「シーラス・アルバストゥルです。よろしくお願いします」
昼休みにいつもの所で屯している彩火達。昨日、虹海の体に宿っていたシーラスの自己紹介をしていた
初めましての氷牙は戸惑いながら頭を下げる。そんな氷牙を珍しく思った彩火は
「なんか珍しいね?氷牙がそんなタジタジとしてるけど……」
氷牙は彩火に近づいて耳打ちをする
「だって年齢わかんないから、どう接すればいいかわからないもん!」
小声の氷牙の言葉に「そんなことかぁ〜」と呆れた声が思わず出てしまった
氷牙は運動部に入っているため、上下関係には結構気にしている。なのでスカーレットに関しても口調は軽いが、さん付けをしている
「どうなのスカーレット?」
『確か、わたくしと同じくらいよ』
「スカーレットって何歳なの?」
『15よ』
「同い年なのね……」
「同い年なのかよ!いや、立場が……」
『別に気にしないって言っているのに……少なくともシーラスは17よ』
「2つ上なのね」
「じゃあ、バチバチの先輩じゃねぇか!」
コソコソ喋る2人が気になったのか「あの〜」腰低く話しかけるシーラス。彩火と氷牙は慌てて振り返り「「何も無い!」です!」焦りながら返答する。シーラスは小首を傾げた
「後はこの空気を任せたスカーレット!」
『え、ちょっと!』
彩火はスカーレットと無理やり変わり、呆れたため息をついた
「気にすることはないわ」
「そ、そうですか……姫が言うなら……」
あまり納得した様子ではないが、慕う人の言葉に疑問を無理やり噛み砕いて納得した
すると、彩火のポケットから通知音が響く。スカーレットは音がしたブレザーのポケットに手を突っ込み、彩火のスマホを取り出し呆然と見つめる
「どうしたんです。スカーレットさん?」
「この機器の使い方がわからない……」
『あっ、なら私に変って』
スカーレットから彩火に変わり、スマホの着信の内容を確認する
周りも気になったのか氷牙とシーラスと入れ替わった虹海がスマホを覗き込む
「星野さんからか……『今日、ガブリエルの基地に集合!』」
「おっ、星野さんからか!面白そうだからついていこうぜ!」
「そうだね。放課後暇だしね」
2人の言葉にそっとスマホをブレザーのポケットにしまう
そして彩火は静かに口を開く
「別について来なくていいよ」
彩火は2人を巻き込みたくないので、あまり関わってほしくないが本音だ
「そっか〜」
虹海は頭の後ろで手を組み残念そうにしていた
彩火も2人が諦めてくれたと思って安堵して軽く息を吐いた
────
「星野さん、井亜鈴ちゃんに何のようなんですか?」
エマに彩火の通知の内容を聞く虹海と、隣で楽しそうに質問の答えを待つ氷牙と、死んだ魚の目で生気を失った顔をした彩火が、エマの前に立っている
十人十色の表情に明るく人当たりのいいエマも困惑していた
「ど、どうしたの?」
「いや、事情を教えてください……」
生気の無い彩火の言葉に戸惑いながら頷く
「えーと、この間、言っていていたオラクルスピリットの場所が判明したのよ」
「本当か!?」
「本当よ」
グロウとエマの会話に生気を失った彩火は生気は取り戻したと同時に、この間、虹海達が入った部屋から真氏が現れた
しかし、この間に会った時よりも別人と言われてもおかしくないくらい顔が窶れており、目元にはクマがくっきりと現れていた
前かがみな真氏は「よぉ……」と死にそうな声を出して挨拶をする
「どうしたんですか!?」
ふらふらと階段を降りる真氏に彩火達は声を掛けながら駆け寄る
手すりを使い下まで降りきると、階段を椅子代わりに座る
「いや、スピリット探知の精度を上げて、さらに原因を探したり、予測をしていたら寝不足で……」
大きなあくびを繰り返す真氏
彩火達は心配している中、後ろで悪魔のようにクスクスと笑うエマを睨みつけていた
「マジで……お前な……お前の無茶振りのせいでこっちは徹夜なんだぞ!」
「それはごめんって、だけど、オラクルスピリットの手がかりは掴めたから」
「そうだが……」
エマ達が会話していると、真氏が出てきた扉が再び開き
「それに関しては私から説明するよ」
深紫色のさらさらとした長髪にをぶら下げ、青い瞳を持ち少しツリ目気味に、服装は紫色のセーター、黒いミニスカートの上に白いコートを羽織り、長身の明る雰囲気を持つ女性が部屋から出てきた
初めましての人に3人と1匹はきょとんとしていた
