セブルス・スネイプを救う話(第3章高学年編・開始)   作:桜井ぬい X→@Inui20230918

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2025/4/12 一部微修正済み


第一の試練 スリザリン寮1(修正済み)

 

 

 

 

「"エイダ"っていう子に心当たりはないの?」

 

 リリーは緊張したように背をぴんと伸ばしながら、ひそひそ声でセブルスに問いかけてきた。クラリスはその間にも生徒の出入りがありそうな方に目をやっていて、見張りを継続しているようだった。

 

「何人かそれっぽい女子は見つけたけど、どの子なのかまでは……。知り合いでもないし、たまたま名前で呼んでるところに出くわさないとどの子かわからないと思う」

 

 その広い空間にいたのは古ぼけた長いすに掛けた3人だけで、静まりきった『談話室』のだだっ広いスペースではいくら声を落としても目立ってしまっていた。誰か降りてきたら物陰にかくれるつもりだったが、それでも誤魔化しきれないかもしれない。

 

 緑色の寮カラーのコーティングが目立つそこにとって、女の子2人は完全な部外者だ。特にグリフィンドール生であるリリーは、見つかったらどうなるのかわからない。少なくとも、酷いことになるだろうということだけは確実だった。

 

 校則のうえで他寮に入ってよかったかどうかは確認できていないが、確認してもあまり意味はないだろう。夜間に自分の寮から出るのは絶対に、確実に違反(ダメ)だからだ。

 

 スリザリン生は、規則違反じたいをどうこうとは気にしない。先生のまえでは規則を律儀にまもっている風にお行儀のよさを見せつけているが、そんなものは『ふり』でしかない。ハッフルパフのような『校則というものは守るべきだ』というタイプはいないのだろう。

 

 狡猾を良しとする彼らは『じぶんの利益のために校則のぬけ穴をいかに突破するか』『違反を見つかるのは間抜け』と考えがちだ。『自分ではうまくできないから手を出さない』ということはありえるし、発覚した時に仲間をかばって誤魔化すことだって多かった。

 

 スリザリン生同士ならば何かたくらんでいても見逃されるかもしれない。つまり誰かに見とがめられたら、2人がどうにかするよりもセブルスが前に出た方がいいだろう。

 

 

 

 数日前にシリウスからの情報で「スリザリン生のなかに闇の魔術を研究するグループがある」と聞いた時、リリーは「夜に寮を抜け出してそんな危ないことをしてただなんて!」と声をあげた。それで彼がセブルスに協力を持ちかけようとするのを、彼女は「セブを危ないことに巻き込まないで!2人とも、行こう」と断って、関わらせないようにした。

 

 とはいえ、怪しげな生徒がいるとわかっていて、何もせず放置しておくわけにもいかない。3人は、すぐにどうすべきかを話し合った。

 

「……研究してるだけだったら無害じゃないのか。死喰い人(デスイーター)に関係しているってわけじゃないんだろう」

 セブルスがそのグループを庇うようなことを言うので、リリーが首を横に振った。

 

「してないんだったらいいんだけど、それだってわからないのよ」

「先生まで協力させて校則も平気で無視するなんて普通じゃないわ。先生が死喰い人(デスイーター)だったらどうするの」

 

 クラリスも闇の魔術に関してなにか調べ物をしていたはずだが、どうやら彼女はそのグループの活動については否定的なようだ。

 

「先生が死喰い人(デスイーター)だなんて、シリウスは聞いたことないって言ってたじゃないか」

 

 そうだけど、と返答につまったクラリスに代わり、リリーはふたたび首を横に振った。

「シリウスは『死喰い人(デスイーター)やその協力してる人の顔を全部知ってるわけじゃない』とも言ってたわ」

「だったら調べよう。死喰い人(デスイーター)と関係がなければいいんだろう?」

 

 リリーの言葉に、セブルスはそう応じた。クラリスは別に気になったことがあったらしく、口を開いた。

 

「──もしも先生と死喰い人(デスイーター)になにも関係がなかったら、セブルスはどうするの。そのグループに入りたいんじゃないの?」

 

 ぎくりとした。

 確かにそうだったからだ。

 

