燃え残り   作:名無し

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はい、私はアリスです!

─ゲーム開発部─

 

ミドリ「うーん…やっぱり心配…

この子をうちの部員に偽装するなんて…本当に大丈夫?」

 

アリス「“大丈夫”の意味を確認……“状態が悪くなく問題が発生していない状況”のことと推定、肯定します」

 

ミドリ「…いやいや、肯定できないって!この口調じゃ絶対疑われるよ!

やめておこう!?これは無理だって!」

 

モモイ「今辞めるって選択肢の方が無理だよ!なんとしても、私たちのゲーム開発部を守らなきゃ…!

そうしないと、ユズの居場所が…寮に戻るわけにはいかないし…」

 

ミドリ「……そう、だったね」

 

ウォルター(…ユズ…そういえばまだ部長の姿を見ていない…

この状況にもなって姿を現さないのは、不自然だが)

 

──

 

モモイ「よし、服装もある程度整えたし、あとは武器と…学生登録をして学生証を手に入れなきゃ

学生証については私がなんとかするから、ミドリはユズと先生とでアリスに“話し方”を教えてあげて」

 

ミドリ「は、話し方?」

 

モモイ「今のままだとミドリが言った通り、疑われちゃうかも知れないから

ただでさえ「友達もいないあなたたちに、部員の募集なんてできるはずないでしょ」って言われちゃってるし

もし、何かの拍子にユウカから「本当にゲーム開発部に入ったのか」って聞かれたとして…」

 

──

 

アリス『肯定、あなたの質問に対し、アリスの回答を提示、私はゲーム開発部の部員』

 

──

 

モモイ「なんて言っちゃった日には全部台無しになりかねないよ…」

 

ミドリ「いや、それはそうだけど…はぁ……仕方ない、やれるだけやってみるよ」

 

モモイ「よし、じゃあ任せた!」

 

ウォルター(AIの教育か…いや、これはそう言うレベルの話ではないな)

 

ミドリ「…うーん」

 

アリス「???」

 

ミドリ「え、えっと……アリス…ちゃん?」

 

アリス「肯定、本機の名称、アリスです」

 

ミドリ「うん、じゃあアリスちゃんって呼ぶね

それにしても話し方かあ…よく考えると、どうやって習得するんだろう

普通は動画を見たり、周りの言葉を真似していくうちに自然に…って感じだと思うけど」

 

ウォルター(…確か、カーラが作ったAIはどうやって育てたものだったか…

対話型AI…だったか?)

 

ミドリ「…うーん、子供用の教育プログラムって、インターネットで無料で配られてるかな…」

 

アリス(キョロキョロ)

 

アリス「?」

 

ウォルター「待て、それは食べるな」

 

アリス「承認、正体不明の物体を取得し、確認を行います」

 

ミドリ「ん?…あっ、そ、それは……っ!?」

 

ウォルター「…これは、なんだ」

 

ミドリ「えっと…ちょっと恥ずかしいんですけど、実はそれ、私たちが作ったゲームで…まあ、すごく酷評されちゃったんですけど…

あ、そうだ!クソゲーランキングでは1位になっちゃったし、アリスちゃんがどう思うかはわからないけど……

アリスちゃん、私たちのゲームをやってみない…?

会話しながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも!」

 

アリス「…ここまでの言動の後、完璧には把握しかねます、しかし…

肯定、アリスはゲームがやってみたいです」

 

ミドリ「ほ、本当に!?ちょ、ちょっと待ってて、直ぐにセッティングするから!」

 

──

 

ミドリ「よし、準備完了!」

 

アリス「……」

 

アリスがコントローラーを握る

 

アリス「アリス、ゲームを開始します……」

 

──

 

ミドリ「タイトルからわかるかも知れないけど、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」

 

[コスモス世紀2354年、人類は劫火(こうか)の炎に包まれた…]

 

アリス「…?」

 

ウォルター(…キヴォトスの童話はハードだな…)

 

ミドリ「えっと、王道とはいっても色々な要素を混ぜてたりするんだけどね

トレンドそのままでもダメだけど、王道にこだわりすぎても古くなっちゃうから…」

 

アリス「……ボタンを押します」

 

[チュートリアルを開始します]

[まずはBボタンを押して、目の前の武器を装備してみてください]

 

アリス「Bボタン……」

 

(ポチッ)

(ドカーーン!!)

