不意に意識が浮上して目を開ける。意識が冴えてから捕まったことを考慮せず直ぐに目を開けた事を後悔する。だが、視界に入ったのは脳無にタックルされて強く打ちほんのり赤くなった腕にキスをする老婆。
「イテッ!」
どこから取り出したのかハリセンで頭を叩かれる。
「何か失礼な事考えていたね。」
そう言い瞳を光らせる。そういえば受験会場で耳郎を託した人と同一人物だと気付きあの後言っていた保健教師のリカバリーガールか、と知った。
「私のスーツは?」
そう聞くと彼女は、
「アレは私が来た頃には勝手に脱げた見たいさね、ホラ。」
彼女の指差す先を見ると真っ赤なスーツケースがあった。所々凹んだりしているがスーツケースの形を保っているから大破ということは無いだろう。
「Frontier.被害は。」
『はい、京さん。被害状況は前腕部に大きな歪みが生じ、それに伴いリパルサーレイなどの出力が著しく落ちています。全ての部品はダメージの多寡はありますが欠落はありません。』
そう言うFrontierに安堵する。
「さ、治ったさね。教室戻ってHR受けてきなさい。」
私の会話に突っ込む事はせず送り出してくれたリカバリーガールにありがたく思いながら保健室を後にする。入れ違いに入ってきた警察と思われるスーツの男性にあったがリカバリーガールと人的被害の状況の確認でもするのかと不審に思いつつも詮索はせずに教室に戻った。
★★★
教室に戻るとみんなが囲んで心配と労いの言葉を投げかけてくれた。特に同じ場所にワープさせられた3人には厚く心配されると同時に厳しく説教を受けた。それはHRの後にまで伸びみんな帰る頃にはすっかり小さくなっていた。
「文殊〜、そこまで一緒に帰ろうぜ。」
そう電気の誘いに用事があると断り校長室に向かう。
★★★
「何だい話って?」
私をそう聞いてくる根津校長に今回のことで考えた事を打ち出す。
「2点、雄英高校の設備と私の校外活動の本格化に伴う許可申請についてなのですが…」
★★★
次の日、学校は臨時休校となった。生徒の精神衛生とヒーロー側の会議などさまざまな理由があるだろう。私は昨日の反省を生かしスーツの改良と新作スーツの開発を行なっていた。
「Frontier.そこのミサイルポッドもう縦一列増やしてくれ。」
昨日の反省点として発電能力の脆弱性、兵装の出力の低さ、軽量化をはかりすぎたためのスーツの強度不足だ。他にも欲しい機能まで入れればキリがないがもう直ぐ一大イベントが待っている。私はこのスーツがとうとう日の目を浴びることに喜びを感じながら開発を進めた。
★★★
翌日、無事休校が開けた。クラスメイトには誰も学校を休む程の怪我を負った者が居らずしかし、皆の顔は明るくは無かった。あの襲撃の次の日ワイドショー等ではこれをUSJ事件と名付け何処もこの話題で付きっきりだった。気分は良いとは言えないだろう。
「そういえばHRは誰がやるんだろう。」
「相澤先生は入院中だし...」
そろそろ時間になると席につき、そんな会話をしていると、
「おはよう。」
「「「相澤先生復帰早えぇぇぇぇ!!!!」」」
相澤先生あの時重傷だったよね!!と皆が驚く中本物の包帯でミイラの様になっている彼が教壇に上がる。様々な反応を無視していつものように話し始めた。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ。」
不穏な言葉にザワザワとしだす。まさかまた襲撃があるのか!?と身を硬くする一同。
「雄英体育祭が迫ってる。」
「「「クソ学校っぽいのキター!!!!」」」
まさかの展開に湧き上がる一同。だがあんな事があった直後に大きなイベントなんてして大丈夫なのかと心配の声が上がる。しかし、警備の強化やプロヒーローの配置等数々の対策を打ち磐石のセキュリティの元で安全に配慮して開催するそうだ。
「年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!」
「「「はい!」」」
相澤先生はそう生徒に鼓舞して締めくくりいつも通りの日程に戻った。
★★★
HR終了後、電気達と下校しようとすると教室前の廊下が人で溢れかえっていた。教室から出れそうになく何事かと身構えていると、
「敵情視察だろザコ。」
と爆豪が教室を出ようとする。
「敵の襲撃を耐え抜いたヤツらだもんな、体育祭の前に見ときたいんだろ。そんなことしたって意味ねぇから。どけモブ共!」
「知らない人のこととりあえずモブって言うの止めなよ!」
人集りの前に立ち暴言を吐き散らす彼に飯田がツッコミを入れつつ宥めるが彼の暴言に苛立った生徒が遂に言い返した。
「噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだよなぁ。ヒーロー科に在籍するヤツは皆こんななのかい?」
「あァ?」
蒼髪の不健康そうな顔をした男だった。彼はこう挑発すると更に続けた。
「こういうの見ると幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ。」
確かにそうだ。私自身も普通科に併願を出していてヒーロー科に落ちたらそっちで採ってもらうつもりだった。
「…」
「そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ。」
つまり成績が著しく落ちたり、アンチヒーローな行為が確認されると普通科に転科させられると言うわけだ。私達は思わぬ情報に驚く。
「敵情視察?少なくとも俺はいくらヒーロー科とはいえ、調子に乗ってっと足下ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しにきたつもり。」
クラスメイトは彼の大胆不敵な言葉に驚く。爆豪と彼が睨み合っていると、
「おうおう!隣のB組のモンだけどよぉ!敵と戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがエラく調子づいちゃってんなぁオイ!!」
とうとうB組の生徒まで入ってくる。収集がつかなくなってきたと皆が慌てていると爆豪を咎める切島に彼がこう言い返した。
「関係ねえ。」
「?」
「上に上がれば関係ねえよ。」
そう言い残し教室から出ていった彼。残していった言葉を噛み締めていると噛み付く先を失い段々と野次馬も引いていった。
★★★
それからは何事もなく過ごして行った。各人が各々を万全の状態に仕上げながら。
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