浜の小さな大魔神です
最終戦まで大激戦のパ・リーグのCS争い
見ていてとても面白かった
そしてなんと、、、、バウアー戻ってきた!!
なんか骨折からCSに戻ってきた17年メッセンジャーを思い出しますね
頑張れ横浜
試合が終わって,その日の夜。
俺たちはマネージャーの2人とグラウンド近くのベンチで話していた。
歌菜「帝くんに秀悟くん!一軍なんてすごいね!それに,今日のピッチングもすごかったよ。あんなにいろんな球種が投げられるなんてすごいかっこいいね!」
久しぶりに目の前で野球を見た影響なのか
それとも単純に知り合いが出てたことが原因か
何かはわからないがともかく
彼女はとてつもなくハイテンションだった。
帝「ありがとう。歌菜にそういってもらえると嬉しいよ」
(まさかかっこいいと言われるとはな。びっくりしたけど,それ以上に嬉しいな。なんだこれ)
少しむず痒いような感触に襲われていた。
また,一方では
春乃「そ、その秀悟くん。今日のホームラン,かっこよかった,です/////」
秀悟「お,おう!サンキューな。は、春乃」
春乃「うん」
もじもじと見ていて胸が甘ったるくなるような
二人っきりの空間が広がっていた
帝「尊いね〜」
歌菜「なんだろうね?フフッ。とっても微笑ましい」
二人を外からそっと見守る二人にも
似た雰囲気は出て言るのだが
それを突っ込むものは誰もいない
寮の部屋では沢村が
地元の幼馴染とチャットをしていた
沢村〈若菜!俺はやったぞ!明日から一軍だ!これからエースを目指すぜ!〉
若菜〈よかったね栄純。頑張れ!応援してるぞ〉
沢村〈おう!まかしとけ!〉
沢村「ウォー!俺はやるぞ!」
倉持「沢村!うるせぇ!」
急に叫んだことで蹴られるのもいつものワンセットだ
降谷(ようやく,思いっきり投げられる!)
降谷は御幸一也に受けてもらえる事実
それにうきうきとしていた。
そしてこのチーム唯一の兄弟は、、、
春市「あ,兄貴!」
亮介「まさか本当に追いかけてくるなんてね。でも,ここでは俺の焼き直しなんていらない。ここはそんなに甘いところじゃないよ?」
春市「それでも!俺は兄貴と甲子園に行きたい!」
亮介「勝手にしなよ。ただ,今のままじゃあ甲子園は愚かベンチにも入れないだろうけどね」
春市「⁉︎、絶対入ってみせる!」
それぞれの決意はより堅いものへと変わっていく
東条「まさか,あんなに打ち込まれるなんて。正直凹んだよ」
金丸「俺もだ,クソ!松木や有藤,小湊に降谷に沢村まで活躍したってのに俺は何にもできなかった!」
東条「俺たち,もっと頑張らないとな。信ニ!」
東条「あぁ、必ず這い上がってやるぜ!やってやろうぜ東条!」
各々が各々の思うままに夜を過ごし
一軍に行けたものも行けなかったものも
結果の出たものも出なかったものも
思い思いの夜を過ごした。
課題と向き合い結果に一喜一憂する。
そんな高校球児らしい夜はゆったりとふけていく。
一軍合流。俺,降谷,沢村,秀悟の4人は
春の関東大会前に一軍ベンチ入りができた。
理由としては,投手力不足を補うためと
強打の外野手が欲しかったと言うことらしい。
片岡「今日から,投手陣は組み分けに入る。御幸と組むのは有藤,降谷。宮内とは丹波,小野と川上,沢村はクリスと組め。松木に関しては今日からAチームの練習に参加してもらう。本来なら体を作るべきところだが、お前の身体能力の高さや体の大きさを考慮すれば十分に適応できると判断した。レギュラーがどうとか考えずがむしゃらにやってみろ」
まさかのいきなりのレギュラー候補の太鼓判
これには秀吾も大喜びだ
秀悟「はい!ありがとうございます!」
帝「御幸先輩よろしくお願いします。」
降谷「僕も,よろしくお願いします」
御幸「来たな。ルーキーども」
御幸はどことなくうれしそうに
いつものあくどい笑みを浮かべていた
宮内や丹波,川上や小野は
いつも通りメニューが入っているのでその通り動き出す。
そしてそんな中動き出しの分からない秀吾に