 

アリス「???」

 

〈GAME OVER〉

 

アリス「!?!?」

 

ウォルター「…押し間違いか?」

 

モモイ「あははははっ!

予想できる展開ほどつまらないものはないよね!ほんとはここで指示通りじゃなくてAボタンを押さなきゃいけないの!」

 

ミドリ「お姉ちゃん…?学生証もうできたの?」

 

モモイ「行ってきたけどもう遅い時間だったから誰もいなかったの、また明日行くよ」

 

ウォルター「…こんな時間か…俺は一度帰る」

 

モモイ「はーい、先生、明日もちゃんと来てね!」

 

ウォルター(……)

 

(ガチャッ…バタン)

 

ミドリ「それはさておき、今見てもこの部分は酷いと思う」

 

アリス「……も、もう一度始めます」

 

アリス「再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

 

モモイ「あっ、私それわかるかも!きっと「興味」とか「期待」とか、そういう感情だと思う!」

 

ミドリ「どう考えても「怒り」か「困惑」だと思うけど……」

 

[武器を装備しました]

 

アリス「装備しました…」

 

モモイ「お、いい感じ、そのまま進めばRPGの華である戦闘が……」

 

[エンカウントが発生しました!]

 

アリス「!?」

 

[野生のプニプニが現れた!]

 

アリス「緊張、高揚、興味」

 

モモイ「Aボタンを押して!今度は嘘じゃ無いから!」

 

アリス「Aボタン……「秘剣つばめ返し:敵に2回攻撃できる」…

行きます、プニプニに対して…秘剣!つばめ──」

 

[ッダーン!]

[攻撃が命中、即死しました]

 

〈GAME OVER〉

 

アリス「!?!?」

 

[プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力…ふっ]

 

モモイ「うーん、やっぱりプニプニが「ふっ」っていうのは不自然かな」

 

ミドリ「ツッコミどころはそこじゃ無いと思うけど」

 

アリス「思考停止、電算処理が追いつきません…」

 

ミドリ「あ、アリスちゃん?大丈夫?」

 

アリス「リブート、再開します

今度は銃の射程距離把握に努めながら、接近しすぎないようにプニプニを排除します」

 

モモイ「そう、まさにそれ!諦めずに繰り返し挑戦して、試行錯誤の末に答えを見つける!

これがレトロチックなゲームのロマンだよ!」

 

─2時間後…─

 

アリス「……電算処理系統、および意思表示システムに致命的なエラーが発生」

 

モモイ「頑張ってアリス、ここさえ乗り切れば待望のクライマックスだよ!」

 

ミドリ「うう…っ!

今のはどう考えても「草食系」って言葉が出てこないから、それを「植物人間」って書いたお姉ちゃんのせいでしょ!?

「ごめんなさい、私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかけることはできません」ってテキスト読んだ瞬間に、アリスちゃんが一瞬意識を失ってたじゃん!」

 

アリス「…質問、どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻で

さらにどうしてその妻のもとに、子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか…

いえ、そもそも「腹違いの友人」という表現はキヴォトスの辞書データに登録されていな──」

 

アリス「エラー発生、エラー発生!」

 

ミドリ「が、頑張ってアリスちゃん!クライマックスまでもう少しだから!」

 

アリス「……リブート…」

 

アリス「プロセスを回復……ふぅ…

これが、ゲーム………再開します」

 

ー1時間後─

 

アリス「こ、ろ、し、て…」

 

モモイ「すごいよアリス!開発者2人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」

 

ミドリ「そ、それもそうだけど…もしかして

本当にゲームをやればやるほど、アリスちゃんの喋り方のパターンがどんどん多彩になってきてる…!?」

 

アリス「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」

 

モモイ「うん、確かにそうかも…?」

 

ミドリ「ゲームからそのまま覚えたせいで、まだちょっと不自然かもだけど…

言葉を羅列してただけの時よりは、かなり良くなったと思う!