 しかし、そうだとリリーの前で答えるなんてできない。セブルスは眉根をぎゅっと寄せた。

 これまでリリーには自分が闇の魔術をどう思っているのかなんて話したことはない。彼女は人を傷つけたり苦しめるようなものを好まないはずだし、そうでいて欲しいからだ。

 リリーに嫌われたくない。

 

「ぼくは……。きみが興味を持っているからだ」

 

 クラリスはムッとしたように口をへの字にしたが、セブルスを(とが)めたのは顔をしかめたリリーだった。

「私、シリウスからセブがそういうの詳しいんだって聞いてるわよ。それなのにリズのせいにするなんて」

 

「……ごめん」

 嫌われたくないから隠したかったのに、かえって嫌われてしまいそうなのでセブルスはすぐに謝った。

 

「セブだってあんまり良くないものだとわかってるんでしょ。だったら関わるなんてダメよ。リズもやめて」

 

「私は……」

 クラリスは気まずそうにその後に続く言葉を飲み込んで、うつむいてしまった。彼女はリリーの判断を()()()にはしなくなったが、それでも信頼していたはずだ。それでも『闇の魔術に関わらない』とは約束しなかった。

 

 そのことに驚いたのはリリーもそうだが、セブルスも同じだ。いや、もしかしたらリリー以上に驚いていたかもしれない。

 

 クラリスが何を望んで研究室に通っているかをセブルスすらも知らなかった。誰かを傷つけたり苦しめたりが似合わないのはリリーだけじゃなく、彼女だってそうだ。ペチュニアには嫌味を言い返したり意地悪したりしていたが、それだっていつも誰かをかばうためなのに。

 

 クラリスは顔をあげて、リリーとセブルス2人の目を交互にみつめた。

「誤解しないで。そのグループに入りたいわけじゃないの。もしも死喰い人(デスイーター)じゃなくたって。だから『そのグループに関わらない』って約束する」

 

「何を知りたいんだ」

 セブルスは不満そうに口元をゆがませて尋ねた。

 

 この3人の中で、それどころか例のグループよりも、自分の方が闇の魔術のことを詳しいかもしれない。それを知っているはずのクラリスが、真っ先に相談してこないのはおかしいと考えたからだ。

「それは……、また今度ね。でも『誰かを呪ってやりたい』とかじゃないから」

 

「リズがそう言うなら信じるわ。でも、気をつけてね」

「ぼくより信じるの早くないか?」

 

 リリーはクラリスに対してはあまりにあっさりと、信頼するような返答をした。扱いの差に文句を言いたげな顔をしているセブルスはそのままに放っておいて、リリーは話を続けた。

 

「ええーっと……。それはともかく」

「『ともかく』って」

 

 いいから聞いて、とリリーはしごく真面目な表情になった。

「参加はしない方がいいけど、関係があるのかを調べるのは賛成よ」

 

「でも、へたに手を出したら危ないんじゃないの?ひとを自分の思いのまま操るような呪文だってあるんでしょう。黙って知らんぷりしていた方が安全だわ」

 

 クラリスは調べること自体に賛成でないらしく、心配そうに言った。

 

「確かに危ないけど、セブが確かめたいって言うならそれもいいと思うの。知らないでいる方が危ないかもしれないでしょ。その"エイダ"って子のことを調べるなら、手伝うわ」

 

きみ(リズ)は無理に来なくてもいい」

 もしも上級生のように身体が大きな生徒に相対してしまったら、クラリスはすくんでしまうだろう。だから来ない方が彼女のためだと思ったのだが、クラリスは「ちょっと!」と文句をさしはさんだ。

 

「どんな風に調べるかは知らないけど、リリーを一人で行かせて『ほったらかし』なんてありえないわ。

 たとえば、これが『シリウスやジェームズにつき合ってなぞ解きをしたい』ってことなら行かないけど、危ないことにリリー一人で関わらせるわけないでしょう」

 

「う……、やっぱり"危ないこと"になるんだと思う?」

 リリーは『そうならないといいな』という期待をこめるかのように、セブルスの方を上目遣いになって見た。

 あまりじっと見られると恥ずかしい。自分の顔が少し熱くなるのを感じながら、セブルスはその緑色のひとみを何とか見つめ返すので精いっぱいだった。

「そんなにすごいことはぼくらにはできない。……危ないとは思う」

 

