ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー   作:オウガ・Ω

2 / 54
「く~ちゃん……ん、く~ちゃん……や…」


薄暗い室内に甘く切ない声が響く…シーツは乱れたベッドには古ぼけた写真にキスをしハイライトの消えた瞳に怪しい色香をのぞかせている

成長期を迎えた膨らみに手をそえ、のこる手はまだ自身しか触れたことの無い部分…薄布越しに指が動くたび身体が震え指先がピンとはりのぞけギシギシなる音が一層、響いた


「く~ちゃ……わたし……く~ち……ん!んんっ♡」



身体が震え力なくベッドに身を任せる彼女はゆっくり指をみる。濡れているのを目にし彼女は深いため息すると写真へ目を向けた


真っ赤な髪にアホ毛がピンと立つ強気な目をした男の子の顔の部分にゆっくり唇を近づけキスすると衣服を正し瞳を閉じる


「……く~ちゃん…強くなってぜったいにヤーパンに会いにいくよ……強くなった私をみたら喜ぶよね」


小さく紡がれた声は誰の耳にも届かず、静かになった部屋に響いた…



刃ーブレイドー番外編、Blade・strike!(後編)

ヤジマカンパニー、ベルリネッタ家のスタッフが明後日に行われる《日独親善ガンプラバトル大会》の準備に追われている中、会場の近くにあるヤジマカンパニー系列のホテルの一室で新プラフスキー粒子開発、バトルシステム開発責任者ヤジマ・ニルスはクロウと向き合うように椅子に座っていた

 

 

 

 

「…あ、あの~ニルスさん。怒ってますよね」

 

 

「…クロウ、いままでどこにいたんだい。連絡もよこさずにセカイに言づてして、別行動をとるなんてチームメンバーとしての責任はないのかい?」

 

 

「……勝手な行動をしてすいませんでした……」

 

 

「………今後はこのようなコトがないように気をつけるんだ。君はヤジマカンパニー選抜チーム、日本の代表の名を背負ってることを忘れないように……」

 

 

 

「はい……」

 

 

「………さて、説教はココまでにしよう…さあ部屋に戻…」

 

 

「あ、あの……実はニルスさんに頼みたいコトが…」

 

 

 

部屋をでようとし立ち止まるクロウの真剣な眼差しにニルスはバトルフィールド用粒子供給システム調整をする手を止めた

 

 

「なんだい?」

 

 

 

「実は、この孤児院について調べて欲しいんです………」

 

 

 

「………(……もしかしたらコレが先の単独行動の理由かな……)わかった。明日の朝までには調べておくよ」

 

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

バッとニルスに深く頭を下げクロウは慌ただしく部屋をあとに出ていったのをみて軽くため息をつき、ヤジマカンパニー系列会社調査部へと孤児院の調査を依頼し再び作業に戻った

 

 

 

 

刃ーブレイドー番外編、Blade・strike!《後編》

 

 

 

ヤジマカンパニー、ベルリネッタ家との日独親善ガンプラバトル大会当日…すでに大会は熱狂の渦に包まれていた

 

 

 

「次元覇王流!聖・槍・突きぃ!!」

 

 

「うわあああ!!」

 

 

赤く猛るような炎を全身に纏いながらセカイさんのカミキバーニングガンダムの拳がジ・Oとサザビーのミキシングカスタムの分厚い装甲を砕き、勢いをつけたたまま廃コロニーの外壁を炎のようなプラフスキー流子と共に粉砕していく

 

 

相変わらずセカイさんは凄い……ヤジマ選抜チームとベルリネッタ家が擁するガンプラファイター育成ジム《フロンティア・ジム》の試合は互いの代表者を5人ずつ出して行われるチーム戦

 

 

初戦にキジマさんが勝ちを納めての二戦目

 

 

「さすがはフロンティアのファイターなだけはある……(ち、こっちの動きを読んでやがるか、いやオレと戦うようにガンプラを仕上げてきたか…しかもトールギスかよ!!)」

 

 

「(ジルコーチの言うとおり、バスターライフルを撃つ時にわずかに腕が下がる………いまだ!!)」

 

 

 

フェリーニさんのガンダムフェニーチェ・リナーシタのわずかな隙を突いての突進、ドーバーガンに仕込んだビームランスで穿ち倒されるなんて…続いてのバトルはグレコさんとのバトルは接戦になった

 

 

 

