鉄血のオルフェンズ 黒騎士 作:クソメガネザル
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〈ボードウィン特務三佐、何故ですか? 何故あなたが俺の前に立ち塞がるんですか!?〉
[馬鹿野郎! 部下が暴走してそれを殴ってでも止めない上官がどこにいる!]
[ガエリオ、合わせなさい。拘束するわ!]
[仕方ないなぁ、手助けするよボードウィンとこの坊やと、イシューんとこのお嬢さん?]
[貴様は……いや、いいだろう手を貸せ! 俺たちだけでは無理だ!]
暴れるエリャンヘル・アインの隠し腕を狙撃、大型アックスを弾き飛ばしたアガレスはそのままステップを踏んでアックスを掴み、近接武装を確保するとキマリスとグレイズ・リッターの援護の意思を示す。
[オフェンスは任せるから、フォローは任せてね]
[わかった、カルタも構わんな!?]
[……ええ、お願いするわ]
〈貴様等を押し退けてでも俺はぁぁぁぁ!!〉
踏み込んできたアインをキマリスがストライクランスを突き込んで牽制。その傍らよりグレイズ・リッターのナイトソードがカメラアイ目掛けて剣を振るわれて。それを超大型アックスを振り回すことで強引に突破したアインのカメラめがけて破壊されたグレイズが飛来する。
アックスの軌道を修正して切り払い、弾き飛ばしたグレイズの死角からまたグレイズが飛来する。
〈鬱陶しい! 何度も同じ手は食わん!〉
[ならこれは、どうかな?]
トン、と背部スラスターを小突かれた感覚。その刹那に轟音と衝撃、脚部内にアガレスはパイルバンカーを有している。杭を打ち込まれ、悶絶する様にエリャンヘル・アインのバックスラスターは火花を散らして機能不全を起こした。
〈ぐぁぁぁ!? く、これしきのことでぇぇ!〉
[止まれ、アインっ!]
アインは振り向きざまにアックスを一閃するが、当にアガレスの姿はなく、突き刺さった杭に目掛けストライクランスを叩き込むキマリス。スラスターのガスパイプが千切れ、スラスター出力が著しく低下、貯蔵しているガスが漏れ出していた。
[止まるのよ、ダルトン三尉。貴方が暴走したら、処断するのはガエリオなのよ!? 上官に部下殺しのレッテルを貼り付けるつもりなの?]
〈何を! 命令に従わねばならないんだ、クランク二尉の遺言を遂行しなくてはならないんだ、俺は!〉
カルタはワイヤーランチャーをエリャンヘル・アインに撃ち込み四肢を絡ませて拘束を試みるがその圧倒的出力差が脚を引っ張る。拘束を解かんともがくアインにキマリスとアガレスが畳み掛け、武装を。超大型アックス破壊する事ができた。
ただ、エリャンヘルフレーム共通の頑丈さをなかなか攻略できず。コアパイロットをやはり殺すしか暴走を止めれないとガエリオは嘆く。
[これだから、大型MSの相手は疲れるんだ。まだMAの方がマシなんだけどなぁ]
〈何故だ、何故なのですか。ボードウィン特務三佐ァァァ!!〉
[止まれ、アイン! くそっ、お前を殺したくはないんだ!]
殺すより他ないだろう。そうカルタは言ってやりたかったが、ガエリオが背負うべき罪となりかねないと躊躇った。一対三でここまで粘るそのスタミナが関係ない……機械に生かされた彼の体はもはや、ただの生体部品の一つなのだから。
[ボードウィンの坊や。もう彼は生体部品なんだろ? 楽にしてやるしかないんじゃないかい?]
[くっ……]
[君の呼び掛けに応えないと言うのはもう、人格は破綻してると見て間違いないよ。人としての死はもう迎えてるんだろうし……]
[ガエリオ。貴方は間違っちゃいないわ、だけど……彼はもう生かされてるだけよ!]
[カルタ……アイン、俺は……!]
〈ボードウィン、特務三佐……私は行かねばならないんです、クーデリアを、蒔苗を詰まないと、世界に混乱を……!〉
キマリスのストライクランスを構え、ガエリオはもう迷わなかった。真っ直ぐに、エリャンヘル・アインを、自らの罪を見据える。
照準を合わせて瞑目、スラスターが使えずとも、それでもなおアーブラウを目指して離脱をしようとする機械の化け物を見据える。
〈ボードウィン特務三佐?〉
[おい、青いの。援護しろォォォ!!]
