鉄血のオルフェンズ 黒騎士   作:クソメガネザル

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第12話

 

 地球外縁軌道統制統合艦隊旗艦ブリッジにて。 ラタトスクの家紋と並び、GHの紋章が浮かぶモニターの前で……イシュー家当主代理の地球外縁軌道統制統合艦隊司令官、カルタ・イシューが号令をかける。

 

「我ら、地球外縁軌道統制統合艦隊!」

『面壁九年! 堅剛堅固!』

「うん、完璧だネ!」

 

 長い銀髪、その一部毛先を黒に染めた髪型。 赤い瞳の収まる少しキツめの目尻には紅をさしている特徴的な化粧。 そして、銀髪の形の良い麻呂眉が特徴的な女性である。

 

「しかし……今回の作戦は、はっきり言ってやる気が出ない……来ないでほしいな、なんちゃらリア」

「正しくは、クーデリア・藍那・バーンスタインです! ボードウィン特務三佐の報告では、間違いないかと!」

「なんかこう、アレの相手をしたら私たちが悪者扱いなるかもしれないし……はぁ。 イズナリオ直々の命令だからやるしかないけどさぁ……相手はあの鉄華団。 そして、マリアンナ・レージスよ? 八輝勲章もちの、零席次……イシュー家よりも上の身分の人間に火砲向けろって? なにさ、総司令官だからって……頭湧いてんの? あの変態ショタコンオヤジ(イズナリオ・ファリド)は」

「カルタ様、ルビが逆になっています!」

「ええい、地の文に突っ込まないで! メタメタしいわ!」

 

 元来ならばこんなにやさぐれるカルタではない。 責任は全うするつもりではあるが、乗り気にはなれなかったのだ。

 なにせ相手が悪い。 火星圏からやってきた鉄華団の実力は高いと評判。 加えてドルトコロニー付近での戦闘の資料映像から見てもその実力は高いと見て間違いがなかった。

 特に、ガエリオの乗るガンダム・キマリスを徹底的にボコっていたガンダム・エリゴスのとんでもない強さを見てこんな野蛮人に大事な部下達をぶつけて損害を被るのは馬鹿馬鹿しいと内心では嘆いている。

 そして、一番の悩みのタネはレージスのご令嬢である。

 

「なんだってエスメラルダ様の末裔相手にしないといけないのよぉぉぉぉぉ!? ねぇ、私呪われてない!? エスメ会の連中に喧嘩売らないといけないの!? ──あなたたちエスメ会知ってる?」

「はっ! 正確にはエスメラルダ信仰会。 かのエスメラルダ・レージス様を崇め讃え、信仰している者達の教会であります! [総ての不義に鉄槌を]が合言葉で武闘派のギャラルホルン女性士官の半数以上が所属していると思われています!」

 

 1人の部下がカルタに補足を入れる。

 

「アグニ会と並んで厄介なのよな……本当に──はぁ、とりあえず迎撃の準備はなさい。 真面目にやるだけ損だから親衛隊各位、MSでの出撃の許可は下ろさないからそのつもりで。 例外はない、わかったね?」

『はっ! 我らが御心はカルタ様と共に!』

「……お前たち……我ら、地球外縁軌道統制統合艦隊!」

『面壁九年! 堅剛堅固!』

「うん、完璧!」

 

 形だけの迎撃をしてやり過ごそう。 カルタはそう誓うのであったが……ブリッジに通信が入ってきたのである。

 

「これは……民事回線?」

[ご機嫌麗しゅう、お過ごしでございましょうか? ワタクシはマリアンナと申します。 カルタ・イシュー様で違いありませんか?]

 

 モニターに映るのはカルタが憧れて止まない艶やかな長く、黒い髪を持つ少女だった。 黒いドレスの胸元には、あの八輝勲章が輝いていた。

 

「──な、貴女は……もしかして……」

[皆までは結構ですわ。 で、一つダメ元でお願いをお聞きしていただいても結構ですか?]

