バトルスピリッツ W-LINK   作:けんき

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ルビを振り忘れたので名前を載せときます

井亜鈴 彩火(いあり さいか)
水浅葱 虹海(みずあさぎ にじか)
鷺城 氷牙(さぎしろ ひょうが)


紅の王妃

「そのちっぽけな耳に我が名を刻め!!我が名はスカーレット家38代王女!リユ・ニオン・スカーレット!この赤い血で国を導く者!」

 

宣言したと同時に蒼炎のドレスが赤々とした紅蓮のドレスへと変わり、冷たさを感じる白銀の長髪から綺麗な温かみのある黄金色の長い金髪へと染まった

彩火……いや、スカーレットの言葉にグロウは目を丸くして驚いた

 

「彩火どうしたんだよ?急にリユの名前を出して!」

「そうか……彼女は彩火と言うのか」

 

スカーレットは自らのドレスを掴む

 

「グロウ。特に怪我は無い?」

「あっ、ああ……本当にリユなのか?」

 

疑い深いグロウにスカーレットは指を口に当てイタズラに笑みを浮かべ

 

「なら、あなた、わたくしの部屋の引き出しにクッキーを入れていたわね」

 

スカーレットの言葉にギクッと目を丸くする

 

「なぜそれを!?」

「よくないわね〜。甘いのを取りすぎと言われているのに、クッキーを食べるのは〜よくないわよね〜」

 

いたずらに笑いながらその場でふらふらとするスカーレットに対してグロウは慌てて何か言い訳をしようとしている

 

「おい!俺を忘れるな!」

 

完全に蚊帳の外だったブルースは楽しそうに話すスカーレットとグロウに怒気を含んだ声で2人に当たる

スカーレットはブルースの方に視線を移した

 

「あーあ、ごめんなさい。にしても、あなた達を使うのは久しぶりね」

「それにしても大丈夫なのか?やり方とか?」

「ええ、彼女の中で見てたから大丈夫よ。スタートステップよね?」

 

スカーレットは初心者のようにターンを進める

 

「それにしても不思議よね。わたくし達は契約カードを翳すだけでスピリットを呼び出したのに、ここではこんなちっぽけな塊を使わないと呼べないって……」

 

スカーレットはリザーブのコアを触れる

 

「コアステップよね。そしてドローステップで1枚引くのよね……!?」

 

スカーレットはデッキから1枚引いた時にピタッと止まった。スカーレットは口角を上げ

 

「エデラの力を使うわ。えーと、1枚ドローしてカウント5?なら、破棄しなくていいわ」

 

スカーレットはリフレッシュステップを行い、メインステップに移った

 

「行くわよグロウ!あなたの本気を見せて上げなさい!」

「本気?……おう!よく分かんねぇけど!!」

 

スカーレットはあるカードを読み込むと、ぎこちなくソウルコアをトラッシュに置き、読み込んでいたカードを天高く上げ

 

「勇猛な翼を広げよ!我が国に繁栄を齎せ!相棒竜グロウよ、本来の力を解き放て!!緋炎龍皇グロウ・カイザーを契約煌臨!」

 

グロウを包むように火柱が立ち上がる。周りの気温を一気に上がり、建物の外壁やガラスが高温のあまり溶け出した

火柱を打ち消すように拳が出てくると、拳の真空波で火柱が弾け、緋色の鱗を纏う勇猛なドラゴンが姿を表した

 

「グロウ……いや、グロウ・カイザー、久々ね。その姿を見るのは」

「そうだな。G∴B軍が攻めてきた時、以来だったかな?」

 

思い出話に花を咲かせている場合じゃない。スカーレットは静かに拳をブルースに突きつけ

 

「やりなさいグロウ・カイザー!思いっきり暴れなさい!」

 

グロウ・カイザーは拳を引くと、辺りの熱を吸収するようにエネルギーを拳に溜める。そして炎のように赤色から海のような青色に変わる

 

「くらえッ!!」

 

グロウ・カイザーが拳をブケファロスに向けて突き付けると炎の衝撃波が発生し、ブケファロスを焼き尽くした

 

「何だと!?」

「これがグロウの力よ。何万という兵を焼き尽くした実力よ!」

 

グロウ・カイザーのBP20000以下のスピリット、アルティメットを破壊する効果がある

この効果で回復状態のブケファロスを破壊したことにより、ブルースのフィールドにはブロッカーが居なくなった

 

