GT後の悟空が逆行して超ルートに入る話   作:亜希羅

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 新章突入。VSレッドリボン軍。
 そろそろ、原作とはいろいろ違ってくるのですよ~。


7.孫悟空、レッドリボン軍と戦う

 

 真っ白な雪原に轟音が轟く。

 

 数台の戦車が、すでに煙を上げながら停止し、マシンガンを乱射する男たちを丹塗りの棒が薙ぎ払って叩きのめす。

 

 「だいぶあったまってきたな」

 

 独り言ちながら、孫悟空は如意棒を構えなおした。

 

 

 

 

 

 フライパン村で、復興の指揮を執っていた牛魔王(すでに悟空の知る男の姿になっていた)は、悟空の唐突な来訪を歓迎してくれた。

 

 前できなかったお礼を兼ねてもてなしてくれようとしたが、悟空はそれを断り、防寒着の用立てを頼んだ。

 

 それがお礼になるならお安い御用!と、牛魔王はすぐさま用意してくれた。

 

 デザインは、悟空が前の世界で、ジングル村でスノから借りたコートや帽子などとほぼ同じだ。

 

 あまりちんたらしていると、レッドリボン軍がボールを集めきったり、またはその過程で人々をいたぶる可能性がある、と判断した悟空は、防寒具も手に入ったことだし、と牛魔王とチチに別れを告げ、ノースエリアのジングル村に直行した。(シルバー大佐のいる六星球の場所をすっ飛ばして)

 

 で、腹ごしらえに適当に襲ってきた熊をぶっ飛ばして食事してたら、薪を取りにきた少女のスノに遭遇。

 

 立ち話をしてドラゴンボールのことを聞き出したところで、焚火の煙を嗅ぎつけたレッドリボン軍の連中まで見に来てしまい、ドラゴンボールの単語を出した悟空を怪しんで乱暴してこようとした。

 

 悟空は容赦なく反撃して、そいつらを叩きのめした。

 

 で、スノからやはり村長が人質に取られて村人たち総出でドラゴンボール探しを強要されていると聞きだした悟空は、レッドリボン軍をやっつけて助け出すと、意気揚々と飛び出した。

 

 多少経緯はすっ飛ばしているが、こんな所である。

 

 

 

 

 

 さて、ホワイト将軍率いる部隊と、彼らの陣取る恐怖のマッスルタワーだが・・・まあ、大筋は以前と変わらない。

 

 如意棒を利用した棒高跳びで一気に2階から侵入し、上位士官たちを吹き飛ばした悟空は、3階でメタリック軍曹と対決。

 

 メタリック軍曹の頑強さに少々てこずりながらも、今回はかめはめ波で胸に大穴をあけて勝利。

 

 4階でムラサキ曹長と遊びと休憩を兼ねたあれこれをやった後、実は5つ子だった彼を伸したところで、最後の一人が人造人間8号を開放してきた。

 

 だが、やはり8号は怖そうな見た目とは裏腹に、心優しく温厚な性格で悟空との戦いを拒否。自爆させると脅されてもなお、拒否を撤回しなかった。

 

 自爆装置のリモコンを奪った悟空は、それを壊してついでにムラサキ曹長の最後の一人も伸した。

 

 8号改めハッチャン(以前は気にしなかったが、そう呼ばれた時、彼はとてもうれしそうにしていた)は、その後悟空を最上階にいるホワイト将軍のもとへ案内してくれた。

 

 案の定、村長を人質に取ってきたホワイトは、悟空とハッチャンを5階に叩き落す。

 

 5階にいたのは怪物ブヨンで、そのブヨブヨの体躯はかつてグルメス公国で戦った怪物化した公王のようにあらゆる攻撃を弾いて通用させない。

 

 かつての悟空も、この怪物には苦戦させられたものだ。

 

 今の悟空はかつての同時期よりは強いものの、それでもこのブヨブヨした体躯にはやはり苦戦した。

 

 結局、わざと食べられ、体内からかめはめ波で吹き飛ばして穴をあけて脱出という荒業を用いる羽目になった。(おかげで道着がべとべとになった!)

 

 そのまま頭突きで天井に穴をあけて最上階に戻り、伸ばした如意棒を穴に降ろして、ハッチャンも救出する。

 

 が、ホワイト将軍は村長を人質に取ったまま、悟空をパワードガンで狙撃。

 

 生半な銃器など効かないほどに鍛えている悟空でも、ここまでの激戦の連続で気の消費もあり、気絶。

 

 それを見て怒り狂ったハッチャンが、ホワイト将軍を叩きのめし、村長を開放した。

 

 悟空が気が付いた時には、すべてが終わっていた。

 

 その夜は、村長の開放を報告して、そのままスノの家に泊まりこませてもらった。

 

 ドラゴンボール(二星球(アーシンチュウ))は案の定、ハッチャンが隠し持っており、ホワイト将軍は発見できたら村人たちを口封じで皆殺しにするつもりだったらしいと話してきて、スノ親子と村長たちは戦慄していた。

 

 そのままハッチャンは村長夫妻が身元引受人として、ジングル村に居住することが決定。

 

 悟空は村人たちがレッドリボン軍に狙われないように二星球をもって、出立した。

 

 

 

 

 

 温暖な地域に出たところで防寒着を脱ぎ、続けて六星球(リュウシンチュウ)もシルバー大佐を伸して回収。(今度は筋斗雲は壊されなかった!)

 

 ドラゴンボールを集めてどうしようという願いもないのだが、レッドリボン軍に集めさせるのもよくない。となれば、やはり悟空が持つしかなく、結果として集めているような格好になってしまう。仕方がない。

 

 前の世界であればドラゴンレーダーの故障につき、西の都のカプセルコーポレーションこと、ブルマ宅にお邪魔させてもらったのだが、今回はまだレーダーは壊れていない。

 

 マッスルタワーでは激戦の連続ではあったが、ドラゴンレーダーは着替えなどの荷物とともにスノに預けていたため、無事だった。

 

 前の世界で、宇宙へ旅立つ前にブルマとトランクスからさんざん、ドラゴンレーダーは精密機械だから無茶苦茶に扱わないこと、とくぎを刺されて、それが頭の片隅に残っていたためだ。

 

 もっとも、宇宙の旅では、惑星イメッガでドラゴンレーダーは小型ロボットのギルに食われて一体化してしまったため、精密機械云々いってられる状態ではなくなってしまったのだが。

 

 話を戻して、悟空はドラゴンレーダーが壊れてないのをいいことに、予定を変更した。

 

 先に聖地カリンを訪ねて、超聖水を飲んで仙豆を手に入れようという魂胆だ。

 

 

 

 

 

 ウェストエリアにある聖地カリンにおいて、案の定レッドリボン軍が悪さをしていた。

 

 聖地カリンの守り人であるボラに蹴散らされた連中は、往生際悪く子供のウパを人質に取ろうとしたが、そこに悟空が登場。

 

 ウパをさらった飛行機を破壊して、ウパ本人は筋斗雲で抱き留めた。

 

 礼を言ってくる親子に、事情を話して四星球を譲ってもらい、続けてカリン塔挑戦の許可ももらう。

 

 よし!行くぞ!

