まあ、相変わらず文章は書けませんけどね。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
お父さんのお父さんって、どんな人?
下の息子からそんな質問が飛び出したのは、ブウとの戦いを終えて、しばらくたったころだったか。
今までいなかった“お父さん”というものが突然出てきたからだろう、下の息子は悟空の他の親族にも興味を持ったのか、いろいろ聞いてきたのだ。(ラディッツのことを知らないが故だろう。上の息子はあれが完全にトラウマになってしまっているらしく、全く聞かれない)
悟空は知らない、と答えるしかなかった。悟空は頭を打って記憶にないし、サイヤ人たちの故郷、惑星ベジータはとっくの昔にフリーザによって滅ぼされていたのだから。
唯一の肉親と言っていい兄は、最悪な印象とぬぐい切れない恐怖を上の息子に植え付け、そのままサイヤ人襲来のトリガーを引いてきた。
あとはなし崩しに、フリーザとの戦いまで連戦連戦、また連戦だった。以前も記したが、兄が来たことで悟空の平穏な生活は崩れたといっていい。
もっとも、フリーザとの戦いがなかったら、出現した人造人間に蹂躙されてすべてが終わっていただろうが。
ともあれ、唯一の肉親と言っていい兄から受けた仕打ちは、悟空の中にあるサイヤ人という人種に対する印象(あるいは偏見)を固着させたといっていい。
おかげで、一時はサイヤ人名であるカカロットという名も忌み嫌っていたのだ。ベジータに呼ばれるのは、まあ悪くないと思えるまでに、だいぶ時間がかかりはした。
ベジータはたまに、サイヤ人についてぽろっということはあったが、もはや純血が二人しかいない滅びゆく種族について、大々的に語ることはなかったし、悟空も興味はなかった。
きっと、そのまま知らないままでいるだろうと思っていたのだ。たとえ、この2回目の世界であっても。
まさか、自分の実の母親と会うことになろうとは、思いもしなかった。
侵略の先兵としてではなく、フリーザから逃がすためだと、地球に送り込んだ真意も語ってくれた。それが嘘でないことは、己に抱き着いて泣き喚いた母の涙が証明してくれている。(今の悟空には読心が使えないが、そんなものなくてもわかる)
母は無邪気に語った。兄は強くて優しい人だ、と。
悟空の知る兄、ラディッツは残忍で冷酷な奴だった。あんな奴が兄だなんて信じたくなかったし、かなうなら一生知りたくなかった。
今、隣で寝息を立てている母が、そう遠くない未来で、自分が息子のために命をかけて、兄と殺し合うことになると知ったらどう思うだろう?
もし、悟空が同じ立場だったら?自分があの世にいる間に、何か不幸な行き違いが起こって、上の息子と下の息子が殺し合うことになったら?
何をおいても、悟空なら止めに行った。占いババに頼み込んで、二人とも殴って叱り飛ばしたに違いない。
そんなことになったら、嫁だって泣き出すだろう。いや、自分の前に嫁の方が激怒して、二人を止めようとするに違いない。
そんな思いを、悟空は未来で、母親に背負わせてしまうのだ。
止めたい、と悟空は思った。
それは、父としての生を歩んだ経験があったからこそ、出た望みだった。
兄のためではない。自分のことを思って泣いてくれた、この母のために。兄との殺し合いを止めたい。
そのためには、自分だけではだめだ。自覚しているが、悟空は口下手な方だ。兄を言葉で止めるならば、自分だけでは役不足だ。
兄もサイヤ人だから、結局最後は暴力沙汰になるかもしれない。それでも、引き留めるくさびは一つでもあった方がいい。
それに、と悟空は非常にずるくて打算的な思考を巡らせる。
もし、この先自分が修行や戦いで長期留守にしても、母がいれば嫁も多少気がまぎれるのではないか?と。(非常に気が早い考え方ではある)
以前も記したかもしれないが、7年のあの世滞在の間に、悟空はあの世の英傑たちや神々に、お前いい加減にしろよ、嫁さんをもっと大事にしろ、と怒られたのだ。
けれど、何度同じことが起こっても、その度に同じようにするだろう。その確信が悟空にある。母が己の代わりになるとはみじんも思わないが、多少の慰めにはなるかもしれない、と。
