燃え残り   作:名無し

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補習授業部、スタート!

─トリニティ ・補習授業部─

 

コハル「もう嫌っ!!

こんなことやってらんない!わかんない!つまんない!めんどくさい!!

それもこれも、全部先生のせい!!」

 

ウォルター「…俺は…」

 

ハナコ「もう、コハルちゃん…そんな無茶苦茶なことを言ったら、先生が困ってしまうでしょう?

あくまで先生は私たちを助けるために来てくださってるんですし……

そもそも、勉強がわからないのも試験に落ちたのも、先生ではなくコハルちゃん自身のせいで…」

 

コハル「うっ…!!

わ、私は正義実現委員会の一員だから!それで、授業に出られないことが多くて……そう!そのせいなの!」

 

アズサ「それは他の正義実現委員会メンバーも同じだ、でもここに来てるのはコハルだけ」

 

コハル「っ……」

 

ハナコ「なるほど、つまりアズサちゃんが言おうとしてるのは、ただただコハルちゃんがおバカさんだからですよ、ということであってますか?」

 

アズサ「まあ、それも(あなが)ち間違ってはいない、仕方ないものは仕方ない

人生は往々にして虚しいものだ」

 

ハナコ「確かに人生は苦痛の連続ですからね…そういう事もあります」

 

ウォルター「……」

 

コハル「ああもう、うるさいなぁっ!?

そんなこといったらアンタ達もみんな一緒じゃん!

私がバカならここにいる全員がバカでしょバーカ!!!」

 

ヒフミ「あはは……え、えっと、それは…その…」

 

コハル「な、何も間違ってないでしょ?バカだからここにいるんでしょ!?

あんたも!あんたも!!あんたも!!!」

 

コハルが3人を順々に指差し、そして…

 

コハル「あんたもっ!!!!」

 

ウォルター(……)

 

ヒフミ「あう…こ、コハルちゃん、ちょっと落ち着いて…」

 

コハル「落ち着いてなんていられないわよ!

みんな仲良く退学になりそうな、こんな状況で…!」

 

コハル「もし退学になったら…せ、正義実現委員会のメンバーじゃ、なくなっちゃう…う、うぅ…」

 

アズサ「もちろん私も、退学になるつもりはない…何をしてでも、たとえ惨めな思いをしてでも乗り越えてみせる」

 

ハナコ「まあまた、退学になったからと言って何もかもが終わりというわけではありませんから、気楽に行きましょう

むしろ……」

 

ヒフミ「あ、あのっ!!!」

 

アズサ「……」

 

コハル「……」

 

ハナコ「……」

 

ヒフミ「あ、えっと、その…こうして集まっているのは、そもそも退学せずに済むようにする為ですし…

とりあえずその、今はみんなで知恵を寄せ合って、何かいい方法を探さないと…

そうしないと、一週間後には本当に仲良く全員退学、なんてことに…」

 

ハナコ「「知恵を寄せ合う」……なるほど、悪くないのですが、あまりグッとくる感じではありませんね

もう少しこう、何か…ここは例えば、そうですね……

「弱くて敏感な部分を寄せ合う」、という表現でいかがでしょう?」

 

アズサ「?」

 

コハル「い、いきなり何言ってんの!?下ネタはダメ!禁止!死刑!!

び、敏感な部分って、何をどう寄せ合おうっていうわけ!?」

 

ハナコ「ああ、ちょっとわかりにくかったですか?では、実際にやってみましょうか

もう少しこう、脚を開いていただいて…」

 

ハナコがニコニコと笑みを浮かべ和ながらコハルに近づく

 

コハル「…え?えっ!?」

 

コハル「や、やめて!近づかないで!知らないしわかりたくもないしまだ早いからっ!!」

 

ハナコ「えいっ♡」

 

ハナコがコハルを捕まえ…

 

コハル「や、やめっ…!やめてぇっ!たっ、助けて先生…!」

 

ウォルター「……」

 

思わずため息をつく

その間にもハナコの手はコハルの体を這い回り…

 

コハル「わっ、私が悪かったです!先輩相手にタメ口ですみませんでした!もう許して!

