鉄血のオルフェンズ 黒騎士 作:クソメガネザル
P.D.315年のいつか。
路地裏に響き渡る銃声に彼女は身を竦ませる。何事か、物陰から路地をそっと覗くと、少年達と目が合う。1人は齢にして己と同じ歳か、白い髪に金の瞳を持ち、もう1人は2つほど年下の黒髪にどこか、穏やかに見えなくない青い目だった。
「大丈夫ですの?」
「いっつ……なんだよ、アンタ」
「やめろ、ミカ。そいつは関係ねぇだろ」
「そっか。オルガ、次は何をすればいい?」
白髪の少年が宥め、スライドがオープンした拳銃を捨てて黒髪の少年は彼女を牽制する。が、興味をなくしてオルガと呼んだ少年に何をすべきかを聞く。
「このクソガキがぁぁ!」
追っていたであろうゴロツキがミカと呼ばれた少年に拳銃を向ける。その射線上にはその少女もいると言うのに。舌打ちする彼の背から、誰かがつぶやく。
「わたくし、撃たれるのは嫌ですわ」
落ち着いた声。ミカがそちらを向くと、少女がゴロツキに向けて小さな拳銃を突きつけていた。自分の使っていた拳銃よりも小ぶりなのに。その銃口は大きなものだ。
彼女は躊躇いもなく引き金を引き、先ほどよりも大きな音が路地に響く。
「があっ!? な、ひぃぃ、腕がぁぁ!?」
「死ね」
「待ってくだs」
利き腕に.44マグナム弾をぶち込まれたゴロツキはその場に蹲まり、命乞いをする。しかし、先ほどと同じく。彼女は躊躇いもなく、ただ冷酷に引き金を引いた。
白髪の少年はそれをただ見つめていた。着飾っている黒いストレートドレスはまるで喪服のようで、綺麗な顔立ちの少女に見惚れた。
住む世界が違う、そう印象付ける雰囲気に呑まれたとも言おうか。まるで死神のようだと、幼いながらも戦慄を覚えた。
ゴロツキは頭を撃ち抜かれ、死亡して。裏路地には血溜まりが二つ、不快な血の匂いがあたりに充満する。
しかめ面をした少女は無言でオルガに歩み寄り、取り出したハンカチで彼の額から流れる血を拭い、押さえる。
「いってぇ……いいのかよ、汚れんぞ」
「かまいませんわ。止血して、消毒は……お酒でもいいかしら?」
「おう……お前、変わってんな」
差し出されたお金をおずおずと受け取り。微妙な表情をする。それを聞き、少女は朗らかに笑う。
「これくらい、別になんともありませんもの……誰かが死ぬのは見たくありませんから。社会のゴミは別ですが」
「アンタ、すごいね。それ、まともに撃てないだろ」
「嗜み程度に銃器の扱いには慣れてますの」
強烈な存在感。それがオルガ・イツカと三日月・オーガスが出会った。彼女との馴れ初めだった、とさ。
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時はP.D.316年。
火星 アーブラウ領 クリュセ独立自治区に朝が来る。 太陽との距離が地球よりも遠く、テラフォーミングされて大気が造られたとはいえど火星の朝は冷える。そんな朝焼けを感じ取り、クリュセ自治区郊外に佇む屋敷にて1人の少女が目を覚ました。
「うーん……はぁ、いつも通り少し冷えますわね……」
「おはようございます、お嬢様。暖房の用意は必要でしょうか?」
「結構ですわ。節電を心がけなさい」
「承知いたしました」
ベットの隣に控えていた女性の提案をピシャリ、と却下しながらベッドの上で彼女は上体を起こす。長く黒い髪。 金の瞳を眠たげに瞼の上から擦る彼女の名前は『マリアンナ』と言う。
クリュセにてその名を知らぬ者はいない変わり者で有名なレージス家のお嬢様である。ベットの隣に佇んでいるのは《メイド隊》隊長こと。メイド長のナタリア・メレテスである。
「お嬢様のご起床です。皆さん、礼」
『おはようございます、お嬢様!』
「はい、皆さん。おはようございます」
朗らかな笑みを浮かべながら、お嬢様は皆の挨拶に応える。仰々しいが、これもまたレージス家の伝統なのだ。そう言い聞かせて彼女はナタリアにいつも通りの注文を伝える。朝のルーティーンにもなっている身支度だ。
「では、仕事の準備をしてくださいまし。 ワタクシも着替え、身支度致しますから」
「承知いたしました。 湯浴みの用意は整っていますのでご安心を」
「さぁ、素晴らしい朝を始めましょうか!」