まあ、一番いいのは、戦いに無事に勝って生き残ることなのだが。もちろん、そうしていくつもりではある。
けれど、どうすれば母を引き留められるか。肝心なその説得方法が、悟空にはわからないのだ。
こういうのは、どうにも苦手だ。どうすればいいのだろう。
真っ暗闇をにらみながら、悟空は必死に思考を巡らせた。
夜が明けて朝が来る。
起きだした悟空とギネは、パオズ山の恐竜や怪魚をまた朝飯にした。
もう、あまり時間はない。そう判断した悟空は、一つの賭けに出ることにした。
「あのさ、母ちゃん。聞いてほしいことがあんだ。大事な話なんだ」
結論。悟空は自分の知ることを包み隠さず話すことを決めた。
占いババの館であれば、他のメンバーがいたのでおそらく邪神による言動制限が発揮されただろうが、ここにいるのは悟空とギネだけだ。
ギネにはすでに邪神による言動制限がかかっており、この制限は当事者同士では効果はないと、孫悟飯老が証明している。
つまり、悟空は自分が別の世界線とはいえ、未来から来たのでこの先で起こる出来事を知っている、兄とは確かに会うが、侵略活動の補佐を強要してきて、最終的に殺し合うことになることを伝えようと考えたのだ。
もし、これがだめなら、残念だが悟空にギネを引き留める手は存在しない。ドラゴンボールで無理やり蘇生させても、きっと怒られて埋めようのない溝を築いてしまうだろう。
たどたどしく、悟空は説明しだした。
自分は別の世界ですでに人生を終えている孫悟空であり、カカロットであること。(二人っきりの時はカカロットの名前が呼べる!とギネは大喜びだった。死んでしまっている本来の息子に関しても、落ち込まれはしたが、それでもお前も息子であることに変わりはない、とも言ってくれた)
例の邪神に頼まれて、この世界の自分に代わって強大な敵を倒すことを依頼されたこと。
人生一周している割に弱い、とギネから入ったツッコミに、力も封印されてしまったので、現在は鍛えなおし中であることも告げる。
そんな感じに概要は話せたのだが、魔人ブウやセル、フリーザと戦って倒すとか超サイヤ人という言葉は出せなかった。どうやら、ギネにかかっている言動制限と、自分にかかっている言動制限は微妙に違うらしい。
それでも、ギネは真面目に聞いてくれた。
さて、肝心なラディッツのことになるが、悟空は話せなかった。話そうとしたら、声が出なくなり、無理やり話そうとしたら舌を噛んで悶絶した。やはり、言動制限の範疇に入るらしい。
だが、ここでギネが察しの良さを発揮した。口下手な旦那を持つという彼女は、このタイミングで悟空が話を切り出してきたことと、自分がラディッツのことを話した時に悟空が妙な顔をしていたことを思い出し、関係があるのかと聞いてきたのだ。
悟空は大きくうなずいた。しゃべれなくても、それはできたのだ。
そこで、ギネは将来的に悟空とラディッツが何かもめ事を起こし、兄弟仲を破綻させるのでは?と推測までしてきてくれた。
すごいな、母ちゃん。ほとんど正解だ。
大きくうなずいた悟空に、ギネは難しげに考え込んでしまった。
止めたいけれど、地獄には仲間がいる、というのがやはり引っ掛かりになってしまっているのだろうか。
ふむ、と悟空も考える。
そういえば。
「なあ、父ちゃんはどうしてるんだ?やっぱり地獄にいるんか?」
仲間のことは口にしていたが、そこに夫のことは含まれてなかったと思いだした悟空が尋ねると、ギネは困ったように眉を下げてから答えた。
「それが・・・いないんだよ」
「いない?」
「トーマ達・・・あんたの父親の仲間たちは地獄にいたから、間違いなく地獄に来ると思ったんだけど、いないんだ。閻魔大王に訊いたところ、そもそも死んでないらしいんだよ」
「死んでない?父ちゃんが?」
まさか、フリーザと正面切って戦っていたというのに見逃された?いや、よしんばとどめを刺し損なわれても、おそらく惑星ベジータごとの破壊になる。サイヤ人は宇宙空間では生きていけない。確実に死んでいるだろう。
にもかかわらず、死んでいない?どういうことだ?