ところで……その…こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど…」

 

アリス「???」

 

モモイ&ミドリ「わ、私たちのゲーム、どうだった!?面白かった!?」

 

アリス「……」

 

アリス「……説明不可能」

 

モモイ「え、ええっ!?なんで!?」

 

アリス「……類似表現を検索…ロード中……」

 

ミドリ「も、もしかして悪口を探してる…?そんな事ないよね…!?」

 

アリス「面白さ……それは、明確に存在……」

 

モモイ「おおっ!」

 

アリス「プレイを進めれば進めるほど…まるで、別の世界を旅しているような…

夢を見ているような、そんな気分……もう一度……」

 

アリス「もう一度……」

 

アリス「……(ポロッ」

 

モモイ「ええっ!?」

 

ミドリ「あ、アリスちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

モモイ「決まってるじゃん!それぐらい、私たちのゲームが感動的だったって事でしょ!」

 

ミドリ「い、いくらなんでもそれは…というかこのゲームらギャグ寄りのRPGのはずだし…」

 

モモイ「ありがとうアリス!その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ!

あー、早くユズにも教えてあげたい…!」

 

???「…ちゃ、ちゃんと、全部見てた」

 

(ギギーッ)

 

部室の奥のロッカーが開き、誰かが出てくる

 

モモイ「え!?…ああ、ビックリした!」

 

ミドリ「あ、なんだ…そこにいたんだ」

 

アリス「……?」

 

ミドリ「ユズちゃん、あれだけ探しても見つからなかったのに、いつからロッカーにいたの?」

 

ユズ「み、みんなが廃墟から帰ってきたくらいから…」

 

ミドリ「だいぶ前じゃん!?その時からずっとロッカーの中にいたの?!

あ、もしかしてアリスちゃんと先生が怖かったから?

モモトークか何かで伝えてくれれば良かったのに、びっくりしたよ…」

 

モモイ「あ、アリスは初めてだよね、この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ」

 

ユズ「……」

 

(スッ)

 

アリス「?」

 

ユズ「えっと、あの、その……あ、あ、あ……」

 

アリス「あ…?」

 

ユズ「……ありがとう

ゲーム、面白いっていってくれて…もう一度やりたいって言ってくれて…

泣いてくれて……本当に、ありがとう」

 

アリス「???」

 

ユズ「面白いとか、もう一度とか…そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」

 

ミドリ「ユズちゃん……」

 

──

 

ユズ「とにかく、あらためまして…ゲーム開発部の部長、ユズです

この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん…これからよろしくね」

 

アリス「よろ、しく…?……理解…ユズが仲間になりました、パンパカパーン!

……合ってますか…?」

 

ユズ「あ、うん…だいたいそんな感じ…かな?

ふふっ、その様子だと、本当にわたしたちのゲームを楽しんでくれたんだね…

仲間が増えるのは、RPGの醍醐味(だいごみ)の一つだもんね

あ、もしRPGを面白いなって思ってくれたんなら…

わたしが、ほかにも面白いゲームを教えてあげる…」

 

モモイ「ちょっと待ったぁ!アリスにおススメするのは私が先!

良質なゲームをやればやるほど話し方も自然になって、私たちの計画の成功率も上がるんだし!

さあ、まずは「英雄神話」と「ファイナル・ファンタジア」と「アイズ・エターナル」と…」

 

ミドリ「何言ってるの、アリスちゃんはゲーム初心者だよ!?「ゼルナの伝説・夢見るアイランド」から始めるのが1番だって!」

 

ユズ「これだけは譲れない、次にやるべきは「ロマンシング物語」だよ

あ、でも第三弾だけはちょっと、個人的には、やらなくてもいいかなって…」

 

アリス「……??」

 

アリス「…………期待、再び、ゲームを始めます」

 

─2時間後─

 

(ピッピッピッピッピッ……)

 

モモイ「うわっ、アリス、読むスピード速くない…?会話が出力されるとほぼ同時に読み終わってるみたいな…」

 

ミドリ「アリスちゃん、次は「伝説のオークバトル」やろう!ターン制バトルの面白さを教えてあげる!」

 

アリス(コクリ)

 

アリス(ピッピッピッピッピッピッ…)

 

──

 

ミドリ(…zzZ)

 

モモイ「…ふにゃ」

 

アリス(ピッピッピッピッピッピッ…)

 

アリス(ピッピッピッピッピッピッ)

 

アリス「……クリア」

 

──

 

アリス(ピッピッピッピッピッピッ…)

 

アリス「……クリア」

 

