ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー 作:オウガ・Ω
薄暗い夜のとばりが落ちた月明かりに照らされ浮かぶ影が視ていたのはタカヤのマンションで集まり看病するミカヤ、レヴィ、ノーヴェの賑やかに過ごす光景
月明かりが影を照らし露わになったのは無機質なツインアイを模した仮面、ボロボロのマフラーとマントに身を包んだ人物の声からは安堵と懐かしさが滲み出ているのがわかる
ガンプラマフィアに拉致されそうになる寸前で、大立ち回りしチーム・シャッフルと接触、ミカヤの実家でハルナと接触し消えた彼は、その足でタカヤのマンションから10キロ離れた場所にある給水塔から視ていたのだ
まるで何かからタカヤを含めた面々を護るように…しかし肩をふるわして手で口元を押さえるよう咳き込み、ようやく止まった
『はあ、はあ………っ……』
手についたモノに微かに動揺しながら、それを拭うと何事も無かったかのように再び、タカヤのマンションへと視線を向けた
………仮面の少年《タツミ・キョウジ》、なぜタカヤを見守るような行動を取るのか…それは未だにわからない
だが仮面の少年タツミとタカヤと邂逅する時、幸せな時間を享受する彼女に重大な選択を迫ろうとしていることに未だ気づいていなかった
第三試合、チーム・サープリスVSチームクライ戦はアマミ・イッキ、アインハルト・ストラトスが圧倒的勝利を収めた
その試合結果は控え室でガンプラの調整にいそしんでいたトオル、シュテル、隣の控え室でもシロウ、ディアーチェも手を止めモニターをみてる
「…なんだよあれ、圧倒的だな……アマミ・イッキ、アインハルト・ストラトス…」
「そうですね。ガンプラの完成度も高いですけど…あれは…」
「どうしたシュテル?顔色悪いけど、具合悪いのか?」
「い、いえ、大丈夫ですよ…次の試合まで時間があまりないですから」
「あ。そうだった……じゃ、急ごうぜ」
シュテルに言われて、自身のガンプラ《ランスロット・ガンダム》の調整作業を始めるトオルから目を離し、シュテルは自身のガンプラ《ガンダムX・ズィーガ》を手にとる
ガンプラ塾時代から、ずっと使い続けてきた愛機の関節の緩み、塗装剥離が無いかをチェックするも、頭の中には先の試合、チーム・クライのファイター《アマミ・イッキ》のこと
(…あのバトルスタイル…ガンプラ塾に在籍していた最低なファイターと似てます…)
ーあは!なに言ってんだよ?相手の弱み握って、脅して、相手の人生や家族を滅茶苦茶にして、身動きとれないガンプラを派手に潰して、完璧に勝利するって最高にクールじゃん?苦しむ様を見れて一石二鳥、飯もうまく進むしね~それに二代目メイジンカワグチもいってるだろうが。『ガンプラバトルは……』ー
『………ガンプラバトルは勝利こそすべて、例え相手が親、兄弟、親友、恋人であろうと退け勝利すべし……』
修羅と呼ばれた二代目メイジンカワグチ、シュテルが知るファイターの言葉が重なり聞こえる。塾在籍中に、何度も聞いた。ソレが当たり前で三代目メイジンへなるための条件。両親の都合でやむなく退塾、ドイツへ行って数年ぶりに帰ってきても変わらなかった
(…………ガンプラバトルに勝つのは必要、だから世界を目指すためにもドイツから帰って来てからすぐ、紫天を再結成しました。そしてトオルと出会ってから『勝つ』だけではダメだってわかったんです………だってガンプラバトルは)
「パーツの緩み無しっと、ヴアリスもクリアランスOK……なあ、シュテル」
「え?な、なんですか?」
