鉄血のオルフェンズ 黒騎士   作:クソメガネザル

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第4話

 

 宇宙に飛び立つその日の前日。

 

『では、明日の昼ごろにコンテナの打ち上げをよろしくお願いしますわ』

『畏まりました。 コンテナの打ち上げは手筈通りに』

『ええ、頼みますわね』

『あと、お嬢様。 やはりと言いましょうか。 調べるよう指示された1件ですが……』

 

 ワタクシは明日の予定に合わせてガンダムエリゴスをコンテナブロックに収納して自社のマスドライバーで打ち上げる予定を組み、何事もなければコンテナをイサビリに回収してもらう予定ですわ。

 ええ、何事もなければですが。 確実に一悶着は起きると思いますからなんともいえませんが。 そして、例の1件も睨んだ通りでしたか。 この件に関してはまだ、クーデリアに話すべきではないでしょう。

 

 食えない男ですわ、本当に。 まぁ、オルガの言葉を借りますが……いつか、どこかで「落とし前」を付けさせてもらいましょうか。

 その時までは生かし、せいぜい利用させてもらいますわ……ノブリス・ゴルドン。そして、翌日。 ビスケットの振る舞う朝食の最中に、いっぱいの荷物を持ってやってきたのはアトラでした。

 

「私を、鉄華団の炊事係として、雇ってください!」

「へぇ……いいんじゃねぇの? なぁ、ミカ」

「ん。 アトラの作るご飯は美味しいからね……」

 

 オルガ、三日月は賛成の模様。

 

「ワタクシ、料理できませんの……ですからワタクシは大歓迎ですわ!」

「マリアさんの旦那さんかぁ。毎日暗黒物質(ダークマター)を食べさせられる旦那さんに同情しちゃいますね……あっ」

「容赦ありませんわね、アトラ!? 失礼でなくて!?」

 

 なにやら今深げな視線をオルガに送るアトラに思わず吠えます。 事実ですからあまり強く言えませんが! そうですわ。 お互いに就ける戦場は違いますわ。 女だから料理できて当たり前なんて言われたくありませんもの! 役割分担は大事ですわ! 

 

「まぁ、俺は別にいいぜ。ようこそ、鉄華団に。よろしくな、アトラ」

「あ、ありがとうございます! 一生懸命頑張ります!」

 

 アトラは嬉しそうにお礼を。 オルガの返事に答えつつ彼はというと。

 

「よーし、お前ら! 地球行きは鉄華団初めての大仕事だ! 気ぃ引き締めていくぞぉっ!」

『おぉぉぉーっ!』

 

 うん、みなさんやる気上場ですわ。 これならなんの問題もなさそうですわね……桜お婆様からと三日月に火星ヤシの実を渡すアトラと目が合い、視線がずれてクーデリアを確認して。

 

「よろしくお願いします!」

「え? あ、はい」

 

 戸惑いながら返事をするクーデリア。 あなたはライバル認定されてるわけだと思うのですけど……と。遠くに見える空。そしてその果ての宇宙を見据えて、ワタクシも決意を燃やしましょう。

 

 こうしてワタクシも準備を進めるのでした。

 

 ●

 

 昼下がり。 ワタクシは白を基調としたノーマルスーツに着替え、背中まである黒髪はアップでまとめておきました。 ヘルメットを着用する際に髪が邪魔になっては困りますので。

 シャトルに乗り込んで出発の時刻を待ちます。 そろそろエリゴスの打ち上げも済んでいることでしょう。

 

「ワタクシは有事に備えてエリゴスをコンテナに詰んで火星衛星軌道上に飛ばしておきますわ。何事もなければあとで、イサリビにて回収をお願いいたしますわ」

 

 ヘルメットを被り、ガンダムバルバトスを積載、搭乗している三日月と共にシャトルの倉庫にて待機ですわ……まぁ、出撃は確定的でしょう。

 

[マリア姉。 いける?]

「ええ。 空圧推進バックパックの動作にも不調は見られませんからご安心なさい」

[……無理はしないでよ?]

「無論ですわ!」

 

 そして、それから数分後。 ビスケットの緊迫した声が。 どうやらこのシャトルに、MSに取り付かれたようですわ。

 

[行くよ、三日月! マリアも気をつけて!]