御幸は軽く声をかける。
御幸「まぁ,とりあえず松木は白洲のところに行って話聞いてこい。いきなり純さんのとことか「うぉーい!そこの一年生外野手!ちょっと来いや!」遅かったか」
秀悟「え?なんすか?怖いですよ」
御幸「諦めて行ってこい。あの人は悪い人じゃないし多分大したことじゃないよ。,,,,多分」
帝「まぁ,要するにとりあえず早く行って死んでこいってことだ。はよいけ」
秀悟「この鬼め!」
涙目で覚悟を決めた秀吾はダッシュで走っていった
向かった先では、、
伊佐敷「うぉーし、お前まず名前言えや!!!」
秀悟「ま、松木秀悟!ポジションは外野を中心にしています。片岡監督から外野手のまとめ役は伊佐敷先輩だからわからないことがあったら頼っていいと言われています!よろしくお願いします!」
伊佐敷「そうか。じゃあ頑張れよ」
まさかの一言だけ
焼きを入れられるものだと思っていた秀吾
秀悟「へ?」
思わず素っ頓狂な声が漏れる
伊佐敷「頑張れって言ったんだよ!聞き返すなバカ野郎!」
秀悟「す,すみません!」
伊佐敷「この時期に一軍なんて期待されてる証拠だ。怪我しないようにすることもそうだが,今は死ぬ気でついてこいよ。下手しても俺たちが助けてやる」
秀悟「伊佐敷先輩」
まさかの男気溢れる優しさに
感極まっている秀吾
伊佐敷「まぁ,あんまりひどけりゃ焼き入れっけどな!」
秀悟「うす!お願いします!」
何としても一軍にしがみついてやるという覚悟を決めた
帝「さて,御幸先輩。俺たちはどうしますか?」
御幸「まずはキャッチボールして,そのあとスピードガンとビデオ撮りたいから三脚とカメラをマネージャーにもらってきて」
帝「わかりました。行くぞ降谷」
降谷「うん」
帝「あ、歌菜!!」
歌菜「帝くん?どうしたの?」
帝「悪いんだけど,ちょっとこれ持ってきてくんない?」
歌菜「メモ?うーん。わかった!春乃ちゃんは今外野ノックの方行ってていないし、貴子先輩か幸先輩あたりにも頼んでもらってくる」
帝「ごめんな仕事中に別の頼んで。よろしく頼む!」
歌菜「任せといて!」
フンス!と擬音が出ていそうで可愛らしい。
帝(は!いかんいかん。練習中に何邪なこと考えてんだ。集中しろ馬鹿野郎)
そんなことを考えていると
降谷から質問が飛んでくる。
降谷「いつから名前呼びに?」
帝「あぁ,この前の試合見にいった時にたまたま買い物に付き合ってさ。部の買い出しなんだけど,その時俺と秀悟と春乃ちゃんと歌菜の4人で仲良くなって名前呼びになった」
降谷「へ〜(吉川さんはちゃん付けなのに三瀬さんは違うんだ)」
疎くても直感は鋭い降谷であった
沢村「よ、よ、よろしくお願いします!俺,クリス先輩がすごい人だって帝のやつから教えられてて,会うの楽しみにしていたんです!」
クリス「そうか。俺はそうでもないんだがな。」
精一杯の誠意を見せようと
普段使わない態度まで取った沢村
まさかそんなすげない態度とは思っておらず
沢村「な、何ーー!!お,俺だって御幸先輩に受けて欲しかったんだ!」
当然憤慨してしまう
クリス「俺も、お前みたいなやつではなく有藤のような才能あるやつの方が良かった。だが,他ならぬ片岡監督の指示だ。よろしくな,ヘボピッチャー」
だが、そんな彼の怒りも
柳の葉の様にすげなくあしらわれてしまう
沢村「ぐ!」
こうして,前途多難に感じる滝川・クリス・優と沢村栄純。
彼との出会いは沢村に何をもたらすのか。
帝はそんな彼らのコンビにはすでに
危険な気がしていた。
帝「沢村のやつは大丈夫でしょうかね?」
御幸「いや,揉めると思うぜ?クリス先輩は中々に気難しいところがあるからな。でも,あの人ほど野球に詳しい人もそうそういねぇ。あいつが素直にクリス先輩の言うこと聞けば,さらにレベルアップも見込めるな」
その言葉に、帝は自分の記憶に確信を持った
帝「やっぱり,あの人丸亀シニアの滝川さんですよね?じゃあ,あの肩の怪我って噂ほんとだったんすね」
降谷(怪我?)