 

 せっせと悟空は登り始めた。カリン塔を支える細い柱は複雑な彫刻を施してあるため登りやすくはあるが、その長さが尋常ではない。何しろ、地上から見上げて塔のてっぺんがかすんで見えないのだ。

 

 過去300年、亀仙人を除いて誰も登り切ったものがいないというのもうなずける。(もっとも、その後は悟空を皮切りに次々登り切るものが現れ、そのうち登れて当然ぐらいにもなってしまう)

 

 いくら前の世界の当時の自分よりも鍛えているといっても、限度はある。

 

 息を切らしながらも登り切った時には、とっくの昔に真夜中になっていた。

 

 空腹でもあるのだが、それよりも眠くて仕方なかった悟空は、「カリン様~、悪いけど寝かしてくれ~」と一声かけて、その場(塔頂の内部は仙猫カリンの生活場所らしく、水瓶や寝具、他生活道具が雑多におかれている)で眠りだした。

 

 さて、朝になった時、悟空は早速上の広場を訪れ、カリンに超聖水の修行を申し出た。

 

 カリンは、悟空がなぜかカリンの名前を知っていることをいぶかしんでおり、読心をしてきたが、やむなく断念した。

 

 というのも、ここで悟空にかけられた邪神による言動制限が発揮されたのだ。この言動制限、どうも神仙による読心にも効力が発揮されるらしく、一部読めないところがあるとカリンは悔しげにしていた。

 

 とはいえ、悟空が悪いことを考えているわけではないというのは伝わったため、どうにか許可は下りた。

 

 超聖水を飲もうとボトルを奪おうとする悟空に、ボトルを杖先に引っ掛けたままひょいひょいと逃げ回るカリン。

 

 途中空腹でばてた悟空が、食事を要求してカリンはそれに仙豆でもって応えてくれた。

 

 仙豆はあらゆる傷を癒し、十日は腹を満たす。のちに長いこと世話になるし、今後の修行などを考えれば、ぜひいくつかもらっておきたい。

 

 ともあれ、まずは目の前の修行からだ。

 

 途中カリンに奪われ、落とされたドラゴンボール回収のために塔を往復する羽目になったりもしたが、塔の登りはすでに苦ではなく、着実に修行の成果は出ている。

 

 あと一息だ。

 

 さらに気合が入った悟空は、改めてカリンを追いすがる。

 

 2日目の夕刻。悟空は見事カリンから超聖水の入ったボトルを奪うことに成功した。

 

 無事、超聖水を飲み干した悟空は、続けて仙豆も要求。図々しい奴め、と言いつつもカリンは仙豆を3粒ほど分けてくれた。これ以上ほしいなら、また塔を上ってくるように、と言われたが、十分だ。

 

 レッドリボン軍を壊滅させて、修行旅に移行したら、改めて修行の一環でカリン塔に再挑戦する予定もあるのだから。

 

 地上に降りた悟空は意気揚々とウパとボラに超聖水が飲めたことを報告し、そのまま聖地カリンを後にした。

 

 前の世界のような感謝と歓待具合はなかったが、ボラは死ななかったし、悟空はそういうこだわりはない。誰も死なないなら、それに越したことはない。

 

 それに、ぐずぐずしているとドラゴンボールを狙ってまたレッドリボン軍がやってくる。そうなる前に、ここを離れなければ。

 

 次に向かう場所を思案しながら、悟空は筋斗雲を飛ばした。

 

 

 

 

 

 さて、ドラゴンレーダーは壊れていないが、悟空はそれでも一度西の都のカプセルコーポレーション・ブルマ宅を訪ねることにした。(同じウェストエリア内なので、聖地カリンから比較的近いというのもある)

 

 というのも、次のドラゴンボールが海中の放棄された海賊のアジトにあることを思い出した悟空は、今の自分ではそこまで深いところに単独では潜れないことに気が付き、ブルマに潜水艇を出してもらおうと考えたのだ。

 

 カプセルコーポレーションの場所は覚えていた。

 

 前の世界のこの時期では、悟空はたくさん人がいる街中など行ったことがなかったから、田舎者丸出しでブルマの居場所を求めてあちこち探しまわったが、今回はその必要もない。

 

 とはいえ、町は大量に人がおり、ブルマの気は小さいため、その人々の気に埋もれそうで判別が付きにくいのだ。

 

 訪ねた玄関で、案の定受付ロボットに門前払い(今学校に行ってるらしい。そういえばそんな年齢だった!)を食らわされてしまい、悟空は玄関先で瞑想しながら彼女を待つことにした。

 

 サイヤ人は戦えば戦うほど強くなる。悟空の場合は、スタート地点がサイヤ人にしては異常に低いらしいので、その分修行と経験などで補う必要があるわけだ。

 

 亀仙人の修行や、第21回天下一武道会で強くなった自信はあるし、マッスルタワーでも経験を積ませてもらい、さらに仙猫カリンの超聖水の修行も受けた。

 

 だが、さらなる成長・飛躍のためには、より厳しい修行も必要になる。

 

 今はレッドリボン軍との戦いに集中しなければならないのは分かっているが、この先も問題だ。

 

 3年後の第22回天下一武道会の後は、ノータイムでピッコロ大魔王との戦いに突入することになる。

 

 ピッコロ大魔王は放置できないが、殺してしまうのはダメだ。そうすると神様も死ぬ(=ドラゴンボールが失われてしまう)し、悟空と息子の大切な仲間になるピッコロも生まれなくなってしまう。それはダメだ。

 

 ・・・今思えば、これまでの戦いはかなり劇的なパワーバランスで成立していた。弱かったら負けてた(そしてすべてが破滅してた)し、強すぎたらそれ以降の戦いで悪影響が出た(そして破滅してた)可能性があった。

 

 これからは、悟空はそういうことも考えていかねばならないが・・・やるしかない。

 

 ここで声をかけられているのに気が付き、悟空は目を開けた。

 

 顔を上げると、スクーターから降りた警官が悟空に話しかけてきている。

 

 道着姿の少年が、豪邸の前に座り込んでいるので、何事かときたらしい。物乞いか何かと思われているようで、遠回しに退去を命じられているらしい。

 

 悟空は素直に、ここに住んでいるブルマに用があるので待っていると告げたが、どうにも信用されていないようなのだ。

 

 これは困った、と悟空が内心で困り果てた時、タイミングよくブルマが帰宅してきた。

 

 ブルマと悟空が親しげに話すのをみて、警官は素直に退散してくれた。

 

 さて、案内されたブルマ宅である。その豪邸は未来においてはいろいろ増改築されている(主に住み込むことになった旦那の要求で)ものの、今現在はまだおとなしい方らしい。

 

 といっても、1階が庭で家主が拾ってきた動物(捨て犬・捨て猫・捨て恐竜!)を無造作に放し飼いにしていたりと、なかなかフリーダムである。

 