「いや、その、我々にそんな権限は……」

[停船信号は無視しますので、仕掛けるかどうかは貴女次第とさせていただきます。 ワタクシが地球に降りることができれば、ヴィーンゴールヴにて。 女性が当主になれるよう取り計らうつもりですわ]

「な、なにを!?」

[乗るか乗らないか……貴女次第ですわ! では、英断をお願いしますわ!]

 

 ブチリと一方的に通信が切れて、カルタは……待ってと小声で画面に手を伸ばした。

 

「どうしろって言うのよぉぉぉ!?」

 

 カルタの絶叫が、旗艦に響いたのは無理もない話だった。

 

 ●

 

 モンターク商会の船より、カルタ・イシュー様に一方的な通信を送りつけて混乱させる……うまく行きましたわ。

 

「回線をお借りして申し訳ありませんわ。 ワタクシはこれで失礼いたします」

「暗号化回線を1分で組み上げるとは……さすがというべきか」

「引き出しの多い女はモテますのよ?」

 

 仮面の、目の部分を開けたモンターク様の目元には笑みが。 いえ、苦笑でしょうねあれは。

 

「と、その召物で地球降下の作戦に携わるのかい?」

「ふふ、勝負服。 ですわ」

「ノーマルスーツを着なくとも良いと?」

「服など飾りですわ。 万が一にも、エリゴスのシールドは耐熱性に優れていますから、問題ありませんわ」

「絶対の自信がある、というわけか。 なるほど」

 

 品定めするモンターク様の視線を無視してワタクシも準備に移りましょうか。

 

「ああ、そうだ。 この土壇場で悪いが、モンターク商会との窓口に一名、そちらに人材を預けても構わないだろうか?」

「はい? なぜこのタイミングで……」

「いや、整備と事務の両方をできる者でね……癖の強い人材なのだが……なんと言おうか……あってみればわかる。 入ってきたまえ」

「ハイですぅ〜……」

 

 入ってきたのは白衣にぐるぐるメガネの小柄な女性でした……しかし、只者ではない感じが……

 

「燻っていたのを私が引き抜いたのだが、環境が悪かったようでな……どうにもやる気が出ないと言って聞かなかったのだが、君たちのガンダムフレームを見てその整備もとい、機体弄りがしたいと熱烈な申し出があってだな……」

「フィル・フィオ・アストナージですぅ〜。 機械いじりから事務関係のお仕事なら人並み以上と自負がありますぅ〜。 どうか、同行させてくださいませ〜!」

「オルガに聞かないと……あ、そうだ。 あなた、ワタクシの部下としてついてきませんか? 引き抜いてはいけないと、モンターク様おっしゃいました?」

 

 え、と言う顔のモンターク様。 動揺が少しだけ見え隠れして……ふふ。

 

「え、それはー……どうなんでしょう、モンターク様?」

「いいだろう。 行きたまえ、フィル君。 彼女にガンダムフレームを弄らせたら天才的な手腕を発揮するだろう。 バエル宮殿にて保管されているガンダムフレームの整備を彼女が請け負っていたのでな」

「それ逆に引き抜いてよかったんですか!?」

「10年に一回行う程度の閑職だ。 彼女の腕を腐らせるくらいなら、活かせる場所で仕事を与える方がよっぽど彼女のためになると思ったまでさ」

「な、なるほど」

 

 まぁ、納得はしておきましょう。

 

「よろしくお願いしますわ、フィルさん」

「はいですぅ〜! エリゴス、バルバトス、グシオン、アガレス……伝説の機体を制限なしで弄れるなんて、改造できるなんて……まさに天職なのですぅ〜!」

 

 はしゃぐフィルさんを迎えて、降下作戦……開始ですわ! 

 

 ◯

 

 ワタクシたちを出迎え、包囲していた地球外縁軌道統制統合艦隊は結局手を出してきませんでした。

 艦隊は展開していただけで、こちらを見逃してくれる模様。 MS隊も武器を構えながらも……見て見ぬ振りですか。

 こちらのMSも整備補給は済ませてありますし。降下船にランチを積み終えたのを見届け、旗艦に秘匿回線を繋ぎます。

 

[そちらの一件、確約できるのね?]

