良い子だから   作:王勇を示す者

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勇者

 

 

 

 

 樹海、それは神樹様によって世界から切り離された結界内。此処に滞在を赦されるのは勇者と人類の敵であるバーテックスのみ。

 

「それ即ち······」

 

「それ即ち?」

 

 思考を突破し、ついいつもの口癖が出る。それに隣で樹海を一望していた須美がオウム返しで問う。

 

「アレがバーテックス、ってこと」

 

 その言葉通り、その視線の先には形容し難い異型の巨大生物がこちらへと近づいてきている。

 

「でかぁ·······」

 

「なんだかポヨポヨしてるね〜」

 

 ポヨポヨしている·······多分、アレから発生している球のような物についてだろう。詳細はもっと近くでなければよくわからない。

 

「はい、ぽちっ」

 

「え、ちょ、千歳さ――」

 

 全てが初めてでグダグダしている皆を置いていき、一人スマホを操作し謎のボタンを押す。その正体こそ彼女達を勇者たらしめるシステム。

 

 ―――オジギソウの花々が舞う。

 

 空色の髪を揺らし、換装していく。

 元着ていた制服を書き換え、青、ではなく蒼色を少し薄くしたような色と白色を基盤とした服へと変わる。

 

 右腕には唯一髪色と同じような空色に雲を表現したかのような白色が混ざりあっている弓籠手が装着されている。更に特徴的なのは、背中から長布が頭の方へと伸びており、その端麗な顔を隠すようにして垂れ下がっていることだろうか。

 

 左腕側は蒼色と明言したように干した青草のような色の肩当てがついているのみで、それから下は白色の素肌を晒している。

 

 胴体部分は袴のようなものを着、腰部分には帯のようなものが巻かれている。それによって胸が主張され·······ああ、しっかりありますね。須美には劣るものの園子よりは少し大きいのが付いている。

 

 最後に下半身部位へ。こちらも露出控えめになっており、ダボダボな柔道着のようなものを着ている。これにて勇者服への換装は終わり、最後に自身の身長程の弓が左手に握られる。

 

 想像し易いように言うならば、fgoでの巴御前第一再臨の色違い&長布追加、肩当てが左側へ。そんな姿だ。これで少しは想像し易い、かな?

 

「ふぅ········あれ、皆は?」

 

「色合いミスってね?」

 

「私はいいと思うよ〜、ぐっ」

 

「それ、見えてるの?」

 

 心春の勇者服を鑑賞し、三者三様といったふうに反応していく。ま、まぁ確かに色合いは·······少女が着るようなものではないと思う。だが、彼女にとってはこれが正しい。

 

 長布で顔を隠しているというのになんら変わらずこちらへと体を向ける心春に疑問を抱き、須美が彼女へと問いかける。

 

「ん〜、いつも通りだけど········何処か可笑しい?」

 

 どうやら、彼女視点では長布がないような状態で見えているようだ。どのような原理かはわからない。多分神樹様パワーだと思う。

 

「なら、いいのだけど·······」

 

 本人がそう言うのであれば問題なしと判断し、思考を切り替える。

 今すべき事は敵を倒すこと。つまり、次起こす行動は―――

 

「よっしゃ、アタシもへ~んしんっ!」

 

「私も私も〜」

 

「貴方達、御役目中よ」

 

 おちゃらけた様子で勇者システムを起動する園子と銀に苦言を呈しながら、須美も起動する。すると、たちまちに光に包まれ換装していく。その間、心春は動作確認をしていた。

 

 矢をどう出すか。力の入れ具合は。踏ん張りがどこまで効くか。どのような機能が備わっているのか。

 矢は念じることで出現。力は本来の数十倍程のものが入れれる。踏ん張りも同様。特殊技能と思われるのが二つ。

 

 ふぅ、と呼吸を整え未だ進行しているバーテックスを睨む。一人で倒せる、などとは驕っていない。今は観察だけに収めるべきだと判断し、番えていた矢を()()

 

 放たれた矢は一切減速、高度変更することなくバーテックスへと直撃し、―――爆音が鳴り響いた。

 

「これは良いですね」

 

 一つ目の特殊技能。矢に籠もっている神力を起爆剤とした広範囲爆撃。矢という人間に対して絶大な一撃を誇る武器は化け物にとっては投擲された小石に等しい。故にコレはその致命的な弱点を補うがために設計された技能である。

