浜の小さな大魔神です
今回は試合前の準備段階のお話です
入学して,1ヶ月ほどの時間が経った。
相変わらず一年生はサーキットや
ランメニューが主体なのだが,
この日は午前中で練習が終わる。何事なのだろう?
やたらと先輩、特に二軍の人たちが
ピリピリしている気がする。
なんか大事な選考会でもあんのか?
そんなことを走りながら考えている。
元々走る時は思考に没頭してしまうタイプなので
ペースは落ちない上に余計なものにリソースを使わない分
肉体的には多少疲れても精神的には全然疲れない。
走り終わり,サーキットトレーニングが終了すると
声がかかる
片岡監督「一年生!全員集合!!」
監督に呼ばれて,全員が一斉に集合する。
サーキットと半々で
今日はみんなと離れていた秀悟や栄純
降谷や春市などがくる。
何なら今日は一人ぼっちで寂しかったくらいだ
そうこうしていると、
監督が目の前に来て,話が始まる。
片岡監督「いきなりだが、これから来る春の大会に向けて二、三年生の二軍と練習試合もとい紅白戦をしてもらう」
周囲からざわめきが走る
当然だ、二・三年生はわからないが
少なくとも俺たち一年生は碌に野球などしていない
やったことなど走ってサーキットしたくらい
しかもいきなり上級生
戸惑うなという方が難しいというものだ。
片岡監督「試合は今週末の日曜日。つまり明後日だ。今日と明日の午後はフリーな時間とする。一軍メンバーは遠征に出るため基本的にサブグラウンドは自由に開放しておくから一年生は好きに使え。俺は当日どちらのベンチにも入らずに審判に入るつもりだ。スタメンなどはこちらから前日に伝える。全員に出番はある。それは絶対だ。だからいつでも試合に出てアピールする準備しておけ!」
全員「「「「「「はい!!!」」」」」
片岡監督「それから東条,有藤,沢村,降谷,金田の5名はサーキット終了後すぐに俺のところに来い。」
そして,終了後に俺たちは監督の元に集合した。
基本的にここに呼ばれたということは
話の内容は試合のこと
要するにバッテリー系の話だろう。
片岡監督「今年の投手はお前達の予定だ。基本的にこの5人で投げてもらう。東条が先発,2番手に金田,3番手に降谷,4番手に有藤,最後に沢村の予定だ。ブルペンに入りお前達は投球練習をしておけ。どのくらい投げるかなどはとりあえず任せる。日曜日はいつでも投げられる準備を怠るなよ」
帝「イニングスの予定はありますか?」
流石に5人で投げるのだ。
ショートイニングなのは間違いないだろう
だからこそこれは確認の質問でしかない
片岡監督「出来次第だが,一人がMAX2イニングス以上投げることは基本的にはない。有事の際は別だかな」
帝「なるほど。わかりました。ありがとうございます」
帰ってきた回答もおおむね理解できる想定通りの物
そして,俺たち5人が残されたのだが
こうなれば燃えてくるうるさいやうが一人いる。
沢村「なら早速ブルペンで投げようぜ!!!!!!」
沢村だ
元気はいいのだがいささか早とちりが過ぎる
ここは一応なだめるだけはなだめとこう。
帝「まぁ待て待て,とりあえずキャッチャーを一人捕まえてそいつに受けてもらったほうがいい。残り四人はキャッチボールするなり別のことやるなりで良いけど。とりあえずみんな自己紹介からかな?キャッチャーの人が来たらまとめてやろう。」
沢村「ならおれがよんでくるぜー!!」
帝「相変わらず流石のバイタリティだな」
東条「有藤って,東京武蔵シニアの有藤帝だよな?覚えてるか?俺のこと。」
帝「確か,松方シニアの東条だろ?同年代であの年全国で投げ合ったのが二人しかいなかったからよく覚えてるよ」
東条「覚えていたのか,なんか嬉しいよ。同じチームとして,それでライバルとしてよろしくな。」
帝「あぁ、よろしく頼むよ。お互いがんばろうな」
(ぶっちゃけ彼が投手として通用するかといえば、首を横に振るしかないね。正直彼はセンスでやってた感が強い。まぁ日曜日に現実を知るでしょう。そっからが本質だな)