やめてっ!それはまだ嫌ぁーーーー!!!!」

 

ウォルター「浦和(うらわ)…」

 

ハナコ「大丈夫です、一線は越えませんから♡」

 

ウォルター「…ダメだ、やめておけ」

 

ハナコ「……」

 

ハナコ「…はーい」

 

不満を全面に押し出した返事と共にコハルが解放される

 

アズサ「なるほど、ああいう制圧術もあるのか

白兵戦で使えそうだ……勉強になった…ただ、無駄な動作が多い気がするな…

私ならあと2点歩前の段階で関節をきめてる、先生に止められる前に終わらせられる」

 

ヒフミ「……」

 

泣きそうな顔のヒフミと目が合う

 

ヒフミ「せ、先生ぇ…」

 

ウォルター「……俺も、努力はする…」

 

ヒフミ「よ、よろしくお願いします……

このままだと、本当に……私たちみんな、退学に…」

 

(ことの発端は、数週間前に(さかのぼ)る……)

 

─トリニティ・テラス─

 

(カツ…コッ…カツ…コッ)

 

ティーパーティーの生徒に案内され、大きな扉の前に立たされる

ゆっくりと開かれた扉の先は、トリニティの学園内を見渡せるテラス

そしてその中央には大きなテーブルに所狭しと軽食やケーキが並べられていた

 

ウォルター(…2人…か、3人だと聞いていたが)

 

席に着いていた2人がこちらを向く

 

ウォルター「…お初にお目にかかる、シャーレのハンドラー・ウォルターだ」

 

ナギサ「こんにちは、ウォルター先生…あら」

 

ミカ「あれ?どこかで会ったことある?」

 

お茶会をしていた2人の生徒には、なんとなく見覚えはあった

 

ウォルター「…書店で会った」

 

ナギサ「…その節はどうも、おかげで友人に本を渡せました」

 

ナギサが座ったまま深く頭を下げる

 

ウォルター(……?)

 

ナギサ「ああ、挨拶が遅れてしまいましたね…ティーパーティーのホスト、桐藤(きりふじ)ナギサと申します、それから…」

 

もう1人の少女が軽く頭を下げる

 

ナギサ「同じくティーパーティーよメンバー、聖園(みその)ミカさんです」

 

ウォルター(…やはり、聞いていた話と違う…)

 

ナギサ「あらためまして、私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです」

 

ミカ「へー、これが噂の先生かー、あんまり私たちと変わらない感じなんだね

なるほどー、ふーん…うん、私は結構良いと思う!!ナギちゃん的にはどう?」

 

ナギサ「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ

愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

 

ミカ「まあ、確かに…先生、ごめんね?

まあとりあえず、これからよろしくってことで!」

 

ウォルター「…こちらこそ、よろしく頼む」

 

ナギサ「……」

 

ミカ「…ふふっ」

 

ナギサ「……トリニティの外の方が、このティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです

普段は、トリニティの一般生徒たちも簡単には招待されないような席でして…」

 

ウォルター「…その様な場へのお招き、感謝する」

 

ミカ「ねえ、ナギちゃんちょっといやらしいんじゃなーい?恩着せがましい感じー!」

 

ナギサ「……」

 

ナギサ「……失礼しました、先生…そういった意図はなかったのですが……

それはさておき、ミカさん?」

 

ミカ「あー…ごめん、大人しくしてるね、できるだけ」

 

ナギサ「……では、あらためて」

 

ナギサ「こうして先生をお招きしたのは、少々お願いしたいことがありまして」

 

ウォルター(…概要は聞いてはいる)

 

ミカ「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!?

もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの?ちょっとした小粋な雑談とかは?

天気がいいですねとか、昨日は何を食べたのですか、とか

そういうのは挟まないの?」

 

ミカ「ほら、ティーパーティーって、基本的に社交界なんだし?」

 

ナギサ「……」

 

ミカ「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー!きちんとしないと!」

 

ナギサ「ミカさん、そういったことはあなたがホストになった際に追及してください

今は一応私がホストですので、私の方法に従ってくださいな」

 

ミカ「……」

 

ナギサ「……」

 

2人がにこやかに笑顔を向け合う

 

ウォルター「……」

 

ナギサ「まあ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではないことは確かですね

……そうですね、ミカさんのいう通り、少し話の方向を変えましょうか」

 

何を話そうかという少しの沈黙が流れる

 