「ッ……絶甲じゃ間に合わね……ライフで受ける!!」

 

ブルースの目の前にバリアが2つ現れる

 

「なっ!?ダブルシンボルかよ!?」

「確か、このゲームはライフが5つ無くなったら負けなのよね……これで終わりよ!」

「くらえッ!一撃必殺!!灼炎轟龍拳ーーーーーッ!!」

 

グロウの蒼炎の拳がブルースのライフを2つ破壊して、大きく吹き飛ばされ、ビルの屋上からビルの下に叩き落された

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

ライフ2→0

 

どんどんと遠くなるブルースの声

絶叫が聞こえなくなるのを確認してスカーレットは辺りを見渡した。勝負が付いたと同時にバトルフィールドが消滅する

スピリット達は光の粒子のように消えていって、グロウ・カイザーも元のグロウの姿に戻った

そして、スカーレットも紅のドレス姿から彩火が着ていた制服の姿へと戻った

 

「変わったドレスね……」

 

制服のスカートをひらひらさせていると、スピリットと溶岩で耐えきれなくなったビルの天井が抜けた

 

「嘘!?」

 

スカーレットは溶岩で溶けているビルの中へと落ちていく

1番下は溶岩が風呂のようになっており、底に落ちたら確実に死ぬのは確定していた

息をすれば確実に肺が殺れる。スカーレットは息を止めてこの状況を打破するか考えていた。というよりは手はこれしか無かった

スカーレットはドレッドノーズのカードを手に取り、右手の契約の証の紋章をかざした。するとドレッドノーズが強靭な翼を広げ、剛腕の腕でスカーレットを掴んで飛翔した

ビルの天井を突き破り、青い空へと飛び去っていった

────

 

町から離れた少し静かな山に木々を倒しながらドレッドノーズは静かに着陸する。そしてスカーレットを腕から離して、そのまま光となっていて消えていった

 

「ハァハァハァハァ……」

 

ずっと息を止めていたためスカーレットは過呼吸気味になっていた

体を蹲るスカーレットにドレッドノーズの尻尾にしがみついていたグロウは慌てて駆け寄った

 

「リユ大丈夫かぁ!?」

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ええ……大丈夫よ……落ち着いてきたわ……」

「よかった……」

 

グロウは安堵していると、スカーレットは眠たそう目でグロウを見ていた

 

「ごめんなさい……凄く眠くて……」

 

スカーレットはそのまま倒れると同時に瞳を閉じた

 

「リユ!!?」

 

スカーレットの体を起こすように揺らしていると、温かみのある金の髪色から冷たさを感じる銀色の髪へと変わっていく

 

「え?」

「んっ……ん~~。よく寝た……」

 

大きく背伸びをするスカーレット

 

「リユ!」

「え?リユって誰?私は彩火よ」

 

その言葉に目を丸くするグロウ。ついさっきまで確かにリユ・ニオン・スカーレットと話していた、しかし、その彼女は今は髪色を変えて彩火と名乗った

グロウは彩火の胸ぐらを掴んだ。彩火は思わず目を丸くした

 

「ちょっ、何!?」

「リユをどこにやったんだ!!」

 

胸ぐらを掴み全力で体を揺らす。前後に揺れて段々気持ち悪くなってきた彩火

彩火はあまりにもしつこいため、胸ぐらを掴んだグロウを掴み横に投げ飛ばした

グロウは悲鳴を上げて、倒れた木に強くぶつけた

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……なにするのよ!?」

「リユはどこにやった!」

「知らないわよ!リユって誰よ!!」

 

すると、グロウのリユという言葉に何か引っ掛かりを感じた。どこかで聞いたことのある名前

 

「あのさ、少し聞きたいんだけど、あんたら私の夢に出てたよね?」

「夢?なんのこと?」

「あんたが、燃える城の中で『リユ!』って呼んでたの見てたもん」

「な、なんでそれを!!」

「いや、1ヶ月間ずっと同じ夢を見てたんだよ」

 

戦闘態勢に入っていたグロウは拳を下ろし、彩火の言葉に小首を傾げた

 

「……同じ夢?」

「うん。まんまグロウが出てきたよ。さっきはいろいろあって……」

 

