ちょっぴり書けたので、続きをば。
私の文章に文句があるなら、読むのをやめて自分でもっといいものを書きましょうね。
さて、第1試合。ヤムチャVS天津飯である。
かなりの猛攻を繰り広げるが、ヤムチャが劣勢となっていた。そこで、ヤムチャはこっそり訓練していたらしいかめはめ波を披露するが、天津飯に跳ね返されてしまい、回避したところを奇襲され、武舞台にたたきつけられ気絶。そればかりか、天津飯が追い打ちで左足をへし折るという凶行に出る。
金髪のランチによって確保された最前席で見物していたブルマは悲鳴を上げ、慌ててプーアルが魔法のじゅうたんに変化して、ヤムチャを病院へ移送。ブルマがその付き添いとなるべく離脱。
悟空はかなりむっとしたが、我慢した。代わりに、武道寺に戻ってきた天津飯に声をかけた。「お前はオラが倒す。決勝で待ってるぞ」と。天津飯は小ばかにした一瞥を送ってきただけだ。
続けて、第2試合、男狼VSジャッキー・チュンである。
『チュン選手は前大会の優勝者であります!
対する男狼選手は、なんと満月を見ると狼から人間に変身するというややこしい体質の持ち主であります!』
向かい合う両選手。
ここで悟空はあれ?と不思議に思って首をかしげた。男狼は、前の世界ほど殺気立っていない。前の世界の時は、武器を持ち出してまでジャッキーを殺してやるという気迫に満ちていたのに、それがないのだ。
一拍考えた悟空は、思い至った。月の存在だ!
前の世界の男狼は、大猿となって暴れる悟空を鎮めるために、ジャッキー・チュンが満月を破壊した余波を受けてしまっていた。
狼男は満月になるとオオカミに変身するが、男狼はその逆で満月になると人間に変身する。人間になれず、かわいい女の子をナンパできない!と憤慨した彼はジャッキーを恨んで、本戦ではナイフを使ってまで襲おうとしたのだ。
だが、この世界では月は破壊されておらず、男狼は満月の夜に人間に変身できるままだ。だから、彼がジャッキーを恨む必要はない。出場したのは、たぶん純粋な賞金目当てだろう。
たぶん、それでだ。
『では、第2試合、始めてください!』
アナウンサーの声とともに、男狼が突進した。
だが、ジャッキーの前に軽々とあしらわれ、挙句観客席の女の子目当てによそ見される始末である。
拳法三十段の腕前とは言うが、そもそもレベルが違うのだ。
「どうやら、準決勝で俺とやり合うのは、あの爺のようだな・・・。
すさまじい達人だ・・・」
悟空たちがかじりつく塀とは反対側の塀から眺める鶴仙流の弟子たち二人のうち、天津飯がつぶやいた。
「あれだけでわかるか?」
「当然だ。動きでわかる。こりゃあ、ますますウキウキしてきたぜ」
「あいつらも舞空術を使えるんだな・・・」
「一応、舞空術って鶴仙流の技ってことになってっからなあ」
それをちらっと見やっていったクリリンに、悟空もうなずいた。
「ああ、本当は勝手に鶴仙流が流派に組み込んだってだけで、大昔からある技なんだっけ」
「母ちゃん、鶴仙流関係ねえけど使えるしなあ」
クリリンにうなずいて、悟空は遠い目をした。成人後は、むしろ使えて当然ぐらいになる。この3年間頑張ってみたが、まだまだへたくそのままだ。先は長い。
そうこうしているうちに、男狼はジャッキーに蹴飛ばされて、場外にされてしまった。
「チキショーっ!か、彼女へのプロポーズの資金がパアじゃねえか~!!」
などとわめきながら去っていく男狼の背は哀愁に満ちていた。
気を取り直したアナウンサーの男の紹介に合わせて、武舞台で対峙するのは、クリリンと
「がんばれよ!クリリン!」
「おう!」
悟空の声援にクリリンは笑みを返し、改めて対戦相手を見やった。
何を考えてるかさっぱりわからない、とクリリンは独り言ちた。こんなことなら、予選の時に
そうして、アナウンサーの開始の合図とともに、第3試合となるクリリンVS
「くそっ・・・ふわふわ飛びやがって・・・悟空もやってたけど、あれじゃあ場外は無理だな・・・こんなことなら、オレも飛び方を教わっておけばよかったな・・・」
悔しげにするクリリン。
『これは驚きました
自在に空に浮かぶことができます!3年前の孫悟空選手も空を飛んで場外負けを回避しましたが、同じ技でしょうかー!』
「驚け。攻撃してやるぞ」
言って、
「どどん波!」
言いながら、
そのまま
「やっぱし、どどん波を使うか・・・」
「やっぱし、どどん波じゃと?悟空よ、どういうことじゃ」
「3年前にオラがやっつけた殺し屋の桃白白ってやつも同じ技を使ってたんだ」
そばで聞いていたジャッキーに、うなずいて悟空が答えた。
「何だと?!」
ここで隣から大声が上がる。天津飯が駆け寄ってきて悟空をにらみつけながら問いただす。
「今何と言った?!」
「どどん波なら
「でたらめを言うな!」
「でたらめじゃねえ!死んではいねえけど、当分再起不能のはずだ!」
強く言った悟空に、「
「おぬし、本当に
「ああ。鶴仙人の弟なんだろ?結構苦労したぞ」
目を丸くして尋ねてきたジャッキーに悟空はうなずいて付け加えた。
「それも知っておったのか?!」
「ああ」
短くうなずいた悟空に、ジャッキーは驚きが隠せない。
ジャッキー・チュンこと亀仙人もまた知っているのだ。
