ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー 作:オウガ・Ω
そこはガンプラを作る者にとって聖地と言える場所、かつてガンプラバトル黎明期を支え今もなお存在する
その建物内にある制作室にひとりの少年の姿
サンバイザーをかぶり前髪に赤いメッシュ、オレンジの繋ぎを着た少年の前にはSDガンダムが鎮座している
「すり合わせはコレでよし、あとはクリスタルを組み込んでと……」
「どうだいすすみ具合は?」
「武者小路指導員?まあ、ぼちぼちかな…今まで狂四郎さんやサッキーさん、丸山さんから教わったのをようやく形にできたよ」
武者小路指導員の目に移るのは、一体の武者頑駄無。装甲は厚く、さらにクリスタルが埋め込まれている。大将軍に通じるデザインに懐かしさを感じているとアラームが響く。シロウは慌ててスマホを手にし見て顔色が青ざめていく
「ご、ごめん。俺帰らないと、続きは明日やります」
「そうか……スティ先で何かあったのかい?」
「ま、まあ、そんなとこかな……」
ため息をつき手早く箱へ片付けるとシロウと共に武者小路指導員が部屋を出て行く。薄暗くなった室内、その机の上には素体の武者頑頑駄……完成まであとわずか
「ふう、これでよし……」
「ああ、しっかし華奢に見えて結構重いんだな…で、なにやってんだミカヤ」
「何って決まってるじゃないか……こんなに汗だくになったら着替えさせないといけないじゃないか(コレが少年の裸……ハアハアハア……汗に濡れた肌、何ともいえない艶やかさ、まだ熟れぬ青い果実。ふふふ私が熟れさせてあげよう)」
頬を赤くしながら笑顔でタカヤのパジャマに手をかけてるミカヤ…なんか息荒いし興奮してるし目が爛々と輝いてる……そん時、別な方から手が伸びてタカヤを引き寄せた
「ダメだよ、タカタカはボクが看病するんだ~喉乾いてるみたいだから飲ませてあげなきゃ……ん、ん、ん」
「「ち、ちょっと待ったあああ!」」
「ん?んん~??」
あたしとミカヤがワイシャツに水色の髪をポニーテールのコイツを止めた…何故ならタカヤにく、口移しで水を飲ませようとしたからだ
「ケホケホ!?な、なにするのさ!タカタカに水を飲ませようとしただけなのに~」
咳き込みながらぷぅっと頬を膨らませて抗議してくるコイツの名前はレヴィ・テスタロッサ。この地区じゃ強豪の一つ《チーム紫天》の一人…この前タカヤと戦っていたレヴィが何でいんだよ?
しかもく、く、口移しで……まさか、この年でもうそんな関係なのか!?
「いくら何でも口移しはやめるんだ。私だって唇と唾液を味わいた………いや接吻(キス)は同意のもとするべきだ……」
「ええ~やだ、やだ…家のお母さんが言ってたんだよ」
ーいい、レヴィ、アリシア…病気で弱って何も食べられなくなった男の子の看病をするときは、食べ物や水を口移しで飲ませてあげなさい。もちろん気になる男の子限定でー
ー気になる…男の子?……ボクわかんないようー
ーいるじゃない。この前レヴィを負かした男の子で、しかも一緒にガンプラ直してくれた……最近、その子の話ばっかりじゃないかしら?アリシアも聞いてるわねー
ーうんうん、わたしもきいたよレヴィってば、一言目にタカタカと会いたい、二言目にタカタカの連絡先聞いておけば良かったっていってたじゃんー
ー…ァ、アリシア!?……でもボクわかんないよぅー
ーふふ、まだレヴィにはわからないかしら…でも忘れたらダメよ………アナタたちのお父さんもこうやって捕まえたんだからー
第四話 看病(後編)
「って………病気の男の子にはコレが一番なんだから……ってどうしたの?」
(な、な、な、なんて事教えてんだ!既成事実寸前だろが!………ヤバすぎる、やばすぎるだろ!まけらんねぇ……)
(まさか伏兵が居るとは………だがまだ本丸にはおよんではいない!これからが勝負だ!少年は必ず私の色に染めるのだからな……そして)
