バチバチと飛び散る火花、辺りが赤々と燃えたぎる炎、動かなって倒れる鎧を着た兵士、焼かれていく壁やインテリア、体から力が抜け、息をするたびに肺が焼けていく感覚に襲われる
「ハァハァハァハァ……」
命の灯火が消えそうな息遣い……さらさらの金髪ロング少女は自分の命がもう消えかかってることがわかった
ゆっくりと外階段を登っていく
「どこ行った!!」
「スカーレットはまだ死んでない!見つけ次第やつを殺れ!」
下から金髪の彼女を探す敵軍の声
リユ・ニオン・スカーレットはその声に足を止めてしまった
階段下から鳴り響く自分を探す声。まだ15くらいの少女にはあまりにもキツイ地獄以上の現実
「ッ……」
唇を噛み締め赤々と血を出しながら、それでも階段を上がろうとする。涙をこらえろ……痛みに耐えながら
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……行かなくちゃ……」
冷たい石階段を辿り、焼けたドレスに火傷で動かない右足を引きずりながら階段を上がり続ける
後20段くらいだがそれが遠く感じてしまう
「おーい!リユ!」
スカーレットが登る階段先から燃えるような赤色をした小さな子竜、グロウが慌てた様子で飛び降りてくる
「グロウ!?」
「何してるの?早くみんなの元に行かないと!マーリンが準備出来たって!」
「わたくしだって行きたいのは山々だけど、この足じゃ……」
スカーレットは火傷で動かない右足を見せる。グロウは驚いた表情をしたがすぐに悔しそうな表情を浮かべる
「クソ……オレがどうにか出来れば……」
「……」
悔しそうなグロウの気持ちはわかるスカーレット
スカーレットはグロウの肩を手に
「わたくしを置いて先に行きなさい」
「何言ってるんだよ!!リユも一緒だよ!オレはアンタの契約スピリットだ!契約者を置いて逃げれない!」
スカーレットの言葉にグロウは首を横に振り背中を向けた
「早く乗って、おんぶして俺が上るから!」
「大丈夫なの?」
「これでも鍛えているから大丈夫!!」
グロウは力持ちだが、身長が50センチくらいしか無い子竜が3倍くらい身長のあるスカーレットを持てるか怪しいところ
「こっちから声がしたぞ!」
「必ず見つけて殺れ!」
しかし敵兵はスカーレット達を待ってくれなかった
「ほら、早く!!」
スカーレットは慌ててグロウの背中に捕まる
グロウはそのままスカーレットをおんぶして階段を飛び上がっていく
あっという間に階段を上っていき何倍も大きい扉が目の前に現れた
グロウの背中から降りたスカーレット
「ありがとうグロウ。あなたこんなに力強かったのね」
「えへへ、ほら、早く行くよ!」
「ええ」
スカーレットの言葉に照れくさそうなグロウ。しかし、2人に長く会話をする時間は与えられなかった。スカーレットは残された力を使って体全体で大きな扉を開ける
「ハァ……ハァ……」
「「姫!!」」
「姫様!!」
倒れたスカーレットの周りに4人の従者と、グロウと同じくらいの小型スピリット達
しかし倒れたスカーレットは立ち上がって部屋の真ん中にある六芒星に進もうとする
「姫!立ち上がれますか?」
「大丈夫よ……」
従者に支えられながら魔法陣のもとに近づいていく
魔法陣の隣で魔導書を読む紫のローブを被った少女マーリン・ヴィオレ
「……準備は出来てる」
「ありがとうマーリン」
「……とりあえず、みんな魔法陣の上に」
ボソボソと喋るマーリンの言葉にみんなが魔法陣の上に乗る
「成功率はどれくらい?」
スカーレットの言葉にマーリンは少し顔を曇らせる
「……正直、わからない……この異世界に行く魔法は成功例が無いから……失敗して死んでしまう可能性もある」
マーリンが作ったこの魔法陣は他世界に行く魔法陣。つまり、スカーレット達は異世界へと向かおうとしていた
「──そう。だけどこのまま死ぬよりは数倍かはマシよ」
スカーレットの言葉にコクリと頷くマーリン
「……少し詠唱時間がかかるから」
「わかった」
マーリンはよくわからない言葉で詠唱を始めた
