バトルスピリッツ W-LINK   作:けんき

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─ 場面切り替え
☆ 一人称から三人称の切り替え
★ 三人称から一人称の切り替え



節制の社

「やぁ……めてぇ……やめぇ……て……」

 

小学校から帰ってきた静雄が見た光景は7人目の義母に向けてひたすら拳を振り下ろす父親の姿だった

母親は今でも息が絶えそうなかすれた声でやめるように懇願していた

誰がどう見てもDVの現場に静雄は「いつものか……」と言って背負ったボロボロのランドセルを椅子にかけて、宿題を取り出しテーブルの上に広げる

静雄にとって日々の光景で、新たな義母に変わるたびに同じセリフに聞き飽きていた

 

「助けて……静雄……」

 

義母の言葉に耳も貸さずひたすら宿題をしていた

 

「この……痛い!」

「口答えをするな!奴隷!まずい飯ばっか作りやがって!」

「そんな……出会った当時は……美味しい……って言って……」

「黙れ!そんなことを言った記憶はない!!」

 

痛々しい音が鳴り響く中、静雄は気にせず宿題をしていた

DVを止めたところで自分が父親のサンドバッグになることをわかっていたからだ。だったらころころ変わる母に矛先が向いた方が自分にくる被害をできるだけ抑えられる。子供ながら残酷な考え持つ静雄はひたすら聞いてない振り、見て見ぬふりをしていた

 

そして毎日の暴力に耐えきれず、7人目の義母が家から出ていった。そして、新たな義母が出来るまで父親の暴力の矛先が向くのは静雄だった

父親からストレス発散で殴られる静雄。何も抵抗出来ず、うねり声しか上げることしかできなかった

そんな彼の安らぎは勉強をすること、ただそれだけだった

小さい頃から父親に遊びを教えてもらっていない彼にとって、学校で教えてもらったものが全てであった

勉強、友達との会話、昼休みの遊びなど、生まれてから何もなかった静雄にとって全てだった

 

そんな勉強は実を結び高校受験で特待で受かることが出来た。虹宝高校は決して偏差値は高くはないが、私立高校で特待で受かるのはとても難しい

特待で高校に受かったと父親に知らせた。しかし、父親の反応は

 

「何で高校なんか受かったんだ!金がかかるだろ!」

「……いや、特待で受かったから……学費は……」

「うるせぇ!!」

 

父親からの拳が静雄の体を吹き飛ばした

頬に痛みを感じつつ、ゆっくりと立ち上がり自室に戻った

自分自身、わかっていた。こうなることは……

お金にガメつい父親にとって金を払わないと授業を受けられない高校は悪そのもの……受かったと報告した瞬間に殴ることは誰よりもわかっていた

 

静雄は父親に殴られながら最初の1年は真面目に高校に通っていた

しかし、父親は見た目だけは良いので、新たな女性と結婚して離婚を変わらず繰り返していた。恥じらうことはなく、罪の意識もなく、悠々と生きる父親に静雄はだんだん嫌気が察していき、真面目に生きるとは何かを考え出した

真面目に生きているやつが不幸にあい、犯罪をしているやつが楽しそうに悠々と生きている。じゃあ真面目に生きるとはなんだ……

そんなことを考えているうちに全てが嫌になった静雄は、高校2年生の終わりに学校に全く行かなくなり、家に帰ることも無くなった

 

 

─────────────────────────────────

 

 

ガブリエルの基地の前で静雄の話を聞いていたヴェルデとランポはあぜんとしていた

 

『そんなことがあったなんて……』

「許せないよ!あんなやつ!!」

「まあ、落ち着け」

『他の誰かには相談しなかったのか?』

「……相談したけど、誰も相手してくれなかったからな」

 

静かな夜空を見上げる静雄

そのまま目を閉じ全身から力が抜くように息を吐く

 

『静雄?』

 

ヴェルデの言葉は静雄には届いておらず、死んだように眠りについてしまった

今日のこともあり、疲れきったのだろう

ランポも静雄が寝たことを察したのか、体を温めるように膝の上で乗る

 