御幸「あぁ,あの人は俺が入ってすぐくらいの頃に肩を怪我しちまった。でも,あの人の肩はかなり治っているはずなんだ。」
帝「夏のベンチは?」
御幸「厳しいと思わざるを得ないし,本人も入る気がないように見える。なんとも言えないが,俺はやっぱりあの人と勝負して正捕手を勝ち取りたいと思うよ。」
帝(なるほど,この人にとっての絶対の目標は彼なのか。てっきり稲実にいるあのサウスポーかと)
帝は,シニア時代に投げあった1人のサウスポー投手を思い出す
確か彼は御幸先輩と近隣のシニアだった気がする。
帝「てっきり,御幸先輩の1番の目標は稲実のあのサウスポーかと思ってましたよ。」
御幸「なんだ,あいつのこと知ってんのか?」
帝「シニアで対戦したことがあるので。負けた記憶はないですが」
御幸「流石無敵のエース,常勝無敗のマウンドの皇帝はいうことが違うな」
帝「んな大したもんじゃないですよ。たまたまみんなが打ってくれたり守ってくれて,偶々俺の投げた試合で負けたことがないってだけですよ」
御幸「タハッ。すげー謙遜だな。傲慢なんだか,謙虚なんだか」
降谷(無敗,皇帝,すごい,,)
降谷も言葉の端からにじみ出るすごさに息をのんでいた
御幸「さて,アップも済んだことだし今日はブルペンで投げた後にチームノックの方に参加してもらって今日は終わりだな」
帝「そのあとこいつ連れてってランメニュー中心にロードやっててもいいですか?邪魔はしないようにしますし終わる頃には帰ってきますので」
御幸「おお,行ってこい行ってこい。まずは何をするにも体力だ」
こうして,降谷の知らないところで今日彼が死ぬことが決定した。
そして
御幸「じゃあまずは降谷から。次に有藤だ。マネージャーは?」
歌菜「すみません,遅れました」
帝「歌菜,重そうだから持つ時俺と降谷呼びなって言ったよね?」
歌菜「うん。ごめん,話してると思って」
しょんぼりとしているが彼女なりの気遣いなのだろう
帝「そっか。気を遣わせたね。でも次からは呼んでね?危ないしせっかくのマネージャーに怪我されたとあったらことだ。」
歌菜「わかった」
理解を示してくれたことにうれしく思っていると
御幸先輩から声がかかる
御幸《おい、有藤》
帝《なんですか?》
御幸《お前あの娘とどうなんだよ?》
帝《別になんもないですよ?》
御幸《なんもにないのに名前呼びなのか?》
帝《仲良くなったので》
御幸《チッ!イケメンか》
帝《あなたも大概ですよ?》
そんなこんなで話していると,
歌菜「終わりましたー!!準備OKです!」
と了承が来たので,まずは降谷がブルペンのマウンドへ上がる。
帝としても降谷のボールは気になっていた。
見たことはある。だが、それはあくまでベンチからと
流しのブルペンだけ。本当の意味でこいつの
本気の投球を見るのはこれが初めてだ。
フォームを観察したい。投げるボールの球筋を見たい。
そう考えていたからこそちょうどよかったと思っていた。
その初球
ドゴォォォォン!!
やや高く浮いたストレート。
御幸「球が高ぇ。これじゃあ打者は振ってくれねーぞ!」
当然捕手からも同様の指摘が入る
しかし今の彼は、自分全力を取ってくれるという
その事実しか頭にない。
降谷「次,行きます!」
そこから,35球ほど投げて,そろそろ40球に達しようかというところで
降谷「ハァハァハァハァハァ」
御幸「おいおいもうへばったのかよ。そんなんじゃあ,先発は任せられないぜ?」
帝「降谷,もうちょい力抜いて投げろよ」
降谷「?」
帝「全体的に体がこわばりすぎだ。この前の試合で投げた時見たく自然体で投げてみろ。そっちの方がお前の球は生きる」
いくら何でもこれでは張り合いがなさすぎる
若干そんな予感はしていたのだが
こいつ全球全力投球で投球練習を終えたのだ
これでスタミナも並み以下なのだ
それに肩ひじを張りすぎである
速いボールを投げることしか頭にない
これではコントロールもつかないし
いつまでたっても成長しないだろう
流石に目に余るので注意させてもらった。
御幸(へぇ,あんな風にコーチングもできるのかよ。ますますすげぇな。全く底が知れねぇぜ)
そして,アドバイス通り力を抜いた降谷の投げたボールは
すどぉぉぉぉぉぉーん!!!