「居たぞ!」
スカーレットとグロウが入ってきた大きな扉から剣や槍を持った敵兵がゾロゾロと入ってくる
「まさか、屋上の祭壇に逃げ込むとは、やってしまえ!!!」
「首を取れ!!」
「リユ・ニオン・スカーレットを殺れば我が連合はの目的は完遂する!!」
こちらへと剣と槍を差して走ってくる敵兵達
一気に緊迫する空気に思わずスカーレットは怒気を含んだような強い言い方で
「詠唱は後どれくらいで終わるの!!」
「後少し……あまり、話しかけないで間違えたら最初からやり直しなんだから!」
ボソボソと喋っていたマーリンは言い返すようにハキハキと怒気を含んだ声で話した
スカーレットは思わず驚いてしまった
しかし、このままでは敵兵がスカーレット達に追いつかれてしまう
「姫!ここは我々が……行くぞヴェルデ!」
「はい!」
深い青のポニーテール、高身長のイケメンの部類に入るのがシーラス・アルバストゥル
深緑の短髪、シーラスとは違い少し少年のような顔つきの騎士はヴェルデ・クローズ
2人はスカーレットの側近
しかし、このタイミングで魔法陣に出たら異世界へ逃げるチャンスが無くなる可能がある。そう考えが巡ったスカーレットは
「待って、ここは引いて!あなた達が飛ばなくなる可能性が……」
「いえ、ここで失敗したら我々の計画は全て無駄になります!」
「だから俺達に任せなって!行くぞランポ!」
「よーし、ぼく頑張っちゃうよ!」
「シャック、力を貸してくれるか?」
「おう、力が漲って来たぜ!」
シーラス、ヴェルデ、緑色の子狼のランポと青色の王冠を被った小鮫シャックが魔法陣から飛び出していった
「待ちなさい!」
スカーレットの言葉に聞く耳は持たず、腰の鞘から剣を抜いて敵兵を切り裂いていく。深い海のような紺碧色の大理石が見る見るうちに赤く染まっていき、肺が凍りそうな冷たい臭いから人からする鉄臭いへと変わっていく
この2人は剣士としてはかなり強くスカーレットもかなり安心している
「後、どれくらいかかる?」
ぶつぶつと集中して詠唱を唱え続ける。スカーレットはマーリンからシーラス達に目線を戻す。目の前にいた敵兵がバタバタと倒れていく。しかし、2人2匹では、何百と来た敵兵を相手をするのはかなり厳しいはず
「……終わった!早く魔法陣へ!」
魔法陣から青白い光が放たれる
光が放たれた同時に城が崩れるくらいの激しい揺れ、立っていたスカーレット達はしゃがみこんだ
「早く2人共!」
スカーレットは決死の声で2人に呼びかける
死体となった敵兵に剣を差して揺れを耐える2人はたちまちこちらへとふらつきながら走り出した
辺りは段々とビスケットを砕いたように崩れていく中、2人と2匹は魔法陣へと飛び込む
「危ない!!」
「ランボ!!」
「ギリギリだったぜ!!」
「シャック!」
契約スピリットは魔法陣へとギリギリ間にあった。後は敵兵と戦っていたシーラス、ヴェルデのみ
「ヴェルデ、シーラス!!」
「あぶねー!!!」
飛び込んできたヴェルデ。後はシーラスだけだ……
だけど目の前が青白い光に包まれていく。まるでシーラスとスカーレットを分断するように……
「シーラス!!!」
さっきまで息切れしたのが嘘みたいに腹底から声が出た
しかし、そんなスカーレットの言葉は届かず青白い光がどんどんと包まれていく
力をなくしたように肩を落とすスカーレット
「ッ……」
「シーラス!!」
手を伸ばして光を切り裂くように魔法陣へと入ってきたシーラス。
肩を落としたスカーレットは最後の力を使い懸命に手を伸ばした
後……数cm……後……数mmで手が届きそうなところで目の前が青白い光に包まれた
────
「はぁっ!!また……あの夢……」
カーテンの隙間から漏れる日差し、1階から聞こえる家族の足音が寝起きの銀の長髪のツリ目を青眼の少女、井亜鈴彩火の耳に入った
「……もう朝か……ここ最近……ずっと同じ夢だ……」
彩火のボソリっと放った言葉の通り、同じような夢を1週間……いや1ヶ月前くらいから見続けてる
