燃え残り 作:名無し
ダダダダダダッ!ダダダッ!ドカーン!
ドドーン!ドカーン!!
アコ「…これは…まさかここまで押されるとは、想定外ですね」
イオリ「クソッ…!もうメチャクチャだ!」
ウォルター「
ハルカ「は、はい!」
…最初の任務の時点でなんとなく分かってはいたが…
イオリ「ッ!…真正面からだと…!良い的だ!」
イオリがスナイパーライフルを向け、即座に引き金を引く
ハルカ「うぁっ!」
ウォルター(良い速射だ、だが…伊草には足りないな)
イオリ「ふんっ……え?」
ハルカ「許さない許さない許さない許さない許さない…!」
伊草ハルカの強みは、その打たれ強さだ
いくらキヴォトスの人間が銃を撃たれても死なないとは言え、ダメージは受ける、特に高威力の弾丸が直撃すれば普通なら気を失う…
にも関わらずだ、それを耐える
直撃を受けたにも関わらず、速度を落とさず迫ってくるその様は…一度痛い目を見た側からすれば…
イオリ「こ、このっ…!」
恐怖の対象に他ならない
バンッ!バンッ!
ハルカ「うぅ…!」
見事なものだ、顔に明らかに恐怖の色が浮かび、脂汗が馴染んでいるのに確かに当てている
だが、先程のような体の中心への直撃ではなく、脚や腕への被弾…これでは、止まらない
ハルカ「許さない許さない許さない許さない…!」
イオリ「う、うああぁぁぁーーっ!?」
ドカッ!…ゴリッ!ギチ、ギチチッ…
長物である以上懐に入り込んで仕舞えば反撃の手段はない
ハルカ「死んでください死んでください死んでください…!!」
ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!
カチ…カチャッカチャッダンッ!ダンッ!ダンッ!
チナツ「……助けるのは…無理そうですね」
ウォルター「
チナツ「っ…先生…!」
チナツが銃に手をかける
ウォルター「……」
チナツ「…ずるいですね、自分が撃たれたら死ぬ事を利用するんですか…?」
ウォルター「それが通用する相手ならそうする…」
…日常的に誰かと撃ち合うような世界なのに
この世界はあまりにも優しすぎる
いや、銃を撃つという行為が殴る蹴るの延長線上にあるというだけなのかもしれない
だが、それは命を奪わないことが前提だ
相手が死ぬとなれば銃口を向けない
ウォルター「……」
だんだんとわかってきた
ここに居るのは、殺し合いの中で生きて心をすり減らした少年兵でもなんでもない
今を普通に生きている子供達なのだと
だから、その倫理観から外れることはしない
子供だ、どうしても子供なのだ
やって良いことと悪いこと区別がつく、そして銃の扱いに慣れてしまった子供
ウォルター「…火宮、お前は…キヴォトスが嫌いか?」
チナツ「え?…いいえ、どうしてですか?」
ウォルター「気になっただけだ」
…引き金を引く事が命を奪うことにつながらない世界…か…
ウォルター(…たとえMTやACが現れても、その延長線上なのだろう)
だからブラックマーケットでも珍しいスクラップ止まり…
だが、だが、アレは…キヴォトスにあった物ではない、俺と同じ異物だ
…俺と同じ、あの世界で焼けて消えられなかった存在だ
この世界には、似つかわしくない
ウォルター(…アレは、おそらく人為的に持ち込まれた物だ)
そう考える理由は2つ
1つは、俺が連邦生徒会長によって指名された存在、つまり、なんらかの方法で連邦生徒会長が俺をキヴォトスに連れてきたからだ
わざわざ指名して連れてくる手段が無いはずがない
もう1つは…あのガードメカのスクラップだ
本来操縦席がある部分に何もなかった、つまり無人機だ
という事は、アレはただ持ち込まれたわけではない、何者かの手が加えられている…
…この世界には銃や戦車がある
