セブルス・スネイプを救う話(第3章高学年編・開始)   作:桜井ぬい X→@Inui20230918

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今年度のDADA(闇の魔術に対する防衛術)はこんな感じにしてみました。

2025/4/12 微修正済み


第一の試練 グリフィンドール寮1(修正済み)

 

 

 

 謎の垂れ幕が現れてから数日が経った。

 

 それからも特段、学校のなかに変化はないようだった。どこかに何かが現れただとか、誰かが何かを見つけただとかを耳にしたことはない。

 

 パーティーの翌日からは何の異常もなく授業が行われていて、生徒たちが何人もの担当教授に「あれは何なのか」と尋ねたが、みな知らないという返答だった。生徒たちも「そりゃそうだ」と思ったのだろう、それ以上追及することはなかった。校長先生も知らないものを、彼よりも勤続が短く、偉大でも強力でもない先生がたが知るわけがない。

 

 勤続が校長先生よりも長い唯一の先生、魔法史担当ゴーストのピンズ教授に期待が集まったが、彼も「さて、なんだったか……」と言うだけだった。本気で知らないのか、とぼけているのかはわからない。

 

 授業の合間や放課後にあちこち足をのばしていたシリウスとジェームズも、ほかの生徒と同じく何もつかめないままだった。

 

「"ホグワーツの歴史"の本は貸し出し中だってさ。みんな考えることは同じみたい」

 

 そう言って、ジェームズが図書館から借りてきた本をテーブルの上に置いた。借りられる限度いっぱいまで借りてきたらしい。どすんという大きな音がしたが、周りの生徒は対して気にしていない様子だ。

 

 シリウスが背表紙を確認してみると、さまざまなジャンルの題名が並んでいるようだった。"魔法世界史(19世紀編)"や"各国の詠唱"、"魔法文字のすべて"、"伝説を読み解く~暗喩・教訓から"などなど。どれもこれも、授業の宿題なんかじゃ読む気もおきないようなクソ真面目そうな文字列だった。

 

 ジェームズの話では、生徒のみんな、グリフィンドール寮やハッフルパフ寮までがこの"ミステリー"に飛びついているようで、図書館は様々なカラーの生徒たちで連日満杯になっているらしい。

 

 あの垂れ幕がマルフォイから持ち込まれたものと無関係ならば、先生がたが勉強に力を入れさせるためにひと芝居うったんじゃないかと疑ってしまうところだ。

 

「こっちも空振りだった」とシリウスは答えた。ジェームズが図書館にあたっているあいだ手分けすることにした彼は、ふだんは立ち入らないような空き教室や、中庭などのすみずみにいたるまで『なにか変化のあったところはないか』と自分の目で確かめに行ったのだ。

 

「なにもおかしなところはなかった。どこに行ってもいつもより生徒がいたくらいだよ。本当にあれ、謎かけ(リドル)なのか?」

 

 シリウスは赤のベルベットが貼られた木製いすにかけて、ジェームズに(なら)うように本の一冊を手に取った。

 

 2人がいたのはグリフィンドール寮の談話室だった。放課後だからか、いつも通りすがりに見かける時よりも生徒が多くなっていて、肖像画に熱心になにか話しかけているグループもたくさんいる。

 タペストリーをめくったり、中央にある大きな暖炉の近くや、端っこのデスクの下なんかをのぞきこんでいる子もいるようだった。

 

 シリウスは周囲に出し抜かれないよう、声をひそめてジェームズに言った。

 

「いくら談話室を調べてもなにも出てこなかった。ただの童話じゃないのか」

 

 ジェームズはぱらぱらと本をめくっていて、彼の丸眼鏡には白いページが反射していた。使える情報の載っているページがなかったのか、ジェームズはぱたりと本を閉じてから口を開いた。

 

「わざわざ大広間に"ただの童話"を置いたりしないよ。ただの物語なら"人狼のタペストリー"みたく別のところに置いておけばいいじゃないか。大広間なのはきっと意味がある。たとえば……。あそこには先生や生徒が絶対に来るから、絶対に見逃さないようにできるとか。

 それに、あの羊皮紙にはわざわざ魔法をかけてあったんだ。きっと何かあるんだよ、あれには」

 

 ジェームズは熱をこめてシリウスを説き伏せるように言ってくるが、シリウスとしては『でもなにも出てこないじゃないか』という気持ちの方が強かった。

 

 半ば抗議するかのように口をとがらせたシリウスに、ジェームズはなだめるような声を出した。

 

「きみはマザー・グースって知ってる?"ハンプティ・ダンプティ"とか。あれも特に"出題"とも"解く"とも書いてないけど謎かけなんだ。正解はたまごって言われてるけど、それだってどこかに書いてあるわけじゃない」

「それは聞いたことがある。あれって丸っこくて立たない、あと壊れやすいものだったら何でも当てはまるよな」

「丸い鏡とか?」と答えたジェームズは、何か思いついたかのような表情になった。

 