「心当たりはないかい?」
ギネの言葉に、悟空は首を横に振った。
前の世界のあの世滞在中では、パイクーハンとともに地獄を荒らす亡者(セルとかフリーザとか)たちを退治に行ったりもしていたが、父親らしき存在と絡むことはほとんどなかった。
ラディッツやナッパは遠目で見かけることはあったが、こちらを見るなり勝手にビビって逃げていったので話すことなどほとんどなかった。
それに、悟空は基本的に天国住まいだったので、地獄の亡者たちとのかかわりはほとんどなかった。悪人退治が終わったら即行で戻っていたので。
あの世をつかさどる閻魔大王が言うのであれば、確実に生きているのだろう。だが、悟空に心当たりはない。
「そうか・・・」
「・・・なあ、母ちゃん」
肩を落とすギネに、悟空は口を開いた。
「
「しぇんろん?ああ、昼間言ってたやつだね?」
「ああ。ドラゴンボールで呼び出した神様の龍だ。きっと父ちゃんがどこにいるか教えてくれるさ」
うなずいた悟空に、ギネは戸惑ったような表情をしている。
「カカロット・・・」
本音を言えば、悟空はギネに生き返ってほしかった。あの世に帰れば、ギネの魂は閻魔大王の元に戻り、その肉体は地獄の責め苦のためにあり続けるが、神龍による蘇生を受け付けなくなってしまう。
生き返るならば、現世に戻ってきている今しかない。
だが、仲間たちの声を振り切ってあの世に残ることを決意したことがある悟空は思うのだ。結局、決めるのはギネだ。
「だーいじょうぶだって!兄ちゃんのことは何とかすっから!」
あえて悟空は普段通りにからりと笑って見せた。
「それに、どこかで父ちゃんが生きてるなら、1年経ったら
そんな悟空を、ギネは複雑そうに見つめていた。
いずれにせよ、そういうことならばギネがいるうちにドラゴンボールを集めきった方がいい。
悟空の筋斗雲では遅いということで、ギネの背に乗った悟空は、猛スピードで占いババの宮殿に向かうことになった。
急な予定変更に占いババはぶつくさ言いながらも、了承してくれた。
ドラゴンボールのありか――200キロほど離れた人気のない道路を走る車の中にあるということを教えてくれ、続けて、ギネがこの世にいられるのはあと3時間ほどだとも告げる。
急ぎ悟空は動いた。筋斗雲を呼びだし、車のもとへ向かった。
車の乗員たちは、案の定ピラフ一味だった。この世界では初めて会うことになるのだが、言動自体は前の世界と大差なかった。
まして、この時点が初対面になるせいか、ピラフたちは悟空をなめきっており、カプセルでロボットを呼び出し、悟空が集めたドラゴンボールを渡すように迫ってきたのだ。
もちろん、悟空は拒否。逆にロボットを叩き壊し、ピラフたちの持っていた最後のボールを奪うことに成功した。
悟空のあまりの強さに、化け物小僧!と仰天して、ボールを置いて逃げていったのは余談である。
ちなみに、今度は尻尾が弱点と知られてなかったせいか、服は燃やされずに済んだ。
そうして、無事にドラゴンボールは7つそろったのだ。
占いババの宮殿、屋外武舞台の中心に並べられた7つのオレンジの珠が、金色に明滅する。
「出でよー!
悟空の叫びにこたえてオレンジ色の珠が金色に輝いた。夜でもないのに空が暗くなり、ドラゴンボールから光の柱が伸びる。
そうして、ペリドットから削り出されたような神の龍、神龍が降臨した。
「さあ、願いを言え。どんな願いでも一つだけかなえよう」
「これが、神龍かい・・・」
思わず気圧されるギネと、さすがに目を丸くする占いババをよそに、悟空はニッと笑って片手を上げた。
「オッス!神龍!いつも願いをかなえてくれてありがとうな!
でさあ、また頼みがあるんだ。
オラの父ちゃんがどこにいるか知らねえか?」
悟空に問いかけに、
「お前の父親はどこにもおらぬ」
「へ?」
「この世にもあの世にもそのようなものは存在せぬ。我にもわからぬ。願いは無効だ。
別の願いを言うがいい」
まさかの神龍から飛び出した言葉に、悟空は目を丸くした。
万能の神龍が、まさかのできない宣言・・・いや、それすなわち、神の力を超えた領域の話ということになる。
どうしよう。
悟空が困り果てた時だった。
「じゃあ、あたしを生き返らせてくれ!」
「たやすいことだ」
凛と叫んだギネの声に、厳かな声で言い渡す神龍。それにこたえるように、ギネの頭の上の光輪がふっと音もなく消える。
「母ちゃん・・・?!」
ぎょっとした悟空に、ギネはいたずらっぽくパチンとウィンクして見せた。
「あいつが生きてるかもしれないなら、この方が手っ取り早いよ。仲間たちには・・・またの機会に謝っておくよ」
そういったギネは、優しく微笑んでいる。
悟空は言葉に言い表せない喜びに胸が満ちたが、すぐに視線を神龍に戻した。
「サンキュー!神龍!
