燃え残り 作:名無し
トリニティ・別館合宿所─
ウォルター(…もうこんな時間か)
模擬試験の後、かなりの時間勉強は続いた
アズサ「コハル、質問」
コハル「うん、え?私?私に!?」
アズサ「そう、コハルに、今同じところを勉強してるはずだ
この問題なんだけど…」
コハル「う、うん……あ、これ知ってる!
これは確かこうやって、下のところと90度になる様に線を引いて…
そうするとこの三角形とこの三角形が一緒、わかった?」
アズサ「なるほど…そういうことか
助かった、これは確かに、正義実現委員会のエリートというのも頷ける」
コハル「……!?」
コハル「そ、そうよ、エリートだもの!!
…も、もし何かわからなかったら、私に聞いてもいいから、アズサはその、特別に……」
アズサ「わかった」
ハナコ「あらあら…」
ハナコ「さすが裸の付き合いをしただけはある、と言いますか…もう深いところまで入った仲なのですね…♡」
コハル「ちょっ、何言ってんの!?そういうアレじゃないから!?」
アズサ「うん?ハナコも体を洗って欲しいのか?」
ヒフミ「あ、あの、うぅ……」
アズサ「あ、コハル、もう一つ聞きたい」
コハル「ん?この問題は、えっと……」
アズサ「コハルも知らない問題か?」
コハル「うーんと、これ、たしか参考書で見たような……
ちょ、ちょっと待って、確か持ってきたはず…」
(ガサゴソ…)
コハル「んしょっ…」
ウォルター(…参考書?)
コハルの手に持っていた本は表紙に2人の人物が描かれた、やや、それらしくない雰囲気のある…
アズサ「?」
ヒフミ「!」
ハナコ「!?」
ウォルター「待て、
アズサ「この参考書に載ってるのか?」
異変に気づき、止める前にアズサが参考書に手を伸ばす
コハル「うん、この参考──」
コハル「……あれ?」
ハナコ「エッチな本ですねぇ」
コハル「うわあぁぁぁっ!?な、なんでっ!?」
あわててコハルが自分の体で本を覆い隠す
ハナコ「コハルちゃん、それエッチな本ですよね?
まあある意味参考書かもしれませんが、隠しても無駄です
“R18”ってバッチリ書いてありましたよ?」
コハル「ち、違う!見間違い!とにかく違うから!絶対に違う!!」
アズサ「?」
ハナコ「私の目は誤魔化せませんよ、確実にアレなことをする本でした!それも結構ハードな…!
トリニティでも、いえ、キヴォトスでもなかなか見ることができないレベルの内容とお見受けしました…!
きっと肌と肌が擦れ合い、敏感な部分を擦り合わせ、
ウォルター「…
ハナコ「どうしてその様な本を持っているのですか?確か校則でも禁止されていたと思いますが…?」
コハル「い、いやっ、そのっ……こ、これは本当に私のじゃなくて、えっと……」
ハナコ「でもそれ、コハルちゃんのカバンから出てきましたよね?それに合宿所まで持ってくるなんて…お気に入りなのですか?
そうですか、あの真面目なコハルちゃんがエッチな本を…」
ウォルター「
ハナコ「…いえ、なるほど、そうですね、考えてみたらそんなに変なことでもありませんね?
予行演習もバッチリ……つまり合宿のために必要なものなんですよね、コハルちゃん♡」
コハル「こっ、これは違うんだってばああぁぁぁぁぁっ!!」
アズサ「?」
ヒフミ「そ、その…ハナコちゃん、その辺りで……」
ハナコ「…やりすぎてしまったかもしれませんね、本当にごめんなさい……お話が合うかと思ったのですが…」
コハル「うぅ、うぅぅっ……」
ウォルター「
ヒフミ「は、はい…」
眉間に手を当て、ため息をつく
ウォルター(…わざと妨害しているのか…?いや、だが…)
ハナコ「……」
ウォルター「…次からは気をつけろ、
ハナコ「…はい」
──
ヒフミ「えっと、みなさん…コハルちゃんは、正義実現委員会としての活動中に差し押さえた品を、つい入れたままにしてしまったそうです」
コハル「…うん、私、押収品の管理とか、してたから……これは、本当にその時のやつで…」
ハナコ「なるほど、そういえば、トリニティの古書館の地下には何やら、禁書がたくさん積まれていると言う噂も聞きましたし……
正義実現委員会がそう言ったものを含めて、色々と差し押さえているとしても、何も不思議ではありませんね」
ハナコ「うーん……であれば、押収品ってできるだけ早く返してしまった方がいい気がするのですが、どうしましょう?」
コハル「た、確かに……ずっと忘れてたけど……」
ヒフミ「数が合わなくて騒ぎになる前に、返しに行った方がいいかもしれませんね……」
ハナコ「今のうちにこっそり行って、バレない様に正義実現委員会のところに戻してくれば大丈夫じゃないですか?」
コハル「え、今?」
ウォルター「…行くなら俺も同行する、この合宿中は単独で外には出せん」
コハル「せ、先生が…?」
ハナコ「……そうですね、先生が一緒であれば、万が一ハスミさんあたりにバレたとしても、そこまでは怒られないでしょうし……」
ハナコ「ところでコハルちゃん、それはそれとして、もし他にもお勧めがあればぜひ♡」
コハル「う、うるさいっ!バカっ!!!!」
そしてコハルと一緒に、正義実現委員会の部室へと向かうことになった
─トリニティ・正義実現委員会ー
コハル「……その、い、言っておくけど、こればっかりはほんとに間違いだから!」
ウォルター「別に俺はお前を疑うつもりはない…紛れ込んだ物ならそれで良い」
コハル「え……ぃ、いつもはちゃんと…じゃなくて、あんまり持ち歩いたりしないし…」
ウォルター「そうか、ならうまく隠せ、それでいい」
コハル「!?!?」
コハル「な、なに言ってるの!?それ、バレなきゃ持ってても良いって言ってるのと同じじゃん!?