 それから3人は『どうやれば"エイダ"を見つけ出せるか』という作戦会議に入ってあれこれ話し合ったが、やっぱり快刀乱麻(かいとうらんま)に片づけてくれそうな案は出なかった。

 

 話の最後にクラリスがたずねた。

「リリーは冒険には興味がないの?シリウスやジェームズみたいに」

 

「それは……あのなぞ解きがどんななのかは興味があるわ。でも、夜に校則をやぶってまで探すなんてダメよ!物騒だってわかってるのに」

 リリーは憤慨(ふんがい)したようにそう言った。

 

 

 

 その後、彼らがとることにした作戦は簡単だった。

 

 2人が女子寮にもぐりこんで、各寝室のドアなどに名前がわかるものがあれば良し。なければ、女子寮のどこか掲示板に貼ってあるだろう部屋わりを見てくるというものだ。

 

 基本的なつくりは男子寮のものと同じだろうから、おそらくはドア付近に誰がその寝室の住人かを示すようなものはないだろう。つまり、掲示板をさがす可能性の方が高くなりそうだ。

 

 2人をスリザリン寮の談話室にまねき入れてから、セブルスはそう説明した。

「女子寮には男子は入れないようになってるんだ」

 

 どうやったら名前を調べられるかと考えた末に『部屋わりがどこかにあるんじゃないか』と思いいたったので見に行こうとしたのだが、うまくいかなかった。女子寮につづく階段がすべり台のように変わってしまったからだ。

 

 そのことを伝えると、クラリスはちょっと嫌そうな顔をした。

「もう試した後だったの?」

「男の子が女子寮に入るなんてだめよ。恥ずかしいわ」

 

 リリーにそうたしなめられたが、セブルスは心から不思議に思って首をかしげた。

「どうして。別に見られて困るようにしてないだろう?」

 男女で分かれているとはいえ共用部分なのだから、大した違いはあるまい。男子寮のほうには別段私物などを置く生徒はいないし、屋敷しもべ妖精が清掃しているのだからごみ1つ落ちていないはずだ。

 

「別に変なものを置いてるとかじゃないの。だからって見られても大丈夫なわけじゃないわ」

 変なものがないなら見られてもいいじゃないか。

 まだ納得しがたいセブルスを見てとってか、クラリスが解説をくわえた。

 

「たとえば、トイレって全部個室になっていても男の子と女の子は分かれてるわよね。どっちかが特別汚いとかじゃないけど、分かれていないと嫌だって思うでしょう?」

 彼女たちにとってはそういうものなのだろう。

 セブルスは「わかった」と一つうなずいてその話を終わらせた。そんなことを長々と話している場合でもない。

 

「それじゃあ2人とも『これ』を使ってくれ」

 セブルスはあるものを差し出して準備をさせ、女子寮の入り口前、階段のところにまで移動してきてから言った。

 

「もしも誰かに見つかりそうになったら急いで戻ってきてくれ。騒ぎを起こした方がよければ、何か階段の方に魔法を使ってくれればそうする。昨日試してみたときはこの時間に起きてくる子はいなかったけど、もしものことがあるかもしれない」

 

 深夜もとっくに過ぎているような時間帯である(3人とも明日は寝不足になるのが確定だった)。それで何かあったとしても、寮の奥に入るだろう2人を外から助ける手段は思いつかない。

 

「たぶん10分もあれば戻ってこれる──」

『このような夜更けにまだ眠っていないとは』

 

 3人のそばを銀色のもやのような、布のようなものがひるがえったのが見えて、セブルスはとっさに2人の前に出るようにした。これから2人が移動できなくなってしまうのはまずい。どうやってか、自分ひとりに注意を引きつける必要がありそうだった。

 

 寮つきゴーストの"血みどろ男爵"だった。夜はゴーストが本領発揮する時間帯なのでうろついていてもおかしくはないが、運が悪い。

 

 男爵は気取ったようにセブルスのすぐ前でふよふよ浮いていた。

 

『明日の授業をどうにかする算段はついておるのだろうな?』

「男爵。いい夜をお過ごしですね。……後ろの2人はまだゴーストに慣れていませんので、ごあいさつできないことをお許しください」

 

