セブルス・スネイプを救う話(第3章高学年編・開始)   作:桜井ぬい X→@Inui20230918

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とりいそぎ出先で携帯から投稿してるので、タイトルやルビなどは後で修正します。
→7/17タイトル修正済み
→12/20また年号がガバってたので修正済み

2025/4/29 一部微修正済み


第三の試練 レイブンクロー寮1(修正済み)

1972年3月下旬 イースター休暇後

 

 

「──あの後、結局どうなったんだ?」

 シリウスがそう尋ねてきたので、答える代わりにセブルスは隣に座っているリリーに目線をうつした。

 

 彼らが集まっているのは中庭の一角、建物と建物をつなぐ回廊の辺りだった。ばしゃばしゃと噴水が水盆をたたくような音が近くでしているためか、4人が集まって話していても内容まではわからないだろう。

 

 リリーは答えにくそうにうつむいて、言葉に迷っているようだった。

「魔法界の写真、持って帰ったんだろ?休暇のあいだ」

「ええ、カメラを貸してくれてありがとう。もちろんパパやママはよろこんでくれたんだけど……、あの」

 

 その言い方で結果が良くなかったことは見て取れたのだろう、シリウスが「あー……」となんとも残念そうに相づちをうったので、クラリスがリリーの代わりに答えた。

 

「残念だけど、いつもの3倍は悪口を言われたわ。リリーの家族……、お姉さんなんだけど。感じが悪いの」

「言ってた。たしか『生まれぞこない達の写真なんて見たくない』とかなんとか。魔法族は生まれぞこないらしいぞ」

 思い出したら腹が立ってきたので、セブルスは「ふん」と皮肉っぽく鼻を鳴らした。

 

「魔法のちからを持ってないやつの方が『生まれぞこなってる』じゃないか。能力が足りないんだから」

「ひどいわ。私のパパやママだって魔法のちからを持ってないのに、そんな言い方」

 リリーが存外に傷ついたような顔できっぱりと抗議してきたので、クラリスは「ばかねー」とからかうようにセブルスへ笑みを向けた。

「その単語をつかうとペチュニアのレベルにまで性格が悪くなっちゃうわよ。ペチュニアみたくリリーに嫌われても知らないから」

 

「べつに嫌いってわけじゃ……、ただ、このところあんまり気が合わないなって。だって家族なのに嫌うなんて良くないわ」

 リリーがあわてて否定しているが、少なくともクラリスやセブルスよりも好きじゃないのは確かだ。

 

 シリウスは気の合わない家族をもつもの同士だからか、理解できると言いたげに深くうなずいた。

「家族だって合わないやつは気が合わないし、嫌いにもなる。そんなの普通だろ。無理につき合うことない。

 あんまり気にするなよ。性格が悪いのと血がつながってるからって、君までお仲間ってわけじゃないんだから」

 そうはげますように言った。もしかしたらシリウスは自分に言い聞かせているのかもしれない。彼にとって家は敵地のようなものだからだ。

 

「お前は“騎士団“のジェームズ・ボンドだったな、たしか」

「お前が言うな。というかそれ、ジョークのつもりなのか?つまらないぞ」

「“わかりにくいジョークトーナメント“だったら上位に入れるわよね」

「うるさいな」

 シリウスとクラリスが入れてきた茶々に、セブルスは口をとがらせて応じた。

 

 クリスマス休暇の頃からか、エバンズ姉妹(リリーとペチュニア)の(みぞ)は少しずつ深まりはじめていた。

 クリスマスで家に戻ったリリーは、姉がホグワーツにいるたくさんの友だちを否定するなんて見過ごせなかったのである。だから次の休暇であるイースターにはグリフィンドール寮の友だちを招待することを考えていた。

 

 クラリスにその計画を相談したところ、彼女は「マグル生まれの子なら呼べるかもしれないけど、遠くから来てもらうのは大変じゃない?イースター休暇は短いし」と助言したらしい。

 イギリス中の魔法族を探しても同級生は150人くらいしかいないのだ。もしもほかの子も各地に散らばっているのなら、一箇所に集まるだけでひと苦労である。

「そうね……おたがいに夏季休暇の方がいいかしら。でもそうしたらリズは呼べるけどセブは難しくなっちゃうわ。私の友だちはグリフィンドールの子が多いから……」

 ハッフルパフ生は邪険にされなくとも、スリザリン生とは表立って仲良くしにくいだろう。元々ゆき来があったリリーだけならともかく、それ以外となると難しい。

 