「あっ、初めましてだね。私は四位 翔」
「しょーちゃんは私の昔からの友達でね、手伝ってもらっているんだ!一応、君たちと同い年だよ!」
「へぇ~」
彩火の反応には気にせず仲良さそうに肩を組むエマ。翔は少し嫌そうな表情をしながら話を始める
「まずは、ガブリエルには世界中にスピリットが探知出来るシステムがあるんだけど……」
「凄い装置があるんだな!」
「まあ、特殊異界生物調査隊は防衛省と環境省の管轄でやってるから無謀じゃない限りはある程度自由に出来るからね」
「ガブリエルって国の管轄だったんだ……」
「だけど、どうやって俺達、スピリットを感知しているんだ?」
すると、ボーっとしていた真氏がうめき声を上げながら
「……ァァァ〜、それはスピリットだけが放つ周波数で感知しているんだよ」
「しゅはすうぅ〜?」
グロウの言葉に頷くと
「波動や振動が1秒間に繰り返される回数のことだな。つまり生物が出している音の繰り返しで探知しているんだ。この世にいる生物と違う周波数が出たらだいたいスピリットだ」
「新種の生き物とかって言う可能性は……」
「ない!」
虹海の言葉にエマはハッキリと否定した
「大体、その動物の種類で同じだったりするからそれはない」
「まあ、52ヘルツのクジラとかいるけど、そんなのレアケースだしな。基本的にはスピリットって割り切ってる」
「それに未確認生物と言っても大体スピリットだぁ!って知っている人達の結論に至ったし、みんなが思っているようなロマンは無いのよ〜」
「冷めてますね」
「まあ、20歳も過ぎれば冷めるわよ。いろいろと……まあ、茶番はこんなところで、これで大体ガブリエルのスピリット探知についてわかってくれたかな?」
エマの言葉にぎこちなく頷く3人と1匹
そして、翔が手を叩くと
「それで、その探知をもっと精密度を上げてわかったことがあったの」
「わかったことですか?」
彩火の言葉にサムズアップをするエマ
「それはね、ヘルツが乱雑に入り混じっている場所を見つけたのよ」
「そこに調査に行ってもらったら七色の渦のようなものを発見したの、これを私達は“ゲート”って名付けたの」
「そのゲートはどこに?」
「最近、六色市で発掘された小さな洞穴があるんだけど、そこに強い反応があったの」
「強い反応?それは強いスピリットがいるってことですか?」
「そうそう、虹海ちゃんの言うとおり!反応が強ければ強いほど、スピリットはその分強いわけ!」
「そして、ガブリエルのメンバーに調査メンバーに行ってもらった結果、ゲートが発見されたんだよね」
「そこにオラクルスピリットがいると……」
氷牙は納得したようにエマ達は頷く
「だ・か・ら、彩火ちゃんに行ってもらいと思ったんだよね」
「なるほど」
「もちろん私達も行くよ!」
エマの言葉に「私は別に大丈夫ですよ」と返答する
「よし、決まりだね!」
「あの〜」
彩火とエマの話に虹海が恐る恐る入ってきた
「私も行っていいですか?」
「俺も、俺も行きたい!」
手を挙げる2人に、エマはOKサインを出す。それに2人は喜んでいたが、彩火は複雑な心情をしていた
────
六色市の郊外にある最近、発掘されたという洞穴に訪れた彩火達
岩肌はむき出しており、あまり人の手が加えられてないことがわかる
端から見たら何も変哲もない洞窟だが、黒いスーツの数人が洞窟を警戒するように辺りを見渡した
そして洞穴の前に立つ黒いスーツの男性がエマに一礼する
「入っていい?」
エマの言葉にスーツの男は洞穴の方に案内する
入口は人一人入るくらいの大きさで、1人ずつ入れば大丈夫そうだ
「私から入るね」
エマを先頭に翔、彩火、虹海、氷牙、グロウの順番で洞穴に入っていく
「グロウ、後ろは任せたわよ!」
「任せてくれ!」
グロウはサムズアップをしたのを確認して、エマはスマホのライトを照らしながら足を進めていく。足場は悪くゴロゴロとした乾いた石に滑りそうになる。さらに人一人が入れるのがやっとなので、すぐに擦り傷が出来そうになる
彩火達はゆっくりと足を進めていると、広い空間に出た
真っ暗な空間で辺が見えづらいが、目の前にある七色の渦だけがハッキリと見えた
人が2人くらい横並びくらいあり、スピリットが出てきてもおかしくない大きさがあった
「これが言っていた奴ですか?」
彩火の言葉に翔は頷いた