また、いっぱい願い事しちまうかもしれないけど、これからもよろしくな!」
「ありがとう!生き返らせてくれて!感謝するよ!」
「・・・」
手を振る悟空とギネを、神龍は静かに見降ろした。ややあって、彼は平時と変わらぬ厳かな調子で言った。
「願いはかなえてやった。では、さらばだ」
そう言うと、神龍は金色の光の塊に姿を変える。その中に7つの珠があることを、悟空の目は即座に見抜いた。
「
そうして、ドラゴンボールが四方八方に飛び散ると同時に大きく飛びあがった悟空は、四星球をキャッチした。
そうして、暗かった空が明るくなる。
「ドラゴンボールの一つを取ったのかい?」
「ああ。悟飯のじっちゃんの形見なんだ」
覗き込んできたギネに答えた悟空。もっとも、現在ドラゴンボールは単なる丸い石と化してしまっている。
「石ころになっちまってるよ?」
「ドラゴンボールは願いをかなえたら、1年は石になって使えなくなっちまうんだ。1年経ったら元のボールに戻るよ」
「へー」
悟空は四星球である石ころをしまいながら、改めて母親を見上げた。
「・・・ずっと考えてたんだ」
ポツリとギネは言った。
「生き返れるかもしれないって聞いてから、お前の兄のこと、父親のこと、トーマやセリパ・・・地獄にいるあいつらのことをね。
あたしだけ生き返っていいのかって。
それで、今朝、お前の話を聞いて決めたんだ。
もし、父親がどこにいるかわかったら、あたしは地獄に帰る。
でも、それでもわからなかったらこうしようって」
ここでギネはニッと笑っていった。
「今まで何もしてやれなかったからね。一つくらいはわがままを聞いてやりたいって思ったんだ」
「母ちゃん・・・!」
パッと表情を明るくする悟空に、ギネは優しく微笑んだ。
だが、ここで「ウオッホンッ!」という占いババのわざとらしい咳払いが入った。
「仲良しなのはよいが、そろそろわしの客が来る頃なんじゃがのう」
「あ!ごめんよ、ばあちゃん!」
「そっか。じゃあ、オラたちそろそろ行くな!またな!バイバーイ!」
そうして、二人は占いババの宮殿を離れた。
占いババの宮殿はウェストエリアに近いが、ぎりぎりサウスエリアにある砂漠地帯の一角にある。
乾いた道を歩きながら、二人は今後のことについて話した。
「そういえば・・・ゴクウ、あのハゲのじいちゃんに、世界中を旅して修行しろとか言われてたね。そのことかい?」
「ああ。亀仙人のじっちゃんは、オラに修行を付けてくれたんだ!
3年後には天下一武道会があるから、それに参加するつもりだしさあ」
「あの子が来るのは、当分先なんだね?」
ギネの問いかけ(頑張って悟空の方の名前を呼ぼうとしているらしい)に、悟空はうなずいた。
ラディッツのことも考えていかねばならないが、今は目の前のことだ。
前の世界におけるこの3年間、悟空は文字通り世界中を走り回り、ある時はサバイバルをして、ある時は天下一武道会にも参加していない武術の門戸をたたき、ある時は人里を荒らす怪物退治をして、鍛えたのだ。最終的には、パパイヤ島からしてほぼ地球の裏側となるヤッホイにまで行ってしまっていた。(そしてそこから走って泳いでパパイヤ島まで行った)
やり直しと言っていいこの二度目の世界においては、悟空は当初、前の世界ではいけなかった場所に行こうと思っていたのだ。気を探って、めぼしい達人にもあっておきたい。
仙豆もそのうちなくなるだろうからカリン塔に行く必要もあるし、天下一武道会の後にはピッコロ大魔王との戦いに突入するので、その前にチチの様子も見ておきたいし。予備がなくなった道着をあつらえる必要もある。
加えてもう一つ。悟空はふと思いついたことを口にした。
「あのさあ。母ちゃんはどうやって暮らしてくんだ?
地球の金、持ってねえだろ?
・・・言っとくけど、盗んだり奪ったりすんのはダメだからな!オラ怒るぞ!」
ギネは「しないよ!でも、そういえばそうだね・・・」と困った顔をした。
サイヤ人たちは食費が馬鹿にならない。加えて、暮らしていくとなると他にも住居や衣服など、物入りになってくる。
幼少であればそういったことに無頓着でいた悟空も、結婚からの家族生活で嫌というほどわからざるを得なかった。
「オラは、じっちゃんが残してくれた金がちょびっとあるだけだぞ」
「心配しなくていいよ、っ、ゴクウ!あたしはあたしで何とかするさ!」
ギネはにっこり笑ってドンっと胸をたたいて見せた。
「母ちゃんがいいなら、パオズ山の家を使ってもいいからさ!