「これなら温かいよ!」

 

4月の終わりとはいえ、まだ冷え込む時期である。ランポは静雄の膝の上で丸くなると、そのまま静雄と同じように眠りについた

 

『ふぁ〜俺も寝るか〜』

 

精神世界にいるヴェルデも目を閉じ眠りについた

時間が止まったように静かな雑居ビルと、相反するように時が加速した本道で響く車の音が、時間と場所を隔離させる

誰も邪魔されずピクリとも動かずに熟睡する静雄達の時を動かしたのは「大丈夫ですか?」と優しく話しかける女性の声だった

静雄は女性の言葉にゆっくりと重い目蓋を開いた

ぼやける目が徐々に慣れていき、声をかけた女性の顔がだんだんとハッキリと見えてきた

そこには、蘭茶の瞳に少し細い目、そして紺碧色の長髪に、虹海のように色白で、デニムの半袖の上着の下に純白の長袖のワンピースを着ているのもあって、幸薄い雰囲気がある少女が静雄の前に、不思議そうに小首をかしげて立っていた

 

「えっと……」

「先輩ですよね?」

 

彼女の言葉に1つ察しがついた

同じ学校の後輩っと言うことだ

 

「て、ことは?」

「はい。今年、特待で入学してきた青島(あおしま)アリアです」

「青島……」

 

静雄は“青島”と言う単語に引っかかったのか小首をかしげる

 

「どうしました?」

「いや……」

 

アリアの言葉に「あっ、」と口を開けた

 

「青島って、青島工場の?」

「あ、そうです。よく知っていますね」

「……まあ、ニュースで財政破綻する程の赤字を負ったのに、黒字に回復したって流れてたから」

 

静雄の説明のような言い方に表情を曇らせる。静雄はいきなり曇った理由に理解ができずに、顎に手を当てる

 

「そう、言う感じ……なんですね」

「別にいいじゃないか、宇宙事業で黒字に回復したんだから」

「そう……ですね。それよりもなんて先輩はこんな所で寝ているのですか?」

「あ~」

 

静雄は昨日に起きた経緯を話した

アリアはさらに曇った表情をする

 

「す、すみません……」

「いや、いいよ。俺も不法侵入だし」

 

アリアと静雄がしゃべっている声にランポはあくびをしながら目を覚ました

 

「……静雄?」

「ランポ。目が覚めたか」

「……うん。君は?」

「君がエマさんがメールで言ってた契約スピリット?」

「そうだよ!僕はランポ!」

 

朝から元気なランポ

そんな元気にあきれつつ静雄は立ち上がった

 

「どうですか。扉前で話のもあれなので、ガブリエルのラボにでも」

 

静雄とランポはアリアの提案に乗り、ガブリエルの基地にお邪魔することにした

 

 

              ★

 

 

「なるほど」

 

私は青島さんから緑丘先輩がどうして基地にいる理由を聞いて納得した

 

「……なんか、俺が虐待されていることもしれっと言われたんだけど……」

「警察庁に報告したよ」

 

え、報告が早くない!?星野さん!

緑丘先輩もキョトンとしてるし

 

「え、何でいきなり警察庁に?」

「ガブリエルこと特殊異界生物調査隊は防衛省と環境省の管轄だから、政府のそこら辺とすぐに連携が取れるんだよ」

 

荻野さんの言葉に緑丘先輩は目を丸くした

まあ、普通誰でも驚くよね

 

「だから、すぐに逮捕されると思うよ!」

「……変なのに絡んでしまった」

「それにしても、私は緑丘先輩の家族の事と同じくらい、入学式の答辞を読んだ特待生の人がガブリエルのメンバーだと思わなかった」

 

てか、この場にうちの学校の特待生が2人いるのか……

 

「他にも在籍しているよ。あまり来れてないだけで」

「他にも?あの黒服スーツの……」

「あの人達は防衛省のお抱えだから。正式にはガブリエルのメンバーじゃ無いんだよね〜」

「へぇ~そうなんですね」

 