先程以上に重低音のようなミットの音が響き渡る。
低めに制球された威力のあるストレート。
これはなかなか打てない。そう思った。
しかし,
スドォォン
数球投げるとまた制球が暴れ出す。
御幸「今日はこんなもんだな。大体課題もわかったし,奥でクールダウンしてこい。有藤,次行くぞ!」
帝「わかりました」
降谷同様いくらか立ち投げしたのち,軽く中腰で投げて,10球ほどで肩を作る。
そして
帝「行きます!」
御幸「あぁ、球種はそっちで指定して行ってくれ」
帝「わかりました。まずは今日の感覚掴みたいんで5球ストレートで行きます。その後は随時色々言っていくんでお願いします」
そうして投げたストレートは
スバァァァァン!!!
御幸「っつー。なんで球だよ。球速は?」
歌菜「146キロです」
御幸(さっきの降谷の球より遅い?そうとは思えないな。ひとえにキレの違いだな。スピン量は抜群に有藤の方が多い。ラプソードとかあったらぜひ使ってみてーな。一体どんな数値が出ることやら)
続くボールも146キロ
そこから140キロ中盤程度のストレートを行ったり来たりする。
そして.10球目までストレートを投げてしまった。
帝自身も興が乗って投げすぎてしまったので
帝「次は変化球。まずはシュート行きます」
そして投げだシュートは
ギュンギュン!
しっかりとインコースに食い込む
これを3球ほど投げてから
帝「次はカット」
外に構える御幸先輩
ギュん!!
外にばっちり決まる。
これも3球投げる
帝「次,スライダー。普通の行きます」
ククッ!キュイン!
外の抜群のコース。
これを5球。
帝「次はスラーブ」
フワッ グググ
インコースから鎌のように曲がるスラーブ。
イメージはかの世界大会優勝時胴上げ投手が最後に投じたようなスライダー。
これを5球
そして,
帝「サークルチェンジ」
フワッ ククッ
これがまたしっかりとみゆきのミットに収まる
これは3球ほどで終わると,
帝「パラシュートチェンジ」
フワッ ククッ ストン
球速差のあるチェンジアップの中で
ウイニングショットとなる球。
それすら帝は完璧に操る。
さらに言えば,帝のサークルチェンジは
球速を落としたり上げたりが自由な球なため
意図して高速チェンジの役目も果たすのだ。
そして,
帝「高速スライダー,行きます」
ギュン!ククッ ギュカ!
先程のカットボールより力強く大きく曲がってアウトローに決まる。
有藤帝の代名詞とも言えるスライダーの一つの完成系。
そして,それは別に
帝「縦スライダー,行きます」
ギュィィィィィン!!
