鉄血のオルフェンズ 黒騎士 作:クソメガネザル
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オルガの機転を利かせた小惑星ターンの作戦とユージンの活躍により、戦線離脱出来たワタクシたちは戦利品の確認をいたしました。
ちなみに、昭弘が確保していたグレイズ2機はアンカーを打ち込んで牽引したそうです。
まず、鹵獲したグレイズが3機。 修理すれば問題なく使えますし、その手の業者に横流しすれば収入も得ることが叶います。 現在、唯一エイハブリアクターを造れるギャラルホルン産のMSということもあり、その相場はかなり跳ねると予測致しますわ。そしてついでに回収していたシュヴァルベ・グレイズの左腕フレームは分解。バルバトスの左腕に搭載されていたワイヤーアンカーを付け替えましたわ。
これで相手を拘束して引き寄せ、近接戦に持ち込む……インファイターの三日月にはおあつらえ向きの武装と言えましょうか。
「それにしても土壇場の機転……オルガはすごいですわね。 加えてあの無茶なオーダーを遂行したユージンの度胸も素晴らしいですわ!」
「そんなに、ベタ褒めすんなよ……流石に照れるじゃねぇか」
ワタクシの言葉に、いつになく素直に応じて照れるユージン。明日は槍が降るのでしょうか。 所謂一時的なデレ期ですわね!
「マリアねーちゃん、艦橋に来てくれって団長から伝言!」
「あら……ユージン、行きますわよ」
「お、おう」
少年組のダンジの伝言を聞き、ワタクシはユージンを連れて艦橋に向かいました。 そして、そこでは少しばかり重々しい空気が。オルガたちと話し込んでいましたがやはり。
「どうしても地球に行くには案内役が必要なのですか?」
「ええ。 ワタクシたちはこうして現にギャラルホルンに痛手、その権威に傷をつけただけでは飽き足らず。その生傷に泥を塗りつけたではありませんか」
嘆息しながら、ワタクシ達の所業を思い出すと……凄まじい事をしてますわね。正当防衛とは言え、人も殺していますし。
「安全に地球圏にたどり着く為のアリアドネを、ギャラルホルンの航路を頼るわけにはいかないのが大前提ですわ……ま、こればかりはワタクシたちにも原因はありますけどね。 先に喧嘩を売ってきたのは向こう様です、正当防衛に違いはありませんわ」
ワタクシはクーデリアの疑問に答え、艦橋の皆も納得した模様。
「ギャラルホルンが手出しできないような後ろ盾が俺たちには必要だってことか」
「後ろ盾か……」
シノさん、ユージンは腕を組み考えている様ですが……妙案は浮かばない模様ですわね。
「テイワズだな」
「マジか……いや、それしかないか……」
オルガがポツリとつぶやいて、考えているようです。 テイワズ──木星圏に存在する複合企業にしてその実態はマフィアとの噂も聞く勢力ですわ。
「確かにテイワズなら地球圏にも影響を持ってるだろうけど……」
「火星に残ってる連中のこともある。 かなりでけぇ組織じゃねぇとダメだ」
「だからって、俺たちみてぇなガキを相手にしてくれんのかよ……」
ツテを求めるオルガたち。 これは、助け舟を出すより他ありませんわね。
「解りましたわ。 ワタクシにテイワズの長、マクマード氏直参の方に心当たりがありますわ。 連絡をつけてみましょう」
「え……? マジかよ、マリア」
やばいものを見る目でワタクシを見るのはおやめなさい、シノ。とはいえ、普通MSを表のマーケットに流すのは違法です。エイハブリアクターはギャラルホルンが管理および統制しているもの。つまりはMSを運用するには彼らに許可を得なくてはなりません。
しかし、ワタクシのエリゴスや鉄華団のバルバトスは無許可で運営していたり、あるいは海賊連中がレストアして乗り回してるMSも違法物なのですけれど、そう言ったものは裏マーケットで取引されるのがこの世の常なのですわ。