「ガンダムグリープ、変形機構を完全再現しつつ武装追加してるか……だが負けるわけにはいかん!!」

 

 

 

 

「つ、強い………でもグリープタキオンは負けないんだから!!」

 

 

 

高出力バーニアを展開し超加速の戦いを繰り広げるトールギス・ワルキューレ、ガンダムグリープタキオン…ぶつかり合いながら光の軌跡が火星の空を彩っていく…互いに撃ち、斬り、拳で殴る、蹴る…怒涛の応酬はタイムアップを迎えてVアタック方式に持ち込んで捨て身のビームランサーを上体そらしで交わしてのビームサーベルで逆袈裟で切り払おうとしたけど同時に互いの刃が切り裂いて、まさかの引き分けになった

 

 

四戦目はドイツ出身のチョマーさんは…

 

 

「ち、はやいな!、だがパーフェクトゲルグク・チョマーカスタムをなめるなよ!!」

 

 

 

「さすがは世界戦常連…ガンプラもファイター技量も高い!でもイフリート・リッターは負けるわけにはいきません!!」

 

 

 

チョマーさんのパーフェクト・ゲルググと槍と斧を合体させた戦斧を振るうイフリート・リッターのビーム砲撃、電撃の撃ち合いでアバオアクーが半壊するほどだった…でもアーマーパージしてからの格闘戦に持ち込まれて僅差でチョマーさんが負けてしまった…………でも

 

 

「あ、あの………よろしければ今度一緒にガンプラ買いに行きませんか?」

 

 

 

「え?い、いや……よ、喜んで!!」

 

って試合が終わってすぐに相手ファイター、みた感じ元気っ娘なかんじでたしかキャリー選手だっけ?いきなり誘われてチョマーさんが慌てふためいていたけど……まあ、いいかな。話は戻すけど今のセカイさんの勝利を含めてで2勝2敗1引き分け…

 

 

今日のガンプラバトル最終戦…オレのバトルが最後を飾る…軽く頬をパンっと叩くとGPベース、そして相棒《アスタロト・ブレイジング》を手にし会場に入ると歓声が湧き上がった

 

 

 

「さあ、皆様!日独親善ガンプラバトル大会本日最後のバトル、ヤジマカンパニー選抜チーム《アキツキクロウ》選手の入場です!!」

 

 

スポットライトに照らされた通路を歩くオレに観客席から拍手と歓声が沸き上がる中、まっすぐ歩いてく

 

 

『全日本U15ガンプラバトル大会を二回制覇、さらには昨年行われガンプラバトル世界大会においてベスト8進出を果たした若きファイター!愛機であるアスタロト・ブレイジングを駆り戦う姿はまさに紅い鬼……《紅の鬼神》の二つ名は伊達ではありません!!』

 

 

 

いや、紅の鬼神って…っうかいつの間にか広がってるし……中央に12基並べられたバトルシステム筐体の前に立つと反対側にさっきとは違うスポットライトが無数当てられスチームが吹き出した…どうやらオレの相手の入場みたいだ

 

 

 

『続きまして、今大会の主催であるベルリネッタ家擁するフロンティアジム所属ファイターにしてベルリネッタ家の後継者。ガンプラバトル欧州U15大会2連続覇者、純白の女王《リンネ・ベルリネッタ》の入場です!』

 

 

 

光に照らされた先にはオレの相手…みた感じ同じ年齢のリンネ・ベルリネッタ選手がふわふわした髪のお袋より若いコーチ?と一緒に歩いてくる

 

 

『二年前、彗星のようにヨーロッパでおこなわれるガンプラバトル大会に出場するや、圧倒的なパワーに加え遠近戦に対応したバトルスタイルは近寄れば相手の防御を貫き、組ませれば豪快に叩きつけ粉砕する姿、使用するガンプラ、ガンダムバエル・リィンを操る姿は《純白の女王》と呼ばれるのに相応しいです。さあ、これより始まる本日最後のガンプラバトルを勝利するのは誰か?』

 

 

 

簡単な紹介を終え区切った司会者《ストーカー》さんから目を離して筐体に立つ…目の前にはリンネ・ベルリネッタ選手がオレを見てる…いやアスタロト・ブレイジングを凝視してたけどすぐに視線を逸らしGPベースを手にスロットに、中央にガンプラをセットした

 

 