せ、先生なんでしょ!?何考えてるの!エッチなのはダメ!死刑!!」
ウォルター「……その理論だと、お前も刑にかけられる」
コハル「え、や、ちがっ…!?」
コハル「わ、私は、その……
こ、これについては本当に間違いだから!つまりノーカン!!」
ウォルター「……なら、それでいい」
コハル「……!?なっ、何それ!大人の余裕ってわけ!?」
ウォルター「…ルールを守るのは自分の為だ、他にやりたいことがあるのなら…お前の人生だ、好きな様に生きろ」
コハル「え……?」
ウォルター「…
コハル「……」
コハル「わかったような、わからないような……」
ウォルター「…無理にわからなくてもいい」
コハル「…うん、でも……先生が私のことを考えてくれてるってことは、少しだけわかったかも……」
コハル「……じゃ、じゃあっ!」
ウォルター「?」
コハル「お返しにひとつ、私の秘密を教えてあげる!」
ウォルター「秘密?」
コハル「……」
コハル「実は、私……」
コハル「……補習授業部が上手く回ってるかを監視するための、スパイなの!」
ウォルター「……な…?」
全くの想定外な言葉に頭を殴られた様な気分になる
ウォルター(まさか、
いや、だが、落ち着け…)
コハル「つまり、秘密のミッションを遂行中の身って事!だから、今は私がバカみたいに見えてるかもしれないけど、これも全部フェイクってわけ!」
ウォルター「…それは、誰からの指示だ」
コハル「う、えっと……だ、誰って、その…んと……は、ハスミ先輩!」
コハル「そう!ハスミ先輩はトリニティの中でもすっごい強くて、正義実現委員会の副委員長だし!」
ウォルター(
…言い淀んだ様子も見えた、本当だろうか?
コハル「あ、あと、そう!つ、ツルギ委員長だっているんだから!」
ウォルター「そうか、
…正義実現委員会の両トップが、エデン条約を壊そうとしている…?
コハル「つ、ツルギ委員長はその、えっと、委員長だし……そう、何でもできるの!ぶ、文武両道……?だから!多分!
何回かしか会ったことないけど……と、とにかくすごいの!」
コハル「だから、そういうこと、私は別に、本当に勉強ができなくて補習授業部に入ったわけじゃないってこと、覚えておいて!」
ウォルター「……」
ウォルター(
……わからんな、だが、何よりもわからんのは…)
コハル「私はスパイとして大事な任務を任されてる、エリートなんだから!」
ウォルター「そうか」
コハル「ふふんっ」
ウォルター「……これは、俺に教えて大丈夫なことだったのか?」
コハル「…!!」
コハル「せ、先生が生徒の秘密をやたらに言いふらしたりしないでしょ!?しないよね!?」
ウォルター「…ああ」
コハル「じゃ、じゃあ大丈夫!!」
ウォルター(…こうもあっさり口を
ウォルター「……使い捨てにされたか?」
コハル「え?なにかいった?」
ウォルター「いや…」
ウォルター(何も知らない末端が情報収集で使われる事など、よくある話だ)
─正義実現委員会・押収品管理室─
コハル「……うん、これでよし
とりあえずこれでひと安心──」
(ガチャッ)
ウォルター(…ここでか)
ハスミ「……コハル?それに先生まで…」
コハル「は、ハスミ先輩!?」
ハスミ「…たしか、合宿で別館にいると聞いたのですが、どうかしましたか?
