バトルスピリッツ W-LINK   作:けんき

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視点切り替えの記号

─ 場面切り替え
☆ 一人称から三人称の切り替え
★ 三人称から一人称の切り替え

こんな感じです。今のところなんで、ちょこちょこ変わると思います。

今回はバトル無しです。


消えない記憶

 

「姉さん!」

 

恋春の声の先には癖っ毛のある茶色の髪をなびかせている虹宝の制服を着込んだ女性の後ろ姿。

そんな女性に恋春は幼い手を伸ばす。

女性も恋春の行動に気がついたのか、恋春の方に振り替えようとした。

 

美冬(みふゆ)姉ちゃん!」

 

美冬と女性の名前を恋春が口にした瞬間、そのまま眩い光を襲い、何が勢いよくぶつかった音が辺に鳴り響いた。その衝撃は恋春をこの世から吹き飛ばすかのよう。

 

「美冬姉ちゃん!!!」

 

勢いよく恋春の上半身を起こした。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

『おはようございます。……どうされました?』

「おはよう〜」

 

恋春の声に目を覚まし、あくびをしながらソファから目を擦るフェニルと、精神世界のマーガレットの言葉を塞ぐように顔を両手で抑える。

 

「何で……こんな……夢を見ちゃうのかな……」

 

弱音が溢れる恋春にフェニルはピンっときていなかったが、マーガレットは何かを察した。

 

『嫌な夢を見たのですね』

 

マーガレットの言葉に返事はしなかったが、恋春は頷くように両手の隙間から涙が流れた。

数秒間、涙を流した後、見た夢をかき消すように涙を拭い、起き上がると真っ直ぐクローゼットに向かい、そのままクローゼットの扉を広げて虹宝の制服を取り出し着替える。

枕元に置いてある黄色のヘアバンドを手に取り、慣れた手つきでカールがかかったような癖っ毛の髪をポニーテールする。

 

「凄いな……いともたやすく癖っ毛をポニーテールにするなんて……」

 

寝ぼけたフェニルから褒められる。

 

「この髪と何年の付き合いだと思っているの」

 

そう言ってベッド横に置いてあるリュックを背負い1階に降りた。

 

─────────────────────────────────     

 

『次は新六色〜新六色〜』

 

満員電車に揺られながら目的地の駅に到着。

駅到着と同時に雪崩のように人がホームへと流れる。恋春も人の雪崩に巻き込まれながらホームへと出てそのまま改札口を抜けて大きく背伸びをした。

 

「はぁ~電車通学……ほんとダリィ〜」

 

恋春が背負っているリュックからフェニルが顔を出し、頭の上に移動する。

 

「何なのあれ……」

「この時間は満員だからね。さてと早く行くかな」

 

フェニルを頭に乗せて駅の北口を出るとそのまま学校へと向かった。

 

─────────────────────────────────

 

遅刻ギリギリで到着する恋春。

 

「まあ、間に合って当然」

『もう少し余裕をもてば……』

「うっさい!!」

 

マーガレットの言葉を打ち消すように恋春が大きな声を出す。

 

「やっほー!恋春!」

「イェイー!おはよう恋春!」

 

カールがかかったツインテール、髪先が青いメッシュを入れ、爪にはネイルをやっており、制服もボタン開け、水色のリボンを崩した学生と、銀髪のストレートに青いアイシャドウを付けて、いかにもギャルな2人が恋春に話しかけてきた。

 

「やっほー、沙苗(さなえ)彩音(あやね)!」

「ねぇねぇ、変わった鳥を連れてるね」

「え、うん……まあ……」

 

フェニルのことを話すか悩んでいる。

 

「あたしはフェニル。人間じゃなくてスピリットよ」

「凄い!喋った!!?インコなの?」

「なにこれ!!超ウケる〜!」

 

フェニルが勝手に喋りだし、2人の注目の的になった。恋春はどうやって2人にフェニルのことをはぐらかそうか考えていたが、なんだかバカらしくなり軽くため息をつき。

 

「さっさと行くよ。1時間目はダルい岳獅先生だし」

「はぁ~あの人無駄に厳しいんだよな〜」

「マジでわかる〜」

 

楽しく3人はチャイムが鳴りながら2年生の教室へと入る。するとメガネをかけた男性の先生が呆れたようなため息をついた。

 

