良い子だから   作:王勇を示す者

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今日という日のために

 

 

 

 

 

 

 バーテックス撃退後、彼女らの担任兼お目付役である安芸先生によって他生徒への説明がされた。

 勇者が行う御役目は大赦関係者以外知ってはいけない事項となっており、絶対に明かしてはいけない。ただ、その行為が神樹様のためになるということだけが明かされ、他生徒から尊敬の眼差しを向けられる存在となる。

 

 と、これが大人の闇を知らない子供たちから見た勇者像だ。大人からしてみれば、彼女たちがなにをして、その成果のなにが神樹様のためになるのか。不思議でしょうがないだろう。だが、その答えを知ることはない。触れてはいけない闇なのだ。

 

 さて、次に移ろう。安芸先生が他生徒への説明を成した、翌日の放課後。さぁ帰ろうと帰りの支度をしていた心春、園子、銀は須美によって引き留められ―――

 

「いぇーい、かんぱーいっ!」

 

「かんぱ〜い!」

 

「か、かんぱい······」

 

「········」

 

 所変わり、彼女たちは大型ショッピングモールであるイネスへと来ていた。もちろん、その目的は初の御役目達成の祝勝会である。

 フードコードエリアに設置されている椅子に座り、各自頼んだジェラートをスプーンで掬って食べていく。ちなみにその他の客はカップル二人組しかおらず、伽藍としている。

 

「ほら、心春。早くしないと溶けちゃうぞ?」

 

「お構いなく········」

 

 銀の呼びかけには応じて顔をだすものの、またすっと鞄で顔を隠してしまう。そんなことをされれば、お構いなく出来ず気になってしまう。

 

「折角の美麗なお顔が隠れるのはもったいないわね·······」

 

「ダメだよ〜、スミスケ〜。るーちゃんにとってそれは忌み嫌うことなんだから」

 

「スミスケ·······コホン。乃木さん、それはどうして?」

 

「どうしても〜」

 

 意味ありげな言葉を落とし、ジェラートを頬張る。須美からの追求ものらりくらりと躱し、またまた頬張る。

 

「まぁまぁ、それよりもさ。なんで須美は園子のことを『乃木さん』なんて呼んでんだ?」

 

「えっ。いや、だって···その····」

 

「そうだよ〜、スミスケ〜。私、悲しいな〜······」

 

「うっ·····」

 

 ここぞとばかりにぐいっと近づき、涙ぐんだ瞳で須美の情に訴えかける。頭カチカチであっても、心優しい須美にとっては大ダメージだ。

 

「これから長く付き合っていくことになるしな。三ノ輪さん、なんて他人行儀なのはなしだぞ?」

 

「えっと、それじゃあ·······」

 

「銀。銀でいいよ、須美」

 

「ぎ、銀·······?」

 

「よしっ!」

 

 初めての名前呼びにガッツポーズをかまし、喜びを体全体で表現する。これには、遠くの席に座っていたカップルの片方が気づかれない程度に笑う。

 

「良かったね、銀ちゃん。それじゃあ須美ちゃん、私も私も。ちーちゃんでもとーちゃんでもせーちゃんでも、なんでもいいよ」

 

「な、なんでもは·······」

 

「その状態でいくんか」

 

 鞄のせいか少しくぐもった声で須美へと園子がつけたあだ名のようなもので要求する。

 

「ん、ん〜゛········心春ちゃん、でいい?」

 

「いいですよ、いいですよ。素晴らしいです」

 

 鞄のせいで見えなくとも照れてるのが丸わかり。これは最高点ぶっちぎり(訳:可愛すぎかよ)

 

「わくわくっ♪」

 

「········そ、そのっち?」

 

「くぅ〜!スミスケ、きゃわわ〜♪」

 

「ぐぇ、なんで私·······」

 

 目をシイタケ模様にしながら、須美に飛びつこうとするもテーブルによって阻まれる。よって、須美に抱きつくのを諦め、隣にいる心春へと抱きつく。

 

「その·······スミスケは辞めてほしい、かな」

 

「じゃあじゃあ、わしりん?わっしーな?すー?」

 

「·········わっしーでお願い」

 

「よろしくっ、わっしー♪」

 

「う、うん」

 

 普段の十倍ぐらいハイテンションでずいっ、とテーブルお構いなしに須美へと詰め寄る。そんな園子に少し引きながら、なんとか応える。

 

「そんじゃっ!これからも頑張ってこうな!」

 

「えいえい、」

 

「「おー!」」

 

「お、おー?」

 

「······おー」

 

 そんな掛け声と共に終始まとまらない祝勝会は終わりを告げた。ま、まぁ、園子と銀はまとまってるしぃー······不安だ。特に残り二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未だ沈まりきれない夕日を背にお迎えである車へと乗り込む。その間、心臓の鼓動を感じるように右手を当てる。いや、正確には服の下にあるネックレスを握っているのだが··········然程違いはないだろう。

 

「あ、心春様お帰りー。楽しかった?」

 

 リアドアを開き車へと入る際、既に座っている使用人らしき服装をした女性から声がかかる。

 使用人、と言っても態度はそれがするものではない。

 返答を考えるながら、リアドアを閉める。

 

「うん、楽しかった。葉久はなに飲んでたの?」

 

「私はメロンソーダでー、先輩はイチゴのジェラート食べてたよー」

 

 津城(つしろ) 葉久(はく)、千歳家の心春専属の使用人兼体術指南者。

 とある特殊な経歴を持つが、それを今ここで話す必要はない。ただのゆるふわ使用人だとでも思っていてくれ。

 

「明さん、イチゴのジェラートどうだった?」

 

「美味しかったですよ」

 

 自分とは違う味を頼んでいることもあって、つい運転席に座っているもう一人の使用人へと問いかける。それに無愛想ながらも返答する。

 

「うっそだぁー。値段と釣り合わないとか言ってたくせに。どういう風の吹き回し·······心春様だからか」

 

「なに、勝手に納得してるんですか。違いますからね。ただ、貴方と食べると美味しさ減だと言いたかっただけです」

 

「慌ててる」

 

「慌ててるね」

 

「違いますっ!」

 

 現在形で二人にからかわれているのは弓波(ゆみなみ) (めい)。この人も心春専属の使用人であり弓術指南者である。弓術、と言っても弓道の心得も説いている。

 

「はい、ここまでです。二人共シートベルト着用してください」

 

「りょうかーい」

 

「着用、オッケーです」

 

 未だかつてない軽い承諾を聞き、車を走らせる。もちろん行き先は愛しのマイホーム。

 

 さて、少し千歳家について語っておこう。

 千歳家。乃木の末端にあるような遠い親戚のような存在だ。つまり、園子と心春は従姉妹?ってことになるんだろうか。多分なる。

 てことで以上。語るの終了。お疲れしたー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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