あれはガンダム・バエルか…よく見ないとわからないけど相当に使い込まれ補修し強化もされてる…ハルおばさんのガンプラとにてる……っと今は試合に集中しないとな…この試合中継はドイツを含めた欧州すべてに流れる、もし視てるなら気づいてくれるはずだから

 

 

 

昨日未明、ヤジマカンパニー選抜チーム宿泊ホテル

 

 

同ヤジマ・ニルス宿泊室

 

 

 

「……孤児院が……閉鎖された?六年前に………なんで」

 

 

 

「落ち着いて聞くんだクロウ…ヤジマカンパニー調査部で調べてわかったコトをいうよ……」

 

 

 

…ふらつきながら椅子に座ってニルスさんから話してくれたのは今から六年前に孤児院を経営していた院長先生が亡くなって運営が難しくなって、まもなくして孤児院の皆はソレゾレ別な場所に預けられたって事までだった

 

 

なんだよ……みんな……院長先生、シスターイクス……り~た、ふ~た……もう会えないのか…探すための時間も大会中のスケージュールは分刻みでほぼ無いし、何よりチームとして単独行動をとるわけにはいかない

 

 

「クロウ、調査部の方でも他の孤児院に行った子や関係者に関しての追跡調査をしている……もしわかったらすぐに君に伝えるよ」

 

 

 

「……はい」

 

 

「待つんだクロウ」

 

 

そんまま席を立とうとしたけど力が入らない…冷めたコーヒーを飲もうとした時、ニルスさんが口を開いた

 

 

「この大会はドイツも含めた欧州全域にリアルタイムで放映される…もしかしたら君が探している孤児院の子たちも観るはずだ」

 

 

「!?」

 

 

「キミの試合を見れば必ず連絡が来るかもしれない……ガンプラで繋がったら縁が切れていなければ必ずココに」

 

 

 

「会場にあらわれる!!でもアイツら会場に入れるかどうか…」

 

 

 

「心配しなくても大丈夫。一応身元確認をしてから会場に入れるようスタッフに言っておくよ」

 

 

 

「ニルスさん、ありがとうございます!失礼しました!!」

 

 

 

コーヒーを一気飲みしてニルスさんに何度か頭を下げてから部屋をあとにした。向かうのはもちろん工作室、明日のガンプラバトルを盛り上げてオレがドイツに帰って来てることをわかるように最高のバトルをしないと

 

ブレイジングの塗装のリタッチ、緩み、スレッジハンマーの細かな調整をやりながら新しく削りだしたブレイジングクリスタルを接着、装甲パーツとの摺り合わせを同時平行で進め今朝方に仕上がった

 

 

《Press set your GP-Base…Press set your GUNPLA》

 

 

 

 

 

…んで今、オレはアスタロト・ブレイジング(version2.5)を静かに台に置く。GPベースを筐体スロットにセット…プラフスキー流子が溢れ出し輝く中、電子音声が響いた

 

 

 

 

 

《Beginning[Plavesky.Particle]dispersal.

 

 

 

《field5,planetーmoonー》

 

 

 

 

バトルフィールドはクレータが穿たれめくれあがった月…月鋼でアスタロトが発見された場所を再現してやがるか………やっべぇ、いつも以上に熱くなるってわかる、プラフスキー流子が衣類に反応してバトルジャケットへ再構築、濃紺半袖のジャケットになぜかわかんないけどタービンがついたローラーブーツ。フィンガーオープングローブに紅いマフラー…いつも通りのバトルジャケット姿になる。リンネ・ベルリネッタを見たんだけどさ…なんでさ?なんか大人になっててドレスみたいなバトルジャケットを着てる。メタルプレート付きのフィンガーオープングローブ…カッコイい…

 

 

でも今はバトルに集中する!

 

 

《Battle・Start》

 

 

 

 

「秋月クロウ、アスタロト・ブレイジング!」

 

 

 

「……リンネ・ベルリネッタ。ガンダムバエル・リィン」

 

 

 

 

「「いくぜ!!/…いきます」」

 

 

 

勢いよく無重力の海へと飛びながら月面に着地、あたりを警戒する…機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズの設定だと人類が生み出すも暴走したMAと人類との戦い…《厄祭戦》での最後の決戦の舞台となりソロモン72柱の悪魔の名前を冠する対MA決戦MS《ガンダムフレーム》投入、戦局は人類に傾き、月が最後の決戦舞台になり半壊させながらも勝利を収め、オレが使うアスタロトが見つかった場所だ