ウォルター「…あまり、キヴォトスのシステムに詳しくはないが…トリニティの生徒会長は、複数人が?」

 

ミカ「おお!先生の方から空気を読んでくれた!ほら、ナギちゃん見た!?これが大人の話術だよ!自然な会話への誘導!」

 

ナギサ「……はい、(おっしゃ)る通り、私達がトリニティ総合学園の生徒会長たちです

「生徒会長たち」というのは耳慣れない言葉かも知れませんね…最初からご説明しますと、トリニティの生徒会長は代々複数人で担っているものなのです」

 

ミカ「あれ、ナギちゃん無視?もしかして無視かなー?おーい?」

 

ナギサ「昔……“トリニティ総合学園”が生まれる前、各分派の代表達が紛争を解決するために“ティーパーティー”を開いた事から、この歴史は始まりました」

 

ミカ「え、ひどっ……くすん、私ちょっと傷ついた……」

 

…ナギサが一瞬眉を(ひそ)める

 

ナギサ「パテル、フィリウス、サンクトゥス……それらの三つの学園の代表を筆頭にティーパーティーを開き、和解への流れが生み出されたのです」

 

ミカ「ナギちゃんが本当に無視した……嫌がらせだぁ……

ひどくない?私たち一応十年来の幼馴染だよ?こんな事今までに……結構あったかもだけど……」

 

ナギサの目元がヒクヒクと痙攣し、笑顔が一瞬引き攣る

 

ナギサ「……ふぅ」

 

一呼吸おき、元の笑顔をこちらに向けてくるが…

 

ウォルター(目が笑っていない…)

 

ナギサ「……その後から、トリニティの生徒会はティーパーティーという通称で呼ばれるようになり、各派閥の代表が順番に“ホスト”を──」

 

ナギサ「ああもう五月蝿(うるさ)いですね!?」

 

ミカ「ひえっ……」

 

ナギサ「今、私が説明をしているんですよ!?」

 

ナギサ「それなのにさっきからずっと!」

 

ナギサ「横でぶつぶつぶつぶつと……!」

 

ナギサ「どうしても黙れないのでしたら、その小さな口に……」

 

ナギサ「ロールケーキをぶち込みますよっ!?」

 

ミカ「……」

 

ナギサ「……」

 

ウォルター「……」

 

ナギサ「……あら」

 

ナギサ「……私ったら、何という言葉遣いを……

……失礼しました、先生…ミカさんも」

 

ミカ「いやー、怖い怖い……」

 

ウォルター(…なかなか本題に入らないな)

 

──

 

ナギサ「……そろそろ本題に入りましょうか

私達が先生にお願いしたいのは、簡単な事です」

 

ミカ「簡単だけど、重要な事だよ」

 

ナギサ「…補習授業部の顧問になっていただけませんか?」

 

ウォルター「…補習授業部、そういう名前か」

 

ナギサ「はい、つまり、落第の危機に(おちい)っている生徒達を救っていただきたいのです

“部”という形ではありますが、今回は顧問というより“担任の先生”と言った方がいいかもしれませんね」

 

ナギサ「トリニティ総合学園は、昔からキヴォトスにおいて“文武両道”を(かか)げる、歴史と伝統が息づく学園です

それなのにあろうことか、よりにもよってこの時期に、成績の振るわない方がなんと4名もいらっしゃいまして…」

 

ミカ「私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか…

“エデン条約”の件で今はバタバタしててね」

 

ミカ「あの子達の件もなんとか解決しないといけないんだけど、人手も時間も足りなくって…

その時にちょうど見つけたの!新聞に載ってた“シャーレ”の活躍っぷりを!」

 

ウォルター「…活躍…?」

 

ミカ「シャーレってなんでも屋さんみたいな感じなんでしょ?

買い出しの代わりとか、生徒の送迎、お悩み相談まで、八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍!

この“シャーレ”になら、きっと面倒ごとを任せられそうだなって!」

 

ウォルター(…身に覚えは、あるが…)

 

ナギサ「…面倒ごと、なんて言ってはいけませんよ、ミカさん」

 

ミカ「ま、まあでも、ある意味本当のことでもあるし…」

 

ミカ「それに“先生”なんでしょ?