別に帝は彼を軽んじているわけではない
ただ,投手としての彼に興味が湧かなかったのだ。
基本的に帝は興味の湧いていない相手でも覚えている。
自分の参考になりそうな部分があったり,
もし相手になった時に過去のことでもデータがあると
変化がわかりやすかったりするからである。
ただ、それを差し引いても彼が投手であるということに
疑問符を思い浮かべざるを得ないほど
正直彼の投手能力に帝は懐疑的だった。
降谷「早く投げたい。」ゴゴゴ
そんなことを考えている横で勝手に気合十分の降谷
またそれを落ち着かせるのに俺は駆り出される。
帝「降谷お願いだから落ち着いて。気持ちはわかるけど抑えて。ね?」
降谷「うん」
正直,球速だけでも
彼の方が東条よりポテンシャルははるかに上だろう
全国などに出てないからそこまで注目されていないというだけで
帝(マイペースだし基礎からだろうけど)
そこまで認めながらも
いまだに辛口な感想を帝は持っていた。
すると、、、、
沢村「おーーい!キャッチャー確保したぜ!」
帝「思ったより早かったなナイスナイス。」
沢村「ヘヘ、任せとけ!」
帝「ほんじゃあ,知った顔もそれぞれいるかもだけどとりあえずみんなで挨拶と行こうか。言い出しっぺだから俺からね。有藤帝です。3年の4月までは東京武蔵シニアってところにいました。最高成績は2年の時の全国優勝と世界大会の優勝です。少し実戦離れがあるからみんなよりブランクがあるし,実力として少し劣るかもしれないけど,精一杯のことをやり切ろうと思っているからよろしく」
嫌味っぽくならないように極めてさわやかになるように
気を使ってあいさつした。
降谷「じゃあ,次は僕が。僕は降谷暁。北海道から来た。中学までは軟式をやっていて,御幸先輩の記事を読んでこの高校に来ました。よろしく」
普段物静かだからこういうのは苦手だと思っていたが
寡黙なだけだったようで安心した
金田「次は俺かな?俺の名前は金田だ。硬式やっていたが東条や有藤ほどすごい成績はない。でも,俺も投手を諦めるつもりも背番号譲る気もないぜ!よろしくな!」
失礼だが、俺は彼の名前に覚えがない
恐らく戦ったことがないことも理由に挙げられるが
単純にチームが全国に出ていないのも大きいのだろう。
とはいえ、中学の成績は秋までそれ
別にそれとこれとは関係ないのだ。
自身を持って投げてもらいたい
東条「じゃあ,次は俺が。俺の名前は東条秀明。松方シニア出身だ。俺も投手として活躍したくて青道にきた!日曜日はみんなで頑張ろう」
ここでこれを言うだけのメンタルはあるようだが
若干気圧されている感が強いな
大丈夫か?
狩場「俺は狩場 航。キャッチャーだ。特にすごい何かがあるわけじゃねーけど,みんなの良さを出せるように頑張ってリードする。よろしくな」
こいつが沢村の連れてきたやつか
金田同様彼のことも俺は知らない
だが、ガッツはありそうなので頼りにしていこう
沢村「最後は俺だな!俺の名前は沢村 栄純。この学校でエースになる男だ!エースの中のエース!キングオブエースになるのが目標だ!よろしくな!!」
相変わらず元気満点元祖あほの子
何というかここまで清々しいと
いっそ頼もしさすら感じるのだから面白い
彼の持つ他とは違う独特のカリスマだな。
帝「じゃあ,みんなの自己紹介も終わったことだし練習しようか。投球練習の順番はとりあえずジャンケンで。降谷と俺はまだアップすんでないから先に3人で誰からでも良いから順番に投げていってくれ。」
狩場「一人で全員捕るのはきついぞ」
それはそうだ。
仕方ない、ここは俺が一肌脱ごう。
帝「俺最後でいいから俺が二人受け持つよ。3人ならいける?」
狩場「それなら全然いいが。お前はいいのか?」
帝「うん。まぁ他のやつのボール受けるのも嫌いじゃないし。とりあえず順番だけ決めようか?」
じゃんけんをした結果
最初に勝ち抜けたのは東条
次に沢村、金田、降谷の順だ。
俺はみんなのボールを取らないといけないので