「…さっきの試合さ嫌な感じがしたんだ。あのファイター《アマミ・イッキ》とあの黒いアストレイを通してさ…あんなバトルは楽しくない……だからさ見せてやろうぜ。オレとシュテルのガンプラバトルをさ」
「……そうですね。
「………ワタシのあたりからだよ…それよりいないみたいだね?」
「ええ、先ほどの試合が始まる前から……」
「ヴィヴィオ、どうしたん……だ……って」
ガンプラのチェックを終え振り返ったトオルはシュテルとヒソヒソ話すヴィヴィオをみて固まる。金色の髪をリボン藍色のリボンでむすび、白のオーバーニーに明るい黄色に白のラインが入ったミニスカートが目立つチアリーダユニフォームに両手にポンポンを持ったヴィヴィオに見とれていたからだ
「どうかなトオル、似合ってるかな?」
「あ、ああ!すごく可愛い…(ヴィヴィオ、スッゴく可愛い…)」
「良かった~次の試合はたくさん応援するね。トオル、ファイト♪」
ポンポンを揺らし軽くジャンプし、満面の笑顔と仕草にトオルをドキドキさせるのに充分な破壊力…ドバーガンでハートを撃ち抜かれていた
(………ヴィヴィオ、ソレずるいです…桃子おばさまとなのは姉様の入れ知恵ですね…でもトオルはスク水メイド、ザ・ビーストが好みです)
甘酸っぱい空気を醸し出す二人に羨ましそうな視線を向けるシュテル…しかしトオルの部屋でガンプラ談義し、離れた時にベッドの下から《世界のスク水メイド全集》、
しかし、その思春期真っ盛りな固有結界は数秒後にガラガラ崩れ落ちる…控え室の向こうから声が聞こえてくる
「ル、ルーテシア、さすがにコレは…」
「大丈夫、これならトオルパパはいちころ。ママの持っている武器を生かすためのだから」
「で、でも……わたし……こ、こんなの似合わないわよ」
「……恥ずかしがらずにいくの…えい」
「きゃ?」
扉が声と同時に開いたソコには…白いオーバーニーて包まれた見事な脚線美の足、ふわりと揺れる白地に赤のスカートに《fight!》の文字が圧倒的な母性の象徴で歪ませ、大きく揺れる。真っ白なリボンで長く綺麗な紫髪をサイドテールにしたポンポンをもつメガーヌ…顔を真っ赤にし俯きチラチラとトオルをみてる
「メ、メガーヌさん!?な、な、な、そ、それは……」
「え、えと……トオルくんの応援に……そしてらルーテシアがコレをって……へ、変かしら……おばさんだし」
「へ、変じゃないし!メガーヌさん、おばさんじゃないから!それにスッゴく似合ってスッゴくきれいだから……だから自信持って!」
「………トオルくん…ありがと」
「う、うわ??」
感極まったのかトオル足早に駆け寄り抱きしめる…家でチアコスを渡され出るまでは恥ずかしく無かった(もちろんコートをきて)。いざ控え室の前まで来ると急に不安になった
しかし。トオルの言葉が不安を砕き、優しく豊かなバストに埋もれさせるよう抱きしめてたのを目にした二人は
(……………………く、
(油断してたよ。まさか私たちのトオルを眼前NTR(!)するなんて……トオルも、トオルだよ!そんなに大きな胸が好きなの?BBAのだよ!?私だって最近膨らんできたし、今から小さい方が好きな風に教育しないとね)
((もちろん大会が終わってから、ゆっくりと時間をかけて教えてあげ/ます/るよ……))
軽くアイコンタクトし、コッリと拳を軽くぶつけ闘志を燃やす二人を遠目でみていたルーテシア
(………ふ、計画どおり。トオルがママを意識してる。まな板娘には渡さないようにしないと)
メガーヌと未来のパパが抱き合う姿に、うっすらと笑み…悪い笑顔を浮かべみていた
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆
「ディアーチェ、ガンプラの調整おわったか?」
