそもG.Bibleとはなんだ?」

 

モモイ「そういえば、それも説明してなかったね

簡単にいうと昔のミレニアム、ううん、昔のキヴォトスにはね…伝説的なゲームクリエイターが居たの

その人がミレニアム在学中に作ったのが、G.Bible

詳しい内容はわかんないんだけど、その中には、“最高のゲームを作れる秘密の方法”が入っているんだって!」

 

ミドリ「それ、どこかのゲームクリエイター学校の広告ってオチじゃない?」

 

モモイ「違うよ!G.Bibleはあるって!読めば最高のゲームを作れるようになる“ゲームの聖書”は絶対にある!

そのG.Bibleを読めば最高のゲーム…テイルズ・サガ・クロニクル2が作れるはず!」

 

ウォルター(…藁にもすがる思いか…だが…)

 

モモイ「ヴェリタスからもらったこの座標に向かっていけば、そこにきっとG.Bibleが…!」

 

ウォルター「…待て、才羽、狙われている」

 

モモイ「へ?」

 

ミドリ「うわっ!?ロボットがこっちに…!」

 

モモイ「…近くの建物まで逃げろー!!」

 

──

 

モモイ「…あれ、あのロボット達、建物に入ってから近づいてこない…?

さっきまで恐ろしい勢いで迫ってきてたのに…何でかわからないけどとにかくラッキ〜!」

 

ミドリ「うわあああん!もういや!いったいなんでこんな所でロボット達に追われなきゃいけないの!?」

 

モモイ「ミドリ落ち着いて、生きてたらいつかいい日が来るよ」

 

ミドリ「今日の話をしてるの!そもそもお姉ちゃんのせいでしょ!?」

 

モモイ「まあまあ…それより先生は大丈夫?」

 

ウォルター「…無事だ…なんとかな…」

 

ミドリ「建物が近かったから良かったけど、帰りは先生の脚じゃ追いつかれちゃうんじゃ…」

 

モモイ「そうなったら2人で抱えていけばいいよ!」

 

ミドリ「私は荷物がたくさんあるから無理だよ…」

 

モモイ「そういえば、なんでそんなに大荷物なの?リュックサックなんてしょってくる必要あった?」

 

ミドリ「え、いや…」

 

モモイ「ちょっと先生持ってて、えーと…

お菓子にゲーム機はいいとしても着替えは絶対要らないじゃん…!?」

 

ミドリ「そ、それより、ここは何する所なんだろう?」

 

モモイ「え?うーん…さあ…あのロボット達が実は連邦生徒会の兵力だったとか考えてみたけど、とりあえず色々みて回らないと…」

 

謎の声『接近を確認』

 

モモイ「えっ、な、なに!?」

 

ミドリ「建物全体に、声が響いてる?」

 

謎の声「対象の身元を確認します…才羽モモイ、資格がありません」

 

モモイ「え、え!?なんで私のこと知ってるの!?」

 

ウォルター「生体認証か…いや、だが何を…」

 

謎の声「対象の身元を確認します…才羽ミドリ、資格がありません」

 

ミドリ「私の事も…いったいどういう…?」

 

謎の声「対象の身元を確認します……ハンドラー・ウォルター先生……」

 

モモイ「あれ?」

 

謎の声「資格を確認しました、入室権限を付与します」

 

ミドリ「え?!」

 

モモイ「え、どういうこと!?先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」

 

ウォルター「…覚えはないが」

 

ミドリ「先生も困ってるし、これは…シャーレの権限…?」

 

謎の声「才羽モモイ、才羽ミドリの両名を先生の生徒として認定、同行者である生徒にも資格を与えます、承認しました

下部の扉を開きます」

 

ミドリ「……下部の扉?扉って、どこの…」

 

モモイ「下部って、もしかして…?」

 

ミドリ「まさか、さすがに違うでしょ…どう見てもただの床──」

 

(ガチャン)

 

ミドリ「ゆ、床がなくなっ…落ちるっ!?」

 

モモイ「うわわわっ!」

 

──

 

ミドリ「うーん…あれっ!?お姉ちゃん!先生!?」

 

モモイ「いやー…流石に死ぬかと思った…」

 

ミドリ「お姉ちゃん大丈夫?あれ、先生はいったいどこに…」

 

ウォルター「…ぐ…ぅ…」

 

ミドリ「ひゃあっ!?な、なっ、なんで!?どうして私たちの下にいるんですか!!?」

 

モモイ「どうしてって…落ちる時に先生が私たちを庇ってくれたからでしょ…ミドリ、早くどきなよ」

 

ミドリ「あっ、ご、ごめんなさい…びっくりして…その、先生に“そういう趣味”があるのかと…」

 

モモイ「いや、今の発言に対してもう一度謝るべきだよ…?

とにかく先生、大丈夫?脚とか…」

 

ウォルター「…問題ない…だが、すまん、カバンをクッションにしてしまった」

 

ミドリ「あ…いえ、先生を守れたなら良かったです…」

 

モモイ「うーん、そんなに深いところまで落ちてはないみたいだけど…ん?

……えっ!?」

 

ミドリ「どうしたの、お姉ちゃん?……えっ…あれって…」

 

ウォルター「……子供…」

 

…椅子に座ったまま、眠っている少女

なにも身に(まと)わず、ただ、眠っているだけの…

 

ウォルター(…これは、なんだ…?)