「おーい、またギリギリじゃないか……」

「さーせん!」

「すみまーせん」

「すみません」

「それと、黄菊。ペットの持ち込みは校内禁止だぞ!」

「誰がペッ……うぅー!?」

 

恋春は慌ててフェニルの口を押さえて、ベランダの方に出ると、そのまま空に放った。

 

「嘘でしょー!!?」

「これなら、問題ないよね?」

「え、うん……まあ……」

 

恋春はフェニルが帰ってくることを知っているが、他の人はペットをいきなり外に逃がしたという、わけのわからない行動をしたためみんな戸惑っていた。

そんなことは知らず、恋春は何もなかったかのように席へとついた。

 

そして飛ばされたフェニルとは言うと……。

 

「もぉ~いきなり放り投げなくていいじゃない?」

 

プンスカと怒るフェニル。すると、先生の言葉を思い出した。

 

「ペットがダメなら、人型になればいいんじゃない?」

 

そう言って恋春に飛ばされたベランダに降りると人型になる。

 

「よし、この姿なら問題ないわね」

 

そう言ってフェニルはベランダ側のガラス扉を開けた。

 

「これなら問題ないでしょ!恋春!」

 

フェニルの完璧な発想に恋春は思わず頭を抱えた。

確かに人型ならペットではないし、人に混ざっていても服装さえ目を瞑ればそんなに目立つわけでもない。しかし、それは町中や公共施設での話。

フェニルは学校では要は部外者。学校で鳥だろうと人だろうと、言われるのは……。

 

「侵入者ァァァぁー!!!」

「え、ちょっと!侵入者ってどういう意味!?あたしは恋春の……」

 

そんなフェニルの説明は聞かず、担任の先生の言葉に周りのクラスにいた先生が集まってきた。

流石にフェニルもやばいと思ったのか、慌てて鳥型になり飛び去って行った。

 

「どこに行った!!」

「今、鳥にならなかったか?」

「んな理由、あるか!!!早く校内を探すぞ!」

 

先生達は慌てふためきながら恋春の教室を後にした。

担任の先生は出る直前に「1時間目は自習になると思う!」と伝えて教室を出ていく。

静まり返る教室に1人の少年が拳を突き上げる。そしてみんなが机の上に置いていた教科書、ノートを投げると。

 

「「「「「「よっしゃー!!!!!」」」」」」

 

教室を潰さんとする声量と、床を突き落とすくらいの地ならしのような足音、桜のように舞い散る教科書、ノート

みんな、面倒くさい授業を受けずに自由な自習時間となり喜んだ。

もちろん恋春も同じで。

 

「まあ、フェニルには悪いけど、感謝するよ!」

 

慌てて逃げるフェニルを尻目に嬉しそうに友達と話出すのだった。

 

─────────────────────────────────

 

人影が感じられない体育館の屋根の下。グロウは暇そうにあくびをしていた。

 

「ふぁ~マジで暇だぁー!!!」

 

グロウは頭の後ろで組んで雲一つ無い空を見上げた。

約1ヶ月間、彩火の学校について来た。最初の頃は初めて見るものに興奮していたが、ここ最近は見慣れてきて飽きてきた。彩火とスカーレットと話せるのも昼休みだけ、グロウは昼寝ならぬ朝寝をしようと頭の後ろで腕を組む。

 

「グロウ!!!」

 

空から慌ててフェニルがこちらに降りてきた。

 

「あっ?どうしたんだよフェニル?」

「もお〜聞いてぇ!!」

 

フェニルはさっき起きたことを正確に話し始めた。

グロウは(当然だろ……)と思いながら目を細め聞いていた。

 

「ねぇーどう思う!」

「まあ、気持ちはわかるよ。カードだと身動き取れないから暇だし……かと言ってそのまま校舎に入ったら彩火がもの凄く怒るのはすぐにわかるし……」

「そうだよね……あたしも、あんなことは二度とごめんだわ……」

「そうだ!トアに相談しよう!レクリスの巫女ならなんか知ってるかもしれない!」

「賛成!なら、目立たないように、あたし人型になるね」

 

そう言って人型になるとグロウを抱え上げる。

 

「グロウがぬいぐるみみたいになれば目立たないよ」

「天才かぁ!?」

 

グロウはフェニルの案に乗り、ぬいぐるみのように力を抜いた。

フェニルはグロウを胸で抱えてトアがいるガブリエルの基地へとグロウの案内で向かうのだった。

 

─────────────────────────────────

 

「じゃあね〜」

「うん。またー!」

 