 スリザリンを選んだのは自分だ。だからその結果も甘んじて受け入れなくちゃいけない。

 それでも苦々しいものがあって、セブルスはひと知れず口の(はし)をゆがめた。

 

 通路の向こうでばたり、という重く大きな音がして、大扉が閉まったのがわかった。全員の視線が集まったそこから、ジェームズが靴の裏を石床にぶつけるようにしてずんずんと突き進んでくる。みるからに怒りをこらえるような顔だった。

「すぐに次の試練に行こう」

 ずいぶんと唐突で、しかもどうやら今までのように大冒険を楽しむという雰囲気でもない。まるで映画のなかの正義感にあふれたカウボーイが、これから悪党をつかまえに行こうとするみたいだった。

 だから4人とも何を答えればいいのか困惑して、とっさに口を開けなかった。

 

「ぼくたちはそうしなくちゃダメだ。ほら立って。ぐずぐずしてる時間なんてないよ」

 座りこんでいたセブルスの真正面にまわったジェームズが、力づくでも立たせようというのか腕をつかんだ。

 

「お、おいおい。(やぶ)から(ぼう)すぎるぞ、どうしたんだ?」

 相棒であるはずのシリウスも状況がわからないらしい。まずは事情をきこうとする彼に対し、ジェームズはなにか口を開こうとした。しかし、ここにいるのはシリウスだけではない。彼はセブルスら3人に目を向けてから、ただ首を横に振った。

「いいから、はやく。君らが来ないならぼくとシリウスだけでも行くからね」

 

 前回の試練の例を考えると、2人だけでも試練は進めてしまえるかもしれない。せめてどんな内容なのかを聞いておいた方がいいだろう。

 

 首をすくめてからしぶしぶと立ち上がったセブルスは、シリウスに問うような視線を投げた。

『こいつ、どうしたんだ?』

『さあ。さっぱりわからない』

 

 

 

 

 レイブンクロー寮のなかは青いカーペットが敷き詰められていて、どうやら一番"ふつうの"建物のようだった。リリー曰く『水族館みたいな』巨大な窓ガラスも、壁に張り巡らされた植物のツタもない。青っぽいだけのただの古びた洋館めいていて、目を惹くようなものはなかった。

 あちこちに本棚が置かれているのが特徴といえば特徴かもしれない。

 

 5人はふかふかで音のしない床を踏みしめて、談話室からもっと上の階で例の部屋を見つけた。バルコニーのように柵がされていて、吹き抜けになった談話室が見下ろせるようになっている辺りだ。

 

 入り口で謎かけに答えれば誰でも入れてくれるとはいえ、寮生はいい顔をしなさそうなものだ。セブルスはそう思っていたのだが、実際に見かけたレイブンクロー生はあんまり気にしていないようだった。

「なにか用?」と尋ねはしても、「ちょっと見てみたくて」とシリウスが答えるとあっさりと興味を失ったようだった。

「寝室には入ってはいけないよ。みんな魔法の腕は確かだからね、おかしなことをしたらすぐにわかる」とだけ注意(威圧?)すると、それだけで離れて行った。

 

「こんな簡単でいいのかしら……」

 半ばあきれたようにクラリスがつぶやくのにも、ジェームズは足早に先導しながら言った。

「楽に行けるんだからいいじゃないか。ぼくらはハッフルパフ寮で"知性"の試練を乗り越えられたんだから、1年生でも解けるなぞなぞくらい『わけない』よ」

 普段のジェームズなら不敵に笑っていそうなのに、彼はかたい表情のままだった。

 困惑したようなクラリスの手をリリーが引いて、5人は空中を切り取ったかのように開いたドアをくぐった。

 

 なかの作りは前回ともその前とも同じだった。そこまで広くない部屋の真ん中には暖炉があって、正面奥に何かがある。スリザリン寮には肖像画が、ハッフルパフ寮には像が置かれていたそこは、鉄格子のようなものでふさがれた通路の入り口があった。