 

 

ったくガンダムフレーム同士の戦いに相応しい舞台だ…って感じた時、気配同時にロックオン警告と同時にアームレイカーを傾け捻らせた、さっきまでいた場所に光が走るのを見てモニターを切り替え見えたのは純白に紫のカラーに彩られたASW-G-01…最初に生み出されたガンダムフレーム《ガンダムバエル》が再び背中から伸びたレールガン兼ウィングからレールガンを撃ちながら迫ってくる

 

 

「なんっう正確な射撃だ………でもなあ……」

 

 

両肩のバーニアを一気に加速、間合いを詰めながら外側脹ら脛にあるバーニア…《ブレイジングウェポンバインダー》が跳ね上がるとハンドガンが飛び出し手にし構え引き金を引き絞る。狙うのはレールガンの弾頭…アドウの兄貴のファングに比べりゃ

 

 

「……まだ速さが足りねぇ!!オラオラオラ!!」

 

 

二対の双銃イクタァ、クトゥバから無数の銃弾の雨が息つく間も無くレールガンの弾を狙い撃ち弾道をそらし急速旋回、重心移動で裁ききれないのをかわしながら距離を詰めバーニアスロットを最大に押すと瞬く間に肉薄、クトゥバ、イクタァを収納しスレッジハンマーを両手に構え大きく振りかぶる。この距離はオレの制空け…

 

 

「っ!」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

振り下ろしたはずのスレッジハンマーの先にいたはずのバエル・リィンの姿が消え空を切った瞬間、激しい衝撃が左側からアームレイカー越しに伝わりモニターが激しくハンマーに殴られたように何度も弾かれたように揺れ、遅れて叩きつけられたような感覚に襲われた

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………」

 

 

月面を跳ねながら岩肌に叩きつけられた赤いアスタロトを見ながら構えを解き背を向け歩き出しながら想う…いつものように勝った

 

レールガンをハンドガンで撃ち落とし、よけた事には驚いたけど予想の範囲…たとえ抜けたとしても攻撃の瞬間に僅かな隙が生まれる。大型の武器を使う時点でわかりきっていた筈なのに突っ込んで振りかぶった。

 

読みやすい動き…体を沈め迷わず胴へ蹴撃を叩き込んだ…確実な手応えと共に振り抜いた

 

 

私は負けるわけにはいかない…もうあんな想いは

 

 

 

ー……お祖父ちゃんーーーーーーーー!!ー

 

  

もう誰にも蹂躙されない…翻弄されない絶対的な強さを手にする…く~ちゃんも強くなった私をみたら驚くよね?もう守られてばかりじゃない。もっと強くなれば喜んでくれるはずだよね

 

 

 

 

『よくやったわリンネ…これで世界戦に向けて一歩前進したわ』

 

 

 

「…はい………それに動きがわかりやすくて助かりま………」

 

 

 

『……ったたたた…なんてバカちだ……くう~効いたぜ今の蹴りは』

 

 

コーチと私の声に割り込むように響いた声…バエル・リィンを通して見たのは首をならしながら立つ赤いアスタロト…確かに決まったはずなのになぜ?今考えることじゃないです。目の前にいる敵を倒して私は強くならないと

 

 

 

『……リンネ・ベルリネッタ…………強いなお前!このまま世界Jrでも充分通用するぜ…』

 

 

 

「………」

 

 

 

サブウィンドウ越しに笑顔を向けながら訛りのあるドイツ語で話しかけてくる。なんで、そんなに楽しく話すのですか?自分がおかれている状況をわかってないみたいです

 

 

『今日はオレにとって一番大事なバトルだ……だから全力で最高に熱いバトルしようぜ!!リンネ・ベルリネッタ!!』

 

 

 

力強い声と共に赤いアスタロトが地を蹴りバーニアを最大で加速して再接近、大ぶりな構えて策もなく振るってくる。先ほどと変わらない。アームレイカーを引きがら空きの胴へ拳を叩き込んだ…でも固い何かに阻まれました

 

私の目にうつるのはスレッジハンマーを重ねバエル・リィンの拳を防かぐ姿…まさか予測してたのですか!?力任せに押し反動を利用して距離をとる。でも赤いアスタロトがいない

 

 