恋春は友達の沙苗、彩音と別れ、軽く息をつく。

 

『大丈夫ですか?疲れている様子ですけど』

「まあね、授業は疲れるし。それにしてもフェニルはどこにいったんだろ」

『そうですね……“契約”をすればなんとなくは位置はわかるのですが……』

「契約?」

『ええ、スピリットと契約する行為のことです』

 

マーガレットの言葉に恋春は思わず引いてしまう。

 

「えーなにそれ……」

『まあ、案外悪いものじゃないですよ』

「ふーん」

 

頭の後ろで腕を組みゆっくりと歩いていると、駅前の商店街に入る。近くに大型デパートがある中、衰退することはなく、それなりに賑わいを見せていた。

 

「おーい!恋春!!」

 

フェニルは恋春の名前を呼びながら、商店街の人混みをうまいこと避けて恋春に近づく。

 

「フェニル。どこにいたの?」

「まあ、トアと言う人の所。会えなかったけど」

「ふーん」

 

興味なさそうに返す恋春に、フェニルは気に食わなかったのか、恋春のおでこを突っついた。

 

「痛ぁ!」

「ちょっとは感心を持ってよ!」

「ごめんって……」

 

恋春とフェニルは出会ってからまだ1日も経っていないのに親しく交流出来ている1人と1匹。マーガレットは微笑ましい光景ににこやかな笑みを浮かべていた。

すると少し離れた所から何かがぶつかるような大きな音がした。音と共に衝撃波が恋春の髪を揺らす。

驚いた恋春とフェニルは音がした向き、ビタッと止まった。

 

「なんの音!?」

「なんかぶつかった音?それにしても……大きかったけど……」

『とりあえず、行ってみましょう』

 

マーガレットの言葉に恋春は頷くと音がした方に向かった。

 

─────────────────────────────────

 

商店街の長い道を抜けて駅前に出る。

すると大きなトラックがお店に突っ込んで大事故になっている。

 

『これは一体……』

 

すると、辺から野次馬がどんどん集まってきた

 

「……ヒドイ……」

 

恋春は思わず口から声が出た。辺りからサイレンを鳴らしながら警察と救急隊が集まり始め、今起きたことの深刻さを物語たっている。

 

「下がってください!!」

 

警察の呼び声に野次馬も言うことを聞くように数歩下がりスマホのカメラを構えている。

フェニルは人型となって恋春の隣に立つ。

 

「……どうなってるの?みんな薄い板を事故現場に向けて……瘴気の沙汰じゃない……」

『本来なら離れるのが正解のはずです……』

 

普段と変わったことが起きたら野次馬が集まる。

現代の集団心理とは縁が無かったフェニルとマーガレットからしたら不思議でしかなかった。

 

「おい!運転手が逃げたらしいぞ!」

 

野次馬の男性の声が響く。

 

「早く!子供が巻き込まれてる……」

 

目の前でガタイのいい男性が声を上げながら通り過ぎ、フェニルが反応する。

 

「子供が!?助けないと!!……恋春?」

 

フェニルの言葉に立ち尽くす恋春。

口を押さえて力が抜けるようにしゃがみこんだ。

 

「恋春!?」

『大丈夫ですか恋春さん!?』

 

恋春の脳内にいきなり映りだす灰色で思い出したくもない記憶。

記憶がフラッシュバックされるたびにどんどん心臓の動きが速くなり肩で呼吸をし始めた。

誰もが事故で恋春の症状には誰にも気づかず素通りしていく。

 

「ハァハァハァハァ!!!」

「恋春!!」

『しっかりして立てますか?』

 

2人の声に全く反応できずどんどん過呼吸が深刻化していく。

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

息の荒くなった恋春を擦るフェニルに2人の少女が話しかけてきた。ガブリエルの翔とトアだ。

翔とトアが驚いた様子で近づいてきた。そのまま翔がしゃがみ込む。

 

「大丈夫。動ける?」

 

翔の言葉に頷く恋春。翔は頷きを見て。

 

「トアさん!肩貸して!」

「え、うん」

 

トアと翔で恋春の両肩を持って商店街の入口まで行って座らせる。

数分経って、恋春の過呼吸もだんだん落ち着いてきて、ゆっくりと頭を上に上げる。

 

「あ、ありがとう……」

「大丈夫なの恋春?」

「うん……ありがとうフェニル」

「何があったの?」

「それは……」

 

