ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー 作:オウガ・Ω
「…アスカロンの関節部ABSランナー加工終わり、次は胴体をやるか」
バラバラになったアスカロンの関節軸の強度を確認し、ほっとした表情を浮かべるタカヤ、先日のチームN、中島ノーヴェとのガンプラバトルで破損したアストレイ・ブレイドの修理をすすめるタカヤ、胴体をパーツセパレーター(一度嵌めたガンプラのパーツをばらしたりするもの、作者は電ホに付いていた川口名人のを愛用しています)で丁寧に分解する
「………良かった。これならPPSE謹製セメント(流し込み接着剤、主にスケールモデルに使われる)を流しこめば大丈夫だ」
深刻なダメージで無いことにほっとすると、手早く作業に取りかかろうとセメント接着剤のふたを取る。しかしその手が止まる
「中島さんのOガンダム・B、強かったな…アスカロンとブレイドを《完全形態》にしないと勝てない…いや、もっと上手く僕がブレイドを使いこなせるようにならなきゃ」
二日前に、師であるマスタージャパンに組まれたガンプラバトルに負けてから、タカヤはブレイドの細部に改造を加えてきた、今度は負けない、そう心の中で呟き再び作業をはじめる…再び手が止まる
「…………セメントとリード線が切れちゃった…」
接着剤が切れていた事に気づくも時計の針は明日になろうとしている…明日、学校の帰りに模型店によろう。そう考えるとブレイドを箱に入れると、そのままベッドへ倒れ込むと眠りについた…
机の上におかれたスケブに描かれていた《オレンジ武者?》に似た追加装甲姿のアストレイ・ブレイドの絵はやがて室内灯が消えると見えなくなった
第二話 強化(前編)
「ん~やっと終わった~」
最後の授業の終わりを知らせる音が響き教室内がざわざわなり席を立ち、他の生徒と共に教室をでる…《蘊奥館》は歴史は古く文武両道を旨としながら学生の自主性を重んじる校風が特徴であるココにタカヤは通っている…
「……急がないと……」
「待っていたよ、秋月タカヤくん」
教室をでてすぐ呼び止められる。声の主を見ると白の胴着に黒袴に身を包んだ黒く長い髪を白い髪留めで止め、タカヤより年上の少女が笑みを浮かべている
「……ミカヤ先輩…前に言いましたけど、僕はガンプラ部には…」
「即答か、君のそういうところは私は好きだな。話は変わるが、ずいぶん急いでいるみたいじゃないか?誰かと逢い引きの予定でもあるのかな?」
「……………あの…逢い引きって何ですか?」
「……………そうだった。キミがそういうのに詳しくないことを忘れていたよ。それより急いでるんじゃなかったのかな?」
「あ!す、すいません、僕はここで……失礼しますミカヤ先輩」
頭を下げタカヤは急ぎ足で駆けていく。その姿を見送る少女…蘊奥館中等部三年《ミカヤ・S・天瞳》は何度目になるガンプラ部への勧誘が失敗した事に肩を落とした
「………こうも頑なだとはな…ますます欲しくなったよ。マスタージャパン先生の愛弟子《秋月タカヤ》としてではなく《君》自身をね…」
柔らかい笑みを浮かべ黒髪をなびかせ歩き出す。ガンプラ部、チーム《天瞳》率いるミカヤ・S・天瞳はタカヤをどう引き入れるかを思案した頃
「…ヘクシュ!か、風邪かな……確か模型店はここらへんかな?今日に限ってサエグサ模型店はお休みだし…」
スマホのナビを頼りに歩くタカヤ…いつも寄るサエグサ模型店が臨時休業していた為だった。臨時休業の看板の向こう側で「コレは売れるわよ!」「やめろったら姉貴!怖い母狼がきたらどうするんだよ」「ああ~静かにしろよ!あたしのガンプラを早めに完成させなきゃなんねんだからな!」と聞こえたのは気のせいだったのだろうか
「や、やっと着いた…」
さわざわざ隣街まで足を運んでいたのだが見知らぬ道に迷いようやく目的地にたどり着き店の扉をくぐると…
