ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー 作:オウガ・Ω
『………………』
『くそ!なんだこの《継ぎ接ぎ》アストレイは!うごきが速い』
『逝きなさいドラグーン!』
『な、なんだこのドラグーン!しっこいぞ』
胴体から背中へ伸びた推進器から光の翼を広げ、右腕にマウントされた赤い爪が目立つドラグーンを射出、相手のストライクノワールを翻弄される中、一気に加速と同時に巨大な剣?を構えた
『………カートリッジ・ロード………』
二回、銃がなる音が響く、構えた大剣の持ち手の刃に隣接した基部がスライド、同時に薬莢が2つ飛び出す。高出力のビームの刃が現れさらに加速、それに気づくもすでに遅く、胴体から綺麗に真っ二つに切り裂かれ爆発。バトル終了のアナウンスが流れた
『……………』
GPベースと黒いアストレイを手にし、静かにその場を離れるファイターに観客達は驚いた
黒く長い髪を揺らし、桜色の和服に身を包んだ女性にみな目を奪われる。その視線を意に介さず歩き去った…ミステリアスな日本人女性ファイターに誰もが次の試合の嵐の目になると感じていた
しかし…彼女は突然、理由を言わずに出場を辞退した
様々な憶測が流れるも、やがて黒いアストレイ、和服美女は皆の記憶から忘れ去られた
……しかし、五年の時を経て《黒いアストレイ》が蘇る
シャ…シャ…シャ…何かを研ぐ音が薄暗い室内に響く中、黒髪を腰のあたりにまで延ばし白い髪留めでとめ、桜色の着流しの和服に身を包んだ少女がいる
大きく開いた胸の谷間にうっすら汗がにじむ。真剣な眼差しの先、手には耐水ペーパー、1/144サイズの刀の刃が研ぎあげられていく。何度も粒子変容塗料を塗り重ね、あまたのファイターとガンプラを切り払い、切り捨て激戦をくぐり抜けてきた銘刀《晴嵐》
「………うん、これでいい。あとはツクヨミ・斬を仕上げるか」
美しく研ぎあげられた晴嵐に笑みを浮かべ刀掛けにおくのはタカヤが通う学院のガンプラ部部長にして先輩さらには隣に引っ越ししてきた《天瞳ミカヤ》、その眼前にはスサノオ、マスラオ、ブレイブ、フラッグ、オーバーフラッグ、GNフラッグ…畳が敷きつめられた部屋に置かれた書院作りの棚に並べられ、真ん中には《ツクヨミ・斬》が触れられば斬る!と言わんばかりの威圧感が満ちあふれている
「《ツクヨミ・斬》。明日は少年を賭けた仕合いだ。それに《明日の乙女座の君は阿修羅をも凌駕する活躍をするだろう!さあ勝利をつかみ取りたまえ!!》とグラハム占いにもある……母が父を説得してくれたから生まれた好機を無駄にしないために必ず勝とう。そして…」
ミカヤはゆっくりと和が強く出された黒塗りの漆仕上げの文机に置かれた写真立てに目を向ける…まだ幼い六歳ぐらいのミカヤ、そして二つぐらい下のタカヤに似た男の子を強く抱く姿が収められている
ーあ、カヤおねえちゃー
「少…ううん…《タッくん》をむかしみたいに、カヤお姉ちゃん色に染めてあげよう。ふふふ、ペアになったらやさしく??????、その汚れのない肌を湯殿で隅々まで……ハアハアハアハアハアハアハア…じゅる……仕上げはよし、寝るかな」
さりげなく?欲望を垂れ流し状態から普段のミカヤに戻ると、いそいそと寝具をしき床につき灯りを消した
ただ、押し殺したような声と衣擦れ、水音が響いていたのは気のせいだろう…多分
文机の写真立てから、写真が抜き取られているのは気のせいだよ……ウン、キノセイダヨ……ウソだって言ってよバーニィ!…(bye作者)
第五・五話 嵐の前の………
同時刻…タカヤが住むマンション《リ・ホーム》。タカヤの部屋の隣に引っ越ししてきたテスタロッサ一家では
「お母さん、レヴィったらライバルおおすぎしゃないかな?」
「そうねぇ…でも勝負はコレからよ。みなさいアリシア」
リビングでくつろぐアリシアは母プレシアにいわれ目を向ける…目にも止まらぬ速さで自身のガンプラ《デスサイズ・スラッシュ》の細かな調整を詰めていくレヴィ。しかもよく見ると以前と違い胴体や足まわりがベース機であるデスサイズとはまったく違う