「そうそう、この渦のこと“ゲート”から強力なスピリットが感知されてたからね」
「ってことは、オラクルスピリットがいるわけですね」
氷牙の言葉に翔は「多分ね……」と自信が無さそうに答えた
「多分?」
「うん。『あまり期待しないで!』って真氏さんが言ってたから」
「なるほど……」
「ここから先は通さないぜ!」
聞いたことのない勇ましい声が洞穴内に響き渡る
そして、岩陰から青い鮫が姿を表す。ヒレを使いうまく立っており貴族を思わせる服装に頭には王冠を被っていた。しかし、ジョーズやホオジロザメほど大きくは無く、グロウと同じサイズだ
持ちての所には錨のついた三叉の槍をトントンと地面に当て空間を響かせ重々しい音を響かせる
「なんだ貴様ら!」
「何だシャックじゃねぇか!」
氷牙の後ろにいたグロウがヒョイッと顔を見せた。シャックは目を丸くした
「えぇー!グロウ!生きてたのかぁ!」
グロウとシャックはお互い近づき赤い拳と青いヒレで握手をする
「良かったぜ!シャックも無事にこっちに来ていたんだな!」
「ああ、グロウも無事みたいだな」
「ってことはこいつ等はグロウが信頼が置けるやつなんだな!」
彩火からスカーレットに変わり
「この顔に見覚えがないようね」
「え、リユニオン!?髪色が違うから全然気付かなかった!」
「シャックくん?誰だかわかる?」
スカーレットの次に虹海が話しかけてきた。シャックは小首を傾げる
「おまえみたいな女は知らんな。シーラスの声に似ている気がするが」
「そうなんだ……なら、これなら気づくかな」
虹海は少し声を低くして、ブレザーのポケットから藍色のヘアバンドを取り出し、後ろ髪を纏めてポニーテールにする。そして、髪色から水色から紺青色に変わると腰に手を当てる
「え、シーラスかぁ?」
「そう。今は虹海さんの体を借りてる」
「ハッハッハッー!そうか、これもなんかの運命なんだな!」
「シャックはここで何をしているんだ?」
グロウの疑問にシャックは頷くと
「この渦はレクリスに繋がっていると予想して、帰れる方法を探っていたらお前らに会ったわけだ」
翔はシャックの言葉を整理して口を開く
「やっぱり、この渦はレクリスと深い関係がありそう……」
「予想ではあるが、この渦はレクリスと深く繋がっていると思うぞ」
「真氏さん……凄いなぁ」
見つけ出す方法を見つけた真氏に感心していると横から彩火達とは違う足音が2つ洞穴内を響き渡る
スカーレットは足音がした方に視線を向けると、金髪の膝下まである長髪にボーっとした紅葉色の瞳を持ち、空間とは似合わない汚れ一つない白いワンピースを身に包んだ長身のハーフぽい顔つきの女の子と、茶髪のショートの上から深く黒いキャップ帽を被り黄色いベタなパーカーにミニスカートを履いた隣のに比べて数cm身長が高い女の子が現れた
そして白いワンピースの女の子の胸には魔法使いの防止を被った黒い猫を抱いていた
その女子を見た敵と見定めた動物のようにスカーレットは鋭い視線を送る
キャップ帽を被った女子が一歩前に出て
「……すみません。そこの渦の調査に来たので、部外者には立ち去ってもらいたいのですが」
「ふーん、ここはガブリエルの管轄なんだけど、国の許可は取ったのかしら?」
エマの言葉に口を噤むキャップ帽の女子。そしてエマに続くようにスカーレットは口を開く
「それに、あなた達はストレーガのメンバーね。連合国軍の」
『え、そうなの!?』
スカーレットの言葉にキャップ帽を被った女子が一歩下がった
図星のようだ
「もう少しマシな嘘をつくべきだったわね。ここからわたくし達を追い出そうと画策してたみたいだけど、残念だったわね」
「いや……」
「『いや……』って何なのかしら?あなた達が来て追い出そうしたということは、ゲートにはレクリスやジャッジメントのことがわかると言っているようなものじゃない。何か反論はあるかしら?」
スカーレットは尋問のように問い詰めに2人は何も言えず沈黙していた
それを見たスカーレットはクスッと笑みを浮かべ
「従者の選択を間違えたわねフェルマ」
『フェルマ!?あの時に会った魔法使いの!!』
すると隣にいたキャップ帽を被った女子は黒猫を抱く女子に耳打ちをする
「どうしましょう……Ms.ジェン……フェルマ先輩……」
「落ち着きなさいファン」
ファンに言葉をかけた後、黒猫フェルマはジェンと言われた娘の胸から飛び降りると