暴力の手段は充分すぎるほどにある、なのにわざわざそれを持ち込むという事は…何かしらの目的があるはずだ
そして、そこに俺の意味も…
ウォルター「……しかし」
アコ「第8中隊、前へ」
ザッザッザッザッザッザッ
ウォルター「まだ増援が出るのか」
チナツ「……」
カヨコ「これはアコの権限で動かせる兵力を超えてるね」
ムツキ「ってことは〜…風紀委員長が?」
アル「え!?ヒナが来るの!?無理無理!逃げるわよ!!」
カヨコ「いや、そうは言ってない、落ち着いて…」
ウォルター「…ヒナとは、何者だ?」
チナツ「ゲヘナ風紀委員会の委員長…ゲヘナにおいて最強の称号を欲しいままにしている人です」
ウォルター「最強の生徒か…」
アコ「どうですか?そろそろ降参してはいかがでしょう、こちらはまだまだ待機している部隊が…」
ザザザッ…
ウォルター「通信?…新手か」
ヒナ「アコ」
ウォルター「…誰だ?」
アコ「ひ、ひ、ヒナ委員長!?」
シロコ「通信が混線してる…」
セリカ「委員長って事はこの通話相手がゲヘナ風紀委員会のトップ?クレーム入れてやろうよ!!」
アヤネ「おそらく無理ですね…通話の受信チャンネルはオープンですが、送信チャンネルはプライベートの様です」
アコ「い、い、委員長がどうしてこんな時間に…?」
ヒナ「アコ、今どこ?」
アコ「わ、私ですか!?私は…そ、その…えっと……ゲヘナ近郊の市内の辺りです!封会員のメンバーとパトロールを…」
セリカ「思いっきり嘘じゃん!」
カヨコ「アコの単独行動か…まだ良かったのかな」
アコ「そ、それより委員長はどうしてこんな時間に…?出張中だったのでは…?」
ヒナ「さっき帰ってきた」
アコ「そ、そうでしたか…!その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはならない用事がありまして…!後ほどまた連絡します!今は立て込んでまして…」
ヒナ「立て込んでる?パトロール中なのに珍しい、何かあったの?」
アコ「え?その、それは…」
ヒナ「ほかの学園の自治区で、風紀委員のメンバーを、独断で運用しないといけないような事が?」
アコ「……え?」
ウォルター「…居るな」
居た、ビルの屋上からこちらを見下ろしている
シロコ「…上…!」
全員が上を見上げる
ヒナ「……」
アコ「…えっ?」
ノノミ「あ、あれが…?」
イオリ「…うう…?…あ!?い、い、委員長!?いっ、一体いつから!?」
チナツ「な、何故…」
アコ「…えっ…?」
アコ「えええええええええっ!?」
ヒナがビルから飛び降り、腰から生えた巨大な翼をはためかせて勢いを殺し、地面に降り立つ
…小さい少女だが、その体躯から放たれるとは思えないこの圧は。
ヒナ「アコ、この状況、きちんと説明してもらう」
アコ「こ、これは…その…素行の悪い生徒たちを捕まえようと…」
ヒナ「便利屋68のこと?」
ウォルター「……」
ヒナ「どこにいるの?どう見ても、アビドスと対峙してるように見えるけど」
アコ「え、便利屋ならそこに…」
…アル達が居ない
ウォルター(あの高さから見ていたなら逃走も見ていただろう、身内の不祥事を重く見てわざと見逃したか)
ヒナ「それにそこに居るのは…シャーレの人?」
ウォルター「ハンドラー・ウォルターだ…なかなか食わせ物のようだな、委員長」
ヒナ「それはどうも、シャーレの先生…アコ、状況は大体察してる、でも…いい?私達は風紀委員会であって生徒会じゃない
シャーレ、ティーパーティ、連邦生徒会、そういうのは
アコ「……」
ヒナ「詳しい話は帰ってからする、通話を切って校舎で謹慎してなさい」
アコ「……はい」
全員「……」
ウォルター(…強い、この場にいる者では誰も敵わないだろうな…)