一体どこに?と索敵センサーから甲高い音が響くと同時にとっさに左腕を前に出すと激しい揺れがアームレイカー越しに伝わってきた。受けた左腕に

スレッジハンマーをぶつけるアスタロト…あの一瞬で間合いをつめられたの?バエル・リィンの各関節にダメージアラート表示に驚きながら構え連続で蹴りを撃つ

 

 

『無影脚?……でもまだまだああああ!!』

 

 

 

「え?………っ!」

 

 

私のバエルリィンの蹴りを両手に構えたスレッジハンマーで弾きいなしてる…でも私の蹴りの前にスレッジハンマーから破片が跳び亀裂が広がり走っていく、邪魔な盾《スレッジハンマー》を潰すために返す足で身体を捻り重さを乗せた蹴りを再び浴びせようとしたときでした

 

 

『……え……が…れ…』

 

 

 

「?……え」

 

私の耳に小さく、はっきりとした声が届いた瞬間でした…蹴りがスレッジハンマーを捉えようとする寸前、大きく弾け真っ赤な赤い炎、蒼い炎が亀裂からあふれ勢いに負け弾かれながら踏みとどまった私は目にしてしまった

 

 

 

全身から真っ赤な炎を燃えあがらせ、両手に赤と蒼の炎を纏わせ立つ赤いアスタロトの姿を

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

つよい、さすがは欧州U15ガンプラバトル大会覇者で《純白の女王》、リンネ・ベルリネッタの二つ名は伊達じゃない…それにオレの中でパチパチと熱くなる。

 

 

世界Jr.ガンプラバトル大会に充分通用する強さ…なによりバエルをアソコまで作り込んでるのが実際にバトルして触れてみてよくわかった…もう、オレん中にある火が燃えさかって血が沸騰して止められねぇ

 

 

無影脚を防ぐたびに感じる重さと力は火に油を注いで激しさを増していく中、心を落ち着かせる…澄んだ水面に波すら立たず、でも熱い炎が突き抜けていく

 

 

……燃え上がれ

 

 

 

「……え…が……れ」

 

 

 

自然と紡がれた言葉と同時に目を閉じる…すべてが通り抜けて見えたのは絶え間なく水面に落ちる水滴、やがて止まった時、アシムレイトを発現と同時に頭に浮かんだ言葉を紡ぐ。アスタロト・ブレイジングと一体化し《悪魔の力》を呼び覚ます詠唱がモニターに流れた

 

 Wir, du,(我等は汝) du bist ich(汝は我)!

 

Trampling! All(蹂躙しろ!全てを!!)! Geistbesitz(精霊憑依) !!

 

 

 

……阿羅耶識システム《kiriku》と文字がモニターに浮かぶ体の奥が熱くなりる、自然に片方の髪を撫でつけるよう逆立てバエル・リィンの姿を捉える今のオレはアスタロト・ブレイジング、名が示すように燃える悪魔だ…両手《モロテ》に構えるはγナノラミネートブレイド《ガッサン》、《ムラマサ》を構え前傾姿勢で構え一気に駆ける

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

バエルリィンを操るリンネ・ベルリネッタ……面倒だからリンネもこちらに最大加速で接近してくるのが見え瞬く間に肉薄、拳が顔面めがけ突き刺さり右頬に激しい痛みと鉄の味にコリっとしたものが広がる。ユウキ・タツヤさんとのバトル以上にアシムレイトが強くなってんな、それ以上にアシムレイトで発動したオレの動きを捉えるなんてスゴいな!歯を食いしばりながらガッサンを殴りつけた拳もろとも肩口から切り払う

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「おらああああ!!」

 

 

 

『っ!リィンの腕が……』

 

 

切り払われた右腕が宙を舞う光景に声をあげながら残された左腕で殴りかかる…鋭く切れのあるプラフスキー粒子を纏い威力を増した拳わかわすけど、拳圧から生まれた風がバトルジャケットに無数のキズができ、服の下の身体が切り裂かれていくのがわかる

 

 

軽くバックステップを踏み、前へと蹴り上げるように刃を振るいリィンの胴を凪いだ、それでも蹴りと拳打は止まらない。刃で弾きいなし束で当て防ぎ、蹴りを喰らうけど…熱く、燃え上がってくる…もっとだ

 

 

「ぐっ……らあ!」

 

 

『っ、く……』

 

燃え上がれ………燃え上がれ…

 

 

「っらあ!」

 

 

 

『ふっ!!』

 

 

胴への蹴り、拳…確実に致命的な一撃を繰り出してくる…戦ってるうちに強くなってる……会場のみんなも歓声が湧き上がってエールが響く度にアシムレイトが強くアスタロトブレイジングと結びつき一体化していく…全身が悲鳴をあげているけど気にならないぐらい楽しい

 

 

リンネ。お前ヤッパリすごいよ……だから最高の技で決着をつけるぜ!