「流石レイカラット王国、次期女王リユニオン・スカーレット。失礼な真似をして申し訳ないわ」
丁寧な口調で話していくフェルマ
「直接話すのは初めまして、ガブリエルの皆さん!わたくしの名前はフェルマ、数学者にして天文学者、そして魔法使いでもあります。金髪の彼女がインテリジェン・マンジャノ。わたくしのご主人となります。隣にいる茶髪の彼女がファンと申す者です」
「御託はいいわ。何をしに来たのよ」
長々とした自己紹介に飽き飽きとしていたスカーレットは本題を切り出させようとしていた
眉間にシワが寄っていたスカーレットが考えを理解したのかフェルマは口を開き
「失礼。話が長くなるのはわたくしの悪いところでね……しかし、我々も連合国軍の一員として簡単に我々の目的や知っている情報を話す訳にはいかない。それはあなたも知っているわよリユニオン・スカーレット」
「……ええ」
交渉や戦争は情報戦が重要。相手に知られない、知らない情報を持つことが情報戦の鉄則である
戦争が頻繁に起きていたレクリスで、情報戦がいかに大事かをスカーレットはよく知っていた
『スカーレット、どうするの……暴力沙汰は……』
出来るだけ穏便に解決させたい彩火
スカーレットは数秒間、目を閉じてどうするか考えると
「わかったわ。なら、バトスピのバトルに勝ったら話してもらうと言うのはどう?力ばかりの暴力での解決よりは数倍かマシだと思うのだけど」
スカーレットの提案に頷くフェルマ。これで交渉は成立
スカーレットはブレザーのポケットからデッキを取り出す
すると、隣で静かに聞いていたシャックが口を開いた
「ということは貴殿は俺様たちの敵っというわけだな!」
「まあ、そうなるわね」
フェルマの言葉にシャックはニヤリと笑みを浮かべ
「ハッハッハッー!面白い!リユニオン、ここは俺様とシーラスに任せくれ!」
「別に構わないけど……あなた達は契約出来てないわよ」
「え、嘘だろ!?」
「まあ、そうだな。それにバトスピのルールは知らない……」
シーラスは手のひらを見せて紋章が無いことをシャックに教える
「あ、本当だな。なら、再契約をしよう」
『え、ちょっと待って!』
スカーレットは彩火に変わり
「虹海の意見も聞いてよ!」
「私は構わないが、虹海さんがどうおもうか……」
群青いろの髪から水色の髪に変わり、ポニーテールにしていた後ろ髪を乱雑に解いた
サラサラと散る長い髪を払うように振るい、シャックの目線に合わせるようにしゃがみ込む
「いいよ。契約」
「虹海!!本当にいいの!!私のバトルを見てたでしょ!」
契約をしてほしくないと必死に説得する彩火
虹海は立ち上がり彩火の方に真っ直ぐと視線を向ける
「だからだよ!私は井亜鈴ちゃんの力になりたい!たとえ、どんなことをしても!」
「だけど……」
彩火は虹海の覚悟の言葉に口を閉ざしてしまった
『そっくりね、本当に……シーラスと、怖いくらい』
虹海は再びしゃがみ込むとシャックに左手の平を突き出した
「いいよ。契約をしよう」
「よし、来た!そうこねぇとな!」
シャックは虹海の左手を握る。虹海は一瞬表情を歪ませるがシャックはすぐに手を離した
手のひらには王冠の上に三叉が描かれた青い紋章が刻まれた
「よろしくな、女!俺様はシャック」
「女って呼び方はやめて、私は水浅葱虹海」
「なら、虹海、シーラス、よろしくな!」
「よろしく、シャックくん!」
虹海と彩火は厚い握手をかわした
傍から初めて契約するシーンを見ていた氷牙、エマ、翔
氷牙はふと口を開き
「……なんか絆って感じでいいな」
「そうだね〜」
契約完了するのを見届けたフェルマ達は
「では、バトルを始めましょう。こちらはファンがお相手します」
「私、虹海が始めにやります!」
「大丈夫なの虹海?」
「うん。シーラスに見て覚えてもらう」
2人はバトルに支障が無い距離に離れデッキを構える
「いくよ!「ゲートオープン!!界放!!」」
宣言と同時に眼の前は宇宙のような黒い空間に赤、白、紫、緑、黄、青色の星が辺りをキラリと光っていた
手のひらに描かれた紋章が光りだすと空間を突き破りそうな音と共に水柱が湧き上がる、虹海の頭上に雨雲が出来て服を貫くように鋭い雨粒が降り注ぐ
そして、女子高生制服から貴族が着るようなタキシードの風の水色騎士のような服装に藍色を基調とし、白いミニスカート、両肩にエポーレットがあしらわれたビロードマントを羽織り、姫騎士のような衣装へと変わった