 悟空のワイルドぶりを知っているブルマが、捕まえて食べるなとくぎを刺してきたのを、苦笑しながら、おうと悟空はうなずいて見せた。

 

 自転車に乗ってたブリーフ博士(ホイポイカプセル開発者であるのに、どこかとぼけたおっさん)が、ひょうひょうとしたまま悟空とブルマの関係に探りを入れてくるのを、そんなんじゃないと流して、客間に移動。

 

 どこか苛ついている様子のブルマに探りを入れてみると、ヤムチャが浮気していると漏らしてきて、悟空は苦笑した。

 

 その後、10年近く浮気を繰り返されるんだよなあ、と悟空は思いながら口を開いた。

 

 「そうカッカしなくても、そのうちブルマにはもっといい奴が現れるって。

 口は悪いし素直じゃねえしプライド高えけど、強くて誰よりもかっこいい王子さまってやつがよ」

 

 「はあ?何それ。なんでそんなに妙に具体的なのよ。ってゆーか、そんなちぐはぐなの、王子様じゃないでしょ。

 そりゃ、白馬の王子様っていればいいけど、現実にはそんなのいるわけないんだから」

 

 悟空の言葉に、ブルマは苛立ちながらも怪訝そうな顔を向けてきた。

 

 王子なんだよなあ。カリン塔よりも(下手をすれば天界の神殿よりも)高いプライド持っているんだよなあ。

 

 あと、白馬なんて乗ってない。宇宙ポッドに乗って地球侵略にやってくるんだよなあ。

 

 ベジータと戦うのもかなり先のことになるが、今度はちゃんと1対1で勝ちたい。彼も今頃何をしているのだろうか。やはり、フリーザ軍で地上げ業に従事しているのだろうか?

 

 ともあれ。

 

 ブルマは浮気の八つ当たりと学校のつまらなさからエスケープを決め込み、悟空のドラゴンボール探しについてくるという。

 

 「いや、潜水艇を運転してくれるだけでいいんだけどさあ。危ねえぞ、レッドリボン軍もドラゴンボールを狙ってるらしいから」

 

 「レッドリボン軍ですって?!」

 

 「ブルマ、知ってるのか。さすがだな!」

 

 「さすがだなじゃないわよ!世界最悪の軍隊じゃない!」

 

 金切り声を上げるブルマに、悟空はそういえば前の世界でもそんなこと言われたなあ、と思い返す。

 

 まあ、あの軍隊よりも、実際はあの軍隊が雇っている科学者の方がやばかったりするのだが。

 

 セルゲームを思えば、Dr.ゲロも生かしておく必要があるのか。

 

 以前、ブルマは未来から来たトランクスの話を聞いて、開発中の人造人間とDr.ゲロの早期打倒を提案してきたが、それは未来を大幅に変える可能性もあるし、何より人造人間と戦ってみたいという欲望があったので却下してしまったことを思い出す。

 

 正直、セルゲームは悟空にとっては鬼門であるのだが、ブウとの戦いを思えばやっておく必要がある。

 

 セルゲームを経ずにブウとの戦いに移行すれば、たぶん勝ち負け以前に戦いにならずに蹂躙されて終了となる。そういうわけにはいかないわけで。

 

 ともあれ、そういうことは早く言え!と怒鳴って渋りだしたブルマに、悟空は潜水艇出すだけでいいから!(自分では操縦できない!)とどうにか説得して、連れ出すことに成功した。

 

 なお、今回は出立前にカプセルの中身を確認しておいた方がいいのでは?と悟空が一言言ったため、取り違えは未然に防ぐことができた。

 

 今思い出したが、若い時分のブルマは結構ドジなのだ。(最初の旅ではカプセルケースを途中紛失、このレッドリボン軍戦中もケースを父親のものと取り違え、悟空は知らないが第21回天下一武道会直後も飛行機のカプセルを無くして、西の都に帰るのに苦労したとか)

 

 ミクロバンドで小さくなって、悟空にくっついてくることにしたブルマは、ちゃんと守りなさいよ!と念押ししていた。

 

 

 

 

 

 さて、お目当てのドラゴンボールのある海域付近に到着した。

 

 近くの島で一度ブルマを下ろして潜水艇を出してもらおうかと悟空は思ったが、そこはレッドリボン軍の基地らしく、一般人にしては大きめの気が複数密集していたため、却下した。

 

 さらに、哨戒していたレッドリボン軍の偵察機に見つかり、叩き壊すことにもなる。

 

 今のやばい!絶対レッドリボンの他の連中にばれて警戒されることになった!と金切り声を上げるブルマをなだめながら、悟空はどうしようかと逡巡する。

 

 確か、ここからならカメハウスに近かったはずだ。そこなら潜水艇を出すのにちょうどいいだろう。

 

 悟空はそう考えて、ブルマにもそれを提案。亀仙人、と聞いて微妙に嫌そうな顔をするブルマ(またセクハラされるかもしれない)は、それでもあの老人ならば万が一レッドリボン軍に襲われても、助けてくれる可能性があるだろうと判断し、不承不承ながらも了承してくれた。

 

 そうして、亀仙人への挨拶をそこそこに、ブルマは潜水艇を出した。

 

 ここで、タイミングよく食料の買い出しに行っていたクリリンとランチ(青髪状態)が帰宅。

 

 悟空たちの存在を見て、現状とレッドリボン軍のこと聞き出すと、目をむいた。

 

 なんてものを相手にしてるのだ!

 

 そういわれても、ドラゴンボールを悪用させるわけにもいかねえし、という悟空に、クリリンが自分も力になりたいと同行を申し出てきた。

 

 ボディガードはいくらいても足りないとブルマが同行を了承し、やむなく悟空もそれに頷きを返した。

 

 そんなわけで、一同はドラゴンレーダーの反応(案の定、狭くて深い海溝にむかっているらしい)を頼りに、侵入できる場所を探し、海底洞窟に入り込んだ。

 

 ここで、悟空はふと気が付いたことがあって口を開いた。

 

 「・・・二人とも、振り返らずに聞いてくれ」

 

 「何だよ?」

 

 「後ろからでかい気を持った奴と、小さな気が複数ついてくる。たぶん、レッドリボン軍だ」

 

 「何ですって!!で、でも、ソナーには何の反応も・・・も、もしかして、ステルス仕様の潜水艦?!」

 

 「すてるす?」

 

 「レーダーとかソナーとかの機械に引っかからないようにしてるのよ!

