ダイヤの原石   作:浜の小さな大魔神

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横浜終戦
負けるかもとは思ってたけど
まさかストレート負けとは
来期は戦力ダウン必至だし
とりあえず松井祐樹。横浜来てくれねぇかな?
後、これは勝手な意見だけど
今永メジャー行こうにもメディカルチェック引っかかる気がする


デビュ―前夜

一軍に上がって少し,学校生活から部活に切り替わっていく日々にもようやく体が慣れて習慣化してこようかという春先の5月。俺たち青道野球部は関東大会に進出していた。

 

片岡「次の関東大会の初戦である横浜港北戦だが、有藤。お前に先発を任せる。いけるところまで行け,スタメン発表は前日の練習終了後!

有藤は御幸とサインの確認とセットプレーの練習を怠るな。以上だ」

 

静まり返ったところから急にざわつき出す。

たかだか一年が先発するだけで浮き足立つな。

そう言いたいところだが,そこは普段起こりづらい

強豪校ならではのものなのだろうと推察はできる。

 

帝(それにしてもうるせーな)

 

とはいえ、それとこれとは別だ

 

秀悟「さっすが〜。もう先発デビューかよ。期待してるぜ?未来の大エース様」

 

帝「茶化すな。大体俺はまだ認められたわけじゃない。それがわかるのは背番号と夏の結果だ。だから,今は夏に照準を合わせて最大出力を持っていくよ」

 

秀悟「冷静だな」

 

軽くあおってくる秀吾を適度に言いなす

こいつは若干卑屈に言い寄るのが玉に瑕だ

 

沢村「負けねーからな帝!登板する時期の速さはお前に譲ったが!エースは譲らねー!」

 

帝「もちろんだ。こんなんで折れちまったら俺もつまらん。お互い最後まで張り合っていこうぜ?」

 

降谷「僕も負けない!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

帝「オーラ出してるところ悪いけど,お前はまず体力つけないとね」

 

ガーンという効果音が聞こえそうなほど

落ち込んでいる降谷を見て若干申し訳なく思った。

 

その日の練習後,スタメンが発表される。

 

1番 遊 倉持

2番 二 小湊亮

3番 中 伊佐敷

4番 一 結城

5番 三 増子

6番 捕 御幸

7番 左 松木

8番 投 有藤

9番 右 白洲

 

ザワザワ ザワザワ ガヤガヤ ガヤガヤ

 

一年生がこの時期に2人もスタメンに名を連ねた。

周囲からさらに驚きの声が上がる。

少し悔しそうに俯くのは三年の門田先輩と坂井先輩だ。

前の試合までレギュラー争いをしていながら

不調だった2人は今回両方スタメンを外されてしまったのだ。

そして,エースの丹波さんも少し悔しそうにしている。

それでも,自分で結果を受け入れているようで

その発表の後,一層気持ちを引き締める。

 

倉持「ヒャハハッ!松木の初スタメンと有藤の初先発かよ!コイツァ明日が楽しみだぜ」

 

 

倉持先輩は本当に面白そうにしている

 

伊佐敷「ウォイ!テメェらスタメンで出る以上舐めたプレーしやがったら即焼き入れっからな!」

 

 

 

伊佐敷先輩はこう言ってこそいるが

実際は緊張をほぐすために声をかけてくれているのだろう

彼は本当に心優しい先輩だ

 

結城「純,そうおどすな。お前達は一年生だ。特別なことをやろうとする必要はない,思いっきりプレーしろ。尻拭いは俺たちがしてやる」

 

伊佐敷「ハッ!そういうことだ。一丁前に緊張し腐ってんじゃねぇよ!」

 

少し顔が赤いのは言わないほうがいいと思い

口はふさいでおく帝と秀吾。

 

小湊亮介「まぁ,ダメならダメで早めにいなくなるだけだしね」

 

帝(この人はマジだぁ~)

本気で言っている発言に少し気が引けていた

 

倉持「ヒャハハッ!亮さん流石にそれはひでぇっす」

 

御幸「まぁ,あんまり硬くなるなよ有藤,お前はいつも通り投げろ。俺が最大限輝かせてやるから」

 

帝「はい。御幸先輩のことも,当然先輩方のことも,そこの秀悟のことも心配してません。自分は自分の出せる全部を使って明日をおさえます」

 