彩火が言葉を続けようとした瞬間、さっきのバトルの記憶を走馬灯のように思い出した

マグマで溶けるビル、ビルの下から上がる悲鳴、スピリットに押しつぶされた人達。高校生には耐えれないバトルの記憶に彩火は自然と体が縮こまった

 

「あっ……あっ……あっ……私が……私が……多くの人や建物を……」

「彩火!?」

 

自暴自棄になっている彩火に近づくグロウ

グロウは彩火の背中に回ると背中を擦った

 

「……グロウ?」

「リユが不安になったら背中を擦るのが良いって言ってたから」

 

数分背中を擦られなんとか落ち着きを取り戻した

 

「ありがとうグロウ。少し落ち着いたよ」

「いや、オレも思わず怒ってしまった。彩火には関係ないのに……ごめん」

 

彩火は一拍置いてバトルの結末を聞いた

 

「ブルースという人を倒したんだよ。やっぱり覚えてないのか?」

「いや、全然……多分、その時にリユって人に入れ替わってたんだね。──そんなオカルト……信じたくないけど……」

「うん……だけどオレの目の前にいたのはリユだった!それは間違いない!」

 

グロウの一撃のこもった言葉に口を閉じた彩火

数秒の沈黙が2人を襲う

 

「……少し質問いいかな?」

「何?」

 

沈黙を打ち破った彩火の質問にグロウは小首を傾げた

 

「あんたがよく言うリユについて教えて?」

「リユの事?別にいいぜ!リユ・ニオン・スカーレット。それがリユの本名だよ」

「リユ……ニオン……面倒くさいからスカーレットって呼ぶわ」

「スカーレットの方が長い気がするけど……まあ、いいっか!」

 

グロウはニカッと笑いリユ・ニオン・スカーレットの事を話し出した

 

「リユはレイカラット王国の王女様でリユはスカーレット家38代王女なんだ」

「へぇ~王女様なんだ〜てか、レイカラット王国って初めて聞いたな……」

 

──あれ、てことは、私の体に王女様が宿ってんの?

 

「リユは勇敢でどんな戦争も最前線で戦ったりしたんだぜ」

「……王女様が最前線で戦ったら駄目でしょ……」

「え、オレはカッコいいと思うけど?」

「……まあ、いいや。続けて」

「後は国民の事を最優先で考えて、そして誰よりも優しいんだ。だから、オレの強さの頂点であり、オレはあいつの最大の相棒で在りたいんだ!」

「ふ~ん」

 

彩火はグロウの話すリユ・ニオン・スカーレットの人物像についてなんとなく理解した。レイカラット王国という、この世には無い国の王女、民に優しく、戦争では最前線を張ると言うこと

 

「スカーレットについては、なんとなくわかった。じゃあ次にどうやって来たの?……多分、私が居る世界の動物じゃないよね……レイカラット王国なんて存在しないし」

「来た方法は魔法って言った方がいいんだっけ?オレも詳しくは分からないや。魔法に関してはさっぱりだしな」

「そこが大事じゃない……」

 

なんとか元の世界に返せないかと考えていたが、グロウがこの調子なため、元の世界に戻せるのは当分先なんだろうなと思う彩火

しかし、夢の中では異世界に行く魔法みたいな事を言っていたような気がした。それさえ出来れば元の世界に帰れるんじゃないか……

 

「……まあ、難しいことは後でいいや。とりあえず山を降りよう……ここにいても意味がないし」

 

彩火はさっきの嫌な記憶を振り払いながら立ち上がり、グロウと共に山を降りた

────

 

降りてから数十分、彩火とグロウはさっきバトルをしていたビルの通りに出てきた

彩火は不安を隠すように腕を撫でていた。しかし、グロウはビル街に違和感を感じた

アスファルトやビルがスピリット達の影響で破壊や溶けた形跡はあるが、歩いてたり車を走らせている人は全く気にせずに生活をしていた

まるで住人が完全にさっきのバトルを忘れてたかのように普通に生活を送っていた

 

「どうなっているんだ……」

「どうしたのグロウ?」

「いや、全く気にしてないなって思って」

「え!?」

 

彩火もグロウの思っていることに気がついたのか目を丸くした

 

「どうなってるの!?確かにバトルしている時に悲鳴は聞こえたけど……」

 