「たとえば"秘密"が早い者勝ちだったらどうだろう。もうとっくに誰かが"ネズミ"を見つけたってことはありうるね。"巣"がグリフィンドール寮じゃないなら、他の寮の生徒かもしれない」

 

「実はハロウィーンの夜のうちに誰か見つけてて……とかな。みんな談話室のなかを引っかき回してただろ。魔法をかけたりものを動かしたり、それはもうばたばたと。

 目くらまし術とかが使える上級生は、パーティーの後に抜け出してたのかもしれないな」

 

「そういえば、レイブンクロー寮に忍び込もうとした生徒もいたらしいよ。"謎かけ"なんて知力のテストみたいじゃない?だからレイブンクロー寮の談話室かと思ったって。知ってる?実はレイブンクロー寮は、なぞなぞを解ければ他の寮の生徒でも入れちゃうらしいよ」

 

「だからやけに減点が多かったのか。ウチだけじゃなくて他の寮もだけど」

 そう言ってから、シリウスはポケットのメモを目の前まで持ってきた。そこに書き写された例のリドル(?)の文面を改めて追ってみる。

 

 

   小鳥たちの巣のどこか

   親鳥の目が届かない場所で

   こっそりと こっそりと

   ネズミが一匹やってきた

 

   仲良しきょうだいたちは

   力を合わせて追い払った

   一羽はかぎ爪 一羽はくちばし

   一羽は歌声 一羽は尾羽

 

   小鳥たちは巣を抜け出した

   親鳥の目が届かない場所で

   こっそりと こっそりと

   ネズミを三匹やっつけた

 

   4羽の子鳥は巣に戻る

   親鳥の目が届かない場所で

   こっそりと こっそりと

   巣穴にあった秘密を持って

 

 

 シリウスがメモをにらんで考え込んでいるのに気づいたのか、ジェームズはシリウスのメモを自分の方にも引き寄せてから、文字列の一つを指さした。

 

「あの幕にはホグワーツの紋章が入ってた。だからきっとホグワーツに関係がある。

 "小鳥"と"親鳥"があらわすものが"子ども"と"大人"だったらどう?ホグワーツにいる子どもは誰なのか」

「つまり……"小鳥"があらわすのは生徒?だったら"親鳥"は先生ってことになるけど」

 

 うん、とジェームズはうなずいて解説をつづけた。

「"巣"、つまり家だよね。学校のなかでもぼくらの家ってことは、寮を示してると考えるのが自然だ。寮のなかで『親鳥の目が届かない場所』は?」

 

「寝室……とか?談話室も来ないけど、寝室も先生が来ないだろ。寝室って3人か4人の部屋だし、そう考えるとちょうどいい。で、そこにネズミがやってくる。……ネズミってなんだ?敵とかか?」

 

「ぼくもそこはわからないからとばすとして……。きょうだいたち、つまり4人の生徒たちが力を合わせてやっつけるんだよ。一人じゃ倒せないのかも。……4人じゃないと倒せないのかな。それとも、3人ならネズミも3匹になるとか?」

 

 ジェームズが首をひねるのを見やっていても答えが出そうにないので、シリウスは続きの解釈に取り掛かることにした。

 

「──で、寝室のなかでネズミを倒してから、寮の外に出るわけだ。……寮の外で学校のなかに『先生の目の届かない場所』なんてあるのか?」

 

「うーん……。たとえば妖精の厨房なんてどう?ふだん先生が来なさそうなところじゃない。

 とにかく、見つけ出してこっそりと3匹やっつけなくちゃいけない、それも先生に見つからないようにってことだね」

 

「ネズミを倒して……自分の寮に戻る。その時にネズミの巣穴にあった秘密を持って帰る?"秘密"って?」

 それだよ、とジェームズは重苦しい雰囲気でうなずいた。

 

「それがすごいアイテムとかかもしれない。あの羊皮紙をマルフォイが持ち込んだっていうのが本当なら、そのアイテムが狙いなのかもしれないね」

「もう見つかってたら大変じゃないか……!」

 

 思わずシリウスはがたりと音をたてて席を立ちあがってしまった。周りに──といってもシリウスのすぐ近くに人影はなく、少し先で遠巻きにしている──グリフィンドール生が、ひそひそと隣の生徒に何か話しかけるのが見えた。

 

 シリウスがぱっと顔を上げると、彼らは何事もないかのような顔で目をそらした。観察されているみたいで居心地が悪い。

 

「なんだ?気になることがあるなら直接訊いてこいよ」

 

 シリウスが足を踏み出そうとするのを見て、その生徒は「何でもないです」と首を横に振った。相手はまるで狂犬に襲われたかのような態度で、さっと席を立って逃げてしまった。

 

 どうせシリウス(ブラック家)がセブルス(スリザリン生)と話していたからだろう。スパイでもしているとでも思われているのかもしれない。

 シリウスはこういうグリフィンドール生の態度が気に食わなかった。

 

──スリザリンと話していたからなんだよ、そんなに気になるなら正面から『何を話していやがった』とかなんとか訊いてこい。

 