小湊亮介「投げるじゃなくて抑える、ね。大きく出たねぇ。じゃあ,打たれたら坊主だよ?」

 

帝「あはは。いきなり坊主は勘弁ですね。わかりました。明日はなんとしても抑えますよ。そのかわり,飛んだらお願いします」

 

結城「任せろ。打球は全て処理してやるし,どんどん援護してやる」

 

秀悟(すげーな。こんなかっこいいこと言える三年生になりたいぜ)

 

こうして,偉大な先輩方に背を押されてその日の練習は解散された。

 

その夜,帝は1人でシャドーを終わらせた後

軽くネットスローをしようと室内練習場にいこうとしたが

今日は確かマシン打撃主体の日で

あまりスペースがないことを思い出し

グラウンドへ行って芝の方を軽く使おうと思い

寮の方からグラウンドの方に歩を進めていく。

 

 

すると

 

 

歌菜「帝くん?」

 

歌菜が声をかけてきた

 

帝「歌菜?どったん?」

 

歌菜「いや,こんな時間にグラウンドにいるの珍しいと思って,,,そうだ!次の試合先発なんでしょ?すごいね。一年生で関東から試合出るなんて。」

 

彼女の言葉は何というか心を温かくしてくれる

こういうところが彼女の不思議んなところだ

 

帝「まぁ,テスト登板も兼ねてだろうね。ダメならすぐ二軍行きだから頑張らないと」

 

歌菜「フフッ,春乃も秀悟くんが出るっていったら顔を真っ赤にしながら差し入れ作るんだって言ってて可愛いな〜と思っちゃったよ。」

 

帝「春乃ちゃんらしいね」

 

歌菜(そういえば,前から気になってたけど)

 

歌菜「なんで春乃ちゃんはちゃん付けなのに私は呼び捨てなの?」

 

意外な質問。

少し驚いた俺は少し時間をおいて

ゆったりと話す

 

帝「嫌だった?ちゃん付けでもいいけど、歌菜はそのままの方が呼びやすいんだよ。なんだろう?しっくりくるっていうか,まぁ感覚の問題だから嫌なら治すよ?」

 

帝(これといった理由はないけど、なんだかそれがいい気がするんだよな〜嫌だったのかな?)

 

普段は心にも思わない感情に少し振り回されている

 

歌菜「ううん。いいんだけど気になったから。」

 

帝「そっか。よかったよ。嫌われてたらどうしようかと。あ!そうだ歌菜,今の時間ってなんか仕事あったりする?」

 

歌菜「ないけど,どうしたの?」

 

帝「じゃあ,動画とってくれない?携帯でいいんだけど,ちょうど良さげな高さの三脚見つからなくて」

 

歌菜「いいよ。じゃあ,どの角度がいいか教えて」

 

帝「じゃあ,あそこの照明の真下のところで,俺を体の正面から取って。投球動作の側面が見たいから。」

 

自分がでよく動画で見る打者目線のカメラではなく

ちょうど三塁手側から見るような角度で側面から撮ることで

腕の回転や股関節の力の入り方

踏み込み方などがよくわかるのだ。

 

歌菜「うん。わかった。それじゃあグラウンドに行こう!」

 

帝「じゃあ待ってて、今寮戻ってパパッと携帯取ってくるから」

 

歌菜「それなら私が携帯持ってるからそれでやればいいよ」

 

帝「いいのか?」

 

歌菜「うん。問題ないよ。それに,,,,,」

 

帝「それに,どうした?」

 

歌菜「!?な,なんでもないよ!」

(声,出てた〜!恥ずかしいよ,まさか,帝くん動画とか写真とか欲しいとか,憧れてたとかいえないし)

 

少し顔の赤い歌菜を心配した帝だったが

すぐに大丈夫そうになった歌菜を見て安心していた。

 

そして,グラウンドに行くと

 

先輩A「なんだ?有藤使うのか?」

 

普段あまり話さない先輩がいた

どうやら少し居残りで練習していたようだ

もう帰るとのことなので

自分が後片付けの交渉だけしておく

 

帝「はい。最後のブラシかけはしておくので,トンボ終わったらそのままで大丈夫ですよ」

 

先輩A「いいのか?お前週末投げるんだろ?あんまり無理はしないほうがいいぞ」

 

帝「しかし,最後に使ったものが片付けるのが道理でしょうし,なんにせよ後輩の仕事です。先輩はお気になさらないでください」

 

先輩A「じゃあ,悪いが頼んだぞ。鍵はかけなくていいそうだ。」

 

帝「わかりました。お疲れ様です!」

 

先輩は片手を上げて反応を示すと寮に戻った。

 

そして,シャドーを確かめるように

体をほぐすようにゆったりとしたところから始める。

段々と思考が透明に変わっていき集中していく。

今まで歌菜とテンションを上げてしゃべっていたのが

嘘のようにスッと心が凪のような状態になる。

 

そして,

 

ビュン!  ビュン!   ビュン!