今はみんなBDで学習する時代だし、学校の職員とか教授ならまだしも、“先生”って概念は珍しいんだよね」

 

ミカ「先の道を生きてると書いて“先生”…つまり、“導いてくれる存在”ってことだよね?」

 

ミカ「まあ、尊敬の対象、あるいは生きる指針としてみんなに手を差し伸べ、導く…“補習授業部”の顧問として、これはピッタリだなって思って!」

 

ウォルター「…なるほど」

 

ミカ「?」

 

ナギサ「噂では、“尊敬”という言葉が合うかどうかについては意見が割れているようですが…」

 

ミカ「あー、そうだったね、報告書によって全然違うっていうか…

まあ、これは先生の名誉のために何も言わないでおくね」

 

ウォルター(……銀行強盗は、バレていない…セミナー襲撃の件か?)

 

ミカ「とにかく!今はちょっと忙しいこともあって、ぜひ先生に、この子達を引き受けてほしいの!」

 

ナギサ「この補習授業部自体、常設されているわけではなく、特殊な事態に応じて創設し、救済が必要な生徒たちを加入させるものです

少々特殊な形ではありますが、急ぎということもあり、シャーレの超法規的な権限をお借りしつつ…と言った形で、ですね」

 

ウォルター「承知している」

 

ナギサ「色々とややこしいですが、本質はあくまで、“成績の振るわない生徒たちを救済すること”にあります

だからこそ、こういった特殊な形での創設が許されたわけですが…」

 

ナギサ「いかがでしょう、先生?助けが必要な生徒達に、手を差し伸べていただけませんか?」

 

ウォルター「ああ、了解した」

 

ミカ「やったー!ありがとう先生!」

 

ナギサ「……」

 

ナギサ「ありがとうございます、では、こちらを」

 

差し出された名簿を受け取り、目を通す

 

ナギサ「そちらの方々が対象です」

 

ミカ「つまりトリニティのやっか──」

 

ナギサ「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん

こう言いましょうか、トリニティにおける「愛が必要な生徒達」」

 

ミカ「まあ呼び方はなんでもいいけどねー」

 

ウォルター「……」

 

ミカ「ん?何か気になる子でもいた?先生」

 

ウォルター「…いや」

 

ウォルター(…何をしている…阿慈谷(あじたに)…)

 

ナギサ「詳しい内容については、また追ってご連絡いたします

他に気になる点はございませんか?」

 

ウォルター「…いくつかある、まずエデン条約についてだ」

 

ミカ「……」

 

ナギサ「……」

 

ミカ「うーん、なんて言えばいいのかなぁ」

 

ナギサ「その説明にはなかなか時間がかかってしまいますので、また後日お話しします

シャーレの先生なら問題ないですが、一応それなりに内部機密も多いので…」

 

ナギサ「それに、補習授業部の件とはそれほど関係のないことですから」

 

ウォルター「……そうか」

 

ウォルター「では、ティーパーティのもう1人の生徒会長は」

 

ミカ「……」

 

ナギサ「…それは」

 

ミカ「セイアちゃんは今、トリニティにいないの、入院中で……」

 

ナギサ「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが…そう言った事情で不在のため、私がホストを務めているところです」

 

ミカ「元々、ティーパーティーのホストは、順番でやるものだからね」

 

ウォルター「そうか、お見舞い申し上げる…」

 

ナギサ「他に何か?」

 

ウォルター「いや、充分だ…失礼する」

 

ナギサ「承知いたしました、また何かあれば聞いてください」

 

ナギサ「では準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形できていただくことにできればと

先生のご協力に感謝します、これで一安心です」

 

ミカ「じゃっ、またね先生、また会えるのかどうかわからないけどっ」

 

ナギサ「そうですね、特に今は忙しい時期ですし、ティーパーティーの生徒会長がこうしてまたすぐに集まれるとも限りませんから」

 

ミカ「ふふっ、やっぱり忙しいんだ?ま、でも先生のおかげでナギちゃんの顔も見られたし、良かった良かった」

 

ナギサ「はい、私もですよ、ミカさん」

 

ミカ「…ふふっ」

 

ナギサ「では、これからよろしくお願いいたしますね、先生

私もティーパーティーのホストとして先生をエスコートいたしますので」

 

ウォルター「…何かあれば頼らせていただこう」

 

──

 

ウォルター(……まずは、阿慈谷(あじたに)を探すか)