なら、星野さん、荻野さん、青島さん以外のメンバーにも会ってみたいな

 

「それにしても、今日は彩火ちゃんとグロウだけなんだね。いつもなら虹海ちゃんと氷牙くんが居るのに」

「あ~虹海は病院で、氷牙は部活です」

「シャックは、家でゆっくりしていると思うぜ!」

「へぇ~氷牙くん。部活してるんだ」

「まあ、あいつは試合と練習試合以外は基本的に呼ばれないので」

「呼ばれない……なんで?普通は練習のために部活に行くよね?」

 

誰でもそう思うのが普通だ

……まあ、言ってもいいかな、氷牙が私たち以外から“嫌われている”こと

 

「あいつ、嫌われているんです」

「嘘だろ!?あんなに元気で人に好かれそうなのに……」

「……そう見えますよね。だけど、あれでも友達はいないんですよ」

「なんでだ?」

「勉強以外何でも出来るんですよ。運動も料理も」

「なら、尚更羨まれそうだけど……」

「そうなんですけど、周りから羨まれを通り越して嫉妬されたんです。それと氷牙が褒められると調子に乗るところもあるので、尚更嫌われているみたいで、部活もサッカーをやってますけど、「来るな!」ってメンバーに言われて練習に行ってないみたいですよ。行ったところでボールが回ってこないから面白くないって……本人は言っていたので」

『あの子も……大変なのね』

「それはチーム競技として欠陥しているような……」

 

氷牙自身は悪いやつじゃないんだけど……調子に乗りやすい性格とノンデリだから苦手な人は苦手だからな……だからといって全く人に好かれないのは流石に可愛そうだけど……

 

すると、真っ黒のモニターからいきなりマップが映った

 

「何で、急にマップが?」

「あー、ゲートが見つかるとモニターが勝手について、知らせるように設定したんだよ」

 

赤い印が街外れの場所を指していた

あそこは……昔からある神社がある所だっけ?

 

「とりあえず……」

 

星野さんは私に向けて水色の何かを投げてきた

 

「これは……」

 

渡されたのは水色のデミグラブ

 

「右手に包帯をずっと巻いているのはおかしいでしょ。これなら変でもない、紋章も隠せるでしょ」

 

確かに、これなら包帯よりも違和感ないかも

私は包帯を外してテーブルに置く

 

「その右手……」

「えっと、グロウと契約した証?みたいなものです」

「そうなのか」

「緑丘先輩はランポと契約してないんですか?」

「いや、別に。知らなかったし」

 

スカーレットからランポは契約スピリットって言ったから契約してるものかと思っていた

私は手袋を付ける。

うん、大きさもバッチリだし、付けた後も違和感ない

 

「うん。似合ってる!」

 

星野さんのサムズアップが出ました!

 

「ありがとうございます。星野さん!」

「よし、彩火さんの準備も終ったみたいだし、さっそく、反応がある場所に行ってみるか!」

 

荻野さんの言葉にみんなが頷き、ゲートを感知した山の中へと向かうことになった

もちろん、緑丘先輩とランポも一緒に

 

 

─────────────────────────────────

 

 

基地から歩いて30分くらいで感知した街外れの神社へと到着した

眼の前に大きな赤い鳥居が立っていて、私たちを出迎えた

 

「ここですね」

「林に囲まれていて神社が見えないな」

 

星野さんの言葉通り、鳥居の付近は神社を守るように木々に囲まれていて林になっている

私が背負っているリュックサックからグロウが声を出して

 

「とりあえず、入ろうぜ!」

「そうね。ここで立っていても始まらないし、入りますか」

「そうですね」

 

私は鳥居の前で一礼して、鳥居を潜った

 

鳥居を潜ると、外見通り木々に囲まれていて参道はキレイな石畳で、よく手入されているのは人目でわかった

そして境内は街中よりも静かで、鳥のさえずりや風で揺れる草木の音と、参道を真っ直ぐと照らす太陽が光が現実と切り離すくらい幻想のような空間になっていた

 

