シャンフロのシリアスもギャグも全部入れちゃえ二次創作集 作:しゅう@ハーメルン
遙か高み、天空よりこちらを見下す飛竜の胸を、今無慈悲な刺突が貫いた。
その時点で飛竜の生命活動は停止し、そして落下。大きな地鳴りを伴いその体を地にやつした。
女、アーサー・ペンシルゴンはポリゴンとなって砕けた竜から降りると、そのままドロップした素材を手早く回収。そして二人の仲間に対して微笑みかけた。
「まあこんな感じでいいかなー、協力ありがとうね二人ともっ」
「はははペンシルゴン、選択肢を潰してからやらせるのは『奴隷』って言うんだぞ」
「………もうなんでもいいから早く帰りたい」
素材集めのマラソンを終え、ぐったり木に座り込むオイカッツォ、サンラク。二人は、インベントリを腹黒い笑顔(幻覚)で見つめるペンシルゴンを冷たく見つめている。
どちらも「致命魂がー」とか「俺のアイテムがー」とか、今回の事への愚痴が止まらない。
「もー、五月蝿いなぁ君たちは。いっつもきみらの問題行動の後処理してるんだからたまには逆でもいいじゃない」
そんな二人を見てやれやれ顔でため息づいているペンシルゴン。
残り二人はその様子に微かに殺意を覚えるが、しかしこんなやつでも今は
そしてそれがわかっているのでペンシルゴンが嫌味を止めることはなかった。
そして死なない程度に殴られた。
「──────てことで、今回はこれで解散ね」
「おう、このマラソンはもう二度と手伝いたくないから呼ぶなよ鉛筆」
「俺もー」
「はいはい」
一通り罵詈雑言と貶し合いが終わり、そろそろ空気も緩くなってきた。
ペンシルゴンはポーションをがぶ飲みしながら、解散を告げる。
そろそろ時間は日を跨ぎかかっているので、残り二人も特にこの後することもない。故に反論もなくそのまま解散、ということになった。
が、すぐその場でログアウトできるわけでもなく、今はエムルも同行していないので、三人は最寄りの宿屋まで一緒に雑談することになる。
そこで最初に口を開いたのは、サンラクだった。
「てかさ、これ結局誰の為の素材集めだったわけ?」
なんてことない軽口に実はずっと気になっていたオイカッツォも加わり、二人の視線がペンシルゴンの方へと向く。
「ああ、言ってなかったねそういえば。別に何ってわけでもないんだけど──────
その言葉を聞いた瞬間に、残り二人は信じられないものを見たかのような顔をする。
そして、それは一瞬にして懐疑的なものに切り替わった。
「…………何企んでんだお前」
「なんかぶっ壊して欲しい物でもあるの?」
「こらこら、私が贈り物をすると何か計略をめぐらしてるみたいに考えるのやめよーか」
「え、じゃあ何のために?」
「………まあ、ちょっとね」
「絶対なんか裏あるヤツゥ!!」
やいのやいのと、いつまで経っても返答をはぐらかすペンシルゴンを煽り散らす外道二人。
とても鉛筆はウザがっているが、しかし誰もやめない。まあ日頃の行いである。
「あー!! もう、うるさいうるさい! 今回は本当にそーいうんじゃないの! どっちかというとリアル話題だから言わないだけー!」
と、しつこい追求に、ついにペンシルゴンが発狂した。
結果耳を塞ぎながら絶叫する天音永遠とかいう酷いシーンが生まれたが、それがまた妙に絵になっていたのは腹が立ったらしい。(カッツォ談)
だが、いくら何でもリアル側の話題を突っつくほど二人もMMO初心者ではないため、追求はここで切れる。
元々旅狼自体が詮索はしないクランである。外道鉛筆だけならともかく、サイガ-0にも迷惑がかかるかもしれないので、これ以上はやめておこうと判断したのだ。
よって、話題はまた別のことに変わる。
「そういえばさ、サイガ-0さんといえばサンラクに聞きたいことあるんだけど」
と、そう切り出したのはオイカッツォだった。
サンラクはそれに「どした?」と言って首を傾げる。(珍しく面のない顔のため表情が見えて少し新鮮だ)
「いや、この前実はあの人と組む機会があったんだけどさ」
「ふーん、ユニーク自発できないマンがユニークだらけのサイガさんと」
「……………うん、でさ。俺その時名前呼ぼうと思って、サイガ-
と、そこで大人しく聞いていたペンシルゴンが二人の会話に割って入った。
「え? カッツォくんおかしくない? 彼女確か名前は──────」
「そ。そしたら『サイガ-
「…………あー」
ここでサンラクは何となく彼が言いたいことがわかって気まずそうに目を逸らす。
しかしそれに気づかず、彼はそのまま次の言葉を紡いだ。
「間違えて気まずかったんだけどさ、そもそも何でこんなことになったかって考えたら─────お前が昔「レイ氏」って言ってたからだって思ったわけ。あれ、何でお前間違ったので呼んでたの?
