そういう書き方に変更した理由としては、三人称だけじゃ書きづらいって言うのもあるのですが……話の都合上一人称視点も入れないといけない場面があるということが後々判明したからです。後は試してみたいと言う気持ちもあったのですが……
評判が良ければEngage Linkもこの書き方にしようかなと思います
視点切り替えの記号
─ 場面切り替え
☆ 一人称から三人称の切り替え
★ 三人称から一人称の切り替え
こんな感じです。今のところなんで、ちょこちょこ変わると思います
そういったご理解をして読んでもらえると幸いです
路地裏でひっそりと営業をしているゲームセンター。全く人がいない中、柳色の長い前髪を緑色のヘアピンで束ねて、赤い瞳を持つ少年は格闘ゲームの筐体のコントロールを無心に動かしていた
数分間、NPCの対戦キャラクターと互角に戦っていたが、ついに少年が動かしているキャラクターの体力が0になる。少年は舌打ちをして、ジャラジャラと金色のネックレスを音を響かせながら立ち上がった
「……ふざけやがって」
少年は虹宝の藍色のブレザーのポケットに手を突っ込み前屈みで筐体を離れ、店の外に出てた
すると太陽の光を背にして4人の少女が立ち尽くしていた
日頃、人通りの基本ない路地裏とって珍しい少女4人がいる光景に少年は思わず
「あ?」
と誰も喋っていない路地裏に荒々しい返事をかえした
☆
「トアって言います。よろしく!」
ハキハキと明るいトアがペコリと頭を下げて挨拶をした
エマに聞いた所、偉い人の推薦で入ったらしい
わたくしは歓迎するように手を叩いて拍手をした。虹海達もつられるように拍手を始める
本当に温かい空間にトアも照れくさそうな表情を浮かべていた
「歓迎するわ。レクリスの者なら尚更よ!」
「まさか、リユ・ニオン・スカーレットさんが居るとは思わなかった!」
「フルネームはやめて、堅苦しいのは嫌いだから」
「わかった!」
『軽!?』
「なら、スカーレットさんで!よろしく!」
「ええ、よろしく頼むわ」
わたくしとトアは厚い握手をかわした
『それにしても、四位さん以外いないんだね』
確かにいつも居るエマや真氏は基地の中で見当たらなかった
翔が「あ~」と目線を上にすると
「エマさんは大学のレポートの提出をするために今日はいなくて、荻野さんは過労で強制休暇だから。それに他の人も忙しいから滅多に来ないし」
真氏、無理していたのね……
てか、エマや真氏以外にも居るのね
「だから、今日はほぼ活動は休みかな」
「なんだ〜入ったからには頑張ろうとやる気に満ち溢れていたんだけど」
「その気合いはいいとおもうぜ!」
「本当!!この調子で頑張るよ!そういや、みんなの名前を聞いてなかったね。翔は聞いたけど」
「なら、彩火に変わろうかしら」
わたくしは強制的に変わり、彩火の人格を表に出させた
「あれ、スカーレットさん髪色変わった?」
「あはは……本来の人格はこっちなんだけど……私は井亜鈴 彩火」
「オレはグロウ!」
「私は水浅葱 虹海と、私も人格が2つ合って、もう1人がシーラス・アルバストゥルさんと言います」
「俺様はシャックだ!」
「鷺城 氷牙だ。よろしく」
「よろしくね!みんな!」
私達との自己紹介が終わった。なんだかうまくやっていけそう
しかし、会ってからずっと気になることがあった
「そういや。その格好目立たない?」
私の言葉にみんなが「あ~」と納得する
レクリスから来たって聞いたから変わった格好には納得はしたけど、この世界のことを考えるとかなり目立つ
『なら、服屋に行った方が良さそうね』
「そうだね。四位さん、どうせ今日ガブリエルが機能しないならみんなで服屋に行きません?トアさんの衣装目立つし」
「賛成!!」
「私も行くよ!」
「何、それ!面白そう!」
空間が和気あいあいとしてきた
一回、ガブリエルの人達と買い物に行ってみたかったんだよね
「俺はパス」
「何だよ氷牙?買い物に行かないのか?」
「女子の買い物は男子には苦痛だからな」
「モテないよ」
「うるせぇ!」
「あ~これは一生独身だな!」
「失礼過ぎるだろ!!」
氷牙のツッコミが響きながら私達は基地を後にした
─────────────────────────────────
そして基地から歩いて30分くらいの場所にある都会でもかなり大きさ誇るデパート
金曜日なのもあって仕事終わりの社会人や学校帰りの学生が多く見られた
『彩火……ここは……』
「デパートだよ」
『でぱ……と?』
この反応だと、レクリスにはデパートみたいな大型ショッピングモールは無いのか……
「そっか、スカーレットはデパートに来るのは初めてなのね。なら、デパートに早速入ろうか」
『え、うん……』
戸惑うスカーレットを余所に私達はデパートの店内に入った
「私もデパート来るの、かなり久々かも」
「そうなんだ」
「四位さんはよく来るんですか?」
「妹ととね」
「妹がいるんですね!」
「うん。10歳のね。2人は姉妹とか居るの?」
「私は歳離れた弟が」
「私はひとりっ子です」
「そうなんだ。なんか女子会みたいで楽しいね!」
やっぱりこういう話は楽しいな
エスカレーターで3階くらい上がり、とあるお店に入る
店内は照明で明るく照らしており、いろいろな服とスボンが棚や机に並べられていている某有名なアパレルショップ
店内はいろんな年齢の女性で賑わっていた
『城にこんな施設が……』
「城じゃなくて、デパートね。早速トアさんに似合う服を選んで行こう!」
そんな訳でトアさんに似合う服を選んでいく
「さあさあ、入った入った!」
「え、ちょ!」
カーテンが掛かった更衣室にトアさんを押し込んで
「私達が服を選ぶから着替えてみて」
「え、うん……」
そんな訳で私は制服の裾を上げて気合を入れるとトアさんに似合いそうな服を選んでいく
これでいいかな
「トアさん。着替えてみて!」
私はカーテンの隙間から服を入れる
そして数分後、カーテンが開いた
「まずは私が選んだ服!」
自慢気に胸を張る。これは自信あるよ!
「トアさんは、私と同じで白髪だから、白い長袖のTシャツにレモンイエローのブラウスと下は黒いスカーレットにしてみました!」
『正確には彩火の髪色は銀だけどね』
スカーレットのツッコミはさておき
私の選んだ服。みんなは「ん~~」とあまり印象がよく無さそう……
「なんか、彩火ちゃん感あるよね」
「井亜鈴ちゃんがよくブラウスが来てるからな〜」
確かに私はよく水色のブラウスを着てるけど!