さっきのが夢だと思いたいが、ドレッドノーズが倒れて凹んだ後があるため夢で無いことは明白だった

彩火とグロウは真相を確かめるため戦場となっていたビルの元へと向かう

 

戦いのあったビルの姿はドロドロに溶けて冷え固まっておりビルの原型は無くなっていた

 

「私がやったんだ……」

「落ち着け彩火。あんたが一概に悪い訳じゃないだろ!」

 

確かにグロウの言う通り、彩火がやったわけでは無くスピリットが原因だ

彩火は飲み込むようにグロウの言葉に頷いた

 

「ありゃーどうしたのかね?」

 

後ろを振り向く彩火。そこには腰を曲げシワが目立ち見た目から80代くらいだろう

そんなおばあちゃんに「はい?」と優しく返す

 

「変わった生物を連れてるね〜」

 

彩火の足元にいるグロウに目線を向ける

 

「え!?え、え〜と……」

 

慌てて言い訳を考える彩火

ドラゴンと言っても通じないのは明白だし、その前にこんな生物がこの世にいない……

数10秒、頭の中で考えに考えた結界……

 

「あ、あ、赤い新種の猿です!」

「猿!?」

「猿かぁ〜今は中々、目立つ猿も居るのね〜」

 

彩火の言葉に文句のあるような表情をするが、完全に無視をしておばあちゃんにこのビルの事について聞いた

 

「あの〜このビルは何があったんですか?」

「あ~このビルは急に溶け出したんだよ。だけど、なんで溶け出したのかよく分からなくてね〜」

「え!?あの!変わった生物とか居ませんでした?巨大なドラ……トカゲとか青い牛とか?」

「はて、そんなの居たかの?」

「え……どういうこと……」

 

おばあちゃんの発言から何も覚えてないような感じだった

しかし、彩火はトラウマとなってバッチリ覚えていた

 

「あのさ……」

「グロウはウキーって言ってて!!」

「ウキー!!?」

 

バレるといろいろ面倒な事になるのは確定なので、とりあえずグロウには猿になって貰うしかなかった

 

「いろいろお話していただき、ありがとうございます!」

「いやいや、このくらいなら問題ないよ。あんたらも気をつけさんな〜」

 

と言っておばあちゃんはゆっくりと歩いていった

彩火は頬を膨らませるグロウに目線を向けて手を合わせる

 

「ごめん!いきなり猿の設定して」

「ウキ!!」

 

猿のモノマネをしながら不貞腐れるグロウ

そんなグロウに苦笑いを浮かべながら溶けたビルの方に目線を向けた

 

──あの人は大丈夫なのかな?

 

ブルースの事が心配になったが……まあ、大丈夫だろうと開き直った

不貞腐れるグロウの方に再び目線を移し

 

「グロウは帰る場所とかある?」

「そんなのあるわけないだろ」

「なら、家に住まない?元の世界に帰れるまでだけど」

「え!?マジ!!」

 

彩火の提案にパッと表情が明るくなったグロウ

 

「とりあえず家に帰ろっか」

 

彩火の言葉にグロウは頷き家に一緒に帰る

 

……と思った瞬間、ビル街には似合わない黒い大きな車が1台彩火の目の前に止まった

 

「何……今度は……」

 

さっきのこともあり、戸惑いと同時に恐怖感があった

すると黒い車から赤髪の長髪にアニメとかでよく見る黒いキャットスーツを着こなす胸が彩火に比べて何倍にも大きな長身の女性が出てきた。顔には真っ黒のサングラスと黒いマスクを付けて顔の表情が読みづらくなっていた

 

「ヤッホー!赤いドラゴン君と不思議なガールちゃん!」

「あなたは誰ですか?」

 

彩火はグロウを守るように腕を斜め下に出す

そんな姿を見た女性は「ふ~ん」となんかを理解したように頷くと

 

「ねぇ、少し話があるからついて来てほしいんだけど」

「怪しさMAXの人についていくほど、私も悪い子ではないんですよ!」

「……あんまり手荒な真似は私はしたくないんだけど」

 

すると彩火とグロウは急なフラッシュを受け、急に意識を失った

────

 

彩火はゆっくりと目を覚ました。真横にはグロウが眠っており、彩火はゆっくりとグロウの体を揺さぶる

揺さぶられた事によって目を覚ましたグロウ

 