──

 

(チュンチュン…)

 

ミドリ「うーーん……」

 

ミドリ「えっ、もう朝!?しまった、準備しなきゃ…!」

 

アリス「……ようやく気がついたか…

無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいいな」

 

ミドリ「え!?……あ、アリスちゃんか…調子はどう?色々と覚えられた?」

 

アリス「君の言葉を肯定しよう、必滅者よ」

 

ミドリ「な、何か(かたよ)ったセリフばっかり覚えてない…!?」

 

ユズ「ふぁ……みんな、おはよう……」

 

(ガチャッ)

 

モモイ「みんな、おはよう!先生と学生証を回収してきたよ!」

 

ウォルター「…お前がゲーム開発部の部長か」

 

ユズ「ぴっ!?」

 

ミドリ「ああぁ、ユズちゃん落ち着いて!先生は悪い人じゃないから!…多分」

 

モモイ「多分て…」

 

ユズ「あ…あの…えと…部長の花岡(はなおか)ユズです…」

 

ウォルター「…ハンドラー・ウォルターだ」

 

モモイ「おお!あのユズが自分から…!」

 

ユズ「…昨日見てて…怖い人じゃないって、わかったから…」

 

モモイ「良かった!あ、そうだ…はい、アリス」

 

アリス「……?

アリスは「正体不明の書類」を獲得した!」

 

モモイ「お、また口調が洗練されてるね,これは「学生証」だよ」

 

ミドリ「洗練っていうか、レトロゲームの会話そのものだけどね」

 

アリス「学生証…?」

 

モモイ「この学生証は、私たちの学校の生徒だっていう証明書

生徒名簿にもヴェリタスがハッキ…いや、登録してくれたから、もうアリスも正式に私たちの仲間だよ!」

 

アリス「仲間…なるほど、理解しました

パンパカパーン、アリスが“仲間”として合流しました!」

 

ウォルター「…天童(てんどう)…天童アリスか」

 

モモイ「そう!苗字は私が考えたんだ!」

 

ミドリ「ねえ、今「ハッキング」って言わなかった?」

 

モモイ「大丈夫大丈夫!さて、服装と学生、それに話し方!この辺は全部解決できたから…」

 

ウォルター(…話し方はまだ不十分にも感じるが)

 

モモイ「あとは……武器、だね」

 

ウォルター「武器が必要なのか」

 

モモイ「え?うん」

 

ミドリ「それは,必要ですよ,先生は持ち歩いていないんですか?」

 

ウォルター「……無いわけではないが」

 

モモイ「武器がない人なんて、街中を裸で練り歩くよりも珍しいんじゃない?」

 

ウォルター「…そんなにか」

 

ミドリ「まあ…そうですね」

 

ウォルター「……そんなにか…」

 

アリス「つまり、今のアリスは装備が何もない状態です!早急に武器を購入します!」

 

モモイ「よし、アリス、せっかくだし案内するよ

私たちの学校…ミレニアムを!」

 

アリス「案内…?」

 

モモイ「とりあえず、一番手っ取り早く、ちゃんとした武器を手に入れるなら…やっぱりエンジニア部かな」

 

アリス「エンジニア、部?」

 

ミドリ「機械を作ったり、修理したりする専門家たちのことをミレニアムでは「マイスター」って呼んでるんだけど

エンジニア部はそのマイスターがたくさん集まってる、ハードウェアに特化した部活なの」

 

モモイ「機械全般に精通してるのはもちろん、武器の修理とか改造なんかも担当してる部活だから

多分、使ってない武器とかが色々残ってるんじゃないかなって

というわけで、早速行ってみようか!」

 

─エンジニア部・作業室─

 

ウタハ「……なるほど、だいたい把握できたよ

新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい、と…

そういう事であれば、エンジニア部にきたのは素晴らしい選択だね」

 

ウタハ「ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ

そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある

そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ」

 

モモイ「やった!ありがとう、先輩!」

 

ウォルター「…随分と気前がいいな」

 

ウタハ「後輩の前では見栄を張るものさ…

それに、先生の前でもね…少しは良い子に見えるかな?」

 

ウォルター「…気にするなと言ったはずだ」

 

ウタハ「気にするものさ、マイスターは神経質だからね」

 

ウォルター「…そうか」

 