「なんだか不思議な空間……」

『ええ、言葉に表せないくらい幻想的ね』

 

スカーレットも私と同じように思ってたみたい

すると、5分も経たずに御社殿が見えた

人がよく訪れているのか、キレイに整備されている

 

『美しいわね』

「レイカラットにはこんな建物は無いの?」

『そうね。こういった建築の文化は無いわね』

 

そういや、前にテレビを見てた時にレイカラットの建物はヨーロッパにあるような建物が多いって言っていたような

なら、和の建築は見慣れないのか

 

「誰か居るのかしら?」

「ゲートがあるような感じはありませんね」

 

私が辺を見渡すだけど、七色の渦は見当たらない

荻野さんの技術力は疑って無いけど……本当にここにあるのかな……

 

「あれ、静雄くんとアリアちゃんは?」

「え?」

 

確かに後ろにいたはずの青島さんと緑丘先輩の姿が無い……

ここまで一本道のため、迷うなんてことはないと思うけど……

 

『神隠し……』

「怖いこと言わないで!とりあえず、戻ってみましょう!」

 

私はリュックサックを下ろしてグロウを出す

 

「グロウも手伝って!」

「人にバレないようにだろ!任せろ!」

 

そう言ってグロウは木々の中に消えていった

 

「森の中はグロウに任せて、私達は参道を探しましょう!」

「うん。てか、分かれ道とかあったかな……」

 

それはそう……

私は疑問に思いつつ参道に戻るのだった

 

 

              ☆

 

 

 

「あれ?いつまで続くんだ……この参道……」

 

静雄とアリアは景色の変わらない参道をひたすら歩いていた

時間と体力だけが奪われていく。まるでランニングマシンの上をひたすら歩いているような……そんな感じだった

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……何で……時間が進むのに社が見えてこないの……」

「ッ……流石におかしい……」

 

流石に疲労が溜まり静雄とアリアはその場に座り込んだ

 

「ったく……どうなってるんだ……」

「わからないで……す……」

「いつの間にか、他の奴らと逸れたし……」

 

辺には彩火の姿はなく、静雄、アクア、ランポのみが取り残されたような状態になっていた

 

「はぁ……どうしたもんか」

「絶対に異常が起きてますよね」

「そうだな」

 

静雄は無意識にランポの首下をかく

ランポが気持ちよさそうな声を上げていると

 

「君たち、ここで何をしているの?」

 

腰まである抹茶色の長髪に鳥のような髪飾り、緑色と白の巫女服を着た女性が太陽の光を背に立っていた

 

「その感じだと、迷子になったみたいね。こっちに来なさい」

 

謎の女性の言葉に静雄達は頷き、残された力で立ち上がり女性の後を追うように歩を進めた

そして、5分も経たないうちに御社殿が見えた

人がよく訪れているのか、キレイに整備されている

女性はなに食わぬ顔で、御社殿の中に入っていく

 

「え、勝手に入って……」

「ここは私が管理しているから問題ないよ。どうぞ、入りなさい」

 

女性の言葉に2人は納得しつつ、靴を脱いで中に入っていく

御社殿の中は綺麗な畳が広がっており、奥にはタカやワシのような猛禽類の頭に、人の体を持つ、変わった見た目の菩薩がポツンと祀られていた

 

「俺、中に入るの初めてかも……」

「そうなんですか?」

「ああ、ろくに寺や神社に連れて行ってもらってなかったからな」

 

経験が少ない静雄にとって、あらゆる物がはじめまして、不思議そうに辺りを見渡していた

 

「そんなに興味があるように観察されると、こちらも嬉しいわ」

 

そう言って丸いちゃぶ台を組み上げ、その上に紙コップ2つを置き、紙コップに市販で売られているお茶を注ぐ

 

「まあ、飲みなさい」

「ありがとう……ございます」

「ありがとうございます」

 

歩き疲れ喉が乾いていた静雄とアクアはお茶を飲み干した

 

「マジで……助かった」

「そうですね」

「かなり疲労していたみたいね。それで神社に何の用かしら?」

「えーと……」

「ゲートって知りませんか?七色の渦なんですけど……」

「七色の渦か……」

 