「グロウ?」

「ん、ここは……」

 

辺りは薄暗く、眼の前の8つの液晶モニターしか明かりが付いてなかった

 

「ごめんなさいね。こんな手荒な真似をして」

 

さっきの女性のセクシー的な声が響くとバチッと明かりが付いた

辺りが明るくなるとモニター以外にも周りには見たことの無い大きな機械がちらほら散見した

そしてモニター前の回転する椅子にさっきの女性が足を組んで座り様になっていた

彩火とグロウは立ち上がり

 

「あなたは一体、何者なんですか?」

「私は星野(ほしの)エマ。あなたに協力をしてもらうために来てもらったのだけど……」

「こんな形で連れてきてよく頼み事が出来ますね!」

「だから、ごめんって言ってるじゃん!」

 

彩火は年上に失礼なのはわかっているのだが、大きくため息をつき

 

「……内容はなんですか?」

「よく聞いてくれた!!あなたにはさっきの人を倒してほしいんだよ!」

「さっきの人……」

「レオザード獅国の奴らか……」

「そう……というより六王連合国軍かな?」

「ろく……王……連合国軍?」

「オレ達を襲った軍だ……」

「この感じだと赤いドラゴン君の方が詳しそうだね」

 

エマはグロウの方に指を差す。彩火はグロウの方に視線を移し

 

「グロウ、詳しく教えて!」

 

グロウは少し悩んで口を開く

 

「ごめん……オレも詳しいことは分からないんだ……ただ、レオザード獅国が中心に結成したとしか……」

「ふ~ん。ならさ〜」

 

エマはリズミカルに彩火に近づき

 

「ちょっと、ごめんね!」 

 

エマは大きく拳を振り上げた。そして大きく拳を彩火に向けて振り下ろした

彩火はいきなりの事になにも出来ないどころか、リアクションも出来ず目を瞑った

────

 

彩火はゆっくりと目を開けると先が見えない真っ黒な壁に光が差さない空、そして水面の大地

 

「あれ……ここは……さっきの……」

 

さっき彩火が居た精神世界だ

目の前にはさっき出合った人型の金色粒子。しかし、今回は顔がハッキリと分かり、金髪で赤い瞳を持つ彩火そっくりの少女だった

髪色以外は写し鏡のような彼女に彩火は驚きは無かった。彼女がリユ・ニオン・スカーレットなのがすぐにわかった

 

「えーと……」

 

さっきので、声が出るのはわかっているので口を開いた

 

「リユ・ニオン・スカーレット様?」

「別に呼び捨てでいいわ。わたくしは堅苦しいのはあまり好きでは無いの」

「じゃあ、スカーレットで!」

「なんでもいいわ」

「私は井亜鈴彩火!」

「ええ、知っているわ。よろしくね彩火」

 

簡単な自己紹介を終え、本題に入る

 

「ここはどこなんですか?」

「敬語は無しでいいわ。……そうね。推測の域には出ないのだけど、ここは一種の精神世界みたいなものじゃないかしら」

「精神世界みたいなもの……じゃあ、あなたはいつから私の中に居たの?」

「う~ん。ハッキリしたことは分からないのだけど、約1ヶ月間前くらいかしら……ごめんなさい。ほとんど聞き取れなかったの」

「1ヶ月間前……」

 

1ヶ月間前はちょうど彩火が不思議な夢を見始めた頃だ

そしてこの不思議な夢はグロウとスカーレットの話でなんとなく解決した。不思議な夢の正体はこの体に宿ってスカーレットが体験した記憶が夢として出てきていたのだ

 

「……なんか、いろいろ解決しちゃった」

「……?解決したなら、まあいいわ。そう言えば、連合国軍の事の話だったわね」

「なんでそれを?」

「ここから聞いて見ていたわ。1回人格が入れ替わってからハッキリ聞こえるようになったみたい。後はわたくしに任せなさい」

 

と言ってスカーレットは完全な粒子となって消えていった

 

「あっ、ちょ……」

 

そしてポツンと再び孤立するのだった

────

 

「ふぁ~、全く拳を振るうなんて」

 

エマの拳を受け止めたのは金髪となった彩火では無く、スカーレットだった

 

「リユ!!」

「やっぱり入れ替わったね」

「聞いてた感じだとわたくしに用があるようね」

 