とシャドーでタオルの音が揺れる。

土のグラウンドだからこそ,土を掴む感触を確かめられる。

 

それが終わってから次にネットスローを始める。

お願いした通り歌菜は撮ってくれてるようで安心していた。

 

10球,15球と黙々と投げ込んでいく。

球数は50球。フォームチェックを終了後にしっかり行う。

よかったと思ったら帽子の鍔。

よくないと思ったら帽子のてっぺんを触る。

これはある投手がキャンプで自分の状態や感覚を

確認するためにやっていた方法なのだが

自分もそれにあやからせてもらっている。

 

歌菜(今まであんなに普通に話してたのに,スイッチ入ると静かだな〜。というか,今って2人きりなんじゃ。なんだか恥ずかしいよ〜。それにしても帝くん,かっこいいな。なんというかすごく佇まいが綺麗で、照明に照らされてるだけなのにキラキラしてるみたいに見える)

 

そんなふうに思いを巡らせながら

帝のシャドーピッチングを見て考えていると

帝のフォームチェックが終わる。

 

帝「どう?撮れた?」

 

歌菜「ばっちりだよ!今見る?」

 

帝「流石にこんな汗かいた状態じゃ歌菜に嫌な思いさせて悪いし,あとで部屋で確認するよ」

 

歌菜「野球部に入ってマネージャーしてて今更気にならないよ。大丈夫大丈夫。それより今のうちに課題確認してその場でやったほうがいいんじゃない?」

 

帝「そうか?じゃあ悪いがお言葉に甘えさせてもらうわ」

 

そして,普段よりくっついて動画を見る。

 

歌菜(うぅ,なんだか緊張しちゃうな。帝くんかっこいいのはもちろんだけど,汗かいてるのになんだかちょっといい匂いするし,,,汗で髪が滴ってて色気があるよー!!!)

 

やや悶々とした気持ちすら感じていた歌菜だった。

 

 

帝(なんかいい匂いが〜、って!何考えてんだ。動画に集中しろ。それにしても,今まで他人なんて気にもならなかったのになんで歌菜のことは気になるんだ?)

 

人の気持ちには敏感なのに

自分の気持ちには鈍感な似たものコンビは

夜のグラウンドで動画を見て

フォームの修正をしたり

意見を聞いたりしていた。

 

歌菜「帝くん。帰りにそのまま寮に行かないで一回食堂に寄ってくれない?」

 

帝「いいけどなんで?」

 

歌菜「ひ・み・つ」

 

小さく口に指をあててほほ笑む少女

そのしぐさに一瞬ドキりとしてしまう。

 

帝「そっか。じゃあ行ったらの楽しみにしてるわ」

 

どうにかこうにか平静を保って

毅然なふるまいを心がける

 

歌菜「そうだね,楽しみにしてて」

 

自信ありげな顔をして

歌菜は食堂に走っていった。

俺はグラウンドの整備を軽くやってから

道具を持ってグラウンドを後にして

少し体をほぐしながら歩いて食堂に到着した。

 

 

 

 

そして今、俺は食堂である一つの感情に心が完全に支配されていた

 

 

どうしてこうなった?