いつ戦ったのか。おそらくは占いババの館での出来事の前と思われるが、確かに悟空ならばできるかもしれない。まして、直前までレッドリボン軍を相手にしていたのだ。連中が雇って差し向けてきたのかもしれない。
悟空は世間知らずなところが多々あるが、一方で思慮深いところもあり、亀仙人も知らないようなことをしれッと言ってきたりもする。まさか、悟空が
悟空は、塀にしがみつきなおしてクリリンを見ながら、天津飯の気が観客席の鶴仙人のところに向かっていることを感知した。
前の世界では、決勝戦で邪魔が入ったことを加味すれば、たぶん天津飯が鶴仙人に
そして、おそらくそれは、今回も。
悟空の予想通りに、客席に駆け付けた天津飯が鶴仙人に
それを見たジャッキーは思わず「いかん!にわか仕込みのかめはめ波では無理じゃ!」と叫んだ。
だが、ここでクリリンの機転の良さが発揮された。
ぼろぼろになった
双方、武舞台上に着地した。
ほっとした顔をしたジャッキー。もっとちゃんと教えたかめはめ波であれば、あれで決着がついていただろう。弟子を見やる老武道家の眼差しは、温かで誇りに満ちたものだ。
「いいぞ!クリリン!でも油断すんな!まだ相手は隠し玉を持ってるはずだ!」
塀にかじりついた悟空の声援を受けながら、クリリンは
だが、
「またおかしな術を使いおった!」
「超能力だ。たまにだが、いるんだ。体術は大したことねえけど、ああいう妙なことをやってくる奴らがさ。使い方次第じゃ、真っ向切って戦ってこられるよりよほど厄介だ」
ぎょっとしたジャッキーに、塀にかじりつく悟空が言った。
フリーザも超能力を心得ていたので、悟空も苦戦した。魔導士のバビディも、魔術でからめ手を使ってきて、実に厄介だった。ああいう連中も、世の中にはいるのだ。
だが、ここでクリリンがまたしても機転を利かせた。苦痛をこらえて計算問題を出すと、おバカな
超能力がなくなったクリリンが襲い掛かるが、また手をかざされて超能力の餌食にされてしまう。
お返しだと
かくして、第3試合はクリリンの勝利となった。
さて、第4試合。パンプットVS孫悟空である。
パンプットと呼ばれた男は、くせ毛にボクサースタイルの細身の男である。
アナウンサーの男に呼ばれてトンボを切りながら武舞台に登場した男は、二つの武道選手権で優勝したという実力保持者らしい。
「あいつ、そんなにすごい奴だったのか・・・」
「なるほど。どこかで聞いた名だと思ったら、噂の超天才格闘家というのは、あ奴のことか・・・」
クリリンが戦慄し、ジャッキーがはっとした顔をした。
観客席では「パンプット様ー!」「がんばってー!」などと横断幕が掲げられ、かわいらしい女の子たちが黄色い声を上げているのをよそに、アナウンサーの男に促されて悟空が入場した。
ここで、目立ちたがりなのか、パンプットがシャドウボクシングじみたパフォーマンスを披露して、塀の一部を破壊する。(観客席の応援団の黄色い歓声が一層熱を帯びる)
『せ、せっかく建て直したのに・・・』
しょんぼりするアナウンサーの男(去年も塀の一部が破壊されたので)に、悟空はひそかに苦笑した。
実はこの後、気功砲で武舞台そのものが吹き飛ばされるとは知らないだろう。なお、3年後には島そのものが更地になる。できれば両方阻止するべきなのだろうが。
ともあれ。
武舞台を降りたアナウンサーの男をよそに、悟空は手合わせの挨拶を行う。
「30秒。悪いけど30秒で勝たせてもらうよ」
それを返しもせずに、パンプットは余裕たっぷりに言った。
「ゴクウー!しっかりやりな!」
同じく観客席から飛ばされるギネの声援に、悟空は表情を緩めるが、すぐに引き締める。
『では!始めてください!』
アナウンサーの男の合図とともに、パンプットが踏み込む。猛スピードで悟空を殴り飛ばそうとしたが、そのまま崩れ落ちた。
急ぎ、アナウンサーの男が武舞台によじ登って確認する。パンプットは白目をむいて気絶していた。
『気絶・・・!孫選手の勝ち・・・!』
わっと観客席が盛り上がる(パンプットの応援団は悲鳴を上げていた)なか、ウーロンが「す、すげえ!」と目を丸くした。
「悟空のやつ、何をしやがったんだ?」
「相手のパンチを右手で払いのけて、カウンターで左の肘をたたき込んだんだね」
金髪のランチの問いかけに、ギネがしれっと説明した。ちなみに、前の世界の悟空は肘打ち3回で仕留めているが、今回の悟空は本当に一撃で仕留めている。
「け、けどよ、パンプットって相当な達人だぜ?オレも聞いたことがあるんだ。まさか一撃で倒すなんて思わないじゃんかよ!」
「んー・・・たぶん、地球人の一般的な人間の間では、ってことじゃないかい?
明らかにレベルが違いすぎるよ」
「けどよぉ、ヤムチャは天津飯にやられちまったし、クリリンもてこずってたぜ?」
「そりゃ、その相手も同じくらい強い連中だったからだよ。他の連中よりも、パンプットって奴は明らかに格下って感じだったよ。しょうがないね!」
口をはさんだウーロンにギネはそう言って、からりと笑った。
武舞台から悟空が引っ込んだところで、準決勝を行う前にインターバルをはさむ。ただし、ここで悟空から食事の要請が入り、武道寺の食堂がフル稼働することになった。
さて、インターバルが明けて、準決勝第5試合、天津飯VSジャッキー・チュンが始まる。
『さあ、これは面白い対決になってまいりました!
