魔入りました!モルテちゃん   作:ピースくんちゃん

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更新頑張るとは言ったものの、相変わらずの亀更新になったしまった…。


第二十話『羨ましいなと、ただそう思った』

 

 

 

 

親に売られ突然魔界に連れ去られ、あれやこれやと悪魔学校に通うことになって…最初は、右も左も分からない知らない世界で不安でいっぱいだったけど。初めて、心から友達と呼べる存在に出会って、今の僕は前の僕では考えられないくらい生き生きした楽しい生活を送っている。今でもたまにこれが夢なのではないかと思ったりもする。

でも、これは紛れもなく現実で大切な僕の宝物だ。

意図せず下手したら四肢が爆散する禁忌呪文を読み、アズ君に決闘を申し込まれたりいろいろ物騒だった学校一日目の入学式。それだけでも濃い始まりだった。

勿論そんなことがあって怖くて、次の日学校に行きたくなかった。悪魔の常識についていける自信がなかった。あの時は悪魔に食べられないかとビクビクしてたっけ…。

でもお人好しで頼みごとに弱い僕は、勇気を出して結局学校に行ってしまった。

学校二日目では、使い魔召喚があった。

そこで、担任のカルエゴ先生と、そしてもう一人その後クラスメイトになったある、女の子と出会った。

その女の子の第一印象は綺麗なお人形、だった。

ボサボサの艶のない腰まである長い髪。見つめていると真っ黒な闇に吸い込まれてしまいそうな瞳。恐ろしいまでに整った人形のような顔。真っ白く如何にも不健康そうな肌。そして女の子は悪魔なんだだとここは魔界だと改めて思い知らされる特徴的で主張の激しい角と尻尾。

僕は女の子に見入ってしまった。

女の子の瞳に吸い込まれていきそうな感覚に陥った。

僕は無意識に女の子の挙動一つ一つを目で追っていた。無表情で整った人形の顔が崩れ、ニカッと笑った。そんなふうに笑うんだ。

「カルエゴ先生い、いい天気ですね!」

喋るんだ。そんなに明るい声なんだ。

僕は女の子のとる行動のすべてが新鮮で不思議だった。先ほどまでの無表情のお人形のような女の子は消え目の前には元気で活発な女の子がいる。その変わりようにかどこか不自然さを感じてしまう。

 

女の子が召喚した使い魔は、かわいいウサギのお人形だった。アズ君から召喚された魔獣は主人に似ると教えてもらった。女の子が召喚した使い魔は女の子のように可愛らしい姿をしていた。つい触ってみたいという好奇心が湧く、やっぱり人形だからモフモフしてるのかな…?僕と同じことを思ったのだろう近くにいた男子生徒が、呆けた顔でウサギの人形に触れようとした途端、可愛らしいウサギの人形は巨大で不気味な姿に変わり、不自然なほどまでに大きくなった口をぱかっと開いた。ドロドロと大量の涎がウサギの口からこぼれ、床に落ちる。するとジュワアという煙を出し床が溶けていた。人形のものとは思えない鋭く不気味に光る歯、いや牙が見えた。顔から血の気が引いていき喉がカラカラになっていくのを感じた、足が震える。僕の今までの経験が警告を鳴らしていた。危険だ、と。

 

初日の騒動より二日目のインパクトのほうが大きくその時の光景と感じた衝撃を今でも覚えている。

突然人形の姿が変わり男子生徒を飲み込んだことと、その状況をケラケラと笑っていた女の子のことが忘れられない。そして突然顔を青くして冷や汗をかきだした表情も印象に残っている。

その時僕はその女の子の衝撃で周りが見えていなかった。周囲がどんな顔で女の子を見ていたのか…。

僕は何故か自分でもよくわからないが女の子と喋ってみたくなった。興味が湧いた。あんな怖い光景を目にしたのにあんなトラウマ物の光景、今すぐにでも記憶から忘れさせたいのに何故か、何故か女の子のことを知りたくなった。話したくなった。

だがその後、カルエゴ先生を召喚してしまいその日は女の子と喋る機会はなかった。

召喚され使い魔の姿になったカルエゴ先生のことを煽りながら写真を撮っていたのが印象に残った。次の日その写真が空から降ってくるという出来事があったのだが、その写真はブレッブレで心霊写真のようだった。女の子は写真を撮るのが下手なようだ。よく見るとこの紫色の物体がカルエゴ先生だとわかる程度の酷い写真だった、そしてもっとよく見るとカルエゴ先生の隣に30代くらいの女の人がうっすり映っているように見えたが、そんなわけない。だってそんなひとあの場にいなかったのだから…。