女性は立ち上がると外へと出ていった。静雄達も気になり、後をつけるように外に出ていく

御社殿の裏を覗くと、そこには七色の渦ことゲートがあった

 

『ふぁ〜よく寝たぜ〜』

 

精神世界で目を覚ましたヴェルデ

 

「目が覚めたのか」

『ああ……結構寝てたみたいだ。で、どうしたんだ?』

「えっと、ゲート?があるみたいで」

『あの、七色の渦か?』

「そう。てか、ゲートがあると何か起こるんだ?」

「星野さん達の情報では、ゲートからスピリットとアルティメットが出てくるようです」

「スピリットとアルティメットって……バトスピのか?」

 

静雄の言葉に頷くアリア

 

「そっか……俺もバトスピはしてたから分かるけど……何となくあいつらが出てきたらまずいんじゃ……」

「だから、ゲートを止めないといけません」

 

アリアが説明していると、渦から黒と金の昆虫の角を持つ生物を見せた。静雄達よりも二回りも大きな角を持つ生物は突き刺すように視線で静雄達の方に向く

 

「……なんだ……この生物!?」

『モーレンカンプ……獰猛なスピリットだな。そんなスピリットが何で渦から?それよりも……嫌な予感がするな……』

 

ヴェルデの言葉は的中、モーレンカンプは渦から大きな手を伸ばし静雄達を捕まえようとする

 

「逃げろ!!!?」

 

静雄の言葉でみんなは一斉に逃げ出した

モーレンカンプの手から避けるため木々に隠れる。モーレンカンプは手を伸ばそうとするが、ゲートの影響でギリギリ手が届かない

モーレンカンプは無理やりゲートの幅を広げるように動き出した

 

「……なんかハマってるな……」

『体がデカいからハマってるみたいだな』

「あんなのが出てきたら街はひとたまりもないですよ!」

 

アリアの言葉通り、人を簡単に潰せるくらいの大きな体を持つスピリットが街なんかに降りたらひとたまりもない

どうにかしたくても、静雄達はモーレンカンプにとってそこら辺のアリでしかない

 

「てか、さっきの巫女さんは?」

 

辺りを見渡してもさっきまでいた彼女の姿は無かった

 

「そう言えば……逃げるタイミングの時には居なかったような……まさか!?」

 

静雄とアリアは最悪なことが頭に過ったが、それよりもゲートを破壊しようとしているモーレンカンプの対処が先だった

静雄は考えついた最悪の出来事を首を横に振りかき消すと

 

「どうする……あいつ……」

『そうだ。契約すれば……』

「契約って、井亜鈴が言ってたやつか……」

「確かにあの力が使えるようになったら……よし!」

 

ランポは静雄の左足に噛みついた

 

「痛ぁ!?」

 

静雄が声でランポはすぐに口を離した

 

「何するんだよ!?」

「これで契約完了だよ!」

 

静雄は制服のズボンをめくり上げる。くるぶしらへんに鋭利な稲妻のような紋章が歯型と共に刻まれた

 

「これは……」

「これで僕達の力を使うことが出来るよ!僕達の力を使ってさっさとあいつを倒しちゃを!」

「いや、どうやって!?」

『契約者はスピリットを出すことが出来れば、あいつを止めることも出来るはずだぜ』

 

静雄の手にはいつの間にかバトスピのデッキが握られていた

 

「いつの間に、デッキが……」

『これでモーレンカンプを止めれるかもな!』

「よし、いろいろ頭の整理がついて無いけど、俺しかこの状況を突破出来ないのなら!」

 

静雄とランポは森から飛び出して渦から出ようとするモーレンカンプの前に立つ

そしてデッキから1枚のカードを取り出す

 

「ランポって書いてあるし、これでいっか」

 

手に取ったカードを天に掲げ

 

「こい、雷狼牙王グローム・ランポ!」

 

静雄はカード名を宣言するが、グローム・ランポは現れることは無かった

 

