ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー   作:オウガ・Ω

35 / 54
ナカジマホビー…荒野の迅雷と呼ばれた中島ゲンヤが妻クイントと共に経営する自宅兼店舗の模型店


バトル用のフリースペースから制作室、ガンダム作品からスケールモデルまでを含めたプラモ、材料が揃いサエグサ模型店と並ぶ店として有名だが美人姉妹達目当てで来る客も多い


たた父親であるゲンヤが睨みをきかしているため手を出そうとする輩は居なかった…


誰もが寝静まったナカジマボビーの店内に僅かな灯りが見える…中島スバルが模型展示陳列ケースを押したり引いたりするような仕草を見せている



「たしかここに……こうしてやれば」


右、左にショーケースに手を添えると光が走り光学ディスプレイが現れ、迷わずテンキーを打ち込むと静かな音と共にショーケースが左右に開き小さな隠し金庫の扉が姿を現すと手を伸ばし開き取り出したのは無地の箱…中をあけると金色と白の色合いが目立つガンプラ…それを手にし笑みを浮かべた



「コレがあの二代目メイジン・カワグチが作ったガンプラ…カテドラルガンダム、その予備パーツで組み上げられたらガンプラ………」



カテドラルガンダムを手にするスバル、彼女は自分の好きな人《紅ワタル》の為に強いガンプラを一緒に作ろうと考え参考に父親のゲンヤが三年前に手に入れていたカテドラルガンダムを持ち出すためにココにいた


「ガンプラバトルに勝たせてあげたいし、喜ぶ顔が見てみたいんだ……ごめんね、お父さん」



謝りながら金庫の扉をしめショーケースをもとに戻しスバルはその場をあとにした……ただカテドラルガンダムのはいった箱から邪悪な思念がまとわりつくように腕から伝うのに気づかずに


その日からスバルの様子が変わりはじめた




第十話 荒ぶる牙、折れた刃は……

「ふ~補修と調整終わり……」

 

 

「私も終わりだ少年、さあ、あまり時間もないからいこう」

 

 

 

「はい……ミカヤ先ぱ…「先輩は禁止」……ミ、ミカヤさん」

 

 

「ふふ、さあいこうか…」

 

 

顔を真っ赤にして頷く少年…いやタッくんの手に私の指を絡める…ああ、まさに至極いや悦の極みだ。昔より手は大きくなってるけどあたたかくて柔らかい、何より昔と違ってキリリとした目を気づかれないようにみるたび胸が激しく高鳴る

 

…このまま、ずっと手を離したくない…永遠に続けばと、会場に向かいあるきながら何度も何度もおもった

 

 

『皆様、ながらくお待たせしました!チーム・ブレイド、チーム・ファングの入場です!!』

 

 

 

バトル筐体を挟んでチームファング…ノーヴェのお姉さんの中島スバルちゃん、そしてペアの紅ワタル、私とタッくんが向き合うように相対する

 

 

 

「さ、いこっか♪ワタル」

 

 

 

「スバルさん……相手はあの《絶剣のミカヤ》がいるチームブレイドだけど勝てるかな」

 

 

「もう心配しすぎだよ私の言うとおりにすれば(・・・・・・・・・・・)絶対に勝てるから安心して任せて♪」

 

 

 

……チームファング、私が全く知らないチーム…それ以上にノーヴェのお姉さんスバルちゃんの声から何か得体のしれないナニカを感じる…紅ワタルって子のガンプラは完成度、何よりカテドラルガンダムのパーツが組み込まれてることから《プラフスキー》粒子制御力は極めて高いのがわかるんだ

 

 

 

でもそれ以上に気になったのは、先のバトルで対峙した相手のガンプラが石像のように固まって為すすべもなく砕かれた

 

 

結果から、すべてを差し引いたら勝利した要因はスバルちゃんのガンプラが何らかのコトをしたとわかるんだけどもナニをしたかを修繕の合間を見ながら試合のVTRを何度みたけどもわからなかった

 

 

…何よりスバルちゃんも、このクラナ地区で指折りのファイター。ノーヴェよりもガンプラ歴が長いし、それに今まで無名だった紅ワタル少年をココまで鍛え上げたのはスバルちゃんが指導したのはまちがいない

 

 

 

「あ、あのミカヤさ…っ?」

 

 

 