(……今度のサエグサ模型店の大会にあの伝説の武器カレトヴルッフでるってびっくりしたなあ。ボクにもぴったりだけどタカタカのバトルスタイルにもあってる…………もし手に入れたら)
ーやったねタカタカ♪きょうもボクたち強くてカッコイい勝利だね♪いぇい!!ー
ーうん、一緒にペアを組んで手に入れたカレトヴルッフのおかげかな。ありがとうレヴィー
☆☆☆☆☆☆☆
「………えへへへ…やだなあ、そんな風にいわれるとボクてれるよお……」
「………ねぇ、お母さん。わたし少し心配なってきたんだけど」
「…大丈夫よ。ふふふ、まずはタカヤくんの趣味と趣向を調べながら、確実に外堀を埋めていくわよ。あらフェイトはどうしたの?」
「……今日は《お店》の手伝いにいってるよ。わたしもいきたかったんだけどジャンケンに負けちゃったし……今日は譲ってあげることにしたの」
☆☆☆☆☆
「飛鳥、二番、三番テーブルから雷凰炒飯、特製黒酢酢豚、特製刀削麺のラストオーダーだよ」
「わかった!さて、いっちょう気合い入れて最高の料理を提供するか!!」
熱気溢れる厨房で中華鍋を振るう赤い髪がめだつ少年…新田飛鳥の手伝いにフェイトは来ている。まだ高校生になったばかりなのにかかわらず、若くして老舗雷凰飯店の厨房を仕切る姿に胸が高鳴る。そんなこんだでキンクリ
「ふう、今日もありがとな。店しまうから少し待っててなフェイト」
「う、うん。あの、飛鳥…コレ似合ってるかな」
黒地に白、黄色の花が絢爛に刺繍がされたチャイナ服姿のフェイト…流れるような金髪に豊かな胸、くびれた腰からヒップのラインがはえ、さらには脚を包む白のオーバーニー…くるりと一回転すると思わず見とれてしまう
「あ、ああ。すごく似合ってる……綺麗だ」
「!あ、ありがとう……飛鳥…明日はお休みだから……その、あの……今日は私が独り占めしていいよね」
「……お、おう……と、とりあえず片付けてから…」
「うん」
片付けをいそいそと終え、二人は店の奥…店舗兼住居へ入っていく…いつもなら三人でするのだが今日は二人きりの時間を独占できる事にフェイトは頬を終始赤くしていた
☆☆☆☆☆☆
「…何時もフェイトったら我慢するから……それに私はお姉ちゃんだし。飛鳥も平等に愛してくれるし」
「ふふ、惚れ気ごちそうさま…さあ、こっちもがんばりましょう。アリシア、協力してね」
「うん!義弟になるかもしれないからね」
なにやら企む二人に気づかずレヴィはガンプラの調整を進めていた頃、ナカジマ家では………
ジャッ、ジャッ、ジャッ…ナカジマボビーの工作室にヤスリで高硬度のプラ材を一心不乱に削るノーヴェ…手を動かすのを止め、手前にあるガンプラ《O・ガンダム《B》》とは別のガンプラへ視線をおとす。
「…削り出しは終わりだな。明日までに完成させねぇとな」
つぶやくノーヴェの前には機動武闘伝Gガンダムに登場するネオスウエーデン代表アレンビー・ビアズリーが駆る《ノーベルガンダム》?を放熱フィンを大胆にカット、ヒール部分にタイヤ?、腕部を覆うような分厚いアームガード、腰には推進器内蔵型サイドアーマがスカートみたいに広がっている
今度の富士カップに向け作っていた専用機、しかしサエグサ模型店で行われるガンプラバトル大会に出すために製作していた新型を急ピッチでくみ上げている、パーツ自体は出来てたが追加で作ったパーツのすり合わせに苦労し、ようやく形になったのだ
「…本当は富士カップ本戦でお披露目だったけど、そうもいってらんねぇし、それに……ああ~コレも全部タカヤのせいだ!せっかく勇気出してきたのに、ミカヤとテスタロッサに挟まれて嬉しそうにイチャイチャしやがって!」
ヤスリを持つ手がワナワナ震える…脳裏に浮かぶのはミカヤとレヴィから背中と正面からサンドイッチ状態になってるタカヤの姿…ますますイライラし始めるのをみる影があることに気づいていない
(おかあさん、おかあさん。ノーヴェったら相当怒ってるよ?いくとき気合い入れてルンルンとしてたのがうそみたい)
(……タカヤんの家から帰ってからっすよね……ああ~そんなに削るとバランス悪くなるっすよ!?)