──見るたびに段々と夢がハッキリしてくるのような気がする
まるで自分の身に本当に起きたようなそんな感じで
「とりあえず……起きなきゃ……」
今日は平日の月曜日と学生と社会人からしたら最悪の日である
分厚い布団をのけてベッドから出る。5畳程度しかない、子供部屋から扉のドアノブを開け出ていくのだった
────
「また、あの夢を見た?」
空色の長髪の薄幸せな女子……水浅葱 虹海が目を丸くして珍しく大きな声が出した
体育館前にある自販機に私を含め3人で屯していた。傍から見たら不良の溜まっているみたい見えてもおかしくない
彩火と虹海の他に寝癖が目立つ短い白髪のザ・イケメン、鷺城 氷牙
この2人とは中学時代からの仲であり、よく休み時間は話している
「それにしてもさ。そんなに同じ夢を見るのも珍しいな……」
「氷牙と虹海はこんな事ない?」
「普通無いだろ」
「そっか〜」
「井亜鈴ちゃんが見た夢ってどんな内容だったの?」
虹海の言葉に今日見た夢を覚えている範囲で話した
うろ覚えの場面もあるが、1ヶ月近く同じ夢を見ていたため結構詳しく話せる
不思議そうな表情をされると思ったが、2人とも驚いた表情を浮かべていた
「え?私も昨日、同じ夢を見た」
「俺もだ……まんま似たような夢を昨日見た……」
「え、なにそれ、こわ……」
思わず彩火は本音が漏れてしまい、2人の言葉に開いた口が塞がらなかった
「井亜鈴ちゃんとは少し違うけど……大体合ってる……」
「そうだな。俺も青白い光で前が見えなくなって目が覚めるからな……」
ほぼ同じ夢を2人も見てるようだ
「なんか3人とも同じ夢を見るのも……なんかぁ……」
彩火が言い切ろうとした時に鼻に冷たい感覚が走った
空を見上げると白い雲が漂っていた青空がいつの間にか黒い雲に覆われていた。そしてポツリポツリと冷たい雨が降ってきた
「ヤバ!雨が降ってきたじゃん!!」
「早く校舎に戻らないと!」
春になったばかりとはいえ肌寒い日が続き風邪をひいてもおかしくない
彩火達は急いで校舎へと戻った
────
雨がひたすら降る中、ローファーを濡らしながら小走りで帰っていく。通り雨程度考えていた彩火は傘を持っておらず、カバンを頭に乗せて走って帰っていた
「ハァハァ……テレビで降水確率60%って書いてたじゃん!マジで最悪……」
愚痴をこぼしながら帰路を辿る彩火
公園前を通りかかった時に『ドサッ』と何かが木から落ちる音がした
「今……なんか音が……」
音が気になった彩火は音した公園の方に入っていく
歩く度に地面の水滴が跳ね返りローファーの中の靴下が濡れていく
しかし彩火はそんなことを気にせず音がした方を探していく
「どこから音がしたんだろ……猫とかだったから大変だな……早く見つけないと……」
彩火はこう見えてもほっとけない性格である
ずぶ濡れになりながら木の下を中心に探した。どんどんと寒くなり体力が奪われていくことを感じながら……
「さむ……」
腕を擦りながら探していると公園の中で1番大きな桜の下に倒れていた小さな赤い小竜が目に入った
彩火はゆっくりと小さな竜の元に近づく
「何……この生き物……ドラゴン?……いや、そんなことないか……大きなトカゲかなんかだよね……」
見たことのない生き物に彩火は少し恐怖を覚えるが興味はある
振るえる手を堪え恐る恐る小さな竜に触れる
手が一瞬で荒れそうなくらいザラザラとした冷たい鱗。でもこの感覚をなんとなく知っていた彩火
「こんなことしてる場合じゃなかった!」
彩火は集中して息をしているか確認する
ゆっくりと息してることは確認できた。しかし今にでも消えそうな息遣いで弱っていることは誰が見ても明白だった
さらに雨も降りどんどんと体温は奪われていき、いつ命を落としてもおかしくない
「とりあえず、温めないと」
彩火は背中のリュックを下ろし、藍色の制服のブレザーのボタンを一個一個外していき、小さな竜の体に巻きつけ持ち上げる
「へくしゅ……」
体が冷えくしゃみが自然と出てしまう。ブレザーを脱いで薄い白いブラウスのみでかなり寒そうな格好になった