虹海はそのまま斬り裂くように横に手を動かし、広げ宇宙のような空間を斬り裂いた
「これが私の衣装、結構かわいい感じなんだ……」
普段の私服はスカートを履かず、制服の時もタイツをスカート下に履いているため、女の子ぽい衣装に自身が少し違和感を感じていた
相手のファンは黄色い魔女のような服装となり、帽子の柄を掴んで虹海の準備を終えるのを待っていた
「さっそく始めましょうか」
「はい」
目の前に半透明のテーブルが現れる。虹海達はデッキを定位置に置いた
[ターン1]
『では、虹海さん。ご指導をよろしくお願い』
「はい、お任せください!まずは4枚引いてターンを進めます。進め方はスタートステップ、ドローステップ、メインステップです」
『4枚引く……。そしてスタートステップ、ドローステップ、メインステップっと……』
「では、スタートステップ、ドローステップで1枚引いて、メインステップでスピリットを出します」
『スピリットを出すと……』
淡々と説明をしながらターンを進める虹海
「青いコアで左上のコストと言われると数字までトラッシュに置いてスピリットを召喚してください。スピリットはコアが続く限り何枚でも召喚出来ます」
『……なるほど、コアの数までスピリットを召喚出来ると……』
「実際にやって見ましょう。えーと、コスト2のシャックを召喚!」
青いシンボルが現れ割れると、シャックが狭い所から解放されたように大きく背伸びをして
「よっしゃ、暴れるぜ!」
小さなヒレでシャドーボクシングをするシャック
「次にイノレーサーをミラージュセット!左上のバーストエリアにカードがセット出来ます」
ミラージュはバーストエリアに配置出来るカード。ネクサスと同じように発動タイミングが来るとカードの効果を使用できる
『なるほど……ミラージュ……』
説明になんとかついていくシーラス
「このターンで出来るのはここまでなのでターンエンドです。シーラスさんこれがバトルの大まかな流れです。ついてこれましたか?」
『な、なんとか……』
[ターン2]
「メインステップ、天使プリマを召喚!」
黄色いシンボルが割れてピンクの花の妖精、天使プリマが現れる
「天使プリマ……なるほど黄色のスピリットと言うわけだな」
「バーストをセット!……それから〜」
デッキを理解したようにスムーズにバトルを続けるファンに氷牙は思わず「なんで、そんなにスムーズなんだ……」と言葉を漏らした
ファンは氷牙の言葉に目線を上にして
「うーん。フェルマ先輩から連合国軍にはバトスピのルールを叩き込んでくれるからな〜」
『なるほど、そこの差か……』
ファンの言葉に納得したシーラス。そしてファンはそのままプリマを披露させてアタックする
プリマはピンク花のステッキをシャックに向けると黄色い光線を放つ
「ヤバイ……やる気がぁ〜」
BP4000→1000
BPが下がりやる気を失うシャック
『どうするんだ?』
「えーと、ライフで受ける」
虹海の目の前に現れたバリアをプリマは黄色い光線でライフ状のバリアを破壊した
「うぅッ!!!」
ライフ5→4
想像以上の激痛が全身に駆け巡った。虹海はしゃがみ込んで痛みを抑える
「虹海!?」
『虹海さん』
「だ、だいじょうぶ……あはは……かなり痛いね……」
心配する彩火に向けて笑顔を浮かべるが、肩を上下に動かし苦しそうに息をしており、ライフを残り3つも受けれる状態では無かった
もし、このバトルで虹海に何かがあったら
「すぐにバトルはやめて!私がやるから!虹海がこれ以上傷つくのは……」
「なおさらこのバトルは譲らない!井亜鈴ちゃんにこんな……痛みを受けさせるわけにいかない!」
虹海の言葉に彩火は何も返せなかった
『本当に大丈夫?キツかったらいつでも私に変わってくれ』
「はい……」
「私はこれでターンエンド!なんか大変そうだね〜」
[ターン3]
「よし!私のターン!このターンからコアステップと言って、ボイドからコアを1個増やせます」
『えっと……大丈夫?』
「え?全然大丈夫ですよ……」
元気な声を出してはいるが言葉の節々に息を切らして、さっきのダメージがまだ残っている
「コアステップ、ドローステップ、メインステップ……これ発動していいのかな……」
虹海はネクサスのカードを手にする