 

 

 

時間が遡ること15分。

 

歩きながらもうすぐ食堂につこうかというところで

見知った顔を見かけて声をかける

 

帝「ん,秀悟か?おーい秀悟!!」

 

秀悟「おぉ,帝。どうした?」

 

帝「いや,お前が見えたから。お前も食堂に行くのか?こっから直線で食堂向かうなんて珍しいな」

 

理由はおそらく彼女が先ほど話していた

秘密というものに関係しているのだろう

 

秀悟「そういうお前こそ,歌菜ちゃん関係だろ?」

 

帝「お前もどうせ春乃ちゃん関係なんじゃないのか?」

 

お互い図星のような顔をすると

 

帝・秀悟「「プッ。アハハハッ!」」

 

二人して声をあげて笑った

 

帝「それにしても俺ら4人接点多すぎるだろ」

 

秀悟「なんかちょくちょく一緒になるよな」

 

帝「まぁ,これもなんかの縁だろ。それにしても今日はどうしたんだ?いつものあの素振りでもしてたのか?」

 

秀悟「今日は普通にスイングの確認だ。フォームの画像を春乃に撮ってもらってたら,あいつが夜食作るから食堂に来てっていうから向かってる」

 

帝「いいねぇ、さすがは男前」

 

秀悟「前も言ったがあんだけモテまくってるお前には言われたくねぇよ!大体,お前も似たようなもんだろ?」

 

帝「まぁ,おそらくな。歌菜には秘密って言われてるからなんだかわかんないけど」

 

こうして談笑していたら10分ちょっとで食堂に着いたので,ガラガラと戸を開けると、

 

春乃「うわ!!」

 

秀悟「おい危ない!」

 

春乃はお皿を運んでいた時に転びそうになり

寸前のところで秀悟が支えたので転ばず

皿は上手いこと近場の座布団に似たクッションを

下に帝が投げ込むという連携プレーに寄って割れずに済んだ。

 

春乃「ハワワッ!し、秀悟くんごめんね!!」

 

秀吾に抱えられたという事実に

キャパオーバーした春乃

顔は真っ赤でわなわな震えている

それをほほえましくみていると

キッチンから歌菜が慌てて飛び出してきた

 

歌菜「春乃!!大丈夫!って,あぁありがとう秀悟くん。それに帝くんもありがとうね。」

 

帝「このくらいなら別に。それと秀悟,そろそろ春乃ちゃん離してやんないと限界っぽいぞ?」

 

秀悟「は?うぉ!大丈夫か?顔真っ赤だぞ!」

 

春乃「だ、だ、大丈夫,だよ。ちょっとびっくりしちゃって」

 

と言いながらも顔は茹蛸みたいに真っ赤であり

秀悟もまた抱き抱えてしまったことと

春乃の女子特有の柔らかさのようなものに

ドギマギして顔を赤くしていた。

そして,帝はとりあえず秀悟に話すよう促し

それを見た歌菜はニッコニコ嬉しそうに

玩具を見つけた子供のように笑っていた。

 

帝「そういえば,さっきは秘密と言っていたけどここに呼んだのは夜食作ってくれるってことでいいのか?」

 

歌菜「うん。そのつもりだったんだけど,お米き切らしちゃってたみたいで。おにぎりが作れなくて半泣きの春乃を見つけたから今どうしよっかって悩んでて,とりあえずお皿とかだけ出してもらおうとしたわけ」

 

秀悟「それなら,帝が作ればいいんじゃね?」

 

帝「は?」

 

秀悟「だって、お前料理めっちゃくちゃ得意じゃん」

 

帝「いや,趣味レベルで作ったりはするけどさ。男飯だしあんまり女の子2人が頑張ろうとしてるのに俺が出しゃばるのも、ねぇ?」

 

春乃「帝くん料理もできるの!?私ちょっと食べてみたいかも」

 

歌菜「その〜正直私も,,」

 

帝「えーーー」

 

マジっすか?

まぁ、言い出した2人が良いと言うなら

俺は一向に構わないけれども

 

帝「あんまり過度な期待はしないでよ?」

 

そして,今に至るわけである。

そもそも強豪高校野球部の

集団生活が行われている寮で

米を切らすこととはなんだろうか?

 

曰くは明日の朝に届くらしく

朝一番に炊き出しているので間に間に合うには

余裕で間に合うらしいのだがそれにしてもびっくりである。

間が悪いというのかなんというのか

春乃ちゃんは不幸体質でもこじらせているのだろうか?

