燃え残り 作:名無し
─ミレニアム・ゲーム開発部─
ウォルター「……
モモイ「C&Cの先輩達を見て、次はメイド物の潜入アクションゲームなんて面白いんじゃないかなって!」
モモイがスカートを両手で軽く持ち上げ、クルクルと回ってみせる
(ガチャッ)
アリス「こんにち…ひぃっ!?」
(ピューン)
(ガタッガタタッ)
モモイ「あはは、良い反応!」
ミドリ「何してるの、もう!アリスちゃんが完全に怯えきってるじゃん!
アリスちゃん、大丈夫?」
アリス「あ、アリス、しばらくメイド服は見たくありません!」
ミドリ「体の方はもう大丈夫だけど、心の方はもう少しかかりそうだね…」
ウォルター「…何があった?」
モモイ「あ!そう、先生が居ない間大変だったんだよ!C&Cに襲撃されて…」
ミドリ「アリスちゃんとネル先輩で…」
ウォルター「……あの直後に、か…?
疲労はかなり蓄積していたと思ったが…」
ミドリ「え?」
ウォルター「…
モモイ「…セミナーに行った、C&Cとの戦いで色々壊しちゃったから…」
ミドリ「鏡の時のこともあるし、流石に処分は避けられないかな…」
ウォルター「…そうか」
(ガチャ)
ユズ「あ…」
ミドリ「ユズちゃん、おかえり…どうだった?」
ユズ「あの…建物を壊しちゃった件について、セミナーに行ってきたんだけど…
幸いな事に部活動中の“事故”として処理してもらえたよ…!」
モモイ「嘘っ!?ユズそれどうやったの!もし部が存続したとしても、活動停止とか、弁償代として今後の部費ゼロとか、そのくらいは覚悟してたのに…!」
ユズ「わたしじゃなくて、C&Cの方が処理してくれたみたい…それと…
ネル先輩から、アリスちゃんと先生に伝言が…」
ユズ「アリスちゃんには、「また会おう」…って」
アリス「ひぃっ!?」
(ピューン…バタン!)
ミドリ「ああっ!アリスちゃん、ロッカーの中に入っちゃダメ!
ユズちゃんを見て変なこと覚えちゃったよ…」
ユズ「それから、先生には…「シミュレーター、また使えるようにしてくれ」……って」
ウォルター「……」
ユズ「先生が頭を抱えちゃった…」
ミドリ「まあ、それはそれとして…」
ミドリ「始まるよ、ミレニアムプライス」
モモイ「もし受賞したら、クラッカーでもならそっか」
ミドリ「もしダメだったら…すぐに荷造りしないとね
私たちはさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは……」
ユズ「……」
アリス「……」
モモイがテレビをつける
コトリ『これより、ミレニアムプライスを始めます!司会及び進行を担当するのは私、
今回は、これまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました
おそらくは生徒会の方針変更により、部活動維持のために“成果”が必要になった影響かと思われます!!』
ミドリ「……コトリちゃん達の方も無事だったみたいだね…」
ユズ「エンジニア部は元々、ミレニアムの中でもかなり功績が認められてる部活な事もあったし…
でも、ほんとによかった…」
ミドリ「うん、とろこで史上最多の応募数って…」
モモイ「それはちょっと、困るなぁ…」
ウォルター「どこも同じ考えか…」
コトリ『昨年の優勝作品である、セミナー書記の
その
ミドリ「それって遠回しな嫌味なんじゃ…」
コトリ『今回も、“歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れ”、“ミサイルが内蔵された護身用の傘”…』
コトリ『“ネクタイ型モバイルバッテリー”、“光学迷彩下着セット”、“ちょうど缶一個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫”…
そして!今キヴォトスのインターネット上でセンセーションを巻き起こしている、スマホでマルチプレイが楽しめるレトロ風ゲーム、“テイルズ・サガ・クロニクル2”などなど!』
コトリ『今回出品された3桁の応募作品のうち、栄光の座を手にするのはたった7作品!』
ユズ(ゴクッ…)
コトリ『それではまず7位から、受賞作品を発表します!』
コトリ『7位はエンジニア部、ウタハさんの“光学迷彩下着セット”です!
これは身につけてもその下の素肌が見えてしまうため、着ているのかそうでないのかわからないというエキセントリックな作品ですが…
露出症の患者さんが合法的に趣味生活を営めるようになるという点で、大変高い評価を……
その評価をした審査員がいったい誰なのか気になってしまいますね!
とにかく7位!!』
モモイ「ふぅー………まっ、私たちのゲームは7位にふさわしくないよね」
コトリ『そして6位!この製品は…』
アリス「……」
コトリ『5位は…!』
ミドリ「私たちの名前…呼ばれないね」
コトリ『次です!4位…!』
モモイ「ううぅっ!そろそろお願い!」
コトリ「さあ、ここからはベスト3です!3位は…!」
ミドリ「も、もう心臓がもたない!」
ユズ「お願い…お願い……!」
コトリ『僅差で2位を受賞したのは…!』
アリス「……」
アリス「お願いします、私たちの名前を…!」
モモイ「くっ、2位でもない…!
