セブルス・スネイプを救う話(第3章高学年編・開始) 作:桜井ぬい X→@Inui20230918
アンドロメダの年齢はわからないんですが、とりあえず卒業済みにしておきました。
2025/4/12 一部微修正
同日 放課後
あれからすぐに次のコマの授業があったので、シリウスとジェームズは
使わない教科書なんかをすぐに置いて、
2人は走りながら、入り口をふさぐ"太った貴婦人の肖像画"に今週の合言葉を告げ、談話室を抜けて、一度も足をとめずにおなじドアから寝室にかけこんだ。
放課後になってすぐだからか、寮のなかにほとんど人影はなかったようだ。いるとしても4コマ目のない学年か、病欠などの生徒だけのはずだった。
2人はすぐに使わない荷物をベッドのうえに放り投げ、羽根ペンとインク、ノートなど最低限のものだけ準備してから、急いで寝室を出た。
ほかの生徒への配慮なのかなんなのか、シリウスとジェームズは入学した時から相部屋になっていた。同室の残り2人もジェームズと仲が良く、シリウスにもそれほどの遠慮が見られない生徒だ。素性について細かいことをわざわざ訊いたりはしていないが、もしかしたらマグル生まれかもしれない。
寝室から2人が飛び出した直後、顔から弾力のあるものにぶつかった。
「──おいおい」
シリウスの頭の上からあきれたような男の声がふってきた。視界にはいった生徒用のローブをたどって目をあげていくと、見慣れた上級生の顔がのっかっていたので、シリウスは「はあ」と息をついた。
「ずいぶんお戻りがはやいんだな、ホールデンさん」
「何やら抜けがけしそうだって聞いたんでな。さきに上級生にも相談しろ。なにかあったらどうするつもりなんだ」
どうやら彼もいそいで寮まで戻ってきたらしく、少し息があがっているようだった。ジェームズは少しばつが悪そうな顔になって弁明した。というのも、最初に推理について話したときに『上級生もいた方がいい』と忠告されていたのである。
「べつに危ない場所に行くわけじゃ」
「だったら途中で話を聞く。行き先はどこだ」
「でもクィディッチの練習があるんですよね?遅刻させてまでわざわざ付き合わせるほどのことじゃない」
「練習はその分取り返せばいいだけだ。申し訳ないと思うなら、すぐに用事を済ませる方に協力してもらいたいな」
彼は有無をいわさない構えのようだ。シリウスは思わず顔をしかめてジェームズにアイコンタクトをおくった。
クライブ・ホールデンはイヤなやつではないが、冒険するのは相棒とだけがいい。友だちで同じ寮でもあるリリー・エバンズですら仲間にいれていないのに、上級生の
同じ気持ちを
シリウスはとっさに言い訳を口にした。
「本を借りに行くだけなんです」
「なんていう本だ?」
「あー……、いやちょっと、先生に相談しようと思って」
「それにしてはもう目星がついているような足の速さじゃないか。お前らが秘密にしようとしていることなんて、なぞ解きくらいしか思いつかない。どんなやつがいるかもしれないのに不用心だぞ」
それから、彼は口をはさませないためか、太い声で強引に言いきった。
「急いでいるんだろう、さっさと行くぞ」
ホールデンを追いはらう口実をなにも見つけられないまま、シリウスとジェームズは
扉のむこうにいた先生は、3人の赤いローブを目にしたとたん、その場で少し飛び跳ねるようにして小さな驚きの声をあげた。それから後ろに2、3歩さがって、壁際に寄せてあったデスクに背中をぶつけたようだった。
生徒が来ただけなのに、それも2人はまだ小さな1年生に過ぎないのに、驚きすぎな気がする。
「どうかしたんですか?」
ジェームズがそう尋ねても、先生は3人の方を凝視していた。
「そんなに驚かないでください。取って食いにきたわけじゃありませんよ」
「ホールデンならできそうだけどな」
シリウスが茶化すのにも、先生は笑うでもなく、ぎこちなくうなずいた。どことなくぼうっとした顔つきだ。
「具合でも悪いんですか?」
「いいえ……、ごめんなさい、大丈夫よ。私はクラブの顧問もしていて授業も今年が初めてでしょう?考えることが多くて」
先生はそう答えてから、「奥へどうぞ」と3人をうながした。
広くない研究室のなかには、何やらよくわからないものが雑然としていた。ミニチュアのように手のひらサイズになった訓練用人形やら、魔法契約をむすぶときの契約書の見本、なぜか鉄製のダンベルのようなものまで転がっている。
シリウスは『課題によっては足の速さとか体力が欲しいときがあるから、たしかに筋トレは大事だな』と思っていた。
奥の方には本が横積みになっていて、そこにレイブンクロー生の青いサッシュがのぞく背中と、彼となにか話していたらしきクラリスがいた。シリウスと目が合うと、彼女はシリウスとジェームズににこにことした笑みを向けて手を振った。
