シャンフロのシリアスもギャグも全部入れちゃえ二次創作集   作:しゅう@ハーメルン

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ウィンプちゃんカワイイヤッターな話。とにかく泣かせたかったただけ


誰が為に蛇は生く

 

 その日、彼女は気づいてしまった。

 今まで気にしてこなかった「ソレ」の、本当の意味に。

 今自分が「どこ」にいるのか、それがもたらす本当の恐怖に。

 

「そんな……そんな! ひどすぎるわ、やっぱりみんか、わたしをだましてたのね……」

 

 頬を一筋、涙が伝う。

 

 それは本来蛇に備わっていないはずの機能だが、「(ヒト)」である彼女にはそれが可能だった。

 

 その心情は推して知るべし。気づけなかった悔恨か、騙されていた絶望か、それとも純粋に、あるいはいつもの彼女のように、死に対する恐怖だったろうか。

 

 この世界で生態系の頂点に位置する、7つの最強種……無尽のゴルドゥニーネ。その八番目であるウィンプは、しかしその時、ただ膝をつくしかできなかった。

 

「まさか──────まさか、あんたたちが、蛇を食べるなんて!!!!」

 

 現在時刻は夜11時。場所は新大陸、海蛇の林檎店。数人の開拓者が宴会を繰り広げている最中、彼女は涙を浮かべて慟哭した。

 

 

 ◇

 

 

 時は遡ること数分前。

 着せ替え隊の面々は本日の健闘(ティーアス召喚会)を称え合っていた。

 しかも、今日はその召喚に成功し見事狙った服を着せることに成功したのだ。となると、彼らの宴会は更なる盛り上がりを見せるのは当然の流れで。

 

 ────そして、不用意な新人が「その酒」を取り出すのもまた、当然の流れだった。

 

「見てくださいよこれ、探せばあるもんですよね! ほら、やっぱり蛇の店で飲むってんなら、この酒しかないでしょ……マムシ酒!!!」

 

 瞬間、空気が凍ったことを、しかし哀れにもこの青年は察することができなかった。それさえできていれば、彼の未来は大きく変わったものになったろうに。

 

「いやーシャンフロにマムシ酒なんてあるのかとかそもそもこの世界マムシいないじゃんとかいろんな反対意見はありましたし実際NPCもいくら掛け合っても誰も相手にしてくれなかったんですけどね諦めきれずに何百もの蛇モンスター素材を使って試したんですよそしたら旧大陸の一部にしか出ないラミアが適合しましてねあの半分人間なとこが良かったんでしょうか味見してみたらもう完全に」

 

「おーい」

 

「あれ、なんですか皆さんそんな怖い顔して────……て、え、え、ちょちょちょサバさんそんなのでこられたら僕死んじゃ」

 

 その日、この街からレッドネームが一人消えた。合掌。

 

 ◇

 

「………で、どーしましょうかねこれ」

 

「どーしようかねぇ」

 

 サバイバアルは頭を掻いた。

 視線の先には一人の蛇の少女。蛮族、とか大嘘つき、とか、涙を流して罵倒語を繰り返すウィンプの姿があった。

 

「まあ正直俺的にはロリに罵られるのは全然構わな────げふんげふん。俺たちはロリを守ることが使命だ、あんなふうにいつまでも泣かせたままじゃいられないよな!」

 

 とってつけたようなイケメンの笑みを浮かべるサバイバアル。吐く言葉もどこかいつもより薄っぺらい。それは泣いている本人の手前だからなのか、それとも彼のギリギリの理性か、或いはただのカッコつけか、その[[rb:本性 > 性癖]]を明かすことはなんとか避けているようだ。

 なお、先程のPKKもウィンプの怯える原因だと彼は知らない。

 

「しっかしなあ、いまツチノコさん居ないから……あの子のカウンセリングとかできないスよ俺たち」

 

「ただの変態だもんな俺たち」

 

「いえす、ろりーた、のーたっち!」

 

 清々しく気持ち悪いことを言い放つ気持ち悪い男たち。しかし、これが彼らの本性なのだから仕方がない。この害悪PKどもは、残念ながら人殺しをやめてもなお世の中において害虫のままであった。

 なお、その様子を見て更にウィンプは泣いた。

 

「くっ、NPCから信頼をもらうには俺たちじゃカルマ値が高すぎる。いったいどうすれば────ん?」

 

 そんな混迷する状況の最中、頭を抱えるサバイバアルは、しかし、その店の奥にある人影を認めた。

 そう、あの衣装はまさしく、

 

「……うるさい。どうかした?」

 

「「「てぃ、ティーアス先生ェーー!!!!」」」

 

 世界最速にして最強のNPC、そして彼らの界隈におけるアイドル、ティーアスその人であった。

 因みに、本日のコーデは先ほど押しつけたマイクロビキニアーマー(ハブ酒の男の遺作)である。

 

 思わぬティーアスの参上に沸く店内。一部の変態は早速撮影を開始した。超越速(タキオン)により全員店の壁をとることになったが。

 

 だがその中で、サバイバアルは即座にこれをチャンスと捉え行動を開始していた。

 早速カルーアミルクを変態どもにかけるプレ……遊びに興じるティーアスに彼はそっと忍び寄る。

 

「ティーアス先生、じ、実は、ウィンプがかくかくしかじかで動かなくなってまして……」

 

「ふーん……蛇食が…………」

 

 そう、変態どもは使えない。ならば別の者に任せれば良い! しかもそれが同い年くらいならなおよし!!

 

 サバイバアルは歴然のロリコン故に、この手の時の対処法には詳しかった。

 なお、詳しくない頃に散々迷子の少女に声をかけては通報されていた経験から身につけた知恵であった。

 

「なるほど………つまりわたしの先輩としての腕の見せ所」

 

 事情を飲み込んだティーアスはすっくと立ち上がり、悠然とウィンプの元へと歩いていく。

 その様まさに不倒の壁(胸の話ではない)の如し。着せ替え隊の期待を背に、彼女は泣きじゃくる蛇娘の前に座り込んだ。

 

「な、なによあんた………」

 

 顔見知りの登場に、ウィンプの涙はわずかに収まる。嘘だ。単純に圧倒的強者を前にして恐怖が勝っただけで、むしろ目に溜まる水滴の量は増えている。

 

 しかしそんなことはお構いなしに、ティーアスは小さく笑って。

 

「だいじょうぶ、蛇はおいしくないから、誰もねらわない。わたしも昔食べた(・・・・・・・・)から知ってる」

 

「ぴえぇーーーーーー!!!!!」

 

 結果、ティーアスの努力は全くの逆効果であった。

 

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