燃え残り 作:名無し
─合宿所・プール─
ミカ「にしてもナギちゃん、ずいぶん入れ込んでるみたいだねー、こんな施設まで貸し出しちゃって
ところで、合宿の方はどう?遠いのを良いことに、何か楽しそうなことしてたりしない?例えばみんなで水着でプールパーティーとか!」
ウォルター「……似たような事はあった」
ミカ「あはっ!楽しそう!いいなー!」
ウォルター「……」
…
それがわざわざ秘密裏にここまで来て、呼び出す
何もないはずがない
ミカ「…そこまで警戒されちゃうのは心外だなー、私こう見えても繊細で、傷つきやすいんだよ?
ところでここ、食事とか大丈夫?何か美味しいものでも送ろっか?ケーキとか紅茶とか」
ウォルター「…要件を」
ミカ「ふふっ、ごめんね
先生もあんまり長い前置きは好みじゃないみたいだし…じゃあ、本題に入るとしよっか?」
ミカ「あっ、ちなみに私がここにいることについて、ナギちゃんは知らないよ?
見ての通り、付き添いも無しの私の単独行動!というわけで、あらためて本題だけど──」
ミカ「…先生、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?」
ウォルター「取引…」
ミカ「例えば、そうだなぁ……「トリニティの裏切り者を探して欲しい」、とか」
ウォルター「……」
ミカ「……ふぅ、やっぱり、もうナギちゃんったら、予想通りなんだから」
沈黙を肯定と捉えたのか、ミカはやれやれと肩をすくめる
ミカ「何か詳しい情報とか?そう言うのは何も無しで、ただ「探して」って言われた感じ?
理由とか、目的とかは?どうして補修授業部がこう言うメンバーで構成されてるのかとか、ナギちゃんは教えてくれなかった?」
ウォルター「……」
ミカ「……そっかー、もう、何も教えずに先生にこんな重荷を背負わせるなんて……」
ウォルター「俺はその仕事は受けていない」
ミカ「……え?そうなの?どうして?」
ミカが目を丸くする
ミカ「自分の生徒たちを疑いたくないから?それとも……」
ウォルター「それは、俺の受けるべき仕事ではない」
ミカ「……へえ?」
ミカ「そっかそっかぁ……確かに先生は「シャーレ」の所属だもんね
トリニティとは本来無関係の第三者」
ミカ「なるほどね、まあ、私たちにとってはずっと「トリニティ」そのものが世界の中心みたいな感じだから、アレだけど……
面白い答えだね!なるほど、新鮮かも、それはそれで正しいよね」
ミカ「……それじゃあ先生は、誰の味方?
もしトリニティの味方じゃないんだとしたら……ゲヘナの味方?連邦生徒会の味方?それとも、誰の味方でもない……とか?」
ウォルター「…誰の、味方…か」
…アビドス、対策委員会…ミレニアム、ゲーム開発部、エンジニア部、ヴェリタス…ゲヘナ、風紀委員会…トリニティ、補習授業部、正義実現委員会、シスターフッド…
思えば様々な生徒たちと交流を持った
どれも仕事だ、仕事だから協力した…
ウォルター「……」
…だが、キヴォトスに来て、先生という役割を持って、それは少し変わり始めている
ウォルター「…俺は、生徒の味方だ」
ミカ「……」
ミカ「あ、あぁー…生徒の味方、かぁ……そっかぁ…それは、予想外だったなー……」
ミカ「……あ、あのさ…っていうことは、その……
先生は一応、私の味方である……って考えてもいいのかな?私も一応この立場とはいえ、生徒に変わりはないんだけど…」
ウォルター「ああ、俺は
ミカ「……わーお、さらっとすごいことを言ってのけるね、先生……」
むしろ、その在り方を決める理由になり得たのも…
ウォルター「先の道を生きてると書いて“先生”…だったか」
ミカ「…!」
ウォルター「……そういうことだ」
ミカ「大人だねぇ、そう言う話術?って思う気持ちもあるけど……うん、ちょっと純粋に嬉しいかも…えへへ……
でも、それを額面通りに受け取るのもちょーっと難しいなぁ……だってそれは同時に、誰の味方でもないって解釈もできるよね?」
ミカ「だからそのまま受け取るんじゃなくて、私から先生に、取引を提案させてもらおうかな」
ウォルター「取引…」
ミカ「補習授業部の中にいる、「裏切り者」が誰なのか、教えてあげる」
ウォルター「……何?」
ミカは、それが誰かを知っている
本当にそうなのか?なぜ知っている?