「ええ、マジですわ。 まぁ、お話をするのはワタクシではありませんわ。 裏ルートでの輸送……我等が鉱山にちょっかいをかけてくるカモ共から鹵獲したMSの引取りや輸送をお願いしているお方ですわ」
「……カモってのは聞かなかったことにするよ」
オルガのドン引きには慣れました。それからワタクシたちは打ち合わせを済ませて、ワタクシはエリゴスのメンテナンスのために格納庫に足を運びました。
●
「そこはそう書くのではありませんわ。 こうかくのですわ」
「マリアせんせー! これで合ってるか?」
「ええ、そうですよ」
イサリビの食堂にて休憩時間を用いて勉強会。 事の発端は三日月にクーデリアが字を教えることになったのがきっかけでした。
バルバトスの武装移植にエリゴスの調整がひと段落して昼食にしようとしたタイミングでクーデリアに助太刀を頼まれてしまったのですわ。 手空きになるのもあれでしたから手伝うことにしましたの。
ワタクシが少年組に勉強を教えている時、三日月はいつも訓練模擬戦に明け暮れてましたからね。 悪戦苦闘する三日月ですが、一生懸命に自分の名前を書いています。拙くてもいいから文字を書く努力からですわね。彼らの気が済むまで、昼の休憩が終わるまでワタクシは勉強会を手伝い。 休憩後は少年たちも戻って行きました。
「ごめんなさい、手伝ってもらって」
「いいのよ、これくらい。 少年組といってもまだ子供ですもの」
「この子たちが前線に出ることがないようにしないといけませんね、マリア」
「ええ、その通りですわ。荒事はワタクシに任せなさい」
「複雑ね、頼もしすぎです」
クーデリアに気にしないように伝えたワタクシは彼にコンタクトを取ろうと、通信機を起動いたしました。
「この子たちのワガママに付き合うのも先生と呼ばれたワタクシたちの仕事ですわ」
「そうですね! ありがとう、マリア」
「構いませんわ。 屋敷でボーッと5ヶ月も過ごすより、ワタクシの手を借りたいとおっしゃる方がいるなら……それがお友達の頼みであれば苦痛でも何でもありませんわ」
楽に構えなさい、今はあなたにできる事をあなたなりに実行すればいいと。 クーデリアに伝えました。
さて、名瀬様に通信を繋ぎましょうか
○
[俺の船を勝手に乗り回しやがってぇ! とっとと返しやがれ、宇宙ねずみども!]
「黙って聞いてりゃあ! さっさと逃げ出した腰抜け野郎が!」
通信を試みようとした時に、間が悪く。 艦橋から停船信号の報せを聞いたワタクシが慌てて艦橋に移動すると……マルバ氏とユージンが罵り合いをしていました。
「何をやってますの?」
「いきなりマルバの顔が写ってな……俺もいまだに要領を得ねぇんだよ」
通信の探知で後ろに、ぴったりとくっついてきている状況だそうで。 事情を聞きワタクシは嘆息一つ。 終わりの見えない罵り合いに呆れたワタクシは
「ユージン、ワタクシがお話致しますわ」
「ああん?」
ワタクシはビスケットに画面を戻してもらいまして。
[おい、オルガ! さっさと俺のウィル・オー・ザ・ウィスプを返し……え?]
「ご機嫌麗しゅうございます。 マルバ・アーケイ様」
ニッコリと微笑むワタクシを見たマルバの顔が青ざめるのが目に見えました。
「大変でしたわよ、社長が夜逃げした挙句残された社員等々のケアに食事の切り盛り。 経営等もキチンと調べ直したら赤字でしたわね? ワタクシが資金提供していたにも関わらず……本来の業績水増しについてお話を聞かせてもらいたいのですが……?」
ワタクシを相手に裏切りを働くとはいい度胸です。 まぁ、この不正に関してはキチンとした調査をしてわかったわけですが。
[いや、えっと……そのぉ……]
「ハッキリと申し上げなさいな。 阿頼耶識の手術も本人たちが不本意に受けていた事実も聞き及びましたわよ? 少年兵の扱いも、何もかもを……! ワタクシは言いましたわよね? 貴方に……持たざる者にとっては生き辛い世の中で自身よりも力のない者を虐げることは許さない……と!」
[……!]