「なら、トアさんはどう?私が選んだ服は?」
「え、うん……」
『彩火、トアが引いているじゃない』
「そっか、ごめん」
思わず怒りで強めに言ったかもしれない……
「いいよ。あたしは他のも着てみたいな」
「よーし、なら、次は私の服はどうですか?」
次は虹海がトアさんに服を渡して、カーテンを閉めた。そして数分経ち、カーテンが開いた
「私が選んだファッションはこれ!黒いクロップドシャツにデニムのパンツを合わせた動きやすいファッションと動きやすい服に上着もデニムジャケットにして元気さを表しました!トアさんは動きやすい服装の方が合うと思って、こんな感じになりました!」
確かにかなりスポーティだ
「ん~、別にいいとは思うけど、春の腹出しクロップドシャツは寒いんじゃ……デニムジャケットだけじゃ防寒として心もとなさそう。後はトアさんは可愛いから虹海みたいなイケメン女子スポーティはあまり似合わない気がする」
『彩火……ボロクソじゃない……』
「うーん。私は嫌いじゃ無いけど……春先にこの格好はまだ寒いかな」
「そっか……なら、この服は私が買います」
じゃあ最後は四位さんだね
四位さんはトアさんに服を渡してカーテンを閉めた。数分経ち、カーテンが開く
「私はシンプルに黒い長袖の上に白いパーカージャケット、黒いミディスカーレット何だけど。元々着ていた服がそっくりだから似合うかなって思ったんだけど」
確かに元々着ていた服にそっくりかも……
「うん。いいと思う」
「確かにとても似合っていると思います!」
「うん。あたしもこの服はしっくりくる気がする」
トアさんも気に入ったみたいだし、良かった!
「じゃあ、次はスカーレットが服を選びなよ」
『え、わたくしは彩火の選んだ服を着れば……』
「せっかく来たんだし、ショッピングを楽しみなよ」
私は……わたくしは強制的に人格を変えられ表に出させた
「まあ……そうするわ」
とは言っても……レイカラットには無い服ばっか……何を着ればいいのよ
とりあえず、試着してみましょうかね
わたくしは気になった服をひたすら手に取り試着を繰り返した
「虹海、こういうのどうかしら?」
「似合っていますよ」
「そう?なら、こういった服も合いそうね」
それから数10分、試着をくりかえして
「これにしようかしら」
わたくしは謎の機械が置かれている横に立つ店員に選んだ服を渡す
「はい、お預かりしますね」
ピッピッピッと電子音が鳴り響き
「はい、合計で27,800です」
お金はほぼレイカラット基準と同じだったから……確か、彩火の3枚の紙幣で払えるはず
『ちょっと、待って!』
「はい」
わたくしは彩火の財布から紙幣を3枚を取り出し、あまりの硬貨と紙幣を貰い、買ったものを受け取った
「ありがとうございます」
「ええ、ありがとね」
わたくし達は買い物を終え、お店を出ようとしたタイミングで『ちょっと待ったぁー!』と彩火の怒気を含んだ声が聞こえた。もちろんわたくしだけ
『何してくれてるの!!この間、お金入ったばっかなのに!!』
「あっ、」
確かに彩火のお金なのにで無断で使ってしまったわ……
「……ごめんなさい。思わずその場の空気感で買ってしまったわ……」
『なんか弱々しく言われると何も言い返せないじゃない……いいよ。別に!』
優しいわね彩火
『……やっぱり、お姫様だな』
「……何か言ったかしら?」
『何でも無いわよ』
あっ、そう……
彩火に許してもらいでぱーとを後にする
トアもさっき翔に選んで貰った服に着替えて、ガブリエルの基地に戻りながらトアに六色市を紹介していた。ついでにわたくしも関心を持ちながら聞いている
「このコンビニを曲った所に美味しいうどん屋があるんだよ。さらにそこから数メートル先に安いスーパーがあるんだよ」
「へぇ〜翔は詳しいのね」
「まあ、この辺りに住んでるからね。すぐそこにある路地裏を通ったらラボまで近道なんだよ」
翔が足を止めて指を差した、差した場所は人通りの全く無い閑散とした路地裏だった。こんな所は襲われそうだから極力行きたく無いのだけど……
「早く戻って暇している鷺城くんに構わないとね」
「どうかしらね、氷牙のことだから、何かしらで暇つぶししてそうだけど」
あの子はかなりドライな感じがするわ
すると、閑散としている路地裏から前屈みで、この世界のお茶のような緑色の髪に長い前髪を緑色のヘアピンで束ね、赤い瞳を持ち、服装は彩火達の通う虹宝の制服を着崩して黒いインナーが見えて、こちらを気だるそうに見つめていた。首には金色のジャラジャラとしたネックレスが見えて……いかにも見てくれが悪い
輪郭もスタイルもいいのになんか勿体ない……
わたくし達は誰も喋っていない空間に
「あ?」
と少年は返事をした
この感じだとかなり荒れているわね
てか……わたくしの従者の1人、ヴェルデ・クローズによく似ているわね
「こんな所で何をしているの?」
「うるせぇ……てか、うちの学校のやつかよ……」
「えーと……」
虹海が何か思い出すように小首を傾げていると、背中から明確な殺意を感じ後ろを振り返る
振り返った先には帽子を深く被り、殴りかかる巨体が見えた
わたくしは反射神経で男の懐に潜り込むと腹部に膝蹴りをした
「グハァッ!?」
大丈夫よ。急所は外している
男はそのまま倒れ込み、腹を抑えて悶絶する
すると路地裏の長身の難い男達が路地裏を囲う
どうやら、罠にハメられたみたいね……
「ッ……面倒くさ……」
「なんだよこいつら……」
あの子も驚いてる……てことは、無関係……なら、早くあの子から逃さないと……
「翔、トア、あの子を守って!」
「うん」
「了解よ」
2人はヴェルデ似の青年を守るように男達から離れた場所に移動する
後は……
「シーラス!!」
私の呼びかけに虹海が髪をポニーテールにして、髪色が変わった
「私はいつでも……」
「全員倒さなくていいわ。逃げ道を作るだけで!」
「なら、基地が近い後ろの人から殲滅がいいかと」
「ええ、そうね」
私は後ろを振り返るとトア達を飛び越えて頭に回し蹴りをする
「グファッ!」
悪いけど少しの間、気絶してもらうわ
「次は後ろ!」
後ろから襲いかかって来た者に対して肘打ちで腹部辺りを押し込んだ
制服に唾液がかかるけど気にしている暇はないわ!