タッくんの声で我にかえる…いけない手に力がこもってしまった。名残惜しいけどタッくんの汗、匂いを染み込んでいる絡めた指を離した

 

 

「す、すまない少年……痛かったならあやまるよ」

 

 

「いえ、大丈夫ですから…あの、もしかして同じコト考えてました?」

 

 

タッくんも私と同じコトを!?……フフフ、やはり運命の赤い糸で太く強く繋がれているみたいだ

 

 

 

「まあね…チームファングはまだ手の内を隠しているみたいだ」

 

 

 

「はい、でも負ける気はありません…だから一緒に」

 

 

 

「ああ、もちろんさ…いくよ」

 

 

 

GPベース、アストレイブレイドを筐体にセットするタッくんから、いつもより気合いが入ってるのがみてとれる…メイ叔母様、ユウキ叔父様とやっぱり似ているな。スサノオ・斬とGPベースをセットするとプラフスキー粒子があたりに満ちモニター、サイドスロット、アームレイカーが構築手をおき握りしめた時、私の服が光に包まれた

 

 

な、なんだいこれ?隣のタッくん、向かい側にいるスバルちゃん、紅ワタル少年も同じ光に包まれてい

 

 

『はいは~い、今回からバトルシステムに新システム実装のお知らせ~あのスカリエッティ研究所から提供されたシステム《BD》をあわせる事で想い描いたイメージを服に反映する《バリアジャケット・システム》を私の弟ユウ、楓ちゃんが頑張って組み込んでくれたの~よりバトルに入れ込めること間違いなしよ♪』

 

 

ミ、ミツキ店長!?……想いで変化するのならばとイメージする。敬愛する心の師《Mr.ブシドー》、天瞳流ガンプラ術《戦拵衣》が浮かぶと瞬く間に朱袴に胴着、胸にサラシと甲冑にも似た出で立ちになった

 

ブシドーマスクが無いのが残念だと思いながらタッくんに目を向け息を呑む……ボロボロのマントに血よりも赤く千切れ風がないのに揺れなびくマフラー姿……こ、コレは二代目メイジン・カワグチと同じ?まさかタッくんは会ったことがあるの?

 

 

 

「スゴいですねバリアジャケットって、さわり心地はまったく変わらないし」

 

 

「し、少年…その出で立ちは?」

 

 

「え?コレですか………ん~イメージしたらこんな風になったんです…おかしいですか?」

 

 

 

 

「い、いや……何でもないよ」

 

 

 

不思議そうに首を傾げるタッくん…メイ叔母様はタッくんが生まれてから一度も二代目に会わせたことは無いって父様から聴いてる…

 

 

 

 

「ワタル、なんか王様って感じだね~赤い外套に巻かれた鎖すごく似合ってる♪あ、私のバリアジャケット姿似合ってるかな♪♪」

 

 

 

 

「そ、そうですか?あんまりにあわないかも……似あ、スバルさんのはすごく似合ってますから、その…あの試合が」

 

 

 

「ありがとワタル♪じゃあサクッと終わらせようか……あとで二人っきりで見せ合いっこしようね」

 

 

 

一瞬、こちらを見たスバルちゃんの目には何か得体の知れない暗さを感じながら身を引き締めたアームレイカーを握り二人がGPベースとガンプラをセットする。粒子が更に放出量を増しフィールドを形成していく

 

 

 

 

 

《Beginning[Plavesky.Particle]dispersal.field7,space》

 

 

フィールドは月面か、遮蔽物はあまりないけどクレーターが点在しているみたいだ。さあ、私たちのガンプラバトルをはじめよう

 

 

 

「秋月タカヤ、アストレイブレイド楯無・改!」

 

 

 

「天瞳ミカヤ、ツクヨミ・斬」

 

 

 

「紅ワタル、ファングアストレイ!」

 

 

 

「中島スバル、武者須刃流頑駄無」

 

 

 

 

「「「「いきます!/参る!/い、いきます/いくよ」」」」

 

 

 

 

タッくんのアストレイブレイド、私のツクヨミ斬はカタパルトから一気に飛び出し月面を低空飛行し索敵を始める…でもこのバトルがキッカケでタッくんのあれを目覚めさせることになるってことに予想もしていなかったんだ

 

 

 

 

 

 

第十一話 荒ぶる牙、折れた刃は……

 

 

 

