シャンフロのシリアスもギャグも全部入れちゃえ二次創作集 作:しゅう@ハーメルン
段々と、空の青さが薄らぼんやりとしてきて、湿気という言葉を半年ぶりに聞くようになってきた、そんな春のころ。
登校の道すがら、今日は◯時にシャンフロログインかな、とか、昨日は雑ピが国語の小テストでなんと二位に陥落してさ、とか、そんな他愛もない話を二人でしていたら。
「そういえば玲さんって、何がきっかけでゲーム始めたの?」
楽郎くんから、唐突な質問がふってきた。
「…………え?」
さっきまでずっと聞き手側に回っていたから、彼に話しかける心の準備をしていなくて、私は一瞬フリーズしてしまう。
もう、彼との登校も数か月続けているけれど、私は未だに彼と会話をするのに慣れていなかった。
だけど、楽郎くんはそれを質問内容に疑問を持たれたのだ、と勘違いしたらしい。
いや、別にくだらないことなんだけど、と前置きをしてから、言葉を一つ一つ探すように話し始めた。
「なんていうか……玲さんって、その、イメージだともっと真面目というか……いや、今が真面目じゃないわけじゃないんだけど、まさに令嬢! って感じの、厳しそうな人だと思ってたからさ。まさか廃じ……あそこまでゲームやりこむタイプだとは思わなくて。まあ、俺の勝手な偏見だってんならアレなんだけど、どういうきっかけで、ゲームを始めたのかな、と」
ほんと、ちょっと気になっただけなんだけど、と、楽郎くんは付け足して、少し焦ったように手を振っている。
それは、彼にしては割と珍しい、照れたような慌てたような、そんな不思議な表情で。私はいつでも思い出せるようにと網膜にしっかり焼き付けて、脳内の楽郎くんフォルダに綴じておいた。
とはいえ、私はこの質問に少し困ってしまう。
まさか、あなたに憧れたからです、なんて正直にいうわけにはいかないし────
ここは、適当に誤魔化してしまおうか、とも思った。
彼が真剣にその理由を知りたがっているわけでは無いのは明らかだったし、人の過去に無理矢理に踏み込んでくる人じゃ無いことも知っていたから。まあ色々あって、とか何とか言えば、多分すぐに話題は流れるだろう。
そう、だから、誤魔化しても、いいのだけれど────
「……最初は、ただ、不思議だったからなんです」
なんとなく、今日は、そうしてはいけない気がして。
一歩、踏み出す勇気を持てた。
「昔の私は、実際楽郎くんが言う通り、もっと厳格な冷たい人でした。今思い出すと恥ずかしいですけど、世界はなんてつまらないんだ、って本気で思ってる様なタイプだったんです。でも、ら────ある人が、毎日『ゲームができる』というだけで本当に楽しそうな顔をしてて。少し、羨ましくなって……」
「それで、自分も始めたらハマってしまった、と?」
「────……」
その問いを肯定していいのかわからなくて、私は少しだけ沈黙する。
私の始まりは、疑問。このつまらない世界で、なぜ貴方はそんなに楽しそうにしているのか、と興味を持ったから、私はゲームをし始めた。
その次に来たのは、下心。大好きな貴方に少しでも近づきたくて、もしかしたら話のタネになるかもしれない、なんて考えでプレイを続けた。
別に、どれもゲームそのものを目的としたものじゃ無い。寧ろ、典型的なゲームを手段と考えるタチの悪いプレイヤーだ。
────じゃあ、今は?
私は今も、楽郎くんのためだけにゲームしているのだろうか?
考える。
楽郎くんに追いつくためプレイした沢山のゲームと、そこで見た様々な物語のことを。
考える。
姉の言われるがままに努力を重ねた日々と、そこで得た達成感や様々な経験のことを。
考える。
こんな私でも「頼りにしてる」と言ってくれた黒狼や旅狼の仲間たちのことを。
────そして、気がつく。
私は、とっくに答えを得ていたのだということを。
私はバカな自分に少し笑って、それからずっと黙ったまま私に不思議そうな目線を送っている楽郎くんに、自信満々にこう答えた。
「はい。皆さんと────
そうだ。私は、今この日々がすごく楽しい。
自分のスタンスなんて関係ない。これを「ゲームが好き」と言わずして、他に何というのだろうか?
「…………!」
少し驚いた様に開かれた彼の口が、何とも愛おしい。
ええ、ええ。私だって、こ……告白とかは難しいですけど、これくらいは言えるんです。まあ、私の顔が明らかに赤くなっているのは、少し格好つかないけれど。
楽郎くんには普段から負けてばっかりでも、これは、今までの分を巻き返したと言ってもいいんじゃ無いでしょうか!?
精々が「一矢報いた」ってとこでしょ、と呆れる脳内の真奈さんからはそっと視線を逸らしつつ、私は誇らしげな気持ちで楽郎くんの顔を見た。
二人の間を抜けていくのは、暖かく穏やかな春の風。
新しく芽吹いた命を祝福するかの様に、青い空へと踊って登る。
もう直ぐ始まる新学年。
春は出会いと別れの季節というが、私たちの関係は、果たしてどうなるのだろうか。
期待と不安に胸を膨らませ、私たちは学校へ向かう。
まだ、半袖にするには少しばかり早い。そんな、日の少し低い春の朝だけど。多分、その日はそんなに先のことでは無いのだろう。
少し先の、小さく灯った淡紅色を見て、私はそんなことを思っていt────
「俺も、玲さんと一緒にゲームできて良かったよ。お陰で、最近すごく楽しいからさ」ニコッ
ウ"ッッッッッ(顔が良すぎる)(身に余る光栄)(幸福過剰摂取死)
まさかのギャグ落ち
なんかいい感じに終われそうだったのに……
ちなみにこのあとのヒロインちゃんは、午前中の授業の内容をほとんど覚えていないそうです