『スカーレット……パンツが……』
「別にいいでしょ!フリル付きのかわいい水色の下着くらい見えたっていいじゃない!」
『それを口に出して言うな!!!』
「よかった……虹海さんはスパッツを履いてて……」
「そういう所をデリカシーの無いところ治した方がいいわよ。シーラス」
と、喋りながら余裕のあるように倒しているけど、彩火の体もあって……疲れてきたわね
それにしても翔達を狙わない辺り、わたくしに用があるようね……
「オレも協力するぜ!」
「頼もしいわ」
「ガッハッハ!俺様も加勢する!」
「殺さない程度で頼む!」
わたくしとシーラスが背負うカバンからグロウとシャックが飛び出し、同時に殴りかかった
これなら早く突破口を開けそうね
だけど、早々うまくはいかないものね……
少し余裕が出てきたタイミングで白い翼で払うことでグロウとシャックを吹き飛ばした
「うわぁー!」
「なんだと!?」
白い翼を持つ生物。わたくしには見覚えしか無かった
グロウは起き上がると
「テラード……テメェ〜」
相棒翼竜テラード……ウーラノス・スカイルージュ契約スピリットだ
なら、この人達はグラムバルトの兵達ね……
「吾輩達の邪魔をするなグロウ」
「邪魔するぜ!リユは誰にも殺させねぇ!!」
「なら、掛かってくるがよい!」
とりあえずテラードはグロウ達に任せられそうね……
にしても……気絶させても気絶させても湧いてくる……そうだ……シーラスに忠告しないと……
「シーラス!人はあまり傷つけないで!この人達は憑依されているだけだから」
インテリジェン・マンジャノの言葉通りならこの人達も連合国軍の兵に憑依されているだけ……なら、極力傷つけたくない
その気持ちがシーラスに伝わったのか
「わ、わかりました」
と声がした。表情は見えないが、理解はしてくれたみたいだ
それにしても……多い……流石に疲れてきた……
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「姫だいじょ……ゴホッゴホッゴホッ!」
「シーラス!?」
『虹海は体が弱いから……』
「……なるほど……体の、限界がぁ!来たわけね」
とは言ってもわたくしも体力的に限界が近づいてきた。流石に彩火の体じゃ……長時間は……戦えないわね
「ッ……この!」
力いっぱい回し蹴り蹴りをして3人くらい吹き飛ばした
流石に……キツイ……しゃがみ込んでしまい……これ以上は……もう動けない……
「ハァハァハァハァハァハァ……」
「息が上がっているようだな。リユ・ニオン・スカーレット」
この腹立たしい上から目線の話し方……嫌でもわかってしまった
わたくしは視線を上にすると、白髪のジジイ……いや、今は体に憑依をしているから、サラサラとした赤の長髪に赤茶色の軍帽を被った赤錆色の瞳を持つ長身の青年……グラムバルト最高司令官、ウーラノス・スカイルージュの姿があった
「……老人が若い子の体を借りて街を歩いているのはどうかと思うわよ?」
「フン、相変わらず口が達者だな青二才」
あ〜あ、ウーラノスのこういう所が苦手なのよね……堅苦しい感じが……
「止まれ!」
ウーラノスの一言に組み合っていた兵達が一斉に行動を止めた
グラムバルトの徹底された統率力。一周回って恐怖すら感じる
そのまま海を割ったような規律正しく並び、ウーラノスは兵と兵の間をゆっくりと歩きわたくしに近づいて来る。感情をうまく隠していてどんな行動をするのかわからない
「姫に……クッ……」
助けを借りたいけど……シーラスはグラムバルトの兵に取り押さえられて身動きが取れない、翔達のところも目を付けられていてまともに動けそうに無いし、グロウ達もテラードと交戦中だから、助けを借りれなさそうね
わたくしも体力の限界で立ち上がることが出来ない……
「ッ……」
くっ……首を絞め……ッ……苦しい……
「お前の体ならこのまま息の根を止めるんだがな」
わたくし……何度も……蹴っても……ビクッ……だめ……いきが……もう……
「その手を離せ!」
「ッ……」
「グッ……」
痛い……
「ハァハァハァハァハァハァ……」
解放されたの!?息が吸える!?落ち着け!!落ち着け!!まずは状況の……
『私に変わって!!』
「ハァハァハァハァハァハァ……え、ええ……後は任せるわ……」
私は、過呼吸気味のスカーレットから人格を変わった
人格が変われば、過呼吸は治るみたい……
てか、スカーレットを助けた砂埃を被ったあのワンちゃんはどこの犬なんだろう?
てか、今、喋らなかった?
「クッ……貴様ぁ!?」
噛まれた場所を抑え、ウーラノスさんはワンちゃんに向けて怒鳴った
ワンちゃんも完全に戦闘態勢だ
『その声は……ランポ……』
「え、ランポ?」
『ヴェルデ……ヴェルデ・クローズ……わたくしの……従者の契約……スピリット……よ……』
ゼエゼエと吐息を吐きながら説明してくれるスカーレット
とりあえず仲間ならいいんだけど……
「クソ……」
「やるのか!!」
「いや、下手な勝負はしない。今回はリユ・ニオン・スカーレットを殺しに来たわけじゃない」
『……え?』
「よく、こんな状態で言えましたね!」
完全に襲いかかってきたし……それに明確な殺意を持って首を絞めてきたのは精神世界にいてもわかった
「フン。こいつ等は勝手に付いてきた雑兵でしかない。私の指示で殺しに来るならあのタイミングで兵を止めたりはしない」
確かに……
「貴様を呼び出すためにリユ・ニオン・スカーレットは邪魔だった」
「……てことは、私に用があって」
「井亜鈴彩火を出せ!と言っても素直に応じないだろ」
『当たり……前よ……』
「で、要件は?」
「待って、彩火さん。何を考えているかわからないのに気安く話をき……」
「お前は黙ってろ!」
シーラスさんがさらに強く抑えられる
「わかりました。話を聞きます。だから、シーラスの体を緩めてください、それとグロウとの戦いやめさせて、兵を引いてください。話はそれからです!」
シーラスの体は虹海の体だから……また持病が再発したら……
「いいだろう」
ウーラノスさんは手を上げると、シーラスさんから抑えられた手が離れ、兵は倒れた兵を担いで私の目線から消えていった
路地裏に残ったのは私達と、虹宝の緑髪の人と、ウーラノスさん、テラードのみとなった
「これでいいか?」
「はい。ありがとうございます」
「では、単刀直入に言う。井亜鈴彩火、君とこれで勝負をしたい」
ウーラノスさんは学ランからバトスピのデッキを取り出した。てか、バトスピをしたいの?
「貴様の実力を試したい」
「わかりました」
「ただ、完全有利な状態で兵を引いたんだ。こちらも条件を提示させてもらう」
「条件ですか?」
私もわがままは聞いたし、無理ない程度なら
「それは、スカーレットと入れ替わらず貴様のみでバトルをしたい」
そんなことでいいの?