月面を低空飛行するブレイドとツクヨミ斬を操作するタカヤ、ミカヤ。そのとき接近を示すアラートが鳴り響く

 

 

 

 

「………三時に反応あり!スゴいスピードだ!!」

 

 

 

「…あれは武者頑駄無ベースの改造機みたいだ……」

 

 

 

『見つけたよ!まずは先手必勝!リボルバーナックル!!』

 

 

 

一気に間合いを詰めた金のアンテナに蒼の塗装に彩られたSD…武者頑駄無ベースの改造機《武者須刃流頑駄無》が右腕に装備された《破砕輪駆拳》を大きく振りかぶりブレイド、ツクヨミ斬に勢いをつけ振りかぶるのを見て防御。それぞれの機体の腕、膝、肩へ攻撃があたり水にも似たエフェクトが起きるのと同時に離れた

 

 

「く、いまのは…大丈夫か少年」

 

 

「はい、まだダメージは軽……」

 

 

 

言いかけたタカヤの声が止まる…ミカヤも須刃流頑駄無を警戒しながら釣られるよう見た…銀の翼を広げ、血のように赤い装甲に彩られたアストレイベースの改造機《ファングアストレイ》が降り立つ

 

 

 

(………見た目からしてアストレイをベースにし複数のガンプラのミキシングビルドとセミスクラッチの改造機。背中の翼はストライカーユニット……粒子制御貯蓄用クリアパーツも………スゴい、スゴいよ紅ワタルくん、キミの作ったガンプラは!)

 

 

 

『スバルさん、先行しすぎだから……』

 

 

 

『ゴメンゴメン♪はやく終わらせようとおもって心配させちゃったね……じゃ早速やろう、わたしはツクヨミを』

 

 

 

 

『僕がブレイドを相手する。だったね』

 

 

 

『うん、それにちゃんと勝てる魔法(・・・・・)をかけてあるから……安心して戦ッテネワタル』

 

 

 

 

暗いモノを感じさせる声を背にタカヤ、アストレイブレイドに向き直るワタル、ファングアストレイ…まず仕掛けたのはワタル…翼に内蔵されたバーニアで接近するや否や正拳、裏拳、下に潜り込んでのアッパーから蹴りが繰り出され、対するタカヤも拳、アスカロン、蹴りで応酬しながらツクヨミ、須刃流頑駄無から離れていき、互いの蹴りがぶつかり合い衝撃波が起きる

 

 

 

「スゴいよ、キミのガンプラすごく作り込んでいるし、関節強度も高く自由に動かせる……可動域もスゴくある…」

 

 

 

『あ、ありがとう……えとキミは』

 

 

 

「僕は秋月タカヤ、そして僕の愛機《アストレイブレイド楯無・改》だ」

 

 

『……ボ、ボクは紅ワタル……ファングアストレイ……き、キミもスゴく作り込んでいるね』

 

 

 

バトル中に関わらず互いのガンプラについて会話するワタル、タカヤ…アームレイカーを動かし殴り蹴りを繰り出す

 

 

 

「ありがとう!それに翼の塗装は特性の違う粒子へ…『ワタル!』」

 

 

 

しかし会話はスバルの声にかき消され、ビクリとファングアストレイ。それを操るワタルの身体が震え瞳から怯えの色が見える…その声の主はミカヤと切り結び殴り合い、撃ち合うスバルのモノ。その瞳に暗く淀んだモノを湛えながら言葉を紡ぎ出した

 

 

 

『ワタル、勝ちたいんだよね?相手とそんなに喋ってていいの?何度もいったの忘れたの《ガンプラバトルは勝利こそ絶対》…強くなりたいって言ったのにウソなの?』

 

 

 

『……違う…ボクは』

 

 

 

『私がどれだけワタルのためにやったと想ってるの?いつもバトル負け続けてガンプラを壊されて泣いてるばかりの頃に弱いワタルに戻りたいの?せっかくお父さんの隠していたカテドラルガンダムのパーツを組み込んだのに無駄にするの?ねえ?』

 

 

 

『あ、ああ………や…だ』

 

 

 

『なら無駄話は止めて、目の前の相手を倒してよ……誰にも負けないバトルをわたしに見せて……ワタル、あの頃に戻りたいの?』

 

 

 