エマは拳を下ろした

 

「じゃあ、詳しく教えて?私も名前しか知らないから」

「正確な情報では無いことだけ、頭に入れておいて。情報源は偵察部隊だから」

「それでもいいわ」

「じゃあ、まずは構成している国ね」

「国?」

「それは連合国軍だからね。まずは所属している国から話すのがいいわよね。まずはレオザード獅国ね。レオザード獅国はレクリスの最強の軍事国家ね」

「レクリスはあなたの世界の名前ね」

「まあ、そうなるわね。とにかく軍事に関してはわたくし達の世界ではトップクラスだと思うわ」

「どんな人が即位してるとかわかる?」

「ズカズカ聞いてくるのね。そうね〜1つ前の王なら会ったことはあるのだけど……今は知らないわね。わたくしと同じくらいだとは聞いたけど……」

「ふ~ん。あなたの年齢は?」

「15よ。彼女と同じね」

 

スカーレットは彩火のぺったんこな胸に手を乗せる

 

「なるほど、じゃあ次の国を教えて」

「次はグラムバルトね。グラムバルトは空挺部隊で有名ね。空中ならレオザード獅国と同等……それ以上だと思うわ」

「空挺部隊か……空の事は詳しそうね」

「あっ、そうそう!王が隊長を牽引している珍しい国家ね。だから、レオザード以上に厳しかったはずよ」

「ふ~んで、次は」

「次は東方の国ね。最も東にある国よ」

「東方の国?結構、アバウトなのね。名前は無いの?」

「内戦が激しくてコロコロ名前が変わるから一纏めに東方の国と呼んでいるの」

「そんなにコロコロと変わるの?」

「私が生きている間でも相当名前が変わったからね。長くて数日だからね」

「長くて数日って……よく国として成り立っているわね……」

 

呆れたようなエマに続くようにため息をつくスカーレット

 

「ほんとよ……。まあ、内戦の原因は土地の問題も結構あるのよ」

「土地?土地を巡っての争いってこと」

「まあ、そうね。作物が育つ土地が少ししか無いらしいのよ、だから、争っていると貿易商の方から聞いたわ」

「貿易商?」

「東方の国は連合国軍の中でかなり遠いのよ。だから、情報がとにかく入りづらいのよ」

「だから、だいぶアバウトなのね」

「まあ、それも理由の1つね。東方の国に関してはこんなものね。次は……」

 

次の国を言う前に口を閉じた。いきなり喋ることを止めたので、エマは小首を傾げた

 

「どうしたの?」

「後は国と言うと微妙な立ち位置なのだけど……」

「別にいいよ。少しでも情報が欲しいし」

「わかった……なら話すわ。まずはグリューム∴バウムね。ここは国というより国の中枢を握っている会社なのだけど」

「なに、その陰謀論で出てきそうな設定は!」

「……?よくはわからないけど、グリューム∴バウムは木を1から育てて加工まで行う会社ね」

「聞く感じだと安全そうだけど……」

「聞くだけね。わたくしも最初はそう思っていたのだけど、悪い噂が多すぎるのよ」

「噂?どんなの?」

「暗殺をしているとか、逆らう者を殺すとか、他にもいろいろあるのよ……」

「それは怪しいね。上はかなり頭がキレるということね」

「……それは無いとおもうわ。あのバカ社長……」

「ば、バカ社長!?」

 

いきなりの暴言に目を丸くするエマ

 

「……口を滑らしたわ。ごめんなさいね。グリューム∴バウムの社長はまだ若い……若すぎて……話にならないとお父様が言ってたものだから……わたくしも会ったことはあるのだけど、子供相応だったと思うわ」

「まあ、気持ちはわかるよ。……次の国を教えて」

「魔導都市ストレーガかしら……これも国というより……都市だから国とは違うのだけど……。ここの都市は巨大な図書館を中心になっているのよ。後は堅苦しい人が多いわ……」

 

この言葉に頭を抱えたスカーレット。これを見てどんだけ堅苦しい人が多いのか物語っていた

 

「そ、そうなんだ……次を教えて!」

「次が最後よ。タンブルウィードヴィレッジって所ね」

「ヴィレッジってことは村ね」

「まあ、そうなるわね。あそこは治安がもの凄く良くないわね」

「そんなに?」

「タンブルウィードヴィレッジのボスはギャングよ」

「うわぁ~」

 