ミカ「ナギちゃんの言う、「トリニティの裏切り者」、今必死に探して退学にさせようとしているその相手
実際のところ、もう少し複雑で大きい問題もあるんだけど……」
ミカ「今このまま、先生がナギちゃんに振り回される姿をただただ見てる……なんていうのは、ちょっと申し訳ないなって
…そもそも、先生のことを補習授業部の担任として招待したのは私だからね、そのことは知ってた?」
ミカ「ナギちゃんにはずっと反対されてたんだけどね
せっかくの借りをこんな風に使うのはどうとかこうとかで、先生とナギちゃんの間に、いろいろあったんだね?
……まあ、私の方にも色々あって、トリニティでもゲヘナでもない、第三の立場が欲しかったの」
ウォルター「……」
ミカ「……ああ、「裏切り者」のお話しだったね
補習授業部にいる、「トリニティの裏切り者」、それは……」
ミカ「……
……
アズサ「……」
「遅かったな」
アズサ「……」
「首尾は?」
アズサ「……今のところ、計画通り」
……
ウォルター「…そうか」
ミカ「うん、知ってるかもしれないけどあの子、実はトリニティに最初からいたわけじゃないんだ
ずいぶん前にトリニティから分かれた、いわゆる分派……「アリウス分校」出身の生徒なの
……うーん、よく考えると、「生徒」って呼んでいいのかもわからないんだけどね」
ミカ「「何かを学ぶ」と言うことがない生徒のことを、生徒って呼べるのかな?」
ウォルター「この話の目的はなんだ」
ミカ「……ふふっ…全部見通されてるみたい、期待しちゃうな
あれこれ誤魔化しても仕方なさそうだし……うん、端的に言おっか」
ミカ「あの子を、守ってほしいの」
ウォルター「……どう言う意味だ」
ミカ「…あー、ごめんね、ちょっと単刀直入すぎたかな?ナギちゃんの悪い癖が移っちゃったのかも
戸惑ってる先生のためにもう少し最初の方から説明してみようかな?
私はナギちゃんやセイアちゃんみたいに、あんまり頭がいいわけじゃないんだけど……ちゃんと伝わるように、頑張ってみるね!」
ウォルター「……ああ」
ミカ「まず、この「トリニティ総合学園」について、ナギちゃんがこの前言ってた通り、その1番の特徴は「たくさんの分派が集まってできた学校」だってこと
パテル、フィリウス、サンクトゥス…この三つの分派がトリニティの中心になったって言うのは前にも話した通り
でも正確には他にも、今の救護騎士団の前身にあたる派閥とか、シスターフッドとかも含めた大小さまざまな派閥がいくつもあるの」
ミカ「もともとそう言うたくさんの派閥が、まるで今のトリニティとゲヘナみたいな形で、お互いにお互いを敵視してて
毎日毎日、紛争ばっかりの時代があったんだって
そこで、もうこれ以上戦いを続けるんじゃなくて、仲良くしようって言う約束をすることになったの
私たちはもう戦わなくていい、一つの学園になろう……そんな話をしたのがいわゆる「第一回公会議」」
ウォルター(…トリニティについて調べた書類と大体は一致している…)
ミカ「あ、知ってた?そうだよね、それで…その会議を経て生まれたのが、今の私たちがいる「トリニティ総合学園」
今でも分派だった頃の余波が無いと言えば嘘だけど……時代の流れってところかな?今ではもう、そんなの全然気にしてないって言う声の方が多いはず
でもその会議は、円満に話し合いが終わったわけじゃなくて……その時、最後まで反対していた学園があったの
それが、「アリウス」」
ミカ「元々は私たちとあんまり変わらなかったはずの、一つの分派
経典に関するちょっとした解釈の違いがあったくらいで、結構いろんなところが似てたんだって
ちゃんとチャペルの授業もあったし、見た目もほとんど一緒で……それでいて、ゲヘナの事を心底嫌ってた
でも、そのアリウスは連合を作ることに猛烈に反対して……最終的には、争いに繋がっちゃったの
連合になって強大な力を持つようになったトリニティは、その大きな力でアリウスを徹底的に弾圧し始めた」
ミカ「あまりにも大きな力を持ちすぎると、その強さを確認したがる…
なんて言うのはよく有るお話だよね、つまりアリウスは悲しいことにちょうど良いターゲットになったのかもしれない
そうして、アリウスは潰された…トリニティの自治区から追放されて、今は…詳細はわからないけど、キヴォトスのどこかに隠れてるみたい
相当激しい戦いだったんだろうね、その後全然見つからないような場所に隠れたみたいで、多分、連邦生徒会ですらその自治区がどこにあるのかわかってないくらいなの」