[このワタクシの、レージスの名にかけて。 ヴィーンゴールヴに着きましたら貴女も召集するつもりですわ。 ですから、それまでは]

[ご武運を……って、待ちなさい! なぜ出撃している部隊がいるの!?]

 

 よく見ると、シュヴァルベグレイズとガンダム・キマリスがこちらに……チッ、相当痛めつけたはずなのに……アレはキマリスブースターですか。

 

[マリア姉。 あの早いのは俺が相手するよ]

[あの紫にゃぁ流星号を少し壊された借りがあってさぁ……うらみはらさでおくべきかってなぁ!]

[わかりました! プロフェッサーと昭弘は降下船の守りと、三日月とシノの援護を! ワタクシは、グレイズ隊を迎撃します!]

 

 グレイズの反応は12機……まだ増えますわね……! 

 

[後生ですから、パイロットの命だけは……!]

[分かっています。 なるべく地球軌道上に落ちないよう、殺してしまわないよう気をつけますわ!]

 

 カルタ様には申し訳ないですけど確約はできかねますわ……これはイズナリオ・ファリドの私兵が紛れ込み、扇動したのでしょう。 面倒なことを……! 

 

[カルタ様のためにぃぃぃ!]

[少し頭を冷やしなさい、この痴れ者が!]

 

 コックピット付近を蹴りつけて、相手の動きを制動。 バルムンクを振るい、マニュピレータを切り捨て、破壊。 もしくは武器をはたき落として明後日の方向に蹴飛ばす! 

 

 まだまだ増えますわね……! 合計、26機……! 

 

 エリゴスの推進剤の事もありますし……あ、アレをやって見ましょうか。

 

 メインスラスターを使わない、エイハブスラスターでの加速方法。

 

 向かってくるグレイズをシールドで受け止め押して後退、慣性制御。 後ろにいたグレイズの背を蹴りつけて、前に加速。 近寄ってきたグレイズの肩を蹴り、あっちこっちに跳び回る。 蹴って加速。 蹴って加速……! 

 その間にティルヴィングでの狙撃で武器を頭部を、胴部を撃ち穿ち、無力化! 一つ二つ三つ……四つ五つ六つ七つ──一五ッ! 最後の一発は流星号を縛り付けているシュヴァルベグレイズの頭部を吹き飛ばすのに使っちゃいました。

 

 ティルヴィングは弾切れ、ならばバルムンクで駆け抜けざまに一閃二閃!悪鬼羅刹と呼ばれようとも厭わない! ここでの踏ん張りが、ここまできた道のりを無駄にすることは断じて許されない! だから……

 

[こんなところで、終われるはずがないのですわ!]

 

 そうでしょう? ──皆さん! 

 

 ●

 

 バルバトスとキマリスは激しくぶつかり合っていた。

 

[俺の獲物は貴様じゃない、どけ!]

[……あんたは、チョコのとなりのひ]

[チョコのとなりじゃない! ガエリオ・ボードウィンだ!]

[……ガリガリ?]

[ガエリオだ! 貴様わざとか!?]

 

 ツッコミながら槍での突撃。 それをメイスを用いて弾くが、キマリスはブースターを噴かして離脱。 そしてまた加速してバルバトスを狙う。

 

[面倒だ。 あんたに御誂え向きのやつがあったな、そう言えば]

[俺の道を阻むなァァァ!]

 

 キマリスはグングニールをバルバトスの胸部装甲に突き立てる。 しかし、途中で槍の穂先が止まる──その直後に違和感。

 バルバトスの装甲が剥がれ、パージされる。 グングニールの穂先をガッチリと掴み、マニュピレータを蹴飛ばした。 手からこぼれたグングニールを投棄したバルバトスはキマリスにメイスを突き込むが避けられる。 しかし……その一撃は右側のキマリスブースターを破壊した。

 

[まさか……リアクティブアーマーか!?]