狂気を孕んだ声が染み込んでいき、やがてワタルの様子に変化を感じた時、かすかに声が響いた

 

 

『……倒さなきゃ、スバルさんのために倒さなきゃ、勝利しなきゃ、絶対勝利を、カレトヴルッフを、ボクのガンプラで……勝つんだ!』

 

 

 

 

「うわっ!」

 

 

 

ギンッとツインアイが輝かせ殴りかかるのをアスカロンで防ぐも関節がギシギシとなりアームレイカー越しに伝わりタカヤは力を込め防ぎながら残るアスカロンで横凪に切り払うも空を切る…いやしゃがみこんだファングアストレイの拳が胴を容赦なく殴り抜き吹き飛ばされた宙を舞うブレイドに地を蹴り接近、両手を組みそのまま叩きつける

 

 

 

「っ!?(さっきとはまるで別人だ……いったいナニが!?)」

 

 

 

『勝たなきゃ、ボクは勝たなきゃ……またガンプラを壊されるのはイヤだ、強くならなきゃ、強くならなきゃ!!』

 

 

「は、はや………痛ッ!?」

 

 

 

拳、蹴り、肘打ち、膝蹴り、回転回し蹴りが立て直す間もなくブレイドの身体を捉えダメージを与えていく中、突然タカヤの身体に痛みが走り駆けめぐる。ナゼと思いながらも耐えアームレイカーを動かし辛うじてふせいでいく

 

 

 

「し、少年!スバルちゃん、彼にナニをしたんだ!!」

 

 

 

『ナニって?この大会にでる前からワタルに言っていることだよ……ガンプラバトルは勝利こそ絶対なんだから。弱点を容赦なく狙って叩き潰す。そうすればワタルは強くなるし、もう誰にもガンプラを壊される事はなくなる……そう《二代目メイジン・カワグチ》みたいに強くする。だからノーヴェやミカヤさん、レヴィって子には悪いけどワタルの為に負けてもらうよ』

 

 

 

 

「なっ?……だが負ける気は私も少年もないよ!(今のを聞いて確信したよ。スバルちゃんはカテドラルガンダムに宿る二代目メイジンカワグチの信念に毒されている……なんとかしなければ)」

 

 

 

『…それに『わたしの魔法』が始まる頃だし…ね!』

 

 

晴嵐と破砕輪駆甲が何度も打ちつけ火花と軋む音が鳴る中、ミカヤはスバルの『わたしの魔法』に嫌なモノを感じ、真っ先に浮かんだのは先の試合の相手…石のように固まったまま防御すらせずなすがままに攻撃を受け砕けた

 

 

石のように固まる、身動きが出来ない、無防備……攻撃を捌くなか、キーワードが浮かぶもナニカが足りない…ツクヨミ斬を動かした時、右腕の動きが僅かに遅れ破砕輪駆甲が迫るもギリギリかわした時、ナニカが目にはいる

 

 

破砕輪駆甲のタービンから水滴がとび、ツクヨミ斬の装甲に付着しやがて固まる……それをみたミカヤの頭に浮かんでいたキーワードが一つになり導き出された答えにワナワナとアームレイカーを強く握りしめた

 

 

 

「ま、まさかスバルちゃん、キミの魔法は…コレは…」

 

 

 

 

『あ、もう気づいたんだ……さすがは《絶劍》て呼ばれるだけはあるね…でもレギュレーション違反はしてないから。それにもう手遅れだよ』

 

 

 

 

 

 

 

スバルの言葉と同時にサブウィンドウに防戦一方のブレイドの動きが錆び付いたように鈍くなり動きがアスカロンを交差した状態で固まる

 

 

「え?腕が動かない!?なんで?…………コレは」

 

 

 

両腕…肘を繋ぐ関節を拡大すると見えたのは白く変色した関節…先ほど須刃流頑駄無の打撃が当たった場所に集中している。先ほどの水のようなモノの正体は《瞬間接着剤》だと気づいた

 

 

 

『…………勝つんだ……ボクは強くなるんだ……どんな相手でも!!』

 

 

 

足刀を固まった腕へ叩きつけアームレイカーを回しアイコンを紋章を象ったSPスロットにあわせる指で叩いた…ファングアストレイが翼を大きく広げ空へ舞いあがる。その時フィールドに変化、月面のはずなのに夜空が広がり月が輝く…その月の中央に翼を閉じ滞空するのは銀翼を閉じ逆さに飛ぶファングアストレイ。艶やかかつ妖艶で聴くものの魂を魅了する旋律を響かせ、ゆっくりと開かれた翼の内に紅よりも赤く深紅の彩りがまるで血のように見えた