 

「なになに!?もう始めてんの?!」

 

「ひゅ〜♪どっはで〜」

 

「かなりの高威力········凄いわね」

 

「称賛は後で。まずはアレを倒しましょう」

 

 再度矢を引き絞り、目標をバーテックスへと定める。先程同様のものを与えれば、少しの時間は稼げるだろう。その間に武器から見て近接であろう園子と銀が近づければ御の字、出来なければ二人には頑張ってもらおう。

 

「そんじゃ、アタシの出番だなっ!」

 

「あっ、ミノさん待って〜!」

 

 猪の如く双斧を握り締め走る銀を追いかける形で園子がバーテックスへと向かう。そんな光景を心春と須美が矢を番えながら眺める。

 

「須美ちゃん、私達は援護に回ろう」

 

「ええ。」

 

 矢を番え、バーテックスの行動に注意を払う。どのような手段を用いようがその悉くを穿こう。

 

 銀と園子がバーテックスまで、後1km程になった頃だろうか。ただ進行するだけだったバーテックスに動きがあった。

 バーテックスの体の一部である青いビー玉のようなものから水球がミニガンを乱射したように銀達へと放たれる。

 

「―――ッ!」

 

 刹那、水球が破裂したかのような音が樹海を木霊した。

 

「ナイスアシストォ!」

 

 障壁が薄くなった所をその小柄なを体を利用してスルリと抜け、バーテックスへと近づく。

 

「っ、突撃ぃ〜!!」

 

 障害がなんのその。自ら水球へと突撃し、槍の矛で破裂させる。そして、そのままの勢いで青いビー玉を貫く。

 

「もう、いっちょお!!」

 

 園子の突貫によって、後ろへと倒れそうになっているバーテックスにさらなる追撃を加える。これにより、片方の青いビー玉の輝きは消え失せ、水球の生産が半減する。

 

「南無八幡、―――大菩薩っ!」

 

 神力最大チャージの一射を片方のビー玉へと放つ。もちろん防ぐ手段も回避する俊敏性も持ち合わせていないため狙い通りビー玉へと直撃する。

 チャージ満タン、そんな矢が当然普通の範疇に収まる訳がなく、直撃した場所が消失したかのようにポカリと穴があく。

 

「それでは私がトドメを」

 

 そう言った次の瞬間にはバーテックスの残りの体の5割が消失する。まるで超極太の弾丸で撃たれたかのように大きな穴が5つ出来る。

 先程とは違い、少し余裕が出来た須美が彼女を見ていたが、一射目以降なにも見えなかった。

 

 ―――夜空のような空が様々な色彩に輝き出す

 

「わぁ·······」

 

「きれい········」

 

「これが、鎮花の儀·······」

 

 これにて勇者である彼女達の御役目は終了。誰一人として欠けることなく勝利出来たのならば、それは大勝利と言って差し違えない。

 

 バーテックスとの戦闘により、離れ離れになっていたが、なんとか樹海化が解ける前に再度集合することが出来た。あとは待つのみになったのだが········心春が口を開く。

 

「それでは私に称賛をどうぞ。今回のMVPは私ですので」

 

「「········え?」」

 

「よしよし。るーちゃん、凄かったよ〜」

 

 目を点にした銀と須美をスルーし、園子が長布の上から心春を撫でながら称賛を送る。

 

「もっと。もっと、くださいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、いうことで樹海化が解け、本来彼女達が生活している現世へと戻ってきた。場所は瀬戸大橋が一望出来る場所に位置している祠へと移る。

 

「えっと········千歳さん、なんで三ノ輪さんの服の中に?」

 

 外だとわかった次の瞬間には、銀の制服の下、つまりは銀のシャツに顔が密着するように隠れている。ただ、髪が長いということもあってはみ出ている。

 

「あー······心春は極度の人見知りというか、なんというか·······」

 

「おそと、こわい·······」

 

「········」

 

 何故か幼児退行したかのように銀にしがみつき、顔を見せようとしない。これには初見の須美は大困惑。事情の細部まで知っている園子は罰が悪そうに瀬戸大橋を眺める。

 

 

 

 

 

 

 

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