[あんたの戦い方、見てたら猪みたいだったからさ……(おやっさんが対策立てたんだけどな)]

[舐めるなよ、小僧ぉぉぉ!]

 

 槍を失ったガエリオはサーベルを抜く。 対して三日月も同じく太刀を抜いた。

 お互いに激しく打ち合い、鍔迫り合いに。 蹴りに殴打での肉弾戦を交えるが、キマリスにとって至近距離は部が悪い。

 

[俺は、雪辱を雪ぐために貴様らを討つ! 改革に貴様らは必要だろうが、クーデリアの身柄さえ確保できればそれを達成できる!]

[あっそ。 俺はここでやられるつもり、ないよ!]

 

 キマリスの頭を蹴飛ばしつつ、三日月は一度距離を取り。 両腕のミサイルを発射。 ダメージは見込めないが、視界を奪う効果はある。 改良型ワイヤーアンカーでグングニールを手繰り寄せ、キマリスの左脚にアンカーを打ち込み、引き寄せる。

 

[ヌオッ!?]

 

 そこへワイヤーに縛られたシノの流星号が乱入、縛りつけていたシュヴァルベは注意力が散漫しており。 抵抗されてキマリスの近くに来てしまったのだろうか。

 

[てめぇ、この野郎……!]

[火星ネズミの貴様らなど……]

 

 昭弘とプロフェッサーはこの状態では誤射しかねないと、援護射撃もできない状態になっていたのである。 仕方なく降下船の護衛と、ルーシカへの砲撃支援に徹しつつ様子を確認することしかできずにいた。

 そこへ……シュヴァルベグレイズの頭部に強烈な砲撃が叩き込まれた。 アガレス、グシオンが射線の方角をメインカメラで確認すると……どうやらルーシカの仕業とわかる。

 ワイヤーを縛る膂力が緩み、脱出した流星号は強かにシュバルベの胸部付近を蹴飛ばしてコックピットにダメージを与えつつ。

 

[コイツはもう動けねぇだろうさ! マリアがヤベェ!]

[あの乱戦でこの距離を撃ち抜くのかよ……!?]

[いやー、流石だなぁ。 MS操縦能力があそこまでいくとワケワカメだよ]

[同じことやってのけるアンタがそれを言うのかよ]

 

 呑気なプロフェッサーの所感はともかく。 砲撃を受けた、蹴飛ばされたシュヴァルベグレイズのコックピットは当然強く揺られ、割れるモニター。 振動で頭を揺られたアインはモニターに頭を突っ込んだ。 動かないシュヴァルベに気を取られたガエリオは隙を晒す。

 

[おい、アインっ! しっかりし……ッ!?]

[──終わりだ]

 

 メインカメラを失ったアインは、コックピット内で鳴り響く友軍危険判定のアラートで気がついた。 キマリスに突き込まれようとしているグングニールの穂先が迫っていることに。 コックピットを揺さぶられたダメージに朦朧としながらも、アインの機体は自然と動いた。

 

 咄嗟にキマリスを蹴飛ばし──

 

[がぁぁぁぁぁッ!?]

 

 直後に凄まじい痛みがパイロットを襲った。 バルバトスの突き出したグングニールにより胸部付近を抉られ、コックピットが圧壊したのだろう。 キマリスは自身を拘束するワイヤーをサーベルで切り裂き、バルバトスから離れる。

 

[チッ、ガリガリが……]

[ミカ、悪い! マリアだけに負担かかるわけにはいかねぇ……増援の対処頼む!]

[マリア姉が? ……わかった]

 

 三日月はメインカメラでマリアンナの動きを捉える。 そこには一機で9機のグレイズを相手取るエリゴスの姿が見えた。 バルバトスはキマリスへの追撃を諦めて、飛び去っていく

 

[アイン! 貴様一体なぜ……! なぜ身を投げ出した!?]