ミカ「大半の生徒たちにとっては、「そんな学園あったっけ?」って感じだと思う
ほとんどはきっと、そんな争いがあったことすら知らない
そうして表舞台に姿を表さなくなって、今となってはその影すらも薄くなってしまった存在……それが、アリウス分校だよ」
ウォルター「…
ウォルター(…となれば、恨みは深いだろう……)
それほどの意思を注いだ人間がどうなるかは、身をもって知っている
ミカ「うん、それで…ナギちゃんが推進しているエデン条約は…さっき話した「第一回公会議」の再現なの
エデン条約…大きな二つの学園が、これからは仲良くしようねって約束
……なんだか、良いお話に聞こえるよね?でも本当のところはどうだろ
だってその核心は、ゲヘナとトリニティの武力を合わせた
ウォルター「…武力集団」
ミカ「そう、エデン条約っていうのは、言ってみればある種の武力同盟
トリニティとゲヘナの戦力を合わせた、ひとつの大きな武力集団の誕生が目的……
そんな、圧倒的な力を持つ集団が誕生するの……連邦生徒会長が行方不明って言う、こんな混迷の時期に
その大きな力を使って、ナギちゃんは果たして何をしようとしているのかな?
会長が不在の連邦生徒会を襲撃して、自分が連邦生徒会長にでもなるとか?
それともミレニアムっていう新しい芽を摘んでおくとか?」
ミカ「もちろん細かい目的は知らないけど……でも、これだけはハッキリ言えるよ
そんなに大きな力を手に入れたら、きっと自分が気に入らないものを排除する……
昔、トリニティがアリウスにしたみたいにね…
あるいは、セイアちゃんみたいに──」
ウォルター「何?」
ミカ「……ううん、ごめんね、今のは失言だったかな」
ウォルター「…
まるで、始末されたとでも言いたいような…
ミカ「……」
ミカ「…そうだよ、入院中」
ウォルター「…一度話を聞きたい、どこに居る」
ミカ「うーん……先生は、ほんとに知りたい?
……この話をしたら、私は戻れない…もしこの先の事実を知った先生が、私のことを裏切ったら……私はきっともう終わり
それでも、知りたい?」
ウォルター「……」
ミカ「…うん、でも大丈夫だね、だってさっき、先生は私の味方って言ってくれたもん
もしこれで裏切られたって、なんていうのかな……うん、それはそれで悪くないと思う、えへへっ」
ミカ「セイアちゃんは入院中なんかじゃない……ヘイローを、壊されたの」
ウォルター「…ヘイローを」
ヘイローを壊された、それは、つまり…
ウォルター(…死…?……いや、だが…)
ミカ「……冗談じゃないよ、本当のこと
去年、セイアちゃんは何者かの手によって唐突に襲撃された
対外的には入院中ってことになってるけど……そっちの方が真実、私たちティーパーティを除けば、このことはまだトリニティの誰も知らない
もしかしたらシスターフッドには知られてるかもだけど……あそこの情報網は半端じゃないからね
とにかく、それくらい秘匿事項なの」
ウォルター「…襲撃犯は」
ミカ「……うん、わかってない、捜査中って言うか、何もわかってないっていうか……もともと、セイアちゃんは秘密の多い子だったこともあってね
……うん、まあそういうことなんだ…」
ウォルター(……)
ミカ「とは言っても、目星がついてないわけではないんだけど……今の段階でただの推測を口にするのもね
…それで、話を戻すんだけど、
ウォルター「何?」
ミカ「ナギちゃんには内緒でね、生徒名簿とかそういう書類を全部捏造して、あの子を入学させた
…どうして?って思うよね…
アリウス分校は今もまだ、私たちのことを憎んでる
私たちはこうして豊かな環境を謳歌しているのに、彼女たちは劣悪な環境の中で、「学ぶ」と言うことがなんなのかもわからないままでいる……
私たちから差し伸べた手も、連邦生徒会からの助けも拒絶し続けてるの…過去の憎しみのせいで」
ミカ「……私は、アリウス分校と和解がしたかった
でもその憎しみは、簡単には拭えないほど大きくて……これまでの間に積み上がった誤解と疑念もあまりにも多い
私の手には、負えないくらいに
けど、ナギちゃんもセイアちゃんも、私の意見には反対だった……政治的な理由でね
でも、それもわからないわけじゃない、だって私達はティーパーティーだから」
ミカ「私は不器用だから、そう言う政治とかはちょっと得意じゃないんだけど……でも、また今から仲良くするのってそんなに難しいのかな?