鋭く睨みつけて怒気を孕んだ声をゆっくりと、じっくりと。
「ああ、そういえば。 あなたの腹心だったハエダ、ササイは処分致しましたわ。 クビと言いつけましたら逆上されちゃいましたから思わず射殺いたしましたの……彼ら、訓練日誌にどういう躾をしたと書いてましたから、虐待の証拠も残してくれましたし……いい無能な部下をお持ちですわね」
[……なっ!]
「おいおい……それを今ここで言うのかよ……」
ワタクシの言葉や剣幕にドン引く、オルガの声は無視です。
「さて、そこな畜生の殿方では交渉はできませんわ。 あなたの後ろ盾のお方と話を付けさせてもらってもよろしくて?」
[ひ、ひぃぃぃ……]
[おいおい。 話すのも億劫になるくらいにトゲトゲしてるじゃねぇかマリアンナ嬢。 一応俺の依頼主なんだが、ちょいと言い過ぎじゃないかい? 相変わらず口の立つお嬢さんだことだ]
マルバが尻餅をつきながら離れると。 白いハットに黒く長い髪、伊達男の風貌に白いスーツを着こなす──
「お久しぶりですわね、名瀬・タービン様」
[その本性、キツイ性格じゃなけりゃ口説いてんだがねぇ……で、嬢ちゃん。 阿頼耶識の件は本当かい?]
「ワタクシが貴方を騙したことがありますか? 証拠ならこれをどうぞご覧下さい」
書類データを相手の船に送信してじっくりと読まれて数分後。 全てを納得したような顔の名瀬様の顔。
[なるほどねぇ……だがまぁ、このオッサンの依頼は依頼だ。 要するに「それはソレ、これはコレ」って言葉を知ってるかい、マリアンナ嬢?]
「ええ、存じていますわ。 ですから、取引を願い出ますわ。 そちらに損はない取引を。 オルガ。 ワタクシがなぜグレイズを鹵獲したのか……わかりますわよね?」
オルガに積めないほどのMSをわざわざ無理やりに回収したのか。理解頂けたようで何よりですわ。商人は大胆に大盤振る舞いデキる大器でなくてはなりませんから。
「……なるほど、いいぜ。 1機の取り分はマリアに譲る」
[ん? 何の話だ? 取引ってのはなんだい?]
「実はワタクシたち。 ギャラルホルンを敵に回してしまいまして戦闘になり。 結果的にMSのグレイズフレームを3機鹵獲しましたの……そちらの男の依頼を受けるよりも高い金額の収入は保証いたしますわ──要約しますと、グレイズをそちらに1機お譲り致しますわ」
[へぇ……それがお前さんの指し示す取引かい?]
「実力行使に出られるのはお互いに損害しか出しませんわ。 タービン様が損得を計上できない愚か者ではないと信じてこの取引をもちかけていますわ……「どうしても」と、申されるのであればワタクシも矢面に立ちますわよ? 鉄華団の後ろ盾として」
[……まぁ、未熟なりにも筋を通すか。 イイねぇ、嫌いじゃねぇぞ]
最終的な合意はあっちが決めるワケですが、乗るか乗らないか……いえ、あのお方はこの提案に乗りますわね。
[はははッ! いいぜ、そっちの提案に乗ってやろうじゃねぇか。 泣きつかれた以上は依頼を完遂するつもりだったが……このオッサンにそこまでしてやる義理はねぇ。 このオッサンなりに筋通した上でお嬢ちゃんがその不義を働いてたってんなら話は別だったがよぉ……]
笑った後でマルバを睨みながらタービン氏は
[そっちのボウズたちとは知り合いでもなんでもねぇアレだが、マリアンナ嬢は得意先で、知り合い──だからって加減するつもりはなかったが、手ェ出すと大火傷すんのが火星での常識だったな]
苦笑しつつ、そばに控えていた奥方のアミダさんに耳打ち。 奥方はマルバの首根っこを引きずり艦橋から姿を消されました。
ワタクシは改めて鉄華団か立ち上げられた経緯、今日までの道程を隠し飾ることなく説明いたしました。 ──そのあとはオルガの仕事ですわ。
「改めて取引に応じてくださってありがとうございます。 こちらもギャラルホルンとの戦闘で疲弊している以上。 タービンズとまで事を構えるわけにはいかなかったのですわ」
[なるほどな。 お嬢ちゃんにそっちのボウズが置かれてる立場ってもんは把握したよ]
そう言うとニィと口角を釣り上げたタービン氏は
[嬢ちゃんの顔に免じて俺がオヤジとの渡りを、交渉の席を用意してやるよ。 ああ、マルバの奴はテイワズの直参の資源採掘衛星でタダ働きさせとくが、それでいいよなぁ?]