 さらっとそれっぽいことを口にできる程度には、セブルスは周りの生徒がどのように男爵に対して接しているかを見聞きしていた。それでも実際にきちんとしゃべったのはこれが初めてだったので、自然と肩に力がはいってしまう。

 

 背後の2人に対して、後ろ手で女子寮の階段を指さして『行け』と伝えてから、セブルスは談話室のなかのソファを示すように手を延べた。

「ちょうど相談したいことがあります。ぜひなにか助言をください」

 

 気をそらすためにそう言ったが、男爵は一歩分たりとも動かなかった。

『淑女が前に出ないことは評価しよう。しかし入学から3か月も経っているのに慣れぬのは問題だ。今宵がまことに良い機会となろう』

 

 要するに、女子2人を行かせるつもりはないようだ。しばらく粘ってみて、それでも難しかったなら最悪の場合は今夜の"調査"をあきらめるしかないかもしれない。

 

 今2人のそばを離れると、ますます男爵に絡まれてしまうだろう。セブルスは2人のすぐ前に立ったまま、どうにか追い払えないかと頭を振りしぼった。

『目上の者へはしっかりと挨拶するものだ』

 

「男爵も紳士ですからわかって頂けると思うのですが、もう寝る準備をした後の女の子は、顔をじっくり見られるのを嫌がるものだと考えます」

『そのまま眠ろうという顔で、誰が来るともしれぬ談話室で話し込んだりはしないだろう。それも男児と』

 

「ぼくは……親しいので」

 あいさつがないのがそこまで気に食わないのか、男爵はやけにしつこかった。じろじろと3人を観察しているようで、どいてくれるような気配がない。

 

『この夜更けに話しこむほど親しい女子が2人もいるとは。知っているかね、男子は女子寮に入れないが、女子はどちらにも入れる。夜更けに談話室に集うよりも、ルームメイトに寝室を空けさせる方が人目を忍ばずに済むのだぞ』

 

 どうやら『3人がこんな時間に集まっているのは、他の生徒の目をかいくぐって密会するため』だと思われているらしい。間違いではないが2人を寝室に入れるわけにもいかないし、そもそも会うこと自体が目的というわけでもないのだ。使えそうなアドバイスではない。

 

「アー……、アドバイスをありがとうございます。それで、できれば……2人にはもう寝室に行ってもらいたいんですが。男爵もおっしゃっていた通り時間も遅いので」

 

『では進み出て就寝のあいさつをするが良い』

 らちが明かない。こんなところで時間を食っているわけにはいかないのに。

 

「失礼ですが、男爵は1年生の女の子にそうまで強い興味があるんですか?顔をどうしても見たいくらい」

『どうしても見せられない理由でもあるのかね?』

 もう少し強引な態度に出たほうがいいんだろうか。セブルスは一歩、男爵の方に進み出た。

 

「これまで慣れていないものを今日いきなり慣れろと言われても難しいので、また明日にお話をさせてください。ぼくも早く休みたいのですが男爵にはこれを機にぜひうかがいたいことが……色々とあります」

 

 ウソ八百だ。べつにこのゴーストになにか聞きたいことなんてないが、こうでもしておかないと2人から注意をそらせないかもしれない。

 

「男爵は、大広間に現れた垂れ幕のことは知っていますか。あれが何なのか誰も知っている人はいないみたいです。生徒の家族も、先生たちも。一部の生徒は"謎かけ"なのではないかと噂していますか、ずっとホグワーツにいるゴーストの皆さんもあれの正体を知っているのではないですか。この学校は1,000年も前に建てられたのですから、実は1,000年前には既にあって、生前にあれを見たことがある方がいてもおかしくはない。違いますか?それなのに、スリザリン生が……それ以外の生徒もですが、ゴーストに聞きこみをしても誰も知らないみたいなんです。知っていてあえて黙っている方がいてもおかしくはないように思うんですが、いかがですか?その辺りのことをできる限り詳しく教えてもらいたいのですが」

 

 できる限り口を挟ませないでごまかしておきたい。だから立て板に水を流すようにしゃべり続けるセブルスに対して、男爵はひげをいじりながらどこか思案するようにして言った。

 

『ふむ……。いいだろう』

 

 ふわふわ浮かび上がりながらソファの方へと男爵が背を向けたのを見て取って、後ろの2人が足早に女子寮の方へ離れていく音がした。セブルスが横目で確認してみると、リリーがクラリスの手を引いて移動しているようだ。