[……あなたを見殺しにすることなど……できるわけがない……仇を討ちたいと……志願した私を、火星の血が流れる……俺に分け隔てなく……俺に立つための脚をくれた貴方を……!]

 

 ダメージ過多でシュヴァルベはコックピットをパージした。 そしてキマリスはそのコックピットを壊れ物を扱うようにそっと手に取る。

 

[お前と言う男は……! 死ぬな!]

 

 コックピットからの応答はない。 ガエリオは、ガンダム・キマリスは戦闘宙域より進路を変えてスレイプニルに撤退していった。

 

 ◯

 

 敵部隊の包囲網を破ろうと奮戦していたところ、少し片付けるのに手間取りましたけど、三日月が駆けつけてくれたおかげで幾分かは楽になりました。

 

[マリア姉、大丈夫?]

[ありがとう三日月、大丈夫ですわ。 キマリスはどうしましたの?]

[ガリガリならあっち]

 

 彼の指し示す方角を確認すると、コックピット付近にランスが突き刺さり、大破され捨て置かれていくシュヴァルベグレイズと。

 

 撤退していくガンダム・キマリスのブースター残光が見えました。 私共の周囲には辛うじてコックピットが無事で機体がボロボロなグレイズが大量に浮いています。

 

[まぁいいですわ。 捨て置きましょう]

 

 こちらがすべきなのは迎撃のみですわ。

 

[マリア、そろそろ降下軌道にのる! 降下船まで来てくれ!]

[了解ですわ……って!?]

 

 タイミング悪く新手ですわね、この反応! 

 

 メインカメラを向けますと、なにやらやたらと図体の大きな、全高22mほどの不明機体(黒いグレイズに似た機体)……いや、なんですのアレは!? 

 

[ガンダムフレーム、コロズ……コロズゥゥゥ!! ◼︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎ッッ!!]

 

 そのグレイズのようなナニカは爆発的な加速を用いてこちらに飛来……ッ! 

 

[キャァァァッ!?]

[マリア姉!?]

[おいおいおい、なんだコイツは!?]

 

 大きさに似合わない脅威的な加速性。とっさにシールドを構え、防御姿勢で構えましたがシールドが弾かれ、そのまま2撃目で胸部装甲を蹴飛ばされてしまいました。 威力を殺して受け止めたおかげで揺れた程度で済みましたが、胸部ナノラミネートアーマーが剥がれ落ちていますわ!?

 たったの1撃でこの被害は洒落になりません。一体これはなんなのですか!?

 

[なに!? なんなのアレ!? モビルアーマー(以下、MA)!?]

[落ち着いて仕掛けろ! 動きは単調だから避けやす……なっ、この動きは阿頼耶識か!?]

 

 プロフェッサーが動揺しつつ、ハンドガンで撃ちながら黒いグレイズを蹴飛ばしますが、ビクともしていませんわ!?

 昭弘も加勢とライフルを連射しますが、大型MSはひらり、としなやかな動きで避けて見せて……阿頼耶識搭載機ですわね、厄介な。

 ふと、視界の端から赤い影。スラスターの残光を残しつつ飛来して大型のグレイズを蹴り飛ばし、制動。

 

[なぜ、‘エリャンヘル’がここに……流石に見てられん。 加勢しよう]

 

 あのリアクター反応から見てはヴァルキュリア・フレームですわね。 機体識別は……‘グリムゲルデ’。 そして、その声の主は……

 

[加勢、感謝しますわ! モンターク様]

[余計なお世話かもしれないが、降下できなくては意味がないだろう?]

 

 小型シールドの中でくるりと一回転した金色(こんじき)の刃を手にとり。

 

[あの装甲はかなり厚い。 だが、特殊超合金製の武装ならば……君のバルムンク、私のヴァルキュリアブレードならば切り裂くのは容易だ。 しかし、私が加勢できるのは1分ほど……地球の重力に引かれて燃え尽きるのは御免なのでな]

[それまでには決めて差し上げますわ!]