………可愛らしく首を傾げるレヴィ。ミカヤ、ノーヴェは危機感をヒシヒシ感じながら、タカヤの看病を進めるべくキッチンという名の戦場へと動き出した。ただならない空気を感じたレヴィも一緒に
「………ん~おなか空いた……なんかいい匂いする」
ふらふらしながら身体を起こした僕の鼻に出汁の匂いを感じる…鰹と鯖節、ネギ、卵、米の香りにたまらずお腹が鳴る
……そういや、今朝から何も食べてなかったっけ…でも誰がキッチンに?そのとき扉が開いた。そこにはメイド服姿のノーヴェさん、制服の上にエプロン姿のミカヤ先輩、ワイシャツにピンクのエプロン姿のあの子。手には土鍋がお盆に3つ並んでる
「目が覚めたのかタカヤ?」
「ちょうど良い頃合いのようだったね」
「タカタカ、起き上がって大丈夫なの?」
「う、うん。あのソレは?」
「ああ?お粥に決まってんだろうが……風邪引いた時はコレが一番だからさ」
「私の味……いや少年の口に合えば良いのだが…さあ、冷めないうちに」
「ボクのお粥も凄いんだよ。お母さん直伝《必殺・プラズマ粥》食べて、食べて♪」
同時に土鍋の蓋が開いてから、今に至るんだけど…………バチバチバチって水色の雷が見えるお粥、ゴポゴポとマグマみたいに音がなる真っ赤なお粥、そして澄み切った白粥が掬われた3つのレンゲがずいっと差し出された
僕は意を決してマグマみたいなお粥を食べた……し、舌が辛さを通り越して焼ける!?汗が止まらないし、芯がまだ残ってる
ーくらいな、リボルバースパイク!!ー
なぜかわからないけど、すごく身体に密着したスパッツみたいな破廉恥な服をきたノーヴェさんに蹴りを入れられた気がする
「あ、口にあわなかったか?」
気落ちしたノーヴェさんを見てなんとかこらえた…大丈夫。母さんの料理に比べたら平気だ……それにレンゲをもつ指には無数の絆創膏がいくつもある
「お、おいしかったです…」
「そ、そうか!もっと食べるか」
「むう~次はボクのを食べて!」
「んむ!?」
辛さで麻痺した僕の口に強引にレンゲが入った瞬間、電気が口いっぱいに流れ全身がしびれれれる!?
ー届けボクの必殺技!雷刃封殺爆輪剣!!ー
なんかわからないけどビームザンバーをかまえたあの子が見えた気がしながら現実に戻ってこれた…
「ねぇねぇどうだったボクのお粥、すごくおいしくて栄養満点なんだよ。お母さんのに比べるとまだまだだけど」
「い、いや美味しかったから、色々痺れたけど……だから自信をもって。えと……」
「レヴィ、レヴィ・テスタロッサだよ……もし病気になってもボクの家とお隣さんだからいつでもお見舞いにきてあげるからね」
笑顔の女の子《レヴィ》にドキってしたら、ビキキ!なんかが割れる音が響いた…音がした方には笑顔だけどハイライトが消えたノーヴェさん、ミカヤ先輩の姿
「へぇ~お隣さんか(ま、まじか!このバイト続けないと不味いな…)」
「少年、私のお粥も食べてくれないかな…はい、あ~ん」
「え、でも「あ~ん(怒)」は、はい……いただきます」
二、ニュータイプのプレッシャーをミカヤ先輩から感じながらレンゲのお粥を口に入れた……さっきの二人のとは違って出汁もお米も完全に調和してる、それどころか溶き卵の風味とあいまって《お店》に出しても充分な通じる味だ
ー君のすべてを私にさらけ出してもらおう。天月・霞ー
………何だろう全てがミカヤ先輩に何か斬られた感じがする……でも、あと一味がわからない…ずっと昔に食べた?いや……でもどこで
「どうかな、私の味は少年の口にあったかな?」
「は、はい。鰹、鯖節、トビウオ、羅臼昆布にお米は《ゆめぴりか》……よく場所がわかりましたね」
「!さすがだな少年。ひとくち食べただけでわかるとは……」
「い、いえ…でもあと一味がわからないです……ずっと昔に食べた気が………」
「そうか……でも喜んで貰えて嬉しいよ…うん、さあ早く治すために食べるんだ…」
少し、陰りのある笑みを浮かべるミカヤ先輩…何だろ?
