燃え残り 作:名無し
─トリニティ・補習授業部─
ハナコ「では、ここに揃っているのが補習授業部のメンバーというとですか?」
ウォルター「…そうだ」
アズサ(シューッ、シューッ…)
コハル「うあぁ……」
ヒフミ「…あ、あはは…えっと、これで何とか集まりましたね…補習授業部……」
ハナコ「ふふっ、何をすればいいでしょうか?
ハナコ「放課後にひと気のない教室で、素行の悪い女子高生と大人が集まって…始まってしまいそうですね?」
ウォルター「…何がだ?」
アズサ「何だって構わない、この教室でなら一ヶ月は立て籠もれる」
コハル「死にたい…ほんとに死にたい……」
ヒフミ「え、えっと…先生、それではよろしくお願いします」
ウォルター「……」
ウォルター「短い間だが、臨時顧問になった、ハンドラー・ウォルターだ」
アズサ「……」
ハナコ「……」
コハル「……」
ヒフミ「え、えっと、何かわからないこととか、気になる点とかありましたら……」
アズサ「大丈夫、これからは普通の授業に加えて、毎日放課後に特殊訓練があるってだけでしょ」
ヒフミ「えっと、訓練と言って良いのかわかりませんが、そうです
私たちが目指すのはこれから行われる特別学力試験で“全員同時に合格”すること
先生も手伝ってくれますし、み、みんなで落第を免れましょう…!」
ヒフミ「特別学力試験は第三次まで、つまり3回あるようですが……そのうち一度でも全員同時に合格すれば、そこで補習授業も終わりとのことです!」
ヒフミ「先生には主に……スケジュールの調整や、いろんな補習を行なっていただければと」
アズサ「うん、理解した
3回のミッションのうち、一度でも良いから全員で成功を収める
そのために、ここに毎日集まって訓練を重ねる……それほど難しい任務じゃない」
アズサ「この集まりはつまり、各自のリタイアを防ぐための措置……私としては特に、サボタージュする気も理由もない」
ヒフミ「そ、そうですね、頑張りましょう!
えっと、アズサちゃんは、転校してからあまり時間も経ってないんですよね?
まだこの学園に慣れてなかったせいもあるでしょうし、みんなで頑張ればすぐに何とかなると思います!」
ハナコ「あら?
トリニティに転校だなんて、珍しいですね……?」
アズサ「……」
ヒフミ「あ、書類上はそう書いてあって……も、もしかして私、余計なことを……?」
アズサ「いや、別に隠すことじゃないから気にしないで良い、れっきとした事実だ
こう言われるのは慣れるべきことだし、そのための努力もする」
ハナコ「なるほど……
それでは私も、アズサちゃんって呼んでも良いですか?」
アズサ「…?別に良いけど?」
ハナコ「では、アズサちゃん、ヒフミちゃん、それからコハルちゃん
うふふふ、何だか良い響きですね、私たちはこれから補習授業部の仲間ということで」
ハナコ「アズサちゃんは一見冷たそうに見えますが、何だか可愛らしいですし、ふふふっ」
アズサ「?」
コハル「……」
ハナコ「あら、そんなに憎悪に満ちた目で、どうしたんですかコハルちゃん?」
コハル「言っておくけど、私は認めないから……!」
ヒフミ「えっと……?」
ハナコ「あら、何のことですか?」
コハル「わ、私は、正義実現委員会のエリートだし!
私の方が年下だからって、あんたたちを先輩だなんて呼ぶつもりは無いから!
それにそもそも、こんな部活さっさと抜けてやるんだからっ!あんまり馴れ馴れしくしないでもらえる!?」
ハナコ「なるほど……確かに補習授業部の中でまで、先輩後輩なんて扱いにする必要はないと思います
私としては何も問題ありません」
アズサ「私も別に、そもそもそういう文化は不慣れだし
そもそも仲良くするために集まっている会じゃない
あくまでお互いの利益のためなんだから、親しいフリをする必要もないはず、違う?」
ヒフミ「あ、あうぅ……」
コハル「じゃあ決まり!それに、そもそもの話なんだけど……
私が試験に落ちたのはあくまで…飛び級のために、ひとつ上の2年生用のテストを受けたせいだから!」
ハナコ「あら、飛び級?どうしてそんなことを…?」
コハル「ど、どうしても何も……!私はこれから、正義実現委員会を背負う立場になるわけだし……!」
ハナコ「でも、それで落第してしまったんですよね?