「おい!何も起きないぞ!?」

『いや、そんな馬鹿な……』

 

するとモーレンカンプの手が静雄に伸びる

 

「ヤバぁ……」

 

ヴェルデは静雄と入れ替わり軽いバックステップでかわした

 

「ッ……あぶねぇ……」

『ヴェルデ、悪い……』

「ここで潰されたら俺も死ぬからな……」

 

ヴェルデは再び手に持つ雷狼牙王グローム・ランポのカードに視線を向ける。そして今度はヴェルデが雷狼牙王グローム・ランポのカードを掲げる

 

「雷鳴を切り裂く大いなる牙!相棒狼ランポよ、本来の力を解き放て!雷狼牙王グローム・ランポを契約煌臨!」

 

左足の紋章が緑に光り輝き出すとランポはみるみるうちに姿を変えていく

体格は大きくなり、可愛げのある顔は厳つくなり、空間を切り裂くような放電を放つと同時に自身が纏っていた光を吹き飛ばした

そのままモーレンカンプに威嚇するように遠吠えを上げる

 

『ランポの姿が変わった……』

「頼むぞグローム・ランポ!!」

「任せろ!」

 

ランポはモーレンカンプの腕に噛みつくと、そのままゲートから引きずり出した

モーレンカンプはなすすべなくゲートから引きずり出され、空中に放り投げた

そのままランポは緑色の毛を逆立たせ、黄色い稲妻を放ちモーレンカンプを一直線に貫いた。モーレンカンプはそのまま爆発した

 

「よっしゃー!!!」

『マジかよ……』

 

昨日のバトルを見ていたとはいえ、改めて間近で見るとスピリットの強さに引いてしまった

そしてランポは元の大きさに戻り「ふぅ~」と力を抜くように息を吐いた

 

「ッ……疲れた……」

 

疲れのあまりしゃがみ込むヴェルデ

 

「悪い変わるよ」

『おっ、おお……』

 

ヴェルデは深緑色から柳色の髪に戻り、前髪を束ねてヘアピンを付け直した

 

「ッ……体が重い……」

『疲れって精神が変わっても重複するのか……』

 

立ち上がろうとしても体を押し付けられたように膝が上がらない

 

「先輩!肩を貸しましょうか?」

「うん……助かる……」

 

アリアの肩に手を置きふらつきながら立ち上がる

 

「早く、女の人を探さないと……」

「ああ、そうだな……たくぅ……変なことに巻き込まれた……」

 

静雄はグチグチと文句を垂れながら、緑の巫女を探すが全く人影が見えない

 

「あっ、いたいた!」

 

エマ達が静雄達に向けて手を振りながら近づいてきた

 

 

              ★

 

 

私達はあちらこちらを探して、やっと緑丘先輩を見つけることができた

 

「どこにいたの!?」

「え、ずっとここにいましたけど……」

「嘘!?真氏!ちゃんと探したよね!」

「細かいコンピュータのバグすら見つける僕が見落とすと思うか?」

「ぐぬぬ……機械関係だったら勝てないから何も言えない……」

「にしても、緑丘先輩。何でそんなに疲れているんですか?」

「え、それは……」

 

緑丘先輩は口を開いて話を始めた

いろいろ気になったところはあったけど、それよりも……

 

「じゃあ、まさかスピリットの攻撃に巻き込まれたんじゃ……」

 

私が気になったことを荻野さんが言ってくれた

 

『彩火。少し変わっていいかしら』

「わかった」

 

私はスカーレットに人格が変わり……すぐにわたくしはさっきまで考えていたことを話した

 

「いや、きっと大丈夫よ」

「どうして?」

「多分だけど」

 

さっきから、変なスピリットの視線と存在を感じていた

きっとそのスピリットが救ってくれたか……もしくは……

 

「静雄、手に持つカードは?」

「え?なんだこのカード?」

 

静雄の手には2枚のカード見て驚いている様子。てことは、もともとデッキに入っていたカードでは無さそうね

 

「見せてもらっていいかしら?」

「え?ああ」

 