「なんだか映画で見た(おり)みたい」

(おり)ならウチにもあるぞ」

「あるの!?」

「マグルの家にもリズの家にもないけど、魔法界の家には檻があるものなのか?」

「まさか。うち(ポッター家)にはないよ」

 鉄格子の隙間から奥をのぞき込んでみても、正面が曲がり角になっていて光が差し込んでいることしかわからなかった。

 

 ジェームズは何か見つけたらしく、「これ」と入り口の脇を指さした。

「何か書いてある。ええと……、『誰かひとり試練を受けるリーダーを選びなさい』『その人が合格しなければ全員が不合格になる』」

 そこにはレリーフのような真四角の石が設置されていて、つるっとした表面にはそんな文字が刻まれていた。

 

「ここまでみんなでやって来たのに一人だけ選ぶなんて……」

「一人でやるのと"勇気"とか"騎士道"って何か関係があるのかしら?」

「でも謎かけは『チームで挑め』って内容じゃなかったか?」

「みんなで誰かに任せる"勇気(決断)"かもしれないだろ」

 

 4人がめいめいに意見を出すなか、ジェームズは安堵したように息を吐いて振り返った。

「だったら簡単じゃないか。みんなでぼくをリーダーに選べばいい」

「抜け駆けするなよ、相棒」

 グリフィンドール生の2人が『我こそは』という名乗りをあげる一方で、残り3人はまた別の意見をもっていた。

 

「ねえ、今度こそ試練を進めるのはやめない?」

 真っ先にそう提案したのはクラリスだった。

「試練が進まないならそれでもいいじゃない、そのままにしておけば」

 前回の試練のときもそうだったが、そもそも3人は試練を続けること自体に乗り気ではないのである。それでも前回の試練を受けたのは『ジェームズとシリウスなら、3人が反対しても勝手に試練を続けてしまう』と考えたからだ。実際、前回はそれができるルールだった。

 

 今回も勝手に試練を受けるということが可能なのだろうか。

「君たちが嫌なら受けろとは言わないよ。ぼくらの方で勝手にやるだけだ」

 ジェームズは出題者に呼びかけるように声をあげた。

「ねえ、3人はリーダーを選びたくないんだ、試練からおりたいんだよ。だったらシリウスをリーダーにしてもいいから、2人で試練を受けさせてよ!」

 まわりはしんとしていて、必死な訴えを認めてくれるような返答はない。

 どうやら今回はチーム全員でリーダーを選ばなくてはいけないようだ。

 

「くそ」

 ジェームズが格子にこぶしを打ち付けるも、にぶい『ごつん』という音しかしなかった。それでジェームズは痛そうに手を振った。

 

「ねえ、どうしてそんなに試練を進めたいの?何かあったの」

 今度はリリーが問いかけると、ジェームズは迷うように、主に"反対派"3人に目をやった。

 

「なんだ」

「きみたちにはわからないよ、きっと」

 見くびるような言い方にカチンときたセブルスのとなりで、クラリスが冷静に返した。

 

「話した方があなたをリーダーにする気になるかもしれないわよ、わたしたち」

「……わかったよ」

 ジェームズは観念したようにうなずいた。

 

「きみたちみたく、マグルが多いところに住んでる子は家に帰れるけど、そうじゃない子もいる。つまり、いまは戦争中だから。クリスマスくらいは帰るし、夏休みはどうしてもホグワーツを出なくちゃいけないけど、そうじゃない休みは残った方が家よりも安全なくらいなんだ」

 それから「子どもにだってできることはあるって言ったんだけどね。『帰ってくるな』って」とジェームズは悔しそうに眉根を寄せて、そうつけ加えた。

 

「それで家に帰らなかったのね、2人とも」

 ジェームズもそうだが、シリウスも今回の休暇では家に帰らなかった。リリーもどうやら事情を知らされていなかったらしい。

 

 シリウスは対照的に『大したことじゃない』とでもなだめるように軽く手を振った。

「こっちは適当に理由をつけて帰らなかっただけだ。帰ったら死喰い人(デスイーター)の手伝いとかさせられそうだろ。冗談じゃない」

 彼にとって家族の顔というのは恋しいものではないのである。

 