その後を他の侍女メイドたちに任せて、ベッドから降りて立ち上がり、軽い足取りでマリアンナは風呂に向かう。寝汗と眠気をすっきりと風呂で落としてバスローブに袖を通す。
洗面台の鏡を前に笑顔の練習をしながら、侍女の差し出した歯ブラシを手に取り、歯の手入れ。
洗顔を流れるようにこなした彼女は薄く化粧を施す。そして、櫛を長い黒髪に滑らせ梳かしていく。
その後、着替えと朝食を済ませたマリアンナは自身のデスクに置かれている椅子に腰かけ、それに搭載された阿頼耶識システムに脊椎の端子を接続する。
阿頼耶識とはナニか……はるか昔。 MSに採用された有機デバイスシステムで、本来は宇宙作業機器の操縦用に開発されたシステム。
被験者の脊髄に埋め込まれた金属端子と機体を接続し、ナノマシンを介して脳神経とコンピュータを直結させることで、外部情報を脳内で直接処理することができるようになる。
しかし、この阿頼耶識と現代においては本来忌むべき人体に異物を入れる行為である。 しかし彼女は構うものかと、幼少の頃に無理を貫き通して当時は阿頼耶識の研究者でありながら、流れの医者だったとある男に資金援助を持ちかけて、阿頼耶識のインプラントを2本施してもらった。
彼女を止めるであろう両親は流行病ですでに他界していた頃、マリアンナは力を欲してその禁忌の遺物を肉体に施したのである。
さて、前置きが長くなったが、このクリュセ独立自治区においてハーフメタルやレアメタルの鉱山6つを有し、クリュセ独立自治区の多くの農場と経営コンサルタント事業を展開するレージス財閥のうら若き現当主。
その名前はマリアンナ・レージス嬢である。
「ヘクシュ……! ……だれかワタクシの噂でもしているのかしら?」
●
ごきげんよう。ワタクシはマリアンナですわ。 今日は我が社の鉱山で働いてくださる殿方たちへの差し入れを手に、20年掘り返し続けている第1鉱山にやってきました。 社員を激励するのも経営者としての仕事の一環ですから。
「こう言うのを社畜というのでしたっけ?」
「お嬢様。そのお言葉は従業員にはくれぐれももらさないでくださいませ……」
微妙な顔をするナタリアから目を外して、中間管理職。 鷹禿氏の報告を聞き私は今後の方針を指し示します。 ハーフメタルの採掘量が少ないのであれば、採掘域を広げるしかありません。
「社長。 実は、またモビルワーカー(以後MW)が故障しちまいましてね」
「またですか? ──いいでしょう。 オーバーホールの時期ですし何台か回収して、本部から新しい機体を寄越しますわね」
「ありがとうございます!」
スケジュールを調整して修理の時間を設けましょうか……MWの修理は本部……と言うかワタクシの仕事ですからね。
「しっかし、ほんっと大発明ですよねぇ……電圧の調整だけでスピードが変化するとは」
「試作品の段階ですからまだまだ完成ではありませんわ」
開発してみたものの……なかなかうまく行きませんね。何か刺激になるものがあればいいのにと考えていると。
「これが今回の発掘品ですか」
「ええ、モビルスーツ(以後MS)だとは思うんですが……ロディフレームやらとは全く違うフレームですからねぇ……」
「ツインエイハブリアクター。つまりコレは、ガンダムフレーム……ですね」
ナタリアはそう呟くと。鷹禿氏が疑問符を浮かべる。そりゃ知らないでしょうね……歴史的な遺物であることに違いありませんから。
「え?」
「鷹禿さん。 この機体のことはご内密に。 くれぐれもギャラルホルンには知られないようご留意くださいませ……貴重な研究材料が手に入るなんて……くふふふ」
鷹禿氏に口止めをしつつ。この日、やっと我が一族の秘宝を見つけました。厄祭戦の生き証人たる、物言わぬ旅人。 伝説として語られる英雄アグニカ・カイエルが統べた悪魔の名を冠する72機のMSがうちの一機。
ASW-G-15 ガンダムエリゴス。 黒騎士の悪魔……。 それを我が屋敷の地下工房はMWの修理スペースに移送。ここは戦艦が格納庫、それ並みの広さがありまして。 そこに発掘品を運び込んでからはずっと研究に励みました。
仕事を終わらせてからMWの修理を済ませ、やたら興奮するナタリアと共にガンダムエリゴスの解析と研究を日夜続けて……7年の月日が流れました。
ツインエイハブリアクターの大出力機体。 それを完全復元とはいきませんが、劣化したナノラミネート装甲を塗り直して補修。