(少しはましになってたんだけどな)

 

 いくら勇猛果敢なグリフィンドールといっても、いつでも正面からきてくれるわけではないということを、シリウスは寮に入ってから初めて理解した。

 

 入寮当初もそうだった。シリウスは同級生たちから遠巻きにされていたし、上級生だってそんなに変わらない。ブラック家は死喰い人の親玉と目されているからだろう。死喰い人の標的とされる混血やマグル生まれを擁する寮としては『敵っぽいのが入り込んできてしまった』と考えたはずだ。

 

 さまざまな家と血を通わせているから親戚にグリフィンドール生もたくさんいるのに、変わらずずっとそばに居てくれたのは遠い親戚のジェームズだけだった。

 

 そのおかげで、ジェームズが友だちになった相手も少しずつシリウスに馴染んでいたし、授業で同じグループに入ってくれる子だってできていたのだ。

 

 つまり──ジェームズとセブルスの溝が深まっていくのを指をくわえて見ている間は。

 

 自分だけの平和を追い求めるならこのままこっそりと息をひそめているのが一番だった。

 

 会うのも手紙をやり取りしているのもリリーだけなのだから任せておけばいい。スリザリン寮の人間関係がごちゃごちゃしているのは聞いているが、それだってシリウス自身には関係がない。ジェームズが付き合いをやめるよう言ってくるのも、理由の半分はシリウスがグリフィンドールに受け入れてもらえるようにするためだろう。

 

(そんなの格好悪いじゃないか。周りのご機嫌をうかがって自分の行動を決めるなんて)

 

 シリウスには自分がやりたいことを押し殺す気はなかった。入学前ですらずっと親の顔色なんてうかがいたくなかったのだ。

 

 だから自分の思う通りにやった結果、引きあげていってしまう連中はグリフィンドールらしからぬ腰抜けなんだろう。そんな風に受け取ることにして、シリウスは『自分は間違っていない』と考えた。

 

 それでも"腰抜け"たちに憤(いきどお)りを感じなくなるわけじゃない。

 談話室内のグリフィンドール生を視線でひと薙ぎした後、シリウスはいすに腰かけなおした。

 

「……一応、4人チームでも組んでみる?」

 

 気を取り直したジェームズがそう尋ねたときだった。大きく野太い声が、テーブルの向こう側から2人に話しかけてきた。赤毛を刈り込んだ頭と、ケンタウロスのようにムキムキな筋肉が特徴的な上級生だ。出会った時から親し気な態度の変わらない、数少ない生徒だった。

 

 シリウスはぱっと顔を明るくして、その上級生に呼びかけた。

「ホールデン」

「さっきから面白そうな話をしていたな。詳しく教えてくれないか」

 

 

 

 

 

 

「次!」

 

 先生の声かけにうながされ、赤いワッペンがついたローブの生徒が、真四角の石でできたサイコロを前方の床に向かって放った。

 

 サイコロはまずその生徒の足もとの木の床に弾かれ、次に布ばりの巨大なカーペットのようなものの上をコロコロと勢いよく転がっていき、最後にそのふちから飛びでて、反対側に行列をつくっている黄色のワッペンの生徒たちの近くで止まった。

 

 先ほどまで劣勢だったグリフィンドール生たちがあげていた「6!」「ろーく!」という大きな応援の声も、対戦相手であるハッフルパフ生が「さあ、まだ勝負はわからないぞ」「気合を入れよう!」と自分たちを鼓舞していたのも、一気に音量を落とすように静まっていった。

 どちらの陣営も、サイコロの目が何だったのかに釘づけになっていたからだ。

 

 やがて止まったサイコロから()()()煙のようなものがふわりと漂って、そのオーロラのような色彩のキラキラとしたものが、"3"と(えが)きだした。そのサイズは百科事典を真ん中からひらいて置いた時くらいの大きなものだったので、遠くにいたシリウスの目にもはっきりと見えた。

 

 広い教室のなか、講義を受けるときには整然と並んでいた長机といすは、先生の魔法で教室のすみに寄せられて積み上がっていた。その代わりに教室の床のほとんどを埋めてしまっているのは、シリウスら生徒の目の前に敷かれた布製のゲームボード(カーペットのようなもの)だ。

 

 ゲームボードのうえにはチェスのポーン(歩兵)のような形のコマがいくつか置かれている。赤くて金で縁取りされているものと、黄色くて茶で縁取りされているものの2種類だ。そのうちの赤い方がみずから跳びあがり、サイコロの出目にしたがって、とん、とん、とんと3マス先に進んで止まった。

 

 すると赤いコマが停まったマスだけが、コマごとリバーシのようにひっくり返って、裏側に書かれた文言をさらけ出した。

 

「ゲームボードは木の床に敷かれただけなんでしょ。どうやって裏がえってるんだろう」

 