「──それで、なにか授業の質問に来たの?」
先生はシリウスとジェームズにそう促した。
「先生が"ホグワーツの歴史"の本を持っているって聞いて、貸してもらいたかったんです」
「図書館にあるでしょう?」
「ずっと返ってこないんです。毎日通ってるのに!」
ジェームズが懸命に訴えるが、先生はいまひとつ心を動かされてないようだった。どう答えたらよいかを思案するかのようなその表情からみるに、断りの文句を探しているような気もする。
シリウスも隣にたってジェームズに加勢してみたが、手ごたえは薄かった。
「先生もあのなぞ解きに興味があるんですか?だから本を借りたままにしてる?」
「それは……。ええ、少しは」
「だったらせめて調べた内容を教えてください。貸してくれないっていうなら」
ジェームズはあの手この手をためしているようだ。
次になにを言うべきか、もしくは交渉は相棒にまかせて別のことをすべきかとシリウスが迷い始めた時だった。いきなり肩を軽くたたかれて、シリウスはどきりとした。
「こっち」
そう小声でささやいたクラリスは、研究室の奥の方を指さした。
その一角には古い本が多数積み上げられていて、見開きのまま置かれているものもある。小さなタワーが林立しているような状態だった。そのなかでも明確にほかと分けられているタワーが1つだけあった。
タワーには"対・闇・魔"というメモが添えられていて、どうやら授業に使う内容の本のようだ。
背表紙を目で追うと『深淵なる魔術』『反対呪文の開発について』『闇の魔法使い今昔』などに加え、『支配と魔法』『神を目指した男』『不死研究』などの危険そうな題名のものまでがある。もしかしたら生徒では借りられないように鍵がかかっている、いわゆる"禁書架"にあるものかもしれない。
なぜか一冊だけ『イチャイチャパラダイス~アンリミテッドバージョン』なるものもあった。図書館でいったい何を借りてるんだ。
(……あった!)
重要なのは、そこに"ホグワーツの歴史"が積まれていたということである。クラリスに上に積まれている本を杖で浮遊させてもらい、シリウスがその本を抜き取った。
どうしても貸してくれないのなら、こっそり持ち出した方がいいのかもしれない。ぱぱっと読んで返せばきっとバレないだろう。
シリウスが先生の動きを確認しようと目をやると、先生はまだジェームズとなにか話していて、代わりにホールデンと目が合った。すると彼は『しかたないな』と言いたげに息を吐いて、「先生」と発言した。
「貸してあげてはどうですか?ポッターは
ぱあっと明るい表情になったジェームズに対して、ホールデンは続けて言った。
「先生は仕事もおありなんだから、長いこと借りるわけにはいかないぞ。何日かかる?」
「一週間……」
ホールデンが目を細めたのが見えた。
「5日……、いや、丸3日でなんとか」
ジェームズがそこまで譲歩すると、「3日だけお借りすることは?」とホールデンが先生に尋ねた。
「ポッター君が期限が切れても返さなかった場合は?」
「俺がお持ちする。いいですね?」
それで先生は無表情でうなずいた。
その後、ホールデンはちゃっかり「俺が話をまとめてやったんだから、俺にも推理の内容を知らせてくれ」と言って、クィディッチの練習に参加するため出て行った。
目当てのものは手に入れたのだし、これで中身をあらためてなぞ解きに取り掛かれるとわくわくしているシリウスをよそに、ジェームズは気がかりなことがあったらしい。
「ねえ」と研究室に
「なにか闇の魔術について調べものでもしてるの?随分ここに入り浸ってるみたいだけど」
「していないと言ったらウソになるわね。ここでしか出来ないことがあるからここにいるわけだし」
クラリスがあんまり簡単に口をわったので、ジェームズは警戒するような顔つきになった。
「それってどんな?」
「そうね。誰かに使うためのものじゃない、わたし個人に関係すること……としか言えないわ」
クラリスはすこし考えてからそう答えた。
「彼の方は知らないけど」
「ぼくは研究してみたいからだよ。古くて追うのがむずかしい魔法なんかもあるからね。先生が借りてる本を少し読ませてもらってるんだ」
「私が知りたい知識についての本とか書いている人を教えてくれるから、とっても優秀な百科事典なのよね」
ひどいな、とレイブンクロー生は笑った。
「──ああ、ぼくは
「ぼくら有名人じゃないか」
「ブラックがいっとう有名なのさ。で、その相棒だからポッターもみんな知ってる」
シリウスは自分の端正な顔を
「そのうち、シリウスの相棒がぼくなんじゃなくて『ぼくの相棒がシリウスなんだ』ってみんなに教えてやる」
ジェームズは、自分が目立ってしまうことについては大して気にも留めていないようだ。気にするような性格だったら、そもそも知り合ってからずっとシリウスと