 襲ってこないのは・・・も、もしかして、こっちがボールを手に入れたら横取りしてくるつもり?!」

 

 「あわわわ・・・ご、悟空、でかい気の持ち主って言ってたけど、そいつ、どんな奴かわかるか?」

 

 顔色を変える二人に、悟空はうーんと二本指を額に当てつつ言った。

 

 「結構でかいかもなあ。ちょっと前だったら何ともならなかったかもな」

 

 というか、カリン塔を上ってなかったら、実際やばかったはずだ。

 

 悟空の記憶が正しいなら、後ろからついてくるのはレッドリボン軍の幹部の一人であるブルー将軍だ。

 

 筋骨隆々の男の癖にしゃべり方が変で、そのくせ頑丈で変な能力(超能力による金縛り)も使ってきた。さらにやたらしつこかった。

 

 先にカリン塔に行ったとはいえ、ブルー将軍との戦いもどこまで通用するか。単純な腕っぷしならともかく、超能力による金縛りは厄介だ。

 

 あるいは、目を見ないように戦うか。あれは、目が合って発動だったはずなので。

 

 「ちょっと前?」

 

 「修行付けてもらったからよ。隠し玉があったらやべえかもしれねえけど」

 

 首をかしげてツッコミを入れてくるクリリンにこともなげに言って、悟空は表情を引き締めた。

 

 「と、とりあえず、もうすぐトンネルを抜けるわ。

 ! 大きな空間があるみたい。このトンネルも、よく見たら人の手が入ってるみたいだし。

 内部に空気があるなら、この潜水艇もカプセルに戻すわよ!」

 

 ブルマの言葉に悟空とクリリンがうなずいたところで、トンネルを抜けた。

 

 内部に明かりがつく。

 

 海賊のアジト、その隠し港に着いたのだ。

 

 内部を探索しながら奥へ。途中、危険なトラップに遭遇しつつもどうにか突破し、警備らしき凶悪な様相のロボットも、クリリンと連携でどうにか破壊する。

 

 ちなみに、レッドリボン軍と思しき連中も、あとからきっちりついてきている。気が読める悟空にはバレバレだ。

 

 だがこのロボットが、アジトの自壊スイッチを兼ねていたらしく、破壊と同時にアジトが大きく揺れだした。

 

 悟空はブルマたちを置いて、さらに奥、ドラゴンボールがあるだろう場所へ向かった。

 

 人一人が通るのがやっとの狭い水のトンネルを潜り抜け、どうにかボール(三星球(サンシンチュウ))を回収した悟空が取って返した時には、クリリンが倒れ、ブルマが悲鳴を上げているところだった。

 

 ブルー将軍が、勝ち誇った様子でホホホッと高笑いしている。

 

 すぐさま悟空は動いた。駆け抜けて、ブルー目がけて殴り掛かる。

 

 吹き飛んだブルーは壁にたたきつけられた。その拍子に、男前の口元から白いものが零れ落ちた。歯だ。ブルーの美しい歯が、おられたのだ。

 

 「この、くそがきぃぃぃ!よくも!私の美しい顔に傷をつけてくれたわねえええええ!!」

 

 激高したブルーは立ち上がって悟空をにらみつけた。超能力による金縛りを使おうとしたのだが、悟空は身震い一つでそれを振りほどいてしまった。

 

 「はっ?!ちょっ?!嘘でしょ?!なんで効かないの?!」

 

 残念ながら、超能力の類は相手とレベル差が開きすぎると、通用しなくなる。

 

 悟空は知らないが、ブルーはこの後桃白白に瞬殺され、その桃白白をのちにカリン塔の修行でパワーアップした悟空が撃退しているのだ。

 

 そして、今の悟空はカリン塔を攻略済みである。ブルーは相手にならないのだ。

 

 うろたえるブルーに、悟空は突貫した。

 

 拳と蹴りを数発ずつ、目にもとまらぬ勢いで叩き込まれ、ブルーは悶絶しながら再び吹き飛ばされて崩れていくアジトの壁にたたきつけられた。

 

 ここで、ブルマの呼び声がした。どうにか気が付いたクリリンと、隠し港の隅に行った彼女は、しまっていた潜水艇を再び呼び出すと、勢いよく乗り込む。

 

 なお、彼女はどさくさ紛れに海賊のお宝をいくつか頂戴したらしい。

 

 ともあれ、これで無事脱出・・・とはいかなかった。

 

 いつぞやと同じく、潜水艇が燃料切れを起こして、海中トンネル内で停止してしまったのだ。このままでは生き埋めになる。

 

 絶望に悲鳴を上げるブルマとクリリンに、悟空は息を止めるように伝えて、フルパワーのかめはめ波を後方目がけてぶっ飛ばした。

 

 反動で潜水艇は勢い良く押し出され、無事地上に脱出は成功した。

 

 助かったー!ッと喜ぶクリリンとブルマだが、悟空は気が抜けなかった。

 

 ブルーの気が、付いてきている。伸してやったのに、しぶとい奴だ。間一髪で、海底洞窟から脱出したのだろう。

 

 クリリンとブルマをカメハウスに届け(ブルマはカプセルもあるのだから、そのうち自力で帰るだろう)、悟空はそのまま筋斗雲でその場を離れた・・・ように見せかけた。

 

 しばらく筋斗雲で可能な高度ぎりぎりの高い空から様子を見ていると、ブルーはそのままカメハウスに押し入った。

 

 前の世界では、ブルーは悟空たちを金縛りで動けなくしたうえで縛り上げ、爆弾を置き土産にされ、危うく爆殺されるところだったのだ。(悟空が集めたドラゴンボールとレーダーも奪われたうえで!)

 

 あの時は、直前で離脱していた金髪のランチが、青髪になって帰ってきてくれたので、間一髪で爆弾を投げ捨てることができた。

 

 今回はどうする?悟空がいないし、ブルーもあきらめて去るか?と思ったが、気の動きを探っていた悟空は眉を寄せた。

 

 亀仙人とクリリンの気の乱れを感じる。ブルーの気は生き生きと大きくなってて、これは二人をいいように痛めつけてる可能性がある。

 

 ・・・考えてみれば、悟空一人のみならず、カメハウスにいた人間をまとめて爆殺するようなブルーが、悟空がいない程度でおとなしく引き上げるなどありえないのだ。

 

 とにかく、放っておけない。

 

 悟空はブルーの気の動きを探りながら、慎重に筋斗雲を飛ばして、カメハウスの裏につける。

 

 ブルーは取り出したカプセルから飛行機を呼び出して飛び乗ると、高笑いしながら青空に消えていった。

 

 入れ替わりに悟空はカメハウスに駆け込んだ。

 

 案の定、中には縛り上げられた面々がおり、爆弾の箱がチクタクと音を立てている。

 

 悟空の名を呼んで、この箱は爆弾だ!何とかしてくれ!と叫ぶ面々に、悟空は返事をするよりも早く、箱をつかんで青空の彼方に向かって投げつけた。

 

 カメハウスの上空で爆発が轟く。

 

 急ぎ、悟空は他のメンバーの縄を引きちぎると、ブルマが語りだす。

 

 海賊の財宝と、万が一のために持っていた予備のドラゴンレーダーを取られた、と。

 

 まずい。

 

 即座に悟空は思い至った。ドラゴンレーダー・・・それも、ブルマお手製の高性能のものが敵の手中にあるということは、ドラゴンボールを持った悟空がカメハウスに戻っていることもばれているはず!