前みたいにお茶会でもしながら、お互いの誤解を解くことはできないのかな?
私はあの子……「
あの子についてはそれほど詳しいわけでもないんだけど、アリウスでもかなり優秀な生徒だったみたいだし、その可能性に賭けたかった」
ウォルター「…ならば、なおさら
ミカ「説得するのも考えたけど…そこは、ちょっと疑っちゃったっていうか……
ナギちゃんはそういうの、聞いてくれないだろうなって思って
もしエデン条約が締結されたら……その時はもう今度こそ本当に、アリウスとの和解は不可能なものになっちゃう
だから、どうにかその前に実現させたかった」
ミカ「アリウスの生徒がトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれるんだってみんなに証明して見せたかった
でも、そんな中でナギちゃんがトリニティに「裏切り者」がいるって言い始めて……
……ナギちゃんがどうしてそんな事を考え始めたのかはわからない、私がそうやって動いてる時に、何かやらかしちゃったのかもしれない
それでナギちゃんは条約の邪魔をさせないように、補習授業部を作ったの」
ミカ「最初は補習授業部ってなんのことかと思ったけど……あ、そういえば先生、なんであの子達なのかって、聞いたことある?
あそこにいるのは、ナギちゃんが疑ってる子」
ミカ「ハナコちゃんはすごい変わったところがあるけど、本当に本当に優秀な生徒、
もちろん成績って意味でもね、何なら生徒会長、つまりティーパーティーの候補としてあがったくらいなの
シスターフッドも、あの子を引き入れようと頑張ってたって聞いたな、上手くはいかなかったみたいだけど
礼拝堂での授業で、あの
ウォルター(……)
ミカ「……でも、あんなに優秀で将来を見込まれてたのに、あの子は急に変わっちゃったの
落第直前の状態になるくらいに……どうしてだろうね?
たしかに?それで探りを入れたくなる気持ちはよくわかる、あの子はすでにトリニティの上層部とか色んなところと交流があって、結構な数の秘密を知っちゃってたこともあって
ナギちゃんにとっては、気にせざるを得ないだろうね」
ウォルター(…なるほどな)
ミカ「コハルちゃんだっけ…あの子はどろどろした政治とか、そんなこととは何の関係もない、純粋な良い子らしいけど
なんであの子がって話をすると……ああ、そう言う意味ではあの子は、「疑われたから」じゃないかな?
その直接的な原因は本人じゃなくて、ハスミちゃんたちだね」
ウォルター「正義実現委員会を危険視していると言うことか」
ミカ「巨大な武力を持った存在、それも特にハスミちゃんみたいにゲヘナへの強い憎しみを持っている存在が、自分の統制下にないという不安感……
何かが起こるんじゃないかって言う疑念
ナギちゃんはそこに対して何かしらの備えが欲しかったんだと思う
正義実現委員会だったら多分、誰でも良かったんじゃないかな?ただとりあえず、成績が悪かったからあの子が選ばれた
つまりあの子は人質、だから「退学」の件については多分、ハスミちゃんも知ってたはずだよ」
ウォルター(…なら、何故俺に何も言わない…やはり、切り捨てたのか…?)
ミカ「それはハスミちゃんがそんなことするはずない、って言う顔かな?
うーん、先生がハスミちゃんとどれくらい仲がいいのかは知らないけど……
前、こういうことがあったって聞いたよ」
……
ツルギ「……」
マシロ「……」
正実部員A「は、ハスミ先輩、落ち着いてくださ──」
ハスミ「絶対に、絶対に許しません!!
ゲヘナっ!!どうして、どうしてあそこまで……!!
正実部員B「ひっ…」
ハスミ「はぁ、はぁ…!
