セブルス・スネイプを救う話(第3章高学年編・開始)   作:桜井ぬい X→@Inui20230918

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前回の更新が12月8日だと!?
年末年始が家族と親戚づきあいで書けなかったのを加味しても、かなりあっという間だったなー

2025/4/29 一部微修正済み


第四の試練 グリフィンドール寮1(修正済み)

 

 

 

 

 

 

第三の試練合格から一週間ほど後 1972年5月はじめ

 

 

 

 最後の"試練の部屋"を見つけるのは簡単だった。

 なにせ第四の試練は"グリフィンドール寮で受ける、スリザリン的モットーの試練"だと判明しているのだ。

 チームの5人中3人がグリフィンドール生なのだから、第三の試練合格直後には見つかっていた。

 残り2人を透明マントで隠して寮に引き入れてしまえばそれで終わり。

 そう余裕をもって構えていたのに、一週間ほど経った現在は肝心のマントを失っていた。

 

 入り口が見えていても指をくわえて眺めるしかできない。ジェームズとシリウスは不満なようで、言葉少なに談話室のソファに掛けていた。

 リリーもまた2人に並んで座りながら、真正面に見える、空気が透明にくり抜かれたようなドアを観察した。

 

 試練に入り口は談話室のど真ん中、ほとんど中央にあった。暖炉より少し離れた、ソファやテーブルの点在しているところだ。当然ながら昼間は生徒が沢山いる。入り口を囲むのは、大きな暖炉、自分たちのいるソファ、それから一面に大量に掲げられた肖像画の壁だ。

 たとえ生徒に見つからずに"部屋"に入れても、肖像画からは丸見えである。

 

 もしも3人で試練に挑むのならば目撃者なんて気にしなくていい。ジェームズとシリウスの寝室にリリーが入って、3人で透明マントをかぶって出てくるだけだ。

 これならば例え誰かがいても、見つからずに行けるだろう。

 

 リリーはちらりと2人の顔をうかがった。

(今すぐ飛び込みたいって顔をしてるけど)

 それでも『3人で挑もう』とは2人とも口にしなかった。

 

『ここまで5人で超えてきてるのに、今さら残り2人を呼ばないわけないじゃないか』

 ジェームズはそう言ったし、同じく抜け駆けを良しとしそうなシリウスもうなずいたのである。

『友情をためすような試練じゃないか。3人で行かない方がいい気がする』と。

 

 リリーは予想外の反応にすこし驚いたが、仲間外れをつくらないのには賛成だった。

 

(──すごく大掛かりになりそう)

 例の"書いたことが5人全員にコピーされる羊皮紙"で相談し合った結果、『誰にも見つからないためには、グリフィンドールの生徒たちにも肖像画にも談話室から出てもらうしかない』という結論になっていた。

 リリーは考えたこともない壮大なプランに、胸がどきどきと高鳴ってくるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

一週間ほど前 第三の試練合格の翌日 1972年4月下旬

 

 

 

 セブルスが突然声をかけられたのは、授業後に大階段を下ろうとしていた時だった。

 せわしく動き回ったり機嫌を悪くしがちな階段が多いそこには、壁面に大量の肖像画がかかっている。常にいっしょに行動しているのは相変わらずトーマス・ヤックスリーだった。

 

 セブルスはブラック家のグループに入れられたとはいえ、彼らの一員からは少し外れている。グリフィンドール生であるシリウスの"友人"扱いだというのもそうだが、そのシリウスがスリザリン生にちょっかいを掛けていたからだ。

 

 それでもセブルスが報復されずに済んでいるのは、それをケンカまでして止めようとしたためだ。結果は以前の通り、マルフォイがジェームズに報復し、それで一旦は落ち着いていた。

 

 もっとも、ジェームズは『実力を身に着けたらリベンジを挑むつもりだ』と言っていた。つまり、標的を末端のスリザリン生から大ボスに替えただけだ。バレなさそうだったらセブルスも一枚噛むつもりではいる。マルフォイ卒業前に間に合えばいいが。

 

 そういう立場なので、ブラック家関係者はセブルスにあまり関わってこない。入学時から付き合いのあるマルフォイ閥の生徒といっしょにいることの方が多かった。とりわけトーマスは、寝室が同じであるせいでお目付け役みたいになっていた。