最後になったわけだ。
こうして、受け持ちが
狩場→東条,金田,帝
帝→沢村,降谷となった。
沢村と降谷は俺が受けるのでまずはアップとなったので,東条が最初に投げて、その間に俺と降谷,金田と沢村はアップとなった。
キャッチボールにて
金田「沢村!キャッチボールで曲げてくるのやめてくれよ」
沢村「なに!?曲がってるか金田?」
帝「お前の果てもとで動くからキャッチボールは特に意識しろって言ったじゃん」
沢村「すまん!!!」
降谷「有藤、僕も投げていい?」
帝「お前はまず胸元めがけて投げてこい」
コクリとうなずいて
ゆったりと足を上げる降谷
そのまま投げた球は
俺の頭の上を超えていた
帝「はぁ」(大丈夫かな?これ)
不安感を隠すこともしない帝であった
投球練習にて
帝「ほいじゃあ,先に沢村で次が降谷な。とりあえず30球ずつ受けるわ。今日は久々で投げすぎないことが大事だからそのくらいにしておこう。東条達もそれでいいか?」
東条「まぁ,いきなりならそんなもんだよね。明日は?」
明日は試合前だ
疲れすぎもよくないけど
投げなすぎはもっと良くない
帝「明日は50球だな。後はネットスローとシャドーで形作りして,ダウンにちょこっと走ったらおしまいかな」
金田「よくそんなあっさりメニュー思いつくな」
金田はやたら褒めてくれるがこんなもん
特別驚くことじゃなかろう
帝「シニアの時の受け売りだな。それに,何もこのメニューじゃなきゃダメなんてことはないし,強度が足りないなら夜とかに自主でやってもいい。」
個人的にはこのくらい緩い感覚だ
俺一人ならもっと投げてもケアが効くからいいが
正直この人数さばくのはきつい
金田「なるほどな」
帝「沢村もおどついたりキョドッてないで早く投げるぞ」
沢村「お、おう!」
こうして投球練習を始めようとした時だった。
三瀬「あのー!!もしよかったらビデオカメラ借りてきたんでビデオ撮りましょうか?」
奥から歌菜がカメラを持ってきていた
帝「歌菜!?マジ?超助かる。お願いしていい?」
願ってもない申し出に俺も首肯で返す。
三瀬「うん,任せて!」
ふんす!って効果音が聞こえてきそうだ
なんかいちいちほんわかさせられるな彼女には。
しかも、狩場もなんか顔赤くしてるし
まぁ彼女めちゃくちゃ美人だもんな
気持ちは超分かる
だが,この申し出は非常にありがたい。
俺以外の奴らはどうしようかと悩んでいたが
これなら全員撮ってもらって差し支えないだろう。
沢村「それじゃあ行くぞ!」
三瀬「カメラOKです」
帝「ほいじゃあとりあえず,真っ直ぐから」
沢村の一球目はストレート。
高く上がった右足がしっかりと地面を踏み締めて
鞭のようにしなる左腕からボールが放たれる。
パァァァァァン!
非常に気持ちの良い音が響く。
ストレートを受けた感じで帝は
帝「いいね。フォーシームになってるわ」
しっかりと修正できていたことをほめる
沢村「だろだろ!いい感じだよな!?」
それに気をよくしたのか
沢村もうれしそうだ
帝「そのまま何球か続けて投げてみな。」
そして,7〜8球ほど受けたのち,帝は次の注文をする
帝「次,カットボール」
帝が沢村には施したもの。それはフォーム矯正と変化球だった。
フォーメーション練習に関しても,みんなに協力はしてもらってるのだろうが
流石に強豪校のスピードは中学軟式
それも地元の弱小校とは桁外れに速いのでまた違ってくるのだろう。
フォームに関しては右手の壁の意識と
腕を遅らせるようなフォームを教えたのだが
想像以上にダイナミックになっていて驚いている。
そして,変化球に関しては
ムービング系のボールとウイニングショットになりそうなボールを教えた。
スターターとしての能力もさることながら
中継ぎのリーサル・ウェポンとして使い物になってほしいと思ったからだ。
その一つ目がカットボールである。
沢村「んじゃ,行くぜ!」
同じフォームから繰り出されたそれは,手元で急激に食い込む
シュッ! クク ギュン!