『長い話になりそうなので深く掛けたまえ』

「はい」

 

 2人が調べ終わるまでは引きつけておかなければならないが、その後も男爵が残り続けていたら、今度は2人が自分の寮に戻れなくなる。折をみて追いはらう必要もありそうだった。

 

 どうしても男爵が離れない場合は、2人を自分のベッドの上にかくまうしかないか?カーテンを引いておけばすぐにはばれないだろう。その場合、日中に授業でほかの生徒がいなくなったようなタイミングで逃がすしかないかもしれない。授業には遅刻してもらうか休んでもらうことになると思う。

 

 言われるがままソファに深く腰かけながら、セブルスはそのような算段を頭のなかで整理していた。

 

 ──それが油断だった。

 血みどろ男爵は、まるで湖などに勢いよく飛び込むようにして床面に消えていった。セブルスは慌てて立ち上がろうとするが、ソファの奥に腰をおろしていたので手間どってしまった。

 

 まもなく、きざはしに足をかけようとしていた2人の目の前、床面からゴーストが飛び出してきた。

 男爵はなにか秘密を暴いてやろうというニヤついた笑みを浮かべていたが、すぐにそれは消失して真顔に戻った。

 

「どうかされたのですか」

 セブルスは白々しくもそのように問いかけながら、内心では舌を出していた。

 

(そうやって見られたって問題なんかない)

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ネクタイまでは用意できていないので2人とも外している。

 

 ゴーストは脳みそがないし死んでしまっている存在なので、新しいことを覚えるのが苦手だ。スリザリンの女子生徒の名前だって把握してはいまい。長年居ついているゴーストにしてみれば、毎年入れかわる生徒の特徴なんてたいして覚えていられないのである。

 

 それでも半人間だとさすがに『スリザリン寮に入るべきではない対象』だとわかってしまうだろう。だからリリーは特に何も隠してはいないが、クラリスの方は目深にフードをかぶって髪と目を隠していた。そのため彼女は鼻から下しか見えないようになっている。

 

 同じようにフードをかぶった怪しげな上級生がいるが、叱られたところをセブルスは見たことがなかった。おそらく問題はないだろうと踏んでいたら、その通りだったようだ。もしも何か言われたとしても、上級生を引き合いに出すだけである。

 

 クラリスはそのまま「男爵、おやすみなさい」とだけ言って、ささっと男爵の方にお辞儀をした。

 男爵はつまらなそうに鼻を鳴らすと、そのまま談話室の壁を通り抜けて、どこかに出て行った。

 

「ローブ、借りておいてよかったわね。これ、誰の?」

 クラリスは自分が羽織ったローブを指でつまみながら、小声で呼びかけてきた。

 

「トーマスのだ。あいつはいつもその辺に投げだしているから、かっぱらってきた」

「そんな。勝手に人のものを触るなんてダメよ」

 リリーは感心しないものをみるように眉をひそめて、そう言った。

 

「着てて良かったじゃないか」

 それに、正面から『貸せ』なんて言ったら『何に使うの』と訊かれるに決まっている。

 

 セブルスが不満そうに眉間にしわを寄せたのを見て取ってか、クラリスは「行こう」とリリーをうながした。

 

 ちなみにリリーに着せた分は自分のである。毎日着ているものを彼女に使わせるのは、なんとなく気恥ずかしかった。

 

 2人の背を見送ってから、セブルスは女子寮の階段の入り口近くの壁にもたれかかって、男子寮の生徒が出てこないかを見張ることにした。

 

 あとは2人がすぐに戻ってくるのを待つだけだ。セブルスは杖をいつでも使えるように手におさめてから、作戦がうまくいくことを何者かに祈った。

 

 

 

 

 

 

 




「部屋に表札的なものがあるのか?」とか「部屋割りってどうやって告知してるの?」とかはわかりませんでした。イギリスの大学寮などをインターネットで検索しても出てこなかったので不明です。
知ってる方がいらっしゃったら、なにか情報をください。

表札の方は日本の文化っぽいので、ない可能性が高いですね。

RTAパートは本編と活動報告、どっちが好き?

  • 【活動報告】にあげて欲しい
  • 【本編】にあげて欲しい
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