 

『階段を降りきったら止まってくれ』

 動く階段そばの肖像画が、セブルスにそう声をかけてきたのだ。足は止めない。階段が目当ての階とつながらなくなったら、しばらく待たなくてはいけないからだ。

 肖像画の人物だってホグワーツ卒でスリザリン生だったのだから、その辺りは知っているだろう。

 

(……外に出られたのか)

 彼──7年生のオミニス・ゴーントが描かれた絵は、第一の試練の部屋にあったものだ。隠された部屋からでも他の肖像画に移動できるものらしい。

 

『失礼』と断りを入れて、その人物は一つの額縁の中にすべり込んできた。まるで壁の向こう側の通路を通ってべつの窓から顔を(のぞ)かせたみたいに。

「あー……、どうも」

 どう返事したものか決めかねたセブルスは、ひとまずそれだけ答えた。

 連れ立っているトーマスには試練のことも隠し部屋のことも隠しておきたい。マルフォイに密告されるのは避けたいからだ。

 

 当の本人は怪しいものを見るような目で肖像画をながめていた。

「知り合い?」

「一応。……先に行ってくれるわけには?」

 トーマスが肩をすくめて、その茶色っぽい髪が揺れた。

「無理だね」

 見張りをしていなかったことがバレると何かしらまずいのだろう。

 オミニスの方もやむを得ないと判断したのか、そのままで話し始めた。

 

『実はぼくの肖像画が切り裂かれてね』

 セブルスはぎょっとして、思わずトーマスと目を見合わせた。

 絵が切り裂かれるというのは、当人にとっては生き物の身体に手をかけたのと似たようなものだ。あるいは住処を追われる感覚だろうか。

 人間の見た目をした相手を切り裂けるなんて、かなりの危険人物だろう。

 

「その絵って」

『ああ。君たちに初めて会った時の絵だよ。わかるだろう?』

 つまり第一の試練の時の部屋、そこに掛けられていた肖像画だ。

 同じチーム4人の顔を思い浮かべたが、あれをわざわざ裂くような子はいないはずだ。

 

『急いで逃げてきたけど、しばらくは戻れないだろうな』

「……誰が?」

『僕にもわからない。何人かのチームだったけど、着ていたのは緑色のローブだったから。呪文を使った生徒は声変わりしていたから、高学年の男子だとは思う』

 つまり、4人の誰かではないらしい。

 

 ならば別チームで第一の試練に合格した生徒がいたということになる。

 合格条件を考えればその中にグリフィンドール生がまじっているのは明らかだ。高学年のスリザリン生のなかにもそういう"はみ出し者"がいるというのだろうか。

 試練にのぞむ競争相手が増えたこと自体は大したことじゃない。

 問題なのは、そんな危険なチームに先生にも見つからない拠点を与えてしまうかもしれないことだった。

 

 オミニスからはもう少し詳しく状況を聞き出さなくてはいけない。

 彼もどうやら同じ意見のようで、真面目な顔でうなずいて見せた。

 

『詳しい話は後にしよう。何とかして小さな絵を用意できないか?』

 つまり『目立たないように小さい絵に移動するので、そこで話そう』という意味だろう。

 1年生に無理難題を言うものだ。それでもやらないと重要な情報が得られない。

 何とかするしかなかった。

 

 セブルスはとげとげしさを隠すつもりが一切ない態度で応じた。

「……考えてみる」

 

 

 

 

 

 

「絵の切り裂き事件ねェ……」

 トランプをシャッフルしながら、同室の住人はそう答えた。

 あまり隠す必要もない。どうせトーマスにはオミニスの言葉を聞かれているし、残りの2人はマルフォイともブラックとも関わりたくないグループにいるからだ。

 

 オミニスの絵の在りかがバレさえしなければいい。肖像画なんてあちこちに掲げられていて中身だって移動し放題だ。よっぽど社交的だったり目立つ絵じゃない限りは『ここにあの人がいる』なんて覚えていない。

 トーマスも『あの肖像画とどこで知り合ったの』なんて一切きいてこなかった。

 