「我の方はあと少しかかる……ん?どこにいくのだシェロウ?」
「ああ、少し買い出し……お腹空いてるだろ?今、サエグサ模型店のレストエリアにスッゴくうまい点心(肉まん)を作るって噂の雷凰飯店ってのが、出店してるからさ」
「雷凰飯店だと!絶品甜点心に、包子から今や喪われた中華料理まで甦らせた、あの店が!?」
「そ、そんなに有名なのか?」
「当たり前だ!この街に住む下々の輩は必ず一度は、かの店の料理を食しているのだ!至高の中華を出すホンモノぞ!!」
「ディアーチェは食べたことあるのか?」
「…………い」
「え?」
「実は……無いのだ……恥ずかしながら我の口に捧げる前に天に召されてしまうのだ……幾度もなく訪れた我の威光にひれふさんとは憎たらしい。不敬にあたるわ!!」
先ほどとは打って変わり、しょぼんとするディアーチェ…要するに並んでいたのに関わらず、あとわずかと言うところで売り切れによる閉店になった。と理解した
「んじゃ、今から買いにいってくるよ。だから少しここで待ってて」
「うむ!ならば早く手にし我の元に帰ってくるのだ!シェロウ!!」
目を輝かせるディアーチェを控え室に残して歩くシロウ。向かうのはフードコートにある雷凰飯店、足早に階段を上ると雷凰飯店と書かれた登りが見え、カウンターには熱々の湯気が漏れる蒸籠が一個残されてる
「うわ、もう残り一つしか無い。雷凰肉まんを一つくれ」
奥にいる店主へ声をかけてから、蒸籠へ手を伸ばした時、別方向から手が伸び同時につかみ引き寄せようとするのをシロウは阻止し手の主をとらえた
「……離してください」
碧銀の髪を白いリボンで纏め結び、色違いの瞳を向ける少女…片方の手にはフードコートで売られているお菓子、食べ物が入った大きな袋が抱え、まるで自分のだと言わんばかりに蒸籠から手を離さないままシロウを見据えている
「……悪いけど離すわけにはいかないんだ。この雷凰飯店の肉まんは」
「…奇遇ですね。でも雷凰飯店の肉まんは私がいただきますから」
ぐいっと蒸籠を引き寄せる少女、シロウも負けじと引き寄せる…バチバチと火花が散らし互いに最期の雷凰飯店の肉まんを奪うべくスキをうかがおうとした時だった
「お~い、少年に嬢ちゃん、はやくしないと俺んちの肉まん冷めるぞ?」
店の奥から真っ赤な髪にコックコート姿の少年が顔を出しシロウ、少女をみる。目つきが悪いせいか視線に思わず固まった蒸籠をつかむシロウの手から力が抜け僅かな隙が生まれた。少女は素早く蒸籠を引き寄せた
「…すいません雷凰飯店肉まん、私が買います。清算を」
あっけにとられるシロウの前でカードをだす。やられたと思った時だった
「悪いんだけど、ウチはカード清算を受け付けてないんだ」
「え、ほかの店は……大丈夫でしたけど」
「ああ、ウチは昔はやってたんだけど…昔、少し揉めた事があってからな…」
「…………」
本当にすまないという眼差しを向ける雷凰飯店の店主?に顔を俯かせる少女は静かに蒸籠をシロウに渡してきた。無言で受け取ったシロウは現金で支払い終え、買い物袋を手にとぼとぼ店を離れる少女へ近づいて買った肉まんを袋ごと手渡した
「え?コレ……受け取れません、アナタの肉まんじゃ」
「別にいいよ。雷凰飯店の肉まんは明日でも食べられるし…っと時間がないや…じゃあな!!」
「あ、待ってください………代金をどうしましょうか………アマミに現金を用意して貰わないと、見ず知らずの他人に貸し借り作るのは嫌ですから」
雷凰飯店の肉まんが入った袋を大事に持つ少女、チーム・クライのアインハルト・ストラトスは小さく言葉を漏らしサエグサ模型店を出て真っ直ぐ用意されたホテルへ歩き出した
