ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー   作:オウガ・Ω

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半年前


「マスタージャパン先生、どうしても行かれるのですか?」


「有無。少し街を離れねばならぬ用が出来たのでな、そう不安な顔をするな」


「ですが、僕はまだ未熟です……先生のゴッドガンダム《極》にも勝てな……」


「…タカヤよ、ガンプラバトルとは楽しむ事が本質よ。勝ち負けにこだわるのはまだ先だ。今は己自身のガンプラ愛を極めよ!!」

「は、はい!マスタージャパン先生」


「良い返事だ。次に逢うときはファイター、ビルダーとして極みに立っていることを期待しておるぞ」

それから数日後、マスタージャパン先生はこの街を離れた…先生の友人、冨田さん、倉田さん、サエグサ模型店のみんなと一緒に見送った

ビルダー、ファイターとして極みに立つ……僕は必ず先生の期待に応えてみせる



第四話 看病(前編)

(な、なぜこんな状況に!?)

 

今僕の前には三つのレンゲ…左は澄み渡った上澄みをたたえた粥、真ん中は血よりも赤い粥……右は形容しがたい粥?しかもパチパチ雷?が見えるし!?

 

「私の味…いや君の口にあうといいのだが、冷めないうちに召し上がれ」

 

「風邪を引いたときは、コレを食べれば一発で吹き飛ぶからさ」

 

 

「それよりボクの作った特製《プラズマお粥》を食べてみて!」

 

ずいずいっと口元にミカヤさん、ノーヴェさん、レヴィのレンゲ三つが迫ってくる……本当に何でこんなことになったの!?

 

第四話 看病

 

《二日前》

 

 

「……コンパウンドはコレぐらいかな…」

 

コンパウンドパウダーで黒くグロス仕上げのパーツを磨き終え光にかざす。傷もなく斑もないことにホッとしながら机におかれたアストレイ・ゴールドフレーム天ミナのマガノイクタチを取り付けかんせつきょうどを確認する…この天ミナはノーヴェさんのお姉さん《ギンガ》さんのガンプラ。この前のフェリーニさんとのバトルで壊してしまったガンプラを持ち帰り修理していた、でも凄く作り込んであるし関節の可動範囲は半端なく広い

 

塗装もレシピを聞いてだけど調色が難しかったけどコレなら大丈夫かな…綿を敷き詰めた箱に天ミナを入れ閉じ、もう一つの箱を手に取り出したのは僕のガンプラ《アストレイブレイド》…肩の追加装甲兼粒子蓄積システムは問題なく動いた。でもまだ改良が必要と感じ分解していたら頭にある光景がよぎった

 

ー少し頭を下げてー

 

唇同士の柔らかい感覚に甘い匂い…真っ赤な瞳……はっ!イヤイヤイヤ?な、なにかんがえてるの僕は!?男の子にキスされてドキドキしてるなんて可笑しすぎる!

 

「マスタージャパン先生!こういう時どうしたらいいんですか!!」

 

 

頭を抱えて机に突っ伏した…でも答えてくれない……マスタージャパン先生は今は清炎学園にいるんだけど静岡とここじゃ距離が、それに電話にもでないし

 

 

「ああうう~男の子とキス、男の子とキス………忘れるんだ僕!そう、男の子とキスなんかしてない、キスなんかしてない、キスなんかしてない」

 

 

言い聞かせるように僕はアストレイブレイドの改造を始めた。時計をみると一時前、明日は学院が歩けどコレだけは仕上げなきゃ……雑念を振り払うようにデザインナイフをプラ板に走らせ切り出していきようやく目処がついた時は二時過ぎ、身体がブルッと震える。春と言ってもまだ冷え込む

 

「シャワー浴びて寝よ…たしか明日土曜日だったけ、残りは帰ってからにしよ…とにかく早く寝よ」

 

軽くあくびをしながら、バスルームに入りシャワーを浴び身体を洗ってあがったけど髪を拭くのも面倒だったからそのままベッドに倒れ込むといつの間にか眠ってしまった

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

ー喝!流派ァ!東方不敗は王者の風よ!全身!系列!天破狂乱!!ー

 