「かなり危険な上級生だ、きっと。心当たりはないか?」

 セブルスの問いに穏健派2人はそろって首を横に振った。

「だったらさあ、談話室の絵にこっそり入って犯人を捜してもらったら?」

「談話室に絵なんてほとんど無いじゃないか」

 悪くないアイデアだが、すぐ犯人に見つかってしまうのではないだろうか。

 

「──ねえ、ぼくには犯人の心当たりを訊かないわけ?」

 トーマスは不服そうに目を細めていた。

「『ない』しか言わないじゃないか。本当はあっても」

 トーマスに心当たりがあるとすればマルフォイ関係者だろう。確かにやってそうだが、他者に密告したと知られればトーマスが報復されてしまう。

 

「わからないよ。『ある』って言うかも」

「お前に『ある』って明かされた方が怖い」

 仲間に抱き込まれたようなものだからだ。セブルスが先生なんかに密告したら、報復を受けるのはセブルスになってしまう。

「ぼくだってそんなのの仲間だと思われたくないのに」

 だからってトーマスはマルフォイに逆らうことなんて出来やしないのだ。マルフォイのグループからはじき出されたらブラックのグループはおろか、穏健派の方からもお断りされてしまう。

 

 トーマスが肩を落として、自分の方にまわってきたカードの束を手に取った。

 トランプはきっかり4等分されて、セブルスは自分の方に配られたひと塊を手に取った。

 4人は寝室のなかで誰も使っていないベッドに輪になっていた。本来5人部屋だったので天蓋付きのベッドが1台余っていたのである。

 

 魔法界のトランプは馴染みのものとルールが違っていてセブルスには飲み込みにくい。途中で絵柄が変わってしまったりボイコットされて数字が減ってしまったり。ジャッククイーンキングはへそを曲げると出て行ってしまう。

 なので以前『カードゲームをやったことがあまりない』ということにしたら、なんの仕掛けもない(要するにマグル基準の)トランプを使うことになったのだ。

 セブルスがマグル育ちだということは薄々気づかれているのかもしれない。

「何をやる?」

「ページワン」

 簡単なゲームだ。それぞれが決まった絵柄のカードを出し合い、一番高い数字だった人が次に出す絵柄を決められる、というのを繰り返す。それで手札がなくなった人が勝ちだ。

 

「次はハートだ。……あがり」「ハートのQ(クイーン)。次もハートで、ぼくもあがり!」

 2人が勝ち抜けて、残ったのはセブルスとトーマスだ。 

 何度か繰り返していると、どうもこの形になることが多い気がする。

(……出す絵柄を融通し合ってるんじゃないか?)

 穏健派2人は、自分たちの有利に進めるようにお互いの持っている絵柄を選んでいるんじゃないだろうか。

 

 次のゲームで、不意に片方が「またスペード?」と文句を言った。つまり『それ以外の絵柄にしてほしい』と要求している。

 トーマスが横からすかさず「クラブかダイヤが欲しいんだけどなー、ぼく」と差しはさんだ。

 これは駆け引きだ。トーマスが本当にクラブやダイヤが欲しいのかもしれないし、それとも話題に一切出ていないハートにしたいのを隠しているかもしれない。

 相手は少し判断に迷ったように手をさまよわせてから、次のカードを切った。

「敵のリクエストに誰が応えてやるんだよ」と言って。

 果たして、出てきたのはハートであった。

 セブルスにとってもハートは減らしたい絵柄だった。今のうちに主導権を握っておきたい。

 

「……パス」

 それから2周程度で出せるカードが尽きたのか、トーマスがそう言った。

(……変わってすぐになくなった?)

 ハートに誘導して手持ちのカードを消費したかったが枚数自体は多くなかった。──それだけにも見える。

 それともクラブかダイヤが欲しいというのが本心だったのかも。

 あるいは。

 

(塩を送ってきた……とか)

 セブルスの手持ちにハートが多かったのを察していたのか。自分が出したカードを思い返すと、確かにダイヤ以外が少なかったのは目に見えていたかもしれない。

 そっとトーマスの方に視線を送ると、彼は片方の口の端だけを上げてみせた。

 意味深だが、それが協力を意味しているのかまではわからない。

 