前大会優勝者であるジャッキー・チュン選手と、圧倒的な強さを見せる天津飯選手!
まさに注目の一戦であります!』
アナウンサーの男の実況をBGMに、ジャッキーと天津飯が武舞台に出てきた。
「お手並み、とくと拝見させてもらうぜ」
自信たっぷりという天津飯に対し、ジャッキーはコキコキと肩を鳴らしてから手合わせ前の挨拶を行った。
『それでは!始めてくださいっ!』
アナウンサーの男の合図が響き渡る。
「へへんっ!あの野郎、ジャッキーさんに勝てるわけないだろ!ヤムチャさんの仇だ!コテンパンに伸されてしまえ!」
「わからねえぞ。天津飯の強さはかなりのもんだ。どっちが勝ってもおかしくねえ。
気の大きさはほぼ互角・・・いや、天津飯の方が若干上か?持久戦に持ち込まれたら、不利なのはじっちゃんの方だ」
「そ、そんな・・・」
悟空の言葉に、クリリンは顔をこわばらせて武舞台の上を見やった。
一拍の沈黙ののち、仕掛けたのは天津飯だ。
そして始まる激しい体術の応酬。武舞台を縦横無尽に駆け抜けながら仕掛けられるそれに、観客たちは息を詰まらせた。
やがて、ジャッキーが新たに動く。
ジャッキーの姿が掻き消えた。どころか、天津飯の周囲にいくつもその姿が現れる。
「多重残像拳か!」
瞬時に天津飯はその技を看破した。そして、天津飯の3つ目は見逃さなかった。
蹴飛ばされ、武道寺の塀に激突するジャッキーは、本気になったらしい。漢服の上着を脱ぎ捨て、腕ごなしをして再び身構える。
天津飯の目にもとまらぬ腕の動きを看破して、その両手をつかみ取って封じる。そのまま蹴りを入れて蹴飛ばすが、天津飯は大して堪えた様子を見せない。
そればかりか、徐々に天津飯が押してきた。悟空の見立て通り、やはりスタミナが桁違いなのだろう。
ジャッキーの説得にも耳を貸さず、太陽拳で目をくらませてきた。
サングラスをしていたアナウンサー以外、見物していた全員が閃光に悲鳴を上げる。
否。
「じっちゃん!後ろだ!」
悟空の悲鳴は少し遅く、ジャッキーは後頭部に飛び膝蹴りを食らってしまった。
「悟空?!何があったんだ?!」
『これは凄い!
天津飯選手!強烈な閃光を放って目をくらませ、後頭部目がけて飛び膝蹴りーっ!
ジャッキー選手、たまらずダウン!
一応、カウントを取ります!ワン・・・ツー・・・スリー・・・』
クリリンの問いかけに、アナウンサーの男の実況が答える。
天津飯はこの先ジャッキーの目が覚めることはないと確信していた。
だが、うめきながらもジャッキーは立ち上がる。閃光の餌食になった者たちの視界が回復したのはこの時だった。
なおもジャッキーは説得を続ける。鶴仙人とは手を切れ。まっとうな道に立って、素晴らしい武道家となれ。
ここで、天津飯の顔色が変わった。鶴仙人の表情が変わっていることから、悟空は二人がジャッキーの正体を見抜いたことを察した。
ここで、天津飯が「面白いものを見せてやる」と言ってはなったのはかめはめ波だった。
気功波の類は、基礎さえできればいくらでも応用が利く。かめはめ波の場合は、ポーズと言葉が気の練り上げを無意識に補助してくれるので、放ちやすい。
悟空には大したことではなさそうに見えたが、その威力はぶっつけ本番で出したクリリンのそれをはるかに上回っていた。
ジャッキーが止めなければ、観客に被害が出ただろう。おそらく、天津飯はそれを計算に入れたうえで放っていた。
一度見たものはどんな技でもものにして見せる、と豪語する天津飯を見たジャッキーは、むしろ満足そうに見えた。
「こういう若者たちが現れるのを待っておったのじゃ。これでまたのんびり暮らせるわい」
そう言い残し、彼は武舞台から飛び降りた。
場外。それが、この激しい戦いの呆気ない幕切れだった。
驚く周囲をしり目に、ジャッキーは落としていた上着を拾って鼻歌交じりに武道寺から出ていく。上機嫌なつぶやきを一つ、残して。
「さ~て、どんな時代が来るかな?」
あっけにとられるクリリンをよそに、悟空は不敵な笑みをもってその背を見送った。
思いもよらぬ、激しい時代が到来する。その先陣に悟空は立つことになるけれど、他の者たちもそれに続いてくれることになる。
見ててくれよな、じっちゃん。
『では、引き続き、第6試合を始めます!
試合を行います選手は、何とどちらも亀仙人のお弟子さん、クリリン選手対孫悟空選手です!』
アナウンサーの男の実況に、クリリンははっとした。
そう。悟空とは、初めてまともに戦うことになるのだ。
悟空もまた感慨深かった。あの日、神龍とともに旅立つ前に、最後にやった手合わせ。また、クリリンと――無二の親友と手合わせができるのだ!
手は抜かない!全力でやり合おう!望むところだ!