スラスター等の部品を復元交換したり、稼働していなかったOSに溜まったバグも取り除き、エリゴスのデータ水準から見て全盛期の60%は復元できました。
厄祭戦時、その機体と深く繋がる事で「人機一体」となったパイロットたち。そのリスクを顧みても、悍しいモノ……ヒトを最終的に生体部品として取り込み、ヒトの思考回路を最終的に「自律的な戦闘行動を行う殺戮マシーン」を生み出す事を目的としたモノでした。
枷であるリミッターを解除するたびに自律神経をガンダムフレームに供物として捧げる……その当時はまだ阿頼耶識システムも完成していなかったと言われています。
不完全故に自身の体の一部を捧げる、故にガンダムフレームは悪魔の名を冠するのですわ。
一方、私に施術された阿頼耶識は完全なるモノ。かのアグニカ・カイエルがその身に施したソレ。文献から再現した天才技師の被験体になるのを条件に施していただきました。今も彼は木星圏辺りで未だに、その禁忌の研究を続けているそうですわ。
と、話が大きくそれましたわね。
ガンダムエリゴスの見た目は華やかさの中に堅牢さをイメージさせる細身のフレームに、騎士甲冑をスマートに纏めたような黒と金を基調としたナノラミネート装甲。
ブレードアンテナは3本角タイプ、フェイスマスク付タイプの顔と翡翠のようなツインカメラ。
バックパックのエイハブ・プラズマ変換ブースターの出力は凄まじく、単純計算ですが火星の重力程度であれば大気圏内を飛行できるでしょう。 ウイングバインダーも備えられてますが故に滑空、滞空も可能でしょうし。
武装は腰背部に懸架したよく流れている兵装の140mmヘビィマシンガン。 ウイングバインダーに挟まれるように収納されている2対のレールガン。 そして一緒に出土した大型対物シールド。
これはただの対物シールドではない気がしますが、物理ダメージを吸収発散する謎の装甲です。 あとは加工し直したナイトソードを近接武具として搭載しています。
発掘から7年かけてここまで修復しましたが。実戦なんてそうそう起こるものでもありませんので経験がありませんが。この7年の間で、合間合間に残されていたシミュレーターのデータと毎日5時間ほど戯れていました。
P.D.323年となり。 ワタクシの齢も19を迎えた今日も……お仕事を頑張りますわ! えっと、視察。本日の予定は、出資しているクリュセ・ガード・セキュリティ……( 以後C.G.S)の視察ですわね。 久しぶりに参番組の面々に逢いに、オルガに会いにいきましょうか。
そんな私の顔をナタリアは見つめながら
「お嬢様。メスの顔になっていますよ?」
「気のせいですわ!」
◯
「いやー。 ご足労いただき、ありがとうございます。 レージス嬢」
中年太りのC.G.S代表、マルバ・アーケイは定期的に視察に来る少女が苦手だった。 ヒューマンデブリと呼ばれる少年達に親身になり話しかけるこの異端の令嬢が。
「マルバさん……暴飲暴食はほどほどになさらないと、寿命が縮みますよ……?」
「運動はしてますから、ご安心くださいな……」
余計なお世話だ、と言いたいが相手はこのC.G.Sの大口スポンサー……この警備会社に5割の出資をしている存在ゆえに、無下には扱えないのである。
「このところ、火星の独立運動が活発化し、あちこちでデモが行われていますね……」
「いやぁ、ウチとしては儲け話でしかありませんよ。 自治区の治安を守るためにも……ね」
「これからもよろしくお願いしますわ、マルバさん」
他愛のない世間話をしつつ、必要な物資はないか、要望がないかマリアンナは業務的な確認を取り書面を把握しつつ、マルバの要請に不備がないかを入念にチェックしていた。
「問題はなさそうですね。 では今月の予算を組み上げて迅速に対応いたしますわね」
「お願いいたします。 ああ、参番組の連中なら訓練中ですが……」
「まぁ……なら、少し遊んでいきますわ!」
目を輝かせながらマリアンナは失礼しますと言い残してマルバの執務室を後にする。
「はぁ……勘も鋭いし的確な経営指針を指し示す。 甘い蜜を啜らしてくれる嬢ちゃんだよなぁ」
見目麗しく、美しい少女。 儚くも強かで気高いさまは見るもの全てを魅了する。