手に持つカードにはオラクル二十一柱XIVザ・テンパランスとオラクルXIV オーバーテンパランスと書かれていた

 

『オラクルスピリット!?』

「やっぱりオラクルスピリットね」

『知っていたの?』

「可能性的にね神隠しもスピリットの影響だと考えれば神に近しい存在のオラクルのせいだと、可能性的に考えただけよ」

「……オラクルスピリット?」

「そうね。静雄には話してないものね。知らなくて当然よ。まあ、簡単に言えば神様みたいなものよ」

「なるほどな」

 

理解が早くて助かるわ

それにしたって、どうしてこんな試すようなことを……ヴェルデだけならまだしも、静雄やアリアがいる状態で、死ぬかもしれないことをなぜ……

まあ……神様の考えないなんて人や一般スピリットじゃわからないわね

 

「お前たち!!!何をしている!!!」

 

怒鳴るような声に、雷撃を受けたような感覚が走った

わたくしは声がした方に振り返る。もちろん皆さんも

振り向いた先には頭が煌めく白いきもの?を着たこの社の管理人かしら?そんな雰囲気があった

すると、エマが一歩前に出て、不安そうな手つきで

 

「これに関して……友達が迷い込んでしまっていて、探すために入っただけなんで」

「そうか?なら、いいんだが……」

 

あっ、いいのね

 

「最近、ここら辺にゴミを捨てるやつがいるからな。さっきも、ゴミを拾ったんだ」

 

男性の手には半透明の袋を持っており、中に入っているのが分かるくらい膨らんでいる

 

「そうなんですね」

「てことは、あなたはここの住職さんですか?」

 

アリアの言葉に男性は頷いた

 

「にしても、よく手入されているわね」

「上から目線が気になるが、まあいいや。ここは毎日手入している。汚れたらいけない場所だからな」

「汚れたらいけない場所?ここはそれほど神聖な場所なんですか?」

 

エマの言葉に住職は頷くと、この社の逸話を話始めた

 

「この神社は代々、平和を齎すと言われている」

「平和を?」

「そう。遥か昔、ここを治めていた将軍は頻発する戦いに何度も敗戦をし、領地も取られていた。そんな将軍は最後の希望にかけて、この神社に参拝に参った。『ただ私が治めている民をどうかお救いください』と願うと空から緑色の呉服を纏うおなごが出てきたそうだ。おなごは天啓を将軍に授けると霧のように消えてしまったようだ。

天啓通りに戦に出ると、戦いに勝つことができた。奪われた領地を取り返していき、元の広大な領地に戻すことができたそうだ。その後は大きな戦は起きず、恵みにも困らず、子も困らず、平和な領地となったそうだ」

「なんだか、素敵な物語です」

「それからこの神社は小さな国が勝利を収めたことで、勝利の神として崇められ、全国から豪族が集まったそうな……この社に伝わる話はこんなところか」

「勝利と平和を導く社……わたくしの国にも欲しいわね」

「そう言えば女の子って見てないですか?緑の巫女服を着た女の子なんですけど……」

 

そう言えば、さっきの話に出てきていた子ね

すると住職は小首をかしげて

 

「いや、そういう話は少しは耳にするんだが、見たことないな」

「え、でも管理してるからって言ったような……」

 

静雄の言葉に住職は大きなため息をついた

 

「やはりそうか……別に親戚でも無いんだが……ここに来た人にたまに言われるんだよ」

 

やっぱり……わたくしの推測は間違ってなさそうね

 

「訳わからん話はやめて、そろそろ昼だ。早く帰りな」

「ええ、興味深い話をありがとうございます」

「急に丁寧語……まあ、いいや」

 

そう言って住職は社の中へと入って行った

 

『スカーレット。なんか気づいたような反応してたけど?』

「もしかしたら、その女の子がテンパランスなのかもね」

「え、どういうこと?」

 

まあ、そういう反応になるわよね

 