じゃ、オラ、そろそろ行くな!」
「ちょっと待ちな!」
走りだそうとした悟空の肩をつかんで、ギネは真剣な顔で口を開いた。
「お前の家、どこにあるんだったかい?」
地球に来て間もないギネに、地理を把握しろというのは無茶であった。
そういうわけで、先にギネをパオズ山に届けたのち、改めて悟空は荷物を持って飛び出した。
亀仙人とクリリン・ヤムチャたちから少々後れを取ってしまったが、改めて修行開始だ!
みっちり3年、気合を入れて修行をしなければ。
何しろ、第22回天下一武道会の後は、ほぼノータイムでピッコロ大魔王とその手下との戦いが起こるのだから。(今度はクリリンは死なせない、と悟空はひそかに気合を入れていた)
さて、その後3年の悟空だが、前の世界ではいけなかった秘境じみた場所や達人たちを改めて尋ねたりして、鍛えなおしていた。
ヤッホイどころか、ユンザビット高地を訪ねて、そこでサバイバルもした。
ユンザビット高地は、かつて地球の神とピッコロ大魔王に分かたれる前の名もなきナメック星人が降り立った土地だ。
高地であるだけあって空気は薄く、短い草ばかりの荒野のようなありさまは、ナメック星を思い出させた。もっとも、確かナメック星は天変地異で、自然豊かな惑星から荒野然とした状態になってしまったのだったか。
そのユンザビットであった老人に、悟空は仰天した。姿こそ、人間のそれに擬態していたが、その気配を悟空は確かに覚えていた。
神様だ。
自らのルーツともいえる場所に侵入してきた悟空を珍しく思ったのか、あるいは瞑想でもしようと思ったのか、とにかく人間に化けた神は悟空にここで何をしているのか、と話しかけてきた。
悟空が武術の修行だと答えると、ならば自分と手合わせしないかと言ってきた。
願ってもない機会だ!悟空は喜んでお言葉に甘えることにした。
前の世界の自分よりも鍛えているし、1度死にかけたので瀕死パワーアップもあって強いと思うのだが、やはり神の方が強いらしい。いつぞやのシェンがヤムチャ相手にやったように、軽くいなされてしまう。
それでも、神は悟空を認めてくれたらしい。心も体も強くあろうとしている、空のように静かに、雷のように早くあろうとしている、そのまま精進あれ。と言ってくれた。
どこまで本心かは定かではないが、神とはそこで別れ、悟空もまたユンザビットを後にした。
あとは、ちょっとした町の工事現場で日雇いの仕事をして日銭を稼いで、道着も新調した。浅葱色の合わせと芥子色の脚衣に、桃色のリストガードと靴だ。少し身長が伸びたのか、ついに大事にとっておいた妻手縫いの道着が合わなくなってしまったのだ。けれど、捨てることはできなかったので、洗って丁寧にたたんでしまいこんだ。
さすがに、以前の野生児仕様の、トラの皮をそのままターザンのように着込むなんてことはしていない。
カリン塔に行って、仙豆の補充もやった。残りの仙豆も、食べてしまったのだ。
それともう一つ。西の都のカプセルコーポレーション、ブルマ宅を再び訪ね、満月に含まれるブルーツ波を遮断するゴーグルの作成を依頼した。それがあれば、満月の夜も大猿にならずに済む。いつぞやの天下一武道会のように、途中で試合を中断せずに済むようになるのだ。
何よそれ!ブルーツ波なんて聞いたこともないわよ!とプンスカ怒るブルマに代わって、ブリーフが興味を示して、引き受けてくれた。
なお、ブルーツ波なんてどこで聞いたんだ?という質問に、悟空は母親から聞いた、と答えた。母親にも尻尾はあったみたいだし、とブルマはひとまず納得したようだった。
実際のところは、ベジータとの最初の戦闘の際に、大猿に変身する前の彼がベラベラとしゃべってくれたので、それを断片的に覚えていただけだ。
もちろん、尻尾もその修行旅のさなかに生え、さらに鍛えていくことにもなった。
悟空がそうして修行を積んで、必要なことをやっている間に、ギネも地球での暮らしになじもうとしていた。
想定以上に地球の文明レベルが低い、フリーザ軍にあるような宇宙船はなく、どうやって暮らしていくか、という難題があったわけだ。
結局、ギネはパオズ山にそこそこ近い町の食堂で働かせてもらうことになった。
なお、フリーザ軍の戦闘服はとっても目立つので、ある程度で目立たない地球の服に着替えた。
そうして、第21回天下一武道会から3年後。エイジ752、5月7日。
パパイヤ島の武道寺前では、第22回天下一武道会の参加受付が始まっていた。
黒いスーツ姿の亀仙人と、ヤムチャとクリリンも青いスーツ姿で受付を済ませ、ブルマとウーロン、プーアル、そして今回はついてきたランチ(金髪モード)とウミガメがその付き添いをしている。(亀仙人はこっそり、ジャッキー・チュン名義の受付もした)
悟空のことを確認してみるが、まだ来ていないらしい。どうしたのだろうか?