一度試しにチャレンジするということであれば理解できますが、なぞそれを何度も…?」
コハル「う、うるさいうるさい!私が言いたいのはそういうことじゃなくて!
つまり私は今まで、本当の力を隠してたってこと!!」
ヒフミ「?」
ハナコ「?」
コハル「今度のテストはちゃんと、1年生用のテストを受けるから!そうすればちゃんと優秀な成績を収めてはい終わりってわけ、分かる?」
ヒフミ「…?」
ハナコ「!」
コハル「それで、すぐにこんな補習授業部なんて辞めてやるんだから!」
ヒフミ「えっと、個人で優秀な成績を出したとしても、それでこの場を卒業できるわけではなくって…」
アズサ「なるほど、経歴を隠していたわけか
ちなみに私も今は、前のところとの学習進度の違いが大きかったから、一年生の試験を受けてる」
コハル「あ、じゃあ同じ……い、いや!どうせすぐに関係なくなるけど!
それに、短い付き合いで残念だったけど、あんたたちはそういう感じじゃないみたいだし?あははっ!」
コハル「じゃあね、精々頑張って!」
ヒフミ「あ、あの…!い、行ってしまいましたね…」
ハナコ「ふふ、コハルちゃんはテンションの上下がすごくて、見ていて面白いですね
アズサちゃんは対照的に、一貫して全然ブレないですし」
アズサ「?」
ヒフミ「あうぅ…」
ハナコ「これから楽しみですね、ふふふっ」
(それから、補習授業部は毎日放課後に教室に集まり、特別な補習授業を受けることになった)
──
(放課後の自習時間)
アズサ「ハナコ、この問題はどう解けば良い?」
ハナコ「どれですか?ああ、なるほど、こういう時はですね、倍数判定法を用いてこのように…」
アズサ「なるほど……うん、理解した」
ヒフミ「……」
ウォルター(
コハル「……?」
ハナコ「えっと、コハルちゃん?何かわからない問題でもありましたか?」
コハル「いっ、いやっ!別に!?」
ハナコ「ちなみに今見てるそのページは、今回のテスト範囲ではありませんよ」
コハル「えっ、うそっ!?」
コハル「やっ、ちが…っ!し、知ってるし!今回の範囲は余裕だから、先のところを予習してただけ!」
ヒフミ「あ、あはは…」
ウォルター(
…だが、今無理に教えようとするのは無駄な反発を生む事になるか…?……もう少し待つか)
アズサ「ハナコ、この文章は何?」
ハナコ「古い
アズサ「ああ、あれか…理解した」
──
アズサ「ハナコ、これは?」
ハナコ「これは古代語を重訳したものですね、原文を理解するには辞書がないと…ちょっと待っていてくださいね」
アズサ「ああ、なるほど…ならこれはおそらく、「Gaudium et Spes」……喜びと希望か」
ハナコ「えっと……はい、そうみたいですね、これは第二回公会議における……いえ、それよりも…アズサちゃんは古代語が読めるんですね?」
アズサ「ああ、昔習った」
ヒフミ「……」
ウォルター(…
|自分の勉強に影響が出なければ良いが)
ウォルター「わからないところはあるか」
ヒフミ「あ、いえ!だ、大丈夫です!」
ヒフミの問題集に視線を落とす
ウォルター「……」
ウォルター(…一通り目は通したが……やはり、付け焼き刃では難しいか
…)
ウォルター「…補習授業部は、上手くいっている」
ヒフミ「はい!ハナコちゃんが何だかとってもすごくって…!それにアズサちゃんも学習意欲たっぷりです!