 行列にならんだシリウスの近くで、マグル生まれのグリフィンドール生らしき子がほかの子にそう話しかけるのが聞こえた。ちゃきちゃきの魔法界育ちにとってはそれの何が不思議なのかもよくわからないが、そうでない子は同意するようにうなずき合っているようだった。

 

 サイコロを振った子がマスの裏側に書かれている内容を読みあげた。

「『"悪魔の罠"を撃退しろ』だって!」

 

 次の瞬間、ゲームボードの上のいっさいのものが消えてただのカーペットのようになった。その子の"課題"がはじまったからだ。

 

 読みあげた生徒はカーペットの中に踏み入り、緊張したような面持ちで杖をかまえた。

 

 間もなく、生徒から1フィートほど離れた前方のカーペットから"悪魔の罠"が()()()()()()と飛びでてきた。見た目が黒っぽい木の根のようなそれは、地面に根を這わせるようにじわじわと"課題"を受ける生徒の方にのばしてゆく。そのまま何もできなかったら、生徒は全身を絡めとられてゲームオーバーになってしまうはずだ。

 その子はすぐに「ルーモス──光よ!」と杖先に光をともした。

 

 "悪魔の罠"が光に弱いというのはこの教室でも勉強したし、薬草学の授業でも習ったものだった。きちんと授業を受ければすぐにわかる内容だ。

 

 その子が杖の光を近づけると、強い光の届くところの根だけが()()()()ように後ろに下がった。"課題"の内容は『撃退しろ』だったため、おそらく"悪魔の罠"が生えたところまで押し戻せばクリアなのだろう。その子もそう思ったのか、そのまま一歩前に踏みだした。

 

「前を見て!」

 順番待ちの行列に立っていたグリフィンドール生のひとり──リリーがそう言った。つられてシリウスも目を上げると、"悪魔の罠"の根元のあたりの空中に、いつの間にか小さな蛾のようなものが何匹も羽ばたいているのが見えた。

 

 杖先に光をともした生徒も目をあげた瞬間、その蛾は一気に生徒の杖の方に群がりはじめた。

 まるでバケツの水をひっくり返された時のようだ。大量の虫を浴びせられるようになったその子は、両腕で頭をかばって悲鳴をあげている。その光景を()の当たりにした生徒たちは皆、口々に焦ったような()()()()を発した。

 

「まずい、ここでクリアできなかったら負けちゃう!」

「え、なんで?」

「だってこれ以上"1回休み"になったら……、見てよ、ゴールしたコマ。ちょうどお互い2コマずつだから停戦交渉をはじめちゃってる」

「でも、この"課題"のクリアのしかたがわからないわ」

 

 "課題"をこなすためには光を使わなければならない、でも光を使うと妨害がある。その矛盾に周りのグリフィンドール1年生はざわめくだけで何のアドバイスもできないままだった。

 

「──ノックスだ!一度さがって光を消す(ノックスを使う)んだ!」

 

 真っ先に声をあげたのは、シリウスの隣に立っていたジェームズだった。次のグリフィンドール側プレイヤーである彼は行列の先頭に立っていて、その次の手番がシリウスということになる。

 

 シリウスは気になることをジェームズに訊きかえした。

「でも光を消すと"悪魔の罠"に襲われるぞ!」

 

「ノックスとルーモスを切りかえて、走って場所をかえながら撃退するんだよ!この"悪魔の罠"はすすむスピードがすごくゆっくりだから、できる!」

 

 シリウスの問いに"課題"の解答をだしたジェームズは、次いで「がんばれ!」とプレイヤーの生徒に声をかけた。ジェームズの応援をさらに応援するかのようにシリウスとリリーが声を重ねると、ほかのグリフィンドール生も次々と輪にくわわっていった。

 

 カーペットの上に立っているプレイヤーの生徒が光を消すと、彼女にたかっていた蛾は一気に霧散して、教室全体に散っていった。その代わりに後ろへさがりつつあった"悪魔の罠"がまた、根を生徒の方に少しずつのばし始めた。

 

 アドバイスを聞き入れたのか、カーペットの上の生徒は光を消したまま小走りで場所をかえ、またルーモスで杖先に光をともした。そして蛾がたかってきて光が弱まってきたら、一瞬だけ光を消して追いはらう。

 

 蛾が去ったら場所をかえて、また"悪魔の罠"に向けて光をともす。蛾が集まったらまた光を消して追いはらう……というのを少しずつ繰り返して、プレイヤーの生徒は"悪魔の罠"を根元まで追いやることに成功した。

 

 その子が息をつくと、"悪魔の罠"はカーペットに穴でも開いているかのように下に落ちていって、完ぺきにその姿を消した。

 

(あの課題だったらクリアできそうだな)

 シリウスがそんな風に思いながら間近にせまった自分の順番を楽しみにしていると、先生の声がした。

 

「クリアよ!列にもどって」

 メインは生徒同士の対戦なので、先生はゲームマスターになっている。

 

 プレイヤーの生徒は「はい」と返事をしてグリフィンドール生の列の方に近寄った。それから先頭の子──つまり次のプレイヤーであるジェームズとバトンタッチをして、足取り軽く行列の一番最後にならびに行った。