(スバル、ウェンディ…少し静かに…でもコレじゃまずいわね~タカヤくんをナカジマボビーの跡取りにしたいのに……)
(母上、私がさりげなくミツキ殿に聞いてみようか?…)
(それは私が聞いておくから大丈夫よ……最悪なときはジェイルに頼めばいいし)
(叔父さんに!?ダメだよ!よけいややこしくなるから。前だってPPSEに乗り込んで怪しいシステムを売り込んだり、知り合いだからっていきなりアポなしでガンプラ塾主催者の二代目メイジンに粒子圧縮構造式の意見を聞きにいったりして警察にお世話になりかけたの忘れだの?)
(………………じゃあクアットロに)
(((さらにややこしくなるからダメ!/だ/ッスよ!!)))
物陰での母クイント、姉ギンガ、チンク、ウェンディの会話を知る由もなくパーツをすり合わせていくノーヴェにあるのは
(…ミカヤ、テスタロッサ、タカヤはぜってぇわたさねぇからな。富士カップの前にあたしの新しいガンプラ《ノーベル・ガンダム《A》》をお披露目してやる。タカヤはあたしとペアになってカレトヴルッフもいただきだ!)
「フフフフ」
……小さく笑い、ハイライトが消えた瞳で勝利する事を新しいガンプラ《ノーヴェル・ガンダム《A》》を前にし誓うノーヴェ、最後の仕上げに力を入れる
ガンプラバトルのペアを決めるために雌雄を決しようとする三人の恋乙女達、それを取り巻く人達の思惑が交差する中で別な動きを見せる二人の男女がいた
「………みてユウキ!やっぱりタカヤに悪い虫がついてる!?しかもガンプラバトルのペアを決める戦いをミツキの店でするですって?」
「わ、悪い虫って……よく見てよメイ、可愛い子達じゃないか?~(ん、この黒い髪の子どこかで…?)」
ホテルの一室で髪をゆらゆら浮かせ叫ぶメイの手にはタカヤをサンドイッチするミカヤとレヴィ、引きずり出そうとするノーヴェの画像(ミツキからおくられてさきた)…対するユウキはミカヤをみて既視感を感じたとき、メイが顔を俯かせ銀色のアタッシュケースを手にしGPベースを取り出した
「………………どこの馬の骨かしらないけど。タカヤをかけて勝負するなんて十年早いわ…ユウキ、私のガンプラを調整お願いするわ」
「え!?メイまさか………」
「私とユウキの大事な大事なタカヤに手を出したこと後悔させてあげるわ………勘を取り戻したいからつきあって」
「………仕方ないな。でもあの子達はまだまだ原石だ、ビルダーとしてファイターとしても……手加減するならつきあうよ」
「むう~~わかったわよぅ」
プウ~っと頬を膨らませ頷くメイに苦笑いしながら、ユウキも自分のガンプラを取り出しホテルにあるバトルシステムを使用できるよう頼むと真剣な眼差しでガンプラを手に取る
(ああは言ったけど、ビルダー、ファイターとしてもみてみたくなったかな?………まあ僕としてはタカヤが三人とどうなるかが気になるかな)
「準備できたわよユウキ」
「はいはい、じゃあダメージレベル《A》で………手加減無しの時間無制限……」
「六年ぶりのガンプラバトル……やるわよ…」
プラフスキ-粒子が満たされ、ステージは宇宙。それぞれのガンプラの目に光が宿ると同時に黒い何かと、銀色のナニかがぶつかり合った
第五・五話 嵐の前に……