 

名簿の教室を尋ねたが、すでに無人だった

 

ウォルター「……どうしたものか」

 

マリー「何かお困りですか?」

 

ウォルター「…伊落(いおち)か」

 

マリー「覚えていていただけたようで光栄です、ええと…」

 

ウォルター「…シャーレのハンドラー・ウォルターだ」

 

マリー「シャーレ…?シャーレの先生、ですか?」

 

ウォルター「…そうなる」

 

マリー「お会いできて光栄です、先生

ところで、何かお困りだったようですが…」

 

ウォルター「……」

 

ウォルター「…人を探している」

 

──

 

(その後方々を探し回り…)

 

ウォルター「…阿慈谷(あじたに)

 

ヒフミ「あ、あはは……こんにちは、先生」

 

ウォルター(…この反応)

 

ウォルター「逃げたな」

 

ヒフミ「はうっ…あの、これはその、やむを得ない事情がありまして…」

 

ウォルター「……」

 

ヒフミ「…あ、あうぅ…ごめんなさい」

 

ウォルター「…はぁ…」

 

ウォルター「事情とはなんだ、事によってはティーパーティーに話を…」

 

ヒフミ「…えっと」

 

ヒフミが顔を逸らす

 

ウォルター「…阿慈谷(あじたに)

 

ヒフミ「こうなった、やむを得ない事情…というのは……」

 

ヒフミ「ペロロ様のゲリラ公演に参加するために、テストをサボってしまって……それで…」

 

ウォルター「……」

 

ヒフミ「うぅ……そ、そんな冷たい目で見ないでくださいぃ…!

ちゃんと試験の日程は確認していたはずなんですっ!

何かの間違いと言いますか、手違いと言いますか…」

 

ウォルター「…そうか」

 

ヒフミ「……」

 

ヒフミ「あうぅ…そ、その…」

 

ウォルター「…そういう事ならば、結果に期待しておく」

 

ヒフミ「は、はい…えっと、それで…」

 

ヒフミ「その…ナギサ様に、先生のサポートを頼まれまして…」

 

……

 

ナギサ「……というわけで、ヒフミさん

先生をお手伝いすると共に補習授業部を導いてくださいませんか?」

 

ヒフミ「は、はい!?わ、私がですか!?」

 

ナギサ「はい、そもそもヒフミさんのような優等生でないとできないことですし」

 

ヒフミ「わ、私はそんな、優等生というほどでもありませんし…そもそも成績も平均くらいで……今は落第の危機なのに…」

 

ナギサ「ふふ、私はヒフミさんの“愛”を高く評価してますから

それに、今度はヒフミさんから私に“愛”をお返していただく番……ですよね?」

 

ヒフミ「あ、あうぅ…」

 

ナギサ「ふふっ、そういうことですので」

 

ナギサ「よろしくお願いしますね、補習授業部の部長さん」

 

……

 

ウォルター「部長か」

 

ヒフミ「あ、あくまでも臨時の、ですが……補習授業部は、特殊な形で限定的に作られた部活ですし…

ぜ、全員が落第を(まぬが)れたら、自然に部は無くなるはずです」

 

ヒフミ「な、なので、えっと……その時まで、よろしくお願いします、先生」

 

ウォルター「…ああ」

 

ヒフミ「こんな状況ではありますが、補習授業部の担当が先生で良かったです…」

 

ヒフミ「あ、補習授業部の他のメンバーには、まだ会われてないんですよね?

名簿を確認したところ、メンバーは私を含めて4人みたいです」

 

ヒフミ「とりあえず会いにいきましょうか、先生

まずはみんなで、どうすれば落第せずに済むかの計画を立てないと…」

 

ウォルター「……」

 

─正義実現委員会─

 

ウォルター「…正義実現委員会か」

 

ヒフミ「あ、あぅ…あんまり来たくはなかったのですが…

えっと、失礼します……どなたかいらっしゃいますか?」

 

コハル「……」

 

ヒフミ「あっ、こ、こんにちは」

 

コハル「……」

 

ヒフミ「…え、えっと」

 

コハル「…何?」

 

ヒフミ「あ、あう……そ、その…」

 

コハル「……」

 

ヒフミ「あうぅ…せ、先生…」

 

ウォルター「…人見知りしてるだけだろう、落ち着け」

 

コハル「だ、誰が人見知りよ!?