下卑た視線で見るものも多いが、ただの小娘ではないため、手は出せない……かつて、彼女を手篭めにしようと強姦魔が襲いかかった事件があったのだが、彼女は何の躊躇いもなく持っていた拳銃でその下手人を射殺したという。
優美なドレスを着こなす令嬢の懐には黒光りする拳銃が提げられているのだから。「弱き者は奪われるがこの世界の摂理。 持たざる者にとっては生き辛い。それが今の世の中ですわ」と彼女が言っていたことをマルバは思い出した。
自分は奪う側だと思い込んだ……彼のこの慢心は後に致命的な失敗を引き起こすことになるがそれはまた別の機会に。
●
白いMWが地を駆けてほかのMWにペイント弾の掃射を叩きつける。 青いMWが背後から強襲するが、予知していたように白のMWは躱して反撃していた。
「相変わらず、三日月はすごいですわねぇ」
「ズリィよ、マリア姉ちゃんも! 美人で強いし! でも俺もいつかあんなふうになってみたいなぁ」
ライドの愚痴っぽい言い方に苦笑しながら、マリアンナは。タカキの憧れの呟きにも応える。
「なれますよ、きっと。 きちんと努力をすれライドも、それにタカキくんも」
「ホントか、マリア姉ちゃん!?」
「本当ですか?」
年少組にお菓子の差し入れをして、強制的な休憩時間を設けたマリアンナ。 三日月・オーガスの模擬戦闘を観戦していた彼女はタカキ・ウノに助言する。
なお、大人であるナタリアは少し距離を置いている……年少組は大人を嫌っている節があるからだろう。そして、ナタリアもまた自身の過去を思い出すが故に、その距離感を掴みあぐねているとも言えるが。
「貴方たちはまだまだ成長の余地がある少年ですからね」
微笑しつつ、少年たちに安らぎを感じる時間があって欲しいとマリアンナはC.G.Sに来るたび大人たちにタバコや酒の嗜好品を差し入れとして与えて黙らせ、少年兵……ヒューマンデブリと呼ばれる子供たちと交流するように心がけていた。 なお、デブリの少年たちに理不尽な暴力を振るった者は時折行方不明になる──誰が原因なのかは語るまでもないだろうが。
彼らの視点から見て良い事や悪い事の発見もあるが故に彼女は絶対に差別を是とせず、無意味に虐げる行動には否を唱える高潔な精神を持つ稀有な存在だった。
「さてと、ワタクシの仕事もありますからお暇いたしますわね」
しばしの滞在、しかし自身の仕事もあるが故に彼女は訓練場を後にしていった。
『またね~! マリアねーちゃーん! 』
少年たちの見送りの声に振り返り、マリアンナも手を振って応えるのであった。 ぴったりと付かず離れずの距離を保つナタリアにも子供たちは手を振る。
(たとえ自己満足でもいい。 せめて、このクリュセの子供たちを笑顔にできるなら……)
内に秘めた思いを胸に、マリアンナは仕事に戻った、とさ。
○
「クーデリアが地球にですって?」
「はい。 フミタンから聞きました」
「……うーむ。あのクーデリアが地球に……それは『革命の乙女』としてでしょうか?」
「そうとしか考えられませんね……いかがなさいますか、お嬢様」
そのカリスマと美貌で独立運動の先頭に立ち、『ノアキスの七月会議』でクリュセの独立運動家達を一纏めにしてみせたワタクシの学友。
クーデリアが地球側への使者として旗頭となった……ナタリアの報告を聞いて吟味します。
クーデリアの狙いは火星独立とはいかずとも、ハーフメタルの規制緩和くらいは実現してみせるのではないかしらと一考します。
弱冠16歳でここまで出来る人物はワタクシも彼女しか知りません。 決断力と行動力を持ち合わせた才媛は時代に大きなうねりを与えるかもしれない。
鉱山の経営者であるワタクシも、このアクションを見逃すと大きく損を出す可能性も捨てきれません……仕方ありませんね。
まだ後援者がいないのであれば資金提供だけでも申し出ましょうか。
「そうですわね……ありがとう、ナタリア。クーデリアが地球へ発ってしまうまでに彼女にアポを取ってくださいな」
「では、そのように。 失礼いたします」
書類関連を片付けて……しかし我慢できず、ワタクシはとうとうクーデリアの携帯に電話をかけました。
[もしもし? ごきげんよう、マリア]
「ごきげんよう、クーデリア。マリアンナに違いありません。 貴女は火星を飛び出して地球に向かわれるのですのよね?」
[もうあなたまでその話を耳にしたの?]