そう言い合って、二人は拳を合わせると、武舞台に進み出た。
悟空は少し気を探ってみた。天津飯が亀仙人を追いかけているらしい。何事か話しているのだろうか?気は穏やかなので、たぶん話しているだけだ。前の世界でも問題が起こった様子はなかったのだ。問題はないはず。
いや、今は天津飯よりも、目の前のクリリンだ。集中しなければ。全力でやらないと、クリリンにも失礼だ。
『では、第6試合、始めてください!』
構え合ってにらみ合う。一拍ののち、激突した。
そのまま、激しい体術の応酬へと至る。蹴り合い、殴り合い、それを防ぎ、かわし合い。
それを見て、ギネは微笑ましそうに目元を緩めた。
長いこと一人にしてしまった息子は、確かにこの星になじんでいる。
悟空とクリリンのじゃれ合いは、観客席側からもよく見えた。気のすむようにやらせるべきだ。ギネはそう思う。
だが、やがて差が付き始めた。悟空の方がタフネスに秀でている。クリリンの攻撃を受けてもびくともせず、逆にクリリンが押され始める。
ついに息を切らし始めたクリリンに対し、悟空は余裕を崩さない。
飛び上がった悟空がかめはめ波の反動を利用した加速法で、クリリンに突貫。一時的にダウンさせるが、どうにかクリリンは復帰。口では反撃開始、などと言っているが、どう見ても強がりでしかない。
真正面から勝てないとクリリンは判断しただろう。となれば、次は搦手である。クリリンが放ったのはかめはめ波だった。
だが、悟空はそれを片手で弾き飛ばす。きちんと訓練したわけでもない、悟空のように実戦で使い込んだわけでもない、付け焼刃のそれは軽々と防げる。
だが、それは囮。そのすきにわきに回り込まれたクリリンは、悟空のしっぽをつかみ取ろうとした。
確かに尻尾をつかみ取った。彼はふさふさのそれをぞうきんを絞るように両手でめいいっぱい締め上げる。
クリリンは覚えていた。3年前の占いババの館での出来事を。尻尾は鍛えなければ弱点になるとギネが言っていたことを。当然悟空も尻尾は鍛えているだろうが、ありったけの力でつかまれたら、さすがに隙はできるはず!
ぎゃあっと悟空が悲鳴を上げて力なく倒れ伏したのを見て、クリリンは勝利を確信した。
だが、次の瞬間彼は吹っ飛んでいた。尻尾に弾き飛ばされたのだ。力いっぱい握りしめていたことが、かえって尻尾につかまれるような格好になってしまい、裏目に出てしまったのだ。
「ちゃんと鍛えているみたいだね。偉いよ。
一流の戦士は尻尾なんぞ克服してて当然、ってあいつも言ってたっけ」
ぽつりとつぶやくギネは、思い返す。不器用な夫は、それでも息子を案じていた。
兄のラディッツはどうしているだろうか?あの子は尻尾を鍛えるのを嫌がってさぼっていた。まさかそのままになんてしていないだろうか?
一方、武舞台に転がされて悲鳴を上げるクリリンに、悟空は容赦しなかった。
手は抜かない。思いっきりやる。その宣言通りに。
クリリンが立ち上がった時には、悟空はその目の前に迫っていた。
クリリンからしてみたら突然悟空が目の前に出現したように見えただろう。そのまま彼は武舞台から弾き飛ばされた。
『じょ、場外・・・孫選手の勝ちです・・・』
アナウンサーの男が半ば呆然としたように言った。
『これは何と呆気ない幕切れです・・・突然出現した孫選手にクリリン選手はびっくりして場外に落ちてしまいました』
「そんなわけないじゃないか」
『え?』
ギネがこぼした言葉に、思わずアナウンサーの男が振り返った。幸か不幸か、アナウンサーの男がいたのは、ギネとウーロンたちが陣取る観客席のすぐ前だったのだ。
『あ、あのー、何があったか、お分かりになったんですか?』
「間合いを詰めると同時に、手刀を3発。場外で済むぎりぎりの威力で調整して当てたんだね」
『手刀3発?!あの一瞬でですか?!』
「多分、もっと威力ある技とか、攻撃を追加できたかもしれないけど、オーバーキルになるから、それで済ませたってところかなあ」
驚愕するアナウンサーに、ギネは苦笑いする。
つまらない、最後は盛り上がりに欠けたなどと言っていた群衆はギネの解説に、マジかよ・・・などとザワザワしだした。
武舞台上では、悟空がクリリンを引っ張り上げて、じゃれ合っている。
それを見て、ギネは微笑ましそうに目を細めた。地球にあの子を送って、よかった。
アナウンサーの男は、悟空に休憩の必要を聞くが、大丈夫ということで、そのまま決勝に行くことになった。
「悟空!あいつなんかに、絶対負けるなよ!」
「ああ!」
衝立向こうに引っ込むクリリンに力強い頷きを返して、悟空は出てきた天津飯と向き合った。
アナウンサーの男の実況に、観衆の盛り上がりがクライマックスを迎える。
離れたところから、自らの杖の上でバランスを取りながら試合を見ていた亀仙人は、もっと近いところから!という欲求に、大急ぎで移動した。塀を飛び越え、武道寺側の塀の内側へ行ったのだ。
クリリンに注意されるが、亀仙人とて武道家の端くれ。固いことは言うな、と言いくるめて武舞台上に注目する。
武舞台上の悟空と天津飯はにらみ合う。一拍の沈黙。
『始め!』
アナウンサーの男の合図とともに、悟空が突っ込んだ。
しばらく体術の応酬をした後、飛び上がった天津飯の後を追って、悟空も跳びあがる。
ニイッという天津飯の嫌な笑みとともに放たれたのはどどん波。悟空はそれを気をまとった右手ではじくが、反動でやむなく着地。
まさか片手で弾かれるとは思ってなかったらしい天津飯が目を丸くする。そのまま彼は着地した。舞空術は体力を浪費するので、乱用するのはあまり得策とは言えないのだ。
悟空は軽く右手を振ってから確信した。
やはり、この時点の天津飯は自分を本気で殺しに来ている。ならば、自分も相応にやるとしよう。試合用の手加減なしで、本気の戦闘用で。
そう。これまで、悟空は気を意図的に抑え込んで戦っていたのだ。でなければ、相手を殺してしまうからだ。
次の瞬間、悟空は動いた。
猛烈なラッシュを天津飯にお見舞いしてよろめかせたところで、そのまま天津飯を蹴り上げる。
空中の天津飯に、かめはめ波ではなく単発の気弾を3発放つ。天津飯はそれを弾き飛ばすが、すべて弾いた時には悟空が目の前に迫っている。
パァンッとその両手が、3つ目の前で勢いよく打ち鳴らされた。3年前の大会でも多用した、気合砲猫だましだ。今回の大会は初使用となる。
3つ目ゆえによすぎる視力。気弾を弾くことに集中していた神経。そこに撃ち込まれた気合砲猫だましは、完璧と言っていい決まり具合だった。
たまらず天津飯は気を失い、バランスを崩す。そこに悟空は踵落としを決めて、そのまま地面に叩き落す。武舞台の端だ。ぎりぎり場外にはならない。
突っ伏す天津飯を前に、あわてて駆け付けた審判がカウントを取り出すが、悟空がその前に声をかける。
「立てよ!このくらいで参るほどやわじゃねえだろ!