 

…この既視感は、なんだ

この場所を、この光景を俺は知っている

 

ウォルター(……)

 

モモイ「おーい…返事がない、ただのしかばねの様だ…」

 

ミドリ「不謹慎なネタ言わないで!それに…ねえ、見て…死体っていうか、この子、まるで電源が入ってないみたいな…」

 

モモイ「そう?確かに言われてみればなんだかマネキンっぽいね

どれどれ…」

 

(ぷにぷに)

 

モモイ「すごい、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ?ここに何か文字が書かれてる

AL-1S……アル、イズ……エー、エル、アイ、エス…?どう読むのかわからないけど、この子の名前?」

 

ウォルター(この文字の羅列……そうか、この既視感は…強化人間を買った時の…)

 

モモイ「……アリス?」

 

ミドリ「ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字なわけじゃなくて、AL-1Sじゃない?」

 

モモイ「え、そう?」

 

ミドリ「この子はいったい…それにこの場所、いったいなんなんだろう」

 

モモイ「この子に聞くのが早いんじゃない?」

 

ミドリ「起きて話してくれればいいんだけど、このままじゃ可哀想だし…とりあえず服でも着せてあげよっか」

 

ミドリがリュックサックから着替えの制服を取り出し、手際よく着せる

 

ウォルター(……似た光景だ、強化人間を買った時と…)

 

脳内の記憶と今の光景がどうしようもなく重なる

 

ミドリ「…よし、これで良いかな」

 

(ピピッ、ピピピッ)

 

ミドリ「ん?」

 

モモイ「何この音!」

 

ミドリ「警報音みたいだけど…もしかして近くにロボットが…」

 

モモイ「ううん……“この子”から聞こえた気がする」

 

ミドリ「え?ま、まさか…」

 

(状態の変化、及び接触許可対象を感知、休眠状態を解除します)

 

???「……」

 

少女が目を開く

 

ミドリ「目を覚ました!?」

 

???「……状況把握、難航…会話を試みます、説明をお願いできますか」

 

モモイ「え、えっ…説明?なんのこと?」

 

ミドリ「せ、説明が欲しいのはこっちの方!あなたは何者?ここは一体なんなの!?」

 

???「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認、データがありません」

 

ミドリ「ど、どういうこと…?いきなり攻撃したりしないよね…?」

 

???「肯定、接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」

 

モモイ「うわ、すごい!ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけど、こんなに私たちに似てるロボットなんて初めて!」

 

ウォルター(…いや、これはロボットというよりはもはや…)

 

ウォルター「…強化人間」

 

ミドリ「先生?」

 

ウォルター「…なんでもない…それよりも接触許可対象とはどういう意味だ」

 

???「回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

ミドリ「深層意識ってなんのこと?」

 

モモイ「うーん…工場の地下、全裸の女の子…記憶喪失…

あ!良いこと思いついちゃった!」

 

ミドリ「いや…今の言葉の羅列からは碌なことが思いつかないんだけど」

 

???「???」

 

ウォルター「どうするつもりだ…」

 

─ゲーム開発部─

 

???「???」

 

ミドリ「ねえ、ちょっと!?

この子を部室まで連れてきてどうするの!?」

 

モモイ「うっ、首しまってる、ギブ!死んじゃう、ギブ!

…コホッ…し、仕方ないじゃん、そもそもあんな危険な場所に放っておくわけにはいかないし…って」

 

???(もぐもぐ)

 

ミドリ「あ!?私のweeリモコンを口に入れないで!ペッして!ペッ!」

 

モモイ「やっぱり放っておけないでしょ…」

 

ミドリ「それは確かに…でも、今からでも連邦生徒会かヴァルキューレあたりに連絡したほうが良くない?」

 

モモイ「それはそうだけど、私たちのやるべきことが終わった後にね」

 

ミドリ「やるべきこと?」

 

モモイ「さて、まずは名前が必要だよね、“アリス”って呼ぼうかな」

 

???「本機の名称、“アリス”、確認お願いします」

 

ミドリ「ちょ、ちょっと待って!それお姉ちゃんが読み間違えた名前でしょ!?本当ならAL-1Sちゃんなんじゃ…先生!」

 

ウォルター「…好きにさせてやれ、本人が望む様にすれば良い」

 

モモイ「そうそう、それにそんなに長いと呼びにくいしさ…どう、アリス、気に入った?」

 

???「……」

 

???「…肯定(ニコッ)」

 

アリス「本機、アリス」

 

モモイ「あははっ!ほら、見たか!私のネーミングセンス!」

 

ミドリ「うーん、気に入ってるなら良いけど」

 

モモイ「さあ、それじゃ次のステップに進もうか!」

 

ミドリ「お姉ちゃん、いったい何を考えてるの…?子猫を拾ったとか、そういうレベルじゃないんだからね!?」

 

モモイ「ミドリこそよく考えてみてよ、そもそも私たちが危険を冒してまで、G.Bibleを探してた理由を」

 

ミドリ「それは、良いゲームを作って、部活を廃部にさせないためでしょ?」

 

モモイ「そう、1番大事なのはそれ、良いゲームも作りたいけど、まずは部活の維持が最優先、それで、その為には条件を満たせば良い」

 

モモイ「ミレニアムプライスで受賞を狙うのは、あくまで条件の一つに過ぎない…」

 

ミドリ「あくまでも何も、方法は実際一つしかないでしょ?お姉ちゃんが言ったんじゃん、これ以上“部員を増やす”のは無理──

あれ、まさか…この子をミレニアムの生徒に偽装してうちの部に入れようとしてるんじゃ…!?」

 

ウォルター「…なるほどな」

 

モモイ「アリス!!私たちの仲間になって!」

 

アリス(ガジガジ)

 

モモイ「ああっ!?私のゲームガールアドバンスSPは食べちゃダメ!8コア16スレッドカスタムCPUに8K解像度を誇るキヴォトス唯一の16bitゲーム機なんだよ!?」

 

ミドリ「ああもう…大丈夫なのかな…」

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