「言葉のままよ。テンパランスが静雄たちが話していた子になって静雄たちに試練を与えたんじゃないかしら?」

「え、スピリットが人になれるのか!?」

「ええ……まあ……」

「なんか引っかかった言い方ねスカーレットちゃん」

「なんでもないわ……」

「まあ、神が人に変身するのは神話でもよくあるし、無くはない話だな」

「それで静雄くんとアリアちゃんだけを似た世界に行かせて試したってことだよね」

「まあ、そうね」

 

真氏の言葉にみんなが納得したように頷いた

それと同時にある疑問が生まれた

 

「だけど、何で俺たちだけ?」

 

誰もが思っていた疑問

 

「神様の考えを理解しようとするのは無駄な時間を過ごすだけよ。それよりも、帰りましょう。長居するのは迷惑だわ」

「そうだね。みんなでラボに戻ろう!」

 

エマの言葉にみんなが頷いて社を後にした

 

 

              ☆

 

 

「ふぅ~やっと行ってくれたな……」

 

静雄達を導いた彼女は御社殿の上でスカーレット達にバレないように見守っていた

 

「その格好でいるんだなテンパランスよ」

 

テンパランスと呼ばれた彼女は後ろを振り向くとザ・マジシャンが降り立つ

 

「マジシャンか。この世界で行動するにはこの姿が楽だからね」

 

そう言って彼女の背から機械の羽が生えてきて、体も機械の鎧のようなものに姿を変えて、顔も凛々しい顔から鳥類の顔へと変わり、ザ・テンパランスの姿となった

 

「ジャッジメントが再び動き出したからな。リユ・ニオン・スカーレットたちにはやつを止めてもらわないと」

「……我らも前のように力が戻ればこんなことをしなくても済むのだが……」

「無いものに縋るのは愚の骨頂。今はあの子達に任せよう」

「そうだな」

 

そう言ってスカーレット達を見守る2体のオラクルスピリットだった

 

 

─────────────────────────────────

 

 

『どうもキッドチャンネルでした!』

 

若葉色のセミロングで中性的な顔をしている中学生くらいの男子が薄暗い部屋で動画編集ソフトを閉じると、マウスから手を離し大きく背伸びをする

 

「やっとー編集が終った〜」

 

勢いよく手を下ろし、椅子から立ち上がった

 

「碧!ご飯よ!」

 

一階から響く女性の声に「はーい!」と中性的な声で返した

扉に手をかけた瞬間、窓を叩く音がした

 

「まただ……」

 

碧は窓の方に振り向いた瞬間に、意識が一瞬で抜け取られる感覚が走り碧はその場に倒れ込んだ

無機物の人形のようになった碧の指がピクリと動いた。そしてエンジンが掛かるように少しずつ体が動いていき、ふらつきながら立ち上がった

 

「全く……こんなことをして起きないといけないのは嫌だな……」

 

ふらつきながらカーテンを開けた後に続けて窓の開ける。窓の先には緑色のクワガタのスピリット、ガタルの姿があった

 

「リュイ、注文されていたスピリットだ」

 

ガタルは碧の体に宿ったリュイにカードを渡した

 

「流石だよ!ガタル!やっぱり有能くんだね~!!」

 

リュイはガタルからカードを受け取ると

 

「うん!リュイが欲しかったモーレンカンプだよ!ありがとね!」

「まあ、これくらい余裕のこっちゃ!」

 

「碧!!まだ降りてこないの?」

 

「宿主のおふくろに呼ばれてるみてぇだな」

「そうだね。後は情報とかある?」

「そうだな。ランポの野郎が契約したみてぇだ」

「え〜!また、リユ・ニオン・スカーレット側の戦力が上がったの〜、さっさと殺そうよ!なんで、フェルマはあんなに控えめなんだよ!」

 

フェルマの考えに文句を言い放つリュイ

 

「じゃあ、またなんかあったらよろしく!」

「ああ」

 

そう言ってリュイは窓を閉めて、ゆっくりと目を閉じる

そして目を覚ますと

 

「あれ?何でまた僕は窓際に……」

 

碧は不思議に思いつつ、部屋を後にした

リュイとガタルの暗躍を何も知らないまま……




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