そう言って眉を顰めるオイカッツォ。
どうも本当にわからないらしい。
だが、正直この理由を知らないのはこの場でカッツォだけであり、ペンシルゴンすらもその目を逸らしている。
言うべきかどうか、少し迷っているのだ。
が、とりあえずカッツォのことは信頼しているので、サンラクは隠すべきところは隠して言うことにした。
「いや、普通に呼び名っていうか……愛称ってやつ? なんかゼロさんだと言いにくかったから……相手からレイでいいですって提案してくれたんだよ」
「ふーん、そんなもんか」
「そそ」
別に嘘はついていない。
当時は本当にそう思っていたし、その由来を話していないだけで相手方から提案したというのも全て真実だ。
しかし、これがサンラクにとっての悪手となってしまった。
「そっかー。じゃあ俺も今度から『レイさん』って呼ぶかなー」
「え」
「ん?」
オイカッツォの言葉に、サンラクは一瞬だけフリーズする。
勿論それは本当にごくわずかな時間であった。……が、当然長い付き合いの外道がそれを見逃すはずもない。なにやら隠し事があるらしいと思うと、すぐにそれを詰めてきた。
「いやほら、別にPN通り『ゼロさん』でもいいんじゃ──────」
「あれー? サンラクくぅん……何か、不都合があるのかなー?」
「俺がレイ呼びすることに何か意味ガァ?」
一瞬で詰めてきた外道どもの悪辣な顔を見て、即座に自らの過ちに気づくサンラク。
だが、時すでに遅し。もはや彼は逃れえぬ地獄にはまっていたのだ。
「おっ、いやっ、あ、なんか間違った名前で呼ぶのも失礼かもしれないし」
いつも以上にたじろぎながら彼は答える。
が、当然そんなガバ論理は二人の間には通らない。
「いやいや、それこそお前が前やってたことじゃん」
「なーんでカッツォくんはダメなわけー?」
「うっ」
図星をつかれ戸惑うサンラク。
既にある程度回っていなかった頭の動きがさらに鈍くなり、ただ慌てふためくことしかできなくなっていく。
そして、そこに追撃のチャンスありと見たペンシルゴンは、『呼び名』についてのある疑問を呈する。
「ていうかさ─────最近サンラクくんあの子のことずっと『サイガさん』って呼んでるよねぇ? 前みたいにレイ氏って呼ばなくなったのって……それに関係あったりする??」
「ばッ!!」
明確に、サンラクの慌てふためく様が表に出た。
声はうわずっているし、目も見開かれ、驚きを如実に表している。
「あれー???? 図星かなー???????」
一方オイカッツォはそれを知らないために察することはなかったが、そこに理由があることがわかり目を光らせた。
「はあ、黙ってるなんて水臭いなサンラク……なんでも相談してみなよ、友達じゃないか」
「そうそう! 例えば……
「いや……別になんもないって。俺が単純に呼ぶの飽きただけ────」
「目が泳いでますけど……」
「ねえねえ、もしかして最近ゼロちゃんのin率が上がってる理由も知ってたりする? ねえねえ」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!」
最早誤魔化しようのない段階まできている。
シャンフロシステムが陽務楽郎の脳内信号を読み取りそれを反映した結果、その顔は紅葉色に染まっているし、体にはわずかな発汗も見られる。
もはや返す言葉もなく─────というか鉛筆は絶対気がついて言ってるし─────サンラクは完全に沈黙して。
「ふ、フレに呼ばれたので部屋抜けますね!^ ^」
「あっ!」
サンラクが見えなくなり、取り残された二人。
「あー……くっそ、逃げられたかー。なんか手掛かり聞けるかと思ったんだけど」
「んー? まあそうだねー、あと少しだったんだけど」
「……え? もしかしてなんかわかったの?」
「え? いやーわかったけど………ちょーっと教えられないかなー?」
「うわー性格悪ー。いいじゃん別に教えてくれたって」
「ごめんねー。一応お姉さんとしても応援してあげたいからさー」
「?? 何言ってんの?」
「まあなんていうか……他の人に下呼ばれるの、サンラクくんも嫌なんだなーって」
「??????????」