 

 ぐずぐずしていると、ブルーが戻ってくる。そうなると、またみんなを巻き込む。

 

 引き留める声を無視して、悟空は筋斗雲に飛び乗って出立した。

 

 直後、上空でブルーの乗る飛行機が迫ってきた。

 

 マシンガンをぶっ放してくるのを、悟空は筋斗雲をコントロールして宙返りするようによけながら進む。

 

 とにかくカメハウスから離れるのと、ブルーの追撃をよけるのに夢中だった悟空は、気が付けば見知らぬ土地にいた。

 

 そこは、懐かしきペンギン村だった。

 

 「ほよよ?なんだありゃ?」

 

 上空で追いかけっこをしている黄色の雲と見知らぬ飛行機に、好奇心をくすぐられたのは、一人の少女。そばにはさらに幼げな子供が二人いる。

 

 フクロウのような大きな眼鏡に、紫の髪のチンチクリンの少女は、スウッと大きく息を吸い込んだ。

 

 ややあって。

 

 「んちゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 挨拶とともに放たれた金色の光線が、空気を裂いて空高くの二つの陰に迫る。

 

 悟空はとっさに気が付いて、筋斗雲をコントロールして避けたが、ブルーの乗る飛行機はそうもいかない。

 

 見事命中。ブルーは山中に墜落した。

 

 絶句した悟空は、光線の源に興味をそそられ、筋斗雲を降下させた。

 

 「オッス!オラ孫悟空だ!さっき光線撃ってきたの、お前ぇか?」

 

 「んちゃ!アラレだよ!こっちはガッちゃん!その乗ってるのなぁに?」

 

 朗らかに話しかけた悟空に、アラレと名乗った少女はにこにこと笑った。その傍らに羽の生えた小さな子供が二人一緒にいる。

 

 ああ、そういえば、ブルー将軍の追跡中に、こんな少女たちとあったなあ、と悟空は思い出した。

 

 このアラレという少女、やたら強くて、超能力のせいで手も足も出なかった悟空をよそに、あっと言う間にブルーを伸してしまったのだ。

 

 ちょうど、今のように。

 

 「このクソガキっ!よくもやってくれたわね!」

 

 間一髪のところで飛行機から脱出したらしいブルーが、アラレ目がけて殴り掛かった。

 

 「ほよ?プロレスごっこなの?きゃはははっ!あそぼー!」

 

 笑いながらアラレはブルーをあっさり伸して、挙句頭突きで吹っ飛ばしてしまった。

 

 やはりこの少女、ただものじゃない。

 

 と悟空はアラレをしばし眺めて、ややあって眉を寄せた。

 

 アラレからは、気を感じない。つまり。

 

 「人造人間・・・?」

 

 そんな予想が悟空の脳裏をよぎるが、Dr.ゲロに作られた連中のような一種の邪悪さや冷徹さは感じられない。

 

 以前あった時もそうだったが、無邪気で悪いことを考えている感じは全くない。

 

 ならいいだろう。のちに親友の嫁になった人造人間だっているくらいなのだ。何も問題はない。

 

 それにしても、この少女のパワーもすごい。あれは、超サイヤ人の自分以上かもしれない。

 

 そのうち、ぜひ本気で戦いたいものだ。(今は逆立ちしても勝てないだろうから、やめておく)

 

 ここでハタと気が付いた。

 

 とられたというブルマの予備のドラゴンレーダーを取り返せていない!ブルーに持たせっぱなしだ!

 

 ・・・気の位置から、ブルーは相当遠くに吹っ飛ばされたらしい。これは下手に追いかけるよりも、他のボール集めを優先した方がよさそうだ。

 

 と、ここで悟空はドラゴンレーダーを取り出してスイッチを入れようとしたが、うんともすんとも動かない――故障していることに気が付いた。

 

 無理もない。

 

 何しろ、海底洞窟探検からの脱出、ブルーからの追跡を逃れるための空中戦と、無茶苦茶しすぎた。精密機械のドラゴンレーダーがいい加減にしろとへそを曲げてもおかしくない。

 

 おまけに、この村はどこにあるのかわからない。

 

 成人して、筋斗雲の代わりに舞空術を高速で自在に使いこなせるようになったあたりで、地球中を見て回ったのだが、この村と思しき場所は見つからなかったのだ。

 

 いったい何がどうなっているのやら。まあ、こういうことを考えるのに、自分のおつむは向いていないと悟空も自覚しているので、置いておく。

 

 とにかく、現在地不明なので、修理してもらおうにもブルマがいるだろうカメハウスの場所もわからないのだ。(落ち着いて気を探ればよかったのだが、その時は思い至れなかった)

 

 困ったなあ、と肩を落とした悟空に、アラレが「それならハカセに見てもらったらいいよ!」と声をかけてきた。

 

 前の世界でも、確かアラレの保護者(見た目としては父親か?その割にはハカセなどと呼ばれていたが)に見てもらったが、その人にはお手上げで、しゃべる赤ん坊が超能力でササッと修理、さらにはその後ブルーに奪われたのを複製してくれたのだ。

 

 ならば、頼った方がいい。

 

 悟空の頷きに、うっほほーい!クピペポー!と元気良く、アラレとガッちゃんズが駆け出し、悟空もそのあとに続いた。

 

 案内された家にて、ハカセと呼ばれた男、千兵衛がドラゴンレーダーを見てみるが、案の定お手上げとなり、その子供である赤ん坊のターボが超能力でレーダーを修復。

 

 無事、悟空はドラゴンボール探しの旅の再開ができた。

 

 筋斗雲を呼んでその上に飛び乗り、則巻一家に別れを告げて、空に飛び出した。

 

 目指すは最も近いドラゴンボールだ!

 

 

 

 

 

 お次のドラゴンボールは、イーストエリア、ウーロンが悪さをしていた村のほど近くだ。

 

 バイオレット大佐率いるチームが捜索する中、登場した悟空は案の定襲い掛かられたので、彼らを蹴散らした。

 

 ただし、ドラゴンボールはこの地に住む恐竜に飲み込まれてしまっていたらしく、レーダーに映らなくなってしまい(ドラゴンレーダーは、ドラゴンボールが放つ特殊な電波をキャッチする。生き物に飲み込まれると、その電波が遮断されてしまうのだ)、一時的に悟空は足止めを食らってしまったのだ。

 

 ・・・恐竜の排泄物の中から取り出したドラゴンボールは、川でよく洗った。

 

 

 

 

 

 さて、悟空が知らない方面を少し補足しておく。

 

 ブルーは数日かけて、アラレにぶっ飛ばされたイーストエリアの砂漠地区を踏破して、レッドリボン軍の本拠基地に帰還した。

 

 見事レーダーを手に入れて見せました!と意気揚々と報告するブルーだが、肝心のドラゴンボールの奪取に失敗したということで、処刑が決定。

 

 挽回のチャンスを!と懇願するブルーに、差し向けられたのは世界一の殺し屋桃白白である。

 