心霊写真事件の日含めて、次の日その次の日、次の日とその女の子に会うことはなかった。ただ、その三日間で僕にはアズ君とクララという大切な友達ができた。

 

女の子と喋る機会が無いかなと考えていた僕だったが、案外その機会は早く訪れることになる。

カナキリの長さんの背中に乗って飛行試験のゴール場所に着いた時、女の子が笑って僕に手を振っていたのだ。思いもよらない出会いに僕は少し驚いたが、冷静を装い手を振り返した。

同じクラスだということを知り内心とても嬉しかった。

飛行試験はアズ君が一位でその背中に乗っていたクララが二位。あの女の子は下から数えて三位だった。最下位の僕が言えたことではないがなかなかに下の方の順位だった。

ゴールに到着した順に位階袋鳥という位階のバッチを授けてくれる鳥からバッチを貰う。

女の子の位階は5(ベト)だった。一位のアズ君より高い位階に皆が驚く、だがすぐに納得したように頷き合う。「まあ、ヴェルモだしな。」皆がつぶやいた言葉に当然僕は疑問を抱いた。魔界に来てまだ一週間も経ってない僕は常識なんて一切知らなかったため、[ヴェルモ]というものが何かわからなかった。

だが、みんなの言い方でよくないものだということは感じ取れた。

「ヴェルモってなに?」

質問するか迷ったが疑問をそのままにしていてもモヤモヤするだけだと思い僕は重い空気を断ち切るようにアズ君に聞いてみた。アズ君のこたえは

「、ご存じないのですか…?」

なぜ、知らないんだ。マジかよコイツという顔だった。

アズ君によるとヴェルモというのは魔界では常識なのだという。知らないものはいないと。

「彼女はヴェルモ・モルテ、…絶対に関わらないように。」

アズ君は僕に詳しくは話さなかった。ただ、ヴェルモというのは下級貴族の家ということだけを教えてくれた。そして、危険だから関わるな、ということを。

僕は、胸がモヤモヤとしたのを今でも覚えている。その日、気になっていた女の子、モルテちゃんに僕が話しかけることはなかった。

次の日、モルテちゃんは遅刻してきた。

そしてポテチ片手に、僕に話しかけてきた。せっかくなので気になっていた1つ、飛行試験でスタート地点になぜいなかったのかを聞く。

すると、モルテちゃんは笑いながら答えてくれた。

どうやら昨日も遅刻して、飛行試験のスタートの時にいなかったそうだ。途中から参加したのだという、飛行試験だけどずるして転移魔術を使ったことも教えてくれた。魔法って便利だな、と思いそんな魔術があるんだすごいね!と興奮して言うと僕の反応に気を良くしたのかニカッと笑い転移魔術の不便な所を教えてくれた。

「行ったことのある場所にしか行けないんだよねー。割と不便だよ、魔力もそこそこ消費するし。移動距離が長いと余計ね。魔力に余裕がないときは使うの極力控えてるんだー。」

ここまで聞いて、僕の中にある疑問が浮かぶ。

「じゃあ、行ったことがあったの?ゴール地点に。」

言った場所にしか行けないということは、行ったことがあるということになるはず。飛行試験は初めてのはずだから…。

「まあ、…カナキリ谷に、ね。あそこ割と有名な観光?地で、何回か行ったことあるんだ。そこからは全速力でゴールまで飛んだんだ。」

モルテちゃんはどこか含みのある笑顔を浮かべていた。どこかその笑顔が僕は怖く感じた。瞳の闇がより深くなったようで。

「私、モルテ。気軽に「モルテちゃん」って呼んでね。よろしく入間君。」

「こ、こちらこそよろしく!」

これが、モルテちゃんとの初めての会話だった。

それから一週間モルテちゃんと喋ることはなかった。

ちなみに後から聞いた話によるとカナキリ谷は有名な自殺スポットで地面の中には大量の死体が埋まっているんだとか。まあ、噂なので真実は分からない。夜になるとスコップを持った怪しい男たちが何かを運んでくる、という噂もあるらしい。まさか、ね。

 