まさか殺しにかかってきて、自分は大丈夫なんて馬鹿なこと考えてねえだろうな?」
「う・・・ぐう・・・!」
うめきながら、天津飯は何とか身を起こす。だが、大してダメージを受けた様子は見せず、口元には不敵な笑みすら浮かんでいる。
「ふ、ふふ・・・驚いたぜ。
貴様、まだこんな力を隠し持っていたとはな」
「お前ぇなら大丈夫そうだと思ってな」
身構えながら、悟空は言った。不謹慎ながら、口元に笑みが浮かぶ。
「強い奴と戦うとワクワクするな。さあ、お前ぇの力、もっとちゃんと見せてくれよ」
「あははっ!そうこなくちゃ!」
観客席のギネは、その言葉に満足そうに笑う。
強い奴との戦いを至上の喜びとする。実に、サイヤ人らしい。さすがは、自分とあの人の子供だ。それが喜ばしい。
「う、嬉しいぜ。お前のようなやつがいたなんてな・・・。
このオレがわくわくするなんてな・・・こんなことは初めてだぜ・・・!」
一方の天津飯も口元に笑みが浮かんでいた。不敵な笑みだ。今この時は、鶴仙人の命令も、桃白白の仇も、彼にとってはどうでもよかった。
「優勝は必ず、このオレ様がいただく!覚悟しろ!」
「そうはいかねえぞ!」
そうして、二人は再び激突する。
そのまま再び体術の応酬に出る。目にもとまらぬ拳と蹴りの応酬に、アナウンサーの男をはじめほとんどのものが置いてけぼりにされている。
均衡を崩したのは悟空だ。多重残像拳を放ち、天津飯の周囲にいくつもの残像を配置する。だが、それが通じないことはジャッキー・チュンとの戦いで既に立証されている。
天津飯は残像を見抜き、本物に攻撃しようとした。だが、それも残像。本物の悟空が攻撃しようとするが、天津飯が残像拳でさらに返して、今度こそ本体を攻撃しようとした。だが、それも残像だった。今度の今度こそ、悟空の攻撃が天津飯の脳天を穿った。
「すごいねえ・・・裏の裏の裏まで読み切ってる・・・」
感心した声を出すギネ。その直後、憤る天津飯が切り札を切った。太陽拳だ。
放たれた閃光が、再び周囲の者の目を焼き、悲鳴が上がる。
「お前の目はくらんだぞ!」
勝利を確信した天津飯はそのまま真正面から悟空に殴りかかった。
だが、その拳は軽く叩き落とされる。同時にみぞおちに強烈なフックが決められた。
「あがが・・・なんでやねん・・・」
たまらず天津飯はダウンする。
「油断しすぎだぞ、天津飯。目をつぶすってのは確かにいいけど、オラには通用しねえぞ」
カウントを取り始めるアナウンサーを横に、悟空は諭すように言った。
その両眼は固く閉ざされている。
「悟空!おぬし、見えておるのか?!」
「見えてねえよ、じっちゃん!見えなくても大丈夫なように修行を積んだんだよ!1週間目隠しで密林でサバイバルとかさあ」
サングラスのおかげで目が無事だった亀仙人の詰問に、悟空は振り向かずに苦笑気味に言った。
3年間の地球中を走り回る修行の合間に、それをやった。
最初は苦戦したが、そのうち慣れた。周囲の生き物の気を読んで、ちょっとした空気の流れを感じ取って、感覚を研ぎ澄ませた(鼻と耳にもそれなりに頼ったけれど)。おかげで、気を読むことに関しては、かなり上達したと自負している。
この辺りで、観衆の目も回復し、感心の声とともに天津飯が復帰した。同時に殴りかかった天津飯の一撃を、悟空は今度は目を開けて受け止める。
「くうっ・・・うかつだった・・・だが、次はこうはいかんぞ!」
「次があればな!」
そのまま二人は再び距離を取って殴り合おうと身構え。
悟空は眉をひそめ、ほんの少しだけ気を開放する。まとわりついた不快な感触が途端にはじけ飛ぶ。
悟空はそのまま天津飯と殴り合う。だが、明らかに動きが鈍くなっている。完全に身動きできなくなってはいないが、さばききることができず、掠ることが多くなってきているのだ。
「?」
「ぐうっ・・・まだまだぁ・・・!」
苦しげにしつつも懸命に拳を構える悟空の様子に、いよいよおかしいと思った天津飯は、怪訝に思い身動きを止め、次の瞬間勢いよく観客席の方を振り向いた。
≪何をしている!