コハルちゃんは実力を隠していたそうですし……これならもしかして、余裕で合格できてしまうかもしれません…!」
ヒフミ「本当に良かった…実はすっごく心配してたんです…
実は、「もし一次試験で不合格者が出てしまったら、合宿をしてください」とティーパーティーから言われてまして…」
ウォルター「…初耳だ」
ヒフミ「はい、そうなんです…それに、もし3次試験まで全て落ちてしまったら……あうう…」
ウォルター「……何かあるのか、落第以上の事が」
ヒフミ「な、なんでもありません…!心配は杞憂で終わりそうですし、暗い話はこの辺りにして…
とにかく、試験は問題なさそうです!」
ヒフミ「ハナコちゃんはどうやらすごく勉強ができる感じなのですが、どうして落第してしまったんでしょう…?
私みたいにテストを受けられなくてとか、何か事情があったんでしょうか…?」
ウォルター「……わからん」
ウォルター(…本当に…杞憂で終わるのか?)
──
(第一次特別学力試験、当日)
コハル「……っ」
ヒフミ「うぅ……」
ハナコ「ふふっ」
アズサ「……」
ウォルター「…健闘を祈る」
コハル「え、エリートの力を見せてやるんだから!」
ヒフミ「あ、あはは…がんばります」
ハナコ「ふふっ、はい」
アズサ「準備は完璧」
(ゴーン、ゴーン)
試験開始時間を知らせる金が響く
ウォルター「時間だ、試験を開始する」
4人がそれぞれ、テストに向かう
ヒフミ(…あ、これ、補習授業でやったところです…!
みんなで勉強した問題が、ほとんどそのまま…!それに、難易度としては初級…いえ、基礎のレベル!)
ヒフミ(これまで色々と怖いことを言われてしまいましたが…もしかしてこれは、私たちへの救済措置ということでしょうか…!?)
コハル「こ、これは…え、えぇっと……」
ハナコ「ふふっ……」
アズサ「……ふむ」
ウォルター(……
ヒフミ(ですが油断は禁物…!みなさん、最後まで気を抜かずに、笑顔でこの補習授業部を卒業しましょうね!)
──
ウォルター「…試験の採点結果が届いた」
ヒフミ「み、みなさんお疲れ様でした……!
えっと、100点満点で60点以上でしたら合格だそうです!高得点は取れなくても、とりあえずそのラインだけ越えられればいいと…」
ヒフミ「それに内容も結構簡単でしたし……では、結果発表と行きましょう!
先生、お願いします!」
ウォルター「……」
封筒から書類を取り出し、読み上げる
ウォルター「……必要な箇所だけ読む、
ヒフミ「あ、ありがとうございます!何だか無難な点数ですが、良かったです!では次に……」
ウォルター「
ヒフミ「……はいぃぃぃっ!?」
アズサ「ちっ、紙一重だったか」
ヒフミ「……ま、待ってください!紙一重っていう点数じゃないですよ!?結構たりてないですよ!?」
ウォルター「
コハル「!?」
ヒフミ「コハルちゃんんんんっ!?ち、力を隠してたんじゃないんですか!?今回はちゃんと1年生用の試験を受けたんですよね!?
ま、まさかまた2年生用の……いえその点数、3年生用の試験を試験を受けたんですか!?」
コハル「やっ、その……!か、かなり難しかったし……」
ヒフミ「すっごく簡単でしたよ!?小テストみたいなレベルでしたよ!?」
ウォルター(…
…つまり、これが実力だ)
ハナコ「あらあら……」
ウォルター「うぅ……合格したのは私とハナコちゃんだけ、ということでしょうか……となるとまた次の、二次試験を受けないと……」
ウォルター「……
ヒフミ「2点!?!?!?!?」
ヒフミ「2点2点ですか20点ではなく?いえ、20点でもダメなのですが……!