「上級生なら呪文もたくさん知ってるし、卒業してなくても戦うことはできる。そうやって戻っている人は何人もいるみたいなんだ。

 ホールデンってきみたちは知ってる?グリフィンドールの上級生だよ。シリウスに最初からやさしかった。

 あの人の妹の話を聞いたんだよ」

 ジェームズの表情は暗い。

 

「シドニー・ホールデンって言うんだ。5年生だったかな。気の強そうな感じの人で、クィディッチの選手もしてた。

 彼女もグリフィンドール生だったし、呪文の腕も確かだった。試練をとじこめた羊皮紙ってあっただろ、あの時もうまく羊皮紙に魔法を当ててたよ。覚えてる?」

 あの"垂れ幕"が出てきたとき、あの日はハロウィーンだったから()()()前の話だ(子どもにとっての一日の重みは、大人のそれにくらべて倍以上はある)。

 

「シドニーはこないだのクリスマス休暇のときも入院していたんだって。その後も休学になってた。

 で、こないだのイースターの時、ホールデン……きょうだいのクライブは学校に残ってたんだ。たしか7年生なんだよ。成人だ。それでも帰らなかった、止められてたんだって、親とか親戚に。

 ぼくがホールデン(クライブ)を見つけた時は、疲れ切った顔でなにか調べものでもしてるみたいだった。ケンタウロスみたくムキムキなのにしょんぼりしててさ。だから何かあったのかと思って訊いてみたんだ。たくさん本を積んでたから。

 そうしたら『妹にかけられた呪いについて調べてる』っていうじゃないか。

 

 入院や休学してたから、病気とか、もしかして呪いかけられたのかなって噂にはなってたんだよ。でもはっきり聞いたのは初めてだった。

 ホールデンの家はそこそこ大きくて古いみたいだったけど、2人の両親は純血主義じゃないし死喰い人に協力しないって決めてたんだって。

 ダンブルドア校長(不死鳥の騎士団)に協力してたかどうかまではわからない。でも死喰い人に協力しないってことは、騎士団の不利になるようなことはしないってことだ。いざとなったら騎士団に味方するかもしれない。

 

 そのせいなのかな。

 妹(シドニー)はクリスマスの夜に襲われたんだって。

 ふつうは親戚とか家族で集まってる日だよ。ホールデンのところももちろんそうだった。大人の魔法族がたくさん集まっているところに襲いかかったら、ふつうは返り討ちにあうだけだ。だからって何人も引き連れて行ったらそれこそ戦争だ。

 

 彼女はクリスマスパーティーの合間にいなくなってたんだって。兄(クライブ)はずっと両親と過ごしてて、いないって気づいた両親といっしょに探したらしい。

 彼女が見つかったのは地下の物置きだったんだって。古いところだからひび割れとか、ネズミが入り込むような隙間はいっぱいあったらしい。縮小呪文とかは防犯魔法で使えないそうだけど、なにせ古いからうまく働かないかもしれないんだって。つまり、犯人が外に逃げちゃった可能性が高い。真っ暗だったみたいだし。

 

 彼女は何が起こったのか覚えていなくて、顔色が悪くてひどく弱っていたことしかわからなかったらしい。

 それでも『誰かに何かをされたんじゃないか』って考えるでしょ?

 彼女は病院に運ばれて、なにか呪いがかかっているのは間違いなかったみたいなんだ。効果があんまりにも薄れないし、いくつかの呪文を試したんだけど効果が出ない。体の状態を調べる魔法は効いているのに原因がわからないって。

 

 反対魔法は思いつく限り試したみたいだから、反対魔法がないもの、つまり闇の魔術と考えられるんだって。

 

──なにか解き方に心当たりとかってないよね?」

 

 ジェームズはそこでようやくセブルスの方を見た。

「それだけじゃあ、わからない。

 たとえば『ずっと痩せ続ける呪い』がかかっていて反対魔法がなかったら、べつの『ずっと太り続ける呪い』をかけて効果を打ち消すとか、そういうやり方で帳尻を合わせることになる。

 かかってる呪いの種類をしらべて、それから魔法を探すとか新しくつくるとかになると思う。

 呪い自体をどうにもできないなら、魔法薬でちょっとずつ"元気爆発薬"みたいなものを飲むとかそういうことをするんじゃないか。

 あとは……犯人がわかれば、そいつの魔法のちからそのものを弱らせればどうにかなるかも」

 