それ以降モルテちゃんと関わる機会はほとんどなかった。たまに、ポテチをくれたり、少し談笑したりはしたけどあまり関わる機会はなかった。

よくモルテちゃんを見かけて喋る機会はあったけど…大体見かける度、カツアゲしてたから…。

話しかけにくかった。モルテちゃんはとてもガラが悪い。カツアゲは日常茶飯事。授業中にラーメン食べてるし、よく誰かを呼び出して、パシらせている。

校内新聞を見るたび、よく暴力沙汰を起こしてるみたいだし、生徒会選挙の時は、暴動を起こしたり、投票の不正を行っていたみたいだし…。

ちょっと、話しかけずらい。

それに、アズ君もモルテちゃんと関わってほしくないようで、僕にモルテちゃんが話しかけようとしてくるたびに炎で壁を作って近づかせないようにしてる。

モルテちゃんがなにか問題行動をした時には、アズ君が説教するのが、当たり前のこととなり日常風景となりつつある。仲が悪いようで、二人は仲がいいのかもしれない。クラスでモルテちゃんがよく話すのは、アズ君だから…。モルテちゃんはあまりクラスメイトと関わろうとしない、楽しく談笑はしているけど、深く関わろうとはしない。

連絡先も交換しないし、ご飯も一緒に食べない、もちろん休みの日に誰かと遊んだりもしない。

別に、それが悪いとは言ってるわけではない、ただ…。

どこか、みんなモルテちゃんと距離を置いている気がする。

普段の行動もあるかもしれないけど、…[ヴェルモ]というのが一番大きい気がする。

クラスメイトはまだいい、酷いのは他クラスだ。

露骨にモルテちゃんを見ると嫌な顔をするし、モルテちゃんに聞こえる声で、悪口を言う。壁に誹謗中傷が書かれていたり、モルテちゃんの物が突然無くなったり、これは噂だがモルテちゃんがトイレをしていた際に水を上からかけられた。なんていうのも耳にした。

酷い。

教師も人によってはそれを見て見ぬふりをする。

こんなのイジメじゃないか、それも何人かではなくほぼ学校全体で行われている。

モルテちゃんはこんなことをされて辛くはないのだろうか。学校に来るのが辛くないのだろうか。

僕はやられてもやり返さないモルテちゃんが見ていられなくて、許せなくてある日聞いたんだ。

 

「モルテちゃんは普段決して良いとは言えないことをしてる。暴力はよくない。だからこそなんでやり返さないの?いいようにされて、何時もの様に理不尽に暴力でやり返せばいいじゃないか。なのに、なんで…。」

 

僕は自分の気持ちをモルテちゃんにぶつけた。少し言い過ぎた、とも思ったがそれだけ僕はモルテちゃんに怒っていた。僕の気持ちを知ってほしかった。

モルテちゃんの今の状況が許せなかった。

 

「…好きなようにやらせればいい。私だっていつも好き勝手してるし。勿論やられたらやり返してるよ。ただそれが表面には見えないだけで。ね?ほら私に水をぶっかけたあの子…ふふ。まぁ、入間くんは知らなくていいよこんなことさ。みんなも忘れてるんだからー…」

 

モルテちゃんは含みのある笑みを浮かべ、よく分からないことを言う。その笑う顔が仕草が、酷く不気味に思えた。

 

 

僕はモルテちゃんが苦手だ。

初めて会った時から苦手意識があった。

表情は笑っているのに、目が笑ってない。

何を考えているのかよくわからない。聞いても曖昧に答えるだけ。

暴力を何のためらいもなく振るうし、誰かを傷つける人は嫌いだ。

でも、それ以上に普段理不尽の権化ともいえる振る舞いをしているのにもかかわらずやり返すべきときに力を振るわない。解決できる力があるなら…。

自分が皆から疎まれていることをわかって、クラスメイトと自分から距離を置いているのも許せない。

そんなことで気遣われてもなにも嬉しくない。

僕はモルテちゃんが苦手だ。

普段好き勝手やっているくせに変な所で相手を気遣う。

僕は……、僕はモルテちゃんと仲良くなりたい。

魔界についてよくは知らない。[ヴェルモ]というのが魔界ではよくないものなのかもしれない。

でも、僕はヴェルモではなく、モルテちゃんと仲良くなりたいんだ。

ヴェルモ?そんなの知るか。

僕はモルテちゃんと友達になりたいんだ。

ヴェルモではなく、モルテちゃんを知りたいんだ。

今度の遊園地モルテちゃんを誘おう。

モルテちゃんに笑ってほしい。皆と遊ぶのは楽しいんだって、それを嫌でもわからせてやる。

そして、もう気遣わせたりしない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

遊園地に遅れてくると言っていたモルテちゃんは結局最後まで来なかった。

皆と遊ぶのあんなに楽しみにしていたのに…。

あんな嬉しそうな顔初めて見たのに…。

なんで、来なかったんだろう。

…きっと理由があるはずだ。

 