ヒビキ「やあ……みんなと同じ、一年のヒビキだよ

良ければ私が何かいいものを見繕(みつくろ)ってあげる…

これはどう?アリス」

 

モモイ「へえ、拳銃?」

 

ヒビキ「見た感じ、多分だけど…これまでにあまり戦闘経験はなさそうだから」

 

アリス「その言葉は否定します

アリスはこれまでに人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、三桁を超えるダンジョン探索を行ってきました

経験値はそれなりに豊富です」

 

ミドリ「ぁ…えっと…」

 

ヒビキ「それは、すごいね…

とにかく、銃器を使用した経験はあまりなさそう

そういう人にはやっぱり拳銃が良い…これはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない…

そういう意味でも、色々と初心者に優しいはず、それに、何よりも…この銃にはミレニアム史上、今まで存在しなかった機能が搭載されてる」

 

ヒビキが目を輝かせる

 

モモイ「な、何それ?」

 

ミドリ「何か聞く前からすごそう…一体どんな機能なの?」

 

ヒビキ「それはね……“Bluetooth”機能だよ」

 

モモイ「……えっ?」

 

ヒビキ「Bluetoothを通じて、音楽鑑賞やファイルの転送まで可能な拳銃…調べた限り、そんなものは今までに存在しなかった

…もちろん、スモモ機能も搭載、乗り場のICパネルにタッチして交通機関を利用することも出来る

それにNFC機能もついてるから、コンビニペイだって使えちゃう」

 

モモイ「す、すごいといえば、凄い気もするけど…

コンビニで「これで払う」って拳銃を突き出したらそれは強盗にしか見えないんじゃ…!?」

 

ミドリ「確かに…って、アリスちゃんはどこに…?

アリスちゃん、アリスちゃーん?」

 

ヒビキ「あ、あそこに居るよ」

 

アリス(じーっ……)

 

ウォルター(…あれは…)

 

アリス「…これは?」

 

コトリ「ふっふっふっ…お客さん、お目が高いですね」

 

アリス「え、えっと…?」

 

コトリ「説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供!エンジニア部のマイスター、コトリです!」

 

アリス「…?」

 

コトリ「あなたがアリスですね!ゲーム開発部4人目のメンバー!」

 

ミドリ「あ、コトリちゃん久しぶり、ところでアリスちゃんが見てるこの大きいのは何?

まるで…“大砲”みたいだけど」

 

ウォルター(あの銃口、バッテリーらしい部品やその周りに露出した配線…)

 

ウォルター「エネルギー兵器…か…?」

 

コトリ「良い質問ですね、ミドリ、これはエンジニア部の下半期の予算、その内の約70%近くをかけて作られた…

エンジニア部の野心作!

「宇宙戦艦搭載用レールガン」です!」

 

モモイ「宇宙戦艦、って…また何かとんでもないことを…」

 

ミドリ「前にも、確かにコールドスリープしようとして、「未来でまた会おう」とか言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」

 

ウタハ「…その「未来直行エクスプレス」なら、今でもよく使っているよ

まあ、冷蔵庫として、だけどね…食べ物をもっと先の未来まで送れるようになったから、失敗ではないさ」

 

モモイ「使い道の割に名前が大袈裟!?」

 

コトリ「話を戻しますと、エンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!

このレールガンはその最初の一歩です!大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器!

これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!!」

 

モモイ「かっこいい…聞いただけでワクワクしてくる!」

 

ウォルター「実弾兵器…リニアライフルのようなものか」

 

ウタハ「その認識で大丈夫だよ、そして付け加えておくと、あのデータの技術は一切関与していない、私たちのオリジナルさ」

 

ウォルター「…見れば分かる」

 

アレはルビコンでは悪目立ちするだろう

それほどに、見た目からその武器への期待や希望を感じられる

 

ミドリ「さすが!今回はうまく行ってるんだね!」

 

コトリ「ふっふっふっ、もちろんです!