マーラサーミズ神海都市のカード。絵を見ただけで巨大な海底都市なのがわかる。虹海はネクサスを配置した瞬間にどうなるか分かっているので、躊躇してしまった
「やっぱ、やめとこ、ダフネルを召喚。召喚時効果でカウントを追加して……ボイドからコア1個シャックに置く」
カウント0→1
「俺様はいつでも行けるぞ!」
「うん。なら、アタックステップ!シャックでアタック!アタックステップに入ったらカードを横にしてアタックすることが出来る」
『なるほど……』
虹海の言葉にシャックは槍をファンに向けて突っ込んでいく
「アタック時効果で……カウント+2して2枚ドローする。その後2枚破棄するけど、系統蒼波?の効果持つ効果で1枚破棄!」
カウント1→3
「ん〜ライフで受ける!」
シャックはそのままライフのバリア状のバリアを破壊した
「うぅ……」
ライフ5→4
「痛いなぁ……」
ファンはホコリを払うように手を動かしており、全くライフの痛みを受けている感じは無かった
「どうするの、アタックする?」
「いえ、ターンエンドです」
[ターン4]
「よーし!私のターンだ!メインステップ!天使プリマを召喚!もう1体のプリマをレベルを上げて!さらに天戦艦ロードオブファンを……」
「待ちなさいファン!ネクサスを配置したら天井が崩れるわ」
フェルマの言う通り、基本大きなネクサスを配置した瞬間に洞穴が崩れるのは火を見るより明らかだ
フェルマの言葉にネクサス配置をするのやめて、エンジェルオラトリオをミラージュセットしてレベル2のプリマでアタックした
「エンジェルオラトリオの効果で1枚ドロー。プリマのアタック時効果でダフネルのBP−3000!」
ダフネルは光の光線を受けて、BPが0となり破壊された
「ッ……そのアタックはぁ……」
虹海はライフを受けようしたタイミングでさっきの痛みが頭に過った。今まで受けたことの無い壮絶な痛み
恐怖心が自身の腕を強く掴んだ
「そのアタックは……その……」
「どうしたのライフしか無いよ?」
回復状態のスピリットがいない虹海はライフで受けるしか選択肢がない。しかし、あの痛みを受けるのは嫌だ
虹海は数秒考え
「ライフ……で……受ける!」
虹海の覚悟に反応するようにバリアが現れライフで受けた
バリアが破壊されたと共に爆発が起き、辺りを包んだ
「ッ……確かに痛いが剣で斬られるよりかはマシか……」
ライフ4→3
虹海はうずくまることはなく、静かに佇んでいた
いや、虹海ではなくシーラスはヘアーバンドを使いポニーテールにして、煙を斬り裂くように縦に手を動かした
そこには白いミニスカートから青いロングパンツに変わり西洋の騎士の服装を纏うシーラスの姿があった
『シーラスさん!?』
「ここから先は私がお相手しよう」
「ふーん。ルールは大丈夫なの?」
「後はアドリブでどうにかなるだろう」
「なら、もう1体のプリマでアタック!アタック時は使わないよ」
『マジックを使えば』
「これか、ブルーコリジョン!」
コスト6以下のスピリットを破壊するブルーコリジョンを発動させて、アタックしているプリマを破壊した
「ぐぬぬ、ターンエンド」
[ターン5]
「よし、メインステップ。ストリームドロー。3枚ドローして、2枚破棄」
さらに蒼波を破棄したので疲労状態のプリマを破壊した
「ゴマフィー2体を召喚……えーと」
『バーストはミラージュの所にセット出来ます』
「そうか。バーストセット。アタックステップ、いくぞ、シャック!」
「おう!」
シャックは槍をファンに向けて構えた
『待ってください!バーストが気になります!』
虹海の言葉にシーラスの手は止まった
「確かに……下手な攻撃はよくないか……」
「ぐぬぬ……確かにそうだな」
シャックは構える槍を収める
アタックをするか戸惑うシーラス達にファンは頭の後ろで腕を組み
「なんだ。つまんないの。アタックしないとバトルに勝てないよ」
ファンの煽りにバーストを発動させたい気を感じていた。しかし、アタックしてライフを削らないとバトルには勝てない
「残りライフは4……ダフネルを召喚。召喚時効果でボイドからコア1個、スピリットに置く。アタックステップ!シャックで攻撃する」
「攻撃するんだな?」
「ああ」
「よっし!シーラス、貴様の意見に従おう!」
シャックは再び槍を構え、ファンに向けて突っ込んでいく
カウント5→7
「ふーん、ライフで受ける」