た、ただ単純に知らない相手だったから、警戒してるだけなんだけど!?」

 

ヒフミ「た、多分、それを「人見知り」って言うんじゃないでしょうか…?」

 

コハル「うっ……」

 

ウォルター(618を思い出すな…)

 

ヒフミ「え、えっと…探してる方がいまして…」

 

コハル「はぁ!?正義実現委員会に人探しを依頼しようってこと?

私たちのこと、ボランティア団体か何かだと勘違いしてるわけ?そんなに暇じゃないんだけど?」

 

ヒフミ「いえ、えっと、ここに閉じ込められてるって聞いて…」

 

コハル「……はぁ!?」

 

ヒフミ「ですから、えっと、よくない事をした方がここに…」

 

コハル「え、それってもしかして…アイツ…?」

 

(ガチャッ)

 

コハルの後方の扉が開き、少女が顔を──

 

ウォルター「…な…」

 

スクール水着姿の少女が飛び出す

 

ハナコ「こんにちは、もしかして私のことをお探しですか?」

 

コハル「!?!?」

 

ヒフミ「!?」

 

ウォルター「……」

 

コハル「え、は、何で!?あ、あんたどうやって牢屋から出てきたの!?ちゃんとカギ閉めたのに!?」

 

ハナコ「いえ、開いてましたよ?私のことを話されてるような声が聞こえたので、こちらにきてみました

何かご用でしたか?」

 

ハナコ「あら、大人の方……ということは、先生ですね

あらためまして、こんにちは、なるほど、もしかして補習授業部の件ですか?」

 

コハル「ま、待って!!その格好で出歩かないでよ!?ちょっとぉ!!」

 

ウォルター「…話が早い」

 

ヒフミ「先生、もっと他に思うべきことがあると思います…」

 

ウォルター(…浦和(うらわ)ハナコ、2年…

水着姿で学校を徘徊し、正義実現委員会に現行犯逮捕されたと聞いていたが…何かの間違いだと、思ったが…)

 

ハナコ「…?何か問題でもありましたか、下江(しもえ)さん?」

 

コハル「あるに決まってるでしょ!?何で学校の中を水着で徘徊するの!?」

 

ハナコ「ですが、学校の敷地内であるプールでは、皆さん普通に水着になられますよね?

ここもあくまで学校の敷地内で……あ、もしかして下江(しもえ)さんは、プールで水着を着ないタイプですか?」

 

コハル「え、は?それってどういう……」

 

ハナコ「そうでしたか、下江(しもえ)さんは全裸で泳ぐのがお好きなんですね

流石は正義実現委員会、そういった分野まで網羅(もうら)されているなんて」

 

コハル「ばっ、バッカじゃないの!?着るに決まってるでしょ!!そ、そんなことするわけ…!」

 

ウォルター「待て、今下江(しもえ)と──」

 

コハル「ちょっと黙ってて!!」

 

ウォルター「……」

 

ハナコ「それにしても裸こそが正義、とは……かなり前衛的ですね、あまり考えたことはありませんでしたが、なるほど…試してみるのもまた一興…」

 

コハル「と、とにかく早く戻って、早く!もうすぐ先輩達が来ちゃうから!」

 

ハナコ「あら、でもこの方々は私に会いに──」

 

コハル「うるさいうるさいっ!この公共わいせつ罪!!早く戻れ!!」

 

ハナコ「すみません、どうやら色々と混乱している状況のようですので、また後ほどお会いしましょうね?」

 

そういってハナコが牢屋の方へと帰っていく

 

ヒフミ「…あ、あはは……」

 

コハル「はあ…はあ……」

 

ヒフミ「え、えっと…この状況はいったい…ハナコさんはこの後どうなるんですか?」

 

コハル「そんなの当然死刑よ!えっちなのはダメ!死罪!」

 

ウォルター「…あれで死罪になるのか?」

 

ヒフミ「そ、そんなはずはないと思いますが…」

 

コハル「水着で学校を歩き回ったんだよ!?真昼間から!生徒がたくさんいる広場のど真ん中で!!」

 

ヒフミ「……」

 

困ったようなヒフミと顔を見合わせる

 