 最後の意見がジェームズには引っかかったらしい。

「弱らせるって」

「死なせるしかないんじゃないか?」

 実にあっさりとそう答えたセブルスに、特にリリーとジェームズは非難するような目を向けた。

 

「お前……、人をかんたんに死なせるようなことを考えちゃダメだ」

「それしか方法がないなら仕方ないじゃないか」

「だからって()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そうしなかったら被害者が弱っていくだけだ。死ぬかもしれない」

 セブルスにとってそこは譲れないところだった。

 

 死ぬべき人はこの世にいる。

 そいつが死んだおかげで助かった人も確かにいる。

 それは事実だからだ。

 

「だからって、死なせるのは最後の手段だよ。牢獄につながれれば、心を入れ替えて呪いを解くかもしれないじゃないか」

「"こころを入れ替える"だって?」

 セブルスの頭のなかで今までの様々なことが通り過ぎていって、ジェームズがあんまりにもバカなことを言ったように感じられた。

「死喰い人のボスにもそう言うつもりなのか。『捕まえればきっと反省して誰も傷つけない人になる』だとか」

 せせら笑うような言い方だった。

 

「かんたんに殺すとか考えるなって言ってるんだ!死んだら生き返れないんだぞ!」

 むしろ生き返ってもらっては困る。

 だがそのあたりの事情をジェームズに理解してもらいたいとは思わなかった。リリーにもだ。たとえ非難されたって誰かに打ち明けたくはない。

 

「落ち着いて。悪いのはそんな呪いをかけた人でしょう。そういう意見の違いは後にして、リーダーになりたい理由のつづきに入ってよ」

 クラリスは一歩前に踏み出してジェームズにそう促した。

 

 セブルスの事情をたった一人知っていて、なおかつ処刑された犯罪者の父親をもつ彼女は、どうやらごまかしにかかることにしたらしい。

『死んでもいい人間がこの世にいるかどうか』なんて話し合ったって、ジェームズは『いない』でセブルスは『いる』なのは明らかだった。

 そして、きっとリリーは『いない』なのだろう。

 のどの奥がちりっと痛むようで不快だった。セブルスにできるのは、その気持ちを舌にのせないよう口をつぐんでいることだけだった。

 

「ウチの親とかも死ななきゃ治らないけどな。たぶん」

 絶妙なタイミングでシリウスのつぶやきが聞こえた。

(ぼくの味方をした……ってわけじゃないな。思ったことを口に出しただけだこいつ)

 シリウスは自分に素直すぎる。

「シリウス。ぼくの相棒でいたいならそういうことを言うなよ。きみの家族とおなじく悪党でいたいなら別だけど」

 

 ジェームズも脱線した自覚はあったのか、咳ばらいをして続きに入った。

「ええと……シドニーに闇の魔術がかけられたみたいってところだったね。

 とにかく、闇祓いにも通報したら、死喰い人の捜査でいそがしいはずなのにすぐに来てくれたみたい。

 きっと彼女は誰かに呼び出されただろうって結論になったんだ。どこの家だって同じように集まっているんだから、友だちが抜け出すとかはしないと思うんだけどね。

 

 闇祓いの話だと、死喰い人もそういう解き方がまだわからない呪いとかジンクスとかをたくさん使うから、もしかしたら死喰い人の仕業かもしれないってことになったって。死喰い人だったら死の呪文とか平気で使いそうなものだけど、弱らせれば仲間は助けるのに必死になるから、死喰い人への攻撃をしなくなるでしょ。調べるのにも時間がかかるし。そういう狙いがあるらしいんだ。彼女、グリフィンドール生だから、もしかしたら騎士団に入るつもりだったのかな。

 親戚の小さな子がいっしょにいたみたいなんだけど、その子をかばったみたいで。

 

 で、イースター休暇になっても妹の具合はよくならないし、どんどん弱ってるみたいだ。でも危ないからお見舞いにも行くなって言われてるんだって。

 ホールデンは『こんな風になるなら、死喰い人に協力しないなんて言わなかった方がまだ良かったんじゃないか』って言ってた」

 ジェームズはそう言って話を締めくくった。

 