 

 

 

   ー…Wake・Upー

 

 

妖しく輝く月を背にし、プラフスキー粒子が高密度に荒れ狂い翼に収束させながら脚を突き出し一気に加速、右足に収束圧縮された赤みを帯びたプラフスキー粒子が溢れ出させながらアスカロンを構えたまま動けないブレイドへ牙をむいた

 

 

 

 

 

    ーDarkness・Moon・Breakー

 

 

 

『ハアアアアア!!』

 

 

 

「ぐ、う、うう……!?」

 

 

 

 

機械的な声と共にファングアストレイの蹴りがアスカロンに接触、互いのプラフスキー粒子がせめぎ合い足元の岩肌が瞬く間にめくれあがり爆ぜ、タカヤは必死にブレイドの動かない腕を操り防ぐもアスカロンの刃に亀裂が大きく走りソレは両腕に達し…砕け散った瞬間、両腕に激しい痛みが襲いかかった

 

 

 

「う、うわあああああああ!!」

 

 

 

砕けたアスカロン、関節から外れた左腕、粉砕された右腕が舞いちる中吹き飛ばされ勢いよく岩肌に叩きつけられ背中に激しい痛みを感じながらブレイドの状態を見る…砕け散ったアスカロン、左肘関節下から弾かれ抜け落ちた左腕、粉々に砕けた右腕のなれの果て、亀裂が至る所に走り赤く警告表示で埋まる……

 

 

「う、く……」

 

 

 

アームレイカーから離れそうになるも必死にこらえ、ファングアストレイへ目を向けながらフラフラ立ち上がるブレイド…その姿に観客は声を出せない、近くで観戦するレヴィ、ノーヴェ、ミツキに招かれた翼、香澄、畢、ランも息を呑む。スバルと戦うミカヤはタカヤの姿をみて恐れていた事態が起きたことをさとった

 

 

 

 

「少年!(今の様相……やはり、目覚めてしまったのか!?)」

 

 

『ワタルの必殺技を防ぐなんてスゴいね~でも、あの両腕じゃ何も出来ないね……ミカヤさん、アナタを倒せばわたし達の勝………「スバルちゃん」……なに?』

 

 

 

「…こんな事をして得られた勝利を彼が喜ぶと思ってるのか?先の言を聞くかぎりキミは彼を心の傷に漬け込み縛り付けている、スバルちゃんがいなければ勝つことが出来ない、彼が君に刃向かえないことを知り自らに依存させるよう誘導しているに過ぎないんだ!」

 

 

 

『……ナニいってるかわからないよミカヤさん。はやくアナタを倒してワタルのとこに行かないといけないから…勝利を』

 

 

 

「……スバルちゃん!」

 

 

 

破砕輪駆甲と晴嵐の刃が火花を散らしぶつけ合いながら叫ぶミカヤ…アームレイカースロットをSPにあわせ迷わず指で叩くと同時にさけんだ

 

 

 

「……キミは二代目メイジンの意志に取り込まれている!私の刃で呪縛を断ち切る!!」

 

 

黒を基調としたツクヨミの全身が赤く輝き姿が消え大振りの拳が空をきった瞬間、須刃流頑駄無の身体が大きく揺れ吹き飛ばされ赤いナニカが迫る

 

 

『!まさかコレってトランザム!?』

 

 

 

「………はあ!」

 

 

赤く輝くツクヨミを操るミカヤの裂帛の声と共に振るわれる晴嵐の刃がいくつのも光の残像を残し破砕輪駆甲を瞬く間に切り裂き細切れにされたのをみて、スバルも粒子を纏わせ捻りを加えた蹴り、拳で刃の嵐を防ぐも高速で動きあらゆる方向から繰り出されるツクヨミの刃が右腕、左腕を切り払った…

 

 

『わたしの須刃流頑駄無が!?』

 

 

 

「コレで終わりだスバルちゃん!二代目メイジン・カワグチの意志、今、断ち切る!!」

 

 

 

 

 