「ああ、それで問題ない。 ありがとうございます」
オルガは心底安心したようにお礼を言っています。そして、改めて顔を合わせて話すためにタービンズの船に移動。 オルガたちが先に艦橋を後にするその際にタービン氏に呼び止められました。
[なぁ、マリアンナ嬢。 惚れた男のために俺と交渉に出たのか?]
「さぁ……それはワタクシにもわかりませんわ。 ただ、オルガが貴方達と交渉に臨んだ場合決裂していたでしょうから」
そう伝えるとタービン氏は微妙な顔。
[まぁいいさ。 ほぼタダでグレイズが手に入るんだ……目は瞑っておいてやるよ。 その代わり、あの坊やをきっちり落とせよ?]
ニヤリと笑う彼に弱みを握られた事を悟るのでした。
●
「あの子強すぎぃぃぃ!? 一体なんなの!? ダーリンの知り合いだからってあんなパイロットいるわけなの!?」
タービンズ格納庫にて、長い金髪をツインテールに結った少女が頭を抱えてMS「百錬」より降りてくる。
彼女の名はラフタ・フランクランド。 タービンズのMSパイロットの一人でクセの強い、MS「百里」を自由自在に駆る卓越した操縦技術の持ち主である。
サイセイへの道中。 暇を持て余して片手間にルーシカの開発した試作ドローンを通じてイサリビとハンマーヘッドの間に無線ネットワークのやりとりができるようになり。
MSのシミュレーターによる特訓と称した模擬戦の交流会が執り行われていた。
「アミダ姐さんが熱くなるくらいに楽しんだって言ってたから……ありゃ化け物だよ」
つなぎを着用した銀髪の女性がスポーツドリンクをラフタに投げよこす。 彼女と同じくタービンズのMSパイロット、アジー・グルミンはタービンズのエースにして名瀬の正妻、アミダ・アルカと引き分けに持ち込んだ相手側のパイロットに畏怖を抱いていた。
「百錬のデータで、阿頼耶識なしであの機動性……あの動きとかマジでありえないんだけど……」
「百錬のクセを少し動かしただけで把握してあの動き……ステップからタイミングの緩急。 攻撃、カウンターの使い分けが恐ろしいくらいに巧いと来た。 敵に回ってたら厄介だったに違いないさ」
「子供だけしか乗ってない船って聞いてたのに思わぬ伏兵もいたもんね……」
ラフタはシミュレーターにて相手の少女に、少し己の驕りを指定されたのが悔しかったようである。 お嬢様が何だ、一捻りじゃんと侮っていたのは間違いではなかったが。
そもそも正規軍隊と対峙して余裕を崩さない時点で、タダのお嬢様ではないと知るべきである。
「よーし、マリアンナ! もう一回勝負よ!」
[了解、何度でも受けて差し上げますわ!]