≪ち、超能力が、効かなくて!≫
≪もっと力を籠めろ!窒息させる勢いでやれ!いいや、殺せ!試合などどうでもいい!殺すのだ!≫
その視線の先では、懸命に悟空に指先を向ける
二人のやり取りは念話で行われているので、はた目には静かにしているように見えただろう。だが、その殺気までは隠しきれてない。
悟空の様子と、鶴仙人たちの様子、
≪おやめください!まだ私の試合中です!≫
≪黙れ!そんなことはもうどうでもいい!≫
念話で割って入る天津飯に、鶴仙人が苛立たし気に言い返した。
「どうして天津飯を信じてやらねえんだよ!」
ここで悟空が叫んだ。ぎょっと鶴仙流3人が見てきた。
『はいぃ?!』
サングラスの奥で目を白黒させているだろうアナウンサーの男をよそに、悟空は続けた。
「試合の邪魔するなんて、天津飯が勝てねえって言ってるようなもんじゃねえか!
信じてねえってことだろ!こんなに強いってのに!」
叫ぶ悟空に対し、目を丸くする天津飯と
「あ・・・!」
それに対して、鶴仙人はみっともなく「うるさい!貴様に何がわかる!天!
いやいやという様子で、
「て、天さん、初めて、思いっきり闘ってる・・・ボク、ボクも、今度こそ天さんを信じて、最後まで試合を見たい・・・」
「
おずおずと口を開く
鶴仙人は相変わらず、怒気をみなぎらせて喚き散らした。
「何をしている!天!殺せ!亀仙流のものも!殺せ!殺してしまえ!」
「・・・できません」
「何だと!」
「殺せば、優勝できなくなる・・・オレはもう、殺し屋にはなりたくない・・・」
力なく葛藤しつつも、それでもはっきりと天津飯はその言葉を口にした。
それを見た悟空は、確信した。
今この瞬間、天津飯は、孫悟空がよく知る、あの誠実な青年武道家に転身したのだ。
「何だと?!ここまで育てた恩を・・・!誰のおかげで達人になれたと思っているのだ!」
青筋を立てる鶴仙人は、業を煮やして
「この、役立たずめっ!こうなれば皆殺しにしてくれるわ!」
「
「ヒッ!」
立てた人差し指で、ゼロ距離からのどどん波を放とうとした鶴仙人に、天津飯が悲鳴を上げ、
「波ぁぁぁぁっ!!」
ここで横やりが入った。
衝立から身を乗り出した亀仙人が放ったかめはめ波だ。それによって鶴仙人ははるかかなたまで吹き飛ばされた。その気が、パパイヤ島よりはるか遠くに吹っ飛んだのを、悟空は確かに感じた。死んではいないだろう。
「案ずることはないぞよ。あ奴はあのくらいで死ぬようなタマではない。
さあ、両者とも、心おきなく試合をせい!」
かめはめ波の構えを解いた亀仙人は視線を武舞台に戻し、ややあって力強く言った。
怪訝そうに眺めていたギネも一件落着だと判断し、パンパンと手をたたいて叫ぶ。
「さあ!仕切り直しだよ!ゴクウ!テンシンハン!思いっきりやりな!
審判もぼさっとするんじゃないよ!実況!続きだ!ほらほら!」
『い、いったい何がどうなっているのか・・・えー・・・わ、わかりました・・・』
ギネの言葉に、アナウンサーの男は呆気に取られていたのが、どうにか気を取り直す。
同時に、悟空も天津飯もさっと同時に身構える。
「師匠を裏切ってしまった・・・。
しかし、これで何かが吹っ切れたようだ!
もう鶴も亀も敵討ちも関係ない!
お前を殺すための闘いではなく、試合に勝つためだけの闘いに専念できる・・・!」
「・・・待ってたぜ、天津飯」
そう告げる天津飯に、悟空は万感の思いを込めて言った。
殺し屋ではなく、武道家として。悟空は天津飯と戦いたいのだ。
師匠を裏切ってでも欲した勝利をものとするために天津飯は次の手に打って出た。両手を広げて力み始める。血管が浮き出て、汗をほとばしらせる天津飯。その背中が奇妙に膨らむ。
その奇怪さに、言葉を失う観衆をよそに、悟空もまた両手を腰元にやって、「はぁぁぁ・・・」と気を高める。
次の瞬間、天津飯の両の肩甲骨辺りから、新た腕が生える。同じ太さの二本腕が。ぎょっとする観衆をよそに、天津飯は「クックック・・・倍のパンチをお見舞いしてやるぜ・・・!」と余裕をもってすごんでみせる。これぞ、天津飯の奥の手、四妖拳である。
アナウンサーの男も畏怖と驚愕の実況を添える中、悟空は気を開放して白いオーラをその身にまといながら、身構えて言った。
「腕が増えたからってなんだ!全部受け止めればいいだけだ!」
「戯言を!」
4本腕で殴り掛かってきた天津飯を悟空は迎え撃つ。その攻撃のことごとくをさばき、受け止め、むしろこちらの攻撃を確実に当てていっている。
悟空はしっかり見抜いていた。4本腕は確かに奇抜なアイデアかもしれないが、いくつか弱点があるのだ。
まずは、発動までのタイムラグ。変身までに時間がかかっている。今回、悟空は自分も気をためるのに時間を使ったからお相子だが、他の相手ならわざわざ律義に待ちはしないだろう。
二つ目、これが致命的だ。変身に体力をごっそり用いている。気がかなり減っているのだ。発動状態を維持するのにも、気をすり減らしている。長続きはしないだろう。
手数が増えて、見た目で敵を圧倒できるかもしれないが、今言った弱点を解消できなければ、実用性はあまりないだろう。
殴り合いは悟空が制した。その拳が天津飯の顎をとらえて怯ませたところを蹴り上げる。
反動でバック転をしながら距離を取り、天津飯は口元をぬぐう。
気が付いてしまったのだ。目の前のチビに、真っ向から戦うのは分が悪い、と。それでも、なんとしても勝ちたい、と。
ゆえに、彼は禁じ手を使うことを決断した。四妖拳を解除し、口を開く。
「忠告しておく!この技をまともに食らえば、さすがの貴様も間違いなく死ぬ!