 

帝「まぁ,いいや。作るだけ作るけど,不出来でもあんまり怒んないでよ?」

 

さて,とりあえず作りますか。

 

そして,出来上がったのは

 

春乃「これ,何かお肉使ったの?」

 

帝「いや,豆腐だよ」

 

歌菜「これお豆腐!?でも,それだと崩れちゃわない?」

 

帝「木綿をわざと使うのもそうだし,片栗粉塗してやると意外と大丈夫。まぁ,焼く時に多少手入れるけど」

 

秀悟「んで,もう一品くらい作ったんだろ?」

 

帝「どうせお前は足らないとか言い出しそうな気がしたから適当に使って良さげな余り物って言っちゃ失礼だけど,使いきれそうなもん使って作ってはみたよ」

 

春乃「このスープのこと?」

 

歌菜「みた感じは今日の昼の残りのキムチとかだけど」

 

帝「そだよ〜。キムチと卵とマロニーとしめじの代わりにエリンギ入れて作った。キムチスープだよ。出汁は取るのめんどくさかったんで鶏ガラスープの素使いました」

 

春乃「できる自信ないよ私」

 

秀悟「春乃は料理したら美味いうまくないじゃなくて,調理中の危なっかしいが先に来るから不安だな」

 

帝「同感」

 

歌菜「右に同じく」

 

少しシュンとしてしまった春乃を

3人で励ましたりしながらテーブルを囲む。

 

帝「まぁ,夜も遅いし。時間的に重かったりカロリー高いものはアスリート的にも女の子としてもお互いよろしくないのて低カロリーを題材に頑張ったよ。味は食べてみて,味見はしたから大丈夫だとは思うけど」

 

それぞれがご飯を食べ始める

 

秀悟「んん!やっぱうめぇ‼︎お前マジ天才」

 

帝「お前の馬鹿舌ならなんでもうまいんだろうよ。昔俺の創作料理の失敗作食った時も反応変わんなかったからねこいつ」

 

春乃「でも,帝くんの料理がどれもこれもとっても美味しいっていうのはすごいわかる気がするな。これもさっぱりしていてとても美味しいです!」

 

帝「ありかどうね春乃ちゃん。やっぱり食べてくれる人が美味しいって言ってくれると作った側も嬉しいよ。歌菜は?,,」

 

歌菜「うん、フフフフッ」

 

大変ご満悦そうに笑っていた。

笑い方は若干怖いが

表情がいつもとはかけ離れるほどホワホワしているのをみて

そんなこと気にならないほどだった。

 

ドキッ!!

 

帝(なんだ?なんで歌菜が美味そうに食べてるの見ると他の人よりこんなに嬉しいんだ?よくわかんないな)

 

未だ自分の気持ちがなんなのかはっきりしない帝。

 

秀悟「おい!俺がうまいって言った時と他2人の時との反応が随分違うじゃねぇか!」

 

帝「ったりまえだ。お前は基本的になんでもうまいって言うからわかんねーんだよ本当かどうか!」

 

こんなしょうもない言い争いをしていると,

 

春乃「あ!もうこんな時間だ。私も流石に帰らないと」

 

帝「じゃあ,秀悟。俺は洗い物やるからお前春乃ちゃん送ってけ」

 

秀悟「それ女の子どうしなんだから歌菜の方がいいんじゃないのか?」

 

帝「アホか。この前買い物行った時も2人を外で待たしたからあんなんに絡まれたんだろうが。お前がいけばそこまでダル絡みされることもないだろうからお前が送ってけ。」

 

秀悟「なるほどな。わかった。よし,春乃帰るぞ!俺が送ってく」

 

春乃「えぇ!いいよ悪いよ秀悟くん!明日試合なんだし早めに寝た方がいいって」

 

秀悟「春乃になんかあったらって心配して寝れないよりマシだ。送ってやるからいくぞ!」

 

春乃 (なんでそんな恥ずかしいこと言えるのぉ/////)

 

顔を真っ赤にする春乃。

そして自分の言った言葉に何一つ気付く気配のない秀悟

2人を見ているとなんだかため息すら吐きたくなると思う帝

実際は自分も周囲から見たらそんな感じなのだがここに誰1人として突っ込むものはいない。

 

秀悟「そういえば帝,歌菜ちゃんはどうすんだ?」

 

帝「んなもん俺が送ってくに決まってんだろ?理由はお前が春乃ちゃん送ってくのと一緒」

 

歌菜「え,いいよ。私寮生活だから割とすぐに着くし」

 

帝「じゃあ,洗い物手伝って?さしたらちょっと遅くなっちゃうし悪いから俺が送っていくから」

 

歌菜「え?」

 

帝「これでおあいこでしょ?」

 

そう言って微笑む帝に頬を赤くしてしまう歌菜。

そんなこんなで,秀悟は先に春乃を送るために食堂を後にすることとなった。

 