…と言いたいところだったのですが、今は中断してまして…」

 

モモイ「ええっ!?なんで!?期待したのに!」

 

コトリ「いつものことながら、技術者たちの足を引っ張るのはいつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです…

このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら…」

 

モモイ「そんなの計画段階で分かることじゃん!どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃったの!?」

 

ウタハ「愚問だね、モモイ

……ビーム砲は、ロマンだからだよ」

 

ヒビキ(コクリ)

 

コトリ「その通りです!ビーム砲の魅力がわからないだなんて、全くこれだからモモイは」

 

モモイ「バカだ!頭いいのにバカの集団がいる!」

 

ウォルター「…ビーム砲がロマン、か…」

 

ウォルター(…間違いなく、あのデータにも目を通しているはずだが…その気は全くなさそうか)

 

ヒビキ「ちなみに、エンジニア部の情熱が注ぎ込まれたこの武器の正式名称は……」

 

コトリ「“光の剣:スーパーノヴァ”!」

 

ミドリ「また無駄に大袈裟な名前を…」

 

アリス「…!」

 

アリス「ひ、光の剣…!?」

 

モモイ「アリスの目が輝いてる!」

 

ミドリ「…確かに、勇者っぽい名前だけど…まさか…」

 

アリス「わぁ、うわぁ…!」

 

ミドリ「すごい興奮してる…!」

 

アリス「…これ、欲しいです」

 

ヒビキ「……え?」

 

アリス「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」

 

ウタハ「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど……」

 

コトリ「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ない相談です」

 

モモイ「なんで!?この部屋にあるものならなんでも持って行って良いって言ったじゃん!」

 

ヒビキ……それは、理由があって」

 

アリス「理由?

もしかして、私のレベルが足りてないから……装備可能レベルを教えてください!」

 

ウタハ「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね…もっと現実的な問題なんだ」

 

モモイ「お金かー…心配しないでアリス、私がミドリのプライステーションを売り払ってでも…」

 

ウタハ「…お金の問題でもないよ」

 

モモイ「現実にお金以上の問題なんてないでしょ!」

 

ウタハ「まあ、製作における予算という意味では、ある程度同意はするけれど…」

 

ウォルター「才羽(さいば)…これはあまりにも大きすぎる…」

 

ウタハ「そう、当然ながら重さもね…アリス1人では持てない、いわゆる重量過多さ」

 

コトリ「なんと、基本重量だけで140kg以上です!さらに光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」

 

アリス「……」

 

ウタハ「これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ

ありがとう、持っていけるのならば、本当にあげたいところなのだけど……」

 

アリス「……?……!」

 

アリス「汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」

 

ウタハ「ん?この子、また喋り方が…」

 

ミドリ「た、多分ですが、「本当なのか?」って言ってます!」

 

ウタハ「もちろん嘘は言ってないけど、それはつまり…アレを持ち上げるつもり、ということかい?」

 

アリス(こくり)

 

アリス(スッ……)

 

アリス「この武器を抜く者……

……此の地の覇者になるであろう!」

 

コトリ「ふふふっ、なるほど、意気込みは素晴らしいですね!」

 

(グッ)

 

アリス「ふっ…」

 

ヒビキ「無理は、しないほうがいいよ…クレーンでも使わないと持ち上がらな──」

 

アリス「…んんっ…!」

 

ウタハ「まさか」

 

コトリ「えぇぇっ!?」

 

(グググググッ──!)

 

アリス「…持ち上がりました!」

 

ヒビキ「嘘…信じられない…」

 

アリス「えっと、ボタンは…これがBボタンでしょうか?」

 

ヒビキ「ま、待って…!」

 

アリス「…っ、光よ!!!」

 

(ドカアアァァァァン!)

 

光の剣から放たれた砲撃は、エンジニア部の部室の天井とその更に上の屋根まで呆気なく貫いた

 

コトリ「あああああっ!わ、私たちの部室の天井がぁっ!?」

 

アリス「…すごいです

アリス、この武器を装備します」

 

コトリ「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その…!予算とか諸々の問題で、できれば他のでお願いしたく…!」

 

ウタハ「……いや、構わないさ、持って行ってくれ」

 

ミドリ「ウタハ先輩、良いんですか?」

 

ウタハ「ああ、どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね

ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように肩紐と取手の部分を作ってあげてくれ」

 

ヒビキ「わかった

…前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

モモイ「うわ、なんだかものすごい武器をもらっちゃったね!ありがとう!」

 

アリス「あ、ありがとうございます!」

 

アリスが満面の笑みを浮かべる

 