「とりあえず、動物病院……?いや、こんな見たことない生き物を相手してくるのかな?」
色々と疑問を考えながらリュックを背負い公園を後にした
そして、そんな彩火を追う2つの影も……
────
彩火が住む六色市は人工物と自然が両立する住むだけなら不便をしない普通の町
彩火は赤い小さな竜を持ち小走りで雨が降りしきるビル群が建ち並ぶ駅前を走っていく。彩火が持つ小さな竜の体温が少しづつだが上がってきてるのがわかる。そして鼓動が少しづつ大きくなっていく
「鼓動が大きくなってる……」
動物病院に走って向かっていると、赤い小竜が目を覚ました
「んっ……ここは……」
「あっ、気がついた?」
彩火は立ち止まり辺を見渡した。ここで変わった動物が見つかったら騒ぎになることは明白だった
彩火はビルとビルの間の路地裏へと歩を進めた
「ここまで来れば誰にも見つからないでしょ」
彩火は人気がしない路地の片隅で小さな竜に巻いて自分のブレザーを外す
小さな竜は体をぷるぷると振るわせ体についていた雫を飛ばす
数秒体を振るわせた後に小さな竜は浮き上がる
「ありがとな!オレはグロウ!」
「私は井亜鈴彩花。ねぇ、あなたは何?トカゲ?ヤモリ?浮けるから鳥とか?それにしてもなんで喋れるの?」
彩花は動物の知識は普通の人に比べてある方なので未知の動物を見てやや興奮気味である
彩花の質問攻めで動揺するグロウ
「えーと、まずはなんで喋れるからだな……喋れるのはスピリットだから!それしか無いかな……」
「じゃあ動物の種類は何?、トカゲ?」
「トカゲじゃねぇよ!!ドラゴンだ!ド・ラ・ゴ・ン!!!」
「え!?あのファンタジーの世界の?」
「ふぁんたじぃー?それはよくわからないけど、まあそんな感じかな!」
疑問を噛み砕い様に頷くグロウ
しかし子供のような目をキラキラさせる彩火は質問をしようと口を開いた瞬間
「やあ、すまない。そこの小さなドラゴンを渡してくれないか?」
彩火達の話に割り込むように入ってきたローブを深く被り表情が見えないが体の難いを見るに男性だと彩火はすぐにわかった
ローブの男は話を続ける
「そいつは危険な存在だ。我々の施設で管理しよう」
淡々と話すローブの男。しかし彩火は疑いの目を向けていた
「少しだけいい?あんたら、ドラゴンを回収するあたり、もの凄く怪しいのよ」
もちろんこの世にそんな施設があるとは彩火は聞いたことない
すると後ろにいたローブの人はローブの男にコソコソと耳打ちする。ローブの男は深いため息をすると
「仕方がない……少々手荒になるが……」
ローブの男は彩火の方に手のひらを向ける
「バトルフィールド、展開!!」
ローブの男を中心にドーム場に広がっていく
「え?何これ!?」
「これはバトルフィールド!このドームはバトルの勝敗が付くまでは出られない」
ローブの男は彩火達にデッキを翳した
「バトスピ?」
「そうだ。これで決着を付けるんだ」
彩火の言葉に頷くローブの男
「とは言ってもバトスピのデッキは今は家だよ!!」
「なら、そのドラゴンを頂こうか。だったらドームを解いて家に返してやる」
ローブの男の言葉に彩火は少し黙り込んでしまった
そんな彩火を見たグロウはローブの男にゆっくりと向かっていく
「何するつもりなのグロウ?」
「……助けてくれてありがとう」
グロウはローブの男に向けて炎を纏った拳を振るった
「くらエェー!!」
しかし、ローブの男は近づいてきたグロウの頭を掴む
「はっ、離せ!!!」
「所詮下級スピリット……」
男はゴミを捨てるように路地裏のゴミ箱に叩き込んだ
「グロウ!?」
彩火はグロウに近づきゴミ箱に叩き込まれたグロウを拾い上げる
そしてローブの男は彩火にゆっくり近づく
「さあー。渡せ!」
「グロウ……デッキ持ってない?」
「え?デッキって……」
「スピリットなら、デッキぐらいならあるでしょ!」
「いや、デッキって……」
「紙束のことだよ!!」
思い出すようにグロウは手を叩くと
「契約カード達のことか……」