 

 カーペットの上は、そのわずかな時間でコマが置かれたゲームボードに戻っていた。

 

 

 

 その日のDADA(闇の魔術に対する防衛術)の授業は魔法界のルドー(すごろく)をするというものだった。

 

 講義と実技(ゲーム)を半々でやるという内容で、1年生はグリフィンドール寮とハッフルパフ寮の合同授業にあたる。

 

 先生はまず講義をおこない、生徒たちが呪文学で学んだ杖の振りを復習させた。それで生徒の大多数が呪文を使えるようになったら、このようにゲームで対戦させながら"課題"をあたえる。基本はその繰り返しのようだった。

 

 ゲーム自体も毎回違っていて、巨大なcards(トランプ)を杖であやつらせる"speed card(スピード)"対決や、チェスなどの戦略性の高いもの、変身術で難しいお題をやらせて(当然へたくそな出来になったものを見て)お題を当てさせるゲームなど多岐にわたっていた。

 

 上級生の話では、1年で教授が替わってしまうDADAはその年の担当によってやり方がまるっきり変わってしまうらしい。そのため生徒たち、特に将来にかかわる試験をひかえる5年生や7年生は『今年は当たりなのか外れなのか』と注視しているのだという。

 

 そして今年度の授業形式はどうやら"当たり"だと、生徒たちにはもっぱら好評らしい。シリウスはそのようにジェームズに聞かされていたし、自分自身も『今日はどんなことをするんだろう』とわくわくしていた。

 

 同じゲームでも上級生では与えられる"課題"のレベルが高く、"決闘"形式まで取り込んでいるらしい。そうやって学年ごとの難易度を変えているわけだ。

 

 そして、この日やっているルドー(すごろく)も本来はテーブルの上でできるような大きさのゲームなのだが、一部を授業用にアレンジしてあるものだった。

 

 ゲームボードは真四角で教室の床に敷かれており、ボードに対して右上スタートがグリフィンドール寮、左下スタートがハッフルパフ寮にあたる。

 

 各チームは4個ずつコマを持っていて、先に4つ全部をゴールに到着させた方が勝つというルールだ。ゴールはボードの中央部分にあたる。現在ゴールしたコマはお互いに2つずつで、3つ目のコマがリードしているのはハッフルパフの方だった。

 

 サイコロを振る番、つまりプレイヤーになった生徒は、進んだマスでさまざまな"課題"を与えられ、クリアできなければ一回休みになってしまう。

 

「次!」

 先生が指示を出すと、次にサイコロを振る番のハッフルパフ男子生徒が一歩前に進みでた。

 

「このまま逃げ切れよ!」「ファイトー」

 彼は背後からの声援にこたえるように手をあげて見せてから、サイコロを振った。

 ころころ、と軽い音がしてしばし待つ。

 

 あらわれた数字は"5"だった。

 

「よっし!」とガッツポーズを決めて沸くハッフルパフ生と対照的に、グリフィンドール生はみんな落胆したような表情を見せた。

 

 ルドーにおいて、2つ目から4つ目のコマは初めからスタート位置に置いておくことはできない。"コマ置き場"で順番を待っていて、5か6が出たときのみスタート地点に置く権利が与えられるのだ(本来のルールならば、その権利を蹴って数字ぶんを進むことを選ぶこともできる。しかし授業でやる分には『必ずコマを置く方をえらぶ』『もう置くコマがなければ数字分コマを進める』という独自ルールが採用されていた)。

 

 ハッフルパフ生が"課題"に挑戦しているあいだ、「大丈夫よ、すぐに追いつけるわ」とリリーがとなりにいる友だちに話すのが、シリウスの耳にも届いた。ボードを確認してみると、彼女の言うとおり黄色(ハッフルパフ)のコマとの差はほとんどなく、次に4以上の目を出せれば追い抜くことすら視野にはいる。

 

「たのむぞ、相棒」「まかせて」

 

 次はジェームズの手番(ターン)だった。彼はサイコロを振る前に、シリウスをこっそりと呼び寄せるように手を小さく振った。

 

「シリウス、ちょっと耳をかして」

 そのまま()()()()とした声でされたジェームズの"頼み"に、シリウスはただ、にやりと不敵に笑って応じた。

 

 ジェームズが一歩前に出てサイコロを放ると、出た目は"6"だった。それを目にしたシリウスもそのほかのグリフィンドール生も、みんなが沸き立って歓声をあげた。

 

「さすがポッター!持ってるなー!」

「お前が勝てば逆転だ!」

 

 "6"の目が出た場合は、5と同じように選んだあと、もう一度サイコロを振ることができるのだ。この授業のルールでは、まずコマ置き場からコマをスタート地点に置き、もう一度サイコロを振るというかたちになる。

 

「勝負だ!」

 ジェームズはハッフルパフ生の方へいどむように歯を見せて笑いかけると、サイコロを振った。

 

"4"。

 