貴様は殺したくない!!だから、避けろ!!いいな、避けるんだぞ!!」
その忠告に、さっと
天津飯が、使おうとしているのが気功砲という技であることに。
かめはめ波とは比べ物にならないほどの威力だが、その代償として使い手の寿命を著しく縮める、禁断の技である、と。
確かに、と悟空は内心で頷いた。あの威力はそこらの人間では使用と同時に絶命してしまうだろう。もっと修業をして気を高めていけば、連射も可能になるかもしれないが、それにしてもリスクが大きすぎるのだ。
やはり、天津飯は気功砲を使うのか。だが、気持ちは悟空にもよくわかった。譲れない戦いというものはある。天津飯には、今がその時なのだ。
必死に止めようとする
悟空はそれを見ながら身構える。
天津飯は賭けに出る気だ。彼は戦術ミスで四妖拳を出したことで気が減っている。そのまま殴り合いを続ければ、先に力尽きる。彼もそれを察した。だから、別の手を使う気だ。おそらくは、場外による悟空の負けを狙っている。武舞台を破壊する気だ。天津飯には舞空術がある。場外にはならないと考えているのだろう。
執拗に避けることを念押しすると、天津飯は印を組んでから両手で輪を作る。そこに体中の気を集中させる。かなりの気の高ぶりに、亀仙人と悟空の表情は自然と険しくなる。
だが、舞空術なら悟空も使える。天津飯もそれを知っているはずだ。実況がご丁寧に解説してくれたのだ。そのうえでどうする気だろうか?
そんなことを思考の片隅で考えつつ、悟空は動く。
悟空の両手が、独特の構えを取る。両手首を合わせ、手のひらを花のように広げる、独特のその構え。それを腰元にやる、タメ動作。
まさか。
「かめはめ波じゃと?!馬鹿な!何を考えておるんじゃ!」
亀仙人の悲鳴のような声を無視して、悟空はそのままありったけの気を練り上げる。
前の世界では天津飯にさんざん痛めつけられたので、あまり体力も残ってなかったが、こちらではまだまだ余裕がある。
今の自分なら、いけるはず。
おそらく、避けた方がまだ消費は少ないだろう。この後のことも考えると、避けた方がいい。けど、そんなことはどうでもいい。持てる力のすべてをぶつけなければ、天津飯にも失礼だ。
「かぁぁぁぁ、めぇぇぇぇ、はぁぁぁぁ、めぇぇぇぇ」
「気功砲!!!」
「波ああああっ!!」
避けろという亀仙人の懇願も、
否。
光の柱の中ほどが、突如爆発した。
そのあおりを食らった天津飯は、そのまま空中をゴロゴロと回転して、やがて力なくとどまる。
そして、天津飯は地上を見やって、息をのんだ。
天津飯だけではない、観衆も、武舞台を見やって息をのんだ。
『こ、これは・・・いったい、なんということでしょう・・・!
武舞台が、一瞬のうちに、ほとんど、消し飛んでしまいました・・・!
孫悟空選手の立っている、一部を除いて・・・!』
サングラスをかけていたため、気功砲の光からも目が無事だったアナウンサーが半ば呆然と実況する。
そう、気功砲によって、武舞台のほとんどすべてが吹き飛んでいた。ただ、黒々とした四角い穴と化していた。
ただし、その真ん中ほどにほんの2メートルほどの円形の足場が残っている。その上に、かめはめ波のポーズのまま、息を切らしてたたずむ悟空がいた。衝撃で、幾分か道着がぼろくなっているが、無事だ。
それを見下ろして、天津飯は息を切らしながらうろたえる。
「ば、ばかな・・・!」
『あ、あのー、あのすさまじい一撃を、孫選手はどうやって耐えたのでしょうか・・・?』
「力押しだね。気功砲とやらを、かめはめ波で押し返して、自分の立つ足場を守ったんだ。
と言っても、全部を押し返すわけにはいかなかったから、あんなことになったんだろうね」
アナウンサーの質問に、ギネがこわばった顔で答えた。
気功砲は激しい消費と絶大な威力の他に、面攻撃という特徴がある。他の気功波(かめはめ波やどどん波など)が点攻撃であるのに対し、気功砲はその攻撃範囲が広い、面攻撃であるのだ。
ゆえに、今回のように一気に足場を破壊するというのには秀でている。(消費が見合ってない、舞空術が使える相手にはあまり意味がない、という弱点があるが)
極論すれば、悟空は気功砲の雨を、かめはめ波という傘で守ったのだ。
「さて、もう後がないね。
ゴクウは足場を守った。対し、テンシンハンに足場はない。
このままだといずれ力尽きて、飛べなくなる。先に場外負けしちまうよ。
もっとも」
ギネはここで少し愉快そうな口調で続けた。
「ゴクウがそんな消極的な勝ち方をしたがるわけがないけどねえ」
息子もサイヤ人の端くれなのだ。そんな勝ち方、絶対に認めたがらないだろう。
案の定、悟空は足場を蹴って飛び出した。
『ああッと、孫選手!飛びあがりました!天津飯選手に確実にとどめを刺しに行くつもりのようです!』
「これが最後だ!」
「っ! どどん波っ!」
悟空の接近に、天津飯はとっさにどどん波を放つ。