余談だが、肉まんを手にすることが出来なかった事を知ったディアーチェは試合開始まで軽く拗ね、機嫌を治そうとシロウが何度も宥め、今度《Gミューズ》へ買い物をする事でようやく機嫌を治してくれたと記しておこう
『みなさま、バトルシステム調整と粒子供給タンク接続がようやく終わりました。さて、ながらくお待たせしました~コレより第四回戦の選手入場です!』
主催者であるミツキ・サエグサ店長の声を皮切りに待ちに待たされた観客の歓声が沸き起こる中、大会初日第四回戦の選手入場が始まる
「頑張れよ~チーム・ロード!」
「ディアーチェ先輩!神々の黄昏を下々にお与えくださいまして~」
「おう!熱いバトル期待してくれよ!!」
「あはははは!まかせよ、我の身体から漲る暗黒の力を持って、我が伴侶シェロウの力を神々の黄昏と輝ける栄光と共に見せつけようぞ!!」
「頑張れ~トオル!!」
「トオルくん、ふ、ファイト!!」
「トオルパパ、がんばったらお母さんが、ごほうびをあげるって言ってるよ…」
「ル~ちゃん?オレはパパじゃないからね!?あ、シュテル、どうした?」
「トオル、勝ちますよ…トオルはワタシトヴィヴィオのモノ…ダレにもわたしません…あのフルアーマーにはワタシマセン…」
「ナニイッテルノカナア?トオルは私とシュテルがモラウンダカラ……ワカイホウガイイニキマッテルンダカラ」
『……………さ、さて本日、最終バトルとなるチーム・ラウンズ、チーム・シュベルトリッター…互いのガンプラ補修も万全のようです。各チームの応援模様も熱く盛り上がってます!』
ーPress set your GP-Base、Press set your GUNPLAー
それぞれ筐体に立つとGpベース、ガンプラをセットする。青みがかったプラフスキー粒子が溢れ出しバトルフィールドが形成していく…バトルフィールドはランダムで決まるが、まだ定まらない。トオルのランスロットガンダム、シュテルのガンダムX・ズィーガ、シロウの
ーBeginning[Plavesky.Particle]dispersal.fieldーExtra《Castle》ー
『どうやら、今回のアップデートで追加された隠しフィールドがヒットしたようです!!舞台は騎士ガンダムストーリーでおなじみのラクロア城です……しかもなんでかわかりませんが空飛ぶ竜の城みたいなのも飛んでるけどファンタジーだから問題ないわよね』
空飛ぶ竜の城?の下にはラクロア城、城下町が広がる…四人のバトル・ジャケットに変わりアームレイカーに手を置いた
ーMode damage level. Set to Aー
「トオル・フローリアン、ランスロットガンダム!」
「シュテル・T・グランツ、ガンダムX・ズィーガ…」
「カンザキ・シロウ、武者真亜主頑駄無」
「ディアーチェ・ヤガミ、我が半身。アルジェント・ノワール」
ーBattle・Startー
「いくぞ!/…いきます」
「参る!/ひれふさてみせようぞ!!」
四人の掛け声とバトル開始のアナウンスが重なり、四機のガンプラがラクロア城の空へと飛翔した
若き翼たち!《前編》
了
《後編に続く!!》
遂に始まったチームロード、チームラウンズのバトル。ラクロア城を舞台としたバトルを制するのは果たして、どのチームなのか?
一夜明け、組み合わせ抽選とバトルをするためサエグサ模型店会場に向かうタカヤ、ミカヤ、ノーヴェ、レヴィ…しかしガンプラマフィアが卑劣な手を繰り出しガンプラが破損してしまう。試合まで時間が無い中、現れた少年が見せた秘技にミカヤは……
次回 若き翼たち!!《後編》
「そ、その技は………ま、まさか君は……」