「お前がそういうやつで良かったよ」
シリウスが肩をたたくと、ジェームズは仕切りなおすようにクラリスの方に言った。
「悪いんだけど、きみにも来て欲しいんだ」
「なあに?」「ちょっとね」
ジェームズはシリウスが抱えたままの"ホグワーツの歴史"を指さした。
クラリスは目をぱちぱちと瞬かせてから、こころよくうなずいた。
「──なんだか先生の態度がおかしかった気がするんだ」
ジェームズはわざわざ高架橋の広場に出てからそう言った。
12月が近づいてきていて寒すぎるせいで、広場にはほとんど
それでも何人かの人影があるのは、もしかしたら自分たちと同じくなにか秘密で話したいことがあるのかもしれないな、とシリウスは考えていた。
グレーの石でできた回廊と、あちこちに設置されたおなじ質感の階段以外に目立つものはなく、びゅうっという冷気が吹き抜けていった。だから3人は物陰に身を寄せあうようにして、ひそひそと話していた。
「先生、先週までとは全然ちがう気がするんだよ。きみはそうは思わなかった?」
「確かに少し疲れていたりふらついてはいるみたいだけれど……そんなに変かしら?」
しょっちゅう研究室に出入りしているクラリスにも、特に違和感がなかったようだ。シリウスとしても別段、どこかおかしいところがあった気はしない。
「気にしすぎじゃないか?先生が戦争と関係してるって話は聞かないけどな」
「ぼくも聞いたことはないけどさ。生徒にはそういう関係者だっているし、読むだけで危ない本とかだってあるじゃないか。そういうものに魅入られてしまってるんじゃないの、きみだって」
「わたし?」
突然じぶんの話につなげられてクラリスは驚いたように訊きかえした。それから、どうしてそんな風に言われたのかを理解したように、苦笑いを浮かべた。
「それが心配でこうやって私を連れだしたの?どうもありがとう」
「べつに……そういうんじゃないよ。せっかく知り合った子が死喰い人になったらイヤだからさ」
そうは言いながらもジェームズは少し照れたように首のうしろをかいていた。どう見ても『本音を見破られたのが気恥ずかしくてウソをついた』ようにしか見えない。クラリスもそう思ったのか、いたずらっぽい瞳をシリウスに向けてきてから、まじめな顔つきになった。
「あそこにいればティプトフトがいるし。セブルスも来るから退屈しないの。すごく熱中してるってわけじゃないのよ」
シリウスはうすうす考えていたことをストレートに尋ねてみることにした。
「前から思ってたけど、きみ、もしかしてハッフルパフに友だちがいないのか?」
ジェームズがグリフィンドール生でなければ、シリウスも周囲との関係はあんなものだったかもしれない。
クラリスは少しムッとしたかのように眉を寄せた。
どうしてそんな顔をされるんだろう。いないのかと訊いただけなのに(ともすればバカにされたと受け取られかねないきき方をしたのに、シリウスは気づいていなかった)。
そのまままじまじと観察されたが、シリウスに悪気がないことがわかったのか、彼女は「友だちがいないって思うわよね、やっぱり」とあきらめたように言った。
「上級生は気にかけてくれてグループに入れてくれるんだけど、それで友だちになれるわけでもないから。来年クラブ活動ができるようになったらもう少し変わってくるんじゃないかしら」
「上級生は……あのー、どうすればいいのか、とか理由は言ってなかったの?」
「ん……」
クラリスは言いにくそうに口ごもった。
思っていることがあるならはっきり言えばいいだけなのに、クラリスは返事が遅いときがある。
一方のジェームズは少し考えるようにあごに手をやってから、「もしも、なんだけど」と切り出した。
「ぼくだけが教えてもらうんだったらどう?」
「それ、私が『はい』って言ったら『シリウスには言えないんだ』ってことになっちゃうじゃない」
そりゃそうだ、とシリウスは笑った。
「どうせジェームズに聞くんだから、はやく言っちゃえよ」
クラリスはそれでも悩むようにシリウスの方をじっと見つめてきた。『いいから気にするな』という気持ちをこめてシリウスが手をひらひら振ると、彼女はようやくはりつめた肩を緩めるようにして話しはじめた。
「ほら、入学したての時はセブルスとも話してたし、2人やリリーとも話していたでしょう。たぶん、それで……、あの」
「きみもブラック家の関係者だと思われた?」
「そこまではわからないわよ。でも、そうね。たぶん似たようなことなんだと思う」
要するに、シリウス自身がジェームズ以外から遠巻きにされているのと同じように、死喰い人関係者が入り込んできたように思われているのだろう。周囲のハッフルパフ生から。
シリウスもそうなんじゃないかと考えてはいたが、ジェームズはそこから一段上の発想につなげたらしい。
