戦いの後、私は保健室で飯田と話をしていた。
「残る怪我はなかったか。良かった。」
脛骨と肋骨を折る重傷を負わせてしまったが、優秀なヒーラーのリカバリーガールのお陰で彼が意識が回復する頃には全治していた。
「全て京君の掌の上だったな!完敗だよ!」
悔しさを噛み潰したような笑顔を浮かべながら彼はそう言った。
「盤上の戦いで私が負けたら唯一の武器を失ってしまうからね。負けられないよ。」
そう言うが今回の私の勝利はギリギリのものだった。彼の必殺技、レシプロバーストをこの最終種目まであっためられていたならば私は対応出来ずに場外まで蹴り飛ばされていただろう。
彼も今回の戦いはやはり悔しいものだったのだろう強い闘志が目に宿る。
「再び戦いの機会があったら、その時は俺が勝つ!」
彼の言葉に私も焚き付けられ言葉を返す。
「次も負けない。」
私も闘志を目に宿す。彼はリカバリーガールの指示も有り、もう少しだけ休んでいく為、私は1人で保健室を出た。
★★★
観客席に戻ると彼への心配と私の勝利を祝う声に迎えられた。飯田と話し込んでいた内に試合は切島対B組鉄哲轍鐡のものへと移っていた。
「正面衝突だな。」
ぽつりと私が零すと手当してもらったのか指に包帯を巻く緑谷が反応を返す。
「これはもう我慢比べだね。どっちが先に折れるか、それだけだよ。」
流石に考察も何もないのかノートを見る事も無く言う。
★★★
ボクシングのような互いに譲らない攻撃の応酬はとうとう決着は着かず、同じタイミングで気を失い引き分けとなった。引き分けの場合は腕相撲で決着をつけるらしく両者の回復を待つ間、次の試合を始めることとなった。
第8試合、爆豪と麗日の試合を前にA組の生徒達の間には何とも言えぬ空気が流れていた。
「大丈夫かな、麗日さん。」
心配だ、と緑谷が言う。彼は爆豪と同じ中学、というか古くからの幼馴染らしく彼の危険性を憂慮しているのだろう。麗日と友達というのも大きく関係しているだろう、いつも以上におどおどと焦っているようだった。
しかし勝ち筋がないというわけではなく、戻ってきた飯田に緑谷が先ほど麗日に話していた爆豪対策を話す。
「かっちゃんは強い。本気の近接戦闘はほとんど隙無しで、動くほど汗をかいて爆破の個性が強力になっていく。爆破を利用して空中移動もできるけど麗日さんがかっちゃんに触れ、浮かしちゃえば主導権を握れる。」
成る程、と飯田が納得した様子を見せる中、試合開始の合図が響き渡る。
開幕低姿勢で突っ込んでいった麗日を爆豪が爆破で攻撃する。上着をデコイとして使って爆豪の後ろに回り込もうと爆破の噴煙から姿を現した麗日。しかしそれは叶わず攻撃されて大きく吹き飛ばされてしまう。
あの煙幕から体を出した一瞬で攻撃に転じた彼の反応速度に一部の観客やヒーロー科が驚く。彼の派手な個性にばかりスポットが当たることが多いが、彼の本質は先ほどのような高いセンスだろう。
「おせえ‼︎」
彼が叫びながら麗日が接近するたびに攻撃を浴びせる。
麗日が近づくことができずに追い詰められていき、緑谷や飯田の顔から血の気が引いていく中、私は彼女がまだ勝利を諦めていないことに気がついた。
幾度に及ぶ攻撃で割れ、吹き飛ぶステージの塊。それが無数に空に浮かんでいたのだ。何も気づかぬ観客が爆豪に文句をつける間も頭上の瓦礫は増えていく。
「流星群⁉︎」
マイク先生も気が付いていなかったようで瓦礫が自由落下を始めたところで叫ぶ。
どうなるか、全員が固唾を飲んで見守る。すると爆豪が徐に片手を上に向ける。この量を迎撃するのか、私がそう驚く中、彼の手から爆炎が噴き上げる。
煙が引くと空にあった瓦礫は彼にほぼ当たる事はなくボロボロの麗日と爆豪が立っていた。どうなるのか、もう彼女を侮るものは居らず彼を罵る者もいない。この場にいる全員この試合の決着を真剣に見守っていた。
★★★
結果は爆豪の勝利であった。あの凄まじい流星群攻撃の後、麗日は個性の連続使用によって気を失ってしまい戦闘不能により爆豪の勝利となった。
第9試合が始まるまでの間、切島と鉄哲の腕相撲対決があり、その戦いは切島の勝利となり彼が準決勝へと駒を進めた。
★★★
そして始まる2回戦、緑谷と轟の両雄佇み開戦のゴングを待っていた。
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