[ご心配なく。使命は果たしましょう]

 

 ワタクシはバイザーを下ろして空圧推進バックパックの電源をオンに。倉庫のハッチが開くと、発煙筒に着火する仕組みで設置されていましたから。

 

 鹵獲したグレイズの肩アーマーを組み付け補強した……ガンダムバルバトスの邪魔にならない位置に移動いたしました。

 エアロックが解除されてハッチが開きます。 同時にスモークが溢れて、辺りに撒き散らされて……グレイズのカメラアイが集光モードになり光ります。 そして刹那に至近距離での滑空砲の射撃、直撃でコックピットが吹き飛ばされたグレイズはそのまま浮遊を始めました。

 

 そして、その浮遊するグレイズにワタクシは阿頼耶識の制御でバックパックを制御して……煙幕に紛れながら、並走するようにその懐に隠れました。

 

 すると、衛星軌道上に白い箱のようなコンテナが浮遊しているのが見て取れまして、MS隊が三日月の方につられたのを確認したワタクシはバックパックの推進力を利用してコンテナに移動します。

 

 手にしていた端末でコンテナのスラスターを使い減速させて。 軌道を計算予測……タイミングを合わせて……! 

 

 コンテナに組み付いたワタクシはコンテナのハッチを開き、中に潜り込みます。 もともとコンテナ内空気を抜いていたのが良かったようですね。

 なんの苦労もなく入れましたわ。 バックパックをパージして放棄して。

 

「持ちこたえてくださいよ、三日月……まぁ、余計で無粋な心配ですわね」

 

 ワタクシはコックピットに入るとシートに座り。 阿頼耶識のピアスを接続してMSの起動準備。

 

 起動シークエンス……阿頼耶識認識

 オーナー情報……マリアンナ・レージス―確認

 システム起動……油圧系、駆動系―全システム異常なし

 OS……メイン、サブ異常なし

 マッチングエラー皆無……全システムオールグリーン

 

「阿頼耶識接続開始」

 

 反応値良好でエリゴスの起動準備が完了致しました。

 コンテナのエアロックを解除してハッチを開きます。 さぁ、行きますわよ。 エリゴス! 

 

「網膜投射開始。さて、マリアンナ・レージス。 目標を殲滅致しますわ!」

 

 ◯

 

 コンテナから飛び出したガンダムエリゴスの接近。 それは戦場に新たなエイハブウェーブが検知される事となり、コーラルは焦りを感じた。 ただでさえ目前のMSの動きについて行けず、苦戦する部下たち見て

 

「何をやっているんだ、この役立たずどもめ! 相手は高々一機だろう!」

 

 と苛立ちも隠さずコックピット内で罵りながらも、コーラルはシャトルに射撃を加える。

 

[コーラル指令!? ファリド特務三佐がクーデリアを捕らえるようにと命令が]

[アイン、貴様はいつからあの青二才の部下になった? 地上での雪辱を、クランクの仇討ちはどうした?]

[は、はっ!]

 

 アインはオーリス、クランクの命を奪った角付きのMSを討ち果たそうと気持ちを入れ替えた。 交戦中の友軍に援護に行こうと動いたその時。

 

[な、なんだ、このMSは!?]

 

 上官の上げた驚愕の声。 思わずアインはカメラをそちらに向けた。

 

[それ以上の狼藉は許しませんわ。とはいえ、狼藉?……本来ならば向こう(ギャラルホルン)が官軍ですけれども」

 

 年端もいかない乙女の声がコーラル、アインの耳に入った。 その声を聞いたコーラルは吠える。

 

[な、なぜ貴様がMSに乗っている!? いや、なぜだ!?]

[ギャラルホルンの腐敗もここまで行けば滑稽ですわね。 ノブリスとの取引で私情で部下を、軍を動かすのは明らかな軍規違反ですわ! 身の程を超えたその欲望、野望……ここで断ち切って差し上げますわ!]

[な、ぐわッ!?]

 

 その声の主はスラスターを噴かし加速、スライディングの要領でコーラル機に140mmヘビィマシンガンの射撃を浴びせながら牽制しつつ近付き、身動きの取れないグレイズの腹部を蹴りつけて吹っ飛ばした。

 青い三つ角にの翡翠のメインカメラが光る漆黒の機体がそこにいた。 オーリスの機体に損傷を与え、あの時において存分に邪魔をした所属不明のMSだ。

 

[あ、あの機体は!]

[ああ、あの時の。 その節はお世話になりましたわ]

[アイン! その機体は貴様に任せるぞ!]