結局、この後。 ラフタが根を上げるまでマリアンナは彼女に付き合うのであった。
◯
「追撃は行わないだと?」
「亡くなったコーラルの残してくれた仕事がたまっているんだ……彼らはどのみち、地球に向かうために戻ってくるだろう。 その時に意趣返しをすればいいだろう、ガエリオ」
「面倒ごとを残してご臨終とは役にたたん奴だ……無能な司令官を持った連中には同情したくなるな」
マクギリスは仕事をしつつ、雑談程度にガエリオにあるデータを見せていた。
「ん? これは?」
「私たちが遭遇した……‘鉄華団’所属とみられるMSのデータだ。 左の機体はガンダムバルバトス。 そして、右の機体が……」
「ガンダムエリゴス……ガンダムフレームだと?」
「かのアグニカ・カイエルが厄祭戦にて駆ったガンダムバエルを含め72機生産されたうちの2機だ。 300年前の機体だが骨董品と侮ることなかれ。 応急処置程度とはいえどかなり丁寧に整備されている様子だな」
ガエリオの疑問にマクギリスは応える。
「あの機動性、人体のような有機的重心移動……阿頼耶識システムの恩恵を受けているわけか」
「そもそも阿頼耶識システムはMSを動かしやすくするための処置だと聞いていたが……ここまでとはな」
「火星ではそれほどまでしないと生き残る手はずがないのか……生まれが違うだけでここまで変わるとはな」
ガエリオはボードウィン家に生まれたことを誇りに思っていた。 しかし、思うこともある。 士官時代、スラム街の暴動鎮圧に向かうこともあった彼が見たのは痩せ細った少女、少年の姿。
マクギリスがこの世界を変えたいと願うことを彼は知っている。 その野心を応援もしている……腐った世界を変えたいと若いながらに足掻く友人の‘真たる友人’には程遠い事にも気が付いている。
「ともかく、今は目前の仕事を片付けるか」
傷を負ったガエリオは療養に精を出すのも仕事だ、とマクギリスに釘を刺されて病室に戻っていった。
「私をモンタークと見抜いた彼女は一体何者なのだろうか……」
マクギリスの、そのつぶやきの答えを知る者は、その場にはいない。
そして、整理を終えて。とある資料を見てそういえば、とマクギリスはコーラルの残した仕事の中で、ある違和感を覚えた。
「レージス家の監視報告?」
レージス財閥。それはマクギリスも聞き及ぶここ十数年で急成長した、火星内では上位を争うトップクラスの財閥である。
その経営を行なっているレージス家は元々没落した貴族ということになってあるのだが、なぜ没落したのにもかかわらず。
ここまでの業績を叩き出すのか……気になる。
そして思い至る。
「マリアンナ・レージス──思い出したぞ。‘時代の寵児’と呼ばれる天才だったか」
その経営力たるや他の追従を許さないレージス財閥のトップを務める少女。かのクーデリア氏とは学友でもある。
「鉄華団は最近立ち上げられたばかり。そんな企業であのクーデリアの護送を引き受けるのは後ろ盾が無さすぎる。少し裏を取る必要があるな……あの男を使ってみるか」
彼は……拾った男を早速使ってみることにするのであった。
●
時は少し遡り。 ハンマーヘッドの応接間に招待されたオルガたちは名瀬と対峙していた。 参謀ビスケット、副団長ユージンを背中に立たせて、オルガとクーデリアがソファーに腰を下ろし、マリアンナはクーデリアの隣に座っていた。
「改めて自己紹介だな。 俺は名瀬・タービン、名瀬さんでもなんでも好きに呼ぶといいぜ」
「俺はオルガ・イツカ。 よろしくお願いします、名瀬さん」
「ああ、硬いのは抜きだ……って言いてえが、商談は礼儀が大事だ。 喋りは及第点って言ってやりたいが──比較対象があの嬢ちゃんだと苦労すると思うけどよ。 ま、がんばんな坊や」
「は、はい」
「で、まぁお宅らからグレイズの搬入を確認した以上。 この取引を成立させてくれた嬢ちゃんの頼みを聞く事になったわけだが、そっちの望みはなんだい? もちろんテイワズの話は俺がきっちり渡りを付けてやるが、他にもあるんだろ?」
名瀬は瞑目してオルガたちに望みを聞いた。 というのは、完全な状態のグレイズを1機丸々と納品された事にある。
通常出回ることのない機体ゆえに1機につけられる値段が、とても跳ねるのである。 テイワズの本拠地"歳星’で、3ヶ月豪遊しても尽きないカネが手に入るほどの価値があるためである。