ギャングと言う言葉に少し引いた表情を見せた

 

「そんな国々が連合国軍の所属している感じね」

「なるほどね〜」

 

エマはそう言ってモニターの方に向くと何かの作業をするとモニターにはスカーレットが話した内容が簡潔にまとめられていた

 

レオザード獅国:レクリスの最強の軍事国家 

グラムバルト:空挺部隊で、空中ならレオザード獅国と同等か以上

東方の国:最も東にある国。内戦が多く国名がかなりの頻度で変わる

グリューム∴バウム:土木会社。黒い噂がある。バカ社長

魔導都市ストレーガ:魔法に特化している都市。頭が固い

タンブルウィードヴィレッジ:ギャング

 

「へぇ~便利ね。わたくしが喋った事をこんなにもパッと表示できるのね」

『パソコンか、何かでパッと打ち込んだんだよ』

「あら、彩火?喋れるのね」

『うん。体は全く動かせないけど……』

「どうしたんだ、スカーレット?」

 

意識体の彩火の声は周りには届いてないようだ。スカーレットはグロウの方を向いて首を横に振り

 

「いえ、何もないわ」

「……こんな感じでざっと纏めて見たけど……こんな感じで合ってる?」

「ええ、簡単に言えばそんな感じね。では……」

 

スカーレットは軽く息を吸い一拍を置いて

 

「あなた達の事を教えてもらうわ」

「そうだね。いろいろ教えてもらったし、私達の事を教えるよ」

 

エマは軽く咳払いをして

 

「私達はスピリットがどうしてこっちの世界に来たのかを調べたり、現れたスピリットをマスコミやメディア、一般人から隠すのが仕事だよ」

「どうして隠す必要があるのよ?」

「そりゃ〜」

 

モニターに映し出されたこの世界では違和感でしか無い巨体のスピリット達

 

『オペラハウス前に居るのってアトライア・ハイドラ?』

「氷の世界に居るのはガドファントかしら?」

「他にも中国でカグツチドラグーン、アメリカではトーテムオウル、イギリスではダークネス・カウント、サバンナのガゼルの群れにアイベリックスとか……世界中にスピリットが現れている。もちろん建造物や、人的被害も出ている」

「そんなに大きな事なのにニュースになっていないですよね」

 

金髪から銀髪に戻り、彩火の人格と入れ替わった

 

「だって、世界がパニックになるからね。だから見た人を極力記憶を消している」

「記憶を消すって……。だから街の人は覚えてないのか……」

 

街の人の記憶が消えた理由はなんとなくわかった。そして彩火が記憶が消されなかった理由は町から離れていたから

 

「どうやって消しているんですか?」

「それは企業秘密だよ!」

 

人差し指を自分の弾力のある唇に当てるエマ

 

「でさ、ここまで話したけど……どうかな私達に協力してくれないかな?」

「協力ですか……」

「報酬は弾むよ!!」

「いや、別にお金には困って……」

 

──あればあるだけ嬉しいけど

 

「……どうして私に頼むんですか?」

「実はバトルを見ていたんだよ。あなたとその連合国軍のね」

「え!?見てたんですか!?」

「うん。全部ね。連合国軍のことが分かれば、きっとスピリット達がどうしてこの世界に来たのかわかる気がする。連合国軍と戦ったあなた……あなた達3人の力を貸してほしいの」

 

何かの影響でスピリットが来ているのなら、その原因を解決してあげたい。しかし、この人の話を全て信用していいのか悩んでいた

 

『わたくしは、この組織に組みしても別に良いと思うわ』

「スカーレット?」

『これは予想だけど、わたくしの影響でスピリットが来ているような気がするの』

「そうなの?」

『予想だけどね。連合国軍がどうして異世界に来てる理由も気になるし……いろいろ動きやすいと思うの。最終的にあなたの判断に任せるわ。あなたの体……あなたの人生だから、わたくしに決定権は無いわ』

「わかった」

 

彩火はスカーレットの言葉に頷き

 

「グロウは?」

「オレはスカーレットと彩火の意見に従うぜ!」

 

1人と1匹の意見を聞いて彩火はすぐに答えを出した

 