 

 逃げ出したコーラルを追わず、そう言いながらガンダムエリゴスを駆る彼女はアイン機と距離を取りつつヘビィマシンガンの3連バースト射撃でアイン機の120mmライフルを撃ち、その手から弾き飛ばす。

 

[な、貴様!]

[油断大敵ですわ!]

 

 射撃武装の喪失でアインに取れる戦術と選択肢は減る。 そして、シャトルに射撃を仕掛けていたオルクス商会の戦艦に、マリアはウイングバインダーに格納されたレールガンを展開。自由な射角を設定できる2つの砲身を敵戦艦に向けて。

 

[弾道計算、照準セット終了。シュート!]

 

 閃光が瞬く。

 

 宇宙空間は真空。 音の振動を伝える空気がないため、音は響かない。 そのため、飛来した砲弾に気がつける方法はないに等しい。

 弾薬はナタリアの考案で量産化された専用砲弾。 炸薬にHNIWを使用し、弾頭の加速を促し、超硬セラミックスの加速体をツインエイハブリアクターの大出力で発生させた電力を元に撃ち放つウイングレールガンだ。

 

 強力なローレンツ力を発生させた反発で砲弾を飛ばすレールガンは対物において相性が良い。 その砲弾の威力は──戦艦のナノラミネートアーマーを抉り穿ち、大きく揺らすのは容易いほどの威力となる。

 

 一発のコストが高いが、それに見合う威力を有するコンパクトにして最高の威力を誇るレールガンである。 装弾数は2門とも4発。

 敵艦船内は混乱しているだろう、とマリアンナの元にバトルアックスを手に迫るアインのグレイズ。 が、彼女は慌てずシールドでバトルアックスを受け止めると、ヘビィマシンガンを腰アーマーにマウントしてナイトソードを抜く。

 

[邪魔をするならたとえ女でも……]

[容赦はしない、ですか? そんなのはあなたが決める事ではなくてよ!]

 

 シールドを巧く使い、吶喊でアイン機を弾き飛ばしたマリアンナは追撃に回る。 スラスターを噴かしさらに加速。 斬りつけながら逆噴射で距離を取り、シールドを押し出して再び吶喊。

 

 アインもそれに対抗するが素の機体出力が違うため、押しに圧されてジリ貧に陥る。切り込みから蹴り上げ、盾での殴打に肘打ちと流れるように動くエリゴスはとうとうアイン機のバトルアックスまでも破壊。

 

[しまった──のわッ!?]

 

 その背中に回り込みスラスター部を切り潰したルーシカは最後にアインの乗るグレイズをイサリビとは反対側に向けて蹴り飛ばした。

 

[あなたとこれ以上戯れている暇はありませんわ。友軍に回収してもらいなさい]

 

 冷淡にそう告げると、ウイングバインダーを展開してスロットルを全開にしたエリゴスは飛び去った。

 

[クソッ……クソォォォォ!]

 

 宇宙に1人の男の咆哮が虚しく響いた。

 

 ●

 

「くそ、こいつら」

 

 コックピットで静かに三日月はぼやく。 コーラルは指揮官として3機の部下が駆るグレイズに指示を出しつつ、後方からの援護に専念していた。

 

[ええい、どこまでしぶといんだ!]

[あんたら、邪魔!]

 

 左側から撃たれる前に滑空砲の照準を合わせて、その肩を撃ち抜く。バトルアックスが宙に放り出され、次の照準を敵機コックピットに合わせて撃ち抜いた。

 

 角付きのMSに背を向けてクーデリアの乗るであろう戦艦の……イサビリの撃沈を狙いたいコーラルだったが、背を向けると滑空砲による訳のわからないレベルで精密な射撃に見舞われる。最初はまぐれかと相手にしないつもりだったが、何度も砲弾を友軍に撃ち付けられてはまぐれとは片付ける事は出来なくなった。

 

[仕掛ける、援護しろ!]

[ハッ!]

 

 部下にライフルを投げ渡したコーラルが三日月に仕掛ける。 バトルアックスを振りかぶり三日月も先ほど撃墜したグレイズから奪ったバトルアックスで切り結んで迎撃する……が。

 

[ぐ……!?]

[私の邪魔を……するなぁぁぁ!]

 

 コーラルによる、意外と器用な操縦でバトルアックスを弾き飛ばし、迫るコーラル機。

 近接武装を失ったバルバトスは窮地に陥る。 三日月は最悪のケースをイメージした。

 

 が、しかし。

 

[三日月ぃぃぃ!]