 

「…東方は赤く萌えている~…ん、朝」

 

アラームが鳴る音で目をあけ起きマスタージャパン先生から貰った目覚まし《風雲再起》を止めた。でも身体が重い、それに喉も痛いし熱っぽい…体温計を手に取り熱をはかってみた。38.6度……まずい風邪を退いちゃったみたいだ。時間をみると8時18分を回ってる。慌て学院主任の先生に病欠しますって連絡し横になった。しばらくしてインターフォンが鳴る。ふらふらしながら玄関まで歩く

 

ドゥーエさんかな…と考えた。でも何時もならお昼に来て掃除や洗濯など家事一切やってくれるから違う。とにかくロックをあけた…でも、そこにはドゥーエさんはいない。帽子を深々と被った僕と同じぐらいの年の男の子…数日前に僕にキスをした子が立ってて、僕をぽかんと見ていたけど、徐々に笑顔に変わった

 

「え?タカタカだよね?やっぱりそうだ~あの時のガンプラバトル以来だね♪」

 

 

「キ、キミ、何で僕の家に?」

 

「なんでって…このマンションにお母さんと引っ越してきから、ご近所付き合いの引っ越しそうめんを渡してたんだ~あ、ボクとお母さんの家は隣だから、お隣さんだね」

 

 

「い、いや引っ越しそうめん…ってそうめんじゃなく蕎麦だから…あれ?」

 

 

「え?タカタカどうしたの?タカタカ!?どうしたの?ねえタカタカ!?」

 

突然、目の前が真っ暗になって、ぐらってした、フニョンと柔らかい何かを感じながら意識がなくなった

 

 

同時刻、Stヒルデ学院。同中等部

 

 

「こ、ことわる!」

 

 

『お願いノーヴェ。私の代わりにハウスメイドのお仕事を頼みたいのよ。今日だけでいいから。ね?』

 

 

「だ、第一、アタシんとこの学院はバイトは禁止なのは知ってるだろ!?」

 

 

 

『お~ね~が~い~従姉妹なんだから…今日の行く予定だった出向先はお得意様なのよ……もちろんタダなんて言わないわよ』

 

 

午前中で学院が終わってガンプラ部の備品を買いに行こうとしたとき、あたしのスマホにかかってきた電話。相手はあたしの従姉妹で日独クォーターのドゥーエ・スカリエッティ…一応近くに住んでんだけど従姉妹姉妹が苦手で、とくに妖しげな発明ばかりするおじさんは大の苦手だ

 

っと話が脱線したけど、ドゥーエはあたしより年上で大学生なんだ。バイトしている派遣メイド《グラナダ》で何時も贔屓にしている家に急な出向が入りいけなくなり、そこの家とは専属契約しているから、むげには出来ないからって、あたしに泣きついてきた

 

『ノーヴェ、あなたがガンプラバトルやっているのは知ってるわよ。パーツ代や塗料代って結構掛かるわよね…一月のお小遣いじゃ足りないでしょ?』

 

 

「そ、それは…」

 

 

『お店の商品に手を出すわけにはいかないわよね?ゲンヤおじさん泣くわよ~娘がグレたって』

 

 

「あう…」

 

 

『…今日1日、私の代わりに働いてくれたら臨時収入が入るバイト……コレならゲンヤおじさんに迷惑をかけないし、お小遣いもゲット出来る。悪い条件じゃないのよ?』

 

 

「ああ~もう!わかった、わかったから……バイトやってやんよ……」

 

 

『ありがと~これで一安心だわ~。あ、仕事用で使う服はクィント叔母さんに預けてあるから、あと一つだけ言っておくわね…誠心誠意、お世話してあげなさい。あなたより少し年下の子だから』

 

 

「ちょっと!ああ~切りやがって……はあ仕方ないなあ…お小遣いもゲットできっし、まあいいか」

 

 

通話を切り、あたしは家へと近くに泊めてた愛車ジェット(マウンテンバイク)に乗ってペダルをこぎ走り出した……

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「今日も不定期営業~お客さん少ないけど、頑張って力まず営業します~サエグサ模型店♪」