 桃白白は、ブルーを秒殺した。こめかみを舌で穿つことで、実にあっさりと。

 

 一人殺すだけで法外な金を要求する彼は、ドラゴンボールの強奪も依頼に含みながら、孫悟空(及び、その過程で立ちはだかる障害になる人間たち)の抹殺の依頼を快く引き受けた。

 

 さて、肝心の孫悟空がどこにいるのか、レーダーで確認してみれば。

 

 孫悟空は、いた。レッドリボン軍の基地の真ん前に、到達していたのだ。

 

 

 

 

 

 さて、ドラゴンボールを5つ集めた孫悟空は、残る2つを求めていた。

 

 一つはピラフ一味が隠し持って、電波遮断装置の中に保管していることだろう。

 

 どこにいるかわからない(前の世界と同じかわからない)が、こちらを探すならば、占いババに頼った方が確実だ。

 

 となれば、残っている一つを探したほうがいい。

 

 それがあるのはもちろん、レッドリボン軍の総本山である。

 

 さて、どうしたものか、と悟空は内心で考えた。

 

 今回に限っては、まず人命優先でジングル村、そこからの通りがかりでシルバー大佐、その後は己の修行のスケジュールの関係でカリン塔、海底洞窟、という順序で集めた。

 

 前の世界とはかなり順序が違ううえ、前はレッドリボン軍が集めていたドラゴンボールのうち一つを、悟空の方が先に集めてしまったのだ。

 

 これはひょっとしたら、未来のトランクスがやってきたことでセルが現れたような、妙な影響が生じる可能性がある。

 

 おとなしく歴史をなぞった方がよかっただろうか?

 

 とはいっても、レッドリボン軍と戦う前から、すでに歴史はずれてきていたわけで。チチとの出会いもそうだし、孫悟飯老の死亡タイミングとかもそうだ。

 

 いずれにせよ、今更過ぎる。ま、いっか。なんとかなるだろ。

 

 結局、いつも通りの楽天家孫悟空らしい常套句で思考を締めて、そのまま筋斗雲をレッドリボン軍本拠基地へと差し向けた。

 

 途中、妙な機械に付きまとわれた。最初悟空はそれを怪訝に思ったが、そういえば、レッドリボン軍を壊滅させた後、ブルマたちが助けに駆け付けてくれたんだった、と思い至る。

 

 ひょっとしたら、この機械で見ていたのかもしれない。

 

 ひらひらと手を振って見せると、機械は何かちかちかと光ってから、ぎゅんっと悟空の筋斗雲の向かう先に飛び去ってしまった。

 

 悟空はそれを見送ってから、飛行は筋斗雲任せにして、右の二本指を額に当てて気を探る。

 

 先にあるレッドリボン軍の基地からは、一回り大きな気を感じる。

 

 やはり、この気は。

 

 考えこもうとするより早く、悟空の目の前にレッドリボン軍のエンブレムが付いた哨戒機が立ちはだかる。

 

 とまれ。ドラゴンボールをよこせ。

 

 そんなことをわめくスピーカー越しの音声を、悟空は如意棒の一振りで黙らせた。

 

 哨戒機から放たれる弾丸の雨嵐を筋斗雲をコントロールすることで軽々とよけ、悟空は高い塀に囲まれたレッドリボン軍の本拠基地、その赤い屋根に飛び降りた。

 

 そのまま部隊員たちを蹴散らし、悟空は暴れまわる。銃撃は避け、殴り掛かられても返り討ちにしてしまう。戦車も哨戒機も、片っ端から破壊されるのだ。

 

 中の都の国防軍ですら手に負えない最悪の軍隊が、たった一人の少年によって蹂躙され始めたのだ。

 

 赤いリボンの意匠をまとう者たちには悪夢の光景であり、かの軍隊を忌まわしく思う者たちにとっては夢のような光景だった。

 

 不意に、悟空は体を横にそらす。

 

 先ほどまで悟空のいた場所を、金色の極光が通過した。

 

 「ほお。まさかどどん波をよけるとは。少しはできるようだな、小僧」

 

 建物の入り口から悠々と姿を現したのは一人の男だ。

 

 桃色のカンフー服。胸に刻まれた(キル)マーク。ピンクのリボンで結わえられた三つ編みを指先ではじき、口ひげをゆがませて、男は笑う。

 

 「桃白白(タオパイパイ)か。やっぱりいたか」

 

 「ほお。単なる田舎小僧と思っていたが、まさかこの俺様を知っていようとはな。

 感心感心」

 

 如意棒を鞘に納め、改めて拳法の構えを取る悟空に、桃白白は不敵な笑みをそのままに、高圧的に言い放った。

 

 「小僧。ドラゴンボールを渡せ」

 

 「断る。お前ぇこそ、とっととここから帰れ」

 

 ここで、悟空の持っている優しさ、あるいは甘さの一端が出た。

 

 前の世界であれば、友人にして恩人たるボラの命を虫けらのように奪った桃白白は許し難い存在だった。だから、素手で徹底的に叩きのめしたのだ。

 

 だが、今はまだ、桃白白は悟空の知る誰かを手にかけたりはしていない。ならば、見逃してもいいかもしれない。そんな気持ちが出てしまったのだ。

 

 「ふん。身の程知らずのアンポンタンめ」

 

 だが、桃白白からしてみると、悟空のそんな言葉は思いあがった愚か者の戯言にしか聞こえなかった。

 

 世界最強の殺し屋は、目の前の身の程知らずに向かって、指を三本立てて見せた。

 

 「たった3秒で息の根を止めて見せるわ!」

 

 言い放つと同時に、桃白白は悟空目がけてとびかかった。

 

 悟空もまた、迎え撃つ。拳をいなし、蹴りを受け止め、激しい格闘戦を展開する。

 

 「く、クソ!桃白白様が邪魔で、撃てないぞ!」

 

 「焦るな!チャンスを待て!」

 

 近くの塔の窓のそばに身をひそめた軍人たちは、今か今かとスナイパーライフルの銃口を向けながら待機していた。

 

 ここで、一拍の隙をついた桃白白のダブルスレッジハンマーが悟空の頭を穿ち、地面にたたきつける。すかさず追い打ちで蹴りを入れようとするが、悟空は跳ね起きると同時に飛び上がって宙返りを打ちながら、桃白白の顎に蹴りをたたき込む。

 

 桃白白は「ぐえっ!」と悲鳴を上げながらのけぞった。

 

 だが、悟空はまだ空中におり、着地前の無防備状態だった。

 

 今だ。刹那にも満たない時間で桃白白は判断するや、人差し指を向けた。

 

 「どどんっ、波ぁ!」

 

 放たれた金色の極光は、今度こそ悟空に直撃して、彼を近くの建物の壁にたたきつけた。

 

 だが、悟空は無事だった。

 

 「いちちちちっ!おー、いてぇ!」

 

 とっさに突き出した両掌で、どどん波を受け止めたのだ。その手はうっすらと赤くなっており、悟空がフーフーと息を吐きかけている。

 