 セブルスはそのままゲームの模様を観察した。

 時折揺さぶるようにトーマスが口を添えている中、残り2人は片方の要求に逆らうような絵柄は出していない。トーマスの茶々には平気で逆らっているのにだ。

 勝つために手段をえらばないのは結構だが、『この4人の友情(?)はずいぶんと殺伐としているな』とセブルスは思った。もっとも、ジェームズ・シリウス・自分の3つ巴の場合は全員が他2人を出し抜こうとするので、やっぱり殺伐としているのである。

 

「──ねえ、ぼくのクラブが全然減らないんだけど、誰か持ってたりしない?」

 だったらこっちも協力するまでだ。

 バラバラで2人に挑むより、2対2に持ち込んだ方が勝ちは拾いやすい。

「さぞかし強いカードを持っているんだろうな?」

 セブルスが自分のハートのK(キング)を出して、次のカードをクラブにした。

 

「おい、卑怯だぞ」

「(お前が言うな、とセブルスは思った)まさか。たまたまクラブにしたかっただけだとも」

「わざとくさいよ!何そのしゃべり方」

 しらばっくれるセブルスに対して、トーマスも得意そうに「ふふふ」と笑った。

「あとできみのリクエストを聞いてあげよう。……ぼくが負けないカードならね」

「負けるカードだったらどうするのさ?」

「どうかなー。勝負の世界は非情だからね」

「ハートで1枚だけの強いカードをわざわざやったのに?」

「きみが?『わざわざ』ぼくのために??それは絶対うそだろ」

 

 そうやってなんとなく4人の間に和やかな雰囲気が広まった頃、トーマスは自分の手札を睨みながら話題を変えた。

「ぼくは切り裂き事件については知らないけど」

 ぎくりとしたが、セブルスは手札に集中するふりをして平静な顔をたもった。

 何を言い出すつもりなんだろう。

 それとも、聞き出したいのか?

 

 トーマスはこちらを見るようなことはせずに、手札に目を落としたままだった。

「……けど?」

「よその寮の生徒がうろついてるのと何か関係があるんじゃないの」

 セブルスが黙っていると、1人がその話題に乗った。

「それはあれだろ、大広間のタペストリーの件」

 するともう1人も加わる。

「あれ、内容からして全部の寮の生徒が協力しないとダメっぽいよねえ〜」

「協力し合うだけじゃダメなんじゃねェの?弱みを握られてるグリフィンドール生だっていそうじゃん」

「家族で別々の寮とかならいけるんじゃないの?」

 3人がめいめいに口にした意見は核心にちかいものばかりだ。セブルスは当然とぼけて見せるが、それっぽい事を発言しておかなくては不自然に見えてしまう。

 

 なんとか3人の話に付け加えた。

「家族とか親戚で分かれるにしても、スリザリンとグリフィンドールにはならないんじゃないか」

 不審に思われている気配はない。

「言えてる。敵対しなさそうな寮を希望するんじゃない?みんな」

「決めるのは帽子じゃないか。"間違って"自分だけがスリザリンに入ったら、きょうだいが別の寮にいるなんて正直に言わないって」

 

(それだけじゃ試練に合格はできない)

 4人以上のチームというのも重要なポイントなのだ。

 自分だけが知っているという事に喜色を浮かべてやりたかったが、セブルスは何とか唇にちからを込めて我慢した。

 スリザリン生の誰かに知られて一番危険なのはセブルスだからだ。

 

 オミニスの話だと第一の試練は「そのチームの全員がお互いを友だちと思っていなくてはいけない」はずだ。メンバーの一人とグルフィンドール生が友だちや縁者というだけでは突破できない。そうでなければもっと合格者が出ているはずだ。

 つまり、同じく合格者である"絵を切り裂いた犯人"は、"友愛"をもっているグループということになる。

 

 トーマスは自分の手札を場に出しながら、セブルスに視線を向けた。

「シリウス・ブラックはどうなの?あちこちをうろついてるって噂だけど」

「どうって……」

 やっぱりこいつは『何か聞き出して来い』とでもマルフォイに命じられているんだろうか。

 