ドパン!コロッコロっ
御幸「!?」
御幸一也が弾いた。
周囲も驚きを隠せないが,それは当然本人もである。
御幸(ったー、なんで切れ味,コイツァ初見じゃ無理だ。)
しかし,大変楽しそうな御幸。
その顔を見て,帝は計60球ほどを投げて上がる。
すると,
御幸「じゃあ,今日はそれ終わったらダウンとアイシングして上がっていいぞ」
本来ならこの後シートノックに入る予定だったが
降谷がすでに満身創痍な感じでとても参加させられないので
軽く走って終わりという形になった。
そもそも、御幸的にはあまり参加させる気はなかったようだ
御幸(正直今日は丹波さんとノリもいかねぇみたいだし、監督からも特に何にも言われてねぇから無理に入れなくていいだろ)
帝,降谷「「はい!」」
この後,歌菜と機材の片付けだけ簡単に終わらせた。
こうして,久しぶりに本気のボールを投げられた2人は
大変満足な心持ちでクールダウンに出かけた。
ところ変わって一軍の練習するAグラウンドでは
松木秀悟が一軍合流の歓迎ノックを受けていた。
とはいえそれは、名前こそ穏やかなものの
完全な伊佐敷によるしごきであり
周囲からすれば、彼が一軍でどれだけやれるかの試金石だ。
伊佐敷「オラオラ,もっと食らいついていけや!」
秀悟「うぉっす!!っしゃ!ばっちこい!」
伊佐敷「いい声でんじゃねぇか!もういっぺん行くぞ!」
カキィィンと、金属音が気持ちよく鳴り響いてノックが上がる。
秀吾にとって伊佐敷が早く上がるからノックを軽く打ってやると言われて
口車に乗せられて始まったこのノック。実際のところは片岡監督に一任された
伊佐敷流のテストみたいなものも兼ねているが,生意気なやつなら
しばこうと思っていたのは本音である。
秀悟「うおりゃゃー!!」
ズザザーーっと滑ってボールを掴む
伊佐敷「おっしゃラストだバカヤロー!!」
このフライを秀悟はどうにかキャッチする。
伊佐敷(丹波のカーブをいきなりホームランにしたようなやつだ。あんましバッティングは心配してなかったが,こいつは守備も超一級品だな。こりゃあ俺もうかうかしてられねーぜ)
こうして伊佐敷をはじめ,
そのノックを見ていた外野手の諸先輩陣からは
一目置かれるようになったのであった。
秀悟(みんなこんなノック当たり前にやってんの?自惚れてたー!!こんなの普通にやってるなんて高校生バケモンすぎだろ!いや,それでこそ青道に来た甲斐があるってもんか!?)
秀悟「ありがとうございました!!」
一方で松木秀悟の方も,初めての練習からの強度と難易度の高さにさらなる飛躍を誓ったのだった。
それぞれが自身の課題や新たな目標を見つけていくなか
未だ納得いかないと言った表情の沢村がいた。
沢村「まだストレッチやんのかよ!もう2時間半もストレッチやってるぞ!」
クリス「黙ってやれ。これが終わったら軽くキャッチボールだ」
この後,軽くキャッチボールをした後に、
クリス「お前はカットボールとチェンジアップが投げられるようだが,他に何が投げられるボールはあるのか?」
沢村「な、ないっす!」
クリス「そうか」
その後,彼は小言で呟き始める
「肩や関節の柔らかさはかなりのものがあり,そういった面では他の投手を凌ぐ才能がある。しかし,このままではエースは愚か,一軍にも入れないだろう」
沢村「何!?」
クリス「どうした?さっき俺が言ったストレッチは終わったのか?」
沢村「終わりましたよ!それより俺がエースになれないってのはどーゆーことっすか!」
クリス「そのまんまの意味だ。今のお前じゃ,降谷や有藤には勝てない」
はっきりとそう言われたことに驚いた
しかし,沢村も食い下がる。
沢村「そ,そんなことは俺だっていたいぐらいにわかってる!でも,俺はこっからエースになるんだ!俺は,ここでエースになるために青道に来た!帝にも降谷の奴にも負けるつもりなんてねぇ!それをなんであんたにいきなり否定されなきゃいけないんだ!」
クリス「なら、一つ聞くがなぜあの時お前は増子との勝負の最後のボールにストレートを選択した?あの時のカウントからするなら,インコースのカットボールや,高めのボール球を見せた上でのチェンジアップなど,いくつか討ち取る方法はあったはずだ。事実、そういった打ち合わせもあっただろう。それだけの選択肢の中であえてストレートを選択した理由があるのか?」
沢村「そりゃあ、男と男の勝負なら俺ストレートって決まってるじゃないっすか」
何を当たり前のことをって感じで沢村が答える
クリス「それは,お前が個人の勝負をチームより優先したことに他ならないぞ?俺は,お前のようなやつだけには俺たちの3年間を預けたくはない。絶対にな。投げてみろ?一球だけな。受けてやる。」
そうして外角低めに構えるクリス
クリス「お前の好きなストレートだ。ここに投げ込め。ここ以外はとらん」
そうして投げたボールは高めに抜けたのだが,
ドン!
肩にのプロテクターにぶつかって跳ねてしまった。
そうしてクリスは
クリス「どうした?俺はここに構えているぞ」
沢村は驚いた。まさか自分の投げたボールに
一切反応しないなどと思わなかった。
怪我したらどうするのかと
クリス「今,お前が投げた球は外角寄りの高めの失投。お前は今,チームの勝敗を決するかもしれない場面でしてはいけない失投をしたんだ。この意味がわかるか?」
クリスの黒く深く冷たい目が沢村を射抜く
「お前は今,俺たちの夏を終わらせたんだぞ?」
ゾクゾクゾク!