 

 

「ーーー激しく燃えろムラマサァッ!ガッサアアアア!」

 

 

全身に配置されたブレイジングクリスタルから蓄積されていたプラフスキー粒子が爆発的に解放、ガッサンとムラマサの束に埋め込まれたクリスタルからめも蒼と紅の炎が激しく波打ち纏われる

 

 

コレがオレの必殺技…………

 

 

 

 

「必ぃぃ殺っ!ブレイジイイイイングッ!ブレイッドオオオオオオオオ!!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「………ッ!」

 

激く炎を身に纏いながら加速、今まで以上の速さで繰り出された拳を紙一重で交わすけど左側アンテナが砕かれるも左腕をムラマサで抵抗感もなく切り捨て跳ね、ガッサンで胴を凪ぐも意に介さず蹴りが右股装甲を砕きフレームが露出するのも気にとめずムラマサで切り捨て、逆袈裟、胴凪ぎを織り交ぜ斬る、斬る、斬る…紅と蒼の炎、剣閃が走るたび装甲が砕かれフレームがむき出しになるバエルリィンに最後に舞うように刃が交差し切り捨て抜け刃を振るうと同時に爆発四散した…会場の誰もが波打ったように静まり返っている

 

 

    《BATTLE ENDED!》

 

 

 

 

『し、勝者……ヤジマ選抜チーム、秋月クロウ選手です!!』

 

 

 

試合終了と司会の勝利宣言のアナウンスが響き、パチパチと拍手が湧き広がり歓声が怒濤のように会場内に響く……

 

 

「はあ、はあ………ったたた……結構無茶したかな……」

 

歓声の中でふらつきながらGPペース、アスタロトブレイジングを手にとる…リンネの拳打、蹴りを受けた部分がひび割れ亀裂が入ってる。よく頑張ったなブレイジング…でもお前も強い相手と戦えてよかったな…リンネの方をみるとなんか唖然としながら顔を俯かせてる。コーチの人も声かけてるけど聞こえてないみたいだ

 

 

「っと……」

 

 

痛む身体に耐えながら向かったのはリンネのいる筐体…たどり着きみると切り裂かれた装甲に対して無傷のバエルのフレームが倒れている…そっと手をふれてみる。うん大丈夫だ

 

 

「なにかようかしら秋月クロウ?」

 

ゆるゆるふわふわした髪に眼鏡の若い女の人がみてる…なんか睨まれてんの気のせい?確かに熱くなりすぎてやりすぎた感あるけど

 

 

「あ、いや……リンネ・ベ…いやリンネ、最高のバトルだった。だから次もやろうぜ楽しいガンプラバトルを…」

 

 

 

「秋月クロウ選手、インタビューをお願いします!!」

 

 

オレの言葉を遮るようにストーカーさん?がマイクを向けてくる……ホントはもっと話したかったけど今がチャンスかもと想いマイクを手にした

 

言うのはもちろん…

 

 

 

「えっと今回の日独親善ガンプラバトル大会に招いてくれたこと、ありがとうございます!!リンネ・ベルリネッタ選手をはじめとした素晴らしい選手の方々と会えた事をすごく嬉しいです!あと、こっからはスゴく私的な事になりますけど許してくれるとたすかります……………………クロイツフェルト孤児院のみんな、シスターイクス、シスターシャンテ、ふ~~~~~た!り~~~~~た!オレは《あの日の約束》通りドイツに帰ってきたぞ!!もしコレ視てんなら会場に来てくれ!一緒にガンプラバトルやろうぜ!!」

 

 

 

めいいっぱの声で叫んだらキィィーンてマイクから音が響く…VIPルームをみるとニルスさんが顔を隠してため息ついてるし、三代目メイジンカワグチさん、セカイさん、レナートさん、グレコさん、ルワンさん、ジュリアン兄、フェリーニさん、アドウの兄貴、キジマさんたちもなんか暖かい目でみてる……まあ、確かにこの場言うことじゃなかったかもしんない

 

 

「…………(……………く~ちゃん………なの?)」

 

 

 