私は『バトルする!』と四位さんにアイコンタクトで伝える……伝わるかわからないけど……
すると、四位さんはわかってくれたのか頷いてトアさんの手を引っ張って一緒に基地の方に走っていった
「別にいいですよ」
「助かる」
「行くよグロウ!」
「おう!」
グロウは返事を返すとカードとなって私の手元まで飛んできた。私はそのままグロウをデッキの中に入れる
「グロウが紙になった!」
ランポはこれを見るのは初めてなんだ
「フン、テラード!」
テラードもグロウと同じようにカードになったウーラノスさんのデッキに入っていった
初めての契約者同士のバトル……不安や恐怖もあるけど、どこかワクワクしている自分がいる
「では、行くぞ!「ゲートオープン!!界放!!」」
包帯でぐるぐる巻にした右手の紋章が強く光だし、私達を包んだ
*
彩火達の宣言と同時に眼の前は宇宙のような黒い空間に赤、白、紫、緑、黄、青色の星が辺りをキラリと光っていた
右手に巻き付けた包帯が解けて、赤々と輝く紋章が露わになる
紋章がある右手を前に突き出すと、炎を巻き付かせるように回転する。
巻き付いた炎は制服を燃やしつつ、同時に膝丈までしかない動きやすい蒼いドレス衣装へと変えていく。茶色のローファーは焼き尽くされ蒼いチャンキーヒールと変わる
最後に頭の上で放物線を指で描くと銀色のティアラとなり頭に付ける
彩火はバク転をして空間を吹き飛ばした
「なんだ……どうなっているんだ……」
緑髪の青年は戸惑った声を出した
彩火と同時期に光の球体から真朱色のタキシード風の軍服の胸には自慢するように勲章が付いており、左肩から腰にかけて唐紅色のサッシュがたすき掛けされていた
『グラムバルトの軍服まんまね……』
「では、私から先行を貰うぞ」
「はい」
ウーラノスの先行でバトルが始まる
[ターン1]
「私のターンだ。まずは相棒翼竜テラード!前へ!」
赤いシンボルが割れてウーラノスの前にテラードが現れる
「効果でトラッシュのコアを1つ回収する!さらにトラッシュのコアが置かれた時にカウントを追加する」
カウント0→1
「コアを回収するって……かなりやばいかも……」
「私はこれでターン終了」
[ターン2]
「行くよ!グロウを召喚!バーストセットして、グロウ!テラードを路地裏から追い出すよ!」
スピリットが路地裏で暴れた瞬間に路地裏に構えている店に被害が出るのは火を見るより明らかだった
グロウは「おう!」と返事してアタックを仕掛けた
カウント0→2
BP3000→7000
グロウは勢いよく殴りテラードを吹き飛ばして路地裏から追い出した
「ぐわぁ!?」
「よし、これなら路地裏の被害を最小限に抑えられる!」
「フン、なるほど」
テラードは頭を抑えながら起き上がり、グロウは一仕事を終えたように肩の力を抜く
辺は見たこと無い生物が急に現れたため通行人はざわざわと集まりだした
さっきまで閑散としていた路地裏とは思えないくらい一気に騒がしくなってきた
ウーラノスは呆れながら肩を竦め、テラードに近づくように路地裏を後にする。彩火も後に続くように路地裏出て、通行人の注目をさらに集めた
「ライフで受けよう」
そのままグロウの再び力を入れ直してウーラノスのライフ状のバリアを破壊した
「……」
ライフ5→4
痛みを感じてないのか全く表情を変えずに佇んていた
「……痛くないの?」
「この程度、どうってことは無い」
「マジか……私はターンエンド」
[ターン3]
「私のターンだな。私はバランロッド滑走路を再建する!」
発動と同時にコンクリートに滑走路が描かれる
「バランロッド……」
『グラムバルトの基地よ』
「次に空挺鳥ジェホロールを出撃。アタックステップ。アタックステップ開始時にバランロッドの効果でトラッシュのコアをジェホロールに、レベル2に上昇」
カウント1→2
BP3000→4000
「ジェホロールでアタック!アタックした時、トラッシュのコアを回収してレベル2に上げる。さらに1枚引く」
カウント2→3
青い始祖鳥がグロウに向けてドタバタと突進していく。グロウはカウンターでジェホロールを殴り飛ばした
グロウのBPはOC込で7000。4000のジェホロールが破壊されるのは誰が見てもわかった
「何で、わざわざ、破壊されに……」
「戦争は時に大儀なる犠牲が必要だ。テラードで攻撃!効果でコアを回収」
カウント3→4
BP2000→6000
「ライフで受ける!」
テラードは羽を刃のように鋭くして彩火のライフを砕いた
「痛ぁ……」
ライフ5→4
数回バトルをしてきて、痛みに慣れてきた彩火だが、痛いものは痛い
「私はターンエンドだ」
[ターン4]
『しかし、厄介ね』
「え?」
『気づいていないの?使ったカードのコアを全部回収したのだから、事実上ノーコストよ』
「確かに!」
『流石、生きる戦神と言われるウーラノスね……隙が全く無い……』
「どうした、ターンを進めないのか?」
煽りとも取れるウーラノスの言葉に彩火は頷きターンを始める
「ドローステップ!」
彩火は引いたカードを見てピタッと止まった
「なら、ロケッドラを召喚!」
ロケットを背負った小さな竜が現れた
「さらに、オラクルマジック!オラクルⅠオーバーマジシャンをミラージュセット!」
「ほぉ~それがオラクルマジックか」
「さらに紅きオベリスクを配置!」
滑走路を突き破り紅きオベリスクが配置される
「この力、見せてもらうよ!アタックステップ!アタック時効果でオーバーマジシャンのミラージュ効果を発揮!カウント+1!」
カウント2→3
「そしてグロウでアタック!アタック時効果発揮!1枚ドロー!」
カウント3→5
「そのアタックはライフで受けよう」
グロウは炎を纏った拳でウーラノスのライフを破壊した
「ッ……」
ライフ4→3
「ターンエンド」
[ターン5]
「なるほど、なら私も戦術を変えないとな。バーストセット。さらにリバーサルフレイムをミラージュセット」
「……次はミラージュ……」
「そしてリバーサルフレイムのミラージュ効果を発揮、コア2個をコストに7000以下のスピリットを破壊する」
空から赤いレーザーが降り注ぎ、周りの建物に当たりながらグロウを撃ち抜く
「ぐわぁ!?」
「グロウ!」