……よく、よく聞いておいてください、私は今ここに、宣言します」
ハスミ「これから、私は……っ!」
……
ミカ「ハスミちゃんはトリニティの武力集団、正義実現委員会の副委員長だし、ゲヘナのことをものすごく憎んでる
エデン条約に全力で反対するだろうっていうのは、火を見るよりも明らかじゃない?
あのゲヘナとの同盟なんてーって
ウォルター(…恨みはあるのだろう、だが…だとすれば何故、何も行動しない?
ミカ「あとは……ヒフミちゃんか」
ミカ「ヒフミちゃん、優しくて可愛くて、良い子だよね
ナギちゃんもすっごく気に入ってる……でも、それでもナギちゃんの疑いの目が向いちゃったの
どうやらこっそり学園の外に出て、怪しいところに行ってたみたい、トリニティの生徒は出入り禁止になってるブラックマーケットとか、あちこちにね
それに、どこかの犯罪集団と関わりがあるって情報も流れてきた…あんなに善良そうで、純粋な子に見えるのに、わからないよね……」
ウォルター「…………………」
ミカ「ナギちゃんだってヒフミちゃんの事を気に入ってるのに、それでも疑いの目は向けられた
まあそれも、ナギちゃんらしいといえばナギちゃんらしいんだけど
それで、ナギちゃんのなかにあった「トリニティの中に裏切り者がいるかもしれない」と言う疑いは、色々と情報が集められていく中で
「あの中の誰がトリニティの裏切り者なのか?」って言う疑念に変わったんじゃないかな」
ミカ「もういるのかどうかなんて話はしてない、「裏切り者」はナギちゃんにとっては確定路線の現実問題になってる
……それが、今の状況、ちょっと長かったけど…これで今私が知っていることは全部話せたかな?」
ウォルター「……裏切り者か」
そもそもトリニティの生徒ではなく、潜入している者
期待されていた未来を投げ捨てて、何かに走った者
ただの人質に、近しいからこそ疑われた者
ミカ「……「裏切り者」っていう言葉が何を指すのか、それを多少はっきりさせた上でなら、ちゃんと解答は出せるの
まずナギちゃんは今きっと、「自分たちを、トリニティを騙そうとしている者がいる」って思ってる、誰かがスパイなんじゃないかって」
ミカ「そういう意味で、今ナギちゃんが言ってる裏切り者は、経歴を偽って入り込んでる「白洲アズサ」
あの子はさっき話した通り、本来トリニティと敵対してるアリウスの生徒だから
あの子は私のせいで何も知らないまま、こんな複雑で政治的な争いのど真ん中に立つことになっちゃって…
でも、こんな形であの子を退学なんてことにさせちゃいけない」
ミカ「だから、守って欲しいの…それは今、先生にしかできないことだから
それから、ある意味では…裏切り者は、私でもあるよね、私はナギちゃんの条約に賛成の立場じゃないから
ホストじゃない私には何の力もない以上、邪魔も何もできないんだけど」
ウォルター「……なるほどな」
ミカ「それと、別の観点からは同時に、こんな言い方もできるよね?
「トリニティの裏切り者」……それはナギちゃんだっていうこともできる、違う?
これまで調和を保ってきたトリニティを、巨大な
ミカ「……まあ、これも含めて、私からの一方的なお話でしかないよ
だから、もちろん最終的には先生が決めて
白洲アズサを守るのか、裏切り者を見つけるのか…ナギちゃんを信じるのか、それとも私を信じるのか」
ウォルター「…
ミカ「あの子のことについては私に責任があって……でも、私にはただお願いすることしかできないから」
ウォルター「違う、そういう意味ではない」
ミカ「え?……じゃあ、もしかして私のことを心配してくれてる?
あはっ、本当に優しいね、先生は…うーん、なんだかつい勘違いしちゃいそう
私の心配は大丈夫、こう見えても私、結構強いんだから♪」
ミカ「じゃあ、今日はこんなところかな、先生とまたこうしてお話できて、楽しかったよ
それにあんまり2人でずっと居ると、変な噂がたっちゃいそうだもんね…ふふっ
まあ、私はそれはそれで構わないんだけど、じゃ、またね、先生」
ウォルター(…読み切れない、か)
…わからない、だが、ミカは自身が狙われる可能性を理解している
ゲヘナとの条約、
ウォルター(……俺がするべきことは、4人の試験を合格させること、そして…)
“生徒を守る”こと