「いらっしやいませ~♪ナカジマ・ボビーへようこ……………な、な、な、なんでお前がココに!?…………」
黒を基調としたメイド服に白のオーバーニー、フリルが付いたカチューシャ、白いエプロン越しでもわかる豊かなふくらみ…メイド服姿の中島ノーヴェの営業スマイルが崩れ顔がみるみるうちに真っ赤に染まりしどろもどろになりながら口を開いた
「な、中島さんこそなんでココに?アルバイトしてるんですか?」
「そ、それは…」
「ノーヴェ、お客さんきたの!美人メイドさん作戦は成功だね!」
「当然だ!この姉が立案した作戦は完璧だからな」
「でもでも~もう少し色気が欲しいッスね…胸をこう,谷間と太ももをアピールすれば」
「バ、バカ!さわるなウェンディ!客が、秋月がいんだから止めろ!?」
「ダメッスよ。あたしたちとのガンプラバトルに負けたんだから………って秋月?へぇ~この子がノーヴェをキズモノにしたって言う男の子?」
必死にスカートを押さえるノーヴェ、しかしウェンディの言葉に騒がしかった店内の温度が一気に下がる。同時にタカヤの背後にメガ粒子砲、いやシュベルトゲベール、アーマーシュナイダーが突き刺さるような気配。恐る恐る振り返ると白髪が目立つナカジマボビーとかかれたエプロン姿の初老の男性が額にぷっくり血管を浮かばせ立っている
「………オレの娘をキズモノにしただあ!?……いい度胸だ坊主うぅ!」
「お、おと~さん?違うからな?あたしじゃなくてガンプラ…」
「そ、そうですよ!僕は中島さんをキズモノにしたわけじゃなくて……」
「じゃあ何だ!ウチの娘たちの誰かなのか!ウェンディか!チンクか!ディエチか!ギンガか!スバルか!まさか全員キズモノに……」
「いい加減にしなさい貴方!」
「グガ!?」
見事な手刀がはいり糸が切れたようにガクリと膝をつく男性を掴むのは、腰まで伸びた髪を白いリボンで結んだ女性が申しわけなさそうな顔をしている
「ごめんなさいね~ウチの人ったら早とちりしちゃって…チンク、ウェンディも悪のりしないの」
「す、すまないクィント母上」
「ごめんなさいッス…クィント母さん」
「反省したならよろしい♪ノーヴェ、お客様を案内してあげて、わたしはこの人を部屋に休ませたら、二人と買い出しにいくから、お店番よろしくね」
ぐったり気を失った男性を抱え店の奥に消えると、ノーヴェが大きくため息をはくと乱れた服装をなおしながらタカヤに向き直る
「あ、悪かったな…騒がしかっただろ?姉貴たちはいつもあんな感じでさ。そ、それより、なんであたしんちに来たんだよ?」
「じ、実は家の近くのサエグサ模型店が臨時休業だったから…この前のバトルで壊れたアストレイ・ブレイドの補修材を買いに…」
「そっか…んで、なにが必要なんだ?」
「リード線とPPSE謹製セメント接着剤を…」
「ちょっと待ってろ……確か…」
タカヤの言葉を聞いて、棚の一角、様々な厚さのプラ版、アルテコパテ、プラ角材が陳列する下にある引き出しから、リード線とPPSE謹製セメント接着剤を取り出す
「これでいいか?あと必要な材料はないか?」
「はい、あと此処って工作室ありますか?」
「ああ、あるけど。まさか持ってきてるのか?」
ノーヴェの問いに頷くタカヤ…よほど愛着があると感じ取りながら会計を済ませ、二人が向かったのは工作室。机が十席並び一つに座るとバックからアストレイ・ブレイドの入った箱を取り出すと早速修理をはじめる
「あの~中島さん?何か変ですか?」
「べ、別に……そのパーツセパレーターって電ホに付いていた奴だよな」
「はい、先生が『ビルダーならば必ず持つ必需品だ』って……分解できた、あとはPPSE謹製セメント接着剤を流し込んで」
亀裂にセメント溶剤をスウっと流し込む…瞬く間、亀裂が埋まり固まっていく。PPSE謹製セメント接着剤は短時間でプラとプラをとかしくっつける特殊溶剤、タカヤはアストレイ・ブレイドの制作にはこれを使っていた