 

 刹那に昭弘の声が戦場に響いた。

 

[な、なんだ!? ……グレイズだとぉ!? いや、あの機体は……まさか……!]

[受け取れ、三日月ぃぃ!]

「いいタイミングだよ、昭弘……!」

 

 突然の銃撃に泡を食うコーラルは狼狽えた。 自身の機体に迫るメイスを投擲した、運んできたその機体、エイハブリアクターの周波数が指し示すのは……

 

[クランクのグレイズだとぉ……!?]

[コーラル三佐!]

 

 隙を晒したコーラルが気付いた時にはもう遅かった。 メイスを受け取り、コーラル機に迫ったバルバトスはコックピットの真正面にメイスの先端を叩きつけて。

 そのままコックピットを、内蔵されていたパイルバンカーにて打ち抜く。コーラルはコックピットを潰され、その一撃で絶命しグレイズの指揮官機は力なく宇宙を漂う。 そこへ現れるもう一機のMS。

 

[おや、もう指揮官機を倒しましたか……]

[マリア姉……遅いよ]

 

 もう一体の角付きの機体が合流したのだ。 残っていた3機のグレイズたちに緊張が走る。

 機体出力が桁違いの性能を持つMS1機でも脅威たる存在。 それが2機も並んでいる状況で緊張しないのは大馬鹿者か、それとも天才か。

 

[動きが止まってる奴から叩こう。 昭弘、援護よろしく]

[お、おい! 三日月!? 俺の機体は阿頼耶識がないってのに!]

[習うより慣れろ、ですわ]

[容赦ねぇ他人事だな!? マリア!?]

 

 マリアンナはそう言いながら、ウイングレールガンを起動してあらぬ方向を撃つ。 思わず明弘、三日月がそちらを見ると……慌てて射線から逃れる紫の機体が見えた。

 

[あれは……新手か?]

[シュヴァルべ・グレイズですわ。 高級機ですから、相手はエース級のパイロットに違いなくてよ? 三日月、彼らを相手にできます?]

[……え?]

[昭弘、取り巻きを潰しますわよ。 下手な援護をさせる前に]

 

 言いつつルーシカは漂うグレイズを蹴飛ばして残りの機体に迫る。 スロットルを全開に、加速して1機に盾を叩きつけて弾き飛ばす。 弾き飛ばしたグレイズのコックピットを狙ってレールガンの砲弾を叩き込む。

 かなり近い距離でのその射撃に晒されて無事なわけがなく、コックピットを抉られてパイロットはミンチと化した。戦艦の装甲なら耐えれただろう。 しかし、グレイズはMSだ。 それ故に無事であるはずがない。

 

[俺がいる意味はあるのかよ!]

 

 文句を言いながらも、止まってるグレイズに向けて牽制程度であればいいと昭弘は滑空砲の引き金を引く。

 

[大いにありますわ!]

 

 牽制の砲弾に恐れたグレイズの動きが止まり、その隙をついてマリアンナは止まっている機体の後ろに回り込みスラスターにヘビィマシンガンの弾丸を叩き込んで破壊。 ついでに頭部のカメラアイを蹴りつけて破壊しながら。

 

 行動不能となった僚機を受け止め、エリゴスをみやり。最後に残された1機はスラスターを破壊された友軍の機体を掴むと戦線を離脱していった。 優秀な上官が居れば1機でも損害が出たなら撤退していただろう。

 

[昭弘はそこに浮いている2機のグレイズを回収して撤退の準備をしてくださいまし。 そろそろオルガが何らかの行動を起こしていてもおかしくありませんから]

 

 言いながら彼女は撤退していくグレイズを見逃し、レールガンの照準を遥か遠くのオルクス商会の戦艦に合わせて砲撃した。 砲弾はブリッジ付近に着弾、直撃。もう一撃は戦艦のバーニアを狙撃したが流石に外れていたが、動揺を誘うにはちょうどいい一撃だったには違いないハズで、オルクス商会の戦艦艦橋(ブリッジ)は混乱していた。

 

 そんな折に、マリアンナは新たに検知されたエイハブウェーブにうんざりしながら、自身がロックされたことにも気がついた。 照準を合わしてくるということは敵であることに違いはないと彼女もヘビィマシンガンを相手に向ける。

 なお、先ほど撤退しようとしていたグレイズは邪魔だとメイスの打撃で弾き飛ばされ、三日月によって戦場を強制離脱(ログアウト)していた。紫の機体はバルバトスの人体に近い自然な回避運動に手こずり、決定打を与えられず苛々を募らせたのか。 少々ムキになっているとマリアンナは分析する。

 

[伝説の機体との手合わせの機会はそうそうないものだ……そう思わないかね?]