 何が訊きたいのかは(わか)っている。つまり『シリウス・クラリス・セブルス』の3人なら協力できてるんじゃないのか、何か知っているんじゃないか、そういうことだ。

 トーマスがスリザリン生のなかでは性格が悪くない方だとは思うが、秘密を打ち明けるわけにはいかない。

 マルフォイがADA(闇の魔術を研究するグループ)と関わっている可能性だってある。何もしゃべるわけにはいかなかった。

 

 セブルスは手札や駆け引きにまで頭がまわらず、手持ちのなかで一番大きな数字のカードを出した。スペードのK(キング)。

「──ぼくらにはレイブンクローの友だちなんていないぞ。わかるわけない」

 こう言えば疑いは晴れるだろう。スリザリンの3人は『各寮から1人ずつ組まないといけない』と誤解しているからだ。知り合いならば闇の魔術が好きなティプトフトがいるが、シリウスとはつるんでいない。

 

(本当は第三の試練まで合格してるけど)

 顔には出さないが自慢である。

 

「……それもそうだな」

「でもそれじゃあ、どうしてブラックはスリザリン寮にまで来たのさ?」

 トーマスの方はそれでも食い下がった。

(見られていたんだったか?)

 記憶があいまいだったが、そういえばトーマスが居た時があった気がする。

 

 セブルスは適当に納得してもらえそうな返事をした。

「あいつも、みんなと同じように何かあると思ったんじゃないか?」

「だからって()()()()()()()()?」

 聞き間違いかと思った。

 

「……『2回』?1回だけしか知らないけど」

 入ったのは()()()()()()()1回きりだったはずだ。

 

()()()()()()()来たときは大変だったでしょ。ほら、監督生が大々的に呼びかけてて」

 残りの2人までもが「ああ、あの時の」と心当たりありげにしていて、セブルスは慌てて自分の頭のなかを引っかきまわすようにして記憶をさぐった。

 

 ──確かに、クリスマス前に5人が揃った時があった。クラリスとリリーがADAについて探りに来て罠にかかった。なるほど、言われてみれば確かに2回入っている。

 確かクリスマス前(1回目)は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「2回目は……なにか証拠があるわけじゃないけど、シリウス・ブラックなんじゃないかって噂」

「いつの話なんだ」

「イースター休暇前だよ」

 その2回で間違いはないようだった。

 トーマスがそう言うということは、マルフォイにもそう思われているんじゃないだろうか。もしかしたら、セブルスを見張っていたトーマスが真っ先にシリウスだと気づいて、マルフォイに報告したことだって考えられる。

 セブルスは『すぐにみんなに相談しよう』と考えながら、素知らぬ顔をくずさなかった。

 

「──あがり!」「こっちもだ」

 胸にわだかまる重いしこりのような不安感をよそに、また穏健派2人が勝ち抜けをした。

 ゲームよりも別のことに気を取られたせいだ。

 セブルスはむっつりと黙り込んだままで最後までゲームを続けたものの、トーマスにも負けてしまった。

(こいつはマルフォイの手下だから仕方ない)

 セブルスがため息をついてカードをまとめると、次のゲームを言い出す子はいなかった。

 

「ちょっとトイレ行ってくる」

 1人が抜け、それでゲームはお開きだ。

「あの……」

 トーマスは眉を下げて何か言いたげにセブルスの方を見たが、何か話しかけるよりも先に寝室のドアがたたかれた。ドアの上部にはめこまれたすりガラスから判断するに、高学年のようだ。

 

 思わず何か放り投げっぱなしのものが室内にないか確認してしまう。上級生の検査や注意なんて受けたくないからだ。

 しかもドアを開けて現れた上級生は、フードを常にかぶっている怪しい生徒──マルフォイの部下である。

「今少し時間はとれるかな。……君だけでいい」

 指名を受けたトーマスは少しだけ抵抗するそぶりを見せた。

「ええと……、あー、急ぎですか?」

「上位者を待たせるほど重要な用事があるのかな?」

「わかりました」

 上級生にそこまで言われてなお突っぱねるのは難しい。しかも"上位者"ときたものだ。

 

(マルフォイか、その取り巻きか……)

 出ていく小柄なうしろ姿に、セブルスは鋭くした目を向けていた。

 

 

 

 

 

 

RTAパートは本編と活動報告、どっちが好き?

  • 【活動報告】にあげて欲しい
  • 【本編】にあげて欲しい
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