食い込むように右打者の胸元に吸い込まれたボール。
これを帝は完璧に捕球する
すると
帝「カットとしては十分に機能するな。次はチェンジアップかな?サークルチェンジ」
沢村「ふっふっふ。遂に俺の秘密兵器だな!」
帝「もう球種もバレてる上にこれから全員にさらすのに秘密もくそもない。後ろが待ってるんだ速く投げろ」
(((((い、言っちゃうんだ)))))
彼だけは気が付いていないが根本的に
彼はド畜生なのだとここにいる全員は思った。
若干ぶー垂れながらも次に投げたボールは
彼が将来的に自身のウイニングショットの一つとして完成させるとある変化球。
その原型である
フワっ スッ パシ!
少しストレートとは毛色の違うミットの音。
それを聞いて沢村は。
沢村「帝!どうだよ今の!」
帝「まぁ,及第点だな。もうちょい低めじゃないと持ってかれそうではあるな」
狩場(今ので及第点なのかよ!どんだけ高い次元の話してんだこいつら!)
今の時点でもすでに通用しそうなレベルにあるそれを
及第点レベルに表している彼らの求めている
決め球のレベルの高さに狩場は戦慄した
歌菜(すごいなぁ帝君。ピッチャーなのにすごくきれいなキャッチャー。やったことあるのかな?)
歌菜は人知れず彼が捕手を普通にしていることに驚いていた
帝「沢村,後五球な」
この後ストレート五球で沢村は終了した
つぎは降谷である。
降谷「行くよ」
降谷は,沢村とはまた違った方向性において天才だった。
それは
ドゴーーーーーーン!!!!
帝「痛っつ!」
この浮き上がると錯覚するほど威力のあるストレートである。
球速だけ見れば既に高校野球の全国レベルで通用しそうなほどである。
降谷「どう?」
しかし,そんなボールに欠点はある。それは
帝「うん?コントロールが悪い。こんな高めにすっぽ抜けたみたいな真っ直ぐがこの威力で飛んでこられるのは基本的にキャッチャーとして迷惑」
ガーンという効果音が聞こえそうなほど落ち込む降谷
だが,残念ながら事実なのだから仕方がない。
彼は球が速くてノーコンという速球派のお約束のようなやつなのだ。
それに,サーキットを見てる感じはスタミナもなさそうなのが不安である。
帝「でも球威と球速,ボールの圧力なんかは沢村とかとは比にならないくらい圧倒的だな。これならまず普通に投げれば撃たれないよ。ど真ん中狙って行ったって初見でポカスカ打たれるようなもんじゃない。ポテンシャル的に言えば,全国で投げてるエースにも劣らない真っ直ぐを持ってるよ。現時点で既に」
(真っ直ぐは、、な)
帝は彼が変化球を投げられないことにこれからの
夏の予選に向けて向かっていく中で不安を覚えた。
いくら早くてもこれだけでは厳しいのではないかと
そんな、帝の思惑など知る由もなく
ポワーンと今度は嬉しそうな降谷
帝「悪いんだけど,俺もキャッチング上手じゃないから捕るのが精一杯だ。許してな
降谷「うん。地元だと誰も取れなかったんだ。だから青道に来た」
帝「なるほどね。御幸先輩か」
降谷「うん。あの人なら捕ってくれると思って」
帝「まぁ,いいんじゃないの?」
その後,20球程度受けたところで
帝「手が痛い。今日はここまでで。後は狩場!俺の次はあいつの生贄になってくれ。君に決めた!」
狩場「生贄って言うんじゃねーよ!」
結局狩場は降谷の球をストライクゾーンになら
それなりにとれるようにはなった
ただ、やはり無意識に降谷はセーブしている節もある
本番でこれがどう出るだろうか。
帝「まぁ,いいや。とりあえず俺投げるから受けて」
この後,カットとシュート、スライダーとサークルチェンジを投げて1日が終了した。
あえて高速スライダーや縦のスライダー,パラシュートチェンジは封印した。
理由は簡単である。
あえて技巧派としてどこまでやれるのか試したかったからだ
まぁ,ストレートは常時130以上は出すわけだが
そんなことを考えながら
翌日もそれぞれで投げて準備を進めた
それぞれの投球準備をして当日を迎えた。
はい、と言いうわけで今回はここまでです
次回は試合に入っていこうと思っています
そこでh魔改造チューンアップした彼らに暴れてもらうつもりです
それではまた次回