オレにとって大事な約束だから仕方ないし不安だったし…なんでかわからないけどリンネがオレをじいって視てたけど。そのあと、ニルスさんや三代目メイジンカワグチさんに厳重注意されたけど

 

これで気づいてくれて皆と再会できるって…………明日からは日独ガンプラ大運動会、渓流下り、シューティング、ランダムで決めた3人のファイター同士の3ON3……世界本戦を想定したバトルが始まる

 

 

フロンティアジム…やり方はオレんちのナカジマジムとは正反対だけど、す~~~~っごいファイターがそろってる…リンネと戦うだけじゃなく同じチーム…3ON3競技で組んでみたいし

 

 

 

色んなファイターと凌ぎを削って学べるし。ガンプラバトルって…マジで楽しい!!

 

 

明日に早くなんねぇかな…………………

 

 

 

 

 

 

 

んで、あけて翌日…クロイツフェルト孤児院のみんなと会場で再会して、八年間、なにしてたのか?どんな風にしてて今はどうなのかって色んな話をしてたけどふ~た、り~たはこなかった…シスターシャンテ、シスターイクス、シスターセインに二人がどうしてるかをきいたんだけど

 

 

 

『り~た?ふ~た?………ってクロウ、あんた二人のホントの名前知らな…んぐ』

 

 

『…シャンテ!………ごめんなさいクロウ…じつは』

 

 

孤児院が無くなる前にり~たが養子に貰われて、ふ~たが負担をかけないために働きにでたって、知らなかった。オレがマスターじいちゃんと修行にでてた間にこんな事ってさ有り得ない…だったら、オレが帰ってきたって知らせるためにはもっと盛り上げないと!

 

 

 

 

「く~ち………秋月クロウ選手、私とバトルをしてください」

 

 

 

あのバトル以来、リンネから勝負を挑まれてアスリート競技《渓流下り》の時はマジで追走してスレスレでぶっかりそうなるし、シューティング競技は好成績を収めると無言でみてくるし、ランダムで決められた3人でバトル《3ON3》で同じチームになったら残念そうにみてた、でもそのときはオレの苦手なレンジを担当してくれて、白銀の綺麗な髪もだけどスッげぇ可愛いし…………レヴ母さん同じぐらい胸大きい……あ、べ、べつに巨乳好きじゃないんだからな!

 

 

 

 

でもさ、工作室やバトルルーム、カフェテリアに現れて再戦申し込んでくるのはやめてくれ。っうかコーチのジルさんは止めてくんないし、やっとのコトで巻いて会場外に逃げ出して喫茶店に入ってベンメル(ドイツのパン、固くもしっとりとした生地が特徴。店によってはヒマワリ、クルミ、ライ麦を混ぜてる場所もある)

食べてたら

 

  

「秋月クロウさん、ワシを弟子にしてくだあさい!」

 

 

店にいきなり入ってきて頭を下げてきたポニーテールが目立つ女の子からの弟子にしてって言葉にベンメルを喉に詰まらせてしまったのをみて慌てふためいて、水を飲ませてくれた。コイツの名前はフーカ・レヴィントン…あの日、リンネとオレのガンプラバトルを見て弟子入りしたいってバイトをやめて此処まで来た、と聞かされマジ驚いた

 

 

っうかオレはまだマスターじいちゃんから皆伝の印可状をもらってないから、弟子はとれないって言ったんだけど

 

 

 

「……わしは強くならなあかん理由がある……だから弟子に……」

 

 

 

「こ、ことわる!」

 

 

 

……この日からオレはリンネとフーカから逃げ回る日々が始まった……

 

 

再戦をと迫るリンネから逃げ切ったら、フーカが現れて弟子入りを懇願してが繰り返され、それは大会が終わってからも続いた…孤児院のみんなの所やシスターイクス、シスターシャンテの所にかくまってもらったりした

 

ふ~た、り~たは見つかんないし……早く日本に帰んないとマユが寂しがって泣いてるのが目に浮かぶし

 

 

だから、オレはぜっったいに逃げ切ってやる!ってしか頭に無くて気づけなかったんだ。……ずっと探していた、り~た、ふ~たともう再会してたことに

 

 

 

 

刃ーブレイドー番外編、Blade・strike!(後編)

 

 

 

フーカ、リンネからクロウは自らのアレを守りきれるのか?!?

  • 守り切れない…
  • 仲良くごちそうさま
  • 逃げ切る

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。