残像を残しながら晴嵐で袈裟切るツクヨミ、僅かな間をあけ静かに刃を納め背を向けると同時に須刃流頑駄が爆発四散するのを見届けるとトランザムを解除した

 

 

「はあ、はあ………スバルちゃんにまとわりついた邪念は断ち切れたハズ……少年……タッくんの所に行かないと…!?」

 

 

 

急にガクリと膝を付くツクヨミ…うアームレイカーを何度も動かすも反応しない…見ると各部関節が磨耗しヒビが入っている…

 

 

「……ツクヨミがトランザムに耐えきれなかったのか。く、動くんだツクヨミ、動いて。はやくタッくんのところに急がなければ……守らなきゃいけないんだ……頼む動いてくれ!」

 

 

 

 

オレンジ色に照らされる粒子モニターを前に叫ぶミカヤ…その瞳に映るのは満身創痍のブレイド、痛みに耐えるタカヤ。しかし目からは戦う意思は消えていない

 

 

 

 

「う、紅くん……」

 

 

 

『………まだ立ってる……倒さなきゃスバルさんの為に!!』

 

 

 

地を蹴り滑空しながらブレイドに迫るファングアストレイ、拳と蹴りが何度も当たり亀裂がはいり広がっていく中、全身に襲いかかる痛みに歯を食いしばり耐えアームレイカーを握りしめるタカヤに攻撃が当たる度に声が響く

 

 

 

    (もうガンプラを壊されたくない)

 

    

    (ガンプラを傷つけたくない)

 

 

    

      (負けたくない)

    

 

 

 

「く、くう(今の声って紅くんの……)」

 

 

 

 

響いた声はワタルのものだと気づいたタカヤの脳裏に師であるマスタージャパンとのやりとりを思い出していた……ブレイドの素体になるアストレイを前にし座禅をしていた時だった

 

 

 

 

 

ータカヤよ、我々ビルダー、ファイターは不器用なのだ…互いの事を理解するには如何にすれば良いとおもうー

 

 

 

 

ーそれは普通に喋れば……ー

 

 

 

ー喝アアアアアッ!だからお前はファイター、ビルダーとして未熟なのだ……よいか言葉ではどうしても伝わらぬ時があろう。お前もファイターならば魂を込め作り上げたガンプラを操り拳を交え語るのだ!さすれば相手の声も伝わるであろうー

 

 

 

 

ー魂を込め作り上げたガンプラ……ですか?ー

 

 

 

ーんむ、だが先ずは自分だけのガンプラを作り上げるのだ……そのガンプラと己を一体となることを目指してみよー

 

 

 

何度も殴られ蹴られるブレイドを通し伝わるワタルの声……コレが魂の声だと気づくと通じないとしりながら呼びかけた

 

 

 

「紅くん!君の想いはわかったよ……本当にガンプラが好きなんだね」

 

 

 

『!……』

 

 

 

「傷つけたくない、壊されたくないって気持ちはわかるよ……でも今のままバトルをして強くはなるかもしれない。でも今のキミはバトルを全然楽しんでいない」

 

 

 

『バトルを楽しむ?………でも負けたら壊される、傷つけられる…いつも…だからボクは強くなるんだ!』

 

 

 

 

「うわっ!」

 

 

 

回転回し蹴りが顔面に決まりアンテナのクリアーパーツに亀裂が走り欠け、破片が落ちると同時にブレイドの動きが止まる…反応しないアームレイカーを動かすタカヤの手にナニカが落ちる。額から血が流れるも必死にアームレイカーを動かす中、ファングアストレイは舞いあがり宇宙に再び闇夜が広がり深紅に彩られた月が怪しく輝く……

 

 

 

「う、く……動いて、動け………」

 

 

 

 

      ーwake・upー

 

 

真紅色の月が空に輝きに影。ファングアストレイが蝙蝠の翼を広げる姿から黒いナニカが両脚のパーツから溢れアームレイカーを握るワタルの様子に変化が起こる

 

 

 

『ガンプラバトルは勝利こそ絶対……ボクは勝つんだ…絶対勝利…絶対勝利こそすべて……』

 

 

 

「ブレイド……動いて………僕は」

 

 

    ーDarkness・Moon・Breakー

 

 

 

何度も呼びかけても応えない愛機ブレイド…無情にも最終宣告の声がフィールドに響く。月を背にしファングアストレイが迫る…その時だった

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

ー負けるなタカヤちゃん!!ー

 