っていうことは…!」
ミドリ「……!」
コトリ『最後に!今回のミレニアムプライスで、最高の栄誉を受賞した作品です!』
アリス「ドキドキ…」
コトリ『その1位は……!』
ミドリ「うぅ……っ!」
(………)
コトリ『CMの後で!!』
アリス「うっ…」
(ガシャン、ガコン)
モモイ「アリス!」
アリス「充電完了、いつでも撃てます!」
ウォルター「落ち着け…」
ミドリ「気持ちはわかる!気持ちはわかるけど、授賞式会場もこの画面も撃っちゃダメ……!」
モモイ「うう、もう焦らさないでほしい…」
──
コトリ『さあ!それでは発表します!』
コトリ『待望の1位は…新素材開発部──』
(ダンダンダンッ!)
ミドリ「きゃあっ!ほんとにディスプレイを撃ってどうするの!?」
モモイ「どうせ全部持っていかれちゃうんだし!もう関係ない!!
うえぇぇん!今度こそ終わりだぁぁぁぁ!!」
ウォルター(…依頼は、失敗か…)
ユズ「うぅ……結局、こうなっちゃうなんて……」
ミドリ「落ち着いて…でも、お姉ちゃん…」
モモイ「…みんなわかってるよ!全部が否定されたわけじゃない、へこたれる必要なんてないって…
ネット上の評価も悪くなかったし、クソゲーランキング1位のあの時から、ちゃんと成長した
これからも、きっと成長していける…次こそはもっといい結果を出して、今より立派な大きい部室だって……でも…」
ミドリ「…うん……ここを追い出されたら、ユズちゃんとアリスちゃんは……」
ユズ「…心配しないで、ミドリ
わたし、寮に戻る」
ミドリ「えっ?」
ユズ「もうわたしのことを、クソゲー開発者って呼ぶ人はいないと思う、ううん、もし仮に居たとしても、大丈夫
今のわたしには…みんながいるから」
ユズ「先生も…手伝ってくれてありがとうございました
先生がこの部室に来てくれてから、わたしたちは大きく変わることができました
ただ、アリスちゃんは……」
ウォルター「……
アリス「宛…?ミドリ…」
ミドリ「アリスちゃん……ごめんね」
アリス「…いえ…先生」
ウォルター「…お前が構わないのなら、問題はない」
アリス「先生のことは信じられますから…」
アリス「ですが…もう……」
アリス「もう、みんなとは……一緒に、いられないんですね…」
ミドリ「っ!!…うっ、ごめんね……ごめんね、アリスちゃん…!」私、毎日シャーレに行くから!本当に、絶対に毎日行く!
どこに行っても!一緒にゲームを作ろう!」
モモイ「うううう…!
やっ、やっぱり嫌!先生!やっぱりアリスを連れていっちゃダメ!!」
モモイ「わ、私の部屋に連れて行く!ベッドも一緒に使おう!ごはんも2人で分けて食べるから!」
ミドリ「わ、私の分もあげる!」
アリス「モモイ…ミドリ…」
ユズ「……2人とも、先生を困らせないであげて…
それに、もしそのことがバレたら…」
ウォルター(…セミナーに直談判を…いや、厳しいか、だが
…なんとか、居場所を残せないものか…)
(ガチャッ)
ユウカ「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!」
モモイ「ひいっ!もうユウカが!」
ミドリ「ちょ、ちょっと待って!そんなすぐになんて…!」
モモイ「悪魔め!生徒会に人の心はないわけ!?」
ユウカ「おめでとうっ!」
ミドリ「……?」
モモイ「…え?」
ユズ「…え、えっ……?」
アリス「……?」
ウォルター「……」
ユウカ「え、何この反応…?結果、見てなかったの?」
モモイ「結果…?」
ミドリ「私たち、7位以内に入れなくて…」
ユウカ「…それはそうだけど、あー…なるほどね…今も放送中なんだから、ちゃんと見てみなさいよ」
ミドリ「お姉ちゃんがモニターを吹き飛ばしちゃって…」
ユウカ「本当に何をしてるのよ…ほら、見てみて、私もスマホで見てて、途中から走ってきたの」
審査員『ミレニアムプライスはこれまで、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、“実用性”を軸に据えて受賞を行ってきました
これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています
しかし今回の作品の中には、新しい角度から“実用性”を感じさせてくれたものがありました、とある“ゲーム”が実際に、懐かしい過去をありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです』
審査員『よって、私たちはこの度、異例の選択をする事にしました
今回は“特別賞”を設けます、その受賞作品は…ゲーム開発部の“テイルズ・サガ・クロニクル2”です』
モモイ「えぇっ!?嘘っ!?」
ミドリ「何が起きてるの…?」
審査員『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えて行く展開
一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観、と、最初は困惑の連続でしたが……
新しい世界を旅して、ひとつひとつ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く
そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います』
審査員『プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました
そう言った点を評価して、この作品に…』
審査員『今回、ミレニアムプライス“特別賞”を授与します』
ミドリ「え……あ…?」
ユウカ「本当におめでとう!その、実は私もプレイしてみたの
決して手放しに面白かったとは言えないけれど、良いゲームを遊んだ後の、あの独特な感覚が味わえた…」
(バンッ)
マキ「モモ、ミド!おめでとう!あたしも“TSC2”やってみたよ!すっごい面白かった!今ネット上でも大騒ぎだよ!