グロウは赤い魂状態となり、その場に留まる
周りにいた観客から悲鳴が上がり逃げ惑い、さらに騒がしい空間となった
彩火達は戸惑うように辺りを見渡すが、ウーラノスは表情を一切変えずにターンを進める
「次にトムキャット・ドラゴンを出撃させる。召喚時効果でトラッシュのコアを1つ回収する」
カウント4→5
「え、あ……召喚時かぁ。召喚時なら……召喚時発動後にバースト発動!ドレッドノーズの効果で、テラードとトムキャット・ドラゴンを破壊!」
「なるほど……」
滑走路を突き破り2本の火柱が上がるとテラードとトムキャットを破壊した
「ぬわぁ〜!!」
しかしウーラノスは自分の相棒スピリットが破壊されても表情を1つも変えない。まるで仲間が死んでもなんとも思っていないような
そんな違和感に感じた彩火は
「……何でテラードが破壊されてもそんな澄んだ表情をしているんですか……」
「フン、いちいち死を悲しんでいたら戦場では生きていけない。貴様といい、リユ・ニオン・スカーレット達は甘すぎる……人を極力殺さない考え方は」
『相変わらずね。死人に口なしな性格なところ』
ウーラノスの言葉にスカーレットは黙り込んでしまった
となりで聞いていたシーラスは一歩前に出て
「今、姫の考えをを侮辱するな!」
シーラスの怒気を含んだ声にウーラノスはため息をつき、横目でシーラスを見て
「では、自分、味方が死にそうな状態でもか?」
「ッ……それは……」
ウーラノスの言葉に何も言い返せずに口を噤む
静かにウーラノスとシーラスのやり取りを聞いていた彩火は口を開いて
「……これに関しては、私が口が挟むことじゃないと思いますけど、スピリット達も死んでも冷たい反応だったら悲しいと思います……」
彩火の自信の無い言葉に「フン!」っと鼻で笑うと
「雑談が多くなったな。バトルを続けよう。ジェホロールを召喚。アタックステップ!アタックステップ開始時にバランロッド滑走路の効果でコアを回収する」
カウント5→6
「魂状態でも効果使えるの……」
「そのままジェホロールでアタック。アタック時効果で回収してロケッドラにアタックしろ!」
カウント6→7
「このタイミングで使う」
ウーラノスは1枚のカードを空に掲げる
「太古の翼!群青を切り裂く剣に変え、歯向かう敵を滅ぼせ!天空の指導者!テラードよ、新たな姿となって国の右翼になれ、太古の翼刃テラード・ヒューラー、契約煌臨!」
テラードの魂は浮き上がり雲の中に消えていく。そして巨大な雲を突き破り赤い巨大な翼竜、テラード・ヒューラーが現した
屋上を踏み潰すように降り立ち、観客が少なくなった路地裏の前に鼓膜を突き破るような高らかに咆哮を上げた
彩火達は思わず耳抑えた
ジェホロールはうるさい中、そのままロケッドラに突進して破壊した
「次だ、テラード・ヒューラーよ!ドレッドノーズに攻撃しろ!」
カウント7→8
テラード・ヒューラーはドレッドノーズに向けて特攻する
「アタック時効果でコア2個をコストにライフのコア1個をトラッシュに送る。さらにOC状態の時にもう一つを破壊する」
「嘘でしょ!?」
テラード・ヒューラーは強靭な足でバリアを握りつぶした
「キャー!!!」
大きく吹き飛ばされて滑走路に強く体をぶつけた
「彩火さん!?」
シーラスは慌てて彩火の元に駆け寄る
「大丈夫ですか?」
「はい……あ、りが……とう……ございます……」
彩火は掠れた声を出しながらゆっくりと立ち上がる。彩火は衣装に降り掛かった砂埃を払い落とし
「……絶甲氷盾……を発動させます」
「フン、まあいい。だが、ドレッドノーズの首は貰う!」
テラード・ヒューラーは翼を刃に変えてドレッドノーズを切り裂いた
ドレッドノーズはそのまま倒れ込み破壊される
「……ドレッド……ノーズ……」
「ターン終了」
[ターン6]
息を切らしながらターンを始める彩火
「……カウントドローを発動……ハァ……ハァ……ハァ……」
彩火は唾を思いっきり飲み込み、息を無理やり整える
「……2枚ドローしてカウント4のつき1枚ドロー!……このカードは……」
彩火は3枚引いたうちにザ・マジシャンのカードを確認
そのままザ・マジシャンのカードを手に取る
「創造の始まり……混迷した世界を導く光となれ!」
彩火は空に向けてザ・マジシャンのカードを投げると赤々とした炎がカードを包みこんで球体を創り出した
「レベル2でいでよ!オラクル二十一柱の1体!ザ・マジシャン!」
投げたカードが彩火のテーブルに生成されると、球体は弾け飛び、降り注ぐ火の雨と共にザ・マジシャンが姿を現した
「さらにネクサス!エデラ砦を配置!」
滑走路を再び突き破り、紅きオベリスクの隣にエデラの砦が建造された
「配置時効果でカウント+1」
カウント5→6
「だが、私の場に破壊出来るスピリットはいない」
「そんなことはわかっています!狙いはこれです!」
彩火はグロウ・カイザーのカードを見せる。ウーラノスも彩火の考えに察したのか固唾を飲んだ
「掴み取れ!果てなき道の先にある勝利を我が拳に!相棒竜グロウに緋炎龍皇グロウカイザーを契約煌臨!」
グロウの魂の場所から火柱が上がると、火柱を打ち消すように拳が出てくる。拳を思いっきり突きつけると火柱が弾け、緋色の鱗を纏う勇猛なドラゴン、グロウ・カイザーが姿を表した
グロウ・カイザーは力を入れるように拳を強く握りしめ
「よし、やり返してやる!」
『だけど、どうするの?』
「このカードを使う!輝竜シャイン・ブレイザーを召喚!」
空がキラリと光ると、白い機体を持つスピリットがグロウ・カイザーの隣に並ぶ
「これをどうするんだ?」
「まあ、黙って見てなさいグロウ!私は輝竜シャイン・ブレイザーをグロウ・カイザーにブレイヴ!」
シャイン・ブレイザーの白い翼が、グロウの背中に円を作るように装着され、先端から炎を噴出し炎陣を作り出した
「これを使ってどうするんだ?」
「グロウは黙って私の指示に従いなさい!アタックステップ!」
『彩火って……バトルの時は荒々しいわね』
「あぁ、なんか言った?」
『いや、何でも無いわ……』
「アタックステップ開始時にザ・マジシャン、オーバーマジシャンの効果を発揮!オーバーマジシャンの効果でカウント+1とザ・マジシャンにコア3個までをトラッシュから回収する!」