ハナコ「ですが、校内では高速で決められた服を着るものですよね?ですからきちんと学校指定の水着を…」

 

コハル「どうしてそこで水着なの!?制服を着ればいいでしょ!?って言うか話に入ってくるな!」

 

ヒフミ「あ、あうぅ…と、とりあえず…

今はちょっとハナコさんとお会いするのは難しそうなので…一旦次のメンバーを…」

 

ウォルター(…どうせもう一度正義実現委員会に来る事になる、下江(しもえ)も後回しに…)

 

ウォルター「ならば、次は白洲(しらす)アズサ──」

 

(ガチャッ)

 

ハスミ「ただいま戻りました」

 

マシロ「任務完了です!現行犯で“白洲(しらす)アズサ”さんを確保しました!!」

 

ウォルター「っ…」

 

思わず額に手を当てる

 

ヒフミ「せ、先生!?大丈夫ですか!って言うか今なんて…?!」

 

コハル「あっ、ハスミ先輩!マシロも」

 

マシロ「コハルさん、お疲れ様です、あれ…?」

 

ハスミ「先生?」

 

2人に続いて正義実現委員会の生徒に両脇を固められたガスマスクのサイトが入ってくる

 

アズサ(シューッ…シューッ…)

 

ヒフミ「……」

 

ウォルター「……」

 

アズサ「……惜しかった、弾丸さえ足りてればもう少し道連れにできたのに

もういい、好きにして、ただし拷問に耐える訓練は受けてるから…私の口を割のはそう簡単じゃないよ」

 

アズサ(シューッ…シューッ…)

 

ウォルター「羽川(はねかわ)白洲(しらす)は何を…」

 

ハスミ「…何か要件があるようですが、こちらをみていただくのが早いかと」

 

書類を受け取る

 

ウォルター(…白洲(しらす)アズサ、2年…校内での暴力行為の疑いで正義実現委員会に追われていたところ、教材用催涙弾…教材?…

弾薬庫を占拠し、約1トンの催涙弾を爆破…3時間抵抗を続け、なお現在も抵抗中の為、追加の人員を要請する…

なお、周囲に大量のブービートラップやIED(急増爆発物)が仕掛けられており、狙撃手が好ましい…)

 

ウォルター「……」

 

ハスミ「それで、先生は何のご用で…?」

 

ウォルター「……」

 

(補習授業部について説明した)

 

ハスミ「なるほど、お話は理解しました

先生が、補習授業部の担任の先生になられると」

 

ハスミ「…残念です、できればお手伝いをしたかったのですが」

 

ウォルター「…まずは、浦和(うらわ)白洲(しらす)、両名を引き取りたい」

 

コハル「はぁ!?ダメに決まってるでしょ!?絶対ダメ!凶悪犯なのよ!?」

 

ハスミ「コハル、先生はシャーレの方として、ティーパーティーからの依頼を受けてこちらにいらっしゃったのです

規定上は何の問題もありません、補習授業部の顧問、担任の先生になるのですから」

 

コハル「え、えぇ…まあでも、先輩がそう言うなら…

ふ、ふん!まあでも良いザマよ!こっちはこんな凶悪犯達と一緒に居なくて済むし、そもそも補習授業部だなんて!恥ずかしい!」

 

ウォルター「…下江(しもえ)

 

コハル「あははっ!いいんじゃない、悪党と変態の組み合わせ!そこに“バカ”の称号だなんて、私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」

 

ウォルター「羽川(はねかわ)

 

ハスミ「ええ…私は聞いています…」

 

ウォルター「…そうか」

 

ヒフミ「その…非常に言いにくいのですが……あと1人部員が居まして…」

 

コハル「ふーん?で?ここにはもう他に誰も捕まってないけど?」

 

ヒフミ「最後の1人は……下江(しもえ)コハルさん、です」

 

コハル「へー……」

 

コハル「……」

 

コハル「……え、私っ!?」

 

ウォルター「下江(しもえ)コハル、一年、3回連続で赤点を取り、留年目前…と、ティーパーティーからの資料にある」

 

ハスミ「…成績が向上するまで、正義実現委員会の籍から外す事にもなっています」

 

コハル「そ、そんなぁっ!?」

 

ハスミ「…先生、コハルをどうか、よろしくお願いします」

 

ウォルター「…努力する」

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