 彼が試練を進めるような気になった理由はわからなくもないが、そういうグリフィンドール生がいることと試練にどんな関係があるかまでは見えてこない。

「かわいそうに……。もしかして試練を進めたら呪いを解く方法がわかるのかしら?」

 

「それはどうだろう。ぼくはただ、グリフィンドールの『あの部屋』が使える子が増えたら、みんながきっともっと安全になるんじゃないかって。

 そうするためには一番先に試練を乗り越えるんだ。それからみんなに解き方を知らせたいんだよ。ほかの寮だっておなじだ。安全なところに避難できる」

 

 ジェームズの意見はわかった。それでも真っ先に反対意見を言うのは慎重なクラリスだ。

「その中に"闇の魔術のグループ"が紛れ込んだら?かえって危険だわ」

「だったらこのまま放っておくのか。ホグワーツの中にそいつらがいるのに」

「襲われたらどうするのよ、わたしたちまだ一年生なのよ」

「やっつけるんだ」

 ジェームズは間髪入れずに答えた。どこまで深く考えたのだろうか、むきになって反論をうち返しているようにも見える。

 

「協力してよ。2人は自分の寮の番が済んでるから逃げこめるけど、グリフィンドール寮はまだなんだ。エバンズだって友だちを守りたいと思うでしょ?」

「え……ええ、もちろん安全なところが増えるなら、それが一番いいわ」

 ほら、とジェームズはクラリスの方を期待するように見た。リリーの友だちだから賛成してくれるんじゃないか、という顔だ。

 

 クラリスは「ううん」と言葉をえらぶように言った。

「試練を進めたい気持ちはわかったけど……。わたし、リリーがリーダーになってくれるなら応援するけど、ジェームズがリーダーなのはちょっと……」

「えっ」

 

 ジェームズは思いもよらないことを言われた、という顔をしているが、セブルスには彼女がなぜそんなことを言い出したのかわかる気がしたり

 おそらくクラリスはグリフィンドール生にちょっかいをかけられたことが引っかかっているのだろう。2人に影響をうけた変な連中にからまれたから、その元凶であるジェームズにリーダーを託したくないのかもしれない。

 とはいえ、セブルスも別の理由で同意見だった。

「ぼくもだ。

 きみらがああいう変にうるさいスリザリン生にちょっかいを出すのは別にいい。ぼくもあいつらは嫌いだ。

 でもリーダーを託すのはリリーじゃなきゃいやだ」

 3人組でいた頃から、リリーなら正しい解決方法をいつも思いついてくれた。リリーの意見ならきっと正しいと後押しできるのに、ジェームズだとなんとなくそんな気持ちにはならない。

 仮にリリーがなにか意見を言ってもジェームズが賛成しなさそうだからだろうか。

 

 逆に、シリウスは「何言ってるんだよお前ら」と信じられないものを見る目をしていた。

「危険でも試練を進めるって決めたのはジェームズなんだぞ。ジェームズがやらないとおかしいじゃないか。仲間を危険かもしれないところに突っ込ませるなんて、そんなことは絶対しない」

「べつにシリウスにリーダーをゆずったっていいよ。なにか勝負して勝った方がやればいい。

 でも2人はエバンズがいいっていう。だったらエバンズ自身はどうなのさ?」

 

 ふて腐れたようにたずねるジェームズに対して、リリーは言葉につまったようだった。

「わ、わたしは……みんながそう言うなら引き受けるわ。でも、それならジェームズとシリウスが納得してくれなくちゃ。2人はわたしをリーダーにしたい?」

 

 ジェームズは彼女の目をじいっと観察するようにのぞきこんだ後、きっぱりと言い切った。

「いいや、君がリーダーなんてぜったいに認めない。君に頼むくらいならぼくがやるべきだね」

 

 リリーよりもうまくやれるとでも考えているのだろうか。だとしたら思い上がりすぎだ。

(この目立ちたがり屋め)

 

 

 

5人チームの意見は真っ二つに割れた。

 

 

 

 

RTAパートは本編と活動報告、どっちが好き?

  • 【活動報告】にあげて欲しい
  • 【本編】にあげて欲しい
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