 

 

「やあミツキ店長……ツバキとツバサはいないみたいだね」

 

 

「あら、ミカヤちゃん。今日はどうしたの?」

 

 

「真・武者頑駄無と摩亜屈あるかな?たまにはガンダムも作りたくなってね…ん?コレは」

 

 

あのバトル以降、なかなか足を向けられなかったサエグサ模型店に寄り道した…目的はもちろんガンプラ。地区予選に向けて作り上げたガンプラも仕上がり気分転換にガンプラを買おうとしたわたしの目にうっつたのは模型店で行われるガンプラ大会開催告知。参加資格は男女ペアのみ、しかも小学生から高校生まで可能……そして景品を見て驚いてしまった

 

 

「ミ、ミツキ店長?こ、これは…伝説の」

 

 

「あら、気づいた?ある人経由で二振り手に入ったのよ。ガンプラ強化武装…その名もカレトヴルッフ!!」

 

まさか、あの幻のガンプラ強化武装カレトヴルッフを景品にするとは……これさえあれば、わたしのツクヨミ・斬をさらに強く出来る。

 

 

「ミカヤちゃんも参加してみる?」

 

 

「無論だ。カレトヴルッフ……ふふふ。予選前に慣らしも兼ねて参加させてもらうよ。ミツキ店長」

 

 

「でも~男女ペアじゃないと無理よ」

 

 

しまった。それを失念していた…それを察した店長が笑みを浮かべて一枚の紙にサラサラと書きしたため渡してきた。手にとり見るとマンションの住所と部屋番号とオートロックナンバーが書かれていた

 

「こ、これは?」

 

 

「実はお得意さんにガンプラを届けて欲しいのよ。ホントはウチの店に取りに来る予定だったんだけど、熱を出しちゃって。ツバサもツバキもお友達のお家に遊びに行ってて、私はお店番しないといけないし。ね、お願い」

 

 

手を合わせて頼み込むミツキ店長…はあ、仕方ない。いつも無理を言ってマスラオ、スサノオを取り寄せて貰ってるし。わたしは了承することに決めその旨を告げるとガンプラの入った袋を手渡してきた。中身はアストレイ…まさかなと考えながら店をあとにした

 

 

「…………行ったわね。さてとお膳楯は終わり。ユウ、そっちはどう?」

 

 

『終わったけどよ、マジでやるのかよ?』

 

 

「だって面白いじゃない。タカヤくんが誰をペアに選ぶかね…フフフフ、大会が楽しみで仕方ないわあ」

 

 

『……悪魔だな姉貴……同情するぜタカヤ』

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

『クイント叔母さん。ノーヴェは?』

 

 

「さっき向かったわよ。でもホント偶然ね。ドゥーエがタカヤくんのお家のハウスメイドだったなんて」

 

 

『こっちも驚いたわよ。でも、あのノーヴェがねぇ……従姉妹として応援してあげなきゃね(笑)』

 

 

「ゆくゆくはウチの模型店を継いで、早く孫の顔をみたいわねぇ。ゆっくり外堀を埋めなきゃ」

 

 

『まずはゲンヤおじさんを説得しなきゃいけないわ』

 

 

「大丈夫。しっかり調き……教えておくから……フフフフ」

 

 

……………それぞれ別な場所で、二つの模型店で方や楽しむため、片や将来の婿を迎えるために企みがあったことを誰も知らない……

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

熱い…それに喉が乾く…水が欲しい。頭が痛い…口の中がカラッカラッに乾いてる…身体もなんか汗でいやな感じしかしない…水が欲しい

 

 

「……タカ……タカタカ…水飲んで……ダメ、飲んで……れな……い……しかた……よね」

 

誰かの声が聞こえる…心配してるんだと感じた僕の口に何かが触れ少しぬるい液体が流れこんだ…水だと感じゆっくりと飲む…ほんのり甘い匂いがする。まだ飲み足りない、再び口にさっきの感覚と一緒に水?が流れてくる

 