シロコ「じゃあ、続きをやろうか?」
アヤネ「ま、まってください!?ゲヘナの風紀委員長、
なんでそんなに戦うのが好きなんですか!まずは交渉しましょう!」
シロコ「ご、ごめん…」
ウォルター「風紀委員長、この状況については理解しているか?」
ヒナ「……」
ヒナが周囲を見渡し、こちらを見る
ヒナ「もちろん
事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、および他校生徒達との衝突
……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実、違う?」
アヤネ「!?」
シロコ「…それはそうかも、それで?」
ノノミ「私たちの意見は変わりませんよ?」
セリカ「やるならやるわよ…!」
アヤネ「ちょ、ちょっと待ってください…!便利屋の人たちもいない、あっちの兵力は変わっていない!どういうわけか味方を止めるのも難しいし…!」
ウォルター「落ち着け、奥空…風紀委員長、そちらの行動が公務だというのなら、アビドスが自治のために動く事もまた公務だ
その理屈は通らない」
ヒナ「……」
ウォルター「少なくとも、これだけの人数で侵攻してこの規模の戦闘を行った、アビドス自治区でだ、当然、その責任は問われる」
ヒナ「何が言いたいの?」
ウォルター「…ここまでにしておけ、これ以上の戦闘はアビドスへの攻撃でしかない」
ホシノ「え〜?もう既にメチャクチャみたいだけと?」
シロコ「!」
セリカ「ホシノ先輩!?」
ウォルター「
ホシノ「うへ〜、ごめんごめん、昼寝してたらスマホの電源落ちててさ〜」
ヒナ「…!…小鳥遊ホシノ…!」
セリカ「昼寝ぇ〜!?こっちは大変だったって言うのに!」
シロコ「ゲヘナの連中が攻めてきた」
ホシノ「ゲヘナの風紀委員会かぁ〜、便利屋を追ってきたの?
うーん、事情はよくわからないけど、これで対策委員会は全員揃ったよ、と言う事で改めてやり合ってみる?風紀委員長ちゃん?」
ヒナ「……1年生の時とは随分と変わった、別人かと思うくらいに」
ホシノ「…んー?私のこと知ってるの?会ったことあったっけ?」
ヒナ「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒はある程度把握してたから
特に小鳥遊ホシノ、あなたのことを忘れるはずがない、あの事件の後、アビドスを去ったと思っていたけど」
ホシノ「……」
ホシノの目つきがやや鋭くなる
ヒナ「…そうか、そういうことか……だからシャーレが…?」
ヒナが小さくため息をつく
ヒナ「…まあいい、私も戦うためにここまできたわけじゃないから…イオリ、チナツ」
イオリ「…委員長」
チナツ「はい」
ヒナ「撤収準備、帰るよ」
イオリ「えっ!?」
アヤネ「帰るんですか!?」
ヒナ「……」
ヒナがホシノの方を向き、頭を下げる
ホシノ「えっ?」
シロコ「!」
ノノミ「あ、頭を下げました!?」
ヒナ「今後、ここにゲヘナの風紀委員会が無断で侵入する事は無いと約束する、どうか許してほしい」
チナツ「委員長…」
イオリ「ま、待って委員長!あの校則違反者達…便利屋はどうするんだ!?」
ヒナ「……」
ヒナが顔を上げ、睨むだけで周りの生徒達がすくみ、イオリも黙る
ヒナ「帰るよ」
──
アヤネ「噂以上の迫力でした…あれだけの大群を一瞬でまとめ上げて帰っていくなんて…」
シロコ「勿体無い、せっかく強い人と戦えるチャンスだったのに」
ホシノ「うへ〜…全然状況が飲み込めないんだけど…」
ノノミ「説明したいところですけど、私たちもわからない事が多くて…」
アヤネ「そうです…なんで風紀委員長がここまで来たのか、何もかもわからない事だらけです…!