 

 ワタクシも先ほどの借りを返さないと気が済みませんわ! しかし、この機体は一体……

 

[君の疑問に答えるならば、アレはギャラルホルンの極秘裏に開発している機体でね。 阿頼耶識システムを利用した非人道的なモノだ]

[……え?]

[阿頼耶識を施したパイロットを‘機体の制御部品扱い’するのを人道的と言えるかね?]

[Dr.ウェルが聞いたらキレますわね、それ]

 

 彼は交差させた剣で、ワタクシはシールドで両手の大型アックスの打ち下ろしを受け止め、ほぼ同時に敵機の胴部を蹴飛ばして体制を崩す。 そこへグシオンリベイクの120mmライフル、アガレスのライフルによる援護射撃の的になっていますわ。 しかし……

 

[◼︎◾︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎ッッ!! ]

 

 言語にならない言葉を吼えて猛り狂うこのMS……なにが起きていますの!? 

 

[あの機体のパイロットは完全に、深淵に意識を落としているだろう。 本能の向くままに、敵性体対象と判断されたモノを破壊するまで止まらない、センサーに反応するモノ全てを破壊する殺戮マシーンだ]

[なんて酷い……誰があんなものを作れと!]

[十中八九、イズナリオ・ファリドだろうな……]

 

 モンターク様と連携しているからこそですが、戦線は拮抗しています。 この悪夢の機体を破壊する……心苦しいですが、あのパイロットは救えないでしょう──大気圏突入まで、あと50秒ですわ! 

 

[◼︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎ッッ!]

 

 吼えるグレイズ・アインズの装甲を斬り付けるも、火花が散って弾かれる。 よく見てみると、当たった瞬間に身を引いて滑らかな挙動で。装甲面を滑らされていますわ……!? 

 こちらの手元を蹴り上げ、バルムンクを弾き飛ばそうとされたので、その足を蹴り後退。再度スラスターを噴かし挑みかかります! 

 

[酷く理性的な動きをしますわね……!]

 

 迫る大型アックスに焦り、切り結ぼうとしていなされ。体勢を崩されてしまい、蹴飛ばされますが。フォローに入ってくださったモンターク様のおかげで事なきを。

 

 ワタクシは仕切り直しと、もう一度攻めにかかり釘付けに! 

 

[全く、面倒極まりない]

[マリア姉、チョコの人。 避けて]

 

 その声とともに。 三日月の投擲したメイスが飛来。 ワタクシとモンターク様はギリギリまで引きつけて紙一重でそれを避けます。

 メイスはグレイズ・アインズの頭部ユニットに直撃。 そして一時的に動きが止まり、三日月はすぐにメイスの柄を掴んで振り下ろし、敵機体に鉄塊を叩きつけます……が。

 

[◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◾︎◼︎◼︎ッッ!!]

[チッ、しつこいなぁ]

[避けな、三日月ぃ! 頑丈すぎだろコイツ……って、ぐぁ〜っ!?]

[シノ!?]

 

 舌打ちする三日月は自然な動きで回避運動、入れ替わるように飛来したクタン参型を特攻させ、サブマシンガンでプロペラントタンクに誘爆させますが……爆炎を裂いて流星号を体当たりで弾き飛ばしながらこちらに、元気に踊りかかってくる始末。

 アガレスがシノのフォローしていますが、敵機は意に介した様子もなく。 三日月に大型アックスを振り下ろし、迎撃。 バルバトスはメイスで打ち合い、弾き合います。 もう片方のアックスをモンターク様が受け止めて、そこにワタクシが追撃。 グレイズの頭部を蹴飛ばし、相手はよろけながらも機体制御。

 

[本当に……しぶとすぎですわ! ――モンターク様、あと20秒ほど稼いでいただけますか?]

[リミットとしては多くてあと30秒だ。 25秒後には離脱させてもらうぞ?]

[それで結構ですわ! 皆さんも援護をお願いします……ワタクシは! ええ、なんだってやって差し上げますわ!]

 

 行きますわよ、エリゴス! 

 

 to be continued

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