………意識がはっきりとしてきた僕はゆっくりと目をあけた。目の前には人の顔、真っ赤な瞳に帽子を被った男の子…まさか、まさか…さっき飲んだ水は

 

「んっ……あ、起きたタカタカ?よかったあ~すごい熱出して倒れたから心配したんだよボク………うわっ!?」

 

 

唇に残った柔らかな感覚と湿り気……ま、またキスされたの…気が動転してガバッと上半身を起こした…でも運悪く近くにあった水たらいをひっかけてしまった。宙を舞う水を被ってしまい服がずぶ濡れになった彼がポタポタ水滴を落としながら呆けていた

 

「……わぁ~ずぶぬれだよう」

 

「ご、ごめん!は、速く着替えた方がいいから……バスルーム使っていいから」

 

慌てた僕は、ふらふらしながらバスルームに連れて行き着替えとタオルを手渡し何度も謝ったあと、ベッドに戻り横になった……また、またキスされた事を振り払おうと目を閉じた僕の耳にインターフォンが鳴る音が響いた

 

 

「な、何だろ…ドゥーエさんかな」

 

 

ふらふら立ち上がり、玄関に向かうとドアのロックを開こうとした時、声が聞こえた…それも一人じゃない、二人分の声。何か言い争いしてるような気がする…とにかく開けよう。ロックを解除し見えた光景に思わず息が止まった

 

 

「笑うなったら!アタシだってこんなフリフリしたの着たくなかったんだ!!」

 

 

「キミも乙女だったんだね。笑ってはいないさ……よく似合ってる…」

 

 

目の前には白のメイドキャップに黒のメイド服を着たノーヴェさんと、僕の二つ上の先輩でガンプラ部主将ミカヤさんが立ち軽い言い争いになってる。ロックが開いたことに気付いたのか二人が僕を見て驚いているけど、なんで僕の家にいるのさ?

 

「タ、タカヤ!?なんでこの家に!?(ドゥーエがハウスメイドで雇われていたのはタカヤのウチだったのか!?まさか、こうなること予想してたのか?っうか…チャンスかも)」

 

 

「……なるほど、ここが少年の家か…(今日のグラハム占い。乙女座に好機到来とあったな。虎穴はいらずんば虎児を得ず……フフフフ、まさしく運命だ。天が少年を手に入れろと言っているようだ)」

 

 

な、なんかわからないけど怖いよ…ふらふらしながら立ちながら寒気を感じた時だ、少し奥にある扉がバスルームが開いた。もう上がったのかなと振り返った僕は再び固まった

 

「ふう~さっぱりした。タカタカ、シャワー使わせて貰ってありがとうね~」

 

腰まで伸びた水色の髪をタオルで拭きながらYシャツ姿の女の子が笑顔で歩いてきた……え?まって…彼は?まさか、女の子だったの!?

 

「タカヤ、その女は誰だ?……ま、まさか!?」

 

 

 

「わたしも聞きたいな少年……嘘偽りなく答えてもらうと助かるんだけどな」

 

振り返ると、何故か笑顔の二人。でも目に光がないし笑ってないよ…なんか凄く寒気がするし、なんかふらふらすると感じた時、目の前が真っ暗になったのを感じ床に倒れたと気付いた

 

 

「タカヤ、おいタカヤ!うわっ!?すごい熱だ……ミカヤ、タカヤをベッドに運ぶの手伝え!!」

 

 

「ああ、今はそれが第一優先だな……キミも手伝ってくれるかな」

 

 

「うん!じゃあ一緒に…」

 

 

そんな言葉を耳にしてぷっつりと意識を手放した

 

 

第四話 看病(前編)

 

次回に続く

 

 




修羅場…それは男女間の壮絶なモノ

タカヤをチームに引き入れ身も心も染めようとするミカヤ、タカヤのバトル、容姿と性格に惹かれたノーヴェ、二人よりも二つ(キスと、お隣さん)リード。タカヤの強さと優しさに惹かれたレヴィ

果たして恋のメイルシュトローム作戦に勝利するのは誰か?


次回、看病(後編)

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