怪我人の相澤先生と彼を引っ張って来たプレゼントマイクが解説を始め、スタートに向けて全員のボルテージが上がる。
「早速だがイレイザーヘッド!序盤のポイントを教えてくれ!!」
マイクの至近距離にも関わらず大声で話し相澤先生に煩ぇ、と睨みつつもそれ以上は何も言わず場を見る。
「今だろ。」
相澤先生の言う通りで私たち選手はスタートラインでの先頭の取り合いが起こっていた。少しでも時間を稼ぐため私も取り合いに参加し先頭の近くに位置取る。
ランプの3カウントが進み緊張が高まる中、私は時計のディスプレイを触って起動する。
ピィィーー‼︎‼︎
スタートの合図と共に皆が一斉に走り出す。
私も先頭集団の流れに乗りながら時計、もといFrontierに指示を飛ばした。
「MK-4起動。」
そう端的に伝える。
『Mr.京、了解しました。到着まで20秒です。』
ほんの少しFrontierの声も楽しそうなのは気のせいだろう。予想以上に自動運転装置の速度が大きい事に驚きながら走る。
来た。
突然、後ろから地面が氷で覆われていく。轟だ、とA組が一斉に勘づく。彼の個性ならばこうする事で多くの生徒の足止めをすることができる。
私は時計を確認しながら凍っていく靴を脱ぎあらかじめ下に着用していた専用のアンダーウェアに着替える。突然の奇行に周りの人々は可哀そうな目を向けてくる中、抜かしていくクラスメイト達に戦慄しているような目を向けられる。どちらの目もあまり向けないでほしい。
「さぁ、いきなり障害物だ!まずは手始め、第一関門‼︎」
どうやら、おそらく轟はすでに第一関門に突入したようだった。つくづくとんでもない奴だとため息を吐きながら、ディスプレイに表示される近づいてくる光点を確認し私は両手を広げた。
「おっと!後ろの方に全身タイツの不審者か⁉︎なんだアイツァアア‼︎‼︎」
こちらを煽ってくるマイクに少々苛立ちながらも堪える。
「アレはどう見てもタイツじゃねえだろ。」
相澤先生がツッコミ、だけども本当に何をしているのか。観客全員が疑問に思うなか、答えは急に降ってきた。
空から真っ赤な尾を引きながら降ってくる赤い何か、まさに流星であった。
減速したそれは私の後ろでホバリングを始め周りの生徒も驚き避けて走るなか、私の体を覆うように変形していく。
カンッ‼︎‼︎
という音と共にヘルメットが顔を覆うとSF映画にでも出てきそうな巨大ロボットをそのまま小さくしたような赤と金の金属に身を包む鉄人に私は早変わりしていた。
「「「エエエエェェェ‼︎‼︎」」」
観客や生徒、マイクまで大声で驚くなか、相澤先生が冷静に資料を読み上げる。
「1年A組 京文殊。サポート科と同じ様に自作のアイテムで攻略。」
興奮冷めやらぬ中、私はピンと直立姿勢になり新機構、ロケットエンジンを点火する。
「「「エエエエエェェェェェェェ!!!」」」
再び驚く声が響く中、私は飛びたつ。ぐんぐんと加速し直ぐに第一関門に到達するとホバリングを始める。爆豪や切島といった先頭集団に追いつくと同時にロボット達に攻撃を始めた。
「Frontier.全機撃墜しろ。」
指示を出すと肩に取り付けられたポッドが姿をあらわす。
「オイオイ、何だありゃあ!!」
切島が見上げて叫ぶ。どよめきの声が周囲から上がる中、ポッドからマイクロミサイルが一斉に射出される。幾つもの噴煙が軌道を描きロボット達に着弾する。
ドゴォォォンン!!
地響きとともにロボット達が倒れる。凡その0ポイントが撃墜されたのを確認した後、私は再びエンジンをふかし前進した。
「クソギークがァァ!!!」
手から爆発を生み出し続け般若のような顔で追ってくる。だが私に追いつける事はなく段々とその距離を離していったのだった。
★★★
見えた、既に轟は第二関門に到達していて私は彼の上を通り過ぎてゆく。雄英が用意した関門は落ちたら上がるのは困難な綱渡りゾーンだった。だが空を飛ぶ私はそんなの関係なくジェットを出しながら通過する。
「クソッ。」
上を飛ぶ私を見ながらそう叫ぶ声が高機能マイクが拾うが特にリアクションを返すこともなく追い越す。
「もう来ちまったのかァァァ最終関門‼︎ここはお前にもキツイだろォォーー‼︎‼︎」
マイクの声と共に迎えられる第三関門上空。
しばらくホバリングしながらレーダーで探索する。どうやら地雷原ゾーンのようだ、何が私にもキツイのかと怪訝に思っていながらも上を通過しようとする。
ピィィィ‼︎
急にアラームが鳴ると同時に左右の茂みから数十個もの熱源を感知する。
「対京用感電ホーミングミサイルだ。当たるとしばらく動けんぞ。」
相澤先生が冷たく言い渡す。何だかジェット噴射の音に怨嗟の声も混じっている気がする。サポート科の意地と面子なのだろうか。
堪らない、と呟きながら腕からチャフとフレアを全て消費する。
だが全てのミサイルを撹乱できたわけではなかった。追ってくるミサイルを肩のマシンガンで誘爆させながら撃ち落とす。
「ここで先頭が3人になったぞォォ‼︎‼︎」
全て撃ち終わらない中、下に目を向けると轟と爆豪が最終関門に突入しているのが見えた。
撃墜し終える頃には稼いだリードはなくなり順位の差がつかなくなる。更には後ろで大規模な地雷の爆発が起こったと思うと、ロボットの装甲にのる緑谷も爆風に乗って空を飛んでくる。
「Frontier.」
『極超音速飛行に移ります。』
その返事と共に足のジェットエンジンが急加速を始める。
マッハ4、今出せる最高速度だ。ある程度上空で使用しないと衝撃波で被害が出る。ここで早々にこの機能を披露できるのは幸運だと私は喜ぶ。
速さと言うのはヒーロー活動で非常に大切な要素の一つだ。現場に早く到着することで救助者の生存確率を格段に高くできるし、敵の逃走も防ぐことができるようになる。
★★★
私は追いついてきた3人を一瞬で引き離しゲートをくぐりステージの中央でぐるりと空中で一回転を決める。
ドンッッ‼︎‼︎
ステージに罅を入れながら3点着地を決めると図ったかのようにマイクの実況が入った。
「全身タイツの不審者かと思ったらその中身はまさかの鉄人ロボット‼︎‼︎1年A組!第一種目勝者は京文殊ゥゥ!!!」
割れんばかりの拍手と歓声に包まれながら私は1位でゴールを果たした。
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