 「ば、馬鹿な!この私の、どどん波を!う、受け止めるなど!」

 

 鼻水を垂らしてうろたえ始める桃白白をよそに、悟空は「とっくに3秒経っちゃったぞ!」と言いながら、すっくと立ちあがって身構えた。

 

 ウォーミングアップは終了だ。そろそろギアを上げていくとしよう。

 

 「今度はこっちの番だ!」

 

 いうや否や、悟空は桃白白の懐に飛び込み、パンチのラッシュを浴びせかける。

 

 息を詰まらせてよろめく桃白白を容赦なく蹴り上げ、悟空もまた追って空中に飛び上がると、その首に両脇から手刀を浴びせかけ、トドメと踵落としで地面に叩き落した。

 

 腰から下半分を地面から生やす桃白白は、しかししぶとかった。飛び上がって地面から上半身を引き抜き、憎々しげに悟空をにらみつける。

 

 「おのれぇ!」

 

 ぼろぼろになった桃色の上着を引きちぎって上半身裸となった桃白白は、カプセルから青龍刀を取り出して悟空に切りかかる。

 

 対する悟空は、一瞬如意棒に手が伸びかけたが、すぐに手を引っ込めた。その黒い目がしかと桃白白を見据える。

 

 硬い音がした。

 

 桃白白の青龍刀を、悟空の両手が挟みとっていた。真剣白刃取りだ。

 

 「はぁっ!」

 

 裂ぱくの気合と同時に、刃がへし折られる。

 

 「ばかなぁ?!ジルコニアセラミックの青龍刀だぞ?!」

 

 桃白白が驚愕する間こそあれど、悟空は不敵な笑みを浮かべながら、再び桃白白に飛び掛かっていた。

 

 だが、急にその体が真横に吹っ飛んだ。

 

 「やった!当たったぞ!」

 

 「ざまあみろ、化け物小僧め!対戦車用のアンチマテリアルライフルだ!

 マシンガンがだめでも、これなら効いただろ!」

 

 喝采を上げるレッドリボン軍の軍人たちに、桃白白は面白くなさそうな顔をしたが、実際救われたのは確かだ。

 

 倒れ込んだ悟空は、地面にじんわりと血の海を広げて、何やらモゾついているようだ。

 

 だが、その脇腹には、大きな穴が道着を軽く貫通して痛々し気に広がっていた。浅葱色が血の赤に染まる。

 

 ドラゴンボールを入れていたリュックサックは、肩掛けが引きちぎれて地面に落ちていた。破けて、中身のボールをいくつかこぼれ落としている。

 

 悟空はぐったりして、かろうじて身動きするのがせいぜいらしい。当然だ。通常の人間であれば、そもそも穴で済まずに消し飛んでいるし、よしんば穴で済んでもショック死している。

 

 「う、く・・・」

 

 「はっ!油断したな、小僧!」

 

 苦痛にうめく悟空に、近寄った桃白白は勝ち誇った顔で、その背中を踏みつけようとした。

 

 桃白白は気が付かなかった。

 

 悟空が腰に引っ掛けた革袋から取り出した豆を、口に含んで必死に飲み込んだことを。

 

 次の瞬間、桃白白は吹っ飛んだ。跳ね起きた悟空に、ついでに蹴飛ばされたせいだ。

 

 「危ねえ。油断した」

 

 口元からあふれた血(内臓までダメージを受けたせいだ)をリストガードでぬぐって、悟空は独り言ちた。

 

 仙豆がなければ、あの世に行っていた。カリンからもらっておいて正解だった。

 

 だが、好都合だ。

 

 サイヤ人は戦えば戦うほど強くなる。死の淵から生還すれば、さらに強くなる。

 

 感覚で分かる。悟空はまた一歩、強くなった。

 

 革袋を帯に引っ掛けなおし、悟空は再び身構える。

 

 「ばかな?!小僧!さっきの傷はどうした?!」

 

 「へん!もう治したもんね!オラは不死身だ!」

 

 再びうろたえ始めた桃白白に、悟空は強気に言い放った。

 

 もちろん、はったりだ。自分だって死ぬときは死ぬ。ラディッツと一緒に魔貫光殺砲で撃ち抜かれたし、セルの自爆にだって巻き込まれた。超一星龍にも吹き飛ばされた。

 

 だが、仙豆のことを馬鹿正直に教える必要もない。

 

 「も、もう一回だ!」

 

 「わ、わかって」

 

 悟空を撃った軍人たちがもう一度大砲のような銃を構えようとしたが、次の瞬間悟空が右手から放った気弾に吹き飛ばされ、気を失った。

 

 大砲のような銃は、固定具が破損したため、もう使えないだろうが、悟空にとってはどうでもいいことだ。(撃ち手がいないなら、問題はない)

 

 かめはめ波以外の単発の気弾も、どうにか撃てるようにした。かめはめ波の方が威力の調整もしやすいのだが、あれは両手がふさがってしまう。目の前に(戦意喪失気味とはいえ)桃白白がいる中、両手をふさぐのは得策ではないのだろう。

 

 「降参しろ。もうお前ぇなんか相手にならねえぞ」

 

 最後通告を行う悟空に、桃白白はたじろいだが、ややあって両ひざをついて土下座した。

 

 「す、すまん!お前の言うとおりだ!私が悪かった!この通りだ!」

 

 えらく物分かりがいい、と悟空は最初思ったが、すぐに思い出す。

 

 前の世界でも、桃白白は最後、だまし討ちをしようとしてきたのだ。謝るふりをして、手りゅう弾を投げてきた。

 

 ちょうど、今のように。

 

 「隙あり!死ねぇ!」

 

 言うと同時に、桃白白は手りゅう弾の安全ピンを引き抜いて、悟空目がけてそれを投げてきた。同時に自身は爆発に巻き込まれないように高く飛びあがる。

 

 悟空の行動は速かった。手りゅう弾が地面に落ちるより早く、それを蹴り上げていたのだ。桃白白目がけて。

 

 桃白白は悲鳴を上げる間もなく、爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。

 

 かすかな気は感じているので生きてはいるが、当分再起不能だろう。・・・次に会うのは、6年後の第23回天下一武道会になるだろう。

 

 「た、桃白白氏がやられた・・・!」

 

 「う、嘘だろ?ブルー将軍を指も触れずに殺した、最強の殺し屋だぞ?!」

 

 ともあれ。

 

 最大の障害は、今なくなった。これで、心おきなくレッドリボン軍をつぶせる。

 

 壊れたリュックを捨てて、レッドリボン軍の部屋の一つにあった別のリュックに中身(ドラゴンボールと着替えの類)を詰めなおし、悟空は改めて、レッドリボン軍の基地の奥へと歩を進めた。

 

 再び、軍人たちや兵器が襲ってくるが、どこか及び腰だ。それはそうだ。世界最強の殺し屋をやっつけ、対戦車ライフルに撃たれても平気な、文字通りの化け物小僧なんて、相手にもしたくない。