戸惑う一同に声をかけてきたのは、鶴仙人とその弟子二人――天津飯と
弟子を引き連れて去っていく鶴仙人の背をヤな奴ら!とにらんでいると、聞き覚えのある声がした。
「あー、もう!何してるんだい、あの子は!さっさと来ないと受け付け終わっちゃうよ!」
ぶつくさと言っているのは女性だ。
肩で切りそろえた黒髪の童顔気味の女性は、若草色のパーカーに黒いシャツ、クリーム色のキュロットとスニーカーというボーイッシュな格好をして、紺色のナップサックを担いでいる。
なお、彼女は尻尾は出しており、腹部にベルトのように巻き付けている。
一同はその女性にすぐに気が付く。服装が違うのですぐには分からなかったが、見覚えがあったのだ。
「ギネさん?!」
「あ?誰だよ?」
「悟空のお母さんだ!頭の輪っかがなくなってる・・・生き返ったってことか!」
怪訝そうなランチに、ヤムチャが答える。
「あ!久しぶりだねえ!元気にしてたかい?!」
一同に気が付いたギネが親し気に声をかけてきた。
「やっぱり生き返ることにしたんですね」
「あの子に懇願されちゃってね。今まで一人にしてしまってたから、わがままくらい聞いてやりたいって思ってね。生き返らせてもらったんだ」
話しかけたクリリンに、ギネが笑って答えた。ラディッツ云々の事情は、言わない方がいいだろうと一度戻ってきた悟空と話し合い決めていたため、とりあえずそう言った。
「占いババさんのところで解散した後、空が暗くなった時があったわね。生き返ったのはその時になるのね・・・。
それでゴーグルも用意しろって言ったのね・・・」
独り言ちるブルマに代わって、鼻の下を伸ばした亀仙人がギネに話しかける。(サングラス越しの視線が、ふっくらした胸元、引き締まった腰、その健康的な白い足と順々に向けられていた)
「あ~、あんたも武道会に参加を?」
「いいや。あたしは今回見物だよ。子供の活躍をね」
「「「「え?!」」」」
首を振ったギネの言葉に、一同目を丸くした。
あんなに強いのに不参加?!
ここで、まもなく受付を締め切るというアナウンスが入る。
「悟空はどうしたんです?一緒じゃないんですか?」
「生き返らせてもらってからは、修行に行っちまって、それっきりなんだよ。
一週間ほど前にパオズ山に戻ってきたけど、すぐに出て行ってしまってね。
変に真面目なところがあるみたいでねえ、走って行ってしまったんだよ。間に合わないようなら構わずキントウンを使えとは言っておいたんだけど」
焦った様子のクリリンの問いかけに、不安げな表情をするギネ。
天下一武道会の参加受付は本人からのものしか受け付けていないのだ。
こうなったらプーアルに化けさせた代役で受付を済ませるか?などと言い始めたところで、浅葱色と芥子色の閃光が飛び込んできた。
「オッス、じゃない、こんにちは!武道会の参加受付をお願いします!」
「うおおっ?!いつの間に?!」
受付係がパイプ椅子ごとひっくり返りそうになったほど、気配はなけれど鮮やかに孫悟空は登場した。
浅葱色の合わせと芥子色の脚衣に、桃色のリストガードはもちろん、腰には革袋が二つ。一つは形見の四星球が入ったもので、もう一つにはここに来る直前にカリン塔でもらった仙豆が入ったものだ。
如意棒の収まった鞘と、着替えなどが入ったリュックは背に、茶色の尻尾を無造作にひらひらさせ、孫悟空は確かにそこにいた。
「オッス!みんな!元気だったか?」
ぎりぎりで受付を済ませた悟空は片手を上げて、改めて仲間たちに向き直った。
再会を喜び合い、背が伸びてると指摘されて、クリリンが自分だって伸びたのに、と悔しがる。
「お前、何してたんだい?」
「ああ。フライパン村にちょっと顔を出して、カリン塔で仙豆もらってきたんだ。
修行で、すっからかんだったからさあ」
ギネの問いかけにあっけらかんと言う悟空だが、他のメンバーたちはそれどころではない。
「フライパン村ってフライパン山のあったところにできた村だろ?確か、イーストに近いけど、ぎりぎりサウスエリアだったよな?」
「カリン塔はウェストエリアでもより西寄りじゃな・・・」
「パオズ山ってイーストエリアにあったはずだから・・・」
え?パオズ山からそこまで行って、さらにそこからパパイヤ島まで走って泳いで踏破したの?一週間で?
