昼休憩、私はトイレから出てスマートフォンを取り出す。電気や実と待ち合わせをしていて広大なスタジアムに迷わされながら歩く。
★★★
廊下の向こうで爆豪が通路の曲がり角で息を潜めているのを見つけた。何をしているのかと思わず気になり、こっそりと近づいて驚かそうと肩にそっと触れた。
瞬間、ビクッと肩を跳ね上がらせたがこちらに振り返る。少しだけこちらを強く睨め付けてきたが元々そんな気分でもなかったのか親指で向こうを指すとまた元に戻った。
何をやっているのかと怖いもの見たさで彼の誘いに乗って曲がった先を伺う。どうやら緑谷と轟が話をしている様だ。
「個性婚、知ってるよな?超常が起きてから第二〜第三世代間で問題になったやつ。自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び結婚を強いる。」
なんだ?何の話をしているのだろうか、そう爆豪に視線を送るも返事は返ってこない。
個性婚、まるで競走馬の様に考え子供の能力の高さを重視した結婚の事だ。
「倫理観の欠落した前時代的発想。実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうったこった。うっとうしい!そんな屑の道具にはならねえ!」
思わず言葉を失う。何という愚行だ、有力ヒーローの立場を利用して権力で妻を娶る。それも高い能力を持つ子供をつくる為に。No.2ヒーローのとんでもないスクープに驚愕する。
「記憶の中の母はいつも泣いている。“おまえの左側が醜い”と母は俺に煮え湯を浴びせた。」
ここまで重い話が出てくると思わず自分の今の行動に罪悪感を感じる。これ以上の盗み聞きは悪いと思い爆豪の肩を叩きながら、その辺にしておけよと伝えその場を離れた。
★★★
とんでもない話だ。子供は最初から自分の成し得ない目標を達成するためだけの物として育てられ、そんな父の影響か壊れる母。
つまり轟は、もはやお前の個性が要らなかったと父親を否定したい、ということかと今までの彼の行動に納得する。安易に外部に頼るのも得策じゃない、エンデヴァーの家なら尚更、なんてダラダラと考えながら待ち合わせの場所に向かった。
★★★
「最終種目、進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!一対一のガチバトルだ!」
マイク先生がそう発表する。やはり雄英体育祭1の見どころはこの対戦形式の最終種目だろう、選手や観客から歓声があがる。
早速ミッドナイト先生のもとでくじ引きをしようとしていると、
「あの、すみません。俺辞退します。」
そう言って尾白とB組の生徒が棄権をした。どうやら騎馬戦の時、何者かの個性によって記憶がなくそのまま最終種目に出るのがプライドに反するということだった。
尾白の騎馬の騎手は確か、と先日宣戦布告をしにきた彼をみる。記憶がないと尾白は言っていたが確かにあの時、騎馬は動いていた。棄権は認められたようで私は騎手の彼の個性に考えを巡らせながらくじ引きをした。
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