と言うか、いつの間にか先生もいませんし…!」
シロコ「ん…勝手に逃げた便利屋を捕まえに行ったとか?」
セリカ「あ、そういえば!大将は!?」
アヤネ「軽傷です、ご自分で病院に行かれました」
セリカ「そ、そっか、よかった…」
──
イオリ「…はぁ……まだ全身痛いよ…」
チナツ「イオリ、大丈夫ですか?」
イオリ「ショットガンを突きつけて、組み伏せた状態で連射…意識を失っても撃ち込んできて…
うう…頭のうしろへこんでない…?」
チナツ「大丈夫ですよ」
イオリ「アコちゃんには切り捨てられて怒られるし、委員長には睨まれるし…今日はついてない…」
チナツ「……そうですね、ところで…アレ…何故委員長と先生が一緒にいるんでしょうか」
イオリ「あ、こっち見た…」
チナツ「…なんでしょう、あの可哀想な犬でも見る目は…」
イオリ「…今日は本当についてない…」
──
ヒナ「わざわざついてきてくれてありがとう、シャーレの先生」
ヒナが差し出した缶コーヒーを受け取り、公園のベンチに腰掛ける
ウォルター「それで、話とはなんだ」
ヒナ「…言いたい事は2つ、1つは…先生、自分が銃弾に当たったら死ぬ事は理解してる?」
ウォルター「…ああ」
ヒナ「なら、あんな戦場のど真ん中に来ないで、みんなを人殺しにしたいの?」
ウォルター「誰もそうなりたくないから、俺は撃たれていない」
ヒナ「…それでも誤射の恐れはある…気をつけて」
ヒナがめんどくさそうにため息をつく
ヒナ「それと、これは万魔殿もティーパーティもまだ知らない筈だけど…」
ウォルター「ゲヘナとトリニティの生徒会が知らない事か」
ヒナ「…カイザーコーポレーションについては、そこそこ調べてるみたいだけど、アビドスの破棄された砂漠にPMCを集めてるのは知ってる?」
ウォルター「…砂漠に、PMCか…」
ヒナ「そう」
ウォルター「やはり、カイザーの目的は“宝探し”か」
ヒナ「…宝探し?どうしてそう思うの?」
ウォルター「砂漠に埋まった何かがある、だから…カイザーは砂漠に戦力を集中させる」
ヒナ「そう断定する理由は?」
ウォルター「…経験だ、目的の物がどこにあるかわからない、だからその周辺を制圧し、確実に自分たちの物にできるようにする…
目的の物が近づくほど、攻撃は激しくなる」
ヒナ「……」
ウォルター「だが、何故それを教えた?」
ヒナ「本当なら、廃校予定のアビドスに教える理由はないけど…一応、ね」
ウォルター「……」
ヒナ「じゃあまた、先生」
ウォルター「待て」
ヒナ「…何?」
ウォルター「今は手元に書類が無いが」
タブレットにヒフミに渡した書類と同じデータを写し出す
ウォルター「確認しろ、トリニティの生徒に渡した資料と同じ、ブラックマーケットに一機流通した兵器と、その他流通すると予想される兵器だ」
ヒナ「……」
ヒナがベンチに座り直し、タブレットをじっと見つめる
ヒナ「…戦車よりは厄介か…ゲヘナに流通したら面倒に…」
ウォルター「……」
──
ヒナがタブレットと自身のスマホを繋ぐ
ヒナ「コピーまで取らせてくれてありがとう、今後の対策資料として使わせてもらう」
ウォルター「……」
ヒナ「なに?じっと見つめて…」
ウォルター「…お前のような奴を見た事がある」
ヒナ「…そう」
ウォルター「誰も寄せ付けない強さを持っていた、俺の知る限り、1番強かった」
ヒナ「それで?」
ウォルター「…だが、欠点があった」
ヒナ「欠点?」
ウォルター「…休むことを知らない奴だった、空崎、お前は休んでいるか?」
ヒナ「……」
ヒナがポカンとした表情でこちらを見る
ウォルター「…余計な世話だったか」
ヒナ「……ふふ、いや、心配してくれてありがとう、ウォルター先生
私は大丈夫だから」
ウォルター「そうか…」
ヒナがスマホからケーブルを抜き取り、立ち上がる
ヒナ「それじゃ、また…便利屋がまた何かしたら頼ってくれていいから」
ウォルター「…ああ」
─病院─
アヤネ「大将、こんにちは、お見舞いに来ました」
セリカ「大丈夫?」
柴大将「ああ、大丈夫だよ、わざわざありがとうな」
セリカ「…お店、その…」
柴大将「ああ、バイトできなくなっちゃってごめんな、セリカちゃん」
セリカ「そういう問題じゃないわよ…」
柴大将「そもそも、もう直ぐ店もたたむ予定だったからな、予定がちょっと早くなっただけだ」
アヤネ「え?お店を?」
柴大将「ああ、ちょっと前から退去通知を受け取っていてね」
アヤネ「た、退去通知って?何の話ですか?アビドス自治区の建物の所有者はアビドス高校で……」
柴大将「……そうか、君たちは知らなかったんだな…
何年か前、アビドス生徒会が借金を返せなくて、建物と土地の所有権が移ったんだ」
アヤネ「え!?」
セリカ「う、嘘!?アビドスの自治区なのに!?じゃあ今は一体誰が…」
アヤネ「そんな…でも、そういうこもなら………調べなきゃ」
セリカ「あ、アヤネちゃん!?大将!まだ引退とか考えないでよ!わかった!?」
柴大将「お、おお…あ、そうだセリカちゃん最後に、さっき起きたらこんなカバンが置かれてたんだが、何か知ってるかい?