ヴェリタスの調べだと、有名アイドルの名前より、“TSC2”の検索数の方が多くなってるってさ!」
ミドリ「ほ、ほんとに…?」
アリス「確認しました、3時間前にアップした“テイルズ・サガ・クロニクル2”は、先ほどまでダウンロード7705回、合計1372個のコメントがついていましたが
ミレニアムプライスの発表後、約26秒間で1万ダウンロードを突破しました」
モモイ「!?」
アリス「コメントも約500個追加、言葉のニュアンスからして、否定的・疑惑のコメントが242個、肯定的・期待のコメントが191個
残りは不明、もしくは評価を保留しているコメントです」
ミドリ「え、あれ…?そ、そしたら私たち…結局ダメってこと!?」
ユズ「ううん、そんなことないよ」
ミドリ「ユズちゃん…?」
ユズ「……」
ユズ「……見て、今同率で、1番多く共感をもらってる、ベストコメント…」
〈chicken:実際にプレイするかどうか、最初は散々迷いました…でも今はこう思ってます、このゲームに出会えて、よかったです〉
〈Kotoha0507:これまでミレニアムに対して、偏見を持ってしまっていました
冷静さと合理性しかないというミレニアムの生徒達への偏見は、今回のミレニアムプライスと、この“テイルズ・サガ・クロニクル2”を通じて完全になくなったと断言できます〉
ミドリ「……!」
モモイ「えっと……っていうことは…廃部にはならないんだよね!?」
ユウカ「ええ、そうよ、あ、でもあくまで「臨時の猶予」だから
正式な受賞ではないし、生徒会としてはまた来学期まで…ゲーム開発部の部室の没収および廃部を「保留」する事にしたから」
ユウカ「えっと、それから……」
ユウカ「…あの……」
モモイ「ん?」
ユウカ「……ご、ごめんなさい
ここにあるゲーム機のこと、ガラクタって言って…」
ユウカ「あなたたちのおかげで思い出したわ、小さい頃に遊んでた、色んなゲームのことを
久しぶりにあの頃の……新しい世界で旅をする楽しさを感じられた」
ユウカ「……ありがとう、それじゃあ、部室の延長申請とか、部費の受取処理とか必要だから、落ち着いたら生徒会室にきてね、じゃ、また後で!」
ミドリ「じゃ、じゃあ……!?」
ユズ「うん……!」
モモイ「や……」
モモイ「やったああぁぁぁ!!」
ミドリ「よかった……!」
ユズ「やった……嬉しい…!」
アリス「???」
アリス「え、えっと……?」
ミドリ「アリスちゃん!私たち、特別賞を受賞したんだよ!
この場所も、私たちの部室のまま!」
アリス「え、えっと、つまり……
アリスはこれからも……みんなと一緒にいて、良いのですか……?」
モモイ ミドリ「「うんっ!!」」
ユズ「3人とも、これからも、よろしくね…!」
アリス「……」
アリス「私も……私も、嬉しいです」
ミドリ「アリスちゃん!」
モモイ「私たちっ!」
ユズ「これからも、ずっと一緒だよ!」
アリス「……はい!」
アリス「これからも、よろしくお願いします…!」
モモイ「あ!待って!……ユウカは「延期」って言ってたよね…?」
ミドリ「あ…そっか…?」
ユズ「って、ことは…」
ウォルター「……どうした」
アリス「!アリス、理解しました!
先生も、一緒に廃部を防ぐためにこれからも頑張りましょう!」
ウォルター「…ああ」
アリス「それでは、まずは先生にテイルズ・サガ・クロニクル2をプレイしてもらいましょう!」
ミドリ「じゃあ、私のスマホで…!」
モモイ「とりあえず、お祝い会!」
ユズ「それよりも、壊しちゃったモニターを買い替えないと…」
──
──
[データ復旧率98.00%]
[……]
[システム作動…]
[準備完了]
[プログラムをセット………]
[Divi:Sion……]
[……]
[AL-1S……いえ……ア リ ス……私の…]
[私の、大事な…………!@#$%$^&*(!@$!!]