カウント6→7
「そして、ザ・マジシャンの効果でカウント+1してBP以下のスピリット、ジェホロールを破壊する!」
ザ・マジシャンの杖先の宝石が煌めくと、ジェホロールに向けて地面から炎が伝い、そのままジェホロールに炎が巻き付いて破壊した
「さらにカウント6以上なら、グロウ・カイザーにシンボルを追加して4(クワトロ)シンボルにする!」
「4(クワトロ)シンボル……」
「そのままグロウ・カイザーでアタック!アタック時効果でカウント+2して1枚ドロー!さらにグロウ・カイザーのアタック時効果で20000以下のスピリットを破壊する!」
「だが、テラード・ヒューラーはOC状態だから20000以下では無い」
テラード・ヒューラーの本来のBPは13000だが、OC状態により25000となっている
20000以下を破壊するグロウ・カイザーでは破壊は出来ないが、そんなことは彩火もわかっていた
「ザ・マジシャンの効果でBPで破壊する効果が発揮した時にBP+の条件を無視出来る!よって、BP13000のテラードを破壊する!」
グロウは背中の炎陣をテラード・ヒューラーに向けて投げ飛ばし斬り裂いた
「さらにBP8000以上のスピリットを破壊した時にシャイン・ブレイザーの効果で相手のライフを破壊する!」
「なんだと!?」
テラード・ヒューラーを破壊した炎陣はそのままウーラノスのライフを砕いた
「ぐわぁー!」
ライフ3→2
ウーラノスは痛みのあまり初めて膝をついた
「どちらにせよライフが5あった所で全てを削りきれたのか……」
「私がザ・マジシャンのカードを見て真っ先に思いついたコンボです。グロウ・カイザー、ザ・マジシャン、シャイン・ブレイザーの3枚が揃わないと成立しないといけないかなりリスキーですけど」
「……なるほど、末恐ろしい女だ……」
ウーラノスは呆れとも取れる笑みを浮かべ首を下げた
そんなウーラノスを蔑むように冷たい視線を送り
「私はスカーレット程、甘くない!最後のライフを砕け!グロウ!」
「うおぉぉぉぉ!!一撃必殺!!灼炎轟龍拳ーーーーーッ!!」
グロウはウーラノスの最後のライフを砕き、まっすぐと数100メートル先の突き当りまで吹き飛ばした
ライフ2→0
「……私の勝ちよ!」
彩火の勝利宣言と共にグロウ達は咆哮を上げるのだった
★
私は制服姿に戻り、白煙が籠もる閑散とした路地裏を見つめた
いや、やりすぎた……カウントドローであの3枚を引いた時にやりたくて仕方なくなって……衝動を抑えきれなかった……
『勝ったのにあまり嬉しくなさそうね』
「……正直、やりすぎた……」
『そうね。やり過ぎね』
やっぱり、スカーレットもそう思うんだ……
『それにしても、やられたわね』
「どういうこと?」
『ウーラノスは彩火の情報を得るためのデコイよ』
「え、嘘!?」
『だって、ウーラノスは毎回フルアタックを仕掛ける程、単純な男ではないわ』
「そうなの?」
バトル中の時はカウントを溜めるために毎回フルアタックを仕掛けてると思ったけど、後々思い出したらフルアタックを毎回仕掛けなくてもネクサスとかでカウントが溜まるから、無理にフルアタックする必要はないのか……
『それにずっとバーストを発動してなかったのも気になっし……』
「発動条件が出来なかったんじゃない?召喚時効果使って無いし」
『……そう……だといいんだけど……』
スカーレットは考えすぎな気がするけどな
『とりあえず、わたくし達は手の内を明かし過ぎたから、次にバトルする時は同じ手は通用しないと思った方がいいわね』
「分かった。精進するよ」
『後はいろいろ聞き出そうと思ったけど、逃げたみたいね』
煙が晴れてウーラノスさんが吹き飛ばされた場所に目を向けると、その姿は無かった
「今度、会ったら聞こう」
「おーい、井亜鈴ちゃん!」
シーラスさん……じゃなくて、虹海の状態で駆け寄ってきた。走る足元にはシャックとランポの姿があった
「凄かった!幹部級の人を倒すなんて!」
「ハッハッハッー!流石、リユ・ニオンが見込んだ腕だな!」
「ぼくも興奮したよ!」
「ありがとね」
グロウも元のサイズに戻って、背伸びをしながらこちらに近づいて来た
「流石に疲れた……」
「お疲れ」
「ハッハッハッー!良い働きだったなグロウよ!」
「相変わらず強いねグロウ!」
契約スピリット達が嬉しそうに会話をしている。仲が良いのね
「そういや、さっきの人は……」
緑髪の人を探して辺りを見渡そうとした瞬間に
「おーい、そこの君たち!」
青いYシャツの上にゲームとかで見たことがある防弾チョッキのようなものを身を包んだ男性が2人……誰がどう見ても警察だ……
てか、何で警察がいるのよ!!
「ここで君たちが街のはか……」
警察の人が言い切る瞬間に私の眼の前は白いペンキを掛けられたかのように塗りつぶされた。不思議なことは目線だけじゃなくて、体も浮遊感に襲われた……ジェットコースターとも違う浮遊感、まるで本当に宙に浮いている気がする
そして、白く塗りつぶされた視線が少しづつ晴れていき、6つのモニターが入った
……何でモニターが?
それにこの空気感と雰囲気はよく知っている……
「……ここはガブリエルの……」
やっとハッキリと見えてきた……
視野が回復して改めて辺りを見渡すと、どこからどう見てもガブリエルの基地だった
「どうして……」
『トアのせいね』
「トアさん?」
「みんな無事だった?」
気さくに話しかけて来るトアさん。その隣には四位さんと留守番をしていた氷牙の姿もあった
私の近くにいた虹海は口を開いて
「トアさんがこれを?」
「そう!試しに使ってみたけど、この世界でも使えるみたい」
「使えるんだったら絡まれたタイミングで使ってくれよ……」
バトル後で完全に疲れているグロウの言葉にトアさんは苦笑いを浮かべて
「あの時もやってみてはいたけど、あたしの元にしか飛ばせないみたい」
『自分の元に呼び出す魔法のようね』
だから、あのタイミングで使っても意味が無かったのか……なんか納得した
「ここは……どこだ」
「なんか凄い!」
氷牙でも、シーラスさんでも無い男声に、私は振り向いた
そこには路地裏に会った緑の人と、ランポの姿があった
「あれ、トアさん」
「仲間じゃないの?」
いや、何で?