 2色のコマが、同じマスの上にならんだ。

 

「両者、前に出て!」

 先生の呼びかけに対し、次のプレイヤーだった(つまり列の先頭に立っている)ハッフルパフ生とジェームズが、カーペットになったゲームボードの上に横並びになった。

 

 本来のルドーでは、追いつかれた方のコマは"コマ置き場"に戻されてしまうのだが、この授業のルールは少しちがう。"課題"を2人同時に行い、こなす早さで負けた方が1回休みになってしまう、ということになっていた。勝敗が決まるまで時間がかかってしまうためらしい。

 

 つまり、ジェームズが"課題"スピード勝負に勝てば、ハッフルパフを追い抜くことができるのだ。

 

 次の課題は『壁に空いた()()()に、合うかたちの石をはめこみなさい』だった。生徒2人の前にそれぞれ一つずつ、パフスケインくらいの(ひとかかえ程もある)つるっとした石のようなものが設置されていて、それぞれ"十字"と"星"の形をしていた。それと同時に、くぼんだ穴がついた縦長の石壁のようなものがそびえ立った。

 

 シリウスから見ると、左側にジェームズとハッフルパフ生が並び、中央に石が置かれていて、右側に壁があるような配置だ。

 

 壁についているくぼんだ穴は壁のなかを上下に移動していて、一番下の高さはおおよそジェームズの肩のあたりだった。たとえ手で石を持ちあげることができたとしても、そこまでは重すぎて上げられないだろう。

 

 "課題"を前にしたジェームズは丸眼鏡の奥で目をみはり、口を開いた。周囲の生徒には戸惑ったように見えただろうが、シリウスはにやりと笑った。

 

(ずいぶん演技派だな)

 それに気づいているのかどうか、隣のハッフルパフ生が攻略法に気づいたのか呪文をとなえた。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ──完全浮遊!」

 その生徒が持ち上げたのは星形の方の石だった。杖を慎重に振って、まっすぐ星形の穴にはめこもうとしている。

 

「タラントアレグラ──踊れ!」

 

 ジェームズの声と同時に、星形の石が空中で()()()()ぐにょぐにょと踊りはじめた。突き出た部分をゆらゆら動かしたり、空中でくるくるまわったりしているので、とても()()()に嵌められなくなっている。ただでさえ、どちらの石も寸分のズレもなく合わせなければ嵌(は)まらないような星形と十字型だから、これでしばらく星形が使えなくなっただろう。

 

 思わぬ妨害におどろいたらしい対戦相手は、それでもすぐにもう一方の十字型の石を動かそうとした。

 

「フィニート──呪文よ終われ!」

 ジェームズは杖を対戦相手に向けたまま、相手の呪文が完成するたびに「フィニート(呪文よ終われ)!」とひたすら撃ち続けた。この明らかな妨害行為に、順番待ちをしている方のハッフルパフ生は「卑怯だぞ!」だとか、「でもあれじゃあポッターだって勝てないよ」だとか口々にざわめき始めた。

 

 それでもジェームズは見物人にはまるで見向きもせずに、走って『十字の石をその手につかみあげた』。どう見ても手では持ち上がらなさそうなそれは、ジェームズの手にひょいとおさまっていて、握られた箇所がスポンジのように容易くへこんでいた。

 

 ハッフルパフ生がジェームズの方に杖を向けたのと、ジェームズが壁の()()()に向かって跳び上がったのは同時だった。

 

 ジェームズののばした手の先が、十字のくぼみに当たった。

 

「フィニート──呪文よ終われ!」

 ハッフルパフ生のフィニート(呪文よ終われ)が杖先から放たれる。

 

 ジェームズの指が十字型の石から離れた。

 

 フィニート(呪文よ終われ)が突き刺さったのは、()()()の中心から十字形の輪郭にむかってふくらんでいく最中の、スポンジになった石だった。

 

(おしかったな)

 シリウスは笑みをうかべながらそんな風に思った。

 

 ほんのわずかな差だった。"フィニート(呪文よ終われ)"があと一手早ければ、十字の石はジェームズの手からはなれて床に転がっていたことだろう。

 

(でも、こっちの勝ちだ)

 終了呪文をうけた十字の石はみるみるうちに只の石にもどり、ちょうどきれいに()()()にはめ込まれた状態になった。

 

「クリアよ。グリフィンドールの勝利」

 先生がそう宣言すると、わあっとグリフィンドールの全員が声をあげてジェームズに拍手をした。

 

「やる時はやる男だ!」「ダンクシュートを決めたぞ!」

 

 シリウスには意味がよくわからなかったが、マグル生まれの同級生が興奮したように言ったのをきいて、もっと盛りあげてみることにした。

 

 手拍子に合わせて「ポー・ッター!ポー・ッター!」と声援をおくる。すると近くにいた気弱そうな同級生から同じように参加していき、やがてグリフィンドール男子たち全員がそれに乗っかっていった。

 