[へーへー。尻拭いは仕事じゃないんだけどなぁ]
スラスターを吹かせて突貫するキマリスに合わせる様に、口元のナイフを抜くアガレス。その加速性能は同等でアガレスはすれ違いざまに脚部を大型バトルアックスで一閃。砕け散った武器に目もくれず、寸分狂わずに二閃目を重ねて。装甲とフレームごとエリャンヘル・アインの片脚を切り裂き。バランスを崩したエリャンヘル・アインのコックピット目掛けて……
[うわぁぁぁぁぁぁ!!]
ガエリオの叫びと共に、ストライクランスが叩き込まれた。その時、ガエリオの耳には届いた。聲が……
〈ボードウィン……特務、三佐……ありがとうござい……ました……〉
[アイン……すまない、済まなかった! 俺は、お前に何も……!]
〈謝らないでください……俺は、私は……良い上司に恵まれて……〉
力なく、崩れていくエリャンヘル・アイン。その最期の声はとても穏やかだった。
[青いの……感謝する……カルタ、付き合わせて済まなかったな]
[ふん、構わないわ。……行きなさい、ガエリオ]
荒れた平原を眺めたキマリスは、そのまま戦線を離脱していくのだった。
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[数が多すぎるんだよ、コイツら!]
『右から来るぞ、昭弘!』
[せぁぁぁっ!]
カルタの親衛隊5機と共に昭弘は戦線を支えて。機能停止に陥った仲間たちを守っていた。グシオンはもうボロボロのガタガタに、昭弘もまた鼻血を垂らして限界を超えてグシオンを駆動させていた。
[はぁ、まだ増えるのかよ]
『クソッ、数は多い。実はそこまで大した事ないくせにな』
グレイズ・リッターのたちもまたボロボロだった。内政干渉を行うギャラルホルンを止めるためだと、主人の義を信じ。悪逆の使徒たちに鉄の鉄槌を下し続けていたが……グレイズの応援部隊、12機が戦場を睥睨していた。
勘弁してくれ、と親衛隊の者たちも剣を構え直す。しかし、そこへ上空から弾丸が降り注いだ。昭弘たちが空を見上げると……ランドマン・ロディ5機が大気圏を抜けて降って来たのだ。
[兄貴、助けに来たぜ〜!!]
[まさか昌弘かっ!?]
『助けに来たぜ、兄貴ィィ!』
元ブルワーズの元ヒューマンデブリたち。また、昭弘と昌弘のアルトランドと言う名前をもらったアストン、デルマ、ペトロとビトー達だ。
思わぬ援軍に奮い立った親衛隊と昭弘たち。彼らは、1機ずつ相手取り。グレイズ達を撃破していく。最後の1機は両手をあげて武器を捨てて投降した。
[コーリス・ステンジャだ……もう残っているのは私だけだ、潔く投降しよう]
[捕虜の扱いは条約通りだから安心してね。コーリス君?]
プロフェッサーが彼を拘束して、平原には停戦信号弾が打ち上げられる。MS大隊の迎撃は終了となり、平原での戦いは幕を下ろすのだった。
[カルタ様、我々は如何いたしましょうか]
[目的は果たした。イズナリオ・ファリドの凶行の証拠を抑えなさい。あの、エリャンヘルを]
[承知いたしました!]
[イシューんとこのお嬢さん?]
[何かしら、えっと……]
救命活動のために鉄華団と地球外縁軌道統制統合艦隊のMS隊は暫しの間協力して戦後処理を行うのだった。
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[ちぃっ、なかなか厄介な反応速度だ!]
『理性がない分、動きを読みにくいですな。実に厄介です』
[コイツ、前のやつより強くなってる!]
『アップデートは当然だろうな、面倒極まりねぇが!』
[◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎◼︎ッッ!!]
連携して相手の隙を窺うエリゴスとバルバトス。しかし、バルバトスは推進剤の殆どを追撃の際に使用しており、機動力がガタ落ちしており。エリゴスもストライクランスとしても使えるロンギヌスを圧し折られ、放棄。
バルムンクを抜いて近接格闘戦にシフトせざるを得ない状況に追い込まれており。狭い市街地での戦いというのも相まって非常にまずい状態に陥っていた。
[三日月、適当に合わせろ。このまま並んで戦うにはここは狭い。私は向こう側に回るから]
[わかった、任せてくれ]
バルムンクを引き、シールドを前に構えて。突貫、そのまま跳躍してシールドを相手に叩きつけ、そのまま押し込み。エリゴスは前進するが。エリャンヘルはそれを意に介した様子もなくバトルブレードを振るうも、それはバルバトスのレンチメイスに捕まれそのまま破砕される。
[◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎ッ!!]
『それしか言えねぇのかよコイツ。何言ってるのかわからねぇが、な!』
レンチメイスの顎を開きながら腕を引き、弓の弦を弾くようにフレームを引き絞るバルバトス。そこへ回り込んだエリゴスがバルムンクを振り抜いて牽制すると、背負っていたエリャンヘルの抜いたバトルアックスがたちまち真っ二つに切り裂かれる。
『ルォォォォォッ!』
[◼︎▫️◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎◼︎ッッ!!]
[捕まえ、たっ!]
破損した武器を捨てて、スクリューナックルによる迎撃がエリゴスの頬を捉えるも。インパクトの瞬間に身を引いてその威力を殺して受け流す。そこへレンチメイスが突き出され左腕を拘束、そのまま閉じた顎が喰らいつくようにチェンソーが起動してフレームをズタズタに切り裂いていく。
しかし、他のMSよりも大きく、頑丈なフレームは千切れることはなく。駆動部の錘の部分を握りつぶされてしまい、レンチメイスは機能を停止した。
武器を握りつぶす際の隙を騎士姫が逃すはずもなく、そのまま刃筋を立てて一閃。
[腕、まずは一つ!]
[◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎◼︎!?]
右腕を切り飛ばされ、エリャンヘルはフレーム丸ごとエリゴスに叩きつけんとするがシールドに阻まれ弾かれる。その後ろからレンチメイスを投棄したバルバトスが太刀を抜き襲いかかり、一太刀。それは背部を深々と切り裂き、エリャンヘルが背負っていた武装を破壊する。
その正面からシールドを叩きつけられ、下からの袈裟斬りを身を捻って避けるエリャンヘルの反応速度は徐々に上がっていく。
[俺たちの動きを学習しているのか、コイツ]
[とっととケリをつけないとまずいことになりそうだな……ん? 新しいエイハブウェーブ? これは……なるほど]
[あいつは、大気圏で見た……]
真紅のMSが戦場に現れると、そのままエリャンヘルに踊りかかる。見覚えのあるグリムゲルデだった。金色の双剣を振るい、装甲を切り刻むがフレームにはダメージがないように見える。
[◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◾︎◼︎◼︎◾︎◾︎◼︎◾︎◼︎◼︎ッッ!!]
[哀れなパイロットに引導を。助太刀に参ったよ、このモンタークがね]
[やっぱり、チョコの人だったか。助かるよ]
戦場は新たな動きを見せる。その戦闘により発生する轟音は最高議会にまで届くき、揺らすのは無理もなかった。
そして、その最高議会はと言うと。街中でMSが大暴れしていると言う知らせを聞き浮き足立っていた。避難が必要だとアレジ議員が主張してなんとか引き延ばしていたが、アンリ・フリュウの率いる野党がそれを非難。すぐさま採決を開くべきだと騒ぎ立てる始末だった。
なお、内心でほくそ笑むアンリの前で、場を切り裂く声が響いた。
「なんじゃ、騒がしいなぁ? ここはアーブラウの最高議会。いつからできの悪い猿どもが鳴いて喚くような動物園に成り下がったのかな?」
「バカな!? どうやってここに!?」
余裕の笑みが吹き飛び、机を叩いて立ち上がったアンリの視線の先には。髭を扱きながら悠然と、堂々と立つ蒔苗東護ノ介が答える。
「どうやって? ここはワシが代表を務めてあった場所だからのぉ、建物の内部についてはお主よりよーく知っておるぞ?
それにな……外が騒がしかろうと、入れる場所はいくらでも熟知しておる。ワシをあんまり無礼るなよ?」
ドスの効いた声に震え上がる野党達をよそに、蒔苗は自身の席へと向かう。アレジ議員を労い、良くやってくれたと感謝を述べる彼に議長から所信表明をと話がかけられる。それを聞き蒔苗は
「ワシにその時間は必要ない。それにワシの時間を割くくらいならば……ワシの客人に発言権をやってはくれぬか?」
「客人に……? え、私ですか!?」
「ふふふ、お前さんには世話になっておるんだ。お前さんの溜め込んだものを吐き出してくるが良い」
こうして、‘革命の乙女’が場を支配した。アンリ・フリュウの言葉を真正面から無視してぶった斬り、議会はその囀りに耳を奪われた。世界は彼女の思いに揺れて想いに酔った。
自分たちが火星の希望と呼ばれ、未来を照らすために力を貸してほしいと‘希望の乙女’は叫ぶ。議会は、この時だけは一つになったと多くの議員達が口にした、とさ。
そんな顛末を知らず。3機のMSは攻勢を仕掛けるが決め手にかけ、ジリジリとフィジカルの差に押され始めていた。右腕を失った事で重量を失った事で、増した機動性をに翻弄されたグリムゲルデが被弾、スクリューナックルによりコックピットが揺れた。
[ぐっ、厄介だな。流石に学習速度が早すぎないか?]