成績が良くなるまでは、ここへの出入りは禁止になっているはずですが……」
コハル「そ、その、違うんです、えっと…」
ウォルター「俺が用があった、
ハスミとコハルの間に割って入る
ハスミ「用、ですか?」
ウォルター「…授業に使う教科書の入った鞄をどこかで失くした、だが、ここで回収できた
…時間も時間だったので案内を頼んだだけだ、
ハスミ「なるほど、そういうことでしたら、仕方ありませんね」
コハル「は、はい…」
ハスミ「ですが、ある意味ちょうどよかったです
コハルに改めて伝えておきたいこともありましたし……」
コハル「え?わ、私ですか…?」
ハスミ「先生、申し訳ないのですが少し席を外していただけますでしょうか?
正義実現委員会としてお話ししたい事、と言いますか……」
ウォルター「…ああ」
ハスミ「すみません、ありがとうございます」
ハスミの案内で隣の部屋に入り、待つ
ウォルター(……
考えれば考えるほど理解できない、もし正義実現委員会そのものが条約を拒むのであればこの程度では何もならない
そもそも、条約の締結を邪魔するとなると、それは組織規模の何かが動くはずだ
たった1人をどうこうしたところで意味はないはずだ
ウォルター「……声が…」
どうやら、思ったより壁が厚くないらしく、隣の声が聞こえてくる
ハスミ「……コハル…………でください」
ハスミ「本来の……を……ないで……………」
聞き耳を立てるつもりはなかったが、聞こえてくるものは仕方ない
コハル「でも………には……無理……」
コハル「……なんて…………あまりにも……ことで……」
ハスミ「それではダメなんです!」
ウォルター(…何を話している?)
ハスミ「……なさい………………ずっと……ために………」
ハスミ「……先生……………を……です…………」
コハル「……はい………………ます」
ウォルター「……俺を…?」
少し考えた途端、ドアが開く
(ガチャッ)
コハル「お、お待たせ…先生?
……帰らないの?」
ウォルター「……
コハル「え、う、うん?別に、大丈夫だけど……?」
ウォルター(……)
コハルと一緒に帰路についた……
ウォルター(…
だが、本当のことを言っているのか?……わからん)
─合宿所ー
ヒフミ「ふぅ……スッキリしました!」
アズサ「もうお風呂に入ったんだ、早いね、ヒフミ」
ハナコ「うふふ、そうですよね、なにせヒフミちゃんは朝にシャワーを浴びれず、今日1日あるがままの香りで──」
ヒフミ「わわっ!そ、その言い方は恥ずかしいです……っ!うう、寝坊さえしなければ…」
アズサ「……でも、それは私たちのために模擬試験を準備していたからだ」
アズサ「ごめん、ヒフミ、もし明日の朝も起きるのが辛かったら言って、今度はヒフミの体を洗ってあげる」
ヒフミ「い、いえ!それは遠慮させていただこうかと…!?」
コハル「自分で洗えばいいでしょ!子供じゃないんだから!」
アズサ「効率の問題だ、みんなで洗うことによる利点は少なくない、もちろん水の節約にもなる」
ハナコ「大浴場はないので、みんなで一心不乱に洗いっこというイベントはちょっと難しいようですが…
あ、いいことを思いつきました、今度お風呂代わりに、みんなで裸でプールに飛び込むのはどうでしょう?」
コハル「サラッと何言ってんの!?ダメ!そんなすごいの絶対禁止っ!」
アズサ「悪くない案だと思うど、それをプールでやるメリットがあるのか?」
ハナコ「解放感があると思いませんか?青空の下、全てをさらけ出して掛け合う様子を想像するだけで…うふふ♡」
アズサ「なるほど、そう言うのは確かに考えてなかった、開放感、か…」
コハル「バカバカバカバカ!!!
考えちゃダメ想像しちゃダメそう言うのはダメっ!」
ハナコ「?」
コハル「アズサを変な風に染めるな!トリニティの変態はあんただけで十分だから!!」
ハナコ「そういえばコハルちゃんも全裸で泳ぎたい派ですよね?」
コハル「脈絡全無視!?無敵なの!?そっ、そもそもそんなこと言ってないから!プールでは普通に水着!それが正義なの!
あんただって昨日はちゃんと着てたじゃん!」
ハナコ「あら……?」
コハル「……?」
ハナコ「…ふふっ」
ハナコ「よく思い出してみください、コハルちゃん、私が昨日プールで着ていたものを……」
コハル「え、あ、あの水着が何……?」
ハナコ「あれは、本当に……」
ハナコ「
コハル「!?!!?」
コハル「み、水着じゃなかったら何なのよ……!?」
ハナコ「最近の下着はデザインがかなり充実していますし、一目で水着かどうかの判断は難しいと思いませんか?
さらに、ペイントという線も……♡」
コハル「……!?!?」
コハル「え、嘘!?って、いうことは…!?」
ハナコ「あら、どうしたんですか?