「お互い素っ気なかったですよ……」
「契約スピリットもいたし……魂も2つあるようだから仲間なんかなって?」
魂が2つある?そう言えば、ザ・マジシャンも私の体に魂が2つあるって言ってたな。って、ことはあの人も私と虹海と同じで誰が宿っているんじゃ……
すると、「あー!!」と耳に響く虹海の声が基地内に響き渡った
……ちょっと、急に大きな声をやめて……テラードの咆哮の時のダメージが残っているのに……
「チッ、なんだようるせぇな!!」
「確か、特待生の
中学の部活や入試試験で優秀な成績を残したら学費が全て免除される特待生制度。その制度で入学してきた人のこと特待生って言うんだけど……確かうちの学校の特待制度ってかなり難しかったような……
結構不良ぽいのに……見た目だけで判断しちゃダメってことね
「ああ、そうだが。お前らは今年入って来た連中か?同級でも2年でも見たことの無い顔ばかりだからな」
「あっ、3年生なんですか?」
「そうだな。まあ、知らなくても当然か、学校にはほとんど行ってないしな」
なんか訳ありみたい……
「そろそろ帰りたいんだが、出口を誰か案内してくれないか?」
「あっ、ちょっと待って!」
トアさんは緑丘先輩を止めた
「少し試したいことがあるんだけど、いいかな?」
「なんだ……手短に頼む」
あっ、いいんだ
緑丘先輩はトアさんに指示通り部屋の角に真っ直ぐ立つ。トアさんはこの世界に無い言語を口に出し始めた。きっとレクリスの言葉だろう
そして、緑丘先輩の足元に赤い六芒星の魔法陣が描かれ、足元が光り出した
「え、なにこれは?ちょっ、俺になにを……」
緑丘先輩は言葉を言い切る前に意識を失うように膝をつき、顔も力を無くしたように下を向いた
なんだか人形みたいに動かなくなっちゃった……
『彩火。変わって』
「え、うん」
彩火に変わってもらい静雄の近くに寄る
すると、静雄の髪が止めていたピンが外れ、サラサラと前髪が目元を隠し、髪がこの世界のお茶のような緑から、深緑色へと変わりヴェルデになっていく。そして、ピクリっと指が動いた
この現象はよくわたくしはよく知っている
「ん~~、やっと表に出られたぜ~おっ、姫さん?」
そのおちゃらけた言い方、間違いないわね
「ヴェルデね」
「ええ、やっと出られましたわ!」
ヒョイっと飛び起きるヴェルデ
「いや〜静雄には話しかけようとしたんだけど、通じないみたいで」
「ええ、そうみたいね。だけど、一度出れたら話せるようになると思うわ」
「マジかよ!!聞こえるか静雄!……悪かったって、勝手に体を借りたのは!」
静雄の声はこちらからは聞こえないけど、うまくコミュニケーションは出来ているみたいね
『なんだか、軽い人だね……』
「ええ、悪い人では無いのだけど、おちゃらけているから硬い上の人から好かれないのよ」
『そんな感じはする……』
「シーラスとは仲が良いんだけど」
「別に私もあいつを100%認めた訳じゃ無いですけど……」
あら、いつの間にか虹海から変わっていたのね
「ヴェルデ!」
「ランポか!薄汚いな!水浴びはしてないのか?」
「生きるのに精一杯で!」
「そうかそうか!」
ある意味、このタイミングでランポと静雄に会えたのは運命なのかしらね
「いや〜、初めて魂の出す魔法をしてみたけど、うまくいった!うまくいった!」
さてと、わたくしももう一つ仕事をしましょうか
「トア。話があるわ」
「どうしたのスカーレットさん?」
「この魔法は二度と使わないで!」
「何で?従者にも会えたじゃん!嬉しくないの?」
「ええ、ヴェルデに会えたことには感謝しているわ。ただ、静雄の意見を聞かなかったわよね?」
わたくしの言葉に下を向くトア
「うっ……そうだね。試したいあまりに強引だったかも」
反省していないならもう少し咎めるつもりだったけど、この感じだと反省しているみたいだし、これ以上言うのはよく無いわね
「静雄に謝ったら、これ以上は言い詰めないわ」
「……うん」
トアはシーラス達と喋っているヴェルデに近づき
「静雄に出てもらっていい?」
「えっ、ああ」
髪色がお茶のような髪色になり静雄の人格になったのがわかる
「静雄、ごめんなさい。衝動的に実験台にしてしまって……」
「はぁー……まあ、いいよ」
静雄も呆れ気味だったけど許してくれたみたいね
「じゃあ、俺は帰るよ」
そう言ってガブリエルの基地に出入り口に向かい扉を開けて出ていった
「待って!ぼくも行く!」
足元にいたランポも扉が閉まる前に基地から出ていった
「なんだかんだでうまくいきそうですね姫」
「まあ、ヴェルデ自体が明るい性格だから」
静雄は見ていた感じ見てくれが悪いけど、結構話を素直に聞いてくれてるようだから案外いい奴なのかもね
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ウーラノスはテラードと共に連合国軍の基地にしている廃工場の中を静かに進んでいた
すると上の方から「あはは!」と甲高い子どものような笑い声が工場内に響いた。ウーラノスは声がした方に上を向くと、今にでも朽ち果てそうな赤錆びた金属の柵に座ったリュイの姿があった
「おもろ~!失敗したんでしょ?あんなに大口を叩いていたのに」
ウーラノスはリュイの言葉に興味が無いように無視をして足を進める
無視するウーラノスにイラッと来たのかリュイは頬を膨らませて3メートルくらいの2階から飛び降り
「リュイの話は無視なの!?」
「くだらんからな」
「おやおや、負け犬の遠吠えですか?」
リュイの煽りにウーラノスは無視して「フェルマ、ジェンはいるか?」と声を響かせる
そして奥からジェンと猫の状態のフェルマが出てきた。ウーラノスは学ランの胸ポケットかやUSBメモリーを取り出しジェンに投げ渡す。ジェンは慌てて手を出しメモリーを受け取る
「……あっ、」
「全く……この世界の機械はよくわからん」
「ありがとう。これで井亜鈴彩火とリユ・ニオン・スカーレットのデッキのことがよく分かるわ」
「フェルマよ。吾輩達を使ったんだ、我々にとって有利に働くのだな?」
「それは保証するわ」
「さっさと井亜鈴彩火を殺せば解決するのに……」
リュイの言葉にフェルマはため息をして
「何度も説明したわよね。その行いはタブーだって」
「そんなの、バレずに殺せばいいじゃん!」
リュイの言葉にウーラノスは頷くと
「私もその意見には賛成だ。たかが小娘に労力をかけ過ぎている」
「そうそう!ウーラノスと初めて意見があったね!」
「フン、ただ効率が悪いと思っただけだ」
「確かに、井亜鈴彩火を殺せば簡単だが、バレた時のリスクが大きい」
「そんなのレクリスにすぐに帰ればリュイ達がやったってわからないよ!」
「もし、すぐに帰れなかったら?」
フェルマの言葉に口を噤むリュイ。その反応を見てフェルマはため息をつき
「……リスクは極力減らした方がいいとわたくしは思うわ」
「なら、フェルマはそう思っていても、ジェンはどう思っているのか」
テラードはジェンの方に視線を向ける。ジェンは問い詰められても表情を変えず
「……私も早く帰りたいけど……関係ない人を殺すのはよくないと思う」
「甘いな。リユ・ニオン・スカーレットが宿った時点で関係者だ。井亜鈴彩火も殺していい対象になる、彼女は運がなかっただけだ」