フェニルの言葉に言いたげのない感じを示す恋春。

 

『私もちゃんとは知らないのですけど……何があったのか話してくれないですか?』

「マーガレットが言うなら……」

『私が言うなら?』

 

恋春の言葉にマーガレットは思わず小首を傾げた。

そんなマーガレットのことは気にせず、口を開き、過去の話を始めた。

 

「あたし……小さい頃に同じ目に会ったことがあるんだよ」

「同じ目?トラック事故のこと?」

「うん……あたしの目の前で姉ちゃんが亡くなったんだ。だから、その時の記憶がフラッシュバックして……」

 

恋春は話の途中で自分の制服を強く握る。

無自覚に出てくる恐怖心。再び息が荒くなる。

フェニルは優しく恋春の肩に手を置く。

 

「落ち着いて恋春」

「うん……うん……」

 

大粒の涙を流しながらゆっくりと大きく頷く恋春。

さっきの今どきの元気な女子高生とは別人なくらい弱々しくなる。

 

『少し私に変わってください。ここから動かないとです』

「……うん……」

 

髪色が金髪の色がどんどん薄くなり、白混じりな金髪になり、ポニーテールを解いた。

そのまま長い髪を肩にかけて、ポニーテールに使っていた黄色のシュシュで髪を再び束ねた。

スッと立ち上がり。

 

「申し訳ありません。お2人には感謝しないといけません」

「あれ、キャラが変わった?」

「彩火と同じじゃない?ほら、スカーレットさんと入れ替わる的な」

 

トアの言葉に納得したように頷いた翔。

 

「私の名はマーガレット・アマリージョと申します。今は恋春様の中に身を宿しております」

 

制服のスカートでカーテシーを行うマーガレット。翔とトアは軽く会釈をする。

 

「とりあえず、恋春……さん?のためにそのまま家に帰ってあげて」

「ええ、そうします。お気持ち感謝します!行きましょうフェニル」

「え、あ、うん」

 

そう言って事故現場とは真逆の方向に向いて歩き出し、翔達と別れる。

 

そのまま商店街の狭い道を歩き続け、二車線の大きな通りに出た。事故があったためか普段以上に混雑しており、クラクションの音が鳴り響いていた。

 

「相変わらず……うるさいなぁ……」

「大丈夫、フェニル?」

「うん。慣れてないだけ」

 

レクリス出身のフェニルにとって現代社会の車文化はあまり慣れていない。それを理解したマーガレットはフェニルの背を擦りながら。

 

「早く駅に行きましょう」

「うん……そうだね」

 

駅の方へ遠回りをして向かう。普段なら数分とかからないが、普段よりも数十分とかかり、南口へと到着した。

 

「さてと……」

 

マーガレットが一拍置くように深呼吸をして。

 

「恋春さん、フェニル、大丈夫ですか?」

『うん。大丈夫……少し落ち着いた』

「あたしも大丈夫」

「なら、少しお話しませんか?次の電車まで少し時間があるので」

『別にいいけど……』

「あたしも特にやることないし」

「ええなら」

 

そう言って北口の隣にあるベンチに腰掛ける。電車を利用する人が前を通り掛かる中、マーガレットは気にせず話し始めた。

 

「どうして……お二人の言葉に難色を示して、私の言葉に素直に従ったのですか?」

 

マーガレットの言葉に恋春は沈黙して少し考えを固めて話し始めた。

 

『……姉ちゃんに雰囲気が似てるから……』

「姉……恋春さんのお姉さんですか?」

『うん……面倒見いいところがそっくり……』

「そうですか。なら、お姉さんと呼んでいいですよ」

『はぁー!?』

 

唐突なマーガレットの言葉に恋春は思わず精神世界で大きな声が出た。精神世界なのでいくら大きな声を出しても外の人やフェニルには聞こえないが、マーガレットは驚きのあまり思わず耳を防ぐ。

 

「大丈夫。マーガレット!?」

「ッ……いきなり大きな声を出さないでください!」

『ぜぇぇぇぇたぁぁぁぁいぃぃぃにぃぃぃ!!言わないから!!!さっさと変わって!!』

 

そう言って無理矢理変わる形で恋春に変わる。

 

「たくぅ……何言ってんだか……」

 

恋春はポニーテールに戻し駅のホームへと向かった。

ドタバタしているが、今日1日で恋春とマーガレット、フェニルの関係を深めるのだった。




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