沢村に走ったのは悪寒だった。
今,自分がどれだけのことをしたのかと言うのを実感させられた。
クリス「あの試合だけ見れば,確かにあれだけ点差が離れた場面でソロホームランくらったところで大したダメージではなかったんだろう。」
しかしと彼は続ける
クリス「お前の投げたあのボールがもし一点差の場面だったら?あのときはお前の性格も汲んだキャッチャーが思い通りのサインを出してくれたが,御幸が座る本戦の一点差の局面でもお前はおそらく首を振ってストレートを投げたがる。それは,弱点云々以前の問題だ。」
沢村「!?」
クリス「そんな奴にわざわざ教えてやることなんてない。今日はもう上がる。さっき行ったメニュー表をそのまま実行しろ。やるもやらないとお前次第だがな」
もやもやとした気持ちと、あの瞬間に感じた気持ち悪い悪寒のような正体はついぞわからないまま,その日は進んで行った
そうこうしているうちに練習が終了した。
この日は守備体系の確認などもあったが,
一年生は初日は慣れるために
そこまで全部に参加せずに
午後のラストには練習を早めに切り上げたわけなのだが
1人イライラとする気持ちを隠そうともせず
練習を続ける沢村の姿があった。
そう言うこともあり,この日はバッテリー陣も早めに上がったため、
御幸先輩や秀悟と共にグラウンドの横を歩いていた。
沢村「ちくしょー!!なんなんだあいつは!!」
帝「いつにも増して苛立ってんな、なんかあったのか?」
沢村「どうもこうもあるか!あのクリスとかいう野郎,俺に文句つけてエースになれないだとかなんと言うだけ言って帰っていきやがった!それも俺たちより全然早くだ!なんであいつも俺たちと同じ補欠のくせに誰よりも残って一軍に入ってやろうって気がないんだ!」
御幸「おいおい,流石に言いたい気持ちはわかるけどお前。一応先輩だぜ?それになんか理由があるかもしれないだろ?」
沢村「それにしたって!あの人,なんで帰るんだって言ったら,俺のようにはなるなよとかわけわかんないこと言って帰っちまったんだ!」
帝「聞いたんだ」
そこで迷いなく聞くことのできる沢村に
ドン引きすると共にある意味尊敬の念を抱いた。
別にそんなところでの心臓の強さは一ミリもいらないが。
秀悟「流石沢村。シビアそうなところに容赦なく。えげつねぇな」
そんな中,御幸だけはやや深刻そうな顔をしていた。
これは本格的に何かあったんだと思った矢先だった。
沢村は言ってはいけないことを口走る。
「そんなにやる気ないならさっさと辞めちまえばいいのに」
ガコン!
沢村「!?」
秀悟「うぉ!」
帝「ワォ」
御幸「お前が頑張ってるのは伝わってるし,この前の試合で見たとき,正直ここまでのピッチャーになっているなんてって驚いた。その頑張りを評価したからこそ、監督もお前を一軍にあげたんだと思う。すげーと思うよ。でも,今の発言。今の発言だけは,許せねーわ。胸糞悪い,俺ちょっとこの前の試合のスコア取ってくるわ。ついでに丹波さんと確認したいこともあるからお前ら先寮に戻っとけ」
沢村「,,,,」
帝「びっくりしたみたいだね」
秀悟「そりゃああれだけ言われたらな。普段怒らない人が怒ると怖いってのは本当だな」
帝は目の前に転がってきたメニューの巻物を取る
軽くめくってみると、帝は思わず感服した。
帝「なぁ,沢村。俺はクリス先輩って人をよく知らねーけど,それにしたって,このメニューは愛に溢れたメニューじゃねぇか?」
沢村「は?なんでだよ!」
帝「このメニューにあるのは今のお前に最適なメニューに近い。そりゃあお前の体を事細かに検査したりすりゃあもっと良くできるが,現状わかる情報だけで見たら破格の出来だ。それをお前にいきなり渡してきたんだぞ?この意味わかるか?」
沢村「なんだよ」
帝「これはお前が怪我したりしないようかつ、オーバーワークにならないように時間のかかるやり方でしかも効果もしっかりあるメニューってことだ」
沢村「!?」