悟空は空中で逃げ場がない。先ほどのかめはめ波は、気功砲と相殺するほどの威力を誇ったのだ。そんなものをぶっ放したのだ。舞空術を使うほどの余力はないはず。どどん波で叩き落してしまえば、場外を狙える。自分も舞空術を使う余力がなくなるが、反動で幾分か距離を稼げるはず。
天津飯はそう計算していた。
だが、当たると思った金色の極光は避けられてしまった。紙一重のところですれ違ったのだ。
「何だと?!」
「舞空術じゃ。飛行そのものに使っているのではない。瞬間発動で、跳躍軌道に制動をかけて、軌道をずらした!」
驚愕する天津飯に、亀仙人がそのからくりを見抜く。
まだ飛ぶのは下手くそだと悟空がいつぞやか言っていたが、十分器用なことをする。あんなことはおそらく鶴仙流の者たちはできないだろう。
内心舌を巻く亀仙人をよそに、ついに悟空は天津飯に到達し、思いっきりその顎を殴り飛ばしていた。
ぐらりと天津飯はバランスを崩し、落下し始める。どどん波を放ち、積み重なったダメージもあって、もう飛ぶ気力はなかったのだ。
悟空は息を切らしながら、空中に静止した。悟空の勝ちだ。
勝ちのはずだ。よしんば天津飯が足場にたどり着けても、叩き落せる自信が悟空にはあった。
だが。
彼方から飛んできた、金色の極光が、悟空の腹部を穿っていた。
山吹色の道着が破ける。辛うじて貫通こそしなかったが、痛々しいやけどを負いながら、悟空は真っ逆さまに落下していく。その目からは光が失われている。気絶したのだ。
武道会場から悲鳴が上がる。
「ざまあみろ!クソガキめ!
いつやってきたのか。体のあちこちが焦げてボロボロの鶴仙人が振りかざした人差し指をそのままに、勝ち誇ったように叫んだ。(かなり遠くに吹き飛ばされたと思ったが、少し向こうで乗り捨てられているジェットフライヤーを見るに、それを使って戻ってきたらしい)
「トドメだ!」
「うちの子に何してくれてんだい!!」
落下する悟空になおも追い打ちをかけようとする鶴仙人の眼前に、瞬時に現れたギネが、怒声を張り上げる。
はっと鶴仙人が振り向くより早く、ギネは渾身の力で鶴仙人を彼方目がけて殴り飛ばしていた。あっという間に鶴仙人は青空のかなたに消えてしまった。
殺さないように手加減はしたが、それだけだ。ギネは肉の配給がかりとして働いていたが、それでもその身体能力は惑星ベジータの10倍重力で普通に暮らせるレベルのものだ。そんな女が殺さない程度に加減したとはいえ、思いっきり殴ればどうなるか。
武道家として(一応)達人の域にいる鶴仙人だから命はあるだろう。ただし、複雑骨折内臓破裂はほぼ確定。当分寝たきりになるに違いない。
ここで、悟空以外の誰も知らないが、前の世界との差異がまたしても生まれてしまった。
前の世界でも亀仙人のかめはめ波でたたき出された鶴仙人は、ダメージもあって悟空への報復を一旦断念した。
だが、今回は悟空の言動によって火に油を注がれた(
だから、彼は行動に出た。それが悟空に前世界の同時点以上のダメージを与え、さらには怒り狂ったギネによって鶴仙人もと同等の大ダメージを食らうことになってしまったのだ。
続く
※逆行悟空の特徴 その10
今回の3年の修行期間において、前の世界ではみっちり地球中を走り回ったが、今回もほぼ同等か、それ以上のことをやっている。
それもあってか、チャパ王やパンプットは、前の世界でも短時間で仕留められたが、今回は文字通りの秒殺だったりする。
一応、ギネの様子見で武道会の前に一度はパオズ山には帰ってた。母親との付き合い方はまだまだ手探りだが、悪くないなあ。あの世に行ったときに、孫悟飯のじっちゃんに報告することがまた増えた。
実は、自分の最初の対戦相手(パンプット)については、ほとんど覚えていなかった。母親からの応援はちょっと照れ臭い。
GTのラストで、親友と別れのあいさつに組手したこともしっかり覚えている。もう一度できるなんて、感慨深い。だからこそ手は抜かない。
天津飯との対戦模様は、最初から全力を出しているので、天津飯は排球拳を出す暇がなく、太陽拳は通じない、という涙目状態。
目隠しで1週間密林サバイバルというのは本シリーズ独自設定。前記したが、同じ地球中を走り回る修行でも、前の世界のそれよりも縛りを設けて内容をきつくしている。
案の定、鶴仙人が横やり入れてきた。ただし、この悟空は超能力に耐性を持っている(正確には力量差にものを言わせて通用しない)ので、
また亀仙人のじっちゃんがどうにかしてくれるかな、と思ってたが、まさかしつこく横やりを入れ続けてくるとは思わなかった。
Q.あの、このままだとピッコロ大魔王が秒殺されそうなんですが・・・。
A.何とかしていきたいです。(作文かな?)
Q.気功砲の仕様、原作と違くな~い?
A.この小説は独自解釈と独自設定の盛り合わせです。すみませんね。いやなら無理にお付き合いいただくことないです。読むのをやめて、自分で納得いくような作品を書けばいいんですから。