 

 

 

僕はウォルターパークを魔獣から救ったヒーローとしてパレードをしているとき、遠くの半壊した建物の屋根にモルテちゃんを見た気がした。

もう一度目をこすって確認するとモルテちゃんはいなかった。

見間違い、僕はそうは思わなかった。

フードを被っていて顔や特徴的な角は分からなかったけど、僕は遠くに見えたあの人物がハッキリモルテちゃんだと思った。

なぜそう思ったのか…。

どこか悲しそうで、放っておけない気がしたから。

 

モルテちゃんと、話したい。

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

プルルルルプルルルル

 

 

魔獣の目の前に来たっていうのにタイミング悪く携帯が鳴る。あぁ、早くみんなと遊びたいのに…。

舌打ちしながらも携帯の画面を確認する。

 

 

「、チッ」

 

 

着信相手に思わずまた舌打ちをする。

もしこれが叔父だったら着信拒否するんだが…。

はぁ…。

よりによってこいつかよ。

毎度毎度嫌らしい。タイミングに悪意を感じる、性格悪いのが伺えるな。

 

「、もしもし」

 

「今すぐに帰ってこい。またはその場を今すぐ立ち去って身を隠せ。」

 

 

そんなこと言われるまでもなく分かっている。

こんな騒ぎが起きたら魔関がすぐやってくるだろう。

私がこの場にいることを魔関に見られるのは不味い。

そんなの分かっている。でも、

初めて、遊びに誘われたのに…。

このまま、帰れって…?

目と鼻の先に遊べる玩具があるのに?

ふざけるなよ。

 

 

「嫌だと言ったら?」

 

 

「死神、いや0013番。お前はそんなことは言わない。」

 

 

、…せめて目の前で暴れている魔獣だけでも殺して。

 

 

「証拠を残すんじゃないぞ。特に、魔力はな。お前もよく分かっているだろう?」

 

 

チッ

 

 

「今すぐ身を隠す。流石なんでもお見通しってか。当主」

 

「お前がどういう思考でどういう行動をとるかなど手に取るようにわかる。0013番」

 

 

 

私は苛立ちを隠さず通話を切る。

ハア、何が手に取るようにわかる、だ。

この老いぼれ爺が。

私に監視をつけといてよく言うよ。

監視を五人もつけて、そんなに私が怖いか?

はあ、監視は私のためでのことなんだろうけど、一日中誰かに見られているのは気分が良いとは言えない。あー。イライラする。プライベートの侵害もいいことだ。

少しでもの抵抗ってことで、もう少しこの場に残るか。

思春期、反抗期のお年頃ということで許してもらおう。

気配と魔力を完全に消して、一応予備の認識阻害眼鏡をかける。

これで良し。

魔力を残さないように魔術一つも使えない。面倒だ。

あ、そういえばウォルターパークって、カララギ通りっていう闇市があったけ…。掘り出し物があるといいな。

 

 

闇市で面白そうなものを見つけたのでお小遣いで購入し、帰ろうと飛行しようと屋根に上がった時、遠くに盛大にパレードをしているのが見えた。ここまで盛り上がっている声が聞こえる。楽しそうな笑い声。その中心には、青い髪のとても見覚えのある少年。眩しい。

私はそれに背を向け逃げるようにその場を飛び立った。

私は今、どんな顔をしているのだろうか。

鏡が無いのでわからない。鏡をもし持っていたとしても見たくないなと思った。

私は、今とても酷く醜い顔をしているだろうから。

 

 




入間君はモルテちゃんの存在で変化が起きるかもしれませんね。
主人公というものは厄介ごとに足を突っ込んでいくんですよ。関わらない方がいいのに。

二次創作って考えてて楽しいけど自分の文章力の無さを痛感してしまう…。
ちなみに、モルテちゃんの今回の私服↓

【挿絵表示】


モルテちゃんの角は目立つのですっぽりと隠れるうさ耳フードをチョイス。短パンはただ単に太ももを描きたかったら。
色なしでごめんなさい。
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