「契約カード?まあ、なんでもいいわ!デッキを貸して!」
「え!?」
「バトルは出来るから!」
彩火の真っ直ぐな言葉にグロウは少し考え、彩火の腕から離れる
「なら、契約しないと」
「契約?」
「そう。オレ……オレたちを使うには契約が必要だ」
「何でもいい!グロウ!あなたと契約する!あんな奴をほっとけない!」
彩火の言葉にグロウは頷く
すると彩火は右手に焼けるような痛みを感じた。まるで何かを彫られているような
「何これ!アツ!?」
彩火の右手の甲に竜の顔のような紋章が現れた
「これがオレと契約した証だ!さあ、行くぞ彩火!」
「ええ!」
「「ゲートオープン界放!!」」
彩火の右手の契約の証から炎が出てきて、彩火の全身を纏っていく。着ていた制服を焼いていくと同時に蒼炎のような青い衣装へと変わっていく
高級感のある青色のショートドレス、細い赤いティアラを頭に身につける
「え、何これ!?」
一般的な制服姿から気品のある王女のような衣装に変わっていた
変わってローブの男は、ローブから紺碧のゴツゴツとした鎧を身に着け重装歩兵のような見た目になり、20代後半の金髪の青年の素顔を表した
ローブを着ていた男は軽く飛び上がると、ビルの屋上へと着地した
急に飛び上がったため、唖然としていた彩火
「あんな、ゴツい鎧を着ていてよく飛べるわね……」
彩火も真似するようにぴょんぴょんと軽くステップするように動く。少し宙に浮いているような感覚
「体が軽い……よっ!」
階段を飛び上がるような感覚で男と同じくらいの高さまで上がっていく
「ほぉー初々しいな」
「悪かっわね。まだ色々と混乱してるのよ」
「そうか……自己紹介をしないとな。名前はブルース」
「井亜鈴彩花」
2人が出会ってから数分経ってから簡単に挨拶を終える
「では、戦争を始めよう……私が先行を貰おう」
ブルースが先行を宣言した瞬間、目の前にテーブルが現れた。テーブルの上にはコア、デッキと置かれており、バトスピが出来るフィールドとなっていた
[ターン1]
「では、スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。戦竜エルギニアスを2体召喚!」
実際にコアを乗せてスピリットを召喚する。するとブルースの目の前に青のシンボルが出てきて、ガラスのように割れると戦竜エルギニアスが出てきた
「えっ!スピリットが出てきた!?アニメじゃん!」
近代ビルの屋上に現代とは似合わない2頭のエルギニアス
「最初のターンはアタック出来ない。ターンエンドだ」
[ターン2]
「とりあえず私のターン。コアステップ、ドローステップ、メインステップ、あっ、」
彩火は手札を確認するとグロウのカード
「頭の整理が出来なかったから手札を確認してなかったけど、グロウを初手で引いてるじゃん。じゃあ早速……契約スピリット、相棒竜グロウ!」
赤いシンボルが割れるとさっきの赤い竜グロウが出てきた
「早速出番だな!」
「ええ、任せるわ」
気合を入れるように腕を引く
「バーストセット!」
彩火はテーブルの左上に裏向きでカードを置くと、フィールドに裏側のカードが現れる
バーストとはバーストカードをフィールドの左上に裏向きでセットする行為。条件が整うと発動し効果を発動する
「とりあえず、リザーブのコアが1個しか無いから何もできないわね……アタックステップ!赤は特攻!攻めるのみ!グロウでアタック!」
彩火はグロウのカードを披露させてアタックする
「アタック時効果があるみたいね。カウント+2して1枚ドロー!」
カウント0→2
グロウは炎を拳に纏いブルースに殴りかかる
「その一撃はライフで受けよう」
ブルースの目の前に青い半球のバリアが出てきてグロウの一撃を受け止めるが、グロウは簡単にバリアを破壊する
ライフ5→4
「ッ……」
顔を歪ませるブルース
痛そうなブルースに少し心配そうな表情を浮かべる
「アニメみたいな感じなんだ……とりあえずターンエンド」
[ターン3]