「……………」
(な、何だろ。中島さん、さっきから僕の手ばかり見てる…)
「(へぇ~丁寧に分割加工してるんだな…マスターのおっさんのやり方と似てんな…それに楽しんでるな…ん?)…まて、そこは凸凹モールド入れたらリアルになるんじゃないか?」
「あ、そうですか?じゃあ…あ、あの中島さん」
「ん?」
「な、何でもないです」
顔を真っ赤にしうつむくタカヤ…なぜならメイド服姿のノーヴェの太もも、さらには豊かな胸がいやでも視界に入る体勢は思春期真っ盛りな少年には毒にしかならないのに気づかずさらに身を乗り出す
「ほら、はみ出してる部分は削らないとダメだろ?貸して見ろ」
「……え、あ、はい」
「デザインナイフで削って、800、1000、1200で仕上げればOKだ。ほらあとは何かあるか?」
「い、いえ…中島さんってビルダー歴ってどれぐらいなんですか?」
「アタシか?まあ、二年ぐらいかな…良し、出来たぞ………なあ何で両腕にこんな扱いづらい剣をつけてんだよ?アストレイならビームサーベルやアーマーシュナイダー、ビームナイフとかがあってるんじゃ「このままでいいです」……え?」
「………アスカロンは…僕だけの刃だから……」
強い意志が込められた言葉と瞳を見て目をそらしたノーヴェ、その頬は朱がさしている……
(コイツ、なんて目してるんだ……ああ、もう!ほうっておけないな)
「なあ、少し時間はあるよな?あたしとガンプラバトルやらないか?」
「え?でも僕のアストレイ・ブレイドは……」
「あたしんちのヤツを使いな…ま、姉貴たちが作った奴だけどな」
★★★★★★★★★★
「……行きます」
「やっぱりアストレイできたか……ま、いいか……いくぞタカヤ!」
荒野を舞台に地を蹴り戦うのはOガンダム・B、そしてアストレイゴールドフレーム天ミナ…トツカノツルギを抜き関節をねらうも脚部タービンで蹴り弾く、だが直ぐに間合いを取りマガノシラホコを射出する
「(タカヤの奴、初めてあつかったばかりの天ミナを使いこなしてやがる、アストレイ・ブレイドを使っているときより動きがいい!)………へぇやるじゃないか!」
「中島さんこそ、この前よりチューンしましたね!うわっ!?」
「余所見してるばあいか?」
腰を沈めた蹴りが天ミナの顔面をとらえ、さらに連続蹴りが襲いかかる…が寸前で交わしていく
(うわあ~みてよギン姉、ギン姉の天ミナをあそこまであやつるなんて…あの子何者?)
(たしかマスタージャパンさんのお弟子さんらしいよ、スバル)
(それにノーヴェったらあんなに楽しそうにガンプラバトルしてる……あの子の事、気に入ったのかしら?)
二人のガンプラバトルをこっそり観戦する3人の姉たちをよそに、闘いが激しさを増していこうとしたその時、一条の光…極太のビームが襲いかかる。寸前でかわした二人の前に一体のガンプラが姿を見せる
左右非対称のパーツ構成、外観からウィングガンダムをベースにしたカスタム機…それをみたノーヴェの身体が震え出す
「あ、アレは…」
「知っているんですか?」
「バ、バカ!知らないのか!あれはガンプラバトル世界大会常連、イタリア代表が駆るガンプラ…」
高台に降り立つと非対称の翼を広げる姿…その機体からは今まで出会ったビルダー、ファイターとは違う空気にスフィアを握る手に汗がにじむ
「ウィングガンダムフェーニチェ、リカルド・フェリーニ!」
「さて、マスターの弟子……秋月タカヤ、その実力を見させてもらおうか!」
ノーヴェ、タカヤのいるバトルシステムの反対方向にいる男、イタリアの伊達男《リカルド・フェリーニ》
…いやウィングガンダムフェーニチェはゆっくりとバスターライフル改を構えた
第二話 強化(前編)
後編に続く
突然、二人の前に現れた世界大会常連、リカルド・フェリーニ…その実力を前に苦戦するタカヤとノーヴェ
果たして戦いの行方は?
次回、強化(後編)
タカヤの中で何かが目覚める