 

 

ータカヤお前のプラモスピリッツは消えちゃいなぞ!!ー

 

 

 

 

ーまだ、あきらめるのは速いよタカヤくん!!ー

 

 

 

ーガッツをみせろタカヤ!!ー

 

 

 

突如響いた翼、香澄、畢、ランの声……観客席からバトル筐体はかなり距離があるのに関わらず届いた声が染み渡る…諦めの色が消えていく

 

 

 

 

ータカヤ………負けんな!ー

 

 

 

ー………少年……頑張れ!ー

 

 

 

ータカタカ!あきらめないで!!ー

 

 

 

レヴィ、ノーヴェ、ミカヤの声…身体の痛みが消え、迫るファングアストレイを前に目を閉じた。心が今まで以上に落ちついてる中で目の前に自身のガンプラ、アストレイブレイドが姿を見せる

 

 

(ブレイド、僕のガンプラ………僕の魂を込めたガンプラ……マスタージャパン先生の言葉の意味がわかったよ………ブレイド、僕と一緒に戦ってくれる?)

 

 

タカヤの問いに応えるようツインアイが輝いた…ファングアストレイの必殺の蹴りが眼前に迫る中、ブレイドの全身のクリアーパーツ…粒子貯蔵庫から膨大なプラフスキー粒子が放出、その膨大な奔流が楯がわりになりファングアストレイを吹き飛ばした

 

 

 

『!?』

 

 

 

プラフスキー粒子の放出が収まり白金色に輝く中に立つブレイド、足元にある砕けず残った左腕をしゃがみながらはめ込み動かしながら刃がないアスカロン基部を構え、アームレイカーを握るタカヤは深く深呼吸しゆっくりと目を開けた

 

 

「いくよ、紅くん………」

 

 

 

『…っ!?』

 

 

 

静かで穏やかな声と同時に白金の粒子が舞いブレイドの姿が消え、ファングアストレイの真横に現れ刃のないアスカロン基部で切り払う。踏みとどまるファングアストレイのハイキックをくりだすも再び姿が消えた空をきる

 

 

いや、全身の亀裂から溢れ出した粒子がスラスターがわりになり通常の三倍の速度を生み出し残像を残すほどの動き、それを目の当たりしレヴィが声をあげた

 

 

 

「タカタカの動き………ボクのと同じだ!」

 

 

 

白金の粒子が舞う中、踏み込むと同時に斬り込む…ファングアストレイの翼に亀裂が走り砕け光が消えたワタルの瞳に光が宿る

 

 

 

 

『う、あ…うう……よ、よくもファングを!』

 

 

 

砕けた翼を目にしアームレイカーを握る手に力がこもるワタルは再び肘打ち、裏拳、正拳…恐ろしいまでの速さで繰り出す、それを蹴りで正確に打ち落としていく

 

 

 

 

「あれって、あたしのリボルバースパイク……!?」

 

 

 

「あの太刀筋は天瞳流・龍閃……一度しか見せたことがないのに………」

 

 

 

 

ノーヴェ、ミカヤもタカヤの動きに感嘆の声をあげる中、タカヤの意識はブレイドと一体化、ブレイドそのものになっている…しかしガンプラが受けたダメージはタカヤの身体を蝕むも耐える

 

 

 

(痛い………まだだブレイド…)

 

 

ブレイド(魂を込めたガンプラ)に意識を集中し、ファングアストレイの動きを見極めながら左腕を見る

…辛うじて原型を保っているクリアーパーツ製の刃が無くフレーム基部のみしかない

 

全力に耐えきれるのは恐らく一回。負けるかもしれない。だがタカヤの頭からそんな気持ちは無く全力を出し切り魂をこめた拳をぶつける戦いを楽しんでいた

 

 

壊れ、傷ついても全力でバトルをする。たとえ負けても涙を流して、悔しくてもすべてを出し切ると何度でも戦いたくなる

 

 

 

だからこそガンプラバトルは楽しい。それをワタルに魂をのせた拳で伝えたい

 

 

(僕の全てをぶつけたいんだ……拳を通して伝えたいんだ)

 

 

 