お金が入ってたし、どうしたもんかと…」
アヤネ「あ、そのカバンは…」
セリカ「1億円の…?…もしかして、便利屋…?中身もちゃんとある…」
アヤネ「…本当に先生の言うとおりみたいですね…そのお金は、お店の再建に使ってください、それでは!」
─アビドス・対策委員会─
ウォルター「…遅かったな、黒見、奥空」
セリカ「先生!どこ行ってたの!?」
アヤネ「そ、それよりも!大変です!」
ホシノ「どしたのさ、そんなに慌てて」
アヤネとセリカが机いっぱいの地図を広げる
アヤネ「地籍図と呼ばれる物です、土地の台帳のようなもので…直近の取引が記録されています」
セリカ「これで土地の所有者を確認できるの」
ノノミ「…所有者…?でも、アビドスの土地はアビドス高校の所有で…」
ウォルター「…把握していないのか」
ノノミ「え?」
ホシノ「…何?どう言う意味?」
アヤネ「先生はご存知だったんですね…」
セリカ「柴大将に聞いたの、柴関ラーメンやアビドス自治区のほとんどが…学校の所有じゃない」
ホシノ「え…!?そんなわけ…」
ホシノが地籍図をひったくり、読み込む
ホシノ「これって…」
ノノミ「これが、今の所有者…?」
ウォルター「…カイザーコンストラクション、カイザーのグループ会社だ」
アヤネ「すでに砂漠化した本来のアビドス高校本館やその周辺数千万坪の荒地、そして砂漠化していない市内まで…
所有権がまだ移っていないのは、今は本館として使ってるこの校舎と、周辺の一部の地域だけでした…」
ノノミ「で、ですがこんなこと…学校の自治区の土地を取引なんて普通できません…!」
ホシノ「生徒会がやれば、できるんだよ」
シロコ「!」
ホシノ「学校の資産の議決権は生徒会にある、それが可能なのは普通に考えてその学校の生徒会だけ」
アヤネ「はい、そのとおりです…取引の主体は前生徒会でした」
ノノミ「そんな…アビドスの生徒会は2年前になくなったはずじゃ…」
アヤネ「…はい、ですので、生徒会がなくなってから取引は行われていません」
ホシノ「そっか、2年前…」
セリカ「何をやってんのよ、その生徒会の奴らは!!