秀悟「まぁ,俺は帝ほど頭良くねーから難しいことあんまりわかんねぇけどよ,お前は練習見学の時に東先輩に怒ったのって,そーゆー態度が気に食わなかったからじゃねえーの?」
沢村「あんときとは明らかに違うだろ!あの人は,明らかにやる気がないじゃねぇか」
帝「もし,怪我してたら?」
沢村「は?」
秀悟「もしかして,あの人ってどっか怪我でもしてんのか?」
帝「多分な。じゃなかったらあの人かベンチ外なんてありえないよ。俺の相棒が認めたほどの捕手だぞ?」
秀悟「泉が。ヘェ〜。そいつぁスゲェな」
それを聞いた瞬間,へたり込むように
力が抜けたように少し自嘲気味に沢村は苦笑いを浮かべる。
どうやら自分の言った言葉の意味をようやく理解したらしい。
沢村「なんだよそれ。くそ!俺ちょっと高島先生のとこ行ってくる!」
そして,沢村は高島先生から話を聞いたのか,戻ってきた。
曰く,クリス先輩は当時からレギュラーキャッチャーだったんだが
無理が祟って肩を怪我して,全治1年以上。
治っても選手として高校復帰は難しい。
それでもチームのために選手として可能性を信じて残った。
そんなことを知っているからこそ,何も知らなかったとはいえ
あんなことを言った沢村にあれだけ怒ったと言うわけだ。
沢村「ハハハッ。その上,俺のことまで考えてくれた人に対して俺はなんてことを言っちまったんだろうな?ったく俺馬鹿すぎるぜ」
帝「お前のバカなんて今に始まった話じゃない。でも,気づけてよかったな。お前のやることも決まったじゃないか」
秀悟「流石のお前ももうわかってんだろ?」
沢村「おう!ちょっと病院行ってくる!」
帝「クリス先輩にちゃんと謝れ。御幸先輩にもだ。話はそっからだぞ?」
沢村「おう」
その後,彼はクリス先輩に1から野球を教わることとなったのだった。
その話自体は別にいいのだが、その際の頼み方
というか完全なる悪質ストーカーみたいな内容は
俺たち一年生ともどもドン引きだった。
監督室にて〜
太田「珍しいですね,片岡監督が一年生をこの時期に4人も上げるなんて」
片岡「降谷の速球は,全国でも通用する。それに、沢村の変幻自在のムービングは,高校生ならば圧倒的な武器になる。あの2人は夏にでもブルペンの一角として運用したいところだな。」
太田「そんなにですか!」
高島「それでも別格なのはやはり」
片岡「有藤,松木の両名だ。松木は規格外のスラッガーだな。いきなり丹波カーブをホームランしたかと思えば,頭脳的な打撃も見せる。シャープでスイングに無駄が少ない。その上,足も早く,あれだけの上背と体をしっかり使いこなせるバランスを持った外野手は貴重だ。伊佐敷によれば,守備もかなりものらしいしな」
太田「では,有藤の方はどうでしょう?やはりリリーフとしてならすぐにでも使えそうですか?」
片岡「いや,あいつには今年のエース争いに参加してもらいたい。もちろん,ほか二名も期待大だが現時点での完成度は奴が群を抜いている。その上,この前の投球では全体の3割も力を出していない。それであれほどの安定感。正直投手をしていた俺から見ても異質だ。だからこそ,あいつは次の横浜港北との試合で先発させる!そこで松木も外野手としてデビューさせるつもりだ。結果次第だが,中継ぎとして2回戦から沢村と降谷の登板も考えている」
高島「既にそこまで。」
片岡「正直,これだけの戦力が揃ったことは奇跡に近い。今年はなんとしても,あいつらを甲子園に連れてってやりたいな」
太田「片岡監督の思いはきっと彼らに届いていますよ」
高島「えぇ,間違いなく」
こうして,夜はふけていく。
彼らの思いを夜の闇に溶かしながら,,,
はい!今回は一軍合流にしました
沢村と降谷、帝と秀吾の運用がこれからどうなっていくかはわかりませんが
今のところはこの感じで夏の試合もやっていこうかと思います
とはいえ、原作準拠だとあの事件が起きるので
その辺で完全に蹴ってづけて行こうと思っています。
それでは皆さん、またどこかでお会いしましょう
それではまた次回