 ジェームズはまるでチャンピオンになったかのような両手を突きあげたガッツポーズになって、グリフィンドール生に向けて得意そうに笑んでみせた。

 

 それを見せつけられたハッフルパフ生たちは正反対で、不満な顔をジェームズに向けてブーイングをとばしていた。

 

「ひきょうだ!」「正々堂々たたかえ!」「スリザリンのまわしもの!」と散々な言われようだ。それでもジェームズは、まるで歓声をあびているかのようにハッフルパフ生にも不敵な笑みをとばしたままだった。

 

 やがて「次!」と先生に呼ばれてクラリスが前に出ると、ようやく生徒たちのざわめきが一気に引いていった。

 

「やるな、相棒」「そっちもね、相棒」

 

 ジェームズが戻ってきたのを迎えたシリウスは、こぶしをつき出してジェームズのそれとぶつけ合った。

 

 シリウスは実は消音魔法をジェームズにかけたのである。さすがにゲームに使うもの──今回の場合だと石やはめこむ()()()の方に妨害はできない。だが魔法がかかった生徒をゲームに参加させることはできるようだった。

 

 ゲームの最初、ジェームズは困惑したのではない。聞こえないように"スポンジファイ(衰えよ)"をかけていたのだ。

 要するにイカサマである。

 

 

 

 ジェームズの活躍もむなしく、ゲーム自体は結局引き分けとなってしまった。ゴールしたコマ同士が講和をむすんでしまったからだった。

 

 

 

 

 

 

 授業が終わってシリウスが真っ先にしたのは、クラリスのところに行くことだった。

 

 ゲームのために隅にどけられていた机を、生徒たちがもどし終わった頃だ。仲の良い生徒がだいたいグループになっている中、彼女はぽつんと一人でいた。声をかけていく生徒はいても、いっしょに行動しようという子がいない。

 

 先ほどの授業のときもそうだ。手番がきたクラリスがサイコロをふって課題をなんなくこなし、列の最後にもどっていったのだが、そのときも似たような状態だったのだ。周囲のハッフルパフ生はなんの反応も見せていないし、彼女が先ほどジェームズに負けた生徒の後ろの列にならんだ時も、ひと言くらいは言葉を交わすが、あまり積極的に話しかけようという感じでもない。

 

 その空気感が、シリウスと周囲のグリフィンドール生のあいだにある距離に似ている感じがしたのだ。

 

「今回は勝負がつかなくて残念だったな」

 シリウスがそう声をかけると、荷物をまとめたクラリスはかたい表情をすこし和らげて笑い返してきた。

 

「呪文を応用するような授業だから面白くていいわね」

 ジェームズもクラリスには拒否感をもっていないので、自然に話の輪に入ってきた。

 

「今年の防衛術は当たりだってみんな言ってるらしいよ」

「そうなの……。毎年こういう感じだったらいいのにね」

 

 2人がこうやって一人でいるクラリスと話すのはこれが初めてではなかった。彼女がセブルスの幼馴染だったから、当初こそジェームズが警戒したように「きみも闇の魔術にくわしいの?」と確認してはいた。だが、彼女は友愛と公平を重んじるハッフルパフ生なのだ。少なくとも入寮したての今は、誰かを一方的になぶるような性格ではないように思われた。

 

 だからジェームズは、これから変な影響を受けてしまうんじゃないかと心配しているし、いつもシリウスについて来ているのだ。

 

 シリウス自身が話しに行く理由は、出会ったときも現在も"ブラック家"を意識しないクラリスやリリーのことをありがたく思っているからだった。

 

「そういえば、ハッフルパフだとあの……垂れ幕?ってどうなってるんだ?」

 

 あれから3週間近く経っているのにグリフィンドールでは何の進展もない。だからここ数日間は『みんな何も見つかっていないし……』と下火になりつつあるようだった。

 今までは『どの生徒もライバルだ』と思って情報のやり取りをしていなかったが、そろそろ新しいヒントがほしくなったシリウスは、ハッフルパフの方を訊いてみることにしたのだ。

 

「ああ、あの幕ってなぞ解き(リドル)なんでしょう?ハッフルパフ寮のなかには何もなかったわ。談話室も寝室もよ。上級生といっしょに私も探したから確かだと思う」

 

 どうやら、ほかの寮の生徒も同じ結論にたっしているらしい。この分だと残りの2寮も同じかもしれなかった。

 

「スリザリンの方は?」

「全員で結束して調べているみたいよ。ちょっとでもわかったことがあれば上級生に報告することになっているんだって」

 

「じゃあつまり、解けてないんだな?」

 シリウスが念を押すようにたずねると、返答したのは彼女でなくジェームズだった。

 

「マルフォイたちが見つけてないって保証はないよ。見つけたのにスリザリンの下級生には黙っているのかもしれない」

 周囲を気にしてか、クラリスとジェームズはところどころ小声で話していた。

 

「きみはどう思う?なぞの解き方。これで合ってるのかどうか」

 ジェームズに問われたクラリスは、ううん、とうなった。

 