 

 実際、何人かの軍人たちはもうこの軍は終わりだ、と逃げ出していた。命令違反は死刑だ!とわめくレッド総帥の声など一顧だにせずに。

 

 悟空が最奥にたどり着いた時には、撃ち殺されたレッド総帥に変わって、ブラック司令が手を組もうと言ってきた。

 

 悟空は知らないことだが、レッド総帥はチビであることをコンプレックスに思い、ドラゴンボールを集められた暁には背を伸ばしたいと望んでいたのだ。

 

 それを土壇場でブラック司令に漏らし、挙句そのことで苦言を漏らすブラック司令を頭ごなしに怒鳴りつけ、堪忍袋の緒が切れた彼に殺されたのだ。

 

 ブラック司令は、この期に及んであきらめが悪かった。どうにか悟空を丸め込み、軍の再起を図ろうとしていたのだ。

 

 もちろん、レッドリボン軍としてではなく、ブラックリボン軍として。

 

 だが、悟空がそれに乗るわけがない。ジングル村や聖地カリン、他にも大小さまざまなことがあるが、とにかく、レッドリボン軍の非道ぶりを放っておけるわけがない。それを放置するわけにはいかない。

 

 ブラック司令の取引を、悟空は拒否した。

 

 すぐそばにあった小柄な男の死体を、悟空が見逃さないわけがない。その額に空いた穴と、ブラック司令が持っていた銃を結び付けられないほど、悟空はおろかでもない。

 

 たった先ほど人を殺したばかりというのに、悔やむ様子も見せずに悟空に笑みを向けてくる奴など、ろくな奴じゃない。

 

 はっきりとそう理屈で理解したわけではないが、とにかく悟空はブラック司令は根本的に信用できない、したくない人間だと判断したのだ。

 

 ブラック司令はいつか見た、バトルジャケットに搭乗し、悟空に襲い掛かってきた。

 

 圧倒的なパワーと空を自在に飛び回る機動性で悟空を翻弄しようとするが、いかんせん操縦主となるブラック司令の目が悟空に追い付いていない。

 

 跳ね回る悟空がバトルジャケットを攻撃しまくる。撃たれたミサイルを蹴り飛ばされたのを見たブラック司令は目をむいた。(明後日の方向に吹っ飛んだミサイルは、山の形を変えた)

 

 やばい。この小僧に、これ以上かかずらうのは得策ではない。ここはいったん退いた方がいい。

 

 捨て台詞とともに、ブラック司令は逃走しようとしたが、悟空は逃がすつもりはなかった。

 

 勢いよく飛び出し、バトルジャケットのど真ん中に、貫通パンチをお見舞いしたのだ。

 

 そのまま爆発四散するバトルジャケットを見届け、悟空は舞空術で勢いを弱めながら着地した。

 

 ブラックの気は消失している。元々ブラックは一般人に毛が生えた程度の気しかもっていなかったし、あの爆発を至近距離で浴びたのだ。生きてはいまい。

 

 馬鹿だなあ、と悟空は思う。

 

 大勢の人間に言うことをきかせるなんて、自分にはできないことができるのに、どうしてその力でひどいことをしようとするのだろう。

 

 心を入れ替えれば、きっといい方向にいけただろうに。

 

 この基地のどこかにいるかもしれないDr.ゲロだってそうだ。ブリーフが天才科学者と評したのだ。人造人間たちだって、すごかった。どうしてあの技術力を、もっといいことに使えなかったのだろう。

 

 悟空はそれを、残念に思う。

 

 一つ首を振って、悟空は先ほどブラック司令と対峙した部屋に取って返した。あの部屋にドラゴンボールがあったはずだ。

 

 

 

 

 

続く




※逆行悟空の特徴 その7

 労働概念があるので、金銭概念もある。雪も知ってるし、寒さは苦手なので、先に防寒具を手に入れてからジングル村に行こうとしてた。合理主義的に。

 お金は悟飯老が多少残してくれていたので、牛魔王がくれなかったら、自分でそれを購入するつもりだった。

 良くも悪くも、優しい=甘いので、一度はひどいことした悪党でも、できるだけ生かそうとしてしまう。

 おそらく、彼が心底から怒り狂い、ぶっ殺す宣言をして実行に移したのは、一番最初にクリリンを殺したタンバリンだけと思われる。フリーザ(クリリンを2度目に殺して、当時は復活は無理と思われた)相手にすら、最後は見逃そうとしていたというのに。

 やっぱり調子に乗っているとわきが甘くなってしまう(サイヤ人なので!)。一応、この話は超ルートをたどる予定なので、復活のFの頃には、懲りているかもしれない。

 ちなみに、正史であれば聖地カリンの桃白白一回戦目では気絶しただけなので、サイヤ人特有の瀕死パワーアップはしていない(はず)。

 本シリーズでは、レッドリボン軍のちょっかいで、死にかけたので瀕死パワーアップしちゃったぞ!





Q.あの、レッドリボン軍戦が1話で終わってしまったんですが・・・?

A.あんまりグダグダやってもしょうがないので、(早く成人後が書きたいのじゃ!)肝心なところ以外はダイジェストカットで進行しました。
 あんまり原作と変わらない部分とかもありますしね。
 ただ、桃白白との対戦場所が、聖地カリンからレッドリボン軍本拠地になりました。
 ボラは死なずに済んで、その分恩義と感謝は薄くなってしまいましたが、たぶん悟空は気にしないでしょう。
 あと、悟空はサイヤ人特有の慢心のせいで死にかけました。おかげで瀕死パワーアップもしましたが。
 パワードガンで気絶程度なら、多分対戦車アンチマテリアルライフル辺りなら効くかも、となりました。文中にもあるように、本来人間が直撃したら木っ端みじんバラバラになります。
 逆行悟空の合理主義的な一面が書きたくて、ドラゴンボール探しの順序を変更しました。(あの修行馬鹿がカリン塔を知ってたら、人命優先はあれど、優先しないわけがないよなあ?仙豆ももらってくるよなあ?)この辺の差異も、のちに影響を与えてくるかもしれません。



Q.書いてませんけど、カメハウスメンバーたちの動きはどうなんでしょう?原作と大差ないんですか?

A.大体は同じです。
 ブルマは予備のドラゴンレーダーを制作した(本シリーズでブルーに奪われたのはこれ)、と言っていますが、ドラゴンレーダーは精密機器であるし、悟空にレーダーを渡した以上、ブルマが予備を作ってない理由がありませんから。
 カメハウスのありあわせ機材で偵察機を作成し、さらにドラゴンレーダーを搭載させてもいるようでしたから、ブルマはマジで天才。抜けてるところもあるけど、このくらいできそうとも思いましてね。
 カメハウスの買い出し用水陸両用潜水艇はダメになっていませんが、レッドリボン軍殴り込みに当たっては、ヤムチャが持ってきた高速飛行艇を用いています。(それは次回冒頭辺りでやりますが)
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