「ッ……スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。戦馬ブケファロスを召喚!」
「……戦馬ブケファロス……確かあのカードは……てことはある程度、相手のデッキを絞り込めたわね」
ぶつぶつと独り言を話す彩火
そんな彩火を置いていくようにブルースはターンを続ける
「ブケファロスの効果で1枚ドローして1枚を捨てる」
破棄カード:ブケファロス
「おっと、召喚時発揮後にバースト発動!大炎龍ドレッドノーズのバースト効果!BP15000以下のスピリット2体!ブケファロスとエルギニアスには消えてもらうわ!」
バーストが開くと炎がエルギニアスとブケファロスを焼き尽くした
スピリット達を焼いた炎から火花が飛び散りビルの手すりに飛び移り手すりが黒くなる
「えっ?嘘……」
手すりが焼けた所を見えた彩火は目を丸くしたと同時に嫌な予感が走った
大炎龍ドレッドノーズはスピリットカード。もし火花で手すりが焼けた所を見るにここでドレッドノーズが現れたら絶対ヤバいことは明白だった
「待って!!止まって!!」
彩火の必死の問いかけは届かず、開いたカードから火柱が上がると強靭な翼に赤い体色、銀色の鎧のようなものを身にまとった赤い巨大な龍が現れ、彩火の何倍も大きな足をビルの屋上に乗せる
そして彩火の悪い予感が当たってしまう。降りたと同時に彩火が立っていたビルが大きく揺れ屋上に亀裂が入り、ビルの下から人の声が多くなってきた
そんなことも気にせずドレッドノーズは鼓膜を破りそうな咆哮を上げた
「おぉードレッドノーズ!いい奴を出したじゃん!よろしくなドレッドノーズ!」
嬉しそうなグロウの反面、彩火は複雑な気持ちだった
「ドレッドノーズ……少し宙に浮いててくれないかな?」
彩火のお願いに小首を傾げたが、ドレッドノーズは彩火の指示通り強靭な翼を広げて、辺を吹き飛ばしそうなくらいの風を巻き上げ空へと羽ばたく
「とりあえずよし!ありがとう!」
「……いいか?バトルを続けて」
「ええ……いいわよ」
「なら、アタックステップ!やれ!エルギニアス!」
エルギニアスは彩火に向けて飛び上がる
「ここはライフで受ける!」
彩火が宣言をすると、目の前に半球のバリアが出てきてエルギニアスの突進を受け止める。そしてバリアはガラスのように割れる
そして、彩火にもその影響を受け、バリアが破壊されたと同時に大きく吹き飛ばされ、ビルの屋上の飛び降り防止の手すりに強く背中を打ち付けた
ライフ5→4
「イッッッッッ!!」
言葉にもならない痛みが全身に走る
打撲とかガラスで手を切ったとかそんなレベルじゃなく、全身が死にそうなくらい痛いのだ
「ハァ……ハァ……」
彩火の息遣いは激しくなり青い瞳から涙が出てきた
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫なわけないじゃん!!本当に死んだと思ったよ!」
「そりゃ、命で受けているんだもん。痛いのは当たり前だよ。逆にバリアが無かったら、きっとエルギニアスの角が体に直撃して確実に死んでたよ」
グロウの言葉に彩火は嫌な想像をして固唾を飲んだ
「ターンエンド!」
[ターン4]
「ッ……やってくれたわね……私のターン!コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ!」
(とりあえず、どうにかしなきゃ……)
「溶岩海のエデラ砦をレベル2で配置!配置時効果でエルギニアスを破壊!」
カウント2→3
彩火の後ろに現れたエデラ砦から放たれた溶岩がエルギニアスを焼き尽くし、ブルースのスピリットを全滅させる
「マグマンモスを召喚!」
赤いシンボルが割れて溢れ出した溶岩と共にマグマンモスが現れる
そして溢れ出した溶岩はビルを焼き尽くしていく
「ッ……早く終わらせないと……ビルが持たない……アタックステップ!マグマンモスの効果でトラッシュのコアをドレッドノーズに置きレベル3!ドレッドノーズでアタック!アタック時効果でカウント+2、1枚ドロー!」