学校の土地を売る?それもカイザーコーポレーションなんかに!?学校の主体は生徒でしょ!?どうしてそんなこと…!!」
ホシノ「……」
ノノミ「こんな大事に私たちは気づかないなんて…」
アヤネ「……それぞれの学校の自治区は学校のもの、あまりにも当たり前の常識です
当たり前すぎて、借金の方にばかり気を取られて…気づけませんでした
もう少し早く気づけていれば…」
ホシノ「…ううん、それはアヤネちゃんが気にすることじゃないよ、これは対策委員会ができるよりも前のことなんだから」
シロコ「ホシノ先輩…何か知ってるの?」
ノノミ「そういえば、ホシノ先輩もアビドスの生徒会でしたよね?」
セリカ「え!?そうだったの!?」
アヤネ「…最後の生徒会の副会長だったと聞いています」
ホシノ「うへ…そんなこともあったね、まあ2年も前の事だし、そもそも私もその辺の生徒会の先輩たちとは実際には関わりはなくてさ…
私が生徒会に入った時にはもう生徒会の人はほとんど辞めちゃってたからその時はもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない、授業なんてものはもうとっくの昔に途絶えてた」
ホシノ「生徒会室もそう言われなければただの倉庫にしか見えなかったし、引き継ぎ資料なんてものは一枚もなかった
ちょうど砂漠化を避けようとして引っ越しを繰り返してた時期だったからねー
そもそも最後の生徒会って言ったって、新任の生徒会長と私の2人だけだったし…その生徒会長は無鉄砲で、会長なのに校内でも随一のバカで……私の方だって嫌な性格の新入生でさ」
ホシノ「いや〜、何もかもめちゃくちゃだったよ」
セリカ「校内随一のバカが生徒会長…?何それ、どんな生徒会よ…」
シロコ「成績と役回りは別だよ」
アヤネ「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに…」
セリカ「わ、わかってるって!何で私の成績の話になるの!?」
ホシノ「うへ〜、いやいや、まさにそのとおりだよ、生徒会なんて肩書だけで、おバカさんが2人集まっただけだったからね
何の間違いだか、生徒会なんかに入っちゃって…あの時はあちこちに行ったり来たりだったねぇ
ほんっとにバカみたいに何も知らないままにさ…」
ノノミ「……」
セリカ「ホシノ先輩…」
シロコ「……ホシノ先輩が責任を感じることじゃない
昔の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散になった後…アビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ」
ホシノ「う、うん…?」
シロコ「ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対誰よりも前に立ってる」
アヤネ「そうです、セリカちゃんを助けに行った時も誰よりも前で戦ってくれました!」
ホシノ「うへ〜、そうだっけ?よく覚えてないや」
シロコ「ホシノ先輩は色々ダメなところもあるけど、尊敬はしてる」
セリカ「それって褒め言葉なの?悪口なの?」
ホシノ「ど、どうしたのシロコちゃん!?急にそんな青春っぽいセリフを…そ、その…こう言う雰囲気ちょっと、慣れてないんだけど…!」
シロコ「…や、何となく言っとこうかなって」
ホシノ「え、えぇ…?」
──
ノノミ「では、何で前の生徒会はカイザーに土地を売ったんでしょうか?」
シロコ「実は裏で手を組んでたとか」
アヤネ「流石にないですよ…」
ホシノ「そうだね〜、私もしっかり関わってないけど、ちゃんと学校のためを思って頑張ってた人たちだったと思うよ
多分、最初は借金を返そうとしてたんだと思う」
ノノミ「お金のために土地を…」
ウォルター「だが、砂漠化した土地に価値などつくはずもない、利息を返す為に何度も売らざるを得なかった…
そうやって表向きの理由を作り、欲しいものを手に入れたか…賢い手口だ」
ホシノ「どう言う意味?」
ウォルター「悪質な罠に嵌められた、そう考えている」
セリカ「どう言うこと?」
ホシノ「あ〜……なるほど、そうか」
シロコ「アビドスにお金を貸したのも、取り立ててるのもカイザーコーポレーション…」
アヤネ「!!」
ノノミ「ということは…」
ウォルター「使えなくなった土地を安く買い叩き続け、アビドスをゆっくりとカイザーが支配する…」
シロコ「そう言う計算だった…?」
ホシノ「だいぶ前から計画してた罠だったのかもね…元々砂漠化で苦しんでた、切羽詰まって、カイザーローンなんかに手を出しちゃった…
切羽詰まると、人は何でもやっちゃう、よくある話なんだよね…」
アヤネ「…これでハッキリしました、カイザーコーポレーションの目的は、お金ではなく、土地だったんですね…」
ノノミ「でも、そうなると…何故土地なんでしょうか、買われた場所のほとんどが荒地と砂漠、砂まみれの廃墟なのに…」
アヤネ「そうですね、こんな土地では利益を手に入れられるとは…」
ウォルター「……ゲヘナ風紀委員会の空崎から聞いた事がある」
シロコ「あの強い人から?」
ウォルター「アビドスの捨てられた砂漠、そこにPMCを集めているそうだ」
ホシノ「アビドスの砂漠で…」
シロコ「何かを企んでる?」
アヤネ「そ、そんなことをどうしてゲヘナの委員長が…?」
シロコ「それに、どうして先生に?」
ウォルター「…そこまではわからん、だが…これについて調査が必要だ」
シロコ「ん、そうだね…」
ウォルター「行くぞ、仕事の時間だ」