 

 マリアンナにそう話しかけるのは、近日のうちに聞いた彼の声だった。

 

[伝説……ですか。 まぁ、300年前の、厄祭戦の生き残りでしかないですよ]

[その声は……?]

 

 彼女は念のためにと用意していた仮面をかぶる。 口元は丸見えではあるが身元さえ分からなければいいと割り切っていた。 カメラを起動して相手との秘匿通信を試みる。

 

[ほう、私に顔を晒すのかね?]

「素顔を見せるつもりはないわ」

[ふむ。 私に通信をつないで何の目的が?]

 

 ライフルによる牽制を紙一重で避けながら、弾丸をばら蒔いて牽制するエリゴス。 ヘビィマシンガンをマウントしてナイトソードを抜くと、エリゴスは青い機体、シュヴァルべ・グレイズに踊りかかった。

 

「貴方は腐敗したギャラルホルンに絶望を感じたことはない?」

[……!]

 

 白刃をぶつけ合いながら踊るようにして宇宙を翔ける黒と青。 そして画面越しの騎士を意匠としたような鈍色の輝きの仮面。 マクギリスの動揺を察知して口元は妖艶に歪む。

 

「図星、のようね。 ノブリスの手のひらで囀る小鳥(クーデリア)。彼女を亡き者にすれば独立の気運昂まる火星の民衆は暴動を起こす。 最悪の場合厄祭戦規模とは言わないけれど、惑星間戦争が起こると思わない?」

[……何が言いたいんだ、君は?]

「私は火星の独立とハーフメタルの貿易自由化を支援している。そうね、傭兵の《騎士姫》とでも名乗っておこうかしら」

 

 茶化すように仮の名を言う彼女はマクギリスに言葉を送る。

 

「誰かが変えなければ世界は変わらない。 それは贈収賄や私情で軍を動かす腐った軍隊でも同じことよね」

[……]

「しょせん私は人殺し。 これからこの手で撃ち殺し、屠る無法者やあなた方の同胞の命を数えるつもりはないわ」

 

 自嘲の笑みが口元を歪ませる。 彼女の、これから歩いていく道は血濡れの獣道。

 

「その代わり、殺した数以上に無辜の民たちに幸福を与えたい。 それが私の理想……前置きが長くなってしまったわね。 私は道化。 貴方は観客? それとも役者? 聞きたいのは──」

 

 その一言をマクギリスに告げる。 斬り合いでエリゴスのマニピュレータから弾かれるナイトソード。

 

「貴方は世界に変革を齎したい? 時代の節目にガンダムフレームは現れる。だから、そんなあなたには期待をさせていただくわ。 またどこかの戦場で機会があれば会いましょう──マクギリス(モンターク)様」

 

 弾かれた得物を女は回収して手に収めた。 慌ててマクギリスは火器照準を合わせるが稲妻の様な機動とデタラメな加速を用いた器用な操縦でどんどん距離を離していく。

 

 そして、その軌道上で近くに浮いていたグレイズを掴み回収しながら。その道すがらにバルバトスと戯れていた紫のシュヴァルべを蹴り飛ばしてさらに加速して戦線を離脱していった。

 その不意打ちに泡を食ったガエリオは追撃に振るわれるメイスを、左腕を犠牲にすることで躱し事なきを得ていた。 ちなみに黒いガンダムフレームは千切られた左腕もちゃっかり回収していった。

 

「ガエリオ。 大丈夫か?」

[ここ最近、何度も言われると流石に凹むなぁ……あの角付きどもめ……]

 

 入れ違うように飛来した戦艦に掴まり戦線を離脱していったMS2機をガエリオは憎々しい視線で見送ることしかできなかった。

 

「……何か拾っただと?」

 

 自らの旗艦からの通信で救命ポットを回収したと聞いたマクギリスは、一考しながら帰還していく。

 ガエリオも憮然としながらも、怪我をしているのでそれについて行った。

 

 ちなみに、彼らが回収した救命ポットには袋叩きにされ放り込まれたパンイチの男の腹に書かれていた一文にマクギリスは大笑いしたという。

《良くも悪くも人は使いよう。 一応、無能ではないから使ってやって欲しい》

 と。

 

 to be continued

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