「寝室か談話室じゃなかったらお手上げ。それ以外に"生徒の巣"で"先生の目が届かないところ"って条件に当てはまる場所は思いつかないわ。

 

 だから多分、何かまだあるのよ。何か特殊なことをやるとか……。

 

 子鳥はそれぞれちがう能力を持ってるチームで4羽よね。4寮あって生徒も4人なんだから、もしかしたら全部の寮で1人ずつチームを組まなきゃいけないのかも」

 

 シリウスは『新事実をきいた』とでも言いたげに目を輝かせたが、それはすぐに消沈してしまった。

 

「それは『絶対に無理』って呼ぶやつじゃないか」

「"秘密"がだれの手にも入らないなら、それでいいんじゃないの?」

 

 一方でジェームズはクラリスの案に驚きは見せなかった。どうやらジェームズもすでにその可能性を考えていたらしい。

 

「わかってたのか?」 

「まあね。だってそう言ったら、きみは絶対()()()とチームを組もうとするでしょ」

 

「あなたがそんな風に言うんだったら。ねえシリウス、シリウスと私とセブルスの3人チームを組んでみるっていうのはどうかしら?なにか変化があるかもしれないわよ」

 

 クラリスの提案をうけたシリウスは、迷うように中空に視線をさまよわせた後、「考えておく」と答えた。ジェームズは大事な相棒だが、その顔色をうかがうのは違う気がしたからだ。だから自分で決めたかった。

 

「ねえ、セブルスだって死喰い人(デスイーター)になりたいわけじゃないのよ。だからそうならないように何か、アドバイスできることがあるなら教えて」

 

「アイツが死喰い人(デスイーター)じゃなくても、闇の魔術だってあぶないんだよ」

「闇の魔術だって教わったものなのよ。誰か()()の人を傷つけたいわけじゃないわ」

 

「それは考えが甘いよ。傷つける方法を知っていたら、これからすごく嫌いな人ができた時に()()()で使っちゃうかもしれない」

「でも誰かを守るために敵を傷つけることだってあるじゃない」

「それだって許されるようなことじゃないんだ、本当は」

 

 ジェームズがクラリスの方に複雑そうな目を向けていることに、隣にいたシリウスも気づいた。友だちを()しざまに言わない誠実さは彼女の美点だが、その友だちと離さないと彼女が危険なんじゃないかと心配しているのだろう。

 

 気を取り直すようにシリウスが話をつづけた。

 

「もう少しヒントがあればいいんだけどな。ハロウィーンからずっと、何冊もあるはずの"ホグワーツの歴史"が返却されてこないんだよ」

「それはスリザリンのせいかもしれないわ。寮の生徒同士で組んで、返却と新しい貸出を同時にやってるんだって。……それも、ハロウィーンの前から」

 

 ジェームズが息をのんだ音が聞こえた。

「それ……、スリザリンでは何か起こるのはわかってたってこと?」

「ええ。その可能性は高いわね」

 低い声で肯定してから、クラリスは「そういえば」と付け足した。

 

「"ホグワーツの歴史"って本よね。奥の研究室で見たかも。そこに小さめの階段があるでしょう?上がったところのあの扉よ」

「それだ!」

 シリウスが思わず声をあげると、ジェームズも喜色を浮かべて「うん」とうなずいた。

 

「たぶん先生は優先して貸し出してもらえるんだ!授業の参考にすることだってあるよね。

 ……そういえばきみ、しょっちゅうそこの研究室にいるんだって?エバンズから聞いたよ」

「ええ、まあ……友だちがいるから」

 

「レイブンクローの生徒だっけ?気をつけなよ、へんなやつがいるのはスリザリンだけじゃないんだから」

「ありがとう」

 

 それで話題が途切れた3人がなんとなく研究室の方をながめていると、DADAの今年度の先生が生徒からの質問を終えた頃合いだった。先生は若い女性だったから親しみやすいのだろう。その反面、まだ教えることに慣れていないせいで疲れているのか、よろよろとした足取りで研究室の方に向かって行くのが見えた。

 

「今日はいつもよりずいぶん疲れてるみたいね。どうしたんだろう……」

 首をひねったクラリスの背中に、べつの子の声がかかった。

 

「リズ、そろそろ行かなくちゃ遅刻しちゃうわ。途中までいっしょに行こう」

 

 リリーと、その友だちの女の子たちだ。彼女たちもクラリスが一人でいがちなのを気にかけていて、こうして行動をともにしているらしい。ハッフルパフ生よりよっぽど優しい子たちのようだった。

 

「それじゃあ、またね」

 クラリスはその特徴的な夜空の色彩の髪をゆらして、グリフィンドール女子たちといっしょに教室を出て行った。

 

 

 

 

 

 




ジェームズもシリウスもいいやつなんだよなあ。いじめ(?)はするけど。

文章の微修正しました。

RTAパートは本編と活動報告、どっちが好き?

  • 【活動報告】にあげて欲しい
  • 【本編】にあげて欲しい
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