むしろ何が正解だったんですか!?と言いますか待ってください!ハナコちゃんものすごく勉強ができる感じでしたよね?!」
ハナコ「確かに私、そういう雰囲気があるみたいですね
まあ成績は別なのですが」
ヒフミ「雰囲気!?雰囲気だけだったんですか!?成績とは別ってどういうことですかっ!?」
ヒフミ「う……」
ヒフミ「あうぅ…」
(くらっ…)
倒れそうになったヒフミを受け止める
ウォルター「
……特別学力試験の結果、補習授業部は合宿を行う事となった、今日は解散にする、次は合宿の準備をして集合にする」
アズサ「合宿…?」
コハル「うう……」
ハナコ「はーい♡」
ウォルター(…これでは、先が思いやられる)
─ティーパーティー・テラス─
(カツ…コッ…カツ…コッ…)
ナギサ「あら、先生…お疲れ様です」
にこやかな笑顔で迎えられる
当然試験結果が伝わっているはずだ、ここにくる事も予測できていただろう
ウォルター「…今回は目標を達成できなかった
よって、補習授業部は合宿を行う」
ナギサ「…お話がスムーズで助かります、ですがまだ、後2回ありますので…」
ティーパーティーの生徒に勧められ、着席する
ふと、ナギサの手元にあるチェス版に目が行く
ナギサ「…ああ、これですか、趣味でして
…おそらく見慣れないタイプですよね?」
ウォルター「…ああ」
黒はポーンとキングだけ
白はルーク、ビショップ、ナイト、キングまでが複数ある
あまり見たことのないスタイルだ
ウォルター「これを、1人で?」
ナギサ「はい、今は私1人で…うるさいミカさんも居ないですし
今日は先生にお伝えしておきたいことがあったのですが……それより先に、先生の方から何か言いたげに見えますね」
ウォルター「……補習授業部は、3回の試験全てで目標を達成できなかった場合…どうなる」
ナギサ「小耳に挟まれたのでしょうか?
ナギサ「彼女は素直すぎるあまり、そういう所があります…
まあ、それがヒフミさんの良いところでもあるのですが…」
ウォルター「……」
ナギサ「さて、質問にお答えしますと、簡単なお話です
試験で落第を繰り返す、落第を逃れられそうにない、助け合うこともできない…だとすれば…」
ナギサ「皆さん一緒に、退学していただくしかありません」
ウォルター「……退学、か」
予測はしていた、ヒフミの怯えた様子から、与えられる処罰の重さはなんとなく伺えたが…
ウォルター(…そこまでするのか)
キヴォトスに来てから短くない時間を過ごした
…ここで学籍を剥奪されることは、どういう意味か、それを既に知っている
学籍を無くすという事は学校の
そして大抵の生徒が住んでいる寮からも追われて住む場所を無くす、現在の銀行資産も停止される
ナギサ「もちろん、本来はここトリニティにも落第、停学、退学などに関する拘束が存在します
ただ、手続きが長くて面倒でして…今回急造された補習授業部は、このような校則を無視する為
場合によってはシャーレの権限で退学を取り消せるようにする事で、このような措置が可能になっているのです」
ウォルター(…やられたな)
シャーレの権限を組み込む時点で送られた書類には目を通した
だが、それは巧妙な退学という罰を隠し、シャーレの権限で処罰を免れるという形の書き方を取られていた
まさか、そこまで重い罰を与えるとは思っていなかった
ナギサ「そもそも、補習授業部は……」
ナギサが何かを言いかけて俯き、ティーカップを一度口に運ぶ
ナギサ「…生徒を退学させるために、作ったものですから」
ウォルター「なに…?何のために」
ナギサ「……あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです」
ウォルター「…裏切り者?」
ナギサ「その裏切り者の狙いは、エデン条約締結の阻止
この言葉が持つ重さを理解していただくには……“エデン条約”とは何か、という説明が必要ですね」
ナギサ「エデン条約……簡単に言いますと、トリニティとゲヘナの間に結ばれる不可侵条約です
その核心は、ゲヘナとトリニティの中心メンバーが全員出席する、中立的な機構を確立することにあります
ナギサ「これにより、二つの学園の間で全面戦争が起きる事は無くなります
誰かが踏み込めば、両陣営が仲良く共倒れしてしまうことになりますので」
ナギサ「……先生
トリニティとゲヘナの長きにわたる敵対関係は、お互いに大きな重荷になっています
エデン条約はその無意味な消耗を防ぐための、おそらくは唯一の方法であり、キヴォトスにおける力のバランスを保つための方法でもあります」