何考えてんだこいつ・・・。
目を点にして絶句する一同に、しかし悟空はけろっとしていた。
ともあれ、こうして無事受付を済ませた。武道会は翌日から開始となる。その日は亀仙人が用意してくれた宿で旧交を温めることとなった。
天下一武道会は、今年から参加選手の増員もあって、3年ごとの開催となったわけだが、その分予選内容もハードになることが予想された。
そこで、競武館で行われる予選のルールも変更。武器の使用・相手の殺害は禁止、場外・気絶・降参で決着するのは同じだが、1分の制限時間が廃止され、時間無制限。決着がつくまで続けることとなった。
悟空とクリリン、ヤムチャは亀仙人が用意してくれた山吹色に亀マークの付いた道着と青いリストガードに身を包んでいる。
なお、悟空はブルマから渡された、ブルーツ波遮断ゴーグルを首から下げている。ぱっと見は、赤みがかったレンズのパイロットゴーグルにしか見えない。これは外にいるギネにも渡されている。
黒い漢服に身を包んだジャッキー・チュンとも合流し、再会を喜ぶ。気が読める悟空には、ジャッキー・チュンこと武天老師がこっそり修業を積んだらしいことがすぐに分かった。できれば、リベンジと行きたいところだ。
競武館の中心で、武道寺責任者が開会あいさつをする中、悟空はギネが用意したサッカーボールほどの握り飯をバクバクとほおばっていた。
そうして、予選トーナメントを決めるためにくじ引きが始まった。
クリリンは2ブロック後半、悟空が1ブロック後半、ヤムチャは1ブロック前半で、ジャッキーが4ブロック後半と、見事にバラバラになった。
ヤムチャ、クリリンも相当修業を積んだのだろう、3年前と比べるとかなりの強さになっている。
と、そこに厭味ったらしい声をかけてくるものがいた。天津飯だ!
そうだ、彼も最初はこんな感じに嫌な奴だったなあ、と少しぼんやりする悟空に、クリリンが武天老師様のライバル、鶴仙人の弟子だと説明してくれた。
そうして、いよいよ悟空の番となった。
番号を呼ばれた悟空が競技台に上った。
軽く足を延ばす運動をしていると、相手の選手もまた競技台に上がる。
褐色の肌に癖のある黒髪と口ひげ、額にビンディ*1を付けており、袈裟のような修行装束をまとっている男だ。
向かい合った二人は、両手を合わせてお辞儀をして、手合わせ前の挨拶を行う。
「おやおや。ずいぶんかわいいお相手ですな」
余裕たっぷりに笑う男の顔を見た、野次馬を決め込む誰かがつぶやいた。
「お、おい、あれ、チャパ王じゃないのか?」
それを聞いたヤムチャははっとした顔をする。
怪訝そうにするクリリンに、ヤムチャは説明する。とにかくすさまじい達人で、以前出場した天下一武道会では対戦相手からただの一度もかすられもせずに優勝をさらったのだ、と。
そんなとんでもない相手が初戦の相手とは・・・!
戦慄する二人をよそに、審判が始めてください!と合図した。
「安心せい。殺したりはせんからな」
「サンキュー!」
言いながら競技台上の二人は身構える。
そこに、ジャッキーもやってきた。
「むう・・・チャパ王か・・・。
孫悟空も初戦からとんでもなく厄介な試合をしそうじゃのう」
難しげな顔をするジャッキーに、ヤムチャとクリリンは戦慄しながら、悟空に視線を移した。
「じゃあ、オラから行くぞ!」
宣言した悟空は、動いた。
次の瞬間その姿が掻き消え、急にチャパ王が多々良を踏んでのけぞる。その足が何かにとられたように滑ってこけたチャパ王は、間髪入れずにそのまま競技台から投げ出されていた。
そうして、競技台の上に、悟空が姿を現した。そのまま両手を合わせて、ぺこりと頭を下げる。
「あ・・・ええと、場外!28番の勝ち!」
一拍呆然とした審判は、ややあって我に返るようにそう言った。
「み、見えました?今の悟空の動き」
「な、何とかかろうじて」
顔をひきつらせたクリリンとヤムチャに、硬い表情のジャッキーが言った。
「最初にチャパ王にアッパーを決めてよろけさせ、バランスを崩したところに足払いをして完全に体勢を崩した。それと同時にその腕をつかんで投げ飛ばしたのじゃ」
得意技にして、代名詞たる八手拳――あまりの速さに腕が8つあるという拳法を出すこともできず、チャパ王は一方的に仕留められたのだ。
「いいのか?悟空。そんな最初から思い切り戦ってるとバテちゃうぞ」
「全然思いっきり戦ってねえよ。オラ手加減しねえとあの人死んじまうぞ」