「じゃなければ電話で確認だなんてお行儀の悪いことはいたしませんわ……あなたのことですから、高潔な思想の元に行動なさるのよね?」
[ええ、私は今の火星の状況を地球の方々に知ってもらいたいの]
そして、クーデリアは火星の子供たちの、愛し愛されることなく散っていく当事者たちの現状を地球に分かってもらいたいと。C.G.Sの参番隊の少年兵たちに警護を依頼したのだそうな。 火星の孤児たちがどんな扱いを受けているのかを伝えるために。
「ふふふ、クーデリアはやっぱり慧眼をお持ちね……参番組の少年兵たちは腕が立つのよ。 偶にお遊びに付き合わせてもらうこともありますし」
[まぁ……どんなお遊びなの?]
「彼らに文字の書き方や簡単な計算を教えたり。 MWで模擬戦をしたりするくらいですわ」
[……も、MWで、模擬戦……? いえ、マリアも大概な行動力を有していたわね]
「一番腕の立つ子でもワタクシにペイント弾を当てることすらままならないのですけれどね?」
[……それって、手加減されてるんじゃ]
「……いいえ? あの高機動戦に耐えられるパイロットが居るんだと知って感激いたしましたの……とは言えあくまでも指導は戯れに過ぎないのですけれどね」
[そ、そうなの……]
妙な沈黙(ドン引きしている)のあとクーデリアは真剣な声音でワタクシに
[ねぇ、マリア。もし、あなたも今回の火星独立の運動に関心があるのなら……火星の貧困と富裕の格差に疑問を感じるのなら……]
「クーデリア、水臭い話はなしにしましょう。 貴女が成そうとしていることは立派ですわ! このワタクシを頼ってくださるならば……協力は惜しみません。 むしろ、お友達の頼みなら、なおさら断る理由がありませんわ!」
[マリア、ありがとう!]
「その代わり、ビジネスの一環にも、噛ませてくださいまし。 ハーフメタルの規制緩和について……ですけど」
[ええ、もちろん。 約束させてもらうわ。 貴女が味方になれば100人力ね!]
嬉しそうな声でクーデリアは改めてワタクシにお礼を言って電話を切りました。さあ、ワタクシも準備に取り掛かりましょうか!
●
クーデリアがC.G.Sにやって来たその晩。 C.G.Sをギャラルホルンが襲った。
しかし、C.G.Sのマルバ・アーケイ以下一軍は戦闘域を離脱、足止めを命じられた参番組は多くの死傷者を出しながらも、懸命な抵抗を続けていた。
「このままじゃ……ジリ貧じゃねぇか」
ユージンの叫び。 オルガ達の前に現れたのはMSだった。 MWでは太刀打ちできるはずのない圧倒的サイズ差。 1機いるだけで戦局の優劣を無慈悲にひっくり返す暴力の権化。
それが、3機も現れたのだ……膠着状態に苛々を募らせ指揮官自らMSで前線へ出てきたに違いない。 状況は絶望的。 しかし一縷の光明は失われてはいない。
「ミカが来るまで持ちこたえるんだ、なんとしても!」
オルガによる決死の激励が響く。 が、本部に重砲が撃ち込まれ、施設が破壊される。
「やめろぉぉッ! そこには俺の仲間が……」
一人の少年兵が無謀にもMSに挑む。 勝てないと分かっていても、仲間を守るために……
[所詮はゴミだァァァ!!]
スピーカーからは醜悪な声が響き渡る。 脚部を振り上げるMS──蹴られる。 誰もがそう思った
そこへ飛来する影がひとつ。
ガァァァンっっっ!! 辺りに鳴り響く甲高い鋼と鋼が衝突する金属音。
「あ、ああ……」
漆黒の装甲に走る流線型の金が映える塗装。 ウイングバインダーが折り畳まれ、騎士を思わせる優美なフレームを持つMSが着陸する。
その左腕にはMS自身の上半身を覆い隠せるであろう巨大なシールドが備えられていた。
3つ角のブレードアンテナの下に見え、翡翠色に光るツインアイが輝いた。
[オルガ、よく持ちこたえました……ここからはワタクシにお任せなさい]
凛とした声が響く。 その声の主を知るオルガは引き痙った笑みを浮かべることしかできなかったのだから無理もない。
[ガンダムエリゴス……障害を駆逐しますわ!]
「何やってんだよ、マリアァァァァ!? 」
オルガの悲鳴が戦場に響くのだった
to be continued .