ウォルター(…分かってはいたが、笑えるのか…)

 

ウタハ「いや、お礼にはまだ早いさ」

 

モモイ「え?」

 

ウタハ「さて…ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボット、全部出してくれるかな」

 

ヒビキ「…ああ、アレ?うん」

 

ミドリ「えっと…ウタハ先輩?なんだか展開がおかしいような…」

 

モモイ「これってもしかしなくても…「そう簡単に武器は持って行かせない!」みたいなパターンじゃ…」

 

ウタハ「その通りさ

それを本当に持って行きたいのなら…」

 

コトリ「私たちを倒してからにしてください!」

 

アリス「!?」

 

モモイ「えええっ!そんな、ウタハ先輩どうして!?」

 

ミドリ「ぶ、武器一つのためにここまで…!?」

 

ウタハ「他の武器なら、喜んで渡しただろうけど…

その武器については、確認が必要かなと思ってね」

 

ミドリ「か、確認?」

 

ウタハ「いや……「資格」と呼んだほうが相応しいかな」

 

ミドリ「資格?それって…」

 

アリス「前方から何かが転がってきます!戦闘型ロボットと推定、敵性反応を確認…更に飛行型も…

来ます!!」

 

ミドリ「ああもう!!」

 

ウォルター(白石(しらいし)め………待て、あれは…)

 

ゴロゴロゴロ…ガチャッ

 

転がってきた円柱状のドローンがやや離れた位置に停止する

 

ミドリ「…飛行用ドローンが、転がってきた…?」

 

モモイ「飛行用じゃないんじゃない…?え?何これ…」

 

ガチャッ!ガチャガチャッ!

 

ウォルター「……トイボックスか」

 

ウタハ「ふむ…トイボックス、良い名前だね

先生の居たところにも似たようなドローンがあったとは思わなかったけど…」

 

ウォルター「…ああ、“笑える”兵器だ」

 

円柱状のドローンが武器を持った腕と脚を展開する

 

モモイ「な、何あれ…アルマジロみたいに丸まってたってこと?」

 

アリス「円柱状になり回転して高速移動、必要に応じて装備を展開、敵ドローンのパターンを認識しました」

 

ウタハ「さて、性能テストだ」

 

トイボックスが銃撃を始める

 

モモイ「あーもう!やるしかないじゃん!」

 

ミドリ「外の装甲は硬そうだけど、内側は多分…!」

 

アリス「内部装甲を狙います」

 

ダダダッ!ダンッ!ダダダッ!

 

ウタハ「やっぱり内側は脆いか、次はシールドを装備させてみようかな…」

 

ダダダダダダッ!

 

ヒビキ「レールガンのチャージがそろそろ溜まる…」

 

コトリ「衝撃が来ますよ!」

 

アリス「魔力充填完了!光よ!!」

 

ドッ!

 

モモイ「…うわ、すごい威力」

 

ミドリ「ドローンが消し飛んじゃった…」

 

アリス「これが、光の剣…!」

 

ウタハ(……)

 

ヒビキ「でも、ビーム砲の再チャージまでにはそこそこかかるから…

アリス、チャージが終わるまでは実弾を射出して戦ってね…」

 

アリス「わかりました」

 

──

 

ウタハ「素晴らしい」

 

コトリ「くっ、悔しいですが…これが結果ですね!

アリス、その「光の剣」はあらためて、あなたのものです!」

 

アリス「わぁ、わぁっ…!」

 

ミドリ「ふぅ、とりあえずよかった」

 

ヒビキ「それを使いこなせるなんて、本当にすごいね…

おいで、アリス、もう少し使い方を教えてあげる

それから取手ももう少し補強しないと…」

 

ウタハ「……先生」

 

ウォルター「……」

 

ウタハ「先生は、アリスのことをどれだけ理解しているのかな」

 

ウォルター「…才羽、少し外す」

 

ウタハ「先生とコーヒーをとって来るよ」

 

コトリ「わかりました!」

 

──

 

ウタハ「…最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体幹バランス

強度や出力はもちろん、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体…いや、機体と言うべきかな?

つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによって「自己修復」することを前提として作られた体……その目的は…」

 

ウォルター「…戦闘、だろうな」

 

ウタハ「先生、アリスはいったい…?」

 

ウォルター「……」

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