クリリンの言葉に、悟空は笑って首を振って見せる。
「早く本戦でお前ぇたちみたいな強い奴と思いっきり戦ってみてえな!」
ワクワクしている様子の悟空に、他3名は笑顔をひきつらせた。
3年前の時点でとんでもなかった悟空が、さらにとんでもないのレベルを引き上げている。
ジャッキーに至っては、やばいかもしれない、と危機感を覚えていた。
さて、そんなジャッキーの試合だが、もちろんすさまじい勢いで、一同の見立てでは3年前よりも洗練されているとのことだった。
それを見たヤムチャは一言、「こりゃあ、すごい武道会になりそうだな、今回は・・・」とつぶやいた。
果たして、その言葉は現実になった。
集まった182名の強者たちは、予選トーナメントの進行に伴い、見る見るうちにその数を減らしていく。
そうして、4人は無事本戦進出を果たした。
わかっていたこととはいえ、この結果には見物人として居合わせているほかのメンバーは大喜びだった。
予選トーナメントの人数の増加と制限時間撤廃に伴い、予選は一日がかりとなってしまったため、本戦は翌日からのこととなる。
さて、武道寺本館に集められた本戦出場者において、早速鶴仙人の弟子たちが絡んできた。天津飯はヤムチャと嫌味の応酬をして、
ここで、前回から引き続きのアナウンサーの男が集合を呼び掛けてきた。
「おっす!」
「おや、今回も出場ですか。そういえば、以前は最後、急に飛び出していかれましたが・・・?」
「ああ。じっちゃんが死にそうだったから看取ってた」
「! それは・・・ご愁傷さまでした」
「いいよ。ちゃんと見送れたしな。今度もよろしくな!」
気まずげにするアナウンサーの男に、悟空は軽く笑っていった。
気を取り直したアナウンサーの男の言葉で、早速くじ引きを行い順番を決めるが、悟空は即座に気が付いた。このくじ引き、
前の世界では気が付かなかったが、きっと同じなのだろう。
誰に当たろうが、勝てばいい。そんな決意を胸に、悟空は静かにそれを見つめていた。
ともあれ。
無事、組み合わせは決まった。
なお、今回は朝からの試合になるので、悟空は食事の要求はしていない。代わりに泊まった宿の食堂スタッフが悲鳴を上げる羽目になっていた。
続く
※逆行悟空の特徴 その9
見た目は子供だけど、孫までいたおじいちゃんの経験があるので、子供を持つ親の気持ちが理解できる。
だから、自分個人は嫌いだけど、ギネのためにラディッツとのあれこれをどうにかしたいと思ってしまった。
でも口下手なので、結局口下手な旦那のいるギネの理解力に説得を助けられた。サイヤ人の妻たちはできる女。地球人妻含む。
本当はギネに生き返ってもらいたかったが、ギネが仲間のこと引け目にして旦那のこと心配していると察するや、その欲求は我慢することにした。実質自分のわがままで7年家族を放置したようなことをしたのでシンパシーを感じたのだが、自覚は薄い。
呼び出した神龍に念入りなお礼と言葉がけをしながら、父の行方を教えてほしいとお願いした。が、まさかの不能宣言に、え?神の領分超えてるの?と内心大困惑。
原作悟空が着た切り雀で山吹道着オンリーだったのに対し、山吹道着は基本的に武道会でしか身に着けず、修行旅などはGTから愛用している浅葱色の道着を着用。嫁の手縫いと同じデザインなので。
背が伸びたので、その道着も合わなくなった。捨てはせずにとっておくけど、ちょっとしょんぼり。新しい道着は働いたお金で自分で道着屋にお願いしました。
Q.バーダックさん、どこにいってるんです?
A.すでに何番煎じだと思うんで、彼の行方についてはノーコメントで。大方予想はできていると思います。
最初、バーダックさんもセットで生き返らせようとしたり、一緒に天下一武道会に出させようかとしたんですが、シナリオが半端なく崩壊しそうだったのと、地獄にいる彼を無理なく肉体付きで蘇生させられる理由付けができないので没になりました。
かといって地獄のままいさせるのもなあ、とこういうことになりました。
いつか続きも公開できたらいいですね。
私の文章が気に食わないなら読むのやめて自分で書けばいいんじゃないですかね?無料サイトの二次創作なんですから。お金取ってるわけでもない、趣味の文字書きで何で不快な思いをしなければならないのでしょうね?
・・・そう思えるようになる強い心が欲しいです。