「では、ひとつだけいいでしょうか……地球までの案内役を依頼したいんです」
ビスケットはクーデリアの置かれている立場を改めて名瀬に説明する。 ギャラルホルンと対峙した事で動きに制限がかかっている事実も。
「なるほどな、安全な地球までの航路をお前らは欲してるわけか、あとは強力な……ギャラルホルンが迂闊に手を出せねぇくらいの後ろ盾。 まぁ、テイワズなら納得だわな」
苦笑しつつ、紅茶を飲みながら名瀬はオルガに少し厳しめの視線をぶつけた。
「だがな、オルガ。 俺は渡りをつけるだけだ。 親父との交渉の席を用意してやるだけ……それ以降はお前ら次第ってことはよーく覚えとけよ?」
「分かってます……」
「お父様と交渉ですか……?」
首をかしげるクーデリアにマリアンナが説明を入れる。
「親子の盃を交わした仲と会う意味ですわ。 マクマード・バリストン氏の盃を名瀬様が預かっている間、彼らは義親父と義息子の関係に、いわば家族になるわけですの」
「あながち間違っちゃいねぇ、まぁ親父と俺の関係は絆の深い上司と部下ってわけだな」
それから鉄華団とタービンズについて、色々な意見交換があり、その途中でオルガは疑問を1つ聞いてみる事にした。
「にしても、この船……女性しか見かけませんね……」
「ん? ああ、そりゃそうさ。 なんせ、タービンズは俺のハーレムだからな」
「……は?」「ふぇ?」
オルガは硬直、クーデリアは思わず理解不能という間抜けた顔をしていた……無理もないが。
「はははっ! そんな間抜けな顔しなくてもいいだろうが。 要するに、この船の乗員は全員が俺の女ってわけだよ」
「ぜ、全員が……」
「お、奥様なんですか……?」
引きつった顔のビスケットの言葉をクーデリアが興味本位で引き継ぐ妙な連携プレー。
「まぁ、そういうこったな。 ああ、あとは子供が5人くらいか……」
「ご、五人!?」
「その子供ってのは……」
若干引きながら話すオルガに、わかりきった事実を聞くなと言わんばかりに。余裕のある雰囲気で、伊達男が笑う。
「全部俺の子に決まってんだろ? ま、全員腹違いだがな……地球や歳星にも学校に通うのもいるんだぜ?」
驚くクーデリアを差し置いて、名瀬とは旧知の仲のマリアンナは少し驚きながら口を開いた。
「あらあら、連絡をくださったら誕生祝いをお渡ししましたのに」
「いーや、結構だ。 お宅にもらったおしめがまだ、大量に残ってるからよ……いや、あれば困らねえんだが倉庫に大量に残ってる。 置き場所がねぇんだよ」
「あれだけの量ですものね……発注ミスでそのまま押し付けちゃったのでしたわ」
オホホと笑いながらルーシカは、名瀬から目をそらすのであった。
「まぁ、歳星までは時間がある。 どう立ち回るかの予定ぐらいはたてとけよ?」
こうして。 鉄華団、タービンズの会合は無事に終わりを告げるのであった。
◯
「癒されますわ……」
「か、可愛い」
「うわぁぁ……」
アミダさんに抱いてみなと、お子さんを抱かしてもらい心身ともに癒されているマリアンナでございます。
「うまいじゃないか、どこかで抱き方を習ったのかい?」
「ワタクシの経営している孤児院にもこの年頃の子がいますの。 あやしたりするのによく抱き上げてあげることが多いので、慣れたようですわ」
「へぇー……いい嫁さんになるだろうねぇ、アンタ」
ニヤニヤしながらアミダさんはワタクシに耳打ちで話しかけてこられまして……
「で、あの白毛のボウヤに恋してるって話だけどさ……結局どうしたいのさ、アンタは」
「……アミダさんには話してもいいでしょう。 ワタクシはたしかに……オルガに惚れていますわ。 しかし、今は恋にうつつを抜かしていられない大事な時期ですの。 そのためにも、この想いは全ての厄介ごとを終わらした時に改めてオルガに伝えたいのですわ」
「なるほどね。 そういうことならアタシも応援してあげるよ! 男は愛の大きさが大事でね。 あのボウヤはまだ発展途上だろうけど、絶対に良い面構えのオトコになるよ」
想い人をベタ褒めされて悪い気持ちにはなりませんわ! とワタクシは意気揚々。 新天地たるサイセイに進む航路を充実した日々を過ごしました。
to be continued