ナギサ「これは、連邦生徒会長が提示した解決策でもありました…彼女が行方不明になってしまい、一度は空中分解しかけたものを、私の元でどうにかここまで立て直したのです
そしてこの念願の条約が締結される直前まできた、このタイミングで…これを妨害しようとするものたちがいるという情報を耳にしてしまいました
まだそれが誰なのかはわかりません、特定できませんでした…そこで、次善の策として……」
ウォルター「補習授業部に、容疑者を集めた…」
ナギサが頷く
ナギサ「裏切り者はそこにいます、ですが誰なのかはわかりません
であれば、一つの箱にまとめてしまいましょう……いざという時、まとめて捨ててしまいやすいように
先生にはその箱の制作にご協力いただきました」
ナギサ「……ごめんなさい」
こちらの苦々しげな表情に気づいたのか、ナギサが言葉を漏らす
ナギサ「こんな、血生臭いことに先生を巻き込んでしまいました
私のことは、
ウォルター「……俺を利用して…補習授業部の生徒を退学させるだけのつもりなら
この話を俺にする必要はない…俺に何をさせるつもりだ」
ナギサ「……ええ、お察しの通りです
言っても信じてもらえるかと思っていましたが、仰る通りです、こうなったらお話は早いですね
先生……補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?」
ウォルター「……」
ナギサ「先生を、トリニティを騙そうとしている者がいます
平和を破壊しようとするテロリストです、私たちだけでは無く、キヴォトス全体の平和を、自分たちの利益と天秤にかけようとしているのです
裏切り者を探し出すことが、キヴォトスの平和に直結します、いかがでしょう、連邦捜査部シャーレとしてご理解いただけますと幸いなのですが…」
言い分は理解できる
だが、あまりにも
ウォルター(…いくらキヴォトスにおいて3大校と呼ばれるトリニティとゲヘナの問題とはいえ、キヴォトス全体の話にまで押し上げられてもな)
キヴォトスには数千の学校があり…そしてトリニティもゲヘナも、その中の二つに過ぎない
それが大量に生徒を抱え込んでいようが、アビドスの様にわずかな生徒しか居ないとしても、そこは変わらない
そして、ティーパーティーから表向きに出された依頼とは別の動きをする
これは…シャーレの中立的な立場を揺るがすのではないだろうか
そもそも、裏切り者がどこから送り込まれたのかすらわからない
下手な動きは足元を掬われる、目的の為に、目的が眼前に迫った為に視野が狭まる
…痛い目は何度も見てきた
ここで従うのは、お互いのためにならない
ウォルター「……
ナギサ「はい」
ウォルター「…俺は俺のやり方で、その問題に対処させていただこう」
ナギサ「……」
張り付いた様な笑みを向けられる
ここまで打ち明けたのは協力を得られる確信があったからだろう
動揺は見えなかったが、確実にしているはずだ
ナギサがカップを口元に運ぶ
ナギサ「……そうですか、わかりました」
カップを置いたナギサの目にはもはや敵意すら感じられた
ナギサ「……ですが、先生…ゴミを細かく選別して捨てるのが難しい時は、箱ごと捨てるというのも手段の一つ…そうは思いませんか?
それからもう一点…試験については基本的に、私たちの手のひらの上にあります」
ナギサ「たとえば“急に試験の範囲が変わる”ですとか、“試験会場が変わると”ですとか…“難易度が変わる”ですとか…
そう言ったことが起きないことを、祈っていますが…」
ウォルター「……そうか」
ナギサ「…失礼しました、よくない物の言い方でしたね
それではこれからも、引き続き補習授業部をよろしくお願いします、先生
私たちの方から、先生に対して不利益や損害を与えることはありません……と、言いたいところなのですが…」
ウォルター「そうとは言い切れない、と」
ナギサ「…そうですね、簡単にはお約束しかねます
ですが、だからといって、先生が生徒たちを放っておく様な方ではないと思っておりますので……これからの展開は私にも予測しきれておりません
どうかこの結末が……できるだけ、苦痛を伴わない物であることを願うだけです」
ウォルター(…その願いに、補習授業部の生徒達は含まれない、か…)
ナギサ「ああ、ですが一つだけお伝えしておきますと……一次試験において、私たちの方では如何なる操作も行なっておりません
この部分については誓って嘘ではないことをお約束します」
ウォルター「……」
ナギサ「先生なりのやり方、それがトリニティに利するものであることを願っていますね」
ナギサ「それでは、またお会いしましょう」
テラスから見送られ、その場を後にする
ウォルター「……裏切り者か、まずは…どこの飼い犬か」