シャックはファンのバリアを破壊する
「痛ぃ!!」
ライフ4→3
これでファンのライフは残り3、シーラスはフルアタックをすればライフを削りきれる
しかし、ファンは「フッフッフッ」と笑い
「ライフ3以下なので、バースト発動!放て!相手スピリットのBPを−10000!」
『BP−10000……まずい!!』
「え?」
虹海の言葉にシーラスは反応した瞬間に、虹海の言葉が現実になった
バーストから放たれる巨大な光線。一瞬でシーラス達を巻き込み、全てを吹き飛ばした
「「「きゃぁー!!」」」」
「うぉー!!?」
「何だぁ!!?」
衝撃波は彩火達も巻き込み大きく吹き飛ばした
「ッ……」
シーラスも吹き飛ばされ、岩肌に背をぶつけ、その衝撃で岩が空から降ってきて、体を押さえつけた
「虹海!?」
彩火は痛みを堪えながらゆっくりと起き上がり、生き埋めになった岩の方へと向く
なんとか立ち上がろうとしているため意識はあるようだ
彩火は安心したのか胸をなでおろした
そして、天井の石が雨のようにボロボロと落ちる中、機械の体を持つ少女、砲天使カノンが降臨した
『やっぱり……砲天使カノン……』
「ッ……」
シーラスは痛みを堪えながら立ち上がる
立ち上がったシーラスの眼の前はシーラスと虹海が召喚したスピリットは1匹もおらず、立ちはだかるように砲天使カノンが立ちはだかっていた
「なるほどな……」
シーラスは地面に埋もれる青い魂のようなものに近づくと、優しく持ち上げ、砂埃を落とし、魂のようなものを足元に置いた
「ターンエンドだ」
「フッフッフッ!!これがキースピリットのカノンちゃんの力だよ!」
自慢気にピースするファンとは、反対にシーラスは口に入った砂を一緒に唾と吐いた
[ターン6]
「後、ライフ3か〜アエスタとプリマを召喚!このまま決めちゃうよ!」
「油断は大敵よ。警戒しなさい」
フェルマの言葉にファンは「フッフッフッ」と自慢気に笑い
「問題ないっすよ。先輩!」
完全に油断仕切っているファンに呆れた息をつき
「これはダメなパターンね……」
フェルマの呆れをよそにファンは楽しそうに手のひらをシーラスに向ける
「よーし、いくぞー!砲天使カノン、うてぇぇぇぇ!!」
カノンは両手に持つ砲身をシーラスに向けて水色の光線を放った
「ライフで受ける……」
光線はそのままシーラスのバリアごと、シーラスを再び吹き飛ばした
「くっ……」
ライフ3→2
膝をつくシーラス。落ちてきた小石を振るいながら、ゆっくりと立ち上がり
「いたぁ……この衣装じゃなかったら死んでいた……」
「じゃあ次は……」
「それはどうかしら?」
シーラスから虹海の人格に変わり、ロングパンツの砂埃を払うと、白いミニスカートへと変わった。ロングパンツから白いミニスカートに変わったことで、白い肌には擦り傷があちこち目立っていた
痛みは感じていたが、虹海は手を大きく突き出し
「バースト発動!」
地面が液状化すると青い竜の首が2本出てきて、プリマとアエスタを喰らった
その後、液状化した地面から青い三ツ首の竜、ウェイ=ヴァーグが姿を現した
「バースト召喚!神海竜ウェイ=ヴァーグ!」
洞穴の天井を突き破りそうな大きさをもつウェイ=ヴァーグ。洞穴が悲鳴を上げるようにひびが入りだし、グラグラと揺れ始めた。ここに長居をしていると倒壊に巻き込まれているのは確実だった
「早く決めないとマズい!」
「ッ……ターンエンド!」
[ターン7]
虹海から再びシーラスの人格に戻りターンを始める
「このターンで決めないと、ドローステップ。……このカードは!」
シーラスは引いたカードを見て固まる。しかし、手のひらの紋章と青い魂のようなものが反応し、そのカードを使えと訴えるような気がした
「シャック、再び行くぞ!メインステップ!」
ステップを宣言した瞬間、手のひらを紋章が強く光りだした
「荒々とした波の如く、我が主に力を示せ!相棒鮫シャックよ、本来の力を解き放て!神海皇子ガブル・シャックを契約煌臨!」
足元の青い魂が光に天に召されるように浮き上がると、どことなく湧き上がった水が魂を包み、魂が巨大な鮫の形となり集まっていた水を弾き飛ばすした
そこから現れたのは白い鎧を身に纏ったシャック、ガブル・シャックの姿であった
弾けた水が雨のように降り注いだ泥濘んだ地面に降り立った
「フン!この姿も久しいな!」