秀悟「じゃあ,俺送ってくるわ。」

 

春乃「じゃあ,また明日ね歌菜ちゃん!それと,帝くんも料理ごちそうさま。明日はスタンドから応援してます!」

 

帝「ありがとう。気をつけて帰ってね」

 

歌菜「秀悟くんに何かされそうになったらいうんだよ」

 

秀悟「なんもしねーよ!」

 

春乃「べ、別に秀悟くんなら,,,」

 

歌菜「春乃!?落ち着いて!!」

 

秀悟「ん?春乃今なんか言った?」

 

帝「そんなことよりお前送ったと寄り道せず帰って来いよ!?」

 

秀吾「初めてのお使いじゃあるまいし心配すんなよ。んで春乃はさっきなんて言ってたんだ?」

 

春乃「なな、な、なんでもないです!!!!!」

(な、何言ってるの私ーー!!)

 

そんな爆弾発言をかました彼女は

その爆弾発言の向かい先であった秀悟に連れられて

非常に顔を真っ赤に染め上げて帰っていった。

 

帝「ビビったー。というか焦った。春乃ちゃんとんでもないことぶっ込んでくるもんだから」

 

歌菜「本当に心臓に悪いよ。それにしても,あそこまで秀悟くんのこと好きになるなんてね。」

 

帝「くっつくのも時間の問題だろ」

 

歌菜「春乃はおっちょこちょいだからあのくらい溌剌とした人が合いそうだもんね」

 

帝「言えてる」

 

2人で笑いながら洗い物を進めていく。

ここに沢村や降谷がいたら

「夫婦かよ」

などと突っ込むこと必死なほど,2人は馴染んでいた。

そんな光景だが、この光景を他が見ることになるのは

また別の,もっと先の話である。

洗い物が終わると,帝も歌菜も帰り支度を始める。

 

帝「んじゃ,送っていくよ。約束通り」

 

歌菜「うん。ありかどうねわざわざ」

 

2人は,特に話すこともなく河川敷を歩く。

女子寮は青道の青心寮とは違い

グラウンドではなく校舎に近いところにあるので,

グラウンドから10分ほど歩くところにある。

とはいえ,グラウンドからも破格の近さであり

朝に練習のある日などは基本的に迂回せずとも

学校を突っ切ってショートカットできるので

青心寮ほどではないが校舎から行くのとさほど変わりはしない。

しかし,夜は流石に校舎が閉まってしまうので

2人は少し遠回りながら河川敷を歩いていた。

そこでは他愛のない世間話を繰り広げていたが

やがてすぐに寮の前に着く。すると

 

歌菜「ええっと,今日は言えなかったけど料理すっごく美味しかった。それと,こんな時間に送ってくれてありがとう。それから,ええっと,,」

 

少し慌てているのか中々言葉が紡げない。

それでも帝は焦らすことなく,ゆったりと次の言葉を待っていた。

 

歌菜「そう!明日は私も応援してるから!帝くんを,青道を!スタンドから精一杯応援してるから頑張ってね!」

 

その言葉を聞けて安心したと言わんばかりに満面の笑みで頷く帝

 

帝「あぁ,ありがとう。歌菜や春乃ちゃん,それに俺のライバル達が観てる試合で無様な真似はできないな。こちらも精一杯頑張るよ。それはそうと,明日は応援よろしくね!」

 

帝(なんだろう。歌菜に応援してる!って言われてからすごく力が出てくる気がする。明日も頑張れそうだなぁ~)

 

秀悟は,春乃を何事もなく送って帰ってきており

寮の部屋に戻ろうかというところで帝と会った。

 

秀悟「帝,明日はやってやろうぜ!」

 

帝「あぁ,もちろんだ。期待してるぜ?スーパースラッガー?」

 

秀悟「そっちこそ。マウンドの皇帝様の投球に期待が膨らむぜ俺は?」

 

2人で笑い合った後に無言でグータッチをして

その日は眠りについた。

あんな応援してくれる子がいるとわかっているからか

それとも高校初先発の嬉しさか

非常に気持ち良く,その日は安眠することができた。




はい、てなわけで今回は野球の部分ほぼほぼ出てきませんでしたね
やっぱりこういうところも書きたいという作者の願望が出てきてしまいますが、次回はしっかり野球のところですので楽しみにしていてください
それではまた次回
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