「それ、シリウスやアイツがきみに話しかけに行ったら、もっと友だちができなくなるってことじゃない?」
「えっ」
シリウスは『自分と似ているかも』とは思っていたが、善意でクラリスと接していたつもりだった。悪い子じゃないのに一人でぽつんといるなんて『かわいそう』じゃないか。だから自分から話しかけに行った。ジェームズの懸念は完ぺきに『寝耳に水』というやつだ。
彼女には本当は迷惑だったのだろうか。
クラリスは焦ったように首を横に振った。
「やだ、誤解しないでよ。せっかく友だちになったんだからシリウスとも話したいわ。セブルスと話さないことだってありえない。それにほら、リリーの友だちは仲間に入れてくれてるのよ。シリウスの友だちだからって気にしてない子だっているの。
きっとハッフルパフ生だって、シリウスがいつもどんななのか分かれば気にしなくなるわ。上級生も『そのうちほかの子も分かってくれる』って。
……DADAの先生にも、2年生になったらクラブ活動に参加しないかって誘われたわ」
ジェームズは首を横に振った。
「グリフィンドールの上級生が言っていたんだけど、ここ4、5年くらい、DADA教授が1年ごとに顧問を引き継いでるクラブがあるんだって。5年前っていえばマルフォイが入学した頃だし、シリウスの
「いとこってことは、やっぱりその人も危ないの?」
ブラック家についてよく知らないクラリスが首をかしげたので、シリウスは肩をすくめて応じた。
「一番上は死喰い人になりたがってる"伝統的ブラック代表"みたいなやつだよ。一番下はまだスリザリン5年生にいる。ナルシッサ・ブラックっていうんだ。これ、まえにも君に言った気がするな。(クラリスはうなずいて肯定を示した)
あいつらが学校で何かやってたって話は
とにかく、とジェームズは話の方向を修正するように口をはさんだ。
「少しずつハッフルパフ生にわかってもらいたいなら、
正論である。クラリスは痛いところをつかれたような顔になった。
「それとも、アイツもきみがおかしな連中に目をつけられるのを歓迎するやつなのか、きみから見て」
「ちがうわ」クラリスは即座に否定した。
「セブルスはそうなるかもって気づいてないだけよ。私に闇の魔術をすすめることだってなかったもの。……わかったわよ、研究室に行くのはやめるわ」
クラリスは両手をあげて降参したように言った。ジェームズはそれでも表情をゆるめず、じいっとクラリスの顔を見つめ返していた。彼女がウソをついているかどうかを見極めようとしているかのようだ。
「今日も夕食までだれか友だちと過ごすことにするわ。もちろんティプトフトじゃないし、あの研究室には入らない。それでいいでしょう。
──そうだ、だったらシリウスに相談したいことがあるわ」
クラリスはローブのポケットから何枚か束になっている羊皮紙を取り出した。手紙だ。
手紙について彼女になにか相談事があるとすれば、おおよそ何についてなのかは察しがつく。ジェームズは盛大に顔をしかめた。
「ぼくら、これからなぞ解きの続きに取りかかりたいんだよ」
2人にとってクラリスやリリーは友だちだが、同じ"冒険"をする相棒や仲間というわけじゃない。だから一緒になぞ解きをするという考えはなかった。
シリウスは奥歯をかんで『どうしようか』と考えをめぐらせていた。
本を手に入れた時にシリウスはさっさと取りかかるつもりだったのに、クラリスにお節介をやいて延ばしたのはジェームズの方だ。それに、クラリスを助けているのにセブルスは放置するというのもおかしな話じゃないだろうか。
だからジェームズの方を断ることにした。
「大した手間じゃない。それで、あいつがどうしたって?」
シリウスが彼女に水を向けると、ジェームズは「君たちって……」とあきれたような、どこか複雑さをはらんだ声をだした。
「先に談話室にもどって本を読んでくる。シリウスがいなくても、ぼくだけですごーい発見をできちゃうかもね」
どことなく
これで名ありモブは全員出たと思います。
●トーマス・ヤックスリー(スリザリン)
セブルスと組にさせられている
シリウスは「あやしい」と見ている
●ほにゃらら・リーコック(スリザリン)
マルフォイ閥に順調に染まっている下層カーストの1人
●クライブ・ホールデン(グリフィンドール)
シリウスに親切な上級生
●シドニー・ホールデン(グリフィンドール)
クライブの妹。上級生
●ネイト・ティプトフト(レイブンクロー)
クラリスの友だち
闇の魔術を研究している1年生
RTAパートは本編と活動報告、どっちが好き?
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【活動報告】にあげて欲しい
-
【本編】にあげて欲しい