「……」
ウーラノスの言葉に黙り込んでしまうジェン。一生平行線な討論にフェルマは小さな肉球でおでこを抑えて
「この話はやめよう……いくら言ってもウーラノスやリュイの意見は変わらないでしょうし……」
そう言ってフェルマは呪文を唱えだし、足元に黄色い魔法陣が描かれると、猫の形からどんどんと人の姿へとどんどん変わりフェルマ・シーラムの姿となる
「ご主人、USBメモリーを」
ジェンは手に持つUSBメモリーを渡す
「わたくしはデータを確認するから、ご主人は自由にしてていいですよ」
「……うん」
フェルマはフィンガースナップをして白い煙が足元から出現、煙が晴れるとそのまま消えてしまった
「……私も、街に遊びに行く」
「そうか」
ジェンもフェルマの後に続くように廃工場を後にした
残されたウーラノスは首や腕を鳴らした。足元にいたテラードはウーラノスの方に見上げて
「これからどうする?」
「とりあえず、休む。慣れないやられ役を努めたから流石に疲れた」
「そうか」
「リュイはどうする?」
「ガタルがこの街を探索したいって言って出かけているから、帰って来るまでここで待つよ。一応、誰か来るかもしれないし」
「今日はこれ以上は誰も来ないと思うぞ」
テラードの言葉に「……うん」と寂しそうな声を出しつつ、ぎこちなく頷くリュイ
「フン、今日は人が少ないから報告することもあまり無い。宿主の家に帰るとするか」
そう言ってウーラノスとテラードは廃工場を後にして、連合国軍はそれぞれの自由な時間を過ごすのだった
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三日月と街の明かりが照らす夜道を歩いて帰る静雄。その足元にはランポが歩いていた。ランポの毛は砂埃が被り、周りからスピリットというより薄汚い犬のように見えているため違和感は無かった
「どこに行くの?」
喋る以外は……
ランポが元気よく質問するため通りかかる通行人の注目を集めていた。静雄は少し面倒くさそうに柳色の髪をかきながらランポをひたすら無視をして歩を進める
『無視でいいのか?』
「喋る犬なんかに話しかけたら目立つだろ……」
『確かに』
ヴェルデは静雄の言葉に納得した
『それで、どこに行ってるの?』
「とりあえず、俺の家……ランポの体を洗ってやりたいし」
「洗ってくれるの!やったー!」
喜んでいるランポの横で静雄の表情は暗くなり
「まあ、あまり家には帰りたくは無いけど……」
『……なんかあったのか?』
「今日初めましてのお前に話してもしょうがないだろ」
静雄の返しにヴェルデは「ふーん」と興味無さそうな声を出し
『まあ、喋れば気が済むと思うけどな〜』
「……そんな喋る相手なんていねぇよ」
『寂しい奴だな』
「……うるせぇ!」
静雄とヴェルデが会話していると錆が目立つ幽霊屋敷のような2階建てのアパートに到着した
『え、ここは……』
「俺の家」
『え……』
「ランポ。1つだけ言っとく、絶対に喋るな!音を立てるな!」
ランポが疑問符を立てる間もなく、静雄はゆっくりと忍者のように音を立てず赤錆びれた階段を上がっていく
ランポも後を追うように出来るだけ音を立てずに階段を上がる
静雄はドアノブに手を置き、音を出来るだけ立てずに鍵を差し込み鍵を開け、そのまま音を立てずに扉を開けて真っ暗で物静かな家の中に一歩足を踏み入れる
静雄は靴を脱ぎ、アパートの外観とは思えないくらい整理された廊下を足音を立てずに歩いていく
廊下を少し歩き突き当り横の扉を開けて、洗面所に入りそのままランポを連れてお風呂場へと入った
ランポにシャワーの水をかけ、汚れを落としていく
「つ、冷たいよ!」
「静かにしろ、親父にバレる前に早く家から出たいんだよ!」
砂埃が被った体はみるみるうちに落ちていき青と白の体毛が露わになってくる
ランポは体の水を飛ばすと
「スッキリした!」
「って、静かに!!」
静雄が忠告をしていると遠くの方から「誰がぁいるのがぁ〜」とガラガラの男性の声がした
静雄は慌ててランポの口元を抑えて拭く間もなくお風呂場を飛び出し、洗面所の扉に手をかけようとした瞬間、扉のドアノブが捻り静かに開いた
そのまま開けた張本人が顔を現す。スタイルのよい長身で、一瞬で静雄の父親と分かるような凛々しい顔つきの男性
「帰っでいだのがぁ」
女性にモテそうな雰囲気とは裏腹に酒焼けしたようなガラガラ声を出す静雄の父親。静雄は頷くと、静雄の体は大きく吹き飛ばされ、お風呂場の扉に強く頭をぶつける。唸り声を上げながらぶつけた頭を優しく触る。血は出ていないことを確認した瞬間、父親は馬乗りになり、頬を連続で殴り始めた
「金はどうした!金は!」
「……学校はバイト禁止……ッ……」
言いきる前に頬に一撃を加える
「言ったよな!校則を破ってでも、俺に貢げって!奴隷は親の言う事を聞けばいいんだよ!」
「ッ……」
怒号と大きな拳で何度も殴るという虐待。静雄もその恐怖から何も言い返しが出来ず反撃も出来なかった
「はい!の一言も言えないのか!このポンコツは!!」
「……はぁい……」
弱々しい返事をする静雄
そんな静雄を精神世界で見ていたヴェルデは「あ~!」と声を上げ
『少し変われ』
ヴェルデは半強制的に変わり、父親の背中を思いっきり蹴る。長い足爪が折れたような感覚があったが、父親の馬乗りを解除するには十分過ぎる一撃が入った。体制を崩し、床に顔をぶつけた父親。ヴェルデはそのまま父親のおしりに向けて蹴りの一撃を入れる
「グファ……この!」
クマが襲いかかるように手を広げて反撃するが、ランポが足元には思いっきりぶつかり躓かせる
父親は壁に手を置き転倒を防ぐ
「ッ……クソが」
「ランポ行くぞ!」
洗面所を急いで出ていくヴェルデとランポ
そのまま靴を履いて家から急いで離れた
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「ハァ……ハァ……ハァ……腹いてぇ……」
横腹を抑えて座り込むヴェルデ。ガブリエルの基地前までとりあえず走った
静雄が殴られていた頬からじわじわと痛みを感じる
「チィ……まさか虐待されているなんてな。だから喋りたく無かったんだな」
『……ああ、悪い』
「まあ、別にいいよ。レイカラットでも取り締まりしたことあるし。それに、大体虐待を受けた人は思い出したくないって言って喋りたがらないから」
『そうなのか……』
息を切らしながら静かな夜風に当たり、痛みの収束を待っていると
「ねぇねぇ、話してよ。静雄のお父さんのこと!」
「ランポ!?」
ランポの不謹慎な言葉にヴェルデは目を丸くする
しかし、ヴェルデも全く興味が無いわけではないので……聞きたい気持ちもあった
唸り声を上げ、腕を組みながら考えていると
『別にいいぞ』
「いいのかよ!?」
『減るもんじゃないし』
ヴェルデから静雄の人格に変わり喋り始めた。静雄の父親のことを
こんな感じですね
書いてみた感想としては、とても書きやすかったです
バトルシーンも一人称に比べて書きやすく、他視点も取り入れやすかったです
ずっと抱いていた彩火とスカーレットの心理描写も書けたのでモヤモヤがスッキリしました
次回もこんな感じ書いてみようと思います