「まて、ミカヤ。次はあたしのを食べて貰うんだ。交代しろよ」
「ことわる……少年は私のお粥を大層気に入ったようだ…」
「ずるいよミカヤン!タカタカはボクのお粥を食べるの!タカタカの独り占めは許さないよ!!」
ゴゴゴゴゴゴ!なんか凄い音が3人から聞こえるし、背中になんか龍、雷神、不動明王が見える……ノーヴェさんの髪…くせ毛がビキキとたってて、ミカヤ先輩の髪はユラユラ揺れてる。この争いは多分僕が原因だ。ならばとるべき道は一つだ!
「え?」
「な?」
「うそ!?」
僕は三人が作ったお粥が入った土鍋をとり、一気に飲み込んだ……レヴィさん、ミカヤ先輩、ノーヴェさんの順に飲むように食べていく…色んな味を感じながら完食した瞬間、目の前が真っ暗になった
「「「少年/タカヤ/タカタカ」」」
三人の声を聞いたのを最後に意識が途切れた…父さん、母さん、僕はがんばったからね……
☆☆☆☆☆☆☆
「……まったく無茶しゃがって……美味しくないなら言えよ……ったく」
「まあ、そういうのは少年の優しさだ(……昔と変わらないな………)……料理は愛情というからねノーヴェも少年を落とすなら精進することだ。せっかくのメイドなのだから」
「な、な、何いってんだミカヤ!あたしはタカヤのことなんか、なんか………」
「そうしりごみばかりしてるとレヴィにとられるよ。(まあ私もあきらめた訳じゃないけどね)」
「う~ん、う~ん」
うんうん唸るタカヤを心配しながら猛禽を想わせる目でみてる…間違いないタカヤを狙ってる、でもあたしは負ける気はないし
「……あたしもだ…って言いたいけどさ、鈍いし……」
「なに、そこは少しずつ治していけばいいさ………さてと私はそろそろお暇させて貰うかな。時間も時間だしね」
時計をみると21時前、さすがに帰らないと不味いな。それから少ししてから三人で明日の朝粥の用意をしてからタカヤの家から出て、それぞれの家へと歩いていく
「ああ、そうなんだ。もしかしたらーーーーーーになるかもしれないから。母上も父上を説得……」
ただミカヤはスマホでどこかに連絡していた見たいだけと…まあ明日もタカヤの家に行く約束してるしいいか
でも、このとき気づけば良かった。まさかミカヤがあんな事するなんて……この日からタカヤを巡る四角関係がはじまるなんて思ってもなかった
同時刻:G研
「じゃ、武者小路指導員。また明日な」
「うん、もう夜も遅いから早く帰るんだよシロウ」
「もう心配しすぎだよ。明日はいよいよ俺のガンプラが完成披露会だからスッゴく楽しみだし。とにかくまた明日!」
武者小路指導員に手を振るとG研をでた俺《神崎シロウ》はスティ先にまっすぐ向かう…高級マンションのカードキーをリーダーに通しエレベーターに乗ると、あっと言う間に最上階につく。
そのまま少し歩き、止まる…多分怒ってるかしれないけど、深く深呼吸。扉をあけると仁王立ちした黒みかがった白髪、水色の瞳にメラメラと怒りの火を灯したスティ先の女の子…ディアーチェがギロっと睨んできた
「シェロウ!今何時と思っておる…我との約束を破るとはいい度胸よ」
「い、いや…コレはその…俺のガンプラ製作が遅れてて」
「……ほう?ソレが理由か……だが我と交わした約定を破るとは赦せぬ……覚悟はいいか」
「い、いや…約束破ったのは悪かったから?そんな恰好で外に…」
「聞く耳持たぬわあああ!今日はシェロウの食事当番だったのだぞ……我を空腹にした罪は重い!」
「ま、まてディアーチェ!裸締めは止めて!そんな格好じゃ当たってるから!?」
背後に回られ見事なまでに裸締めを決められる。ディアーチェの格好は紫のやや大人っぽいブラとショーツ、上にはTシャツ一枚。布越しに感じる年不相応な破壊力抜群な豊かな胸が押し当てられ悶えながら抵抗するシロウ…結局、一時間後解放され簡単な食事を作りようやく仲直りした二人だった
第四話 看病《後編》
了
風邪もなんとか回復したタカヤ。
しかしサエグサ模型店からの大会開催の告知と参加資格を見て唖然となる、そしてさらなる追い討ちが?
そのころ、トオルはシュテルと共に訪れたG研で謎のSDを操る少年シロウとの出会いを果たした
次回、第五話 カレトヴルッフ
幻のレアガンプラ強化パーツ《カレトヴルッフ》争奪戦が始まる