試合終了時刻まで五分を切った、ファングアストレイは片翼、右肩のアーマーが砕け至る所に亀裂が走っている…ブレイドも機体から破片が落ち軋んでいる、肩で息をする二人をみて互いの気力も体力も限界寸前だと観客席にいる誰もが思い見守る中、互いに身構え微動すらしない

 

 

……静寂が支配する中、先ほどの攻撃でめくれ上がった月面の岩盤ががらりと崩れ落ちた

 

 

 

 

 

『コレで終わりにするよ!ファングアストレイ!!』

 

 

 

 

再び闇夜が広がり深紅の月が浮かぶ中、蓄積された全ての粒子を放出と同時に必殺の一撃《Darkness・Moon・Break》が解き放たれた。先ほどとは比べものにならない圧倒的加速、圧縮粒子に包まれたキックが襲いかかろうとした時、ブレイドの左腕…刃のないアスカロン基部から粒子が溢れ、やがて白金の刃へ変わると同時に地を蹴る。加速し突撃するファングアストレイの右足へ白金の刃がぶつかり、性質の異なるプラフスキー粒子の奔流が溢れだした

 

 

『はああああ!』

 

 

 

「コレが………僕の魂を込めた最後の一太刀だ!!」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

Darkness・Moon・Break、白金色の刃が接触面でスパークする中、ブレイドの左腕に大きな亀裂が走り微かに押されファングアストレイはさらなる加速をかけた時、圧縮粒子を纏った右足に亀裂が生じ瞬く間に広がり砕け、左足も粉砕されるのをみて唖然となるワタルの前に砕け始めた左腕大きく振りかぶるブレイド、その刃が肩口から腰へ袈裟に斬り捨てる

 

 

「コレが僕の魂の刃……ブレイドだ」

 

 

振り抜いた左腕が完全に砕けると同時に切り裂かれた傷跡から光が走りファングアストレイは爆発に包まれ、力なく浮かぶブレイドの姿のみ残された

 

 

      

 

 

 

     ーBATTLE ENDEDー

 

 

 

『し、勝者、チーム・ブレイド!双方の選手のバトルに拍手をお願いします!!』

 

 

ミツキ店長の勝者を告げる声にパチパチと観客席から拍手が湧き健闘を讃える歓声が沸き上がる。しかし…

 

 

 

「はあ、はあ、はあ………っ痛」

 

 

 

粒子フレームが消える中、自身のガンプラ…ボロボロになったブレイドとGPベースを手にしたタカヤ、だが様子がおかしい。足元もおぼつかず息も荒くしながら歩き出すも、目の前が真っ暗になり崩れ落ちるように倒れそうになる。ミカヤが間一髪で優しく抱きかかえ慌てたように呼びかけた

 

「少年!大丈夫か?」

 

 

 

「あ、ミカヤさん、届いたかな紅くんに……僕の刃……うっ!う……あ」

 

 

 

「(やはり、あの時と同じだ)………ミツキさん!医務室の用意をお願いします!!はやく!!」

 

 

「え、ミカヤちゃん……わかったわ。こっちよユウ、ユン先生を呼んで」

 

 

 

「わかった!すぐによんでくる」

 

ただならぬモノを感じたミツキの行動は早かった。弟のユウにかかりつけの医者であるユンを呼ぶよう伝えると、タカヤを抱きかかえたままのミカヤを伴い医務室へと歩き出した

 

 

 

 

 

 

「あなた、タカヤが………タカヤが」

 

 

 

「わかってる……でもミカヤちゃんとミツキちゃん、ユン先生なら大丈夫だ……」

 

 

次の試合を控える覆面夫婦…先ほどのタカヤの尋常ならない様相に顔を俯かせ嗚咽を漏らすレディMの肩を抱き寄せ安心させるよう言葉をかけるしかジェントルYには出来なかった

 

 

 

 

 

 

第十話 荒ぶる牙、折れた刃は……

 

 

 

 

 

 

 

 




ファングアストレイとのバトルで意識を失ったタカヤ
…ノーヴェ、レヴィはミカヤの口から倒れた原因を知ることに


そして意識を取り戻したタカヤの前に意外な人物が現れ、一方で第二戦…覆面夫婦VSチーム・G&Qとのバトルが遂に始まろうとしていたのです



ガンダムビルドファイターズ刃ーブレイドー



第十一話 絆のアストレイ、漆黒と鉄拳再び



次回もガンプラバトル!レディィィっ…ゴオ!!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。