カウント3→5
ドレッドノーズは咆哮と共に高く飛び上がりブルースに近づき、炎のブレスを放つ
「ライフだ」
ドレッドノーズはブルースのバリアを破壊する
「ッ……」
ライフ4→3
「次はグロウ……」
グロウのカードを触れた瞬間、さっきのライフを受けた痛みを思い出す
全身が震え、顔から変な冷や汗が出てきた
「どうした彩火?」
「……」
アタックをすれば相手のライフを削ることが出来るが次のターンにブロックするスピリットが居らずライフを受けることになる
「どうした?赤は特攻だろ?」
ブルースは彩火を煽るように話
その言葉に彩火は怒りを覚えたがその徴発よりもライフを受けた恐怖心が勝ってしまう
「……ターンエンド……」
[ターン5]
「ランマー・ゴレムX、ブケファロスを召喚。召喚時の効果で1枚ドローして1枚破棄。……よし」
破棄カード:ランマー・ゴレムX
「バーストセット!アタックステップ!ランマー・ゴレムでアタック!」
ランマー・ゴレムは下半身のバネを活かして彩火に近づいていく
「……マグマンモスでブロック!!」
マグマンモスはランマー・ゴレムを赤い鼻を使い青空の彼方に吹き飛ばした
「ターンエンド!」
【ターン6】
「ふぅーライフを受けなくてすんだ……私のターン。コアステップ、ドローステップ、エデラの砦の効果で2枚ドロー、リフレッシュステップ、メインステップ、リューキンを召喚!召喚時効果でブケファロスを破壊!」
赤いシンボルから出てきた赤い金魚が炎を出してブケファロスを焼き尽くす
これでブルースのフィールドは再び全滅。彩火のフィールドにはスピリットが3体いる、フルアタックが決まればブルースのライフを全て破壊し勝つことが出来る
「アタックステップ!グロウでアタック!」
「よっしゃー!行くぜ!!うぉぉぉおおお!!」
カウント5→7
「デッキから1枚ドロー!」
グロウは腕をぐるぐると回してブルースに攻撃を仕掛ける
「ライフで受ける!」
グロウの炎を纏った拳でバリアを粉砕する
「ッ……クソ……」
ライフ3→2
「そして……」
「このタイミングでバーストを発動!!」
「嘘!?」
ブルースのフィールドにセットされたバーストがゆっくり開くと渦潮が生成。地響きと共に青い巨体が姿を表す
その姿は悪魔と言われてもおかしくないくらいに厳つい表情をしており、体格だけを見たらドレッドノーズに比べ遥かに大きなスピリットが姿を表す
「その地響きは我が主に捧げる勝利の凱歌!さあ、我が国の礎となれ!千獣の王者ドス・ダイモス!!」
ビルの屋上に降りるとビル全体が揺れ、ドス・ダイモスの重さで耐えれないのかビルのガラスが割れ、ポロポロと外壁が落ち、下から悲鳴があがる
しかし、彩火もそんなことに気にしている余裕は無かった
「ドスダイモス……」
「やっぱり、お前レオザード獅国のやつか」
グロウの言葉にニヤリと笑うブルース
「いかにも!その通り。この私はレグロス様、ラオン様に仕えるブルース」
「なんで……どうしてお前らがこの世界にいる!!?」
「えっ?ちょっと待って……勝手にいろいろ話を進めないでよ!」
グロウとブルースの話についていけてない彩火
しかし、そんな彩火を置いていくかのように話を続けていく
「あなた達に出来てこちらが出来ないとでも?」
「クッ……」
悔しそうな表情を浮かべるグロウ
「話はここまでです。ターンを続けよう。お互いは3枚以下になるように手札を捨ててください」
彩火は手札が3枚になるように捨てる
「えっ、ええ……ターンエンド……」
「なんでアタックしないんだよ!」
「……いいじゃん別に……」
膨らみの無い胸を擦る彩火
そんな後ろ向きの彩火にグロウは軽く舌打ち。
【ターン7】
「では私のターン。イノツチブタを召喚。召喚時効果で2枚ドロー。」
破棄:巨岩石の森 オリンスピアの競技場
「シマクマを召喚!ドス・ダイモスをレベル2へ!そしてアタックステップ。イノツチブタでアタック」
イノツチブタは彩火に襲いかかる
「マグマンモスでブロック!」