あれがもし水着じゃなかったとして、何かが変わってしまうんでしょうか?ねえ、コハルちゃん?」
コハル「え、だ、だって……」
ハナコ「たとえば、水着と下着の違い……それは何でしょう?防水機能?お肌の保護?デザイン?露出の範囲?」
ハナコ「コハルちゃんは見た目でわからなかったですよね?あの場、あの時は、それは“水着”だと信じられていましたよね?」
コハル「……???」
ハナコ「実はアレが下着だったとして……その「真実」かもしれない何かは、どうすれば証明できるのでしょう?
証明できない真実ほど無力なものは無い……そう思いませんか?」
コハル「な、何言ってるのかわかんない…け、結局どういうこと!?」
ハナコ「あの水着可愛かったですよね、と言うお話です♡」
コハル「……はぁ!?全部冗談!?」
アズサ「……なるほど、五つ目のあれか」
ハナコ「……!」
ヒフミ「五つ目……?えっと、アズサちゃん、なんのお話ですか……?」
ハナコ「……」
アズサ「ただの聞いた話だけど……キヴォトスに昔から伝わる七つの古則
確か、そのうちの五つ目だったはず」
アズサ「「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか」……そんな感じだった気がする、残りは知らないけれど
つまり、誰も証明できない楽園は存在し得るのか……そう言う禅問答みたいなものだったと記憶してる」
ハナコ「アズサちゃん、どうしてそれを……
その話を知ってるのは……もしかして、アズサちゃん、セイアちゃんに会ったことがあるんですか…?」
アズサ「……」
コハル「……セイア?」
ヒフミ「それって、ティーパーティのセイア様のことですか……?」
アズサ「……」
アズサ「……わからない、この話はただ、どこかで聞いた記憶があるだけで……」
ハナコ「……そうでしたか……そういえばアズサちゃんは転校生、でしたね……」
ハナコ「……vanitas vanitatum……ということは…」
ヒフミ「?」
ハナコ「……いえ、なんでもありません、もう遅い時間ですし、そろそろ寝た方が良さそうですね」
ハナコ「では、今日も1日お疲れ様でした!」
……
─ウォルターの部屋─
ヒフミ「……先生、ハナコちゃんのこと、なのですが……」
ウォルター「
ヒフミ「……模範解答を集めている最中に、なぜか特別に束になって保管されていたんです
珍しいことだから保管されていたのか、その理由はわかりませんが……」
ヒフミ「昨年の試験、1年生から3年生までの全ての試験における解答用紙がまとまっていました
どう言うわけか、その全てを回答した方がいたようでして……」
ウォルター「それが」
ヒフミ「……はい、ハナコちゃんでした」
ヒフミ「昨日見つけた一年生の時の成績に引き続き、盗み見る形になってしまったのですが……
ハナコちゃんは去年の1年生の段階で、3年生の秀才クラスでも難しいとされる課程を含めて、「全ての試験」で満点を出しています……
完膚なきまでに秀才、と言えるレベルです」
ウォルター「……」
ヒフミ「1年生の分の試験結果を見て、ハナコちゃんはきっと、「今年になって急に成績が落ちてしまったんだ」と思っていました、でも、この結果を見る限りそうではなく……」
ウォルター「去年の時点で全ての学年の問題を満点で回答できる、今更2年の問題で詰まるはずもない」
ヒフミ「…はい、ハナコちゃんは今……わざと試験に落ちているとしか思えません…」
ウォルター「理由に見当はつくか」
ヒフミ「わかりません……ハナコちゃん、どうして…」
─合宿所・ロビー─
アズサ「……」
照明の落ちたロビーをアズサが一人で探索する
ハナコ「……」
ハナコ(……アズサちゃん、こんな夜遅くに、また見張りを…?)
──
ヒフミ「…ふぁ……おはようございます!」
アズサ「おはよう、今日は早いね」
ヒフミ「あ、あはは…そうですね、それでは自分でシャワーを浴びてきますので…」
ハナコ「あら、フラれちゃいましたね♡」
アズサ「ヒフミは警戒心が強い」
コハル「普通は!ああなの!」
──
(……カリカリ)
アズサ「……よし」
ハナコ「……」
コハル「んん……?…これ、なんだろ」
ヒフミ「あ、そこは…」
ヒフミ(あれ?…そう言えば、今朝から先生の姿が見えないような…?)
ヒフミ(一体どこに…?)
─合宿所・プール─
ミカ「わぁっ、水が入ってるー!」
ミカ「ここに水が入ってるのなんて久しぶりに見たなー
もしかしてこれから泳ぐの?それともみんなでプールパーティー?」
ウォルター「…用件を聞かせてもらおう」
ミカ「…えへへ
先生は上手くやってるかな、って思って」