[チョコの人、そのMSだと切り裂けないみたいだね]
[軽すぎるが故にな。仕方ない、私はこれ以上は足手纏いになるかもしれない]
[手助け、ありがとうございました。ここからは……]
その時、場を切り裂く怒鳴り声が聞こえた。
「なぁにィ、やってんだ。ミカァァァ! 手こずりやがって、テメェもだマリアぁぁぁ! とっとと終わらせて、帰ンぞ火星にぃ!!」
その声を聞き、名を呼ばれた三日月とマリアンナは奮い立つ。まるで、何もない場所から力を引き出すように。
[ええ、そうですわね。帰らねばなりませんわ、ワタクシたちは……]
[そうだな、マリア姉]
[これは……この反応はまさか……]
増大するエイハブウェーブの反応。パイロットの感情の昂りに合わせて、高まっていく反応に心躍らせる
[ガンダムフレーム特有の現象、
──最終オーダー承認。
──ASW-G-15 GUNDAM ELIGOS & ASW-G-08 GUNDAM BARBATOS Alaya-Vijnana System connection tolerance limit second step.
[……見えますわ。未来が……]
『予測はこちらで受け持ちましょう。これ以上やりすぎると、身体機能を喪失する必要がありますので』
『おい三日月、嬢ちゃんと違う、お前の場合は別だ。テメェは何を差し出す』
[煩いな、バルバトス。出せるだけよこせ]
[三日月、なりませんわ。ある程度で我慢なさい……ワタクシの負担を増やさないでください]
[……わかった、アレを殺せるくらいの力でいい]
エリゴスの、バルバトスのツインアイが煌めき、残光を残して石火の如き閃きを。エリゴスは潜り込むようにして相手の動きを制動して止めるように立ち回り。まるで先を見ているかのように、何手も先を行く事で相手の動きを潰して回る。
バルバトスはその獣の如き俊敏性、まるでオオカミのような鋭く重い一撃を何度も、何度も太刀を用いてブチ込む。
データリンクにより、三日月には未来が見えていた。エリゴスを操縦するマリアンナの見る予測が常にリンクして、マリアンナもまたバルバトスと繋がったかのように動いて見せる。
狼が群れで狩りを行うような、そんな錯覚を齎しかねない光景に、マクギリスは感嘆の吐息を漏らし、震え上がりながら歓喜した。
[あァ、これこそがガンダムフレームの力。圧倒的な、蹂躙する力……!]
獲物であったエリャンヘルは叫ぶことも許されず一方的に嬲られ、潰されていく。足を、手を、肩を。ぶつ切りにされ、しまいには両腕と肩から先を切り飛ばされた。
対抗する力を根こそぎ奪われたエリャンヘルは最後の足掻きと言わんばかりに叫ぼうとする。だが、それすら許されなかった。
[これで……]
[終わりだっ!]
ともに電光が如き一撃を。
[……三日月、生きていますか?]
[もちろん、生きてるよマリア姉]
[どこか具合が悪いなどは?]
[わからないな。左目が見えにくい気がするけど……]
こうして、アーブラウの攻防戦という歴史の転換点を迎えた世界。鉄華団の勝利となり、蒔苗氏がアーブラウの代表へと返り咲いたことで火星に帰るための後ろ盾を得ることが叶った鉄華団は……束の間の勝利の余韻を心の底から味わうことにした、とのことだった。
[大丈夫なら、それでいいですわ]
[マリア姉。ここが、オルガの来たかった場所なのかな]
[さあ、わかりませんわ……ワタクシにもわからないことの一つや二つはありますから]
苦笑するマリアンナと三日月の元にオルガが現れる。それを見て、マリアンナと三日月はMSから降りることにした。
阿頼耶識のソケットを外し、三日月は左目の視力が著しく低下したものだと見られたのがきっかけだろう。後遺症があるのは三日月だけのようだったが。
「よくやってくれたな、ミカ」
「それを先に言うべきなのはマリア姉に、だよオルガ」
笑う三日月に手痛いなと言葉を返すなどののやりとりを……マリアンナはその光景を見届けて、鼻血を垂らしながら眠りにつくのだった。
to be continue