「分かりました!あなたに協力します!」

『即答!!?』

「ありがとう!嬉しい答えだわ!」

『いいの、そんな即答して?』

「私もスピリットの事はどうにかしたいし、それに私はスカーレットの意思も尊重したい」

『彩火……』

「その感じだと、全員の合意なんだね」

 

エマは歓迎するように手を大きく広げて

 

「ようこそ!特殊異界生物調査隊!通称、ガブリエルへ!」

────

 

町は星と満月が暗い空に輝いていていた。歩いている人も少なくなり静けさが町を襲う中、中心地から少し離れた廃工場

天井は赤錆で染まっており、何箇所か配管とかが崩れているが、柱や扉はまだ古くさい感じは無く天井が落ちてくる様子は無かった

そんな廃工場に彩火に襲いかかったブルースを含む2人を見下ろすように置き捨てられた包材に座る人影

 

「申し訳ありません!」

 

膝をつき土下座をするブルース

そんなブルースを冷ややかな目で見下ろす群青色の長髪を持つの高校生くらいの身なりの少女

そして少女は口を開いた

 

「我らがレオザード獅国の掟は何だ?」

「……勝者こそ全て……」

「ええ、わかっているならいい。で、報告をしろ!」

「ハッ!リユ・ニオン・スカーレットがやはりこの世界に来ていたようです!」

「なに?」

 

少女は目を丸くして包材の山から飛び降り、包材は倒れそうになるが少女はそんなことはお構いなしに、ブルースの前まで行き、体格差が一回り大きいブルースを胸元を簡単に掴み上げた

 

「確かにリユ・ニオン・スカーレットと言ったんだな?」

「はい!間違いありません!」

「そうか……」

 

少女はストンとブルースを下ろし、顎に手を当て考え出すと

 

「やっぱり来ていたんだなこの世界に……」

「はい!今がチャンスかと……」

「……なら、これからの指示を出す!ブルース、リオンはリユ・ニオン・スカーレットを探しなさい。これが最後のチャンスよ。もし、しくじればどうなるか……わかってるよね?」

「「はい!!」」

 

そう言ってブルース達は廃工場を後にした

冷たい廃工場に1人となった少女は軽くため息をつく

 

「いくらなんでも部下に優しくないか?」

 

廃工場の暗闇からサラサラとした赤の長髪に赤茶色の軍帽を被った赤錆色の瞳を持つ長身の青年が出てきた

 

「別にいいだろ。奴らしかリユ・ニオン・スカーレットの情報を知らないんだから……」

「ふーん、まあいいだろう。我々はヤツを殺せば目的は達成するからな。我々、連合国の関係もそれまでだ」

「ええ、そうね」

 

少女はそう言って廃工場の影に帰るように足を進めた

 

「帰るのか?」

「そりゃね。この“体”の家主に顔を会わせないと」

 

そう言って少女は影に隠れるように廃工場を後にした

────

 

そんな連合国軍のことも知らず、自室でゆっくりしていた彩火とグロウ

お風呂や夕食も済ませ後は寝るだけとなっていた

ベッドに座り大きく背伸びをする

 

「ん〜、人生で1番濃ゆい1日だったなー」

『そうでしょうね』

 

すると本棚からドタドタと本が雪崩ように崩れ落ちる本。そして本の山の下敷きになったグロウ。どうやら本棚に体が当たったようだ

 

「グロウ、大丈夫!?」

「ああ……にしても、痛えな〜」

 

彩火の本棚には漫画がほとんどだが、辞書や図鑑もあるため頭に落ちてきたらそれなりに痛い物もある

 

「ぶつかっただけなのになー」

「気をつけてよ。私の部屋、狭いんだから。それにしても……」

 

彩火は右手の甲の竜の顔のような紋章を見つめる

 

「これって消えないの?タトゥーみたいなの……」

『消えないわよ。契約者なんだから』

「そっか……」

 

──これが明日学校でバレたら面倒くさいな

 

『早く寝ましょう。夜ふかしは美容に良くないわ』

「まだ10時にもなってない無いんだけど……」

『早く寝るわよ!』

「はいはい……わかったよ……」

 

彩火は小さな丸いテーブルに置かれた細長い白リモコンを持ち部屋の電気を消した

沈黙が部屋を襲い、そして静かに目を閉じる彩火

明日から経験したことの無い、日常が井亜鈴 彩火に襲い掛かるのだった

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