ランナーゴレムの時と同様、天高く吹き飛ばした
「次にシマクマでアタック!」
シマクマの強靭な刃が彩火に襲い掛かる
「リューキンでブロック!」
リューキンはシマクマに頭突きし両者消滅
「次はドス・ダイモスでアタック!アタック時効果で最もコストの高い……ドレッドノーズを破壊!」
「しまった!?」
ドス・ダイモスから放たれた青い衝撃が空中にいるドレッドノーズを撃ち落とした
撃ち落とされたドレッドノーズは力なくビル下へと落下していく
「ドレッドノーズ!?」
彩火は落ちた場所を確認するためには覗き込んだ
ドレッドノーズが落ちた場所には大穴が空いてありドレッドノーズは息を引き取るように光となって消滅した
そして、ビル下から鳴り響く悲鳴、救急車や消防車のサイレンの嵐。ドレッドノーズが消えた後には小さい影のようなものが、それだけじゃないマグマが隣のビルを溶かそうとしていた
「うそ……えぇ……」
地獄のような光景に腰が引けてしまった。どうしようもない空間にただただ恐怖を感じるしか無かった
「彩火!!」
「え……」
腰の抜けた彩火の前にライフ状のバリアが2つ。ドス・ダイモスは容赦なく突進で2つのライフを砕き、悲鳴と共に再びフェンスに強く背中をぶつける
「ッ……」
あまりの痛みを通り越し『痛い!?』という言葉が出なかった
「彩火!?」
グロウの言葉は届いているが口は動かず意識が薄れていった
────
どんどんと何も見えない深い深い暗い闇に落ちていくような感覚。彩火の体は動かず、静かに落ちるしか無かった
──もう終りなのか……
彩火の体は闇の底に着いた時に目を覚ました
「あれ……ここは……」
先が見えない真っ黒な壁に光が差さない空、そして水面の大地
「何この格好!?」
顔からしたが光となっていてかろうじて人の形を保っている。体は自由に動けるようだ
「ここはどこなのよ!」
無の空間に響き渡る彩火の声
バシャバシャと水しぶきをたてながらひたすら走る。しかし何も変わらない空間
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……どこなのよここ!それにバトルはまだ終わってないのに……」
──グロウ
息切れをしながらもグロウのことが頭に過る
すると黄金の人型の霊体が現れた
「え……あんた誰!」
霊体は何も言わずひたすら彩火を見つめていた
「え……なに……」
霊体は光になって消えていった
何だったんだろと思いつつ暗い世界で1人ポツンなる彩火
「何だろう……なんか眠く……」
彩火は膝をついて目を瞑るのだった
───
「……さ……い……か……さ……い……か……さ……いか……彩火!!」
グロウの言葉に反応するようにピクリと指が動いた
それを見たグロウは表情が明るくなった
そして彩火はゆっくりと体を起こし、ゆっくりと前へと進んでいく
「彩火?」
「まだ立てたか……しかし、お前のライフは1。フィールドには小さなドラゴンが1匹、お前に何が出来る。さっさと降参してそのドラゴンを渡せ!」
「1つ聞きたい。貴様らはなんのためにグロウを求める」
彩火は年齢相応の元気な感じから、威厳のある大人びた感じとなった、まるで彩火ではなく別人のような
しかし、ブルースはそんなことには怯まず
「そんなのスカーレット一族を歴史から完全に抹消!そのためにそのドラゴンを必要なんだよ!」
「やっぱりリユは……」
「そうだな、スカーレット一族を知るのは貴様だけだろな」
急に表情が暗くなるグロウ
「なるほど、理解した。なら、尚更負けられない!」
「何だよ……いきなり……それに貴様は誰だよ!」
彩火はギロっとブルースを真紅の眼で睨みつけた。その威圧にブルースは初めて後退りした
そして、彩火は大きく右腕を横に動かし
「そのちっぽけな耳に我が名を刻め!!我が名はスカーレット家38代王女!リユ・ニオン・スカーレット!この赤い血で国を導く者!」
カード紹介を書こうと思ったんですけど……ちょっと大変なので……後書きは何を書くかは考えます
次回も読んでもらえると幸いです