「では、その力を我が主の前で再び振るってもらう!やれ、シャック!」
カウント7→9
ガブル・シャックが槍を地面に叩きつけるとカノンの足元から水柱が起き、カノンを飲み込んだ
「何!?」
「悪いが、この姿で前に立っていたスピリットはいない!」
「ッ……フラッシュタイミング!リジェクションフェザー!」
するとシャックはファンが持つリジェクションフェザーを巨大な槍で撃ち抜いた
「ッ……なんで!?」
「俺様の前で非力な魔法を使えると思うな!」
カウンターの2につき手札のカードのコストを上げる効果を使い、ファンのマジックを防ぐ
そしてシャックは投げた槍を引き抜き、ファンのライフに向けて槍を振り上げて、ライフ状のバリア2つを砕いた
「うぅ……!!」
ライフ3→1
「やれ、ウェイ=ヴァーグ!」
ウェイ=ヴァーグは巨大な首を動かし最後のライフを噛み砕いた
「そんなぁー!!」
ライフ1→0
ファンは大きく吹き飛ばされ、洞穴の壁に頭を強くぶつけた
「痛ぁ……」
シーラスの衣装が変わり元に戻り、スピリット達も消えていった
すると、支えがいなくなった洞穴は一気に揺れはじめて、洞穴の崩壊が始まった
「あっ、マズい!」
「チッ……」
エマを横目にフェルマは魔女の姿になると、フィンガースナップをしてブルースとリオンの時と同じように動けないファン半透明の泡に閉じ込め、手に収まるまで小さくなりフェルマの手の中に収まった
「では、スカーレット。また無事であればお会いしましょう!」
と言って再びフィンガースナップをすると、マジックのようにジェンとフェルマは消え、彩火達は唖然としていた
しかし、唖然している間にも洞穴の倒壊は待ってくれない
彩火達も逃げようとするが、フェルマのようなマジックは使えない、出口から10メートルもないくらいだが、こんな揺れている状況で出口まで走れるわけが無い
彩火達はその場でしゃがみ込み手で頭を防ぐしか無かった
辺から溢れる世界滅亡のような悲鳴
──どうしてこうなるの……
彩火は辞世の句を読んでいると、時が止まったようにピタリと石が降るのが治まった
彩火達はゆっくりと顔を上げる
落ちてくる石が宙で止まり、この世にはないような神秘的な空間となった洞穴。彩火は感動を覚えた
すると、彩火の右の手の甲に描かれた紋章が強く光りだした。どうして強く光りだしたのかなんとなくわかった
引き寄せられるようににゲートに手を伸ばした瞬間にゲートからカードが現れる。そして、カードはスピリットの形を作っていき、赤いマントのようなものをつけた白い竜となった
貧相な見た目をしているが、普通のスピリットとは違うことは彩火達にもわかった
「このスピリットは……」
『オラクル二十一柱 Iザ・マジシャン』
ザ・マジシャンはトカゲのようなギョロッとした目で彩火の右手に描かれた紋章に目を移す
「灼竜の紋章……貴殿だな。我を呼び出したのは」
ザ・マジシャンは先端に宝石が付いた杖を彩火に向ける
彩火は静かに頷くと
「……世にも珍しいものだ。貴殿の体には2つの魂があるのだな」
「え、スカーレットのこと?」
「そうだ。レイカラットの代々と続く名前だ」
「我が一族を知っているのですか?」
彩火はスカーレットと人格が変わり、普段のお嬢様口調ではなく、丁寧口調で食いつくように質問した
ザ・マジシャンは頷くと
「そうだな。エリュトロンとはよく神殿で話していたからな」
『エリュトロン?』
「スカーレット家36代目皇帝、エリュトロン・スカーレット。わたくしのお祖父様よ」
「そうか、貴殿はエリュトロンが話していた孫娘か」
「わたくしを知っていただき光栄です。リユニオン・スカーレットと申します」
スカーレットは短い制服のスカートでカーテシーを行う
「リユニオン……名前を覚えておこう」
すると、エマが一歩前に出て
「ちょっと質問があるけど、いいかな?」
「あなたはいつものようにズカズカと……」
「いいだろう。質問しろ」
ザ・マジシャンはスカーレットの恨み節を無視してエマに質問権を与える
エマいつものように、お茶桁感じで話を続ける
「じゃあ、1つ目。ジャッジメントの世界滅亡について知っているかしら?」
エマの言葉に大きなため息をつくザ・マジシャン
「ジャッジメントか……またあいつは……」
「またあいつ?